(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】作業用ステップおよび支柱
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20230308BHJP
E06C 9/04 20060101ALI20230308BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
E01F7/04
E06C9/04
E04G3/24 302D
(21)【出願番号】P 2019123325
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】511245994
【氏名又は名称】小田鐵網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】権田 直己
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246691(JP,A)
【文献】実開昭61-020896(JP,U)
【文献】特開昭60-040492(JP,A)
【文献】特開2009-041339(JP,A)
【文献】特開2002-242422(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004904(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0240935(US,A1)
【文献】米国特許第6305497(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
E06C 9/04
E04G 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に落石防護網を張架する支柱に着脱自在に取り付けられる作業用ステップであって、
ステップ部材と、前記ステップ部材を支柱壁に掛止するフック部材とを備え、
前記フック部材は、底部と起きあがり部を有するように曲折され、
前記ステップ部材は、前記フック部材の底部に固定され
、
前記フック部材は、前記ステップ部材の長手方向中央部に設けられ、前記ステップ部材の両端部は、前記支柱から両側方向に突出することを特徴とする作業用ステップ。
【請求項2】
前記作業用ステップを支柱に取り付けた状態において、前記ステップ部材の少なくとも一部が前記支柱壁の表面側に配置され、前記起き上がり部の少なくとも一部が前記支柱壁の裏面側に配置される請求項1に記載の作業用ステップ。
【請求項3】
前記支柱壁の表面側に配置されるステップ部材の一部と、前記支柱壁の裏面側に配置される起き上がり部の一部とは、前記支柱壁の厚みを受け入れる空隙を介して配置される請求項1または2に記載の作業用ステップ。
【請求項4】
法面に落石防護網を張架する支柱であって、
支柱壁に、請求項1~3の何れか一項に記載のフック部材を掛止する掛止部を設けたことを特徴とする支柱。
【請求項5】
前記支柱は、H鋼であり、
前記掛止部が、前記H鋼のフランジに水平に形成されたスリットを含む、請求項4に記載の支柱。
【請求項6】
前記支柱は、H鋼であり、
前記掛止部が、前記H鋼のフランジに開口した掛止穴を含む、請求項4に記載の支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面に落石防護網を張架する支柱に着脱自在に取り付けられる作業用ステップおよびその取付用の支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、落石の危険のある切取法面や山腹の岩石を落石防護網で覆い、道路の災害を防止するための工事が実施されている。法面に落石防護網を設置する場合、
図8,9に示すように、法面に支柱を設置し、支柱の頂上部に防護網を取り付ける作業が生ずる。その際、支柱の頂上部に作業員の手が届くように、支柱に幾ステップかの足場を設ける必要がある。このとき、
図10に示すように、支柱1にロープ状の部材52を用いて足場となる丸太材51を括り付ける方法が広く周知されている。その他、特許文献1には、角材1を一対のクランプ部材6a,7aで挟持することにより、角材1に梯子型仮設足場2aを取り付ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や従来技術によれば、足場の取り付けに手間がかかるという問題があった。特に、従来技術の場合、数本の丸太材51を括り付ける作業だけで、支柱1本につき約20~30分程度の時間がかかり、全ての支柱の準備が整うまでに一日費やしてしまう場合もあった。また、作業中に括り付けた丸太材51がずり下がるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、容易に着脱でき、かつ、取り付け位置で保持できる作業用ステップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような作業用ステップおよび支柱を提供する。
(1)法面に落石防護網を張架する支柱に着脱自在に取り付けられる作業用ステップであって、ステップ部材と、ステップ部材を支柱壁に掛止するフック部材とを備え、フック部材は、底部と起きあがり部を有するように曲折され、ステップ部材は、フック部材の底部に固定されていることを特徴とする作業用ステップ。
【0007】
(2)作業用ステップを支柱に取り付けた状態において、ステップ部材の少なくとも一部が支柱壁の表面側に配置され、起き上がり部の少なくとも一部が支柱壁の裏面側に配置される上記(1)に記載の作業用ステップ。
【0008】
(3)支柱壁の表面側に配置されるステップ部材の一部と、支柱壁の裏面側に配置される起き上がり部の一部とは、支柱壁の厚みを受け入れる空隙を介して配置される上記(2)に記載の作業用ステップ。
【0009】
(4)法面に落石防護網を張架する支柱であって、支柱壁に、上記(1)~(3)の何れか一つに記載のフック部材を掛止する掛止部を設けたことを特徴とする支柱。
【0010】
(5)支柱は、H鋼であり、掛止部が、H鋼のフランジに形成されたスリットを含む、上記(4)に記載の支柱。
【0011】
(6)支柱は、H鋼であり、掛止部が、H鋼のフランジに開口した掛止穴を含む、上記(5)に記載の支柱。
【発明の効果】
【0012】
本発明の作業用ステップおよび支柱によれば、支柱壁に設けた掛止部にフック部材を掛けるだけで作業用ステップを取り付け可能であるため、一瞬で足場を着脱できるとともに、作業用ステップのずり下がりも防止できるという格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の作業用ステップおよび支柱の一実施形態を示す概要図である。
【
図2】
図1の作業用ステップを着脱した支柱を、(a)法面方向、(b)側面方向から見た概要図である。
【
図3】作業用ステップの(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図である。
【
図4】作業用ステップの(a)左側面図、(b)AA断面図、(c)背面上方向から見下ろした斜視図である。
【
図5】支柱の掛止部の(a1)法面方向から見た正面図、(a2)BB断面図、(a3)CC断面図、(b1)法面方向から見た正面図、(b2)BB断面図、(b3)CC断面図である。
【
図6】作業用ステップを取り付ける動作を説明する説明図である。
【
図7】作業用ステップを取り付けた状態の支柱の掛止部と作業用ステップの配置関係を示す左側面図である。
【
図8】従来の作業用ステップの使用状態を示す図である。
【
図9】従来の作業用ステップの使用状態を示す図である。
【
図10】従来の作業用ステップを取り付けた支柱を法面方向から見た概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。説明中のサイズ表記は、好ましい数値を例示するものであり、状況に応じて適宜サイズ変更できるものとする。
図1に示すように、本発明の作業用ステップ2は、法面Gに落石防護網Nを張架する支柱1に取り付けられるものである。H形鋼よりなる支柱1は、法面G側に配置されるフランジ11に、作業用ステップ2を取り付ける掛止部12(
図2参照)が形成されている。なお、設置時に向きを変える手間を省くため、H鋼の両方のフランジ11に掛止部12を設けても良い。
【0015】
図2に示すように、作業用ステップ2は、作業目的に応じて都合の良い掛止部12に自在に着脱することができる。作業用ステップ2は、例えば、支柱1を昇降するための昇降ステップや、支柱1の様々な高度で落石防護網Nの取り付けおよびメンテナンスを実施するための作業台として用いることができる。
【0016】
図3,4に示すように、作業用ステップ2は、支柱1に水平に取り付けられるステップ部材21と、ステップ部材21を支柱壁としてのフランジ11に形成された掛止部12に掛止するフック部材22を備える。ステップ部材21は、断面矩形枠状の棒材からなり、中心部が空洞に形成されている。また、ステップ部材21は、支柱1に掛止した状態において両端部が支柱1から両側方に各約10cm程度突出し、作業者は、該突出部の天面21aに足を乗せることができる。フック部材22は、直径約9mm程度の断面略正円形の棒状部材からなる。また、フック部材22は、底部23と起き上がり部24を備えた略L字形状に曲折され、底部23は、ステップ部材21の天面21aに固定されている。
【0017】
図5に示すように、掛止部12は、支柱1のフランジ11に、ウエブ15を軸とする軸対称に形成されている。このとき、
図5(a1)~(a3)に示すように、掛止部12をフック部材22の断面形状と相似形の略正円形の掛止穴13とすることも、
図5(b1)~(b3)に示すように、掛止部12をフランジ11の側方から支柱1の長手方向中心軸に向かう水平なスリット14として設けることも可能である。なお、フック部材22の横断面を直径約9mm程度とし、当該フック部材22の曲折部25をスムーズに挿通させるために、掛止穴13を直径約12mm、あるいは、スリット14を約12mm幅に設けることが好ましい。
【0018】
次に、作業用ステップ2を支柱1に取り付ける動作について
図6に基づいて説明する。まず、
図6(a)のように、フック部材22をフランジ11面と垂直に配置し起き上がり部24を掛止部12に挿通させる。次に、
図6(b)のように、底部23と起き上がり部24との間に形成される曲折部25を、曲折部25の曲率中心周りで回転させながら掛止部12に挿通し、
図6(c)のように、フック部材22の起き上がり部24をフランジ11の裏面11bに沿うように配置して、作業用ステップ2を取り付ける。このとき、曲折部25は、外周縁25aが曲線を描くように曲折されていることが好ましい。
【0019】
図7に示すように、支柱1と支柱1に取り付けた作業用ステップ2との配置関係は、ステップ部材21の少なくとも一部である側面21bがフランジ11の表面11aの側に配置されるとともに、起き上がり部24の少なくとも一部がフランジ11の裏面11bの側に配置される状態となる。また、このとき、側面21bと起き上がり部24とは、フランジ11の厚みd1を受け入れる空隙d2を介して配置される。様々な厚みd1を許容できるよう、側面21bと起き上がり部24の距離、つまり、空隙d2を大きく設けることも好適である。
【0020】
以上の構成の作業用ステップ2および支柱1によれば、ステップ部材21とフック部材22から構成された作業用ステップ2を支柱1の掛止部12に掛止することで、手軽に作業用ステップ2を取り付けることができるため、落石防護網Nの設置作業やメンテナンス作業の工数を抑えることが可能である。また、支柱1が傾斜状態で設けられている場合には、作業用ステップ2の自重によって側面21bがフランジ11の表面11aに当接し、より取り付け状態が安定する。さらに、落石防護網Nの取り付け中またはメンテナンス中に、作業用ステップ2を着脱して容易に使い回すことも可能である。
【0021】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、下記(1)~(3)のように各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)フック部材22を、断面多角形の棒状部材とする。
(2)フック部材22を、略L字形状ではなく半円形状に形成する。
(3)ステップ部材21を断面円形枠状や多角形枠状とする。
【符号の説明】
【0022】
1 支柱
2 作業用ステップ
11 フランジ(a:表面、b:裏面)
12 掛止部
13 掛止穴
14 スリット
21 ステップ部材(a:天面、b:側面)
22 フック部材
23 底部
24 起き上がり部
25 曲折部(a:外周縁)
51 丸太材
52 ロープ状の部材
d1 フランジの厚み
d2 空隙
G 法面
N 落石防護網