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特許7239989塞栓材料を患者の体内の標的位置に送達するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】塞栓材料を患者の体内の標的位置に送達するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20230308BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20230308BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61M5/315 580
A61B17/12
A61M5/145 500
A61M5/145 504
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019531290
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017065472
(87)【国際公開番号】W WO2018107126
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/431,424
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519205257
【氏名又は名称】ブラックスワン バスキュラー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BlackSwan Vascular,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バガオイサン,セルソ
(72)【発明者】
【氏名】パイ,サレシュ,エス.
(72)【発明者】
【氏名】サーシェン,スコット,ロバート
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09107668(US,B2)
【文献】米国特許第06062722(US,A)
【文献】特表2008-515594(JP,A)
【文献】特開平11-332984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0297834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228129(US,A1)
【文献】国際公開第96/008227(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0209555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61B 17/12
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塞栓材料を患者の体内の標的位置に送達するシステムにおいて:
後退位置と、第1ポートに隣接する排出位置との間で移動可能な第1ピストンを具え、流動性の塞栓材料を具える第1チャンバと;
前記第1ピストンに接続され、前記後退位置から前記排出位置へ前記第1ピストンを向けて、前記第1ピストンが前記後退位置から前記排出位置に移動すると、流動性の前記塞栓材料を前記第1チャンバから前記第1ポートへ送達する、第1アクチュエータと;
後退位置と、第2ポートに隣接する排出位置との間で移動可能な第2ピストンを具え、排出位置に向かって移動するように付勢されている、第2チャンバと;
前記第1及び第2のポートと連通しているダイバータであって、前記第1及び第2のポートの間を連通している第1の流路と、前記第1のポートと前記ダイバータの出口との間を連通している第2の流路と、の一方を開く第2のアクチュエータを具える、ダイバータと;
前記塞栓材料が前記第1チャンバと第2チャンバとの間を流れるときに前記塞栓材料を混合する、第1の流路と連通した混合構成要素であって、当該混合構成要素がシーケンシャルに配置された複数の混合要素を具え、当該混合構成要素を通過する前記塞栓材料が、当該混合要素によって混合される混合構成要素と;を具え、
前記第2チャンバおよび前記混合構成要素が、ハウジング内に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の混合要素は、前記塞栓材料が前記第1チャンバと第2チャンバの間を流れるときに前記塞栓材料を混合する一連の静的混合要素を具えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記混合構成要素が、近位端および遠位端を有する細長部材と、前記一連の静的混合要素を収容するルーメンと、を具えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記第1チャンバが前記ハウジングの外部にあることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
a)前記第2のアクチュエータが前記第1の流路を開くと、前記第1のアクチュエータの作動により前記塞栓材料が前記第1チャンバを出て、前記混合構成要素を通って前記第1の流路に沿って通過して前記塞栓材料を混合し、前記第2チャンバに入り、前記第1のアクチュエータが解放されると、前記第2ピストンが自動的に排出位置に戻り、前記塞栓材料を前記第2チャンバから排出させ、前記混合構成要素を通る第1の流路を通過させて前記塞栓材料をさらに混合して、前記第1チャンバ内に送り;
b)その後、前記第2アクチュエータが前記第2流路を開き、前記第1アクチュエータの作動により、前記塞栓材料が前記第1チャンバを出て、前記第2の流路を通って前記出口から出る;
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ダイバータの出口に接続された管状部材をさらに具え、当該管状部材が、患者の体内に導入されて前記塞栓材料を前記出口から送達する大きさであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記管状部材の前記近位端と前記ダイバータの出口とが、前記近位端と前記出口とを取り外し可能に接続する一又はそれ以上の複数のコネクタを具えることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記管状部材がカテーテルを具え、前記システムがさらに、前記出口と前記カテーテルの近位端との間に延在する、ある長さの可撓性チューブを具えることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記管状部材の前記近位端と前記出口とに接続されたフィルタをさらに具えることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の流路内にフィルタをさらに具えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記フィルタが、前記塞栓材料を前記管状部材のルーメン内に導入する前に、前記塞栓材料からガスを除去するエアブリードフィルタを具えることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記ハウジングが、操作外科医の手に人間工学的にフィットし、および/または前記第2チャンバおよび前記ダイバータへの直感的なアクセスおよび操作を提供するような外形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ダイバータが前記ハウジング内に二方向マニホルドを具えることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2のピストンが、作動時にエネルギーを蓄積する前記ハウジング内の機構によって前記排出位置に付勢されていることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2のピストンが、前記ハウジング内のばねによって前記排出位置に付勢されていることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記混合要素が、一又はそれ以上のらせん状要素又は分流器を具えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1チャンバがシリンジのバレル内に配置され、前記第1のアクチュエータが、前記バレルから延在して前記第1のピストンに連結されたプランジャを具え、前記プランジャを前進させることで前記第1のピストンを前記後退位置から前記排出位置へ移動させる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のポートが、前記プランジャと反対側の前記バレル上の遠位ポートであり、前記システムが、前記遠位ポートから延在し前記ダイバータと連通する延長線部分をさらに具えることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記シリンジ及び前記プランジャがガラスで形成されており、前記ピストンが前記プランジャの遠位端に一体的に形成されていることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記ダイバータが、前記第1チャンバの前記第1ポートと連通する第1マニホールドポートと、前記第2チャンバの前記第2ポートと連通する第2マニホールドポートと、前記出口に連通する第3マニホールドポートとを具えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記混合構成要素が、前記第2のマニホールドポートと前記第2チャンバの前記第2のポートとの間の前記第1の流路に沿って配置されていることを特徴とする、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2のアクチュエータが、前記マニホールド内の通路が前記第1及び第2のマニホールドポートとの間を連通する第1の位置と、前記マニホールド内の通路が前記第1及び第3のマニホールドポートとの間を連通する第2の位置との間で回転可能なマニホールドに接続されたノブ又はダイヤルであり、それによって第2の流路が開くことを特徴とする、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1チャンバ内の前記塞栓材料が液状塞栓懸濁液を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1チャンバ内の前記塞栓材料が、ジメチルスルホキシド(DMSO)と、エチレンビニルアルコール(EVOH)の溶液中の、微粉化タンタルの懸濁液を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2の流路と連通する第2の混合構成要素をさらに具えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年12月8日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/431,424号の利益を主張し、その全開示は参照により明示的に援用される。
【0002】
本発明は、概して体腔を塞栓するシステム及び方法に関し、より詳細には、患者の体内へ送達する直前に液状塞栓材料を混合するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
体腔の塞栓形成、又は遮断は、奇形、疾患、又は様々な体腔の損傷の治療に十分に確立された低侵襲外科的技術である。この技術は、動静脈奇形、子宮筋腫、腫瘍、静脈瘤及び動脈瘤(例えば、神経血管及び末梢血管腔)への異常な又は望ましくない血流の塞栓に、また、胃腸管内の出血又は外傷による出血の治療によく用いられる。高レベルでは、これらの処置にはすべて、カテーテルを血管系に挿入して、標的位置内又はその近傍に進め、このカテーテルを通して塞栓剤を標的位置に送達するという比較的一般的な手法が含まれる。その後、標的部位へ血液が流れ込むのを塞栓剤が阻止する。これは(例えば)血管壁が薄く弱くなった動脈を安定化させ(動脈瘤の場合)、循環系の動脈部分と血管部分との間の大量の異常な結合を閉塞し(動静脈奇形の場合)、癌治療の一部として腫瘍への血流を防ぎ、あるいは胃腸管への潰瘍から又はその他の出血性損傷からの悪性の出血を軽減するために、行われることがある。
【0004】
また、血管内動脈瘤修復(EVAR)治療の完了後に行うこともできる。EVAR治療では、布で覆ったステント又はステントグラフトを大動脈の弱化部分内に配置して補強材を提供し、このセグメントを油圧で隔離して大動脈破裂の可能性を軽減している。このような治療を行った患者の約15乃至25%はエンドリークと呼ばれる合併症を経験しており、ある程度の血流が動脈瘤腔内に残る。最も一般的なタイプのエンドリーク(通常、タイプIIのエンドリークと呼ばれている)の症状は、治療を行った大動脈の側枝動脈から動脈瘤嚢へ血液が流れ続けるときに発生する。
【0005】
ステンレス鋼及び白金コイル、ポリビニルアルコール又はゼラチン含浸アクリル球、シアノアクリレート、エチレンビニルアルコール、ならびにアルコールなどの硬化剤を含む多種多様な塞栓剤がこの目的に使用されてきた。これらの広範なカテゴリーの塞栓剤はそれぞれ、個々の長所及び短所によって特定の用途に適している。例えば、ステンレス鋼の塞栓コイルシステムは、医師が動作を開始するまでコイルがカテーテルの遠位端から脱落したり解放されたりしないので、術者は非常に落ち着いて手順を進めることができる。この特徴により、治療中の特定の臨床症状に対する医師の理解に基づいて、医師はコイルが最適に配置されるまでコイルの位置決め又は再位置決めができるようになる。
【0006】
しかしながら、コイルシステムの欠点は、標的塞栓部位の非対称的、不規則な及び/又は時には非常に蛇行した解剖学的プロファイルに多くの場合適合せず、不適切な充填となって、望ましくない不完全な塞栓形成結果を残すことである。さらに、このようなコイル送達システムは、所望の送達プロファイルと剛性よりも高いことがあり、この制限により、コイル送達システムを安全に配置できる場所よりも塞栓標的がかなり遠位にある標的生体構造での使用が妨げられることがある。
【0007】
一方で、液状塞栓剤には、それが導入される空間を完全に充填し、そして潜在的により大きな空間を充填するという利点がある(末梢血管系における大きな動静脈奇形の治療など)。液状塞栓剤は、通常、体内に注射することができ、送達システムの先端に対してかなり遠位にある生体構造標的にさらに容易に到達することができる。 液状塞栓剤がどこを流れ、どのようにして標的空間を正確に満たすかの制御は、個体コイルシステムと比較した場合、術者によってより厳密には制御されないので、これらの利点は負担なしでは得られない。液状塞栓剤がカテーテルを通して一旦注入されると、コイルシステムを用いるよりも塞栓が終わる場所の医師の制御性ははるかに低い。両方の場合において、選択された塞栓システムに関する医師の訓練、技能、及び精通度が、これらのシステムのいずれかの臨床使用に関連する欠点(すなわち、罹患率及び死亡率)を大幅に軽減するであろう。
【0008】
多くの市販の塞栓システムの1つの特徴は、例えばX線透視装置を使用して、ユーザが塞栓形成の程度をリアルタイムで測定できるようにする放射線不透過性材料を含んでいることである。ステンレス鋼又はプラチナコイルの場合、放射線不透過性は塞栓材料自体の固有の性質である。塞栓材料が放射線不透過性でない場合、追加の構成要素をシステムに追加してこの機能を提供することがある。 最も一般的に使用されている液状塞栓システムの一つは、オニキス液状塞栓システム(メドトロニック社)であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレンビニルアルコール(EVOH)の溶液中の微粉化タンタルの懸濁液である。EVOHはDMSOには可溶であるが水性媒体には可溶ではないので、水性媒体中へのDMSOの拡散によって懸濁液が水性環境に導入されると、急速に沈殿して固体を形成する。
【0009】
タンタル粒子を含有させることは、医師にフィードバックを提供するのに適した放射線不透過性を提供して、X線透視ガイダンスの下で液状塞栓剤の堆積を案内する。タンタル粒子は、沈殿しているEVOH内に捕捉され、経時的に塞栓部位から拡散しないようにするのに十分に大きく、治療部位のX線透視検査中に術者に明瞭でコントラストの高い信号を提供する。しかしながら、室温で16.69グラム/立方センチメートルの密度では、タンタルは非常に重金属であり、タンタル微粒子は数分でEVOH/DMSO溶液の底に沈む。したがって、オニキスを使用することの1つの課題は、EVOH/DMSO溶液中に比較的均一にタンタルを懸濁させ、それを維持することである。
【0010】
使用説明書には、EVOH/DMSO/タンタル懸濁液を含有する単一血清バイアルは、使用前にボルテックスミキサーで20分間攪拌しなければならず、混合した懸濁液が混合後5分以内に使用されない場合にはバイアルの攪拌を繰り返さなければならないと記載されている。この要件は、オニキス液状塞栓剤の調製が処置の必要な時とタイミングを合わせて行わなければならず、20分のリードタイムが計画にかなりの障害となるので、医師や手術室のスタッフにかなりの負担になる。これらの要件は、処置中にタンタルが沈降する可能性がある長い処置時間(すなわち、指定された5分のウィンドウを超える処置)がある複雑な場合や、より迅速な処置又は血管介入処置が必要とされる緊急の場合(例えば、外傷による出血)でのオニキスの使用を困難なものにしている。
【0011】
したがって、既存の液状塞栓システムの有益な態様を残し、システムの使用準備に必要な時間のかかるステップを軽減した、又はなくした塞栓デバイス、システム、及び方法が求められている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、体腔に塞栓を形成するシステム及び方法に関し、より詳細には、患者の体内に送達する直前に液状塞栓材料を混合するシステム及び方法に関する。
【0013】
本明細書には、体腔に塞栓を形成する装置、システム、及び方法が記載されている。この装置は一般に、細長部材を具えており、この部材はさらに、近位端部と選択的に遠位端部上の接続要素と共に、静的混合要素をさらに具えている。バルブ、流れ誘導部品、シェル、ハウジング、ハンドル、アクチュエータなどの追加の部品がシステム及び方法に含まれていてもよい。
【0014】
静的混合は、混合する材料が流路を通して導かれ、外部電力の入力なしで材料を混合するように作用する要素を含む技術である。これらの要素は、流路内に突出して乱流を作り出し、目的の材料を混合する羽根又はその他の構造である。このシステムはプレート型システムとして知られており、流体又は材料の2つ以上の流れを静的ミキサーに送達する方法を組み込んでいる。流れがミキサーを通って移動するにつれて、移動しない要素が連続的に材料を混合する。完全な混合は、流体の特性、チューブの内径、要素数、及びそれらのデザインなど、さまざまな要素によって異なる。本明細書のシステム及び方法に含まれるプレート型静的混合システムの徹底的な考察は、米国特許第5,839,828号、第7,281,844号、第8,147,124号、第9,067,183号及び第9,221,022号に提供されている。これらの全開示は参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【0015】
代替的なタイプのシステムは、交互に配置され、中空チューブ又は細長部材内で左右に180度回転する一連のらせん状又は疑似らせん状要素を収容する。直径上にある要素の前縁は、隣接する上流側要素の後縁に対して、例えば90°オフセットしている。この構成は、本明細書に記載されているシステム及び方法に設けることができる混合メカニズムの一例である。1つ目の分流は、一般的にレイノルズ数が2000未満の混合物を支配する。2つ目の放射状混合は、より高いレイノルズ数(一般的に2000を超える)での要因になる。
【0016】
分流において、第1の要素の前縁は、ミキサーに入る流体を2つの流れに分割し、この流れは次いで180°回転する。第2の要素は、この流れを4つの流れに再度分割し、次いで反対方向に180°回転させる。第3の要素は、8つのストリームに分割するというように、このプロセスを繰り返す。流れ又は層の数が増えるにつれて、層の厚さは小さくなる。得られた混合物の品質及び完全性は、ミキサーの直径及び混合要素の数のみの関数であり、流速と混合物の粘度とは無関係である。これは、一貫した混合を達成するのに高圧及び/又は高流速を必要としないという点で有益である。実際には、分流による混合により、低い送達速度で、得られる混合物が均質になる。例えば、液状塞栓剤は、整然とした速度で送達することができ、そして送達期間全体にわたって完全に混合される。
【0017】
放射状の混合は、乱流を経験する低粘度混合物と関連することがある。これらの条件下で、要素形状は流体に回転スピンを与えることができ、これが各後続要素により方向を変える。要素間の境界面が特に活発な混合ゾーンを形成しながら、流体は絶えずパイプの中心からパイプの壁へ移動し、再び戻ってくる。この混合のメカニズムは乱流において支配的であり、例えばpH、組成、色、温度及び速度、混合した物質の速度、における半径方向の勾配や差を素早く取り除くことができる。注目すべきは、放射状混合は一般に分流よりも効率的であり、放射状混合に必要な混合要素は分流よりも3倍から16倍少ないという事実である。別の一般的なタイプの静的混合要素は、混合器の壁から混合器の中心へ、そして中心から壁へと流体を流す断続的なフローインバーターを設けた左右交互の要素を具える正方形の混合要素である。
【0018】
所与の混合物の混合量は、混合構成要素を静的ミキサーに複数回通過させることによって増やすことができる。例えば、チャンバを静的ミキサーの近位端に接続し、第2のチャンバを静的ミキサーの遠位端に接続して、混合構成要素を近位チャンバから遠位チャンバへ繰り返し通過させて、単一の経路で達成される混合より大きな混合を行うことができる。
【0019】
本明細書のシステム及び方法の一実施形態によれば、遠位端及び近位端を有する細長部材を具える混合構成要素が提供されている。細長部材の外面は楕円形で断面は直線状であってもよく、細長部材の直径又は外形寸法は一定であるか、又は細長部材の長さに沿って変化するものでもよい。 例えば、細長部材は、近位端における外径が0.250インチ、遠位端における外径が0.125インチの断面円形であってもよく、近位外径から遠位外径への移行は線形減少である。
【0020】
代替的に、細長部材の外径のプロファイルは、複数の直線的な減少又は増加、複数の内向き又は 外向きの湾曲セグメント、直径の複数の段状変化、これらの組み合わせ、又は細長部材の全長にわたる任意の形状を具えていてもよい。同様に、細長部材の断面の幾何学形状は、細長部材の長さにわたって固定でも可変でもよい。 例えば、細長部材は、横断正方形のセグメント、断面楕円形のセグメント、及び断面が八角形のセグメントを具えていてもよく、これらのセグメントは、上述したように曲面、表面、突出部によって接続できる。サイズ、外形、及び断面形状の任意の組み合わせが意図されていることは当業者には自明である。
【0021】
さらに、細長部材のその他の特徴は、細長部材の断面の長さ及び/又は半径及び方位角について固定又は可変であってもよく、限定するものではないが、色、剛性、密度、強度、延性、弾性、疎水性、親水性、圧縮弾性率、不透明性、透明性、放射線不透過性、化学的適合性、融解温度、ガラス転移温度、熱伝導率、絶縁定数、抵抗率、誘電率、これらの組み合わせなどがある。細長部材は、少なくとも1つのルーメンをさらに具えていてもよい。この少なくとも1つのルーメンは、断面が楕円形又は直線状であり、細長部材の外側寸法内に含まれる断面寸法を有する。
【0022】
例えば、固定された円形断面と、直径0.130インチの細長部材は、より大きい直径において0.130インチより小さい円形断面を有する単一のルーメンを有し得る。ルーメンの幾何学的形状及び断面サイズは、ルーメン内に少なくとも1つの静的混合要素を配置できるようなサイズとすることができる。例えば、ルーメンは、断面円形であり、直径が0.050インチ未満、0.050インチ乃至0.075インチ、0.075インチ乃至0.100インチ、0.100インチ乃至0.125インチ、0.125インチ乃至0.150インチ、0.150インチ乃至0.175、0.175インチ乃至0.200インチ、0.200インチ乃至0.225インチ、0.225インチ乃至0.250インチ、又は0.250インチより大きくてもよい。例示的な実施形態では、ルーメンは断面が円形であり、0.075インチ乃至0.100インチの直径を有する。これらの例は円形の細長部材を使用しているが、他の幾何学的形状も考えられることは当業者には自明である。
【0023】
別の例として、四角形のらせん状の静的混合要素を受け入れる大きさの正方形のルーメンを有する正方形の細長部材が提供されている。細長部材は、脂肪族ポリアミド、フッ素化エチレンプロピレン、ナイロン、ペルフルオロアルコキシ(例えば、テフロン(登録商標)、ポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、真鍮、銅、白金、ポリカーボネート、アクリル、ポリオキシメチレン(Delrin(登録商標))、これらの組み合わせ及び/又は合金などを含む、この分野で公知の材料で製造することができる。例示的な実施形態では、細長部材は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリオキシメチレンなどのDMSOと適合性のある材料で製造されている。
【0024】
少なくとも1つのルーメンを具える細長部材は、ルーメン内に延在する突出部、フランジなどの内部構造をさらに具えていてもよい。これらの構造は、(例えば、射出成形によって形成される)細長部材の固有の部分であってもよく、又は、限定するものではないが、超音波溶接、オーバーモールディング、ねじ切り/タッピング、圧着、プレス又は締まり嵌め、これらの組み合わせなど、この術分野で公知の手段を用いて細長部材に連結させた異なる材料でできた構成要素であってもよい。
【0025】
細長部材に異種の内部構造が連結されている場合、この内部構造は、脂肪族ポリアミド、フッ素化エチレンプロピレン、ナイロン、ペルフルオロアルコキシ(例えば、テフロン(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、真鍮、銅、白金、ポリカーボネート、アクリル、ポリオキシメチレン(Delrin(登録商標))、これらの組み合わせ及び/又は合金などを含む、この分野において既知の材料で製造することができる。例示的な実施形態では、細長部材は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリオキシメチレンなどのDMSOと適合性のある材料で製造されている。この内部構造は、開示全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている米国特許第5,839,828号、第7,281,844号、第8,147,124号、第9,067,183号及び第9,221,022号に記載されているように、乱流混合を促進する、又はらせん状静的混合要素の縦方向の動きを最小にするあるいは防止するストッパとして機能するように設計されている。
【0026】
細長部材は、近位端及び/又は選択的に遠位端に接続要素をさらに具えていてもよい。接続要素は、細長部材のルーメンの少なくとも1つと流体連通するルーメンを具え、限定するものではないが、脂肪族ポリアミド、フッ素化エチレンプロピレン、ナイロン、ペルフルオロアルコキシ(例えば、Teflon(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、真鍮、銅、白金、ポリカーボネート、アクリル、ポリオキシメチレン(Delrin(登録商標))、これらの組み合わせ及び/又は合金などを含む、当技術分野で公知の材料で製造できる。例示的な実施形態では、細長部材は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリオキシメチレンなどのDMSOと適合性のある材料で製造されている。
【0027】
接続要素は、限定するものではないが、Luer-Lok(登録商標)継手(雄及び/又は雌)、スリップルアー継手(雄及び/又は雌)、クイックディスコネクト継手(雄及び/又は雌)、ねじ付/タップ付継手、単一又は複数の棘、それらの組み合わせなどの標準的な形態をとることができる。接続要素は、(例えば射出成形により)細長部材の連続的な突出部として形成してもよく、又は、限定するものではないが、ボンディング、溶接、超音波溶接、オーバーモールディング、ねじ切り/タッピング、圧着、プレス又は締まりばめ、これらの組み合わせなどを含む、当技術分野において既知の方法を用いて細長部材と別に形成して、細長部材に取り付けるようにしてもよい。
【0028】
例えば、本発明のシステム及び方法は、外径0.188インチの円形の断面を有し、直径0.099インチの同心状に整列した円形ルーメンを有する細長部材と、近位端に接続した雌型ルアーフィッティングと、遠位端に接続した雄型ルアーフィッティングと、ルーメン内に配置された外径0.093インチの24要素の螺旋型静的ミキサーと、を具える混合構成要素を具えていてもよい。細長部材の長さは、螺旋型静的ミキサーが、雌型と雄型のルアーフィッティング間の細長部材の部分に含まれるような長さである。さらに、細長部材は螺旋型静的ミキサーの長手方向の動きを制限する内部フランジを具えていてもよい。例示的実施形態では、細長部材はナイロン又はポリプロピレンで製造することができ、螺旋型静的ミキサーは、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリオキシメチレンで製造することができる。この例では、24の要素の静的ミキサーを特定しているが、静的ミキサーは、静的ミキサーは1以上の要素、例えば1乃至4、4乃至8、8乃至12、12乃至16、16乃至20、20乃至24、24乃至28、28乃至32の要素を具えていてもよい。また、静的ミキサーは、ミキサーのシーケンシャル要素の数に対応する長さを有し得る。別の例では、先の例の遠位側雄型ルアーフィッティングを雌型ルアーフィッティングで置き換えてもよい 。
【0029】
例示的実施形態において、このシステムは、純粋なDMSOを含有するキャップ付シリンジ、EVOH、DMSO、及び微粉化タンタルの混合物を含有するキャップ付シリンジ(「懸濁液」シリンジ)、及び混合構成要素を具えていてもよい。DMSOに対するEVOHの割合を変えて、ある範囲の粘度を有する溶液をつくることができる。例示的な実施形態においては、溶液は様々な粘度にすることができ、例えば、7センチストークス(cSt)未満、又は約7ないし9cSt、9乃至11cSt、11乃至13cSt、13乃至15cSt、15乃至17cSt、17乃至19cSt、19乃至21cSt、21乃至23cSt、23乃至25cSt、25乃至27cSt、27乃至29cSt、29乃至31cSt、31乃至33cSt、33乃至35cSt、又は35cSt以上であってもよい。シリンジとキャップは、DMSOと適合性のある材料で製造することができる。 EVOHは、例えば、エチレン含有量が約48%(モル%)の変形であってもよい。タンタルは、例示的な最大粒径が5マイクロメートル以下の範囲の粒径に微粉化することができる。
【0030】
混合構成要素は、シングルルーメンハウジングの静的混合要素を有する細長部材と、近位端部に雌のルアーフィッティングと、遠位端に雄のルアーフィッティングを具えている。各構成要素は、適切な包装がなされ無菌で提供される。
【0031】
例示的な実施形態では、このシステムを使用して、DMSO適合カテーテルをカテーテルの遠位端が液状塞栓を送達する位置になるように患者内に配置することによって動静脈奇形を塞栓する方法が提供されている。DMSOシリンジを包装から取り出し、キャップをシリンジから外して、DMSO適合カテーテルをDMSOで洗い流して、カテーテルから血液、食塩水、又はその他の流体を除去することによって、カテーテルの液状塞栓送達準備が整う。懸濁液シリンジを包装から取り出し、場合により手動で撹拌して、EVOH/DMSO溶液内でタンタルを予混合する。混合構成要素を包装から取り出し、滅菌技術を用いて滅菌野に入れる。キャップを懸濁液シリンジから取り外し、懸濁液シリンジを混合構成要素の近位端に取り付ける。懸濁液シリンジを垂直に保持して混合構成要素の遠位端が上向きになるようにして、混合構成要素の空隙容量が予め混合されたDMSO/EVOH/タンタル懸濁液で一杯になるまで懸濁液シリンジのプランジャを押し下げる。
【0032】
混合構成要素の遠位端はDMSO適合カテーテルのハブに接続され、懸濁液シリンジプランジャが押し下げられて、完全に均質化されたDMSO/EVOH /タンタル懸濁液を患者に送達される。DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を混合構成要素に通過させることは、懸濁液を完全に均質化する方法である。この混合メカニズムは、外部電源又はエネルギー源を必要とせず、静的混合の「オンコール」の性質によりすぐに使用できる状態にある。この例では、例示的にEVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、この方法が非薬物及び薬物負荷ポリマー状ミクロスフェアのような他の塞栓剤にも適用可能であることは当業者には自明である。このようなミクロスフェアは、限定するものではないが、球状又は非球状ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどを含む。
【0033】
別の実施形態によれば、純粋なDMSOを含有するキャップ付きシリンジ、空のシリンジ、EVOH、DMSO、及びタンタルの混合物を含有するキャップ付きシリンジ(「懸濁液」シリンジ)、及び混合構成要素を具えるシステムが提供されている。DMSOに対するEVOHの割合を変化させてある範囲の粘度を有する溶液を製造することができ、この粘度は、例えば、7センチストークス(cSt)未満、7乃至9cSt、9乃至11cSt、11乃至13cSt、13乃至15cSt、15乃至17cSt、17乃至19cSt、19乃至21cSt、21乃至23cSt、23乃至25cSt、25乃至27cSt、27乃至29cSt、29乃至31cSt、31乃至33cSt、33乃至35cSt、又は35cSt以上である。このシリンジとキャップは、DMSOと適合性のある材料で製造することができる。EVOHは可変であり、例えば、エチレン含有量が約48%(モル%)である。タンタルは、5マイクロメートル以下の範囲の例示的な最大粒径で微粉化することができる。混合構成要素は、シングルルーメンハウジング静的混合要素と、近位端に雌のルアー取り付け具を有する細長部材と、遠位端に雌のルアー取り付け具と、を具える。各構成要素は適切な包装で無菌で供給される。
【0034】
別の実施形態によれば、このシステムを使用して、DMSO適合カテーテルをカテーテルの遠位端が液状塞栓を送達する位置にくるように患者内に配置することによって動静脈奇形を塞栓形成する方法が提供されている。DMSOシリンジを包装から取り出し、キャップをシリンジから取り外し、DMSO適用カテーテルをDMSOで洗い流すことにより、カテーテルから血液、生理食塩水、又はその他の液体を除去して、カテーテルの液状塞栓送達の準備が整う。懸濁液シリンジを包装から取り出し、場合により手動で撹拌して、EVOH/DMSO溶液内でタンタルを予混合する。混合構成要素及び空のシリンジを包装から取り出し、滅菌技術を用いて滅菌野に入れる。キャップを懸濁液シリンジから取り外し、懸濁液シリンジを混合構成要素の近位端に取り付ける。懸濁液シリンジは、混合構成要素の遠位端が上を向くように垂直に保持されて、懸濁液シリンジプランジャを、混合構成要素の空隙容量が予混合したDMSO/EVOH/タンタル懸濁液で一杯になるまで押し下げる。
【0035】
空のシリンジは、混合構成要素の遠位端に接続されている。懸濁液シリンジプランジャを十分に押し下げて、懸濁液シリンジから混合構成要素を通って、空の、すなわち受入れ用のシリンジにDMSO/EVOH/タンタル懸濁液を通過させる。これはシングル混合パスと呼ばれる。第二の混合パスは、受入シリンジプランジャを完全に押し下げて、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を、受入シリンジから混合構成要素を通って懸濁液シリンジへ移送することによって行われる。操作医師は、選択的に追加の数の混合パスを実行して、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を完全に均質化するようにしてもよい。奇数回の通過が完了すると、受入シリンジ(DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を含む)が混合構成要素から切り離されて、同伴空気がシリンジから排出され、シリンジがDMSO適合カテーテルのハブに接続されるとともに、シリンジプランジャが押し下げられて、完全に均質化したDMSO/EVOH/タンタル懸濁液が患者に送達される。偶数回の通過が完了すると、懸濁液シリンジ(DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を含む)が混合構成要素から外れて、同伴空気がシリンジから排出され、シリンジがDMSO適合カテーテルのハブに接続されるとともに、シリンジプランジャが押し下げられ、完全に均質化されたDMSO/EVOH/タンタル懸濁液が患者に送達される。
【0036】
選択的に、前述の2つのシステムのいずれも、さらに、DMSO適合シリンジに入る前に均質化DMSO/EVOH/タンタル懸濁液からガスを除去するエアブリードフィルタを具えていてもよい。この実施例は例示的にEVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、この方法が、限定するものではないが、球状又は非球状のポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどを含むポリマーミクロスフェアのような、その他の塞栓剤に適用できることは当業者には自明である。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、純粋なDMSOを含むキャップ付きシリンジ、空のシリンジ、EVOH、DMSO、及びタンタルの混合物を含むキャップ付きシリンジ(「懸濁液」シリンジ)、三方活栓、及び混合構成要素を具えるシステムが提供されている。シリンジ、キャップ、及び三方活栓は、DMSOと適合性のある材料で製造することができる。DMSOに対するEVOHの割合を変えて、例えば、7センチストークス(cSt)未満、又は約7乃至9cSt、9乃至11cSt、11乃至13cSt、13乃至15cSt、15乃至17cSt、17乃至19cSt、19乃至21cSt、21乃至23cSt、23乃至25cSt、25乃至27cSt、27乃至29cSt、29乃至31cSt、31乃至33cSt、33乃至35cSt、又は35cSt以上の、様々な粘度の溶液を生成することができる。 EVOHは、例えば、エチレン含有量が約48%(モル%)の変形である。タンタルは、5マイクロメートル以下の例示的な最大粒径を有する粒子サイズの範囲で微粉化することができる。混合構成要素は、シングルルーメンハウジング静的混合要素を有する細長部材と、近位端に雌のルアー取り付け具と、遠位端に雄のルアー取り付け具を具えていてもよい。各構成要素は適切な包装で無菌で提供される。
【0038】
例示的な実施形態では、カテーテルの遠位端が液状塞栓剤を送達する位置にくるようにDMSO適合カテーテルを患者内に配置することによって、動静脈奇形に塞栓形成する、このシステムの使用方法が提供されている。DMSOシリンジを包装から取り出し、キャップをシリンジから外して、DMSO適合カテーテルをDMSOで洗い流してカテーテルから血液、食塩水、又は他の流体を除去することによって、カテーテルの液状塞栓送達準備が整う。懸濁液シリンジを包装から取り出し、場合により手動で撹拌して、EVOH/DMSO溶液内でタンタルを予混合する。混合構成要素及び空のシリンジを包装から取り出し、滅菌技術を用いて滅菌野に入れる。三方活栓の一のアームが、混合構成要素の遠位端に接続されている。キャップを懸濁液シリンジから取り外し、懸濁液シリンジを混合構成要素の近位端に取り付ける。懸濁液シリンジは、混合構成要素の遠位端が上を向くように垂直に保持されて、混合構成要素の空隙容量が予混合したDMSO/EVOH/タンタル懸濁液で一杯になるまで懸濁液シリンジプランジャを押し下げる。空のシリンジが、三方活栓の2本目のアームに接続されており、活栓は、懸濁液シリンジと空の又は受入シリンジとの間で流れるように調整する。活栓の3本目のアームは、DMSO対応カテーテルのハブに接続されている。
【0039】
懸濁液シリンジプランジャを完全に押し下げて、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を、懸濁液シリンジから混合構成要素と活栓を通して受入シリンジまで通過させる。これは第2のシングル混合パスと呼ばれる。第2の混合パスは、受入シリンジのプランジャを完全に押し下げて、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を受入シリンジから、活栓及び混合構成要素を通して懸濁液シリンジに移送することによって行われる。操作医師は、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を完全に均質化するために、選択的に追加の任意の数の混合パスを実行してもよい。奇数回の通過が完了すると、活栓を調整して、受入シリンジ(DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を含む)からDMSO適合カテーテルのハブへ流れるように調して、シリンジプランジャを押し下げて、完全に均質化されたDMSO/EVOH/タンタル懸濁液を患者に送達する。偶数回の通過が完了した場合は、活栓を調整して、懸濁液シリンジ(DMSO/EVOH/タンタル懸濁液を含む)からDMSO適合カテーテルのハブに流れるようにして、シリンジプランジャを押し下げて、完全に均質化されたDMSO/EVOH /タンタル懸濁液を患者に送達する。
【0040】
この処置中の任意の時点で、例えば、処置に長時間かかる場合、及び/又は操作医師がDMSO/EVOH/タンタル懸濁液をさらに混合することを望む場合、操作医師は、懸濁液と受入シリンジとの間を流れるように活栓を調整し、残りのDMSO/EVOH/タンタル懸濁液を必要に応じて何回も通過させ、次いで活栓を調整して、追加の時間、受入シリンジ又は懸濁液シリンジとDMSO適応型カテーテルのハブの間で流れるようにする。この例示的なシステム及び使用方法は、懸濁液シリンジと三方活栓との間に混合構成要素を配置しているが、代替的に、混合構成要素を受入シリンジと三方活栓との間に配置してもよい。
【0041】
別の実施形態では、システムが2つの混合構成要素を具えており、混合構成要素はそれぞれ、懸濁液シリンジと活栓の間、及び受入シリンジと活栓の間に配置されている。この場合、この2つの混合構成要素は、混合構成要素の細長部材について本明細書の他の箇所で論じられているいずれかの特徴が同一であっても異なっていてもよい。提供されている例では流れの方向を制御する機構として三方活栓を使用しているが、バルブ、二方向活栓、マニホールドなどを含むその他の流れを方向付ける機構が提供されていてもよい。
【0042】
さらに、本明細書のシステムのいずれも、様々な構成要素を収容し、DMSO/EVOH/タンタル懸濁液の混合と送達の間の移行の制御を容易にするハウジングをさらに具えていてもよい。
【0043】
この実施例は例示的にEVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、本明細書のシステム及び方法は、限定するものではないが、球状又は非球状ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアポリマーミクロスフェアなどを含む、その他の塞栓剤に適用可能であることは当業者には自明である。
【0044】
さらに別の実施形態によれば、純粋なDMSOを含有するキャップ付きシリンジ、空のシリンジ(「受入」シリンジ)、EVOH、DMSO、及び微粉化タンタルの混合物を含有するシリンジ(「懸濁液」シリンジ)、二方向マニホールド、ハウジング、バネ、及び混合構成要素、を具えるシステムが提供されている。このシステムは、少なくとも1つのルーメンを有する少なくとも1つの延在ラインをさらに具えており、様々な構成要素間の流体連通を可能にする。シリンジ、キャップ、延在ライン、及び二方向マニホールドは、DMSOと適合性のある材料で製造することができる。DMSOに対するEVOHの割合は、例えば、7センチストークス未満、又は約7乃至9cSt、9乃至11cSt、11乃至13cSt、13乃至15cSt、15乃至17cSt、17乃至19cSt、19乃至21cSt、21乃至23cSt、23乃至25cSt、25乃至27cSt、27乃至29cSt、29乃至31cSt、31乃至33cSt、33乃至35cSt、又は35cSt以上の、様々な粘度の溶液を生成することができる。EVOHは可変であり、例えば、エチレン含有量が約48%(モル%)である。タンタルは、5マイクロメートル以下の範囲の例示的な最大粒径で微粉化することができる。バネとハンドルは、限定するものではないが、脂肪族ポリアミド、フッ素化エチレンプロピレン、ナイロン、ペルフルオロアルコキシ(例えば、Teflon(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、真鍮、銅、ポリカーボネート、アクリル、ポリオキシメチレン(Delrin(登録商標))、それらの組み合わせ及び/又は合金などを含む、この分野で知られた材料で製造することができる。
【0045】
ハウジングのサイズ及び形状は、ばね、空のシリンジ又はその他の収容容器、混合構成要素、及び二方向マニホールドの配置を受けて囲むように決めることができる。ハウジングは、内面又は外面に1つ又は複数のフランジ、凹部、スペース、押し出し部分などをさら具え、システムのその他の構成要素の相対的な動きを維持及び/又は可能にすることができる。例えば、ハウジングの近位部分は、ばねを受け入れるのに適切な長さ及び直径を有するキャビティを具えていてもよい。バネの遠位端より遠位側にあるハウジングの一部に空の受入シリンジを掴んで固定する一対のフランジを設けて、シリンジバレルがハウジングに対して動かないようにしてもよい。
【0046】
ばねは、完全に弛緩したとき、又は歪みがないときの長さであり(すなわち、引っ張り荷重又は圧縮荷重を受けていない)、ばねの近位端はハウジングの近位内側面と接触しており、ばねの遠位端は空のシリンジプランジャの近位面と接触している。シリンジの遠位端、又はシリンジ先端は、直接又は延長線部分を介して混合構成要素の近位端に接続することができる。
【0047】
混合構成要素の遠位端は、直接又は延長線部分を介して二方向マニホールドのポートに接続することができる。この例では、二方向マニホールドは3つのポートと、所与の時間に2つのポートだけが確実に流体連通する機構とを具える。説明のために、3つのポートは「A」、「B」、及び「C」と表示する。マニホールドはさらに、ポートAとポートBとの間、あるいはポートBとポートCとの間の流れ又は流体連通のみを可能にすることによって流路の配列を制限する。ポートAとCの間の流通を提供する流体経路は、このマニホールドの設計ではできない。この設計を達成する1つの例示的な機構は、マニホールドが、0°、270°、及び180°でそれぞれポートA、B、及びCを有するハウジングを具えることである。
【0048】
ハウジングに対して回転する部材がハウジング内に着座している。この部材は、部材の内側で90°回転するルーメンを具えており、ルーメンの入口点と出口点が互いに固定半径方向の距離だけ離れている。この部材は、入口点と出口点がハウジング上のポートA及びBと整列するようにハウジング内に配置されている。例えば、この部材をハウジング内で反時計回りに90°回転させて、ポートBとCが流体連通するように接続することができる。ポートA及びCは互いに180°離れているので、マニホールドのこの実施形態はポートAとCとの間に流路を作ることができない。 延長線部分の近位端は、二方向マニホールドのポートCに接続しており、延長線部分自体は、適切な大きさのポートを通ってハウジングから出て、ハウジングの外側の接続要素で終端している。
【0049】
例えば、延長線部分の遠位端は、雄型ルアーフィッティングで終端していてもよい。このルアーフィッティングは適切なキャップ(例えば、通気孔のない、雌のルアーキャップ)で閉じられている。第二の延長線部分の近位端は、二方向マニホールドのポートBに接続することができ、そして延長線部分自体は、適切な大きさの第二ポートを通ってハウジングから出て、接続要素の中で終端している。例えば、延長線部分の遠位端は、懸濁液シリンジの遠位端に接続されている雌型ルアーフィッティング内で終端していてもよい。
【0050】
二方向マニホールドがポートAとBとの間で流れるように配置されている場合、システムは懸濁液シリンジと受入シリンジとの間に流れができる。ユーザ又はオペレータが懸濁液シリンジの内容物を混合したい場合、ユーザは懸濁液シリンジのプランジャを押し下げて、第二延長線部分を通してEVOH/DMSO/タンタル混合物を、二方向マニホールドのポートAから出て、本発明の混合構成要素を通って、受入シリンジ中に導く。受入けシリンジが一杯になると、受入シリンジのシリンジプランジャが近位方向に移動し、ばねをハウジングの近位壁に対して圧縮させる。ユーザが懸濁液シリンジのシリンジプランジャに適切な圧力を維持している限り、ばね内の位置エネルギーは蓄積される。
【0051】
ユーザが懸濁液シリンジのシリンジプランジャから圧力を取り除くと、バネはその潜在的な位置エネルギィを解放し、受入シリンジのシリンジプランジャに圧力を加えて、混合構成要素を通って、二方向マニホールドのポートAへEVOH/DMSO/タンタル混合物を送り出し、二方向マニホールドのポートBを出て、第2の延長線部分を通って、懸濁液シリンジに戻す。このように、ユーザは、懸濁液シリンジのプランジャを繰り返し押し下げ、解放することによって、混合構成要素を通ってEVOH/DMSO/タンタル懸濁液を循環させ、これによって混合することができる。
【0052】
EVOH/DMSO/タンタル混合物が十分に適切に均質化すると、ユーザは懸濁液シリンジのプランジャを解放し、懸濁液シリンジを均質化したEVOH/DMSO/タンタル混合物で満たし、ポートBとCが流体連通するように二方向マニホールドを回し、懸濁液シリンジプランジャを押して、EVOH/DMSO/タンタル混合物を懸濁液から出して、第2の延長線部分を通って、二方向マニホールドのポートCから出て、第1の延長線部分へ送達する(第1の延長線部分のオプションのキャップが外されている場合)。これは、最初の延長線部分の遠位端をDMSO適合カテーテルのハブに接続する前に行って、システムを準備する(すなわち、システムの流体経路内に空気が確実に存在しないようにする)。
【0053】
準備が整い接続されると、本発明のシステムのこの実施形態を使用して、塞栓形成処置を受けている患者にEVOH/DMSO/タンタル混合物を混合して送達することができる。処置の過程で、操作医師がDMSO/EVOH/タンタル懸濁液をさらに混合したい、又は再度混合したい場合(例えば、処置に長時間かかり、懸濁液中にタンタルが沈殿する可能性がある場合)は、操作医師は、ポートAとB間で流れるように二方向マニホールドを調整し、残りのDMSO/EVOH/タンタル懸濁液を所望の回数通過させて懸濁液を再度混合し、次いで二方向マニホールドを許容時間まで調整して、ポートBとCの間を流れるようにし、DMSO対応カテーテルのハブへのDMSO/EVOH/タンタル懸濁液の送達を続ける。
【0054】
この種のシステムは、準備状態で操作医師に提供することができる(例えば、本発明の流路内に取り込まれた全ての空気は、システムの製造中に除去することができる)。代替的に、懸濁液シリンジ内に含まれると記載されている成分(EVOH、DMSO、及びタンタル)は、様々なシステム構成要素に収容できる。例えば、懸濁液シリンジは、DMSO/EVOH溶液を含み、受入シリンジは微粉化したタンタルを含んでいてもよい。別の例では、懸濁液シリンジと受入シリンジは、製造時に同量の又は異なる量のDMSO/EVOH/タンタル懸濁液を含むようにしてもよい。
【0055】
ハウジングのサイズ、ばねの剛性、長さ、コイル直径、及びコイル厚、シリンジプランジャの長さ、及びその他のシステムパラメータを調整して、塞栓混合物の3つの成分の位置及び/又は体積の違いを補償できることは当業者には自明である。この例では、例示的に、EVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、本明細書のシステム及び方法は、限定するものではないが、球状又は非球状ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどの、ポリマーミクロスフェアといったその他の塞栓剤に適用可能であることは当業者には自明である。
【0056】
別の実施形態によれば、塞栓材料を患者の身体内の標的位置に送達するシステムが提供されており、このシステムは、格納位置と移動位置との間で移動可能な第1のピストンを有し、流動性塞栓剤を含む第1のチャンバと;第1のピストンに連結されて、第1のピストンを後退位置から放出位置に向けて、第1のピストンが後退位置から放出位置に移動したときに、第1のチャンバから第1のポートの外へ流動性塞栓材料を送り出す、第1のアクチュエータと;後退位置と第2ポートに隣接する放出位置との間で移動可能な第2ピストンを具える第2のチャンバであって、第2のピストンが放出位置に向かって移動するように付勢されている第2のチャンバと;第1及び第2のポートと連通するダイバータであって、第1のポートと第2のポートとを連通する第1の流路と、第1のポートとダイバータの出口とを連通する第2の流路の一方を開く第2のアクチュエータを具えるダイバータと;塞栓材料が第1のチャンバと第2のチャンバとの間を流れるときに塞栓材料を混合する、第1の流路と連通している混合構成要素と;を具える。
【0057】
さらに別の実施形態によれば、塞栓材料を含むアセンブリを調製する方法が提供されており、この方法は、流動性塞栓材料がアセンブリの第1のチャンバから出て、混合構成要素を通って第1の流路に沿って通過して、塞栓材料を混合してアッセンブリの第2チャンバへ送るようにアクチュエータを作動させるステップと;アクチュエータを解放して、塞栓材料を、第2のチャンバから混合構成要素を通って第1の流路に沿って自動的に通過させて第1のチャンバに送るステップと;塞栓材料を混合した後、第1のチャンバからアセンブリの出口への第2の流路を開くステップと;アクチュエータを作動させて混合塞栓材料を出口を通るように案内するステップと;を具える。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、塞栓材料を患者の体内の標的位置に送達する方法が提供されており、この方法は、a)アクチュエータを作動させて流動性塞栓材料を第1のチャンバから出して、第1の流路に沿って混合構成要素を通過させて、第2のチャンバに入れるステップと;b)アクチュエータを解放して、塞栓材料を第1の流路に沿って第2のチャンバから混合構成要素を自動的に通過させて、塞栓材料をさらに混合して第1のチャンバに送るステップと;c)塞栓材料を混合した後、第1のチャンバから出口への第2の流路を開くステップと;d)アクチュエータを作動させて、混合した塞栓材料を出口を通って患者の体内に案内して、標的位置を塞栓するステップと;を具える。
【0059】
別の実施形態によれば、塞栓材料を患者の身体内の標的位置に送達するシステムが提供されており、このシステムは、第1のポートに隣接した後退位置と放出位置との間で移動可能な第1のピストンを具える第1のチャンバであって、その中に流動性塞栓材料を含む第1のチャンバと;第2のポートに隣接する後退位置と排出位置との間で移動可能な第2のピストンを具える第2のチャンバと;第1及び第2のポートと連通するダイバータであって、第1のポートと第2のポートとを連通する第1の流路を開く第1の位置と、第1のポートとダイバータの出口との間を連通する第2の流路を開く第2の位置と、第2のポートと出口との間を連通する第3の流路を開く第3の位置と、の間で移動可能なダイバータアクチュエータを具えるダイバータと;第1の流路と連通する混合構成要素と;第1ピストンに接続して、第1の流路を開いているダイバータアクチュエータで第1ピストンを後退位置から排出位置に向けて、塞栓材料を第1チャンバから出して、第1流路に沿って混合構成要素を通って塞栓材料を混合して第2のチャンバに送り、それによって塞栓材料が第2のチャンバに入ったときに第2のピストンを排出位置から後退位置に移動させる、第1のチャンバアクチュエータと;第2のピストンに接続して、第1の流路を開いているダイバータアクチュエータで第2のピストンを後退位置から排出位置に向けて、第1室から第2室に導入した塞栓材料を第2室から排出させ、第1流路に沿って混合構成要素を通過させて塞栓材料をさらに混合して第1のチャンバに送り、これによって塞栓材料が第1のチャンバに入ると第1のピストンを放出位置から後退位置移動させる、第2のチャンバアクチュエータと;を具え、ダイバータアクチュエータが第2の位置と第3の位置の一方へ移動して、第2流路を又は第3の流路を開き、第1室と第2室の一方から混合塞栓材料を送達して出口から送出する。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、塞栓材料を患者の体内の標的位置に送達する方法が提供されており、この方法は、a)第一チャンバアクチュエータを作動させて流動性塞栓材料を第一チャンバーから排出させ、第一チャンバに沿って混合構成要素を通過させて塞栓材料を混合して第2のチャンバへ送出するステップと;b)第2のチャンバアクチュエータを作動させて塞栓材料を第2のチャンバから排出させ、第1の流路に沿って混合構成要素を通過させて塞栓材料をさらに混合して第1のチャンバに送出するステップと;c)塞栓材料を混合して第1及び第2のチャンバのうちの一方に送出した後、第1及び第2のチャンバのうちの一方から出口への送達経路を開くステップと;d)チャンバアクチュエータのうちの一方を作動させて、混合した塞栓材料を出口を通って患者の体内に案内し、標的位置を塞栓するステップと;を具える。
【0061】
本発明の必要性及び使用を含むその他の態様及び特徴は、添付の図面を参照して以下の説明を考察することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣例に従って、図面の様々な特徴は原寸に比例しておらず、逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面に含まれるものは以下の図である。
図1図1Aは、近位雌型ルアー継手及び遠位雄型ルアー継手を具える混合装置の例示的実施形態を示す平面図である。図1Bは、近位及び遠位雌型ルアーフィッティングを具える混合装置の別の例示的実施形態を示す平面図である。
図2図2A乃至2Cは、塞栓材料を3つの異なる流動状態で送達するシステムの例示的実施形態を示す概略図である。
図3図3Aは、2つの混合構成要素を含む塞栓材料を送達する別の例示的なシステムを示す概略図である。図3Bは、ハウジング内にある図3Aのシステムの平面図である。図3Cは、図3Bに示すシステムの断面図である。
図4図4は、純粋なDMSOを含有するキャップ付きシリンジ、EVOH、DMSO、及びタンタルの混合物を含むキャップ付きシリンジ、及び混合構成要素を使用する例示的な方法を示すフローチャートである。
図5図5は、純粋なDMSOを含むキャップ付きシリンジ、受入シリンジ、EVOH、DMSO、及びタンタルの混合物を含むキャップ付きシリンジ、及び混合構成要素を具えるシステムを使用する例示的な方法を示すフローチャートである。
図6図6は、純粋なDMSOを含むキャップ付きシリンジ、受入シリンジ、EVOHとDMSOとタンタルの混合物を含むキャップ付きシリンジ、三方活栓、及び混合構成要素を具えるシステムを使用する例示的な方法を示すフローチャートである。
図7図7A乃至図7Cは、塞栓材料を送達する例示的なシステムの断面図であり、システムの3つ段階の動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
例示的な実施形態を説明する前に、本発明はここに説明した特定の実施形態に限定されるものではなく、変形できると理解するべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0064】
ある範囲の値が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の単位の10分の1までの介在値もまた具体的に開示されていると解される。規定範囲内の任意の規定値又は介在値とその規定範囲内の任意の他の規定値又は介在値との間のより小さい各範囲は、本発明の範囲内に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は独立してその範囲に含まれるか又は除外されてもよく、いずれかの範囲、いずれでもない範囲、又は両方の範囲がより小さな範囲に含まれる各範囲も、本発明に包含される。記載された範囲が、一方又は両方の限界を含む場合、含まれている限界のいずれか又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0065】
他に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、いくつかの可能性のある好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書で言及されている全ての刊行物は、それらの刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾がある限りにおいて、組み込まれた刊行物のいかなる開示にも優先することが理解される。
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「化合物」への言及は複数の化合物を含み、「ポリマー」への言及は、当業者に知られている1つ又は複数のポリマー及びその等価物への言及、その他を含む。
【0067】
本明細書に記載の刊行物は、本出願の出願日より前の開示についてのみ提供されている。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供されている出版日は実際の出版日とは異なる可能性があり、それは独立して確認する必要があることもある。
【0068】
図面を参照すると、図1Aは、混合構成要素100の例示的実施形態を示しており、この要素は本明細書のシステム及び方法に含まれる。通常、混合構成要素100は、近位端101’と遠位端101’’を有する細長部材101と、遠位雄型ルアーフィッティング102と、近位雌型ルアーフィッティング103と、一連のらせん状静的混合要素104とを具える。細長部材101は、さらに、遠位雄型ルアーフィッティング102と近位雌型ルアーフィッティング103のルーメンと流体連通しているらせん状の静的混合要素104を収容する大きさのルーメンと、内部機構105及び106を具える。
【0069】
内部機構105及び106は、らせん状静的混合要素104と干渉して、細長部材101に対するらせん状静的混合要素104の近位又は遠位方向への移動を防止するようなサイズに設定されている。内部機構105及び106は、リング又はフランジ状の幾何学的形状及び構造であるか、又は細長部材101のルーメンへの、離散的であり細長部材の内径の周りの連続的でない突出部である。選択的に(図示せず)、らせん状静的混合要素104の移動を制限する機能は、細長部材101の内面に設定された溝及びOリングの組み合わせ、又は機械的干渉を得るためのその他の同様の機構によって果たすことができる。例えば、らせん状静的混合要素104の外径は、らせん状静的混合要素104の外径を細長部材101のルーメンに圧入するように選択して、らせん状静的混合要素104が本発明の混合構成要素を通って流れる混合材料の所定の圧力まで移動しないようにすることができる。
【0070】
図1Aに示す例示的な混合構成要素は、少なくとも9個のらせん状静的混合要素のセットを具えているが、より少ない数の静的混合要素を本明細書のシステム及び方法に使用できることは当業者には自明である。さらに、この実施形態の接続要素は、雄及び雌のルアーフィッティングに限定されず、接続要素の任意の組み合わせを使用して、その他の装置、注入ライン、カテーテル、マニホールドなどに、可逆的又は不可逆的に混合構成要素を接続することができる。同様に、図1Aの例は管状の細長部材に収容したらせん状静的ミキサーを具えているが、その他の幾何学的形状の静的混合要素や、細長部材の対応する幾何学的形状を提供できることは当業者には自明である。例えば、図1Bは混合構成要素200の別の実施形態を示しており、この実施形態は、遠位雄型ルアーフィッティング102を遠位雌型ルアーフィッティング107で置き換えたこと以外は、混合構成要素100とほぼ同じである。
【0071】
図2A乃至2Cは、システム300を使用して、異なるステージ間に3つの異なる流動状態で塞栓材料を送達するシステム300の例示的な実施形態の概略図を示す。通常、システム300は液状塞栓懸濁液(図示せず)を含む懸濁液シリンジ又は第1のシリンジ201と、初期に空である受入シリンジ又は第2のシリンジ102と、混合構成要素203と、三方活栓又はその他の分流器204と、液状塞栓懸濁液と適合するカテーテル205と、を具える。懸濁液シリンジ201は、三方活栓204に接続された混合構成要素203に接続されている。三方活栓204の残りの2つのアームは、受入シリンジ202とカテーテル205にそれぞれ接続されている。図2A乃至図2Cは、懸濁液シリンジ201と三方活栓204との間に配置された混合構成要素203を示しているが、代替の構成では、混合構成要素203を受入シリンジ202と三方活栓204との間に配置するようにしてもよい(図示せず)。
【0072】
図2Aは、栓204が初期位置にあるシステムの流れ状態を示してり、懸濁液シリンジ201と受入シリンジ202が互いに流体連通しており、カテーテル205への流れが阻止されている。システム300がこの流動状態にあると、液状塞栓懸濁液は、懸濁液シリンジ201から混合構成要素203と活栓204を通って受入シリンジ202へ、及びその逆に通過できる。シリンジからシリンジへの液状塞栓懸濁液の通過は、懸濁液を均質化し、及び/又は、そうでなければ、本明細書の他の箇所に記載されているように、懸濁液を患者の体内、例えば体腔又は他の標的位置への送達用に調製する。所望の量の混合が達成されると、2つのシリンジのうちのどちらが均質化された懸濁液を含有するのかによって、図2に示すように栓204を送達位置に位置決めし、図2B又は図2Cに示すように、液状塞栓をカテーテル205に案内できる。
【0073】
図2Bは、懸濁液シリンジ201とカテーテル205との間に流れができるように栓204を配置した概略図であり、これは液状塞栓懸濁液を懸濁液シリンジ201内に入れた、液状塞栓懸濁液の最後の通過(すなわち、図2Aに示すように、懸濁液シリンジ201と受入シリンジ202の間)で所望の量の混合が得られる場合に適している。図2Cは、受入シリンジ202とカテーテル205との間で流れができるように栓204を配置した概略図であり、液状塞栓懸濁液を受入シリンジ202に入れた、液状塞栓懸濁液の最後の通過(すなわち、図2Aに示すように、懸濁液シリンジ201及び受入シリンジ202の間)で所望の量の混合が得られる場合に適している。
【0074】
代替の実施形態では、システム300は、活栓204とカテーテル205との間に配置したインラインフィルタ(図示せず)を具えていてもよい。インラインフィルタは、混合液状塞栓懸濁液から同伴空気を排出して、特定のサイズを超える粒子状又はその他の潜在的な汚染物質を選択して、例えば、懸濁液がカテーテル205を通過して患者の体内に入る前にふるい落とすことができる。また、当業者には明らかなように、必要に応じて、図2A乃至2Cに示す三方活栓204以外の、流れを制御するその他の方向転換機構を設けるようにしてもよい。
【0075】
図3Aを参照すると、別のシステム400の概略図が示されており、このシステムは液状塞栓懸濁液(図示せず)を含む懸濁液又は第1のシリンジ301、初期に空である受容又は第2のシリンジ302と、第1の混合構成要素303と、第2の混合構成要素304と、三方活栓又はその他のダイバータ305と、液状塞栓懸濁液に適合するカテーテル306と、を具える。このシステムの動作原理は、図2A乃至2C2に関して説明したものと同様である。なお、図3Aでは、混合構成要素303、304が同一の符号で表されているが、個々の混合構成要素303及び304は同一である必要はなく、例えば管状ハウジング内に順次配置された複数のらせん状要素及び/又は分流器を含めて、本明細書の他の箇所に記載されている混合要素のいずれかを具えていてもよい。混合要素の直径、長さ、数及びサイズ、混合要素及び細長部材の構造及び幾何学的形状、構成材料などの違いはすべて意図されている。
【0076】
選択的に、代替の実施形態では、システム400(図示せず)は、三方活栓305とカテーテル306との間、及び/又は、各シリンジ301、302と活栓305との間にインラインに配置されたインラインフィルタを具えている。インラインフィルタは、混合液状塞栓懸濁液から同伴空気を排出し、例えば懸濁液がカテーテル306を通過して患者の体内に入る前に、特定のサイズを超える粒子状物質又は他の潜在的な汚染物質をふるい落とすように、選択されている。三方活栓305以外の、流れを制御するその他の方向転換機構を設けてもよいことは当業者には自明である。
【0077】
図3B及び3Cを参照すると、ハウジング307内に封入され、 活栓305に接続された雄型ルアーフィッティング309を具えていること以外は、システム400とほぼ同様の構成要素を有するシステム400’の例示的実施形態が示されている。ハウジング307は、操作外科医の手に人間工学的にフィットするように、及び/又は、懸濁液シリンジ301、受入シリンジ302、及び三方活栓305への直感的なアクセス及び操作を提供するように、形成することができる。これは、三方活栓305に連結するノブ308などのアクチュエータの使用を介して行われ、印、銘刻文字、ラベル、触覚フィードバック、可聴フィードバック、これらの組み合わせなどを通じて、活栓305の状態についての情報をオペレータに提供する。
【0078】
図4を参照すると、純粋なDMSOを含むシリンジ、DMSO及びEVOHの溶液中にタンタルの懸濁液を含む懸濁液シリンジ、及び混合構成要素(図示せず)を具えるシステムを使用して塞栓材料を送達する方法の例示的実施形態を示す。第1のステップ310として、操作医師の又はその他のユーザは、標準的な蛍光透視法及び/又は磁気誘導技術を使用して、DMSO適合カテーテルを患者の体内の標的位置、例えば動脈瘤、体腔又はその他のルーメン(図示せず)内の近くに配置することができる。次いで、ステップ312において、操作医師は、滅菌技術を使用して提供された包装から純粋なDMSOを含むシリンジを取り出し、患者の体に配置されたカテーテルを純粋なDMSOで洗い流す。これは、体腔からカテーテルのルーメンへの血液又は生理食塩水の逆流による、懸濁液シリンジ内でのEVOHの早期沈殿を防ぐ働きをする。ステップ314及び316において、懸濁液シリンジ及び混合構成要素をそれらが設けられている包装から取り出す。選択的に、ステップ318で、懸濁液シリンジを手動で撹拌して、例えばEVOH/DMSO/タンタル懸濁液を粗く予混合するようにしてもよい。次に、ステップ320で、懸濁液シリンジからキャップを取り外して、懸濁液シリンジを混合構成要素に接続する。
【0079】
次いで、ステップ322で、懸濁液と混合構成要素のアッセンブリを垂直に保持して、混合構成要素の遠位端を上向きにして、懸濁液が混合構成要素を満たし、全ての空気がアッセンブリから除去されるまで、シリンジプランジャを押し下げる。さらに、あるいは、代替的に、静脈内フィルター(図示せず)などのインラインエアー抜きフィルタの使用を含めて、医療デバイス及び機器から空気をパージするこの技術分野で知られているその他の技術を、上述の技術に代えて又はそれに加えて使用することができる。
【0080】
次に、ステップ324で、混合構成要素の遠位端をカテーテルのハブに接続して、ステップ326で、液状塞栓剤を標的位置に送達することができる。懸濁液シリンジとカテーテルのハブの間の混合構成要素の存在により、液状塞栓懸濁液のインライン混合と、均質化が可能になる。この実施例は例として、EVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、限定するものではないが、この方法が球形又は非球形ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどを含む高分子微小球といった、その他の塞栓剤に適用可能であることは当業者には自明である。
【0081】
図5を参照すると、純粋なDMSOを含有するシリンジ、DMSO及びEVOHの溶液中にタンタルの懸濁液を含有する懸濁液シリンジ、空の受入シリンジ、及び混合構成要素(図示せず)を具える塞栓材料を送達するシステムを使用する別の例示的方法を示すフローチャートが記載されている。第1のステップ330として、操作医師は、例えば標準的な蛍光透視法又は磁気誘導技術を使用して、DMSO適合カテーテルを患者の体内の標的位置の近くに配置する。次に、ステップ332で、操作医師は、滅菌技術を用いて提供された包装から純粋なDMSOを含むシリンジを取り出し、カテーテルを純粋なDMSOで洗い流す。これは、カテーテルのルーメンへの血液又は生理食塩水の逆流による懸濁液シリンジ内のEVOHの早期沈殿を防止するように作用する。ステップ334、336において、懸濁液シリンジ及び混合構成要素を、提供されている包装から取りだし、選択的に、ステップ338において、懸濁液シリンジを手動で攪拌して、EVOH/DMSO/タンタル懸濁液を粗く予混合してもよい。
【0082】
次に、ステップ340において、懸濁液シリンジからキャップを取り外して、懸濁液シリンジを混合構成要素に接続する。ステップ342において、懸濁液シリンジと混合構成要素とのアセンブリを垂直に保持して、混合構成要素の遠位端を上向きにして、懸濁液が混合構成要素を満たし、空気がアッセンブリから除去されるまで、シリンジプランジャを押し下げる。医療デバイス及び機器から空気をパージするこの技術分野で知られているその他の技術を、上述の技術に代えて又はそれに加えて使用することができる。ステップ344において、受入シリンジを提供されている包装から取り出して、ステップ346で混合構成要素の遠位端に接続する。
【0083】
次に、ステップ348で、懸濁液シリンジのプランジャを押し下げて、液状塞栓懸濁液を混合構成要素を通して受入シリンジへ通過させる。ステップ350で液状塞栓懸濁液が適切に混合されていれば、ステップ352で受入シリンジを混合構成要素から切り離してカテーテルのハブに接続し、ステップ354で液状塞栓剤を標的位置に送達することができる。しかしながら、ステップ350で、懸濁液シリンジから受入シリンジへの単一通過後に液状塞栓懸濁液が適切に混合されていない場合は、ステップ356において、受入シリンジのプランジャを押し下げて液状塞栓懸濁液を混合構成要素を通って懸濁液シリンジに通過させる。
【0084】
その後、ステップ358で、液状塞栓懸濁液が適切に混合されていれば、ステップ360で、懸濁液シリンジを混合構成要素から切り離して、カテーテルのハブに接続して、液状塞栓剤を標的位置に送達することができる。液状塞栓懸濁液が適切に混合されていない場合は、ステップ362で、液状塞栓懸濁液を懸濁液シリンジから受入シリンジに戻すことができる。懸濁液シリンジと受入シリンジとの間に液状塞栓懸濁液を通過させるステップ356及び362を含むループは、必要に応じて又は所望の回数だけ繰り返して、液状塞栓懸濁液を適切に混合することができる。
【0085】
選択的に、静脈内フィルタ(図示せず)などのインライン通気フィルタをカテーテルのハブの近位に配置して、例えば、そこから混入した空気及び/又はその他の望ましくない粒子を、患者に入る前に懸濁液から除去することができる。加えて又は代替的に(図示せず)、操作医師は、混合した塞栓懸濁液を含むシリンジを混合構成要素とともに取り外し、混合構成要素の自由端をカテーテル又はインラインフィルタのハブに接続することを選択できる。これにより、患者に投与される直前に、液状塞栓懸濁液を最後に静的ミキサーに通過させることができる。この例では、例としてEVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、この方法が、限定するものではないが、球状又は非球状ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどを含むポリマーミクロスフェアなどのその他の塞栓剤に適用可能であることは当業者には自明である。
【0086】
図6を参照すると、塞栓材料を送達するシステムを使用する方法のさらに別の例示的な実施形態を示すフローチャートが記載されており、このシステムは、純粋なDMSOを含有するシリンジ、DMSO及びEVOHの溶液中にタンタルの懸濁液を含有する懸濁液シリンジ、空の受入シリンジ、混合構成要素、及び三方活栓(図示せず)を具える。第1のステップ364として、操作医師は、例えば標準的な蛍光透視法又は磁気誘導技術を使用して、DMSO適合カテーテルを患者の体内の標的位置の近くに配置する。次に、ステップ366において、操作医師は、滅菌技術を用いて提供されている包装から純粋なDMSOを含むシリンジを取り出し、カテーテルを純粋なDMSOで洗い流す。これは、カテーテルのルーメン上への血液又は生理食塩水の逆流による懸濁液シリンジ内のEVOHの早期沈殿を防止するように作用する。ステップ368乃至371において、懸濁液シリンジ、混合構成要素、三方活栓、及び受入シリンジを、提供されている包装から取り出す。選択的に、ステップ372で、本明細書の他の実施形態と同様に、懸濁液シリンジを手動で撹拌して、例えばEVOH/DMSO/タンタル懸濁液を粗く予混合してもよい。
【0087】
次に、ステップ374及び376で、キャップを懸濁液シリンジから取り外し、懸濁液シリンジを混合構成要素に接続し、混合構成要素の自由端を三方活栓に接続する。ステップ378において、懸濁液シリンジ、混合構成要素及び活栓を垂直に保持して、三方活栓の自由端が上向きになり、懸濁液が混合構成要素と活栓を満たし、すべての空気がアッセンブリから除去されるまで、シリンジプランジャを押し下げる。医療デバイス及び機器から空気をパージするこの技術分野で知られているその他の技術を、上述の技術に代えて又はそれに加えて使用することができる。
【0088】
次に、ステップ380と382において、受入シリンジを三方活栓の自由アームの一つに接続し、カテーテルのハブを三方活栓の残りの自由アームに接続する。ステップ384で、三方活栓を調整して、懸濁液シリンジと受入シリンジとの間の流れを可能にし、ステップ386で、懸濁液シリンジのプランジャを押し下げて、液状塞栓懸濁液を混合構成要素を通して受入シリンジに送る。
【0089】
ステップ388で、液状塞栓懸濁液が適切に混合されていれば、三方活栓を調整して、ステップ390で受入シリンジとカテーテルのハブとの間の流れを可能にし、ステップ396で、液状塞栓剤を標的位置に送達することができる。しかしながら、ステップ391において、懸濁液シリンジから受入シリンジへの1回の通過の後に懸濁液が適切に混合されていない場合は、受入シリンジのプランジャを押し下げて、液状塞栓懸濁液を混合構成要素を通って懸濁液シリンジに通過させる。ステップ392において、液状塞栓懸濁液が適切に混合されている場合は、ステップ394において、三方活栓を調整して懸濁液シリンジとカテーテルのハブとの間の流れを可能にして、ステップ396において液状塞栓剤を標的生体構造に送達でいる。液状塞栓懸濁液が適切に混合されていない場合は、ステップ398で、液状塞栓懸濁液を懸濁液シリンジから受入シリンジに戻すことができる。
【0090】
選択的に、懸濁液シリンジと受入シリンジとの間に液状塞栓懸濁液を通過させるステップ391及び398を含むループを、必要に応じて又は所望の回数だけ繰り返して、液状塞栓懸濁液を適切に混合することができる。追加で又は代替的に、静脈内フィルタ(図示せず)などのインラインエアー通気フィルタを三方活栓とカテーテルのハブとの間に配置して、懸濁液から混入空気又は他の望ましくない微粒子を患者に入る前に除去することができる。この例では、一例としてEVOH/DMSO/タンタル懸濁液又は混合物を使用しているが、限定するものではないが、球状又は非球状 ポリビニルアルコールビーズ、トリス-アクリルゼラチンミクロスフェアなどを含むポリマーミクロスフェアといった、その他の塞栓剤に適用可能であることは当業者には自明である。
【0091】
図7A乃至7Cを参照すると、塞栓材料を調製し、送達するシステム500の別の例示的な実施形態が示されており、これは、液状塞栓懸濁液(図示せず)を収容する第1のチャンバを画定する懸濁液又は第1のシリンジ401と、第2のチャンバを確定する受入又は第2のシリンジ402と、ハウジング403と、ばね404と、混合構成要素405と、二方向マニホールド406と、第1の延長線部分407と、及び第2の延長線部分408と、を具える。ハウジング403は、1つ又は複数の保持フランジ又は取り付け機構を含み得る。これは、例えば、ばね404、受入シリンジ402、及びハウジング403内に収容された混合構成要素405、といった内部構成要素を収容する及び/又はその動き制限する保持フランジ409及び410など、一又はそれ以上の保持フランジ又は装着機構を具えていてもよい。
【0092】
一般に、各シリンジ401、402は、内部チャンバ401a、402aを画定するバレルと、バレル内にスライド可能に配置され、各プランジャ411、412に接続されているピストン401b、402bと、チャンバ401a、402aと流体連通しているポート401c、402cと、を具える。第1のピストン401bは、第1のチャンバ401a内で、例えば図7A及び図7Cに示す近位位置又は後退位置と、例えば図7Bに示す遠位位置又は放出位置の間で移動可能である。同様に、第2のピストン402bは、第2のチャンバ402a内で、例えば第2図及び第3図に示す遠位位置又は放出位置と、例えば図7A及び7Cに示す近位位置又は後退位置との間で、移動可能である。代替的に、第1のプランジャ411とピストン401bは、(例えば、ガラス製シリンジないのような)単一のユニットであってもよい。同様に、第2のプランジャ412とピストン402bも、やはり(例えば、ガラス製シリンジのように)単一のユニットであってもよい。
【0093】
バネ404は、第2のピストン402bを図7A及び7Cに示す遠位位置に付勢するように構成することができる。例示的な実施形態では、バネ404は、第2のプランジャ412の近位にハウジング403内に装着して、第2のプランジャ412(及び第2のピストン402b)を遠位側に付勢する圧縮バネであり、さらに、前述のように、システム500の使用中に第2のプランジャ412(及び第2のピストン402b)を近位に移動させるように弾性的に圧縮することができる。例えば、ばね404は、完全に弛緩した状態又は無負荷の状態でハウジング403内に組みつけることができ、代替的に、部分的に圧縮した状態で組みつけて、受入シリンジプランジャ412にある程度の予荷重を与えるようにしてもよい。このようなバネの予荷重により、受入シリンジプランジャ412が確実に、完全に押し下げられた位置又は遠位位置に戻り、本明細書の他の箇所で説明されているように、実質的にすべての液状塞栓懸濁液が確実に懸濁液シリンジ401に自動的に戻るようになる。
【0094】
フランジ409及び410は、ハウジング403内で内部構成要素の互いに対する相対位置を維持する。例えば、図に示すように、フランジ409は、受入シリンジ402のフィンガーフランジ又はウィング用のスペースを作る、及び/又は、さもなければ受入シリンジ402のバレルと係合して動きを防止するようなサイズであり、そのように配置されている。ハウジング403のフランジ409の間に受入シリンジ402を配置することにより、受入シリンジプランジャ412の近位端の近位側にバネ404用のスペースが提供される。ばね404とプランジャ412の近位端は、バネ404がこの近位端に係合して、プランジャ412(及びピストン402b)を遠位方向に向けるような大きさである。図7Aは、ニュートラル又は低エネルギー状態にあるバネ、例えば、張力も圧縮もないか、あるいは初期の予荷重のみを受けているバネを示す。
【0095】
受入シリンジ402のポート402cは、直接又は補助延長線部分(図示せず)を介して混合構成要素405の近位端405aに接続されている。混合構成要素405の遠位端405bは、直接又は補助延長線部分(図示せず)を介して、二方向マニホールド406に接続されている。例えば、二方向マニホールドは3つのポートを具えており、これは、上述したように、例えば、可撓性チューブ407を介して懸濁液シリンジ401の第1のポート401cに装着されている、あるいはハウジング403の外側に連通している第1のポート又は中間ポート414と;混合構成要素405bの遠位端405bと連通する第2のポート又は近位ポート413と;同様に、例えば、カテーテル又はその他の管状部材又は送達装置(図示せず)と連通するように、例えば、ハウジング403の遠位端における出口に取り付けた又はこれと連通する第3のポート又は遠位ポート415;といった3つのポートを具えている。
【0096】
図7Aは、近位ポート413と中間ポート414との間の流路、すなわち、第1のチャンバ401aと第2のチャンバ402aとの間の第1の流路を画定する第1の構成における二方向マニホールド406を示す。図7Cは、中間ポート414と遠位ポート415との間の流路、すなわち第1のチャンバ401aとハウジング403の出口との間の第2の流路を画定する第2の構成の二方向マニホールド406を示す。二方向マニホールド406は、例えば二位置活栓又は二方向活栓と同様に、第1及び第2の構成の間で二方向マニホールド406を回転させるように構成したノブ、ダイヤル、又はその他のアクチュエータ(図示せず)を具えていてもよい。二方向マニホールド406の中央ポート414は第1の延長線部分407に接続されており、第1延長線部分407は懸濁液シリンジ401に接続されている。二方向マニホールド406の遠位ポート415は、第2の延長線部分408に接続されている。延長線部分407及び408は両方とも、ハウジング403の本体の開口部を通ってハウジング403を出るか、又はハウジング403の外壁に設けたコネクタ(図示せず)に結合される。
【0097】
一例では、最初に、図7Aに示す懸濁液シリンジ401は、液状塞栓懸濁液の体積の大部分、すなわち近位位置にある第1のピストン401bで満たされ、受入シリンジ402は実質的に空、すなわち遠位位置にある第2のピストン402bで満たされる。図7Bは、懸濁液シリンジプランジャ411が、例えばユーザによって手動で完全に押し下げられ、延長線部分407を通って、実質的に全ての液状塞栓懸濁液を第1のポート401cから、二方向マニホールド406、混合構成要素405、及び受入シリンジ402のチャンバ402aの中へ押し出されているシステム500の状態を示す。これによって、第2のチャンバ402aが液状塞栓懸濁液で一杯になると、受入シリンジプランジャ412及び第2のピストン402bを近位に移動させて、バネ404を圧縮する。
【0098】
懸濁液シリンジのプランジャ411に加えられる力が、スプリング404の押圧によって生じるバネ力を超えている限り、スプリング404は圧縮されたままである。懸濁液シリンジプランジャ411への力が取り除かれると、バネ404はその弛緩位置に向かって拡張し、液状塞栓懸濁液をポート402c、混合構成要素405、二方向マニホールド406、延長線部分407を介して第2のチャンバ420aから外へ押し戻し、システムが図7Aについて上述した状態に戻る。懸濁液シリンジ401と受入シリンジ402との間で混合コンポーネント405を通って液状塞栓懸濁液を往復移動させる往復プロセスは、液状塞栓懸濁液を混合し均質化するのに役立つ。
【0099】
このプロセスは使用者が満足するまで行われ、適切な混合が達成されると、ユーザは混合液状塞栓懸濁液を懸濁液シリンジ401に戻し、次いで二方向マニホールド406を第2の構成に回して、中間ポート414と遠位ポート415を図7Cに示すように流体連通させる。この状態で、懸濁液シリンジプランジャ411を押すと、混合液状塞栓懸濁液が第2の流路に沿って、すなわちポート401cから出て、延長線部分407、二方向マニホールド406を通って第2の延長線部分408から出るように案内される。これは、第2の延長線部分408を、例えば液状塞栓懸濁液に適合するカテーテル(図示せず)に接続する準備中に行って、第2の延長線部分408を準備するようにしてもよい。代替的に、第2の延長線部分408を省略して、コネクタ又はその他の機構(例えば、雄型回転ルアーロックフィッティング)で置き換えて、カテーテルの近位端に直接接続するようにしてもよい。
【0100】
例えば、カテーテル(図示せず)の近位端は、例えば第2の延長線部分408に接続可能なポート又は直接ハウジング403に接続可能なポートと、患者の身体内に導入できるサイズの遠位端と、近位端と遠位端との間に延在するルーメンであって、第2の流路と連通して混状液状塞栓懸濁液を遠位端を超えて送達するルーメンと、を有するハンドル又はハブを具えていてもよい。遠位端は、例えばガイドワイヤ及び/又はアクセスシースを介して患者の脈管構造に経皮的にアクセスして、塞栓されている標的位置へ進めるといった、従来の方法を用いて、患者の身体内に導入することができる。
【0101】
次いで、ユーザは、液状塞栓懸濁液の標的位置への送達を進めることができる。液状塞栓懸濁液をさらに混合する必要があることをユーザが感じた場合(例えば、懸濁液が時間のかかる手順の過程で沈降し始めた場合)はいつでも、ユーザは二方向マニホールド406を図7A及び7Bに示す構成(近位ポート413と中間ポート414とが流体連通する)に戻して、第1の流路に沿って混合構成要素405を通って、懸濁液401と受入402シリンジとの間を通す工程を繰り返して、液状塞栓懸濁液の追加の混合と均質化を図ることができる。塞栓懸濁液が送達されたら、カテーテルは、従来の方法を用いて、一又はそれ以上の位置に向けて、その他の位置を塞栓する、及び/又は、取り除いてもよい。
【0102】
例示的な実施形態の前述の開示は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は本発明を開示した正確な形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載された実施形態の多くの変形及び修正は、上記の開示に照らして当業者に明らかであろう。
【0103】
さらに、代表的な実施形態を説明する際に、本明細書は、方法及び/又はプロセスを特定の一連のステップとして提示したものである。しかしながら、方法又はプロセスが本明細書に記載のステップの特定の順序に依存していない限り、方法又はプロセスは説明されたステップの特定の順序に限定されるべきではない。当業者が理解するように、他の一連のステップも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されているステップの特定の順序は、特許請求の範囲に対する制限として解釈されるべきではない。
【0104】
本発明は様々な修正及び代替を受け入れることができ、その特定の例が図面に示されており、本明細書で詳細に説明されている。しかし、本発明は開示された特定の形態又は方法に限定されるべきではなく、反対に、本発明は添付の特許請求の範囲内に含まれるすべての修正、等価物及び代替物を網羅するものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C