(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】サッシュモールの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20230308BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B60R13/04 B
B60J5/04 M
(21)【出願番号】P 2019045314
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000240949
【氏名又は名称】片山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】沖 真吾
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208664(JP,A)
【文献】実開昭62-156061(JP,U)
【文献】特開2002-283933(JP,A)
【文献】実開平02-049647(JP,U)
【文献】実開昭61-025249(JP,U)
【文献】特開2006-213184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアサッシュにおけるサッシュ本体へのサッシュモールの取付構造であって、
前記サッシュ本体は車外側に断面略T字形状のフランジ部を有し、
前記サッシュモールは前記フランジ部の一方の端部側の第1被係止部
の裏面側に係止する
折返し形状の第1係止部と、
前記フランジ部の他方の端部側の第2被係止部
の裏面側に係止する
折返し形状の第2係止部とを有し、
前記サッシュモールの裏面部には相対的に第1係止部側に設けたリブと第2係止部側に設けたリップとを
有し、
前記リブ及びリップは前記サッシュモールの裏面側と対向する前記フランジ部の表面に当接するものであり、相対的に前記リブは第1被係止部側に当接し、前記リップは第2被係止部側に弾性変形圧接することで、前記リップの弾性変形圧接にて前記サッシュモールとフランジ部との間の寸法バラツキを吸収しながら前記サッシュモールを前記リブとリップとの2ヶ所で支持してあることを特徴とするサッシュモールの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを形成するためのドアサッシュのサッシュ本体に装着されるサッシュモールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の側部に設けたフロントドアやリアドアは、ドアパネルとこのドアパネルの上部に窓部を形成するためのドアサッシュが設けられている。
ドアサッシュは、車外面を形成する意匠部をこのドアサッシュに一体的に形成したものもあるが、ドアサッシュのサッシュ本体に断面略T字形状のフランジ部を形成し、このフランジ部に装飾や保護効果を目的にサッシュモールが装着されているものがある。
その場合に、自動車の走行中にガタつきや異音が発生しないように、サッシュモールの装着安定性が要求される。
【0003】
例えば特許文献1には、サッシュモールの裏面部にサッシュ本体側に圧接状態で支持される押圧支持部を設けた取付構造を開示する。
しかし、同公報に開示する押圧支持部は、フランジ部の裏面側に延在する中央側の接続部の上下に跨がるように配置された帯状の形状を有しているために、サッシュモールのガタつきを充分に吸収できるものではない。
また、この押圧支持部はサッシュモールに後付けで貼り付けられたものであり、組付工数が多くなる。
さらに、この押圧支持部は、本体部の嵌合部よりも低硬度であり、一体的な押出成形でもなく生産性に劣り、帯状であるため、材料使用量も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サッシュモールのサッシュ本体への取付作業性及び、その取付安定性に優れたサッシュモールの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るサッシュモールの取付構造は、ドアサッシュにおけるサッシュ本体へのサッシュモールの取付構造であって、前記サッシュ本体は車外側に断面略T字形状のフランジ部を有し、前記サッシュモールは前記フランジ部の一方の端部側の第1被係止部に係止する第1係止部と、前記フランジ部の他方の端部側の第2被係止部に係止する第2係止部とを有し、前記サッシュモールの裏面部には相対的に第1係止部側に設けたリブと第2係止部側に設けたリップとを有することを特徴とする。
ここで、リブ及びリップは前記サッシュモールの裏面側と対向する前記フランジ部の表面に当接するものであり、相対的に前記リブは第1被係止部側に当接し、前記リップは第2被係止部側に弾性変形圧接するものであるのが好ましい。
また、サッシュモールの第1係止部及び第2係止部は前記サッシュ本体のフランジ部の両端部の裏面側にそれぞれ係止する折返し形状になっているのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るサッシュモールの取付構造にあっては、ドアサッシュのサッシュ本体のフランジ部にサッシュモールの第1及び第2係止部にて、このサッシュモールが嵌合装着されるとともに、サッシュモールの裏面側をリブとリップとの2ヶ所でフランジ部の表面側に支持させたので、取付安定性に優れる。
特に2ヶ所での支持のうち、リップは弾性変形するように、いわゆるラップ代を設けた状態で圧接するように設計されているので、サッシュモールの裏面部とフランジ部の表面部との間の寸法バラツキを吸収するのが容易である。
【0008】
また、サッシュモールをサッシュ本体に取り付ける作業時には、サッシュモールの第1係止部をフランジ部側の第1被係止部に係止させ、これを回転起点にしてサッシュモールの他方の第2係止部を、フランジ部の他方の第2被係止部側に向けて回転させるように取り付けると、まず先にリブがフランジ部に当接し、さらにサッシュモールを回転させると、リップの先端部がフランジ部に当接しながら折返し弾性変形し、そのまま第2係止部をフランジ部の第2被係止部に係止させることができるので、サッシュモールの組付(取付)作業が容易である。
特許文献1に開示する押圧支持部は、本体部の嵌合部よりも硬度の低い材料を使用しているのに対して、本発明においては嵌合部となる係止部の材料と、リブやリップの材料を同じ材料にすることもでき、押出にて一体成形もしやすい。
また、リップにしたことにより、組付けバラツキの吸収が容易であり、材料使用量も少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るサッシュモールの取付構造例を示し、(a)はサッシュモールの第1係止部をサッシュ本体の第1被係止部に係止した状態を示し、(b)はサッシュモールを回転させるようにしてサッシュ本体に取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るサッシュモールの取付構造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0011】
図2にドアサッシュの例を示し、そのA-A線断面図であって、そのフランジ部側を部分的に図示したのが
図1である。
サッシュ本体20は全体図を省略したが、金属製の板材をロール成形することで、車室内側の袋状部と車外側のフランジ部21をT字形状にフレーム部(接続部)22でつないだフレーム構造になっている。
フランジ部21の一方の端部は、板材を折り曲げて形成した第1被係止部21aになっていて、他方の端部は第2被係止部21bになっている。
これに対してサッシュモール10は、全体として略Cチャンネル形状の断面形状になっていて、車外側の意匠面を形成する本体部11と、その一方の端部を裏面側(車室内側)に折り返した第1係止部12と、その他方の端部を裏面側に折り返した第2係止部13を有している。
【0012】
本実施例では、SUS材等からなる本体部11の両縁部を裏面側に折り返して、第1係止部12と第2係止部の芯金部(第1芯金部11a,第2芯金部11b)を形成し、この部分に樹脂材を被覆するように一体成形した例になっている。
第1係止部12は、第1芯金部11aを被覆するとともに、そのままサッシュモール10の裏面側に一体的に延在成形した樹脂材からなるリブ14を形成してある。
第2係止部13は、第2芯金部11bを被覆するとともに、サッシュモール10の裏面側に一体的に延在成形したリップ15を形成してある。
リップ15は、軟質樹脂材からなり、リップ15の長さがフランジ部21の表面部に当接する寸法に対して折れ曲がるようにラップするように設定されている。
よって、リブ14とリップ15とを比較すると、リブ14は必ずしも弾性を有する必要はないが、リップ15は軟質で弾性変形しやすいようになっている。
【0013】
サッシュモール10のサッシュ本体20への組付けの流れを説明する。
図1(a)に示すように、サッシュモール10の一方の第1係止部12をフランジ部21側の一方の第1被係止部21aの裏面側に嵌着させるように係止させる。
次に、サッシュモール10の第2係止部13をフランジ部の他方の第2被係止部21b側に向けて回転させる。
この際に、第1係止部12側を回転起点としてサッシュモール10が回動し、リブ14がフランジ部21の表面部に当接する。
さらに、サッシュモール10を回動させると、リップ15の先端部がフランジ部21の表面部に当接するが、リップ15が変形することで、さらに第2係止部13がフランジ部の第2被係止部21bの裏面側に廻り込み、嵌着係止される。
これによりサッシュモール10は、リブ14と両側の第1及び第2係止部12,13にて、フランジ部21に弾性嵌着されるとともに、リップ15の弾性変形にてサッシュモール10とフランジ部21との間の寸法バラツキを吸収しながら、サッシュモールをリブ14とリップ15との2ヶ所で支持するので、サッシュモールの取付安定性に優れるとともに、取付け作業が容易になる。
【0014】
本発明に係るサッシュモール10は、上記のように取り付けることからリブ14の位置は、フランジ部21の中央部側裏面に位置するフレーム部22の位置よりも第1被係止部21a側よりに位置するのが好ましい。
また、リップ15の位置は、リブとは逆にフレーム部22の位置よりも第2被係止部21b側よりに位置するのが好ましい。
【符号の説明】
【0015】
10 サッシュモール
11 本体部
12 第1係止部
13 第2係止部
14 リブ
15 リップ
20 サッシュ本体
21 フランジ部
21a 第1被係止部
21b 第2被係止部
22 フレーム部