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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】潤滑ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 13/00 20060101AFI20230308BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20230308BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F16N13/00
F16K31/06 310C
F16K31/44 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018129727
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020008090
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591231926
【氏名又は名称】リューベ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】大関 昇
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106868(JP,A)
【文献】特開平01-155083(JP,A)
【文献】特開2013-234634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 13/00
F16K 31/06,31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブが設けられるバルブ配管路に送給口から潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置において、
潤滑油を貯留する潤滑油貯留部と、該潤滑油貯留部から潤滑油を吸引して吐出するポンプと、該ポンプから吐出される潤滑油を逆止弁を介して送給口に供給する供給管路と、該供給管路及び上記潤滑油貯留部間に設けられ上記供給管路を通して上記バルブ配管路内を脱圧する脱圧管路と、進退動可能なスプールを有し該スプールの進退動により上記脱圧管路を開放し若しくは閉塞する切換弁と、進退動可能なロッドを有し非通電時に上記脱圧管路を開放し通電時に上記脱圧管路を閉塞するように上記切換弁のスプールを進退動させる電磁アクチュエータと、該電磁アクチュエータのロッドの進退動をその力を増加させて上記切換弁のスプールの進退動に変換するてこ機構とを備え、
上記てこ機構を、長手方向の途中部分が支点を構成する支点軸に軸支され該支点軸を中心に揺動可能に支持されるレバーを備えて構成し、該レバーの一端部を上記電磁アクチュエータのロッドの先端部に設けた力点を構成する力点軸に連係し、上記レバーの他端部を上記切換弁のスプールの先端部に設けた作用点を構成する作用点軸に連係し、上記支点及び力点間の距離aと上記支点及び作用点間の距離bとの関係を、1.8≦(a/b)にしたことを特徴とする潤滑ポンプ装置。
【請求項2】
上記レバーの一端部に、該一端部の端面から該レバーの長手方向に沿って切欠かれ上記力点軸に対して移動可能に係合する一方係合溝を形成し、上記レバーの他端部に、該他端部の端面から該レバーの長手方向に沿って切欠かれ上記作用点軸に対して移動可能に係合する他方係合溝を形成したことを特徴とする請求項1記載の潤滑ポンプ装置。
【請求項3】
上記切換弁を、上記脱圧管路に介装され、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記脱圧管路を開にし、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時に上記脱圧管路を閉にする開閉弁で構成したことを特徴とする請求項1または2記載の潤滑ポンプ装置。
【請求項4】
上記供給管路及び脱圧管路をブロック状の本体に形成し、上記切換弁を、上記本体に上記脱圧管路を横断して設けられ上記スプールが摺動可能に挿通されるシリンダ孔が形成されたシリンダを備えて構成し、該シリンダに、上記シリンダ孔の側部に開口し上記脱圧管路の上記供給管路側に連通する一方孔を形成するとともに、上記シリンダ孔の終端に開口し上記脱圧管路の上記潤滑油貯留部側に連通する他方孔を形成し、上記スプールの終端部に、該スプールの側面及び終端面間に開口し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記一方孔に連通し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時にシリンダ孔の壁面で塞がれる貫通孔を設けたことを特徴とする請求項3記載の潤滑ポンプ装置。
【請求項5】
潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブが設けられるバルブ配管路に送給口から潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置において、
潤滑油を貯留する潤滑油貯留部と、該潤滑油貯留部から潤滑油を吸引して吐出するポンプと、該ポンプから吐出される潤滑油を逆止弁を介して送給口に供給する供給管路と、該供給管路及び上記潤滑油貯留部間に設けられ上記供給管路を通して上記バルブ配管路内を脱圧する脱圧管路と、進退動可能なスプールを有し該スプールの進退動により上記脱圧管路を開放し若しくは閉塞する切換弁と、進退動可能なロッドを有し非通電時に上記脱圧管路を開放し通電時に上記脱圧管路を閉塞するように上記切換弁のスプールを進退動させる電磁アクチュエータと、該電磁アクチュエータのロッドの進退動をその力を増加させて上記切換弁のスプールの進退動に変換するてこ機構とを備え、
上記切換弁を、上記脱圧管路に介装され、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記脱圧管路を開にし、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時に上記脱圧管路を閉にする開閉弁で構成し、
上記供給管路及び脱圧管路をブロック状の本体に形成し、上記切換弁を、上記本体に上記脱圧管路を横断して設けられ上記スプールが摺動可能に挿通されるシリンダ孔が形成されたシリンダを備えて構成し、該シリンダに、上記シリンダ孔の側部に開口し上記脱圧管路の上記供給管路側に連通する一方孔を形成するとともに、上記シリンダ孔の終端に開口し上記脱圧管路の上記潤滑油貯留部側に連通する他方孔を形成し、上記スプールの終端部に、該スプールの側面及び終端面間に開口し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記一方孔に連通し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時にシリンダ孔の壁面で塞がれる貫通孔を設けたことを特徴とする潤滑ポンプ装置。
【請求項6】
上記スプールの終端部に、該スプールの側面及び終端面間に開口し、該スプールの後退時に上記一方孔に連通し、該スプールの進出時にシリンダ孔の壁面で塞がれる貫通孔を設け、
上記電磁アクチュエータを、進退動可能なロッドを常時進出方向に付勢するコイルスプリングと、非通電時に上記ロッドを上記コイルスプリングの付勢力により進出させ通電時に上記ロッドを上記コイルスプリングの付勢力に抗して後退させる電磁駆動部とを備えて構成し、該電磁アクチュエータを、そのロッドの軸線と上記切換弁のスプールの軸線とが平行になるように上記切換弁に対して並設し、上記本体に取付け部材を介して取付けたことを特徴とする請求項4または5記載の潤滑ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリスやオイル等の潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置に係り、特に、潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて潤滑油を吐出するバルブに潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図6(a)に示すように、流体としてのグリスやオイル等の潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置Jaとしては、例えば、樹脂あるいは金属の射出成形機等の機械に設置されたグリス潤滑システムSに用いられるものがある。この潤滑システムSにおいては、潤滑油の加圧及び脱圧によって往復動させられて潤滑油を吐出する単一のピストン(図示せず)及びこのピストンに対応した1つの吐出口を備え1ショットの吐出量が0.03ml~1.5ml(0.03cc~1.5cc)程度の周知の単一定量バルブVtを用い、これらをバルブ配管路Rを介して該当する複数カ所に配管し、バルブ配管路Rに潤滑ポンプ装置Jaから潤滑油を送給する。潤滑ポンプ装置Jaには、単一定量バルブVtが潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて潤滑油を吐出する関係上、脱圧が必要なので、脱圧を行なう機能が備えられている。
【0003】
この潤滑ポンプ装置Jaは、潤滑油を貯留するカートリッジタンク型の潤滑油貯留部100と、電動モータ101で駆動され潤滑油貯留部100から潤滑油を吸引して吐出するポンプ102と、バルブ配管路Rに接続される送給口104を有しポンプ102から吐出される潤滑油を逆止弁103を介して供給する供給管路105と、供給管路105及び潤滑油貯留部100間に設けられ供給管路105を通してバルブ配管路R内を脱圧する脱圧管路106とを備えている。脱圧管路106には、スプール(図示せず)の進退動により脱圧管路106を開放若しくは閉塞する切換弁111と、非通電時にコイルスプリング112の付勢力によりスプールを常態位置に位置させて脱圧管路106を開放し、通電時にスプールを直接移動させて脱圧管路106を閉塞する電磁アクチュエータ113とを備えたソレノイドバルブ110が設けられている。図6(a)中、符号114は、供給管路105の空気を抜く空気抜きバルブ、115は供給管路105が所定圧力以上になったとき潤滑油を潤滑油貯留部100に戻すリリーフバルブである(例えば、特開2002-323196号公報,特開2016-84873号公報参照)。
【0004】
図6(b)は、この潤滑ポンプ装置Jaの制御回路を示し、例えば、タイマ120により計時されてスイッチ121がオン,オフさせられ、電源122から電動モータ101及びソレノイドバルブ110の電磁アクチュエータ113に間欠的に通電される。通電されると、ソレノイドバルブ110により脱圧管路106が閉塞され、ポンプ102から潤滑油が供給管路105に吐出され、潤滑油がバルブ配管路Rを通してバルブVtに供給され、非通電時にポンプ102からの潤滑油の供給が停止されるとともに、ソレノイドバルブ110により脱圧管路106が開放され、バルブVtのピストンが元位置に復帰して次に備える。
【0005】
また、制御回路には、電動モータ101及びソレノイドバルブ110の電磁アクチュエータ113に強制的に通電して、潤滑油をバルブ配管路Rを通してバルブVtに供給することができるようにした手動のボタンスイッチ123が設けられている。これにより、例えば、バルブVtを配管して最初に潤滑油を供給するときや、メンテナンス時などに、バルブVt内やバルブ配管路R内に空気が溜まって、これを早急に排出して、潤滑油を管路内に満たしたいような場合に、ボタンスイッチ123を、繰り返し押釦すると、ポンプ102から潤滑油が頻繁に供給されて空気抜きが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-323196号公報
【文献】特開2016-84873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の潤滑ポンプ装置Jaにおいては、手動のボタンスイッチ123により、電動モータ101及びソレノイドバルブ110の電磁アクチュエータ113に強制的に通電し、潤滑油をバルブ配管路Rを通してバルブVtに頻繁に供給して空気抜きを行うことができるようにしているが、電磁アクチュエータ113への通電を頻繁に行う時間が長くなると、電磁アクチュエータ113が発熱し、その許容範囲を超えやすくなるという問題があった。
これを解決するために、電磁アクチュエータ113のコイルの抵抗値を大きくすることが考えられるが、そうすると、ロッドの吸引力が落ちてスプールの動作に支障を与えてしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、スプールの動作に支障を与えることなく、電磁アクチュエータへの通電を頻繁に行う時間が長くなっても電磁アクチュエータの発熱を許容範囲内に押さえることができるようにした潤滑ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するための本発明の潤滑ポンプ装置は、潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブが設けられるバルブ配管路に送給口から潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置において、
潤滑油を貯留する潤滑油貯留部と、該潤滑油貯留部から潤滑油を吸引して吐出するポンプと、該ポンプから吐出される潤滑油を逆止弁を介して送給口に供給する供給管路と、該供給管路及び上記潤滑油貯留部間に設けられ上記供給管路を通して上記バルブ配管路内を脱圧する脱圧管路と、進退動可能なスプールを有し該スプールの進退動により上記脱圧管路を開放し若しくは閉塞する切換弁と、進退動可能なロッドを有し非通電時に上記脱圧管路を開放し通電時に上記脱圧管路を閉塞するように上記切換弁のスプールを進退動させる電磁アクチュエータと、該電磁アクチュエータのロッドの進退動をその力を増加させて上記切換弁のスプールの進退動に変換するてこ機構とを備えた構成としている。
【0010】
これにより、電磁アクチュエータのロッドを進退動させると、てこ機構を介してスプールが進退動させられる。この場合、てこ機構は、ロッドの進退動力を増加させてスプールの進退動に変換するので、ロッドを進退動させる力が従来よりも低くなっても、スプールの力を大きくすることができることから、スプールの動作に支障を与えることを抑止できる。そして、ポンプが作動させられ電磁アクチュエータにより切換弁のスプールが移動させられて脱圧管路が閉塞されると、ポンプから潤滑油が供給管路に吐出され、潤滑油がバルブ配管路を通してバルブに供給される。一方、バルブに潤滑油が供給された後、ポンプが停止し電磁アクチュエータにより切換弁のスプールが移動させられて脱圧管路が開放されると、バルブ配管路が脱圧されるので、バルブが元位置に復帰して次に備える。
【0011】
また、例えば、バルブを配管して最初に潤滑油を供給するときや、メンテナンス時などに、バルブ内やバルブ配管路内に空気が溜まって、これを早急に排出して、潤滑油を管路内に満たしたいような場合に、電磁アクチュエータに対して頻繁に通電及び非通電を繰り返してスプールを動かし、ポンプから潤滑油を繰り返し供給して空気抜きを行う。この場合、電磁アクチュエータのロッドが進退動すると、スプールを進退動させるが、てこ機構は、ロッドの進退動力を増加させてスプールの進退動に変換するので、ロッドを進退動させる力が従来よりも低くなっても、スプールの力を大きくすることができることから、スプールの動作に支障を与えることを抑止できる。そのため、電磁アクチュエータのコイルの抵抗を大きくして、頻繁に通電が行われても発熱しにくくすることができるようになる。その結果、スプールの動作に支障を与えることなく、電磁アクチュエータへの通電を頻繁に行う時間が長くなっても電磁アクチュエータの発熱を許容範囲内に押さえることができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記てこ機構を、長手方向の途中部分が支点を構成する支点軸に軸支され該支点軸を中心に揺動可能に支持されるレバーを備えて構成し、該レバーの一端部を上記電磁アクチュエータのロッドの先端部に設けた力点を構成する力点軸に連係し、上記レバーの他端部を上記切換弁のスプールの先端部に設けた作用点を構成する作用点軸に連係し、上記支点及び力点間の距離aと上記支点及び作用点間の距離bとの関係を、1.8≦(a/b)にした構成としている。1を超えればそれなりの効果があるが、1.8以上で効果を確実に奏することができる。上限を設けると、1.8≦(a/b)≦4である。4を超えるとレバーが長くなり装置が大型化してしまう。望ましくは、2.0≦(a/b)≦3である。
【0013】
これにより、電磁アクチュエータのロッドが進退動すると、てこ機構のレバーが支点を中心に揺動し、スプールを進退動させるが、支点及び力点間の距離aと支点及び作用点間の距離bとの関係を、1.8≦(a/b)にしたので、ロッドの進退動力を確実に増加させてスプールの進退動に変換することができる。
【0014】
そして、必要に応じ、上記レバーの一端部に、該一端部の端面から該レバーの長手方向に沿って切欠かれ上記力点軸に対して移動可能に係合する一方係合溝を形成し、上記レバーの他端部に、該他端部の端面から該レバーの長手方向に沿って切欠かれ上記作用点軸に対して移動可能に係合する他方係合溝を形成した構成としている。
これにより、レバーの一端部の一方係合溝をロッドの力点軸に差し込むだけで連係させることができ、また、レバーの他端部の他方係合溝をスプールの作用点軸に差し込むだけで連係させることができるので、連係を容易にすることができ、組立を容易に行うことができるようになる。
【0015】
また、必要に応じ、上記切換弁を、上記脱圧管路に介装され、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記脱圧管路を開にし、上記スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時に上記脱圧管路を閉にする開閉弁で構成している。脱圧管路を単に開閉する開閉弁にしたので構造を極めて簡単にすることができる。
【0016】
この場合、必要に応じ、上記供給管路及び脱圧管路をブロック状の本体に形成し、上記切換弁を、上記本体に上記脱圧管路を横断して設けられ上記スプールが摺動可能に挿通されるシリンダ孔が形成されたシリンダを備えて構成し、該シリンダに、上記シリンダ孔の側部に開口し上記脱圧管路の上記供給管路側に連通する一方孔を形成するとともに、上記シリンダ孔の終端に開口し上記脱圧管路の上記潤滑油貯留部側に連通する他方孔を形成し、上記スプールの終端部に、該スプールの側面及び終端面間に開口し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか一方の時に上記一方孔に連通し、該スプールの進出時若しくは後退時のいずれか他方の時にシリンダ孔の壁面で塞がれる貫通孔を設けた構成としている。シリンダの構成が単純であり、構造を簡易化することができるとともに、シリンダの組付けも容易にすることができる。
【0017】
この場合、上記スプールの終端部に、該スプールの側面及び終端面間に開口し、該スプールの後退時に上記一方孔に連通し、該スプールの進出時にシリンダ孔の壁面で塞がれる貫通孔を設け、
上記電磁アクチュエータを、進退動可能なロッドを常時進出方向に付勢するコイルスプリングと、非通電時に上記ロッドを上記コイルスプリングの付勢力により進出させ通電時に上記ロッドを上記コイルスプリングの付勢力に抗して後退させる電磁駆動部とを備えて構成し、該電磁アクチュエータを、そのロッドの軸線と上記切換弁のスプールの軸線とが平行になるように上記切換弁に対して並設し、上記本体に取付け部材を介して取付けたことが有効である。電磁アクチュエータと切換弁とを並設できるようになるので、装置をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁アクチュエータのロッドが進退動すると、レバーが支点を中心に揺動し、スプールを進退動させるが、てこ機構は、ロッドの進退動力を増加させてスプールの進退動に変換するので、ロッドを進退動させる力が従来よりも低くなっても、スプールの力を大きくすることができることから、スプールの動作に支障を与えることを抑止できる。そのため、電磁アクチュエータのコイルの抵抗を大きくして、頻繁に通電が行われても発熱しにくくすることができるようになる。その結果、スプールの動作に支障を与えることなく、電磁アクチュエータへの通電を頻繁に行う時間が長くなっても電磁アクチュエータの発熱を許容範囲内に押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置の構成を示し、(a)は潤滑油を送給するバルブが設けられるバルブ配管路に接続した状態で示す配管図、(b)は制御回路図である。
図3】本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置のポンプ停止時の状態を示し、(a)は図1中A-A線要部断面図、(b)は図1中B-B線要部断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置のポンプ作動時の状態を示し、(a)は図1中A-A線相当要部断面図、(b)は図1中B-B線相当要部断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置の変形例を示す配管図である。
図6】従来の潤滑ポンプ装置の構成例を示し、(a)は潤滑油を送給するバルブが設けられるバルブ配管路に接続した状態で示す配管図、(b)は制御回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置を説明する。図1乃至図4に示す実施の形態に係る潤滑ポンプ装置Jは、流体としてのグリスやオイル等の潤滑油を送給するもので、例えば、図2(a)に示すように、樹脂あるいは金属の射出成形機等の機械に設置されたグリス潤滑システムSに用いられる。
この潤滑システムSにおいては、上述もしたように、潤滑油の加圧及び脱圧によって往復動させられて潤滑油を吐出する単一のピストン(図示せず)及びこのピストンに対応した1つの吐出口を備え1ショットの吐出量が0.03ml~1.5ml(0.03cc~1.5cc)程度の周知の単一定量バルブVtを用い、これらをバルブ配管路Rを介して該当する複数カ所に配管し、バルブ配管路Rに潤滑ポンプ装置Jの後述の送給口4から潤滑油を送給する。
【0021】
実施の形態に係る潤滑ポンプ装置Jは、図1乃至図4に示すように、潤滑油を貯留する潤滑油貯留部1と、潤滑油貯留部1から潤滑油を吸引して吐出するポンプ2と、ポンプ2から吐出される潤滑油を逆止弁3を介して送給口4に供給する供給管路5と、供給管路5及び潤滑油貯留部1間に設けられ供給管路5を通してバルブ配管路R内を脱圧する脱圧管路6と、進退動可能なスプール21を有し該スプール21の進退動により脱圧管路6を開放し若しくは閉塞する切換弁20と、進退動可能なロッド31を有し非通電時に脱圧管路6を開放し通電時に脱圧管路6を閉塞するように切換弁20のスプール21を進退動させる電磁アクチュエータ30とを備えて構成されている。
【0022】
ポンプ2は、ブロック状の本体10に設けられ、ピストン11及びシリンダ12を備えたプランジャ型の周知のポンプであり、ピストン11は電動モータ13によってカム機構(図示せず)を介して往復駆動される。また、供給管路5及び脱圧管路6は、ブロック状の本体10に形成されている。図中、符号14はポンプ2からの供給管路5と脱圧管路6との接続点、15は脱圧管路6の潤滑油貯留部1に至るコーナー部である。また、符号16は、供給管路5の空気を抜く空気抜きバルブ、17は供給管路5が所定圧力以上になったとき脱圧管路6の一部を経由して潤滑油を潤滑油貯留部1に戻すリリーフバルブである。
【0023】
切換弁20は、脱圧管路6に介装され、スプール21の進出時若しくは後退時のいずれか一方の時(実施の形態では後退時)に脱圧管路6を開にし、スプール21の進出時若しくは後退時のいずれか他方の時(実施の形態では進出時)に脱圧管路6を閉にする開閉弁で構成されている。脱圧管路6を単に開閉する開閉弁にしたので構造を極めて簡単にすることができる。
【0024】
詳しくは、切換弁20は、本体10に脱圧管路6を横断して設けられ、スプール21が摺動可能に挿通されるシリンダ孔23が形成されたシリンダ22を備えて構成されている。シリンダ22には、シリンダ孔23の側部に開口し脱圧管路6の供給管路5側に連通する一方孔24が形成されるとともに、シリンダ孔23の終端に開口し脱圧管路6の潤滑油貯留部1側に連通する他方孔25が形成されている。また、スプール21の終端部には、スプール21の側面及び終端面間に開口し、スプール21の進出時若しくは後退時のいずれか一方の時(実施の形態では後退時)に一方孔24に連通し、スプール21の進出時若しくは後退時のいずれか他方の時(実施の形態では進出時)にシリンダ孔23の壁面で塞がれる貫通孔26が設けられている。シリンダ22の構成が単純であり、構造を簡易化することができるとともに、シリンダ22の組付けも容易にすることができる。
【0025】
電磁アクチュエータ30は、進退動可能なロッド31を常時進出方向に付勢するコイルスプリング32と、非通電時にロッド31をコイルスプリング32の付勢力により進出させ通電時にロッド31をコイルスプリング32の付勢力に抗して後退させる電磁駆動部33とを備えて構成されている。そして、この電磁アクチュエータ30は、そのロッド31の軸線と切換弁20のスプール21の軸線とが平行になるように切換弁20に対して並設され、本体10に取付け部材34を介して取付けられている。電磁アクチュエータ30と切換弁20とを並設できるようになるので、装置をコンパクトにすることができる。
【0026】
そして、本潤滑ポンプ装置Jにおいては、電磁アクチュエータ30のロッド31の進退動をその力を増加させて切換弁20のスプール21の進退動に変換するてこ機構40が設けられている。
てこ機構40は、長手方向の途中部分が支点P1を構成する支点軸42に軸支され、この支点軸42を中心に揺動可能に支持されるレバー41を備えて構成されている。支点軸42は本体10に支持部材43を介して支持されている。そして、レバー41の一端部は、電磁アクチュエータ30のロッド31の先端部に設けた力点P2を構成する力点軸44に連係させられ、レバー41の他端部は、切換弁20のスプール21の先端部に設けた作用点P3を構成する作用点軸45に連係させられている。
【0027】
レバー41の一端部には、一端部の端面からレバー41の長手方向に沿って切欠かれ力点軸44に対して移動可能に係合する一方係合溝46が形成され、レバー41の他端部には、他端部の端面からレバー41の長手方向に沿って切欠かれ作用点軸45に対して移動可能に係合する他方係合溝47が形成されている。これにより、レバー41の一端部の一方係合溝46をロッド31の力点軸44に差し込むだけで連係させることができ、また、レバー41の他端部の他方係合溝47をスプール21の作用点軸45に差し込むだけで連係させることができるので、連係を容易にすることができ、組立を容易に行うことができるようになる。
【0028】
また、支点P1及び力点P2間の距離aと支点P1及び作用点P3間の距離bとの関係を、1.8≦(a/b)にしている。1を超えればそれなりの効果があるが、1.8以上で効果を確実に奏することができる。上限を設けると、1.8≦(a/b)≦4である。4を超えるとレバー41が長くなり装置が大型化してしまう。望ましくは、2.0≦(a/b)≦3である。実施の形態では、2.0=(a/b)にしている。例えば、a=23.6mm、b=11.8mmに設定している。これにより、ロッド31のストロークxとスプール21のストロークyとの関係も、2.0=(x/y)になる。
【0029】
図2(b)には、この潤滑ポンプ装置Jの制御回路を示す。電動モータ13及び電磁アクチュエータ30は、例えば、タイマ50により計時されてスイッチ51がオン,オフさせられ、間欠的に電源52から通電される。また、制御回路には、電動モータ13及び電磁アクチュエータ30に強制的に通電して、潤滑油をバルブ配管路Rを通してバルブVtに供給することができるようにした手動のボタンスイッチ53が設けられている。尚、電動モータ13及び電磁アクチュエータ30のオン,オフは、タイマ50に限らず、例えば、射出成形機などの機械側からの指令信号により行うようにしてもよく、適宜変更して差支えない。
【0030】
従って、実施の形態に係る潤滑ポンプ装置Jを用いた潤滑システムSによれば、通常は、タイマ50により間欠的に通電が行われ、非通電のときは、図3に示すように、ポンプ2が停止し、切換弁20のスプール21が後退位置にあって脱圧管路6を開放している。通電されると、図4に示すように、電動モータ13及び電磁アクチュエータ30がオンになり、電磁アクチュエータ30がロッド31を退出させ、てこ機構40を介してスプール21が前進させられる。この場合、てこ機構40においては、支点P1及び力点P2間の距離aと支点P1及び作用点P3間の距離bとの関係が、1.8≦(a/b)、実施の形態では、2=(a/b)にしているので、てこ機構40は、ロッド31の進退動力を増加させてスプール21の進退動に変換する。そのため、ロッド31を進退動させる力が従来よりも低くなっても、スプール21の力を大きくすることができることから、スプール21の動作に支障を与えることを抑止できる。これにより、脱圧管路6が閉塞され、ポンプ2から潤滑油が供給管路5に吐出され、潤滑油がバルブ配管路Rを通してバルブVtに供給される。
【0031】
一方、バルブVtに潤滑油が供給された後、非通電になると、電動モータ13及び電磁アクチュエータ30がオフになり、電磁アクチュエータ30のコイルスプリング32がロッド31を進出させ、てこ機構40を介してスプール21が後退させられる。これにより、脱圧管路6が開放され、バルブ配管路Rが脱圧されるので、バルブVtが元位置に復帰して次に備える。
【0032】
また、例えば、バルブVtを配管して最初に潤滑油を供給するときや、メンテナンス時などに、バルブVt内やバルブ配管路R内に空気が溜まって、これを早急に排出して、潤滑油を管路内に満たしたいような場合には、手動のボタンスイッチ53を繰り返し押して、電動モータ13及び電磁アクチュエータ30に対して強制的に通電,非通電を繰り返す。これにより、ポンプ2から潤滑油が頻繁に供給されるので、バルブVt内やバルブ配管路R内の空気抜きが行われる。
【0033】
この場合、電磁アクチュエータ30のロッド31が進退動し、スプール21が進退動するが、てこ機構40は、ロッド31の進退動力を増加させてスプール21の進退動に変換するので、ロッド31を進退動させる力が従来よりも低くなっても、スプール21の力を大きくすることができることから、スプール21の動作に支障を与えることを抑止できる。そのため、電磁アクチュエータ30のコイルの抵抗を大きくして、頻繁に通電が行われても発熱しにくくすることができるようになる。その結果、スプール21の動作に支障を与えることなく、電磁アクチュエータ30への通電を頻繁に行う時間が長くなっても電磁アクチュエータ30の発熱を許容範囲内に押さえることができる。
【0034】
図5には、本発明の実施の形態に係る潤滑ポンプ装置Jの変形例を示している。これは、切換弁20の構成が上記とは異なっている。この切換弁20は、上記の脱圧管路6に介装される開閉弁ではなく、供給管路5と脱圧管路6とを切換える3ポート切換弁になっており、電磁アクチュエータ30がオフのときであってスプール21が後退しているとき、脱圧管路6を開にするとともにポンプ2側の供給管路5を閉にし、電磁アクチュエータ30がオンしてスプール21が進出したとき、脱圧管路6を閉にするとともにポンプ2側の供給管路5を開にする。これによっても、上記と同様の作用,効果を奏する。
【実施例
【0035】
以下に実施例を示す。実施例においては、上記実施の形体の構造のもので、電磁アクチュエータを、吸引力が9N、通電率が100%のものにした。比較例として、吸引力が16N、通電率が25%の電磁アクチュエータを用いた従来装置を用い、発熱と動作の比較試験を行った。比較試験は、3分間オン,3分間オフの間欠運転を繰り返した。比較例では、電磁アクチュエータの発熱が許容範囲を超えたが、実施例においては、発熱は許容範囲内に押さえることができ、また、スプールを動作させる力も十分に確保でき、支障のない動作を確認できた。
【0036】
尚、上記実施の形態では、電磁アクチュエータ30を、非通電時にコイルスプリング32でロッド31を進出させ、通電時にロッド31を後退させるように構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、電磁アクチュエータ30を、通電により進出させ、非通電時にコイルスプリング32で後退させるように構成し、図3(a)においてレバー41の長手方向に対して鏡面対称に配置するようにしても良く、適宜変更して差支えない。また、上記実施の形態においては、切換弁20を、スプール21の後退時に脱圧管路6を開にし、スプール21の進出時に脱圧管路6を閉にするように構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、切換弁20を、スプール21の進出時に脱圧管路6を開にし、スプール21の後退時に脱圧管路6を閉にするように構成し、これに合わせて、電磁アクチュエータ30の構成や配置を変えて、てこ機構により、所要の動作ができるようにしてもよく、適宜変更して差支えない。
【0037】
また、実施の形態では、潤滑油としてグリスを用いた場合で説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、オイルの場合に適用しても良いことは勿論である。要するに、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
J 潤滑ポンプ装置
S 潤滑システム
Vt 定量バルブ
R バルブ配管路
1 潤滑油貯留部
2 ポンプ
3 逆止弁
4 送給口
5 供給管路
6 脱圧管路
10 本体
13 電動モータ
16 空気抜きバルブ
17 リリーフバルブ
20 切換弁
21 スプール
22 シリンダ
24 一方孔
25 他方孔
26 貫通孔
30 電磁アクチュエータ
31 ロッド
32 コイルスプリング
33 電磁駆動部
40 てこ機構
41 レバー
P1 支点
P2 力点
P3 作用点
42 支点軸
44 力点軸
45 作用点軸
46 一方係合溝
47 他方係合溝
a 支点P1及び力点P2間の距離
b 支点P1及び作用点P3間の距離
50 タイマ
51 スイッチ
52 電源
53 ボタンスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6