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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】保定具
(51)【国際特許分類】
   A61D 3/00 20060101AFI20230308BHJP
   A01K 15/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61D3/00 B
A01K15/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020084927
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178013
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】陳 稼寧
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209645133(CN,U)
【文献】米国特許第7458339(US,B1)
【文献】登録実用新案第3217326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61D 3/00
A01K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢動物の保定具であって、
表裏に貫通する開口部が中央部に設けられると共に可撓性を有するシート部と、前記シート部を前記四肢動物に対して固定する固定具とを有し、
前記シート部は、前記開口部の貫通方向と直交する第1方向にて前記開口部を挟んで配置される一対の幅広部と、前記貫通方向及び前記第1方向と直交する第2方向にて前記開口部を挟んで配置されると共に前記幅広部の前記第1方向における幅寸法よりも前記第2方向における幅寸法が小さな一対の幅狭部とを有し、
前記固定具は、前記幅狭部の各々に取り付けられている
ことを特徴とする保定具。
【請求項2】
前記第2方向における前記シート部の外縁は、前記第1方向における前記シート部の中央部が前記開口部に向けて窪むように屈曲あるいは湾曲されていることを特徴とする請求項1記載の保定具。
【請求項3】
前記シート部は、中央部に前記開口部が設けられたフィルム部材と、前記フィルム部材の外縁と前記開口部に沿った内縁とに接続された可撓性フレーム部材とを有することを特徴とする請求項1または2記載の保定具。
【請求項4】
前記フィルム部材は、可視光を透過可能な透明部材によって形成されていることを特徴とする請求項3記載の保定具。
【請求項5】
前記フィルム部材の外縁に接続された前記可撓性フレーム部材は、
前記第2方向に沿った方向から見て、前記第1方向における中央部が前記貫通方向の一方側に膨出するように湾曲されている
ことを特徴とする請求項3または4記載の保定具。
【請求項6】
前記固定具が連結可能であると共に前記四肢動物に装着可能なハーネスを有し、
前記固定具は、前記ハーネスを介して前記四肢動物に対して固定される
ことを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載の保定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
犬や猫等の動物は、治療の際の恐怖により本能的に暴れる場合がある。このため、医療機関の獣医及びスタッフは、治療にあたり、多くの人数で保定を行っている。例えば、大型犬等であると、保定のために三人以上のスタッフを要する。例えば、特許文献1においては、分割可能な強度の高い筒状の保定具が開示されている。このような特許文献1に開示された保定具によれば、頭部及び四肢が保定具から出るように動物の胴部に保定具を装着することによって、動物を拘束することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-212540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように強度の高い保定具によって動物を拘束すると、治療等の処置以外であっても動物の動きを大きく制限する必要が生じ、動物へ与えるストレスが大きくなる懸念がある。また、ペット等の動物である場合には、動物に対する拘束度が高い保定具は、飼い主に与えるストレスも大きくなる懸念がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、四肢動物に対する保定具であって、不必要に動物の動きを制限することなく、必要に応じて動物の動きを制限可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、四肢動物の保定具であって、表裏に貫通する開口部が中央部に設けられると共に可撓性を有するシート部と、上記シート部を上記四肢動物に対して固定する固定具とを有し、上記シート部が、上記開口部の貫通方向と直交する第1方向にて上記開口部を挟んで配置される一対の幅広部と、上記貫通方向及び上記第1方向と直交する第2方向にて上記開口部を挟んで配置されると共に上記幅広部の上記第1方向における幅寸法よりも上記第2方向における幅寸法が小さな一対の幅狭部とを有し、上記固定具が、上記幅狭部の各々に取り付けられているという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第2方向における上記シート部の外縁は、上記第1方向における上記シート部の中央部が上記開口部に向けて窪むように屈曲あるいは湾曲されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記シート部が、中央部に上記開口部が設けられたフィルム部材と、上記フィルム部材の外縁と上記開口部に沿った内縁とに接続された可撓性フレーム部材とを有するという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記フィルム部材が、可視光を透過可能な透明部材によって形成されているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記フィルム部材の外縁に接続された上記可撓性フレーム部材が、上記第2方向に沿った方向から見て、上記第1方向における中央部が上記貫通方向の一方側に膨出するように湾曲されているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記固定具が連結可能であると共に上記四肢動物に装着可能なハーネスを有し、上記固定具が、上記ハーネスを介して上記四肢動物に対して固定されるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、固定具によって幅狭部を四肢動物の肩部に固定することによって、一方の幅広部が四肢動物の頭部と前脚との間に配置され、他方の幅広部が四肢動物の前脚の後脚との間に配置される。つまり、本発明の保定具によれば、四肢動物の体を、頭部、前脚部、後脚部の3箇所に区切ることができ、治療等を施す箇所に他の箇所が入り込むことを容易に防ぐことができる。したがって、例えば頭部に治療等を施す場合には、本発明の保定具によって、治療等を施している空間に前脚や後脚が侵入することを防ぐことができ、多くのスタッフによって、前脚や後脚を抑える必要がない。したがって、本発明によれば、必要時に確実に四肢動物の動きを制限することができる。一方で、本発明においては、質感が柔らかい可撓性を有するシート部によって、四肢動物を押さえる。したがって、作業者がシート部を押さえていなければ、シート部は容易に変形することができ、動物は自由に動くことが可能となる。したがって、本発明によれば、不必要に動物の動きを制限することなく、必要に応じて動物の動きを制限することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における保定具の犬に装着した状態を示す前方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における保定具の犬に装着した状態を示す後方から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における保定具が備えるシート部の上面図である。
図4】本発明の一実施形態における保定具の犬に装着した状態を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態における保定具の装着動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る保定具の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の保定具1の犬D(四肢動物)に装着した状態を示す前方から見た斜視図である。図2は、本実施形態の保定具1の犬Dに装着した状態を示す後方から見た斜視図である。本実施形態の保定具1は、犬D等の四肢動物に対して装着し、医療処置の場合に必要に応じて四肢動物の動作を制限するものである。なお、本実施形態の保定具1は、犬Dのみに用いるものではなく猫やウサギ等の四肢動物に用いることができる。また、四肢動物に対する処置としては、医療処置に限られるものではなく、トリミング等の処置も含まれる。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の保定具1は、シート部2と、固定具3と、ハーネス4とを備えている。図3は、シート部2及び固定具3を示す上面図である。図3に示すように、シート部2は、一方向に長く、一方向と直交する方向に短い略矩形状とされている。以下の説明においては、シート部2の長い辺に沿った方向を長手方向(第1方向)と称し、シート部2の短い辺に沿った方向を短手方向(第2方向)と称する。
【0018】
シート部2は、表裏に貫通する開口部2aが中央部に設けられている。この開口部2aは、長手方向を長軸とし、短手方向を短軸とする楕円形状とされている。なお、開口部2aは、長手方向を長軸とし、短手方向を短軸とする長円形状とされても良い。また、シート部2は、全体が樹脂等によって形成されており、可撓性を有している。
【0019】
図3に示すように、シート部2は、開口部2aの貫通方向と直交する方向である長手方向にて開口部2aを挟んで配置される一対の幅広部2bを有している。また、シート部2は、開口部2aの貫通方向及び長手方向と直交する方向である短手方向にて開口部2aを挟んで配置される一対の幅狭部2cとを有している。つまり、本実施形態においてシート部2は、2つの幅広部2bと、2つの幅狭部2cとを有しており、2つの幅広部2b同士が、2つの幅狭部2cによって接続された形状を有している。
【0020】
図3に示すように、幅広部2bの長手方向における幅寸法d1は、幅狭部2cの短手方向における幅寸法d2よりも大きく設定されている。つまり、本実施形態においては、幅広部2bの長手方向における幅寸法d1よりも短手方向における幅寸法d2が小さな一対の幅狭部2cを有している。なお、ここでの幅寸法d1は、開口部2aの長軸と重なる直線上において、開口部2aの一方の端からシート部2の同方向の外端までの寸法を示している。また、幅寸法d2は、開口部2aの短軸と重なる直線上において、開口部2aの一方の端からシート部2の同方向の外端までの寸法を示している。
【0021】
このような幅広部2bと幅狭部2cとを有することによって、図1及び図2に示すように、シート部2は、幅狭部2cの長手方向における中央部を持ち上げることによって、幅広部2bが自重によって幅狭部2cから前後(長手方向における一方側と他方側)に垂下されるように湾曲される。このように、幅狭部2cの長手方向における中央部を持ち上げることによって、幅広部2bが自重によって幅狭部2cから前後に垂下されるように湾曲されたシート部2の形状を、以下装着形状と称する。
【0022】
図4は、本実施形態の保定具1が犬Dに装着された状態を模式的に示す側面図である。図4に加えて、図1及び図2に示すように、犬Dに装着されることによって装着形状とされたシート部2は、幅狭部2cの中央部が犬Dの肩部に固定されることによって、一方の幅広部2bが犬Dの頭部と前脚との間に配置され、他方の幅広部2bが犬Dの前脚と後脚との間に配置される。つまり、一方の幅広部2bを押さえることによって、犬Dの頭部が前脚側に進入すること、犬Dの前脚が頭部側に進入することを防止できる。また、他方の幅広部2bを押さえることによって、犬Dの前脚が後脚側に進入すること、犬Dの後脚が前脚側に進入することを防止できる。
【0023】
このようなシート部2は、中央部に開口部2aが設けられたフィルム部材10と、フィルム部材10の縁部に設けられた可撓性フレーム部材11とを備えている。フィルム部材10は、可視光を透過可能な材料によって形成されており、例えばポリプロピレンによって形成されている。このようなフィルム部材10は、上記縁部として、開口部2aに沿った内縁と、フィルム部材10の最外側に位置する外縁とを有している。
【0024】
可撓性フレーム部材11は、フィルム部材10の内縁と外縁との各々に接続されている。つまり、本実施形態においては、シート部2は、2つの可撓性フレーム部材11を備えている。各々の可撓性フレーム部材11は、フィルム部材10の内縁あるいは外縁に沿った環状とされている。これらのフィルム部材10は、シート部2が装着姿勢とされた場合に、幅広部2bの自重によって撓む程度の強度とされているものの、フィルム部材10よりも強度が高く形成されている。例えば、可撓性フレーム部材11は、ポリウレタン樹脂等の可撓性を有する樹脂材によって形成されている。これらの可撓性フレーム部材11は、シート部2の形状を保持する。
【0025】
フィルム部材10の外縁に接続された可撓性フレーム部材11は、短手方向に沿った方向から見て、長手方向における中央部が貫通方向の一方側に膨出するように湾曲されている。つまり、本実施形態においては、シート部2に外力が作用していない状態において、フィルム部材10の外縁に接続された可撓性フレーム部材11がシート部2を装着形状に近づくように付勢するように形状設定されている。このため、幅狭部2cを持ち上げた場合に、シート部2が容易に装着形状となる。
【0026】
また、本実施形態においては、図3に示すように、開口部2aの貫通方向に沿った方向から見て、シート部2の外縁は、上記長手方向におけるシート部2の中央部が開口部2aに向けて窪むように屈曲されている。このため、幅狭部2cの短手方向における幅寸法d2を小さくしつつ、幅広部2bの短手方向の寸法d3を大きく確保することが可能となる。このため、幅狭部2cをより容易に湾曲することが可能となる。
【0027】
このようなシート部2は、開口部2aの長軸(シート部2の短手方向における中央)を中心とする線対称形状とされ、さらに開口部2aの短軸(シート部2の長手方向における中央)を中心とする線対称形状とされている。
【0028】
固定具3は、シート部2の幅狭部2cの各々に対して設けられている。これらの固定具3は、シート部2から開口部2aの内側に突出するように設けられており、ハーネス4の後述する被固定部4cに対して接続される。また、これらの固定具3は、ハーネス4の被固定部4cに対して着脱可能とされている。つまり、固定具3が被固定部4cに接続されることによってシート部2がハーネス4を介して犬Dに固定され、固定具3が被固定部4cから脱離されることによってシート部2を犬Dから取り外される。
【0029】
図3等に示すように、固定具3は、シート部2の長手方向における中央部に配置されている。また、2つの固定具3は、開口部2aの長軸を挟み、当該長軸から同距離に配置されている。つまり、このような固定具3は、開口部2aの長軸を中心として対称の位置に配置されている。上述のようにシート部2は、開口部2aの長軸(シート部2の短手方向における中央)を中心とする線対称形状とされ、さらに開口部2aの短軸(シート部2の長手方向における中央)を中心とする線対称形状とされている。このようなシート部2に対して固定具3が開口部2aの長軸を挟んで当該長軸から同距離に配置されているため、固定具3を含めてシート部2は、開口部2aの長軸(シート部2の短手方向における中央)を中心とする線対称形状とされ、さらに開口部2aの短軸(シート部2の長手方向における中央)を中心とする線対称形状とされている。したがって、ハーネス4に対して、シート部2を取り付ける場合には、シート部2の長手方向における一方の端部と他方の端部とは、いずれが犬Dの前方に向けて配置されてもハーネス4に対して装着が可能とされている。
【0030】
これらの固定具3がシート部2の幅狭部2cに設けられているため、固定具3がハーネス4の被固定部4cに接続されることによって、シート部2は、幅狭部2cを頂部として幅広部2bが垂下するように湾曲されて装着形状となる。なお、固定具3とハーネス4の被固定部4cは、一般的に用いられる樹脂製のバックル機構によって構成することができる。
【0031】
ハーネス4は、犬Dに対して直接的に装着される部材であり、図1及び図2に示すように、犬Dの首を囲むように配置される首輪部4aと、前脚よりも後側にて犬Dの胴部を囲むように配置される胴輪部4bとを備えている。これらの首輪部4aと胴輪部4bとは、犬Dの肩部の位置にて一体的に接続されている。首輪部4aと胴輪部4bとの接続部位に対して、シート部2に固定された固定具3が接続される被固定部4cが設けられている。このような首輪部4a及び胴輪部4bは、例えば、ABS樹脂によって形成されている。
【0032】
図5は、本実施形態の保定具1を犬Dに装着する様子を示す斜視図である。なお、本実施形態の保定具1を犬Dに装着する場合には、シート部2をハーネス4に装着するよりも前に、まずハーネス4を犬Dに対して装着する。
【0033】
シート部2をハーネス4に対して装着する場合には、図5(a)に示すように、長手方向を犬Dの前後方向に合わせ、犬Dの前脚を上方から開口部2aに差し込ませる。このとき、犬Dの後脚は、シート部2の外側に配置させる。
【0034】
なお、上述のように、本実施形態の保定具1において、シート部2は、固定具3を含めて、開口部2aの長軸(シート部2の短手方向における中央)を中心とする線対称形状とされ、さらに開口部2aの短軸(シート部2の長手方向における中央)を中心とする線対称形状とされている。したがって、シート部2を配置する場合には、シート部2の長手方向における一方の端部と他方の端部との、いずれを犬Dの前方に向けて配置してもシート部2をハーネス4に対して装着することができる。
【0035】
続いて、シート部2の幅狭部2cを上方に向かって持ち上げる。このように幅狭部2cを持ち上げると、図5(c)に示すように、幅狭部2cの長手方向における中央を頂部として、幅広部2bが犬Dの前脚の前後にて垂れ下がるようにしてシート部2が湾曲される。その後、幅狭部2cに設けられた固定具3をハーネス4の被固定部4cに固定することによって、シート部2が犬Dに対して固定される。
【0036】
シート部2が固定具3を介して犬Dに対して装着されると、図4等に示すように、一方の幅広部2bが犬Dの頭部と前脚との間に配置され、他方の幅広部2bが犬Dの前脚と後脚との間に配置される。つまり、一方の幅広部2bを押さえることによって、犬Dの頭部が前脚側に進入すること、犬Dの前脚が頭部側に進入することを防止できる。また、他方の幅広部2bを押さえることによって、犬Dの前脚が後脚側に進入すること、犬Dの後脚が前脚側に進入することを防止できる。
【0037】
また、シート部2を犬Dから取り外す場合には、固定具3をハーネス4の被固定部4cから外し、幅狭部2cを下げる。これによって、幅広部2bの先端部が床に当たり、幅狭部2cを下げるに連れてシート部2が平坦化される。これによって、犬Dの前脚を開口部2aから容易に抜き出すことが可能となり、犬Dからシート部2を容易に取り外すことが可能となる。
【0038】
以上のような本実施形態の保定具1は、犬Dの保定具1であって、表裏に貫通する開口部2aが中央部に設けられると共に可撓性を有するシート部2と、シート部2を犬Dに対して固定する固定具3とを有する。また、本実施形態の保定具1においては、シート部2が、開口部2aの貫通方向と直交する長手方向にて開口部2aを挟んで配置される一対の幅広部2bと、貫通方向及び長手方向と直交する短手方向にて開口部2aを挟んで配置されると共に幅広部2bの長手方向における幅寸法d1よりも短手方向における幅寸法d2が小さな一対の幅狭部2cとを有し、固定具3が、幅狭部2cの各々に取り付けられている。
【0039】
本実施形態の保定具1においては、固定具3によって幅狭部2cを犬Dの肩部に固定することによって、一方の幅広部2bが犬Dの頭部と前脚との間に配置され、他方の幅広部2bが犬Dの前脚の後脚との間に配置される。つまり、本実施形態の保定具1によれば、犬Dの体を、頭部、前脚部、後脚部の3箇所に区切ることができ、治療等を施す箇所に他の箇所が入り込むことを容易に防ぐことができる。したがって、例えば頭部に治療等を施す場合には、本実施形態の保定具1によって、治療等を施している空間に前脚や後脚が侵入することを防ぐことができ、多くのスタッフによって、前脚や後脚を抑える必要がない。したがって、本実施形態の保定具1によれば、必要時に確実に犬Dの動きを制限することができる。一方で、本実施形態の保定具1においては、質感が柔らかい可撓性を有するシート部2によって、犬Dを押さえる。したがって、作業者がシート部2を押さえていなければ、シート部2は容易に変形することができ、動物は自由に動くことが可能となる。したがって、本実施形態の保定具1によれば、不必要に動物の動きを制限することなく、必要に応じて動物の動きを制限することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の保定具1においては、短手方向におけるシート部2の外縁は、長手方向におけるシート部2の中央部が開口部2aに向けて窪むように屈曲されている。このため、幅狭部2cの短手方向における幅寸法d2を小さくしつつ、幅広部2bの短手方向の寸法d3を大きく確保することが可能となる。このため、本実施形態の保定具1によれば、幅狭部2cをより容易に湾曲することが可能となる。また、長手方向におけるシート部2の中央部が開口部2aに向けて窪むように屈曲されることによって、幅狭部2cの短手方向における幅寸法d2を小さくできるため、前脚の治療の際にシート部2が作業の邪魔となることを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態の保定具1においては、シート部2が、中央部に開口部2aが設けられたフィルム部材10と、フィルム部材10の外縁と開口部2aに沿った内縁とに接続された可撓性フレーム部材11とを有している。このため、フィルム部材10によってシート部2を容易に変形することを可能としつつ可撓性フレーム部材11によってシート部2の形状を保つことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の保定具1においては、フィルム部材10が、可視光を透過可能な透明部材によって形成されている。このため、シート部2によって犬Dの動きを押さえている場合であっても、シート部2の先の犬Dの様子を目視することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の保定具1においては、フィルム部材10の外縁に接続された可撓性フレーム部材11が、短手方向に沿った方向から見て、長手方向における中央部が貫通方向の一方側に膨出するように湾曲されている。つまり、本実施形態の保定具1においては、シート部2に外力が作用していない状態において、フィルム部材10の外縁に接続された可撓性フレーム部材11がシート部2を装着形状に近づくように付勢するように形状設定されている。このため、幅狭部2cを持ち上げた場合に、シート部2を容易に装着形状とすることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の保定具1においては、固定具3が連結可能であると共に犬Dに装着可能なハーネス4を有し、固定具3が、ハーネス4を介して犬Dに対して固定される。このため、本実施形態の保定具1においては、固定具3を固定する部位を確実に確保することが可能となる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、保定具1がハーネス4を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の保定具は、ハーネス4を備えない構成を採用することも可能である。例えば、予め犬Dがハーネスを装着しており、このハーネスに固定具3が固定可能であるような場合には、ハーネス4を備えない構成を採用することが可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、短手方向におけるシート部2の外縁が長手方向におけるシート部2の中央部が開口部2aに向けて窪むように屈曲された構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、短手方向におけるシート部2の外縁が長手方向におけるシート部2の中央部が開口部2aに向けて窪むように湾曲された構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1……保定具、2……シート部、2a……開口部、2b……幅広部、2c……幅狭部、3……固定具、4……ハーネス、4a……首輪部、4b……胴輪部、4c……被固定部、10……フィルム部材、11……可撓性フレーム部材、D……犬(四肢動物)
図1
図2
図3
図4
図5