(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】防舷材構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20230308BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
E02B3/26 C
B63B59/02 J
E02B3/26 J
(21)【出願番号】P 2018211973
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2017217981
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月1日発行のカタログ「防舷材の長寿命化を提案 Vタイプ用 フェンダーカバー」にて公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月19日に掲載開始のウェブサイト(https://www.sbt.co.jp/topics/topics02/1534.html)(https://www.sbt.co.jp/seihin/kaiyo/01kowan/37f-cover/37f-cover.html)にて公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】池邉 将光
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 宗一朗
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-090139(JP,A)
【文献】実開昭51-031295(JP,U)
【文献】特開2003-096748(JP,A)
【文献】実公昭49-008315(JP,Y1)
【文献】特開昭59-210112(JP,A)
【文献】特開平08-301188(JP,A)
【文献】特開平11-036264(JP,A)
【文献】特開2000-309914(JP,A)
【文献】特開2009-150173(JP,A)
【文献】特開昭56-081704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
B63B 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁等に取り付けられる防舷材構造体であって、
弾性材料からなり、船舶の接舷時の衝撃を和らげるための受衝部を含む防舷材本体と、
弾性材料からなり、前記防舷材本体の前記受衝部の表面の少なくとも一部を覆う受衝部カバー体とを備え、
前記防舷材本体は、両端が開放された中空部を有し、
前記受衝部カバー体は、前記防舷材本体と前記受衝部カバー体とを固定するための固定部材を更に備え、
前記固定部材は、前記受衝部カバー体の一方側に設けられた紐状部材と、前記受衝部カバー体の他方側に設けられ、前記紐状部材を固定するための紐状部材固定具とからなり、
前記紐状部材が、前記中空部を介して前記受衝部の裏面側に配置され、前記紐状部材固定具によって固定されることにより、前記受衝部カバー体が前記防舷材本体に分離自在に取り付けられる、
防舷材構造体。
【請求項2】
前記受衝部カバー体の少なくとも一部は、前記受衝部の受衝面に対してずれる方向に相対移動可能である、請求項1記載の防舷材構造体。
【請求項3】
岸壁等に取り付けられる防舷材構造体であって、
弾性材料からなり、船舶の接舷時の衝撃を和らげるための受衝部を含む防舷材本体と、
弾性材料からなり、前記防舷材本体の前記受衝部の表面
である受衝面の少なくとも一部を覆う受衝部カバー体とを備え、
前記受衝部カバー体は、前記受衝面の少なくとも一部を覆うカバー本体部と、このカバー本体部に一体的に設けられ、シート状の形態を有し、その先端側領域が前記岸壁等に脱着自在に固定される支持部とを備える、
防舷材構造体。
【請求項4】
前記カバー本体部は、背面側を開放した台形状の断面形状を有している、請求項3記載の防舷材構造体。
【請求項5】
前記受衝部カバー体の前記防舷材本体の前記受衝部と接する面に複数の突起体を設けた、請求項1から請求項4のいずれかに記載の防舷材構造体。
【請求項6】
前記防舷材本体は、前記受衝部に少なくとも1つの凹又は凸形状の第1係合部を備えると共に、前記受衝部カバー体は、前記防舷材本体の前記受衝部と接する平面に少なくとも1つの凸又は凹形状の第2係合部とを更に備え、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、互いに係合するように配置される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の防舷材構造体。
【請求項7】
前記防舷材本体の前記受衝部と接する平面に平行な方向の力が前記受衝部カバー体に加わった時において、前記第1係合部を介して前記防舷材本体にせん断破壊を生じさせる第1の前記力は、前記第2係合部を介して前記受衝部カバー体にせん断破壊を生じさせる第2の前記力より大きく設定される、請求項6記載の防舷材構造体。
【請求項8】
前記受衝部カバー体は、前記防舷材本体の前記受衝部の全面を覆うと共に、水平方向の端部の少なくとも一方に対応する前記防舷材本体の側面部であって前記受衝部側の少なくとも一部を覆う保護部材を更に備えた、請求項1から請求項7のいずれかに記載の防舷材構造体。
【請求項9】
前記受衝部カバー体は、前記防舷材本体の前記受衝部の全面を覆うと共に、前記防舷材本体の長手方向の少なくとも一方の側面部における前記受衝部側の少なくとも一部を覆う保護部材を更に備えた、請求項1から請求項7のいずれかに記載の防舷材構造体。
【請求項10】
前記受衝部カバー体は、複数のカバーユニットから構成される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の防舷材構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防舷材構造体に関し、特に船舶が接舷する際に岸壁等に設置して用いられる防舷材構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防舷材の受衝部の表面(受衝面)を別の素材や別の部材で覆うことで、防舷材そのものを保護したり、接舷する船舶の汚れを防止したりする技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、漁港を明るいイメージに変え、且つ、薄暮から夜間の船舶の接舷や作業時の安全向上のために、ソリッド型ゴム製防舷材に着色可能な素材からなる受衝板を本体の受衝面の上部から被せて一体として構成された岸壁用カラー防舷材が開示されている。
【0004】
又、特許文献2では、ゴム防舷材の外面にそれぞれが異なる色を有する複数層からなる受衝部材を固定したことを特徴とする防舷材が開示されている。この受衝部材が摩耗によって露出している部分の色が変化することで、受衝部材の寿命が容易に分かるようになっている。
【0005】
更に、特許文献3では、ゴム防舷材の船舶と接触する頭部表面にゴムよりも摩擦係数の小さい合成樹脂層を設けた防舷材が開示されている。この防舷材は、ゴムからなる部分と船舶との接触を避けて防舷材の摩耗による劣化を防ぐと共に、頭部部分が座屈しにくいようになっている。
【0006】
更に、特許文献4では、防舷材の劣化を防ぐために、中空の緩衝部を有するゴム等の弾性体にて形成された防舷材の表面を被覆するゴム製又は合成樹脂製のカバーと、緩衝部の上下開口部に配設され板面に挿通孔を有しカバーをその上下部で脱着自在に固定するための固定部を有する板状の固定板と、緩衝部に挿入され挿通孔に挿通され固定板を固定する固定軸とを備えた構成を有する防舷材カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-301188号公報
【文献】特開2009-150173号公報
【文献】特開2000-309914号公報
【文献】特開2005-90139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1のような従来の岸壁用カラー防舷材は、防舷材本体と受衝板とを嵌合させるために、防舷材本体を所定形状に加工する必要がある。そのため、加工の手間が生じると共に既存の防舷材には容易に適用できないものであった。
【0009】
又、上記の特許文献2のような従来の防舷材では、ゴム防舷材と受衝部材とを一体化するのに受衝部材側からボルト等の固定部材で固定するものである。そのため、受衝部材の脱着に手間がかかるものであった。又、雌ねじを設けた鋼板又は合成樹脂板をゴム防舷材の内部に埋め込む必要があり、既存の防舷材に適用できないものであった。
【0010】
更に、上記の特許文献3のような従来の防舷材では、合成樹脂層はゴム防舷材部分と加硫工程を経て一体形成されているものであるため分離ができず、合成樹脂層が破損した場合は防舷材そのものを取り替える必要があった。
【0011】
更に、上記の特許文献4のような従来の防舷材カバーでは、防舷材カバーが複数の部材から構成されているため、その脱着に手間がかかるものであった。又、防舷材カバーを構成するカバー及び固定板を防舷材の形態に合わせて製作しなくてはならないため、防舷材カバーの汎用性が低かった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、手間なく防舷材本体を保護して防舷材本体の交換頻度を低減すると共に、既存の防舷材にも容易に適用できる防舷材構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、岸壁等に取り付けられる防舷材構造体であって、弾性材料からなり、船舶の接舷時の衝撃を和らげるための受衝部を含む防舷材本体と、弾性材料からなり、防舷材本体の受衝部の表面の少なくとも一部を覆う受衝部カバー体とを備え、防舷材本体は、両端が開放された中空部を有し、受衝部カバー体は、防舷材本体と受衝部カバー体とを固定するための固定部材を更に備え、固定部材は、受衝部カバー体の一方側に設けられた紐状部材と、受衝部カバー体の他方側に設けられ、紐状部材を固定するための紐状部材固定具とからなり、紐状部材が、中空部を介して受衝部の裏面側に配置され、紐状部材固定具によって固定されることにより、受衝部カバー体が防舷材本体に分離自在に取り付けられるものである。
【0014】
このように構成すると、受衝部カバー体が損傷した際には、受衝部カバー体のみを交換することができる。又、防舷材本体と受衝部カバー体とが不用意に分離しにくくなると共に、受衝部カバー体の脱着が容易となる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、受衝部カバー体の少なくとも一部は、受衝部の受衝面に対してずれる方向に相対移動可能であるものである。
【0016】
このように構成すると、防舷材構造体にある程度以上の大きな外力が作用すると、受衝部カバー体が受衝面に対してずれる方向へ相対移動する。
【0017】
請求項3記載の発明は、岸壁等に取り付けられる防舷材構造体であって、弾性材料からなり、船舶の接舷時の衝撃を和らげるための受衝部を含む防舷材本体と、弾性材料からなり、防舷材本体の受衝部の表面である受衝面の少なくとも一部を覆う受衝部カバー体とを備え、受衝部カバー体は、受衝面の少なくとも一部を覆うカバー本体部と、このカバー本体部に一体的に設けられ、シート状の形態を有し、その先端側領域が岸壁等に脱着自在に固定される支持部とを備えるものである。
【0018】
このように構成すると、支持部を岸壁に固定することにより、カバー本体部が受衝面の少なくとも一部を覆うように、受衝部カバー体を防舷材本体に取り付けることができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、カバー本体部は、背面側を開放した台形状の断面形状を有しているものである。
【0020】
このように構成すると、カバー本体部が、防舷材本体の受衝面側の一部を収納できる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、受衝部カバー体の防舷材本体の受衝部と接する面に複数の突起体を設けたものである。
【0022】
このように構成すると、防舷材本体と受衝部カバー体との間に発生する摩擦力が大きくなる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、防舷材本体は、受衝部に少なくとも1つの凹又は凸形状の第1係合部を備えると共に、受衝部カバー体は、防舷材本体の受衝部と接する平面に少なくとも1つの凸又は凹形状の第2係合部とを更に備え、第1係合部と第2係合部とは、互いに係合するように配置されるものである。
【0024】
このように構成すると、受衝部カバー体が、防舷材本体の受衝部と接する平面に平行な方向にかかる力に対する移動が抑えられる。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、防舷材本体の受衝部と接する平面に平行な方向の力が受衝部カバー体に加わった時において、第1係合部を介して防舷材本体にせん断破壊を生じさせる第1の力は、第2係合部を介して受衝部カバー体にせん断破壊を生じさせる第2の力より大きく設定されるものである。
【0026】
このように構成すると、平行な方向の力が増加すると、受衝部カバー体がまず破壊される。
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の構成において、受衝部カバー体は、防舷材本体の受衝部の全面を覆うと共に、水平方向の端部の少なくとも一方に対応する防舷材本体の側面部であって受衝部側の少なくとも一部を覆う保護部材を更に備えたものである。
【0028】
このように構成すると、防舷材本体の側面部のうち受衝部側の少なくとも一部が保護部材によって保護される。
【0029】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の構成において、受衝部カバー体は、防舷材本体の受衝部の全面を覆うと共に、防舷材本体の長手方向の少なくとも一方の側面部における受衝部側の少なくとも一部を覆う保護部材を更に備えたものである。
【0030】
このように構成すると、防舷材本体の長手方向の少なくとも一方の側面部における受衝部側の少なくとも一部が保護部材によって保護される。
【0031】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれかに記載の発明の構成において、受衝部カバー体は、複数のカバーユニットから構成されるものである。
【0032】
このように構成すると、カバーユニットの使用個数によって、構成される受衝部カバー体の大きさを変えることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、受衝部カバー体が損傷した際には、受衝部カバー体のみを交換することができるため、防舷材本体を長期間使用できると共に、防舷材構造体全体の交換頻度が低減する。又、防舷材本体と受衝部カバー体とが不用意に分離しにくくなると共に、受衝部カバー体の脱着が容易となるため、防舷材構造体の使用時の信頼性が向上すると共に、使い勝手がよくなる。
【0034】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、防舷材構造体に大きな外力、例えば防舷材本体にせん断破壊を生じさせ得る大きさの力が作用したときに、受衝部カバー体が受衝面に対してずれる方向へ相対移動することにより、防舷材本体が損傷するのを回避することができる。
【0035】
請求項3記載の発明は、受衝部カバー体が損傷した際には、受衝部カバー体のみを交換することができるため、防舷材本体を長期間使用できると共に、防舷材構造体全体の交換頻度が低減する。
【0036】
又、防舷材本体が中空部を持たなくても、受衝部カバー体を防舷材本体に取り付けることができる。
【0037】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、防舷材本体と受衝部カバー体との間に発生する摩擦力が大きくなるため、船舶の接舷時において防舷材本体と受衝部カバー体とがずれにくくなる。
【0038】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、受衝部カバー体が、防舷材本体の受衝部と接する平面に平行な向きにかかる力に対する移動が抑えられるため、防舷材本体と受衝部カバー体との嵌合状態が安定する。
【0039】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、平行な方向の力が増加すると、受衝部カバー体がまず破壊されるため、受衝部カバー体のみを交換すればよい。
【0040】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、防舷材本体の側面部のうち水平方向の端部の少なくとも一方に対応する受衝部側の少なくとも一部が保護部材によって保護されるため、船舶の接舷による防舷材本体の側面部の破損の虞を低減できる。
【0041】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、防舷材本体の側面部のうち長手方向の少なくとも一方の側面部の受衝部側の少なくとも一部が保護部材によって保護されるため、船舶の接舷による防舷材本体の側面部の破損の虞を低減できる。
【0042】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれかに記載の発明の効果に加えて、防舷材本体の大きさに応じてカバーユニットの使用個数を適宜選択することによって、長さの異なる防舷材本体に対しても、受衝面を受衝部カバー体で適切に覆うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による防舷材構造体の概略正面図である。
【
図2】
図1で示した防舷材構造体の概略右側面図である。
【
図3】
図1で示した防舷材構造体の概略平面図である。
【
図4】
図1で示したIV-IVラインから見た概略断面図である。
【
図5】
図1で示した防舷材構造体の防舷材本体の概略正面図である。
【
図6】
図5で示した防舷材本体の概略右側面図である。
【
図7】
図5で示した防舷材本体の概略平面図である。
【
図8】
図5で示したVIII-VIIIラインから見た概略断面図である。
【
図9】
図1で示した防舷材構造体の受衝部カバー体の概略正面図である。
【
図10】
図9で示した受衝部カバー体の概略背面図である。
【
図11】
図9で示した受衝部カバー体の概略右側面図である。
【
図12】
図9で示した受衝部カバー体の保護部材を外した状態の概略平面図である。
【
図13】
図9で示した受衝部カバー体の保護部材を外した状態の概略底面図である。
【
図14】
図10で示したXIV-XIVラインから見た概略断面図である。
【
図15】
図1で示した防舷材構造体の突起体の働きを示す概略模式図である。
【
図16】
図1で示した防舷材構造体の係合部の働きを模式的に示す概略図である。
【
図17】
図1で示した防舷材構造体の保護部材の働きを示す概略模式図である。
【
図18】この発明の第2の実施の形態による防舷材構造体を岸壁に取り付けた状態の斜視図である。
【
図20】
図18で示した防舷材構造体のXX-XXラインから見た断面図である。
【
図21】この発明の第3の実施の形態による防舷材構造体を岸壁に取り付けた状態の斜視図である。
【
図22】この発明の第4の実施の形態による防舷材構造体の斜視図である。
【
図24】
図22で示した防舷材構造体の水平方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、この発明の第1の実施の形態による防舷材構造体の概略正面図であり、
図2は、
図1で示した防舷材構造体の概略右側面図であり、
図3は、
図1で示した防舷材構造体の概略平面図であり、
図4は、
図1で示したIV-IVラインから見た概略断面図である。
【0045】
尚、この発明の防舷材構造体は、長手方向が鉛直方向及び水平方向のいずれにもなるように設置することができるものである。
【0046】
これらの図を参照して、防舷材構造体1は、ゴム等の弾性材料からなり、図示しない船舶の接舷時の衝撃を和らげるための受衝部13及び防舷材構造体1を図示しない岸壁に取り付けるための岸壁取付部19a、19bを含む防舷材本体11と、防舷材構造体1と同一のゴム等の弾性材料からなる受衝部カバー体41とから構成されている。この受衝部カバー体41は、防舷材本体11の受衝部13の表面14(受衝面)の全体を覆うように脱着自在に取り付けられている。この防舷材本体11及び受衝部カバー体41の詳細な構造等については後述する。防舷材構造体1は、岸壁取付部19a、19bを岸壁に配置し、ボルト取付穴20a~20d等を用いてアンカーボルト(図示せず)によって固定される。即ち、岸壁にアンカーボルトを埋設し、防舷材本体11のボルト取付穴20a~20dにこのアンカーボルトを挿通させ、これにナット(図示せず)を螺合させて締め付けることにより、防舷材構造体1を岸壁に固定することができる。
【0047】
防舷材構造体1に図示しない船舶が接舷する際には、防舷材本体11の受衝部13でその衝撃を吸収するが、受衝部13の表面14は受衝部カバー体41に覆われているため、船舶は防舷材本体11には直接接触しにくくなる。これにより、防舷材本体11よりも船舶と直接接触する頻度の高い受衝部カバー体41が先に損傷することが多い。その際には、上述のように、受衝体カバー体41は防舷材本体11に脱着自在に取り付けられているため、損傷した受衝部カバー体41のみを交換することができる。よって、防舷材本体11を長期間使用できると共に、防舷材構造体1全体の交換頻度が低減する。
【0048】
次に、防舷材本体11の具体的な構造について説明する。
【0049】
図5は、
図1で示した防舷材構造体の防舷材本体の概略正面図であり、
図6は、
図5で示した防舷材本体の概略右側面図であり、
図7は、
図5で示した防舷材本体の概略平面図であり、
図8は、
図5で示したVIII-VIIIラインから見た概略断面図である。
【0050】
これらの図を参照して、防舷材本体11は、長手方向に延びる平面視略V字形状であって、長手方向の両端部27a、27bが開放された中空部23を有している。
【0051】
又、防舷材本体11の受衝部13の短手方向の両端部28a、28bには、凹形状の窪みである4つの第1係合部55a~55dが設けられている。この第1係合部55a~55dの各々は、後述する受衝部カバー体に設けられている第2係合部と互いに係合するように配置されている。
【0052】
上記の各々のように構成した理由については後述する。
【0053】
続いて、受衝部カバー体41の具体的な構造について説明する。
【0054】
図9は、
図1で示した防舷材構造体の受衝部カバー体の概略正面図であり、
図10は、
図9で示した受衝部カバー体の概略背面図であり、
図11は、
図9で示した受衝部カバー体の概略右側面図であり、
図12は、
図9で示した受衝部カバー体の保護部材を外した状態の概略平面図であり、
図13は、
図9で示した受衝部カバー体の保護部材を外した状態の概略底面図であり、
図14は、
図10で示したXIV-XIVラインから見た概略断面図である。
【0055】
これらの図を参照して、受衝部カバー体41は、正面視略矩形形状且つ平面視略台形形状である。又、受衝部カバー体41の防舷材本体11の受衝部13と接する面である背面46には、
図5で示す防舷材本体11の受衝部13の周縁に合わせてくり抜かれている。即ち、背面46に凹部50が形成され、この凹部50内に、受衝部13の表面14側の一部を収納可能となっている。
【0056】
又、この受衝部カバー体41の背面46(凹部50の内表面)には、ゴム等からなる半球形状の突起体51が一定の間隔で複数設けられている。
【0057】
更に、受衝部カバー体41の背面46側の短手方向の両端部48a、48b(凹部50の長手方向に沿った内側面)には、
図5に示す第1係合部55a~55dの形状に対応する、凸形状の4つの第2係合部56a~56dが設けられている。この第2係合部56a~56dの各々は、上述したように、
図5に示す防舷材本体11に設けられている第1係合部55a~55dと互いに係合するものである。
【0058】
更に、防舷材構造体1が長手方向を水平方向にして設置される場合、受衝部カバー体41は、
図9及び
図11で示すように長手方向(水平方向)の両端部47a、47bに略かまぼこ形状の保護部材61a、61bを更に備えている。この保護部材61a、61bは、対応する防舷材本体11の側面部17a、17bのうち、受衝部13側の一部を覆うものである。
【0059】
上記の各々のように構成した理由については後述する。
【0060】
更に、この受衝部カバー体41の背面46側の長手方向の両端部49a、49bには、それぞれ受衝部カバー体41を防舷材本体11に固定するための固定部材65が取り付けられている。この固定部材65は、ゴム等からなる平らな紐状部材である帯66と、帯66を固定する紐状部材固定具であるバックル67とからなる。受衝部カバー体41の底面側には帯66の基端部が取り付けられており、上面側にはバックル67が取り付けられている。
【0061】
固定部材65を用いて受衝部カバー体41を防舷材本体11に固定するにあたっては、
図3及び
図4を再度参照して、帯66の先端部を防舷材本体11の中空部23内に、底面側の開口から上面側の開口に向かって挿通させ、これをバックル67に通して固定する。この際、帯66が防舷材本体11の受衝部13側の裏面15に沿うように引き締める。すると、帯66は、中空部23を介して受衝部13側の裏面に沿って配置される。
【0062】
こうすることで、防舷材本体11と受衝部カバー体41とが不用意に分離しにくくなるため、防舷材構造体1の使用時の信頼性が向上する。又、受衝部カバー体41を取り外す時には、バックル67から帯66を取り外せばよいので、受衝部カバー体41の脱着が容易となり、防舷材構造体1の使い勝手がよくなる。
【0063】
引き続き、防舷材構造体の防舷材本体や受衝部カバー体に設けられた突起体等の働きについて説明する。
【0064】
図15は、
図1で示した防舷材構造体の突起体の働きを示す概略模式図であって、(1)は、船舶が防舷材構造体に接舷する前の状態を示す図であり、(2)は、船舶が防舷材構造体に接舷すると共に水平方向に更に移動する状態を示す図である。
【0065】
図15の(1)を参照して、防舷材構造体1は、長手方向が水面に対して垂直になるように岸壁80に設置されているものである。船舶81が接舷していない場合には、防舷材本体11の受衝部13の表面14と受衝部カバー体41の背面46に形成された突起体51の先端が接している状態である。
【0066】
図15の(2)を参照して、防舷材構造体1に船舶81が接舷すると、受衝部カバー体41は防舷材本体11の受衝部13の表面14に押し付けられる。その際、防舷材本体11は、ゴム等の弾性材料から構成されているため、受衝部13の表面14が受衝部カバー体41の突起体51の表面形状に合わせて変形し、受衝部カバー体41と防舷材本体11とが接している部分の表面積が大きくなる。そのため、防舷材本体11と受衝部カバー体41との間に発生する摩擦力が大きくなる。すると、船舶81の接舷時にはその移動に合わせて矢印で示す水平方向の力F
1がかかる場合があるが、その際に防舷材本体11と受衝部カバー体41とがずれにくくなる。
【0067】
図16は、
図1で示した防舷材構造体の係合部の働きを模式的に示す概略図であって、(1)は、係合部にせん断力がどのように働くかを示すものであり、(2)は、平行な向きの力が受衝部カバー体に生じる第2せん断強度を超えるせん断力を発生させる場合を示すものである。尚、
図16では、理解を容易にするため、第1係合部55及び第2係合部56の形状を単純化すると共に、形成位置を中央部に変更している。
【0068】
図16の(1)を参照して、防舷材構造体1は、長手方向が水面に対して垂直になるように岸壁80に設置されているものである。防舷材本体11は、受衝部13の表面14に凹形状の窪みである第1係合部55を備えている。又、受衝部カバー体41は、防舷材本体11の受衝部13と接する平面である背面46に第1係合部55の窪みに対応するような凸形状の第2係合部56を備えている。この第1係合部55と第2係合部56とは、互いに係合するように配置されている。
【0069】
防舷材本体11に外力が作用した場合において、この外力における受衝面14と平行な方向の成分、即ち矢印で示す力F2が受衝部カバー体41に加わると、防舷材本体11の二点鎖線で示されたエリアA1と受衝部カバー体41の一点鎖線で示されているエリアA2とには各々せん断力がかかることになる。このせん断力の大きさは、力F2の大きさによって変化すると言える。エリアA1及びエリアA2にかかるせん断力に応じて、防舷材本体11や受衝部カバー体41に生じるせん断応力が、これらのせん断強度を超えた場合、防舷材本体11又は受衝部カバー体41はせん断破壊を起こすことになる。この実施の形態による防舷材本体11と受衝部カバー体41とは同一の素材であるため、防舷材本体11のせん断強度S1及び受衝部カバー体41のせん断強度S2は同一であると言える。
【0070】
ここで、防舷材構造体1は、力F2がかかった時における、第1係合部55を介して防舷材本体11にせん断破壊を生じさせる第1の力P1は、第2係合部56を介して受衝部カバー体41にせん断破壊を生じさせる第2の力P2より大きく設定されるものである。この設定は、例えばエリアA1の面積をエリアA2の面積に比べて十分大きくすることによって可能である。
【0071】
力F2が受衝部カバー体41にせん断破壊を生じさせない程度の第2の力P2未満の大きさで受衝部カバー体41にかかった場合には、第2係合部56と第1係合部55とは係合したままの状態となり、力F2に対する受衝部カバー体41の移動が抑えられるため、防舷材本体11と受衝部カバー体41との嵌合状態が安定する。
【0072】
次に
図16の(2)を参照して、力F
2がF
3まで大きくなると、それに合わせて、エリアA
1及びエリアA
2に作用するせん断力も大きくなる。すると、防舷材本体11や受衝部カバー体41にせん断強度S
1及びS
2を超えるせん断応力が発生することがある。その際には、上述したように第1の力P
1>第2の力P
2の関係であるため、力F
3が第2の力P
2を超えると、防舷材本体11より先に受衝部カバー体41がエリアA
2でせん断破壊を生じさせることにより、防舷材本体11は破損しにくくなる。よって、破壊された受衝部カバー体41のみを交換すればよくなる。
【0073】
反対に、第2の力P2が第1の力P1より大きく設定されていると仮定する。この場合、力F2がF3まで大きくなると、防舷材本体11のせん断強度S1を超えるせん断応力が発生することがある。その際には、第1の力P1<第2の力P2の関係から、受衝部カバー体41より先に防舷材本体11がエリアA1で破壊され、防舷材本体11が損傷することになる。
【0074】
図17は、
図1で示した防舷材構造体の保護部材の働きを示す概略模式図であって、(1)は、船舶が防舷材構造体に接舷する前の状態を示す図であり、(2)は、船舶が防舷材構造体の一方に偏って接舷した状態を示す図である。
【0075】
図17の(1)を参照して、防舷材構造体1は、長手方向が水面と平行になるように岸壁80に設置されているものである。このような状態の防舷材構造体1に船舶81が接舷する際、その接舷状態によっては防舷材構造体1の一部にのみ船舶81が接触することで、防舷材構造体1全体に均等に力がかからず、その一部のみに力がかかる場合がある。
【0076】
具体的には、
図17の(2)を参照して、受衝部カバー体41における水平方向の一方の端部47a側に力がかかった場合、防舷材構造体1は一方の端部47a側が他方の端部47b側に対して大きく変形する。もし仮に、保護部材61aがなければ、一点鎖線で示すように、船舶81は防舷材本体11の側面部17aに直接接触する虞がある。これに対し保護部材61aがあれば、船舶81は実線で示すように保護部材61aに先に接触することになる。これにより、防舷材本体11の側面部17aが保護部材61aによって保護されるため、船舶81の接舷によって防舷材本体11の側面部17aが破損する虞を低減できる。
【0077】
尚、上記の実施の形態では、受衝部カバー体は、防舷材本体の受衝部の表面の全体を覆うものであったが、受衝部の表面の少なくとも一部を覆うものであればよい。
【0078】
又、上記の実施の形態では、受衝部カバー体の裏面には複数の突起体が設けられる構成であったが、突起体はなくてもよい。
【0079】
又、上記の実施の形態では、受衝部カバー体の裏面に設けられた複数の突起体は半球形状のものであったが、別の形状のものであってもよい。
【0080】
更に、上記の実施の形態では、防舷材本体の受衝部に第1係合部と、受衝部カバー体の防舷材本体の受衝部と接する平面に第2係合部が設けられる構成であったが、この第1係合部及び第2係合部は設けなくてもよい。
【0081】
更に、上記の実施の形態では、防舷材本体の受衝部に4つの凹形状の第1係合部が設けられる共に、受衝部カバー体の防舷材本体の受衝部と接する平面に4つの凸形状の第2係合部が設けられる構成であったが、これに限らない。第1係合部及び第2係合部は互いに対応する位置に少なくとも1つずつ設けられていればよい。又、第1係合部を凸形状に、第2係合部を凹形状に形成してもよい。これらの場合であっても、防舷材本体の受衝部と接する平面に平行な方向の力が受衝部カバー体に加わった時において、第1係合部を介して防舷材本体にせん断破壊を生じさせる第1の力が、第2係合部を介して受衝部カバー体にせん断破壊を生じさせる第2の力より大きく設定されるものであれば、平行な向きの力が増加にした際にも、上記の実施の形態と同様に、受衝部カバー体がまず破壊される。これにより、防舷材本体の破損のおそれが低減し、受衝部カバー体のみを交換すればよいものとなる。
【0082】
更に、上記の実施の形態では、保護部材は受衝部カバー体の長手方向の両端部に設けられる構成であったが、長手方向の端部の少なくとも一方に設けられる構成であればよい。又、保護部材は設けなくてもよい。
【0083】
更に、上記の実施の形態では、保護部材は防舷材本体の側面部であって受衝部側の一部を覆うものであったが、防舷材本体の側面部の全面を覆う構成としてもよい。
【0084】
更に、上記の実施の形態では、固定部材の紐状部材(帯)と紐状部材固定具(バックル)とを備えるものであったが、固定部材はなくてもよい。
【0085】
更に、上記の実施の形態では、固定部材の紐状部材と紐状部材固定具とは帯とバックルとからなるものであったが、これに限らない。紐状部材が防舷材本体の中空部を介して受衝部側の裏面に配置され紐状部材固定具によって固定されるものであれば、例えばワイヤーとフック等といった他の部材を用いてもよい。又、紐状部材は、ゴムや樹脂によって被覆したり、ゴムや樹脂からなる筒状体によって覆ったりしてもよい。
【0086】
更に、上記の実施の形態では、固定部材の紐状部材と紐状部材固定具とが固定される位置は防舷材本体の中空部の一方の開口付近であったが、固定位置はこれに限らない。例えば、中空部の中央付近等、他の位置で固定する構成としてもよい。
【0087】
更に、上記の実施の形態では、防舷材本体は中空部を有するものであったが、中空部はなくてもよい。
【0088】
更に、上記の実施の形態では、防舷材本体は平面視略V字形状のものであったが、例えば円錐台形状等といった他の形状の防舷材にも同様に適用できる。
【0089】
更に、上記の実施の形態では、受衝部カバー体は正面視矩形形状且つ平面視略台形形状のものであったが、その他の形状であってもよい。
【0090】
更に、防舷材本体と受衝部カバー体との素材はゴムからなるものであったが、これに限らない。
【0091】
更に、上記の実施の形態では、受衝部カバー体の素材は、防舷材本体と同一のものを用いる構成であったが、異なる素材に置き替えたり、受衝部カバー体の表面に異なる素材を層のように追加したりする構成であってもよい。例えば、受衝部カバー体の表面を超高分子ポリエチレンで覆うようにしてもよい。この場合、超高分子ポリエチレンはゴム材料と比較して摩擦係数が低く、接舷時において船舶が受衝部カバー体の表面を滑りやすくなるため、船舶を傷つける虞が低減する。
【0092】
更に、上記の実施の形態では、新たな防舷材本体を前提としたものであったが、既存の防舷材本体にも同様に適用できる。
【0093】
尚、上記の実施の形態において、突起体や第1、第2係合部の有無にかかわらず、外力を受けたときに、受衝部カバー体が防舷材本体の受衝面に対してずれる方向へ相対移動するものとしてもよい。例えば、外力を受けた場合において、この外力における受衝面に平行な方向の成分が、防舷材本体にせん断破壊を生じさせる大きさを超えたときに、受衝部カバー体がずれる方向へ相対移動するように構成すればよい。これにより、過大な外力が作用したときに、受衝部カバー体が相対移動して外力の影響を緩和し、防舷材本体が損傷するのを回避することができる。
【0094】
図18は、この発明の第2の実施の形態による防舷材構造体を岸壁に取り付けた状態の斜視図であり、
図19は、
図18で示した防舷材構造体の分解斜視図であり、
図20は、
図18で示した防舷材構造体のXX-XXラインから見た断面図である。
【0095】
この実施の形態は、防舷材本体12が中空部を持たない場合でも、受衝部カバー体41を取り付けることを可能にしたものである。本例の防舷材構造体2にあっては、受衝部カバー体41が、防舷材本体12の受衝部13の表面(受衝面)14の少なくとも一部を覆うカバー本体部43と、このカバー本体部43に一体的に設けられ、岸壁80等に脱着自在に固定される支持部44とを備えるものである。これにより、支持部44を岸壁80等に固定することによって、カバー本体部43が受衝面14の少なくとも一部を覆うように、受衝部カバー体41を防舷材本体12に取り付けることが可能である。
【0096】
更に、この実施の形態では、受衝部カバー体41が複数の第1~5のカバーユニット42a~42eで構成される。第1~5のカバーユニット42a~42eは、ほぼ同一形態に形成されるので、これらの詳細な説明を、第1のカバーユニット42aについての説明で代表させる。
【0097】
第1のカバーユニット42aは、受衝面14上に重ね合わされるカバー本体部43と、カバー本体部43における防舷材本体12の長手方向に沿う両側部に一体的に設けられた一対の支持部44とを備える。
【0098】
カバー本体部43は、受衝面14側の一部を収納できるように背面側を開放した断面台形状に形成される。又、防舷材本体12が長手方向を鉛直方向とするように固定される場合、最上部に位置する第1のカバーユニット42aについては、カバー本体部43aに、防舷材本体12の上端側の側面部18の一部を覆う保護部62が設けられる。この保護部62は、第2~第5のカバーユニット42b~42eでは省略される。
【0099】
支持部44は、カバー本体部43から岸壁80側へ向かって伸びるシート状の形態を有し、その先端側領域に、後述するアンカーボルト30を挿通させるための開孔57が形成される。本例では、一方の支持部44につき2個の開孔57が形成される。更に本例では、支持部44の上に配置して、岸壁80への固定状態を確実化するための押さえ部材60a~60eが、第1~5のカバーユニット42a~42eの支持部44ごとに用いられる。各押さえ部材60a~60eにもアンカーボルト30を挿通させるための開孔58が形成される。
【0100】
防舷材構造体2を施工するには、
図19に示すように、防舷材本体12を岸壁80にアンカーボルト25とナット26とで固定したのち、この防舷材本体12を覆うように、第1~5のカバーユニット42a~42eを順に岸壁80に固定する。そのため、予め岸壁80における防舷材本体12の近傍に、第1~5のカバーユニット42a~42eの支持部44に形成した各開孔57の位置に合わせてアンカーボルト30を埋設しておく。そして先ず、最上部に位置させる第1のカバーユニット42aのカバー本体部43を受衝部13の上に重ねると共に、支持部44を、その開孔57にアンカーボルト30を挿通させて、岸壁80の表面に配置する。次いで、この支持部44の上に、押さえ部材60aをその開孔58にアンカーボルト30を挿通させて配置する。その後、アンカーボルト30にワッシャ31を介してナット32を螺合させ、これを締め付けることにより、第1のカバーユニット42aを固定する。
【0101】
続いて第2のカバーユニット42bを上記と同様の手順で、第1のカバーユニット42aに隣接するように、岸壁80に固定する。引き続き第3~第5のカバーユニット42c~42eも同様の手順にてそれぞれ隣接するように順に岸壁80に固定することにより、防舷材本体12の受衝面14全体を覆う受衝部カバー体41が構成される。
【0102】
このように本例の受衝部カバー体41は、支持部44を岸壁80に固定することによって、カバー本体部43が受衝面14の少なくとも一部を覆うように、防舷材本体12に取り付けることができるものであるため、中空部を持たない防舷材本体12に対しても取り付けが可能である。
【0103】
又、受衝部カバー体41を複数のカバーユニット42a~42eで構成したので、カバーユニットの使用個数によって構成される受衝部カバー体41の大きさを変更することができる。即ち、防舷材本体12の大きさに応じた適切な個数のカバーユニットを使用することによって、長さの異なる防舷材本体12であっても、受衝面14を適切に覆うことが可能となる。具体的には、
図18、19に示した防舷材本体12に対しては5つのカバーユニット42a~42eを使用したが、これより短い防舷材本体12に対してはカバーユニットの使用個数を4つ以下に減らせばよく、反対に長い場合は、6つ以上のカバーユニットを使用することで対処できる。
【0104】
尚、受衝部カバー体41は、防舷材本体12に対し相対移動が困難なように設けることも出来るが、外力を受けたときに、防舷材本体12の受衝面14に対してずれる方向へ相対移動することができるように構成してもよい。例えば、撓みを持たせて僅かに弛緩させた状態で支持部44を岸壁80へ固定することにより、受衝部カバー体41が外力を受けた場合に、カバー本体部43が受衝面14と平行な方向へ相対移動可能に構成することができる。このとき、受衝部カバー体41が相対移動する条件としては、例えば、作用した外力における受衝面14に平行な方向の成分が、防舷材本体12にせん断破壊を生じさせる大きさを超えた場合に設定することが考えられる。これにより、防舷材本体に過大な外力が作用したときに、受衝部カバー体41がずれる方向へ胴体移動することにより外力を緩和し、防舷材本体12が損傷するのを回避することができる。
【0105】
尚、支持部44を緊張させて緩みのない状態で岸壁80へ固定することにより、外力を受けても受衝部カバー体41が容易には相対移動しないように構成することもできる。
【0106】
図21は、この発明の第3の実施の形態による防舷材構造体を岸壁に取り付けた状態の斜視図である。
図21に示す防舷材構造体3は、受衝部カバー体41を、防舷材本体12の長さに合わせて製作して単一の部材としたものである。又、受衝部カバー体41を岸壁80へ固定する際に用いられる押さえ部材60についても、防舷材本体12の長さに合わせた長尺の部材としている。本例の防舷材構造体3は、前述のカバーユニットを用いる実施の形態と比較して構成要素の個数が少なくなるので、設置時の作業工数が減少し、施工性を向上させることができる。尚、長さの異なる防舷材本体12に対しては、長さの異なる受衝部カバー体41を用意することで対応すればよい。
【0107】
図22は、この発明の第4の実施の形態による防舷材構造体の斜視図であり、
図23は、
図22で示した防舷材構造体の分解斜視図であり、
図24は、
図22で示した防舷材構造体の水平方向の断面図である。
【0108】
これら
図22~24に示すように、この実施の形態は、円錐台状の形態を有する防舷材本体21に対して受衝部カバー体70を取り付けて、防舷材構造体4を構成したものである。
図23に示すように、本例の防舷材本体21は、先端側に円形の受衝面22を有し、基端側に全周にわたりフランジ状に形成された取付部24を有する。そして受衝部カバー体70は、このような防舷材本体21の形態に合わせて、浅い円錐台状のカバー本体部71と、その周縁部から突出するように設けられた複数本の支持部72で構成される。各支持部72の先端側には、後述するアンカーボルトを挿通させるための開孔73が形成される。
【0109】
上記の受衝部カバー体70の取り付けは、第2、第3の実施の形態と同様の手順で行われる。即ち、防舷材本体21を岸壁80にアンカーボルト25とナット26とで固定したのち、予め岸壁80における防舷材本体21の近傍に、受衝部カバー体70の支持部72に形成した各開孔73の位置に合わせてアンカーボルト30を埋設しておく。次いで、受衝部カバー体70のカバー本体部71を受衝面22の上に重ねると共に、支持部72を、その開孔73にアンカーボルト30を挿通させて、岸壁80の表面に配置する。そして、このアンカーボルト30にワッシャ31を介してナット32を螺合させ、これを締め付けることにより、受衝部カバー体70を、防舷材本体21を覆うように、岸壁80に固定することができる。
【0110】
尚、上記の第2~第4の実施の形態において、受衝部カバー体は、防舷材本体の受衝面の全体を覆うものであったが、受衝面の少なくとも一部を覆うものであればよい。
【0111】
更に、上記の第3、第4の実施の形態においても、防舷材構造体が外力を受けたときに、受衝部カバー体が防舷材本体の受衝面に対してずれる方向へ相対移動するものとしてもよい。例えば、外力を受けた場合において、この外力における受衝面に平行な方向の成分が、防舷材本体にせん断破壊を生じさせる大きさを超えたときに、受衝部カバー体が防舷材本体に対してずれる方向へ相対移動するように構成することができる。
【0112】
更に、上記の第2~第4の実施の形態において、受衝部カバー体の裏面に複数の突起体を設けてもよい。この場合、突起体は半球形状のものでもよく、別の形状であってもよい。
【0113】
更に、上記の第2~第4の実施の形態において、防舷材本体の受衝部に第1係合部を設け、受衝部カバー体に第2係合部を設ける構成としてもよい。この場合、第1係合部及び第2係合部は、一方を凹形状、他方を凸形状に形成してもよい。第1係合部及び第2係合部の個数は、例えば4つずつでもよいが、少なくとも1つずつ設けられていればよい。第1係合部及び第2係合部は、受衝面に平行な方向の力が受衝部カバー体に加わった時に、防舷材本体にせん断破壊を生じさせる前に、受衝部カバー体の第2係合部がせん断破壊されるように設定してもよい。これにより、防舷材本体の破損のおそれが低減する。
【0114】
更に、上記の第2、第3の実施の形態において、受衝部カバー体の長手方向の両端部、又は長手方向の端部の少なくとも一方に、保護部材を設けてもよい。この場合、保護部材は、防舷材本体の側面部であって受衝部側の一部又は側面部の全面を覆う構成としてもよい。
【0115】
更に、上記の第2、第3の実施の形態において、受衝部カバー体の長手方向の端部の少なくとも一方に設けられる保護部を肉厚に形成して、耐摩耗性を向上させてもよい。この場合、保護部は、第1の実施の形態の保護部材のような形態としてもよい。
【0116】
更に、上記の第2、第3の実施の形態では、受衝部カバー体は正面視矩形形状且つ平面視略台形形状のものであったが、その他の形状であってもよい。
【0117】
更に、上記の第2~第4の実施の形態において、防舷材本体及び受衝部カバー体はゴムからなるものであったが、これに限らない。又、受衝部カバー体及び防舷材本体は、同一の素材でも、異なるものでもよい。
【0118】
更に、上記の第2~第4の実施の形態において、受衝部カバー体の表面に異なる素材を層状に付加する構成であってもよい。例えば、受衝部カバー体の表面を超高分子ポリエチレン層で被覆するように構成してもよい。超高分子ポリエチレンはゴム材料と比較して摩擦係数が低く、接舷時において船舶が受衝部カバー体の表面を滑りやすくなるため、これで被覆すると、船舶を傷つける虞が低減する。
【0119】
更に、上記の第2~第4の実施の形態は、新たな防舷材本体を前提とするものでもよいが、既存の防舷材本体にも同様に適用することができる。
【0120】
更に、上記の第2、3の実施形態において、防舷材本体は、中空部を有するものであってもよく、断面V字形であってもよい。この場合、紐状部材と紐状部材固定具とからなる固定部材を更に備えてもよい。固定部材は、帯とバックルとからなるもののほか、例えばワイヤーとフック等とで構成してもよい。紐状部材は、ゴムや樹脂によって被覆した筒状体や、ゴムや樹脂からなる筒状体によって覆ったりしてもよい。固定部材の紐状部材と紐状部材固定具とが固定される位置は、防舷材本体の中空部の一方の開口付近のほか、中空部の中央付近等、他の位置としてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1、2、3、4…防舷材構造体
11、12…防舷材本体
13…受衝部
14…表面(受衝面)
15…裏面
17a、17b…側面部
18…側面部
19a、19b…岸壁取付部
20a、20b、20c、20d…ボルト取付孔
21…防舷材本体
22…受衝面
23…中空部
24…取付部
25…アンカーボルト
26…ナット
27a、27b…長手方向の端部
28a、28b…短手方向の端部
30…アンカーボルト
31…ワッシャ
32…ナット
41…受衝部カバー体
42a~42e…第1~第5のカバーユニット
43…カバー本体部
44…支持部
45…表面
46…背面
47a、47b…長手方向の端部(表面側)
48a、48b…短手方向の端部(表面側)
49a、49b…長手方向の端部(背面側)
50…凹部
51…突起体
55、55a~55d…第1係合部
56、56a~56d…第2係合部
57…開孔
58…開孔
60、60a~60e…押さえ部材
61a、61b…保護部材
62…保護部
65…固定部材
66…帯(紐状部材)
67…バックル(紐状部材固定具)
70…受衝部カバー体
71…カバー本体部
72…支持部
73…開孔
80…岸壁
81…船舶
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。