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特許7240004少なくともヒトインスリンA21Gおよび食事作用性グルカゴンサプレッサーを含む水溶液注射剤の形態の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】少なくともヒトインスリンA21Gおよび食事作用性グルカゴンサプレッサーを含む水溶液注射剤の形態の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20230308BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230308BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230308BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K38/28
A61K38/22
A61K38/17
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
A61P3/10
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020503975
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2018070510
(87)【国際公開番号】W WO2019020820
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】1757172
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1757184
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1855250
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508090088
【氏名又は名称】アドシア
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヨウ-ピン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530249(JP,A)
【文献】特表2016-531847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0222251(US,A1)
【文献】国際公開第2016/092026(WO,A1)
【文献】特表2014-532667(JP,A)
【文献】Diabetes Obes. Metab. (2013) vol.15, issue 6, p.485-502
【文献】J. Med. Econ. (2015) vol.18, no.8, p.573-585
【文献】Peptides (2007) vol.28, issue 4, p.935-948
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/28
A61K 38/22
A61K 38/17
A61K 9/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液注射剤の形態であって、pHが3.5~4.4であり、レギュラーと呼ばれるヒトインスリンA21Gを少なくとも一つ、及び少なくとも一つの食事作用性のグルカゴンサプレッサーを含み、
前記グルカゴンサプレッサーが、プラムリンタイド、エキセナチド及びリキシセナチドから成る群から選択される少なくとも一つである
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
ヒトインスリンA21Gの濃度が2~20mg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒトインスリンA21Gの濃度が3.5mg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
食事作用性のグルカゴンサプレッサーペプチドの濃度が0.01~10mg/mLであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
溶液のpHが3.8~4.2であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
溶液のpHが4.0であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに亜鉛塩を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
さらにm-クレゾールを含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
さらにポリソルベート賦形剤(Tween(登録商標)20)を含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
さらにポロキサマー188賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
さらにメチオニンを含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
糖尿病治療で使用されることを意図しており、食前にボーラスで投与されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
糖尿病治療で使用されることを意図しており、食後血糖のコントロールを改善するために投与されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
糖尿病治療で使用されることを意図しており、食後血糖のコントロールを改善し、プラムリンタイドの有害作用を減少させるために投与されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
糖尿病治療方法で使用されることを意図しており、インスリンにより引き起こされる食事量を減少させることを可能にすることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事作用性であるヒトインスリンA21Gおよび特に食事作用性であるグルカゴンサプレッサーを少なくとも含む組成物の注入による、糖尿病治療及び食後高血糖のコントロールの改善を可能にするための治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
1型糖尿病は、膵臓のベータ細胞の滅失を伴う自己免疫疾患である。これらの細胞はインスリンを産生することが公知であり、その主要な機能は周辺組織のグルコースの利用を調整することである(参考文献:Gerich 1993 Control of glycaemia)。したがって、1型糖尿病患者は慢性高血糖症を患い、この高血糖を制限するために、外因性インスリンを自己投与しなければならない。インスリン治療は、これらの患者の寿命を大幅に変化させている。
【0003】
現在まで1型糖尿病患者は、食事時の血糖をコントロールするための速攻性の食事前のインスリンおよび日中および夜間の一日を通して血糖をコントロールするための持効型の基礎インスリンの2種類のインスリンを使用している。速攻性のインスリンは作用の発現によって特徴付けられる、数種類のタイプが存在する。例えば、レギュラーインスリンといわれるヒトインスリンは、いわゆる超速攻型インスリンアナログ、例えばインスリンリスプロ(ヒューマログ(Humalog)(登録商標)、イーライリリー(Eli Lilly)社)またはインスリンアスパルト(ノボラピッド(Novorapid)(登録商標)、ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)社)と比較して、遅効性を有する。そのため、ヒトインスリンは平均して食事の約30分前に投与されなければならないが、インスリンアナログは食事の15分前、または、食中に投与できる。加えて、インスリンアナログはヒトインスリンより良好な食後血糖のコントロールをもたらすと考えられ、これは、ヨーロッパおよび米国の患者の大多数が今日、ヒトインスリンよりも速攻性のある超速攻型インスリンアナログを使用する理由である。
【0004】
しかしながら、超速攻型インスリンアナログの場合さえ、食事摂取後にこれらの外因性食事インスリンによって保証される血糖のコントロールは最適ではない。これは、これらの患者が健常者とは対照的に食事摂取後にグルカゴンを産生し、それが肝臓に貯蔵されるグルコースの一部の放出をもたらすという事実と部分的に関連している。グルカゴンに仲介されるこのグルコース産生は、これらの患者の食後高血糖の問題を悪化させ、インスリンの過剰な使用をもたらす。
【0005】
食後血糖のコントロールのこの問題は、疾患の結果としてインスリンおよびアミリンを産生する能力を非常に顕著に損失した場合の、インスリンにより治療される2型糖尿病患者に、類似している。
【0006】
グルカゴンサプレッサー、特にペプチドおよび/またはホルモン類は、食事摂取後のグルカゴン産生を阻害することができ、それは食後血糖のコントロールの顕著な改善をもたらすことが証明された。例えば、膵臓のベータ細胞によって産生されるホルモンであるアミリンは、1型糖尿病患者でもその産生が不足するものであるが、食後血糖のコントロールにおいて、鍵となる重要な役割を果たす。アミリンはまた、「膵島アミロイドポリペプチド」またはIAPPという名称で知られており、インスリンと共貯蔵および共分泌される、37アミノ酸からなるペプチドである(Schmitz 2004 Amylin Agonists)。このペプチドは、膵臓のアルファ細胞によるグルカゴン産生のブロッカーであることが記載されている。したがって、インスリンは血中のグルコース濃度を低下させることができ、一方、アミリンは内因性グルカゴンの産生または分泌を阻害することにより血中への内在性グルコースの侵入を減少することができるため、インスリンおよびアミリンは補完的および相乗的な役割を果たす。
【0007】
しかしながら、ヒトアミリンは、可溶性および安定性に関して医薬品の要件と適合しない特性を有する(Goldsbury CS、 Cooper GJ、 Goldie KN、 Muller SA、 Saafi EL、 Gruijters WT、 Misur MP、 Engel A、 Aebi U、 Kistler J:Polymorphic fibrillar assembly of human amylin. J Struct Biol 119:17-27、1997)。アミリンは、アミロイド線維を形成し、水不溶性プラークの形成をもたらすことが知られている。その結果、これらの可溶性に関する課題を解決するためにアナログを開発することが必要であった。
【0008】
アミリン(Amylin)社は、ヒトアミリンの物理的安定性の不足を補うために、アミリンアナログであるプラムリンタイドを開発した。シムリン(Symlin)(登録商標)という名称で市販されているこの製品は、2005年にインスリン治療の補完として、1型および2型糖尿病の治療のためにFDAによって承認された。数時間という比較的短い半減期を考慮して、食後血糖のコントロールを改善するために、皮下経路で食前に毎日3回投与しなければならない。このペプチドはpH4.0で配合され、溶液のpHが5.5を超えると線維化することが報告されている。アナログの異型は、US5,686,411に記載されている。
【0009】
「食事性」または「速攻型」と呼ばれるアミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニストは、より長い半減期を持ちながらアミリンの効果を再現する。食事時に血糖をコントロールすることができるアミリンのこれらの誘導体は、8時間未満の半減期を持つことができる。この半減期は、ヒトへの皮下注射後の消失の見かけの半減期である。これらのアミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニストの半減期は、5時間未満、特に4時間未満、さらには3時間未満であり得る。
【0010】
しかしながら、アミリンまたはアミリンアナログ、特にプラムリンタイドを含む組成物は、患者に特定の有害作用を引き起こす可能性がある。特に、これらの組成物は患者に悪心を引き起こす可能性がある。
【0011】
別の生理学的ペプチドであるGLP-1も、食事摂取後のグルカゴン分泌の抑制に関してアミリンと同様の役割を果たすと記載されている。GLP-1はインスリン分泌促進薬としての役割でも知られており、特に2型糖尿病患者でインスリンの補体として使用すると特に効果的である。これらの作用はグルコース依存性であり、低血糖のリスクを最小限に抑える。GLP-1 RAは、これまで2型糖尿病患者にのみ承認されている。
【0012】
同様に、ヒトGLP-1は、その半減期が非常に短いため、治療的処置として使用できない。さまざまなGLP-1誘導体、RAと呼ばれるGLP-1受容体アゴニスト、またはGLP-1アナログは、GLP-1の効果を再現するが、一方で半減期はより長い。これらのGLP-1誘導体は、それぞれの半減期に応じて3つのグループに分けられる:食事時の血糖をコントロールするための速攻性、または食事性のもの(半減期8時間未満)、1日の必要量をカバーし、1日を通して作用するもの(8時間または10時間を超える半減期)、1週間の必要量をカバーし、1週間を通して作用するもの(48時間を超える半減期)。食事作用性のGLP-1 RAに関して、これまでに承認された2つのペプチドは、エキセナチド(バイエッタ(Byetta)(登録商標)、アストラゼネカ(AstraZeneca)社、1日2回投与)およびリキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標)、サノフィ(Sanofi)社、1日1回投与)がある。これらの2つのGLP-1 RAはpHは約4近くで配合され、プラムリンタイドのように食事の1時間前に投与する必要がある。
【0013】
インスリン依存患者にとって、これらの異なる速攻型グルカゴンサプレッサー化合物を使用する事に関する主な困難性の1つは追加注射の回数であり、これは2~4回のインスリンの注射に加えて、毎日1~3回の範囲で注射される。したがって、患者の治療を複雑にすることなくインスリンに相補的なこれらの化合物の使用を可能にするために、食事性のインスリンと食事作用性のグルカゴンサプレッサーを組み合わせることができることが重要である。さらに、食後血糖のコントロール、特に食後高血糖のコントロールを改善するために、これらのホルモンは両方とも食事に応答して分泌されるため、生理機能をより細かく模倣することが可能であり、よって糖尿病をより良く治療することができるであろう。
【0014】
しかしながら、食事性インスリンとこれらの目的のペプチドは水溶液中で相溶しない。実際、食事性インスリンは7に近いpHで最適な化学的安定性があるが、アミリンまたはGLP-1の誘導体は生理的pHに近いpHでは物理的および化学的に不安定である。
【0015】
この困難性は、食事性インスリンをアミリン誘導体から分離した状態に保つための2つのリザーバーを含むポンプの設計につながった。ロシュ(Roche)社のUS2016/001002は、このようなポンプは単一の医療機器を使用することでアミリンと食事性インスリンの同時投与を可能にすると説明している。しかし、より単純で、および/または故障のリスクが低い既存の医療機器を使用するために、これらのホルモンを水溶液中で混合できることが望ましいであろう。
【0016】
これらのホルモンで水溶液に混合するという問題の別の解決策は、水を有機溶媒に置き換えることである。ゼリス(XERIS)社のWO2013067022は、有機溶媒中の溶液中にアミリンおよびインスリンを含む組成物を記載している。ただし、DMSOなどの有機溶媒を使用すると、糖尿病などの慢性疾患の治療における患者の安全性の問題が生じる。さらに、有機溶媒は、特に注射器の特定の成分を溶解するため、注射器において問題となり得る。したがって、水溶液の形態でこれらの組み合わせを開発することが望ましい。
【0017】
水溶液中の安定性の問題は、混合物を固形状で調製することにより回避された。ノボ ノルディスク社の特許出願EP2060268は、鼻への適用のための霧状粉末の形態のインスリンおよびプラムリンタイドの製剤が記載されている。しかしながら、現在までに最もよく使用されている投与経路は、既製品の水溶液の入手を必要とする皮下経路である。
【0018】
別のアプローチは、このアミリン誘導体が物理的に安定であるpHで食事性インスリンをアミリン誘導体と組み合わせることである。バイオデル(Biodel)社のUS20090192075は、pH4.0でヒトインスリン、プラムリンタイドおよび亜鉛キレート剤を含む液体組成物を記載している。この出願は、亜鉛キレート剤の存在によるヒトインスリンの速攻性を説明している。しかしながら、ヒトインスリンは酸性pHでは化学的に安定しないことが知られており、この技術はEPおよび/または米国薬局方の基準を満たさない。
【0019】
代替のアプローチは、酸性のpHにおける安定性を向上するために食事性インスリンの構造を変化することがある。WO2007104786は、酸性pHで可溶性である超速攻型インスリンアナログA21G、B28D、desB30およびA21G、B28E、desB30を含む組成物を例示している。
【0020】
WO2007104786はまた、中性pH下および界面活性剤、特にグリセロリン酸誘導体、特にジミリストイルグリセロホスホグリセロール(DMPG)の存在下での超速攻型インスリン組成物、特にB28D(インスリンアスパルト)を提示しており、それはThTにより測定される安定性が酸性pHでの超速攻型インスリンアナログA21G、B28D、desB30およびA21G、B28E、desB30の組成物の安定性よりも高い。
【0021】
ほとんどの場合、食事前のインスリンとプラムリンタイドの組み合わせを含む従来技術の組成物は、異なるタイプの食事性インスリンを説明しているが、それらの例はいわゆる超速攻型インスリンアナログを含む組成物に関するものであり、後者はヒトインスリンよりも効果的であると考えられている。
【0022】
出願人は、驚くべきことに、いわゆる「超速攻型」インスリンアナログよりも速攻性がない、「レギュラー」と呼ばれる、つまりA鎖の21位のアスパラギン残基がグリシン残基によって置換されていることのみがヒトインスリンとは異なるインスリンであるヒトインスリンA21Gと、食事作用性のグルカゴンサプレッサーとがpH3.5から4.4の範囲において水溶液中で組み合わさったものを含む組成物は、いわゆる超速攻型インスリンよりも食後血糖のより良好なコントロールを得ることができることを示した。
【0023】
さらに、出願人は驚くべきことに、水溶液中のpH3.5から4.4の範囲の水溶液中で食事作用性のグルカゴンサプレッサーと組み合わせたヒトインスリンA21Gを含む組成物が、医薬要件に適合し、従来技術で提案された解決策よりもより高い物理的および化学的安定性を示すことを示した。
【0024】
当業者には周知のことであるが、組み合わせを行う場合、組み合わせた製品の薬物動態および物理的および化学的安定性の特性を予測することは非常に困難であるので、先行技術と比較してより良好な食後高血糖のコントロールおよび向上した物理的および化学的安定性を示す水溶液注射剤の形態での組成物の獲得は注目に値するものである。
【0025】
さらに、活性物質によって生じる可能性のある有害作用の全てまたは一部を減少、さらには排除することを可能にする組成物も求められている。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、少なくともいわゆるレギュラーヒトインスリンA21Gおよび少なくとも一つの食事作用性のグルカゴンサプレッサーを含む、pHが3.5~4.4である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。
【0027】
実施態様によれば、食事作用性のグルカゴンサプレッサーは、アミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニスト、GLP-1アナログまたはGLP-1 RAとも呼ばれるGLP-1受容体アゴニストである。
【0028】
出願人は、pH3.5から4.4の本発明による製剤が、食事時の使用に適合する薬物動態特性を有し、食後血糖のより良好なコントロールを可能にすることを観察した。
【0029】
さらに、出願人は、これらの製剤がプラムリンタイドの吸収を遅らせることを示した。これは、特に、プラムリンタイド単独の投与と比較して、有意に遅延するプラムリンタイドの血漿ピーク(tmax)および/または有意に減少するプラムリンタイドの初期血漿曝露(AUC0-30min)によって特徴付けられる。
【0030】
この遅延は、特に吐き気に関する限り、プラムリンタイドの有害作用を減少させ、さらには排除することを可能にする。
【0031】
本発明はまた、食後血糖のコントロールを改善するための、特に食事作用性である、ヒトインスリンA21Gおよびグルカゴンサプレッサーを少なくとも含む、pH3.5から4.4である、水溶液注射剤の形態の組成物の使用に関する。
【0032】
本発明はまた、食前にボーラスで投与されることを特徴とする、糖尿病治療において使用されることが意図される本発明による組成物に関する。
【0033】
本発明はまた、食後血糖のコントロールを改善するために投与されることを特徴とする、糖尿病治療において使用されることが意図される本発明による組成物に関する。
【0034】
本発明はまた、食後血糖のコントロールを改善し、プラムリンタイドの有害作用を減少させるために投与されることを特徴とする、糖尿病治療において使用されることが意図される本発明による組成物に関する。
【0035】
本発明はまた、インスリンによって誘発される食事量を減少することができることを特徴とする、糖尿病治療において使用されることが意図される本発明による組成物に関する。
【0036】
実施態様によれば、食事量の減少は、注射から注射後4時間までの期間に関する。
【0037】
実施態様によれば、食事量の減少は、注射から注射後3時間までの期間に関する。
【0038】
実施態様によれば、食事量の減少は、注射から注射後2時間までの期間に関する。
【0039】
実施態様によれば、食事量の減少は、注射から注射後1時間までの期間に関する。
【0040】
本発明は、上記の組成物を含む安定な医薬組成物にも関する。
【0041】
糖尿病治療用の注射医薬製剤を得ることができる要件は、特に以下の通りである:
- 30℃で少なくとも2週間または1か月間(複数回使用)、5℃で少なくとも1年間または2年間、物理的および化学的に安定している水性液体製剤、
- 抗菌防腐剤との相溶性。
【0042】
同様に、pH3.5~4.4のGLP-1アナログまたはGLP-1 RAとも呼ばれるGLP-1受容体アゴニスト、例えばエキセナチドまたはリキシセナチドを併せた、ヒトインスリンA21Gの製剤は、30℃で少なくとも2週間または1か月間、5℃で少なくとも1年間または2年間安定な液体製剤の開発を可能にする、物理的および化学的安定性を有する。
【0043】
安定性に関し、タンパク質またはペプチドの安定性を測定するための従来の方法は、ThTとも呼ばれるチオフラビンTを用いて、線維の形成を測定する。この方法は、蛍光の増大を測定することにより、現象の促進を可能にする温度および撹拌条件下で、線維の形成までの遅延時間を測定することを可能にする。本発明による組成物は、文献に記載されているものよりも線維の形成までに明らかに長い遅延時間を有する。本発明による組成物は、市販の食事性インスリンを使用することにより、先行技術に記載されているものよりもはるかに高い物理的および化学的安定性を示す。
【0044】
実施態様において、本発明の製剤は、少なくとも8時間に等しいThTによって測定される遅延時間を呈する。
【0045】
実施態様において、本発明の製剤は、少なくとも10時間に等しいThTによって測定される遅延時間を呈する。
【0046】
実施態様において、本発明の製剤は、少なくとも15時間に等しいThTによって測定される遅延時間を呈する。
【0047】
実施態様において、本発明の製剤は、少なくとも20時間に等しいThTによって測定される遅延時間を呈する。
【0048】
実施態様において、本発明の製剤は、少なくとも25時間に等しいThTによって測定される遅延時間を呈する。
【0049】
実施態様において、本発明は、少なくともヒトインスリンA21Gおよびアミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログを含む、pHが3.5~4.4である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログは、プラムリンタイドである。
【0050】
実施態様において、本発明は、少なくともヒトインスリンA21Gおよびアミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログを含む、pHが3.5~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0051】
実施態様において、本発明は、少なくともヒトインスリンA21Gおよびアミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログを含む、pHが3.8~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0052】
実施態様において、本発明は、少なくともヒトインスリンA21Gおよびアミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログを含む、pHが4.0である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0053】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21GおよびGLP-1受容体アゴニストまたはGLP-1アナログを含む、pHが3.5~4.4である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。
【0054】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21GおよびGLP-1受容体アゴニストまたはGLP-1アナログを含む、pHが3.5~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。
【0055】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21GおよびGLP-1受容体アゴニストまたはGLP-1アナログを含む、pHが3.8~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。
【0056】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21GおよびGLP-1受容体アゴニストまたはGLP-1アナログを含む、pHが4.0である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。
【0057】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21G、アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログ、およびGLP-1受容体アゴニストまたはGLP-1アナログを含む、pHが3.5~4.4である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。 別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。さらに別の実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0058】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21G、少なくとも一つのアミリン受容体アゴニストまたは一つのアミリンアナログ、および少なくとも一つのGLP-1受容体アゴニストまたは一つのGLP-1アナログを含む、pHが3.5~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。さらに別の実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0059】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21G、少なくとも一つのアミリン受容体アゴニストまたは一つのアミリンアナログ、および少なくとも一つのGLP-1受容体アゴニストまたは一つのGLP-1アナログを含む、pHが3.8~4.2である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。さらに別の実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0060】
実施態様においては、本発明は、少なくともヒトインスリンA21G、少なくとも一つのアミリン受容体アゴニストまたは一つのアミリンアナログ、および少なくとも一つのGLP-1受容体アゴニストまたは一つのGLP-1アナログを含む、pHが4.0である水溶液注射剤の形態の組成物に関する。実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはエキセナチドである。別の実施態様によれば、前記GLP-1受容体アゴニストはリキシセナチドである。さらに別の実施態様によれば、前記アミリン受容体アゴニストまたはアミリンアナログはプラムリンタイドである。
【0061】
水溶液中で、ヒトインスリンA21Gをアミリンアナログ、アミリン受容体アゴニストまたはGLP-1、およびGLP-1アナログまたはGLP-1受容体アゴニストと組み合わせることは、このいわゆる「トリプル」の組み合わせが特に各ホルモンの効果を増強しそれぞれの用量を減らすことができるため、特に有利である。
【0062】
本発明による水溶液注射剤の形態の組成物は、透明溶液である。「透明溶液」とは、水溶液注射剤に関する米国および欧州の薬局方に記載されている基準を満たす組成物を意味すると理解される。米国薬局方では、溶液はパート<1151>において「注射剤」(<1>)を参照して定義されている。(USP35<788>を参照、USP35<788>並びにUSP38<787><788>及び<790>にて規定(2014年8月1日から))。欧州薬局方においては、注射剤はセクション2.9.19および2.9.20に記載されている基準を満たさなければならない。
【0063】
本出願において言及したように、アミリンは、US5,124,314およびUS5,234,90に記載されている化合物を参照する。「アナログ(analog)」という用語が使用される場合、それは、一次配列の1つまたは複数の構成アミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されている、および/または1つまたは複数の構成アミノ酸残基が除去されている、および/または1つ以上の構成的アミノ酸残基が追加されているペプチドまたはタンパク質を示す。アナログの現在の定義で受け入れられる相同性の割合は、50%である。アミリンの場合、アナログは、例えば、1つまたは複数の天然または非天然またはペプチド模倣アミノ酸を置換することにより、アミリンの一次アミノ酸配列から由来することができる。
【0064】
US2004/0023871およびWO0104156にそれぞれ記載されているエキセナチドおよびリキシセナチドは、一般にGLP-1受容体アゴニストであると考えられている。実施態様においては、食事作用性のグルカゴンサプレッサーは、アストラゼネカエービー(ASTRAZENECA AB)社によって販売されているプラムリンタイド(シムリン(Symlin)(登録商標))である。
【0065】
実施態様においては、GLP-1、GLP-1アナログ、またはGLP-1 RAは、「速攻性」または「食事性」と呼ばれる。「速攻性」または「食事性」とは、ヒトにおける皮下注射後の見かけの排出半減期が8時間未満、特に5時間未満、好ましくは4時間未満、または3時間未満である、例えば、エキセナチドまたはリキシセナチドなど、GLP-1、GLP-1アナログ、またはGLP-1 RAを意味すると理解される。
【0066】
実施態様においては、GLP-1、GLP-1アナログまたはGLP-1 RAは、エキセナチド(バイエッタ(Byetta)(登録商標)、アストラゼネカ社))、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標)、サノフィ社)、そのアナログまたは誘導体および薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される。
【0067】
実施態様においては、GLP-1、GLP-1アナログ、またはGLP-1 RAは、エキセナチドまたはバイエッタ(登録商標)、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩である。
【0068】
実施形態様においては、GLP-1、GLP-1アナログ、またはGLP-1 RAは、リキシセナチドまたはリキスミア(登録商標)、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩である。
【0069】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、240~3000μMまたは40~500U/mLである。
【0070】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、600μMまたは100U/mLである。
【0071】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、1200μMまたは200U/mLである。
【0072】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、1800μMまたは300U/mLである。
【0073】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、2400μMまたは400U/mLである。
【0074】
実施態様においては、ヒトインスリンA21Gの濃度は、3000μMまたは500U/mLである。
【0075】
本出願において、ヒトインスリンA21Gの100U/mLは、3.5mg/mLに相当する。
【0076】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.32~5mg/mLである。
【0077】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.4~3mg/mLである。
【0078】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.5~2mg/mLである。
【0079】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.5~1.5mg/mLである。
【0080】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.6~1mg/mLである。
【0081】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、1.0mg/mLである。
【0082】
実施態様においては、プラムリンタイドの濃度は、0.6mg/mLである。
【0083】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、10~1000μg/mLである。
【0084】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、10~500μg/mLである。
【0085】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、20~400μg/mLである。
【0086】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、20~300μg/mLである。
【0087】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、30~300μg/mLである。
【0088】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、30~150μg/mLである。
【0089】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、40~150μg/mLである。
【0090】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、40~80μg/mLである。
【0091】
実施態様においては、エキセナチドの濃度は、50μg/mLである。
【0092】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、20~1000μg/mLである。
【0093】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、20~800μg/mLである。
【0094】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、40~600μg/mLである。
【0095】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、60~600μg/mLである。
【0096】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、60~300μg/mLである。
【0097】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、80~300μg/mLである。
【0098】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、80~160μg/mLである。
【0099】
実施態様においては、リキシセナチドの濃度は、100μg/mLである。
【0100】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.01~1.0mgの範囲である。
【0101】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.01~0.5mgである。
【0102】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.02~0.4mgである。
【0103】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.03~0.3mgである。
【0104】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.03~0.2mgである。
【0105】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.03~0.15mgである。
【0106】
実施態様においては、エキセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.05mgである。
【0107】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.01~1mgの範囲である。
【0108】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.01~0.5mgである。
【0109】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.02~0.4mgである。
【0110】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.03~0.3mgである。
【0111】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.04~0.2mgである。
【0112】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.04~0.15mgである。
【0113】
実施態様においては、リキシセナチド、そのアナログまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩の濃度は、インスリン100U当たり0.1mgである。
【0114】
実施態様においては、本発明による組成物は、アミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニストの溶液、およびGLP-1、GLP-1アナログまたはGLP-1受容体アゴニストRAの溶液を10/90から90/10の範囲の体積比で混合することにより調製される。
【0115】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらにインスリン100U当たり0~800μMの濃度の亜鉛塩を含む。
【0116】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらにインスリン100U当たり0~500μMの濃度の亜鉛塩を含む。
【0117】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらにインスリン100U当たり100~500μMの濃度の亜鉛塩を含む。
【0118】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらにインスリン100U当たり200~400μMの濃度の亜鉛塩を含む。
【0119】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらにインスリン100U当たり300μMの濃度の亜鉛塩を含む。
【0120】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらに緩衝液を含む。
【0121】
実施態様においては、本発明の組成物は、酢酸ナトリウム緩衝液およびトリスからなる群から選択される緩衝液を含む。
【0122】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらに防腐剤を含む。
【0123】
実施態様においては、防腐剤は、m-クレゾールおよびフェノールからなる群から単体または混合物として選択される。
【0124】
実施施態様においては、防腐剤の濃度は、10~50mMである。
【0125】
実施施態様においては、防腐剤の濃度は、10~40mMである。
【0126】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらに界面活性剤を含む。
【0127】
実施態様においては、界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20とも呼ばれるTween(登録商標)20、およびポリソルベート80とも呼ばれるTween(登録商標)80からなる群から選択される。
【0128】
実施態様においては、Tween(登録商標)20の濃度は、5~50μg/mLで変動する。
【0129】
実施態様においては、Tween(登録商標)20の濃度は、5~25μg/mLで変動する。
【0130】
実施態様においては、Tween(登録商標)20の濃度は、10μMである。
【0131】
本発明の組成物は、さらに等張化剤などの添加剤を含むことができる。
【0132】
実施態様においては、等張化剤は、グリセロール、塩化ナトリウム、マンニトールおよびグリシンからなる群から選択される。
【0133】
実施態様においては、本発明の組成物は、さらに酸化防止剤を含む。
【0134】
実施態様においては、酸化防止剤は、メチオニンである。
【0135】
実施態様においては、医薬品組成物は、さらに複数種類の吸収促進剤、拡散促進剤又は血管拡張剤から選択される少なくとも一つの吸収促進剤を単体または混合物として含む。
【0136】
吸収促進剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない;界面活性剤、例えば胆汁酸塩類、脂肪酸塩類またはリン脂質類;ニコチンアミド類、ニコチン酸類、ナイアシン、ナイアシンアミド、ビタミンB3およびそれらの塩類などのニコチン性薬剤;膵臓トリプシン阻害剤;マグネシウム塩類;多価不飽和脂肪酸類;ホスファチジルコリンジデカノイル;ポリアミノカルボン酸類;トルメチン;カプリン酸ナトリウム;サリチル酸;オレイン酸;リノール酸;エイコサペンタエン酸(EPA);ドコサヘキサエン酸(DHA);ベンジル酸;一酸化窒素ドナー、例えば3-(2-ヒドロキシ-1-(1-メチルエチル)-2-ニトロソヒドロジノ)-1-プロパンアミン、N-エチル-2-(1-エチルヒドロキシ-2-1-ニトロソヒドロジノ)エタンアミンまたはS-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン;胆汁酸類、胆汁酸と共役した形のグリシン;アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム;サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、アセチルサリチル酸、サリチルサリチル酸、アセチルサリチル酸アルミニウム、サリチル酸コリン、サリチルアミド、アセチルサリチル酸リジン;エキサラミド;ジフルニサル;エテンザミド;EDTA。これらは単体または混合物として含まれる。
【0137】
実施態様においては、医薬組成物は、さらに少なくとも一つの拡散促進剤を含む。拡散促進剤は、ヒアルロニダーゼなどのグリコサミノグリカナーゼが挙げられるが、これに限定されない。
【0138】
実施態様においては、医薬品組成物は、さらに少なくとも一つの血管拡張剤を含む。
【0139】
実施態様においては、医薬組成物は、カルシウムイオンチャネルを遮断することにより過分極を誘発する、さらに少なくとも一つの血管拡張剤を含む。
【0140】
実施態様においては、カルシウムイオンチャネルを遮断することにより過分極を誘発する血管拡張剤は、アデノシン、内皮由来過分極剤、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤、カリウムチャネル開口剤またはこれらの薬剤の任意の組み合わせである。
【0141】
実施態様においては、医薬組成物は、さらにAMPcによる仲介を伴う、少なくとも一つの血管拡張剤を含む。
【0142】
実施態様においては、医薬組成物は、さらにGMPcによる仲介を伴う、少なくとも一つの血管拡張剤を含む。
【0143】
実施態様においては、医薬組成物は、さらにカルシウムイオンチャネルを遮断することにより過分極を誘発することにより作用する血管拡張剤、AMPcによる仲介を伴う血管拡張剤、およびGMPcによる仲介を伴う血管拡張剤を含む群から選択される少なくとも一つの血管拡張剤を含む。
【0144】
少なくとも一つの血管拡張剤は、以下に含まれる群から選択される;一酸化窒素ドナー、例えばニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、硝酸アミル、エリトリチル、四硝酸塩、およびニトロプルシエート;プロスタサイクリンおよびそのアナログ、例えばエポプロステノールナトリウム、イロプロスト、エポプロステノール、トレプロスチニルまたはセレキシパグ;ヒスタミン、2-メチルヒスタミン、4-メチルヒスタミン;2-(2-ピリジル)エチルアミン、2-(2-チアゾリル)エチルアミン;パパベリン、塩酸パパベリン;ミノキシジル;ジピリダモール:ヒドララジン;アデノシン、アデノシン三リン酸;ウリジン三リン酸;GPLC;L-カルニチン;アルギニン;プロスタグランジンD2;カリウム塩類;また、場合によっては、α1およびα2受容体アンタゴニスト、例えばプラゾシン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ジベナミン、塩酸モキシシライトおよびトラゾリン、ベタゾール、ジマプリット;β2受容体アゴニスト、例えばイソプロテレノール、ドブタミン、アルブテロール、テルブタリン、アミノフィリン、テオフィリン、カフェイン;アルプロスタジル、アンブリセンタン;カベルゴリン;ジアゾキシド;メシル酸ジヒドララジン;ジルチアゼム塩酸塩;エノキシモン;塩酸フルナリジン;イチョウ葉エキス;レボシメンダン;モルシドミン;シュウ酸ナフチドロフリル;ニコランジル;ペントキシフィリン;塩酸フェノキシベンザミン;ピリベジル塩基;メシル酸ピリベジル;レガデノソン一水和物;リオシグアト;クエン酸シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル塩酸塩三水和物;トリメタジジン塩酸塩;トリニトリン;ベラパミル塩酸塩;エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えばアバナフィルおよびボセンタン一水和物;カルシウムチャネル阻害剤、例えば、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、プランジピン、これらは単体または混合物として含まれる。
【0145】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で3.5mg/mL~10.5mg/mLのヒトインスリンA21G、0.6mg/mL~3mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに300~900μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8~10μM、最も特に8μM含むことができる。
【0146】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、3.5mg/mLのヒトインスリンA21G、0.6~1mg/mLのプラムリンタイド、25~30mMのm-クレゾール、150~200mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに300μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8~10μM、最も特に8μMを含むことができる。
【0147】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、3.5mg/mLのヒトインスリンA21G、0.6mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに300μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に10μM含むことができる。
【0148】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、3.5mg/mLのヒトインスリンA21G、0.6mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに300μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0149】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、3.5mg/mLのヒトインスリンA21G、1.0mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに300μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0150】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、7.0mg/mLのヒトインスリンA21G、1.2~2.0mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、150~200mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに600μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8~10μM、最も特に8μM含むことができる。
【0151】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、7.0mg/mLのヒトインスリンA21G、1.2mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに600μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に10μM含むことができる。
【0152】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、7.0mg/mLのヒトインスリンA21G、1.2mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに600μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0153】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、7.0mg/mLのヒトインスリンA21G、2.0mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに600μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0154】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、10.5mg/mLのヒトインスリンA21G、1.8~3mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、150~200mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに900μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8~10μM、最も特に8μM含むことができる。
【0155】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、10.5mg/mLのヒトインスリンA21G、1.8mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに900μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に10μM含むことができる。
【0156】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、10.5mg/mLのヒトインスリンA21G、1.8mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに900μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0157】
実施態様においては、本発明の組成物は、pH4.0で、10.5mg/mLのヒトインスリンA21G、3mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾール、184mMのグリセロールを含む。この組成には、さらに900μMの亜鉛を含めることができる。さらに、この組成物は、ポリソルベート20を特に8μM含むことができる。
【0158】
本発明による組成物は、さらに薬局方、特にEPおよび/または米国薬局方に準拠し、通常の濃度で使用されるインスリンと適合する、全ての賦形剤を含むことができる。
【0159】
実施態様によれば、組成物は固体または凍結乾燥形態であり得る。また、この組成物を使用して、溶液または製剤を再溶解することができる。
【0160】
想定される投与方法は、静脈内、皮下、皮内または筋肉内経路である。
【0161】
特定の実施態様によれば、投与方法は皮下経路である。
【0162】
経皮、経口、鼻、膣、眼、頬、肺の投与経路も想定される。
【0163】
本発明はまた、本発明の組成物を含む移植可能または輸送可能なポンプに関する。
【0164】
本発明はまた、移植可能または輸送可能なポンプに入れることを意図した、本発明の組成物の使用に関する。
【0165】
本発明はまた、単回投与の製剤に関する。
【0166】
実施態様においては、製剤は、水溶液注射剤の形態である。
【0167】
本発明の組成物の調製は、水溶液または凍結乾燥状態のアミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニストおよびヒトインスリンA21Gの水溶液の単純な混合により実施できるという利点を有する。
【0168】
必要に応じて、混合物の組成は、グリセロール、m-クレゾール、塩化亜鉛およびポリソルベート20(Tween(登録商標)20)などの賦形剤に関して調整される。この添加は、上記の賦形剤の濃縮溶液の添加により実施することができる。
【0169】
実施態様においては、組成物は、上記の組成物がpH4.0で溶解度を有し、アミリンアナログまたはアミリン受容体アゴニストおよび市販の食事性インスリンを含む比較の組成物のThTにより測定される物理的安定性よりも高い物理的安定性を有する。
【0170】
ThTは、実施例に記載されたプロトコルに従って測定される。
【0171】
実施態様においては、組成物は、上記の組成物がpH4.0で溶解度を有し、GLP-1、GLP-1アナログ、またはGLP-1受容体アゴニストおよび市販の食事性インスリンを含む比較の組成物のThTにより測定される物理的安定性よりも高い物理的安定性を有する。
【0172】
インスリンおよびインスリンアナログは、Escherichia coliなどの細菌およびSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母を使用した組換えDNA技術の方法によって得ることができる(G. Walsh Appl. Microbiol. Biotechnol. 2005、67、151-159参照)。一般的には、プロインスリンが生成され、その後、トリプシンやカルボキシペプチダーゼBなどの酵素によって消化されて、所望の配列が得られる。
【0173】
ヒトインスリンA21Gの産生のために、プロインスリンは、グリシンがA21中にあるようにコードされ、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBによる消化後、所望のインスリンが得られる。操作手順は、Kohn et al.、Peptides 2007、28、935-948に記載されている。
【0174】
本発明はまた、ヒトインスリンA21Gを得る方法に関し、これはヒトインスリンA21G、B31R、B32R(インスリングラルギン)をラットカルボキシペプチダーゼBと500~2000のインスリン/カルボキシペプチダーゼ比でpH7.5~8.5、温度20~30℃、10~20時間反応させることからなる少なくとも一つのステップを含む。その後、生成物を精製することができる。この精製は、液体クロマトグラフィーによって行われることができる。
【0175】
ヒトインスリンA21Gは、このようにしてインスリングラルギンからカルボキシペプチダーゼBでの消化により2つのアルギニンを除去することにより得ることができる。酵素消化後、ヒトインスリンA21Gはクロマトグラフィーにより精製され、次いで従来の方法による凍結乾燥または結晶化により単離される。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1図1は、仮想例に基づく線維化遅延時間の図形判定の代表図である。横座標は経過時間を分単位で表し、縦座標は蛍光ThTを任意単位(a.u.)で表している。LTは遅延時間を表している。
図2図2は、製剤A21-8投与後の血漿中のプラムリンタイドとインスリンの濃度(平均値±標準偏差)を表すグラフである。正方形はインスリンの濃度を表し、三角形はプラムリンタイドの濃度を表している。横座標には、注射後の経過時間を分単位で表し、左側の縦座標は、ベースライン補正されたインスリン濃度をpmol/L単位で表し、縦座標は、ベースライン補正されたプラムリンタイド濃度をpmol/L単位で表している。
図3図3は、製剤A21-8投与後の血糖値(平均値±標準偏差)を表すグラフである。横座標は、注射後の経過時間を分単位で表し、縦座標は、血糖値をベースラインレベルのパーセンテージ(%)で表している。
図4図4は、製剤A21-9の投与後のプラムリンタイド(正方形で描かれた曲線)およびPRAM(三角形で描かれた曲線)の濃度(平均±標準偏差)を表すグラフである。横座標は、注射後の経過時間を分単位で表し、縦座標は、ベースライン補正されたプラムリンタイド濃度をpmol/L単位で表している(投与前濃度は個々に差し引いた)。
【発明を実施するための形態】
【0177】
[実施例1]ヒトインスリンA21Gの調製
5gのインスリングラルギン((ガンアンドリー ファーマシューティカルズ(Gan&Lee Pharmaceuticals)社)をカルボキシペプチダーゼB酵素(参照番号08039852001;シグマアルドリッチ社)とpH8.0(pHはトリス緩衝液の添加により調整)で混合し、混合物を25℃で17時間放置し、インスリングラルギン濃度が約4mg/mLにする。酵素/グラルギン比は1/500である。次いで、混合物を液体クロマトグラフィーにより精製し、0.01N塩酸で透析し、次いで凍結乾燥する。その結果、純度98%、収率約90%のヒトインスリンA21Gが得られる。質量分析(Maldi-Tof)によって測定したインスリンの分子量は、5752Daである。ヒトインスリンA21Gは、Kohnらによって報告されている組換え技術を使用して得ることもできる。(Peptides 2007、28、935-948)。
【0178】
[実施例2]酸性pHにおける食事性インスリンとプラムリンタイド、エキセナチドまたはリキシセナチドの組成
<酸性pH3.5または4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)および塩化亜鉛(300μM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mL(3.5mg/mL)およびプラムリンタイド 1mg/mLの溶液の調整>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(300U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイド(アンビオファーム(AmbioPharm)社)の濃縮溶液(10mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH、すなわち3.5または4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0179】
<酸性pH4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)および塩化亜鉛(300μM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびプラムリンタイド 0.6mg/mLの溶液の調製>
この溶液は、上記で提示した溶液と同じ方法で調製される。
【0180】
<pH4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびプラムリンタイド 1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(800U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイドの濃縮溶液(10mg/mL、pH4)をこのヒトインスリンおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH、すなわち4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0181】
<pH4におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)およびTween20(10μg/mL)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびプラムリンタイド 1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(300U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイドの濃縮溶液(10mg/mL、pH4)およびTween20の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpHは、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0182】
<pH4におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)、塩化亜鉛(300μM)およびTween20(10μg/mL)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびプラムリンタイド 1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(300U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイドの濃縮溶液(10mg/mL、pH4)、塩化亜鉛の濃縮溶液およびTween20の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpHは、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0183】
<酸性pHにおけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)、塩化亜鉛(300μM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびエキセナチド 50μg/mLの溶液の調製> 賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(300U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、エキセナチド(バッケム(Bachem)社)の濃縮溶液(10.5mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0184】
<酸性pHにおけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)、塩化亜鉛(300μM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびリキシセナチド 100μg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(230U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、リキシセナチド(アンビオファーマ社)の濃縮溶液(10.5mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0185】
<酸性pH4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)およびTween20(10μg/mL)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mL、エキセナチド 50μg/mLおよびプラムリンタイド0.6mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21Gの濃縮溶液(300U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイド(アンビオファーマ社)の濃縮溶液(10mg/mL、pH4)、エキセナチド(バッケム社)の濃縮溶液(10.5mg/mL、pH4)およびTween20の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0186】
<酸性pH3.5または4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)および塩化亜鉛(300μM)を含む、ヒトインスリンA21G 100U/mLおよびプラムリンタイド1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、ヒトインスリンA21G(アンファスター ファーマシューティカルズ(Amphastar Pharmaceuticals)社)の濃縮溶液(800U/mL、pH3.5)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイド(アンビオファーマ社)の濃縮溶液(10mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH、すなわち3.5または4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0187】
<酸性pH3.5または4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)および塩化亜鉛(300μM)を含む、インスリンアスパルト 100U/mLおよびプラムリンタイド1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、インスリンアスパルト(エイチイーシー ファーマシューティカルズ(HEC Pharmaceuticals)社)の濃縮溶液(500U/mL、pH3)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイドの濃縮溶液(10mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのインスリンアスパルトおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH、すなわち3.5または4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。pH4.0に調整された溶液は、pH調整後に懸濁し、pH3.5に調整された溶液は透明である。0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0188】
<酸性pH3.5または4.0におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)および塩化亜鉛(300μM)を含む、インスリンリスプロ 100U/mLおよびプラムリンタイド1mg/mLの溶液の調製>
賦形剤(m-クレゾール、グリセロール)の濃縮溶液を、インスリンリスプロ(ガンアンドリー ファーマシューティカルズ社)の濃縮溶液(650U/mL、pH3)に加える。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイドの濃縮溶液(10mg/mL、pH4)および塩化亜鉛の濃縮溶液をこのインスリンリスプロおよび賦形剤の濃縮溶液に加える。最終的なpH、すなわち3.5または4.0は、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。
【0189】
<酸性pH3.0、3.5または4.0における市販品のアピドラ(Apidra)(登録商標)の賦形剤(29mMのm-クレゾール、50mMのトリス、86mMの塩化亜鉛、8.15μMのTween20)を含む、インスリングルリジン 100U/mLおよびプラムリンタイド1mg/mLの溶液の調製>
インスリングルリシンの市販溶液であるアピドラ(登録商標)のpHは、HCl水溶液の添加によりpH2.5に調整される。この溶液は、100U/mLのインスリンと1mg/mLのプラムリンタイドを含む溶液を得るために、粉末の形態でプラムリンタイドに添加される。最終的なpHは、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。pH3.5または4.0に調整された溶液は、pH調整後に懸濁し、pH3.0に調整された溶液は透明である。0.22μmの濾過に供され、ガラスカートリッジに保管される(カートリッジ当たり溶液1mL)。数時間の保管後、溶液は懸濁して不均質になる。
【0190】
<pH4.0におけるm-クレゾール(20mM)、マンニトール(236mM)および酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(30mM)を含む、プラムリンタイド1mg/mLの溶液の調製>
10mg/mLのプラムリンタイドの濃縮溶液は、アンビオファーマ社より購入した粉末状のプラムリンタイドを溶解し調製される。目的の最終組成物を得るために、この溶液を賦形剤の濃縮溶液(m-クレゾール、マンニトール、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液)に加える。最終pHは、NaOH/HClの添加により4.0±0.2に調整される。
【0191】
<pH4におけるm-クレゾール(25mM)、グリセロール(184mM)、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(18mM)およびTween20(8μM)を含む、ヒトインスリン 100U/mLおよびプラムリンタイド0.6mg/mLの溶液の調製>
グリセロールおよびm-クレゾールの濃縮溶液を、pH4で酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液中のヒトインスリンA21Gの濃縮溶液に添加する(300U/mL、pH4)。目的の最終組成物を得るために、プラムリンタイド(アンビオファーマ社)の濃縮溶液(10mg/mL、pH4)およびTween20の濃縮溶液をこのヒトインスリンA21Gおよび賦形剤の濃縮溶液に最後に加える。最終的なpHは、NaOHまたはHCl水溶液を添加することにより所望の値に調整される。得られた水溶液は透明および均質であり、0.22μmの濾過に供される。
以下の表1に、上記で調製した組成物を示す。
【0192】
【表1】
【0193】
[実施例3]酸性pHでの食事性インスリンとプラムリンタイドの相溶性に関する検討
(酸性pHにおけるインスリンおよびプラムリンタイドの溶液の外観)
観察は、カートリッジに保存された溶液を2~3時間安定化した後、室温で実施される。表2に、上記のインスリンおよびプラムリンタイドの溶液の外観を示す。
【0194】
【表2】
【0195】
評価されたインスリンのうち、ヒトインスリン、インスリンリスプロおよびヒトインスリンA21Gのみが、pH4においてプラムリンタイドを有する均一で透明な製剤を得ることができ、その種類の溶解性を実証している。インスリンアスパルトおよびグルリジンは、pH4.0においてプラムリンタイドを有する透明な製剤を得るには適していない。
【0196】
[実施例4]線維化遅延時間に関する検討
(原則)
ペプチドの不十分な安定性は、規則正しい高分子構造として定義される、アミロイド線維の形成をもたらし得る。これらの線維は、サンプル内でゲルを形成する可能性がある。
【0197】
チオフラビンT(ThT)の蛍光をモニタリングする試験は、製剤の物理的安定性を分析するために使用される。チオフラビンTは、アミロイド線維に結合すると特徴的な蛍光特性を持つ小さな分子プローブである(Naiki et al. (1989) Anal. BioChem. 177、 244-249; LeVine (1999) Methods. Enzymol. 309、 274-284)。
【0198】
この方法は、未希釈製剤内の低ThT濃度での線維の形成をモニタリングすることを可能にする。このモニタリングは、37℃および攪拌下の加速安定性条件下で実施される。
【0199】
(実験条件)
サンプルは、測定開始の直前に準備した。各組成物の調製については、関連する実施例で説明されている。チオフラビンTは、組成物の希釈がごくわずかになるように、濃縮原液から組成物に添加される。組成物中のチオフラビンT濃度は40μMである。96ウェルプレートに1ウェル当たり150μLの容量の組成物を注入した。同じプレート内で、各組成物を3回分析した。プレートは、組成物の蒸発を防ぐために透明フィルムで密封した。
【0200】
次に、このプレートを、プレートリーダー(EnVision 2104 Multilabel、パーキン エルマー(Perkin Elmer)社)のエンクロージャーにセットした。温度は37℃に設定され、1mmの振幅で水平方向に960rpmで攪拌させる。
【0201】
各ウェルの時間に対する蛍光強度の読み取りは、442nmの励起波長および482nmの発光波長で実施される。
【0202】
線維化プロセスは、遅延時間と呼ばれる遅延後の蛍光の強い増大として発現する。
【0203】
各ウェルについて、この遅延は、図1に示すように、時間に対する蛍光シグナルのベースラインと蛍光曲線の傾きの交差としてグラフ上で決定され、これは蛍光の初期の強い増大中に測定される。プロットされた遅延時間の値は、3ウェルの遅延時間の平均に相当する。
【0204】
前述の実施例のpH3.5および4.0のプラムリンタイドおよびインスリンの透明溶液は、ThT存在下における線維化試験に供される。
【0205】
表3に報告されている遅延時間は、3回の測定の平均に相当する。不確定区間は、これら3つの結果の標準偏差に対応する。
【0206】
【表3】
【0207】
予想外に、ヒトインスリンA21Gを含む製剤の線維化遅延時間は、pH3.5またはpH4.0において試験した市販のインスリンよりもはるかに長く、超速攻型インスリンアナログ、インスリンリスプロおよびインスリンアスパルトよりも特に長い。
【0208】
[実施例5]Tween20存在下における線維化遅延時間の検討
表4に、Tween20存在下におけるpH4におけるヒトインスリンA21Gおよびプラムリンタイドの溶液の遅延時間を示す。
【0209】
【表4】
【0210】
このようにして、物理的安定性は、10μg/mLのTween20存在下において向上する。
【0211】
[実施例6]静的条件下、30℃における製剤の物理的安定性
1mLの組成物で満たされたガラスカートリッジを、30℃に維持されたオーブンに入れる。これらのカートリッジは、目に見える粒子や懸濁の外観を検出するために、視覚的に検査される。この検査は、欧州薬局方(EP2.9.20)の推奨にしたがって実施される;すなわち、カートリッジは、少なくとも2000luxの照明に供され、白い背景と黒い背景で観察される。これらの結果は、米国薬局方(USP<790>)に適合する。
【0212】
【表5】
【0213】
pH3.5においてプラムリンタイドを配合したインスリンアスパルトは、pH3.5または4.0においてプラムリンタイドを配合したヒトインスリンA21Gよりも安定性が低い。
【0214】
[実施例7]エキセナチドおよびリキシセナチドを有するヒトインスリンA21Gの物理的安定性の検討
製剤A21-6およびA21-7は、カートリッジ内に配置され、それから30℃で4週間保存される。
用事調整された製剤について線維化遅延時間が測定され、表6に示される。
【0215】
【表6】
【0216】
[実施例8]ヒトインスリンA21Gおよびプラムリンタイドの製剤の化学安定性
すべての製剤は、pH4.0またはpH3.5であり、100U/mLのヒトインスリンA21G、1mg/mLのプラムリンタイド、25mMのm-クレゾールおよび184mMのグリセロールを含む。製剤はガラスカートリッジに保存され、静的条件下、30℃において保存される。ヒトインスリンA21Gおよびプラムリンタイドは、逆相液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析される。表7に、測定値が示される。
【0217】
【表7】
【0218】
ヒトインスリンA21Gおよびプラムリンタイドを含む製剤は、30℃において4週間後に良好な化学的安定性を示す。市販のインスリンを含むプラムリンタイドの製剤は、pH4.0では急速な劣化が進行し、pH3.5ではさらに急速な劣化が進行する。
【0219】
[実施例9]イヌにおける薬物動態学的および薬力学的検討
ヒトインスリンA21G(100U/mL、すなわち3.5mg/mL)およびプラムリンタイド(0.6mg/mL)からなる組成物のイヌにおける薬物動態学的および薬力学的研究。試験製剤はpH4.0で25mMのm-クレゾールと184mMのグリセロールを含む(製剤A21-8)。
【0220】
約18時間絶食した4匹の動物に、インスリンを0.2U/kgおよびプラムリンタイドを0.12μg/kgの用量で、首への皮下投与により注射した。注射の1時間前に、グルコース、インスリンおよびプラムリンタイドのベースレベルを決定するために、1つ以上の血液サンプルが採取される。血液サンプルは、次に製剤投与5時間後に採取される。血糖値は、血糖値測定器によって測定される。血漿中のインスリンおよびプラムリンタイドのレベルは、ELISA試験によって測定される。
【0221】
製剤A21-8の薬物動態パラメータは、ベースライン補正された血漿中のインスリンおよびプラムリンタイド濃度に基づいて推定される。標準のノンコンパートメント解析は、ソフトウェアPhoenix WinNonlin(バージョン7、サターラ(Certara)社)を使用して行われる。以下の表8および9に、パラメータの値(平均±標準偏差)が示される:
【0222】
【表8】
【0223】
【表9】
【0224】
図2に、血漿中の総インスリン(四角)およびプラムリンタイド(三角形)の平均薬物動態(PK)プロファイルを示す。
図3に、ベースラインレベルの割合として表される平均血糖プロファイルを示す。
【0225】
プラムリンタイドおよびヒトインスリンA21Gは両方とも、食事性の吸収動態を有し、投与後5時間後に初期血糖降下作用を引き起こし、続いてベースラインレベルに近い血糖値に戻ることが観察される。これらの薬物動態および薬力学的結果は、製剤A21-8が食事時の使用に適合していることを明確に示している。
【0226】
[実施例10]ブタにおけるプラムリンタイドの薬物動態学的および薬力学的検討
ブタにおけるヒトインスリンA21G(インスリン100U/mLに相当する3.5mg/mL)およびプラムリンタイド(0.6mg/mL)からなる組成物の薬物動態研究。
【0227】
事前に頸部にカテーテルを挿入した、体重約50kgの飼育ブタを、実験開始前に2.5時間絶食させた。インスリン注射前の時間に、グルコースおよびインスリンのベースラインレベルを測定するために、3つの血液サンプルが採取された。
【0228】
プラムリンタイド(A21-9)またはプラムリンタイド(PRAM)と組み合わせたヒトインスリンA21Gの製剤は、インスリンを0.2U/kgおよびプラムリンタイドを1.2μg/kgの用量で、31G針を装備したインスリンペン(ノボ ノルディスク社、サノフィ社、またはイーライリリー社)を使用し、動物の脇腹において皮下注射される。
【0229】
血漿中のプラムリンタイドの濃度を測定するために、血液サンプルを以下の時間で採取する:4、8、12、16、20、30、40、50、60、70、80、100、120、150および180分。カテーテルは抜去後に毎回希釈ヘパリン溶液で洗浄する。
(ブタにおけるヒトインスリンA21GおよびプラムリンタイドA21-9の溶液およびプラムリンタイドPRAMの溶液の薬物動態学的結果)
【0230】
A21-9製剤およびPRAM製剤のプラムリンタイドの薬物動態を比較するために、ブタの同一群で実施された3つの研究結果を集積する。A21-9およびPRAM製剤の薬物動態パラメータは、ベースライン補正された血漿中のプラムリンタイド濃度に基づいて推定される。標準のノンコンパートメント解析は、ソフトウェアPhoenix WinNonlin(バージョン7、サターラ社)を使用して行われる。パラメータの値(平均±標準偏差)は次の表に示されるとおりである。
【0231】
【表10】
【0232】
表中で、tmaxは、最大血漿濃度を観察するのに必要な時間である。AUC0-30minは、注射後0~30分までの時間に対する血漿濃度の曲線下面積である。AUC0-tは、注射後0分から最後の定量可能な濃度までの時間に対する血漿濃度の曲線下面積である。
【0233】
図4にA21-9およびPRAM製剤で得られたプラムリンタイドの薬物動態の結果を示す。これらのプロファイルとパラメータの分析は、ヒトインスリンA21Gおよびプラムリンタイドの組み合わせ(A21-9製剤、正方形でプロットされた曲線)は、プラムリンタイド単独(PRAM製剤、三角形でプロットされた曲線)と比較して、プラムリンタイドの吸収を著しく遅らせることを示している。A21-9製剤は、PRAM製剤と比較して血漿ピーク(tmax)を大幅に遅延させ(約18分、p<0.05)、プラムリンタイドへの初期血漿曝露(AUC0-30min)を大幅に減少させる(約43%、p<0.05)。一方、プラムリンタイドへの総血漿曝露(AUC0-t)は、2つの製剤間で類似しており、同等の生体利用効率を示唆している。
【0234】
[実施例11]対照組成物の注射後およびヒトインスリンA21Gおよび/またはプラムリンタイドを含む組成物の注射後のラットの食事量の研究
この研究は、少なくとも6週齢のオスのスプラーグドーリーラット(Sprague Dawley rats)40匹の集団で実施された。
【0235】
下表に記載されている組成物の皮下注射前の6時間の絶食期間を除いて、ラットは食物および水を自由に摂取できた。
【0236】
【表11】
【0237】
対照組成物は、生理食塩水、すなわち150mMのNaClを含む水溶液である。
【0238】
組成物ヒューマリン(Humulin)(登録商標)は、イーライリリー社により販売されているヒトインスリンの市販溶液である。この製品は、100U/mLのヒトインスリンである。ヒューマリン(登録商標)の賦形剤は、グリセロール、メタクレゾール、pH調整用の水酸化ナトリウムおよび塩酸(pH 7.0-7.8)、水である。
【0239】
注射直後のt0において、食物が分配される(ラット当たり約100g)。食事量(累積平均)は、t0の後、1、2、3時間後、すなわちt+1時間、t+2時間、t+3時間に測定される。
【0240】
結果は、以下の表に示される:
【0241】
【表12】
【0242】
上記の結果は、インスリンA21Gとプラムリンタイドを組み合わせた組成物A21-9が、インスリンの注射により引き起こされる食事量を減少させるだけでなく、食事量を対照組成物(生理食塩水)の注射を受けた対照群のレベル以下または同等のレベルに制限することもできることを示している。
図1
図2
図3
図4