(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システム
(51)【国際特許分類】
H03L 7/10 20060101AFI20230308BHJP
H03L 7/087 20060101ALI20230308BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20230308BHJP
G01S 7/02 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
H03L7/10 110
H03L7/087
H04L7/00 160
G01S7/02 216
(21)【出願番号】P 2020558604
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2020084002
(87)【国際公開番号】W WO2020207443
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】201910289884.X
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】徐 志▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲聖▼▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 嘉冰
(72)【発明者】
【氏名】邱 良
(72)【発明者】
【氏名】弓 悦
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲カイ▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】宋 春毅
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-046799(JP,A)
【文献】特開2013-017067(JP,A)
【文献】特開2013-157654(JP,A)
【文献】特開2015-154486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0163274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0351563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00 - G01S7/42
H03L1/00 - H03L9/00
H04L7/00 - H04L7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システムであって、
デュアル入力タイプのPLLバタフライ型結合構造又はデュアル入力タイプのPLLスター型結合構造を用い
、デュアル入力タイプのPLLバタフライ型結合構造は、チェーンでn個のデュアル入力タイプのPLLを閉鎖して接続し
、PLLが備えるVCO発振信号の1/4の周波数
の信号
である前記低周波基準信号を互いに伝送してインターロックを行
い、DLLモジュールによって伝送線路に発生した相互接続による位相シフトを補償することでオンチップのローカル信号の同期を実現し、デュアル入力タイプのPLLスター型結合構造は、集中定数回路によりm個のデュアル入力タイプのPLLを接続し、所定の基準信号によってオンチップの各ICチップにおけるローカル信号を同期化し、n≧3、m≧3であり、前記デュアル入力タイプのPLL同士の相互接続が
左手系材料伝送線路によるDLLを使用し、
前記低周波基準信号は、各チップが受信した、他のICチップから伝送された1/4のVCO発振信号であり、
前記デュアル入力タイプのPLLバタフライ型結合構造は、そのデュアル入力タイプのPLLモジュールがICチップ内に位置し、各ICチップが順に1つの共通IOポートを介して相互接続され、DLLモジュールによって伝送線路に発生した相互接続による位相シフトを補償し、前記デュアル入力タイプのPLLバタフライ型結合構造は、
デュアル入力タイプのPLL1の1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL2の1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLL2のもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL3の1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLL3のもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL4の1つの共通IO端に接続され、このように類推し、デュアル入力タイプのPLLn-1の1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLLnの1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLLnのもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL1のもう1つの共通IO端に接続され、これにより1つの閉鎖ループを形成
し、
前記デュアル入力タイプのPLLスター型結合構造は、そのPLLモジュールがICチップ内に位置するが、そのDLLモジュールがICチップの外に位置し、これらのDLLモジュールが互いに接続され、集中定数回路によって
前記低周波基準信号を伝送し、
各ICチップの共通IOポートが複数本の伝送線路を介して集中DLLモジュールに接続され、前記デュアル入力タイプのPLLスター型結合構造は、
デュアル入力タイプのPLL1、PLL2・・・PLLmのm個のDLLは、相互接続され、DLLモジュールによって伝送による位相シフトを補償し、集中定数回路によって
前記低周波基準信号を伝送し、共通IOポートを介してそれぞれPLL1、PLL2・・・PLLmに接続され、これによりオンチップの各ICチップのLO信号を同期化する
ことを特徴とする低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システム。
【請求項2】
前記デュアル入力タイプのPLLは、LC VCO発振器、注入同期2分周器、4分周器、単線接続ブロック1、単線接続ブロック2と、位相検出器PD1、PD2と、ドライブGM1、GM2、GM3、GM4、GM5、GM6、GM7、GM8と、バッファBUF1、BUF2、BUF3、BUF4、BUF5、BUF6と、ローパスフィルタLPF1、LPF2、LPF3とを備え、位相検出器PD1がミキサMixer1及びMixer2を備え、位相検出器PD2がミキサMixer3及びMixer4を備え、
デュアル入力タイプのPLLの接続は、PLLの一端に接続される伝送線路が単線接続ブロック1の1つの入力端に接続され、単線接続ブロック1の出力端がバッファBUF3の入力端、バッファBUF4の入力端に接続され、単線接続ブロック1のもう1つの入力端がバッファBUF1の出力端に接続され、バッファBUF3の出力端がミキサMixer1の入力端に接続され、バッファBUF4の出力端がミキサMixer2の1つの入力端に接続され、ミキサMixer1の出力端がドライブGM1、GM7の入力端に接続され、ミキサMixer2の出力端がドライブGM2、GM8の入力端に接続され、ドライブGM7、GM8の出力端がいずれも単線接続ブロック1の制御端及びローパスフィルタLPF3の入力端に接続され、ミキサMixer1のもう1つの入力端、Mixer2のもう1つの入力端が4分周器の出力端、バッファBUF1の入力端、バッファBUF2の入力端及びミキサMixer3の1つの入力端、Mixer4の1つの入力端に接続され、4分周器の入力端が注入同期2分周器の出力端に接続され、注入同期2分周器の入力端がLC VCO発振器の出力端に接続され、LC VCO発振器の入力端がドライブGM1、GM2、GM3、GM4の出力端及びローパスフィルタLPF1の入力端に接続され、ミキサMixer3のもう1つの入力端がバッファBUF5の出力端に接続され、ミキサMixer4のもう1つの入力端がバッファBUF6の出力端に接続され、ミキサMixer3の出力端がドライブGM3、GM5の入力端に接続され、ミキサMixer4の出力端がドライブGM4、GM6の入力端に接続され、バッファBUF5、BUF6の入力端がいずれも単線接続ブロック2の出力端に接続され、ドライブGM5、GM6の出力端がいずれもローパスフィルタLPF2の入力端、単線接続ブロック2の制御端に接続され、単線接続ブロック2の入力端がバッファBUF2の出力端に接続され、単線接続ブロック2のもう1つの入力端がPLLの他端の伝送線路に接続されることを特徴とする請求項
1に記載の低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システム。
【請求項3】
前記デュアル入力タイプのPLL同士の相互接続は、左手系材料による集中素子のラダーネットワークにおける伝送線路を用い、該ラダーネットワークは、無限小回路モデルと同一のLCユニットがカスケード接続されており、無損失の場合に、その伝送係数が次式のように表され、
【数1】
Cが伝送線路の単位長さの容量値であり、Lが伝送線路の単位長さのインダクタンス値であり、ωが伝送線路の信号角速度であることを特徴とする請求項
1に記載の低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーフェーズドアレイ分野に関し、具体的にフェーズドアレイにおけるアレイエレメントタイル上のデジタル送受信チップ間のローカル信号位相の同期自己修復システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型アレイにおいて、どのように各アレイエレメントを同期化するかはフェーズドアレイの主要技術である。アレイの使用は厳格に同期化されるように要求され、アナログアレイは各アレイエレメント間の位相差が一定であり、デジタルアレイは各アレイエレメント間の位相が同じであり、大型デジタルフェーズドアレイは一般的に複数のアレイエレメントタイルからなり、各アレイエレメントタイルが数個乃至数十個のデジタル送受信チップを備える。システムは2種類の同期要件、すなわちアレイエレメントタイル内の同期及びアレイエレメントタイル間の同期がある。環境が変化すると、インストール時の同期が得られなくなり、アレイエレメントタイル内の複数のICチップのLO信号の間に位相偏移が生じてしまい、このような静的偏移はフェーズドアレイにとって所望のものではないため、最小化によってアレイエレメントタイル内の同期を実現する必要がある。
【0003】
また、同期システムは遅延を整数倍の周期まで補う必要があり、低周波信号の波長が長すぎて(例えば、10MHzの基準信号の空気での波長が30メートルである。)、アレイエレメントタイルの寸法が一般的に1メートルより大幅に小さいので、低周波同期システムを用いるために30メートルの等価遅延線路を生成する必要があり、これは受け取れないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠点に対して、本発明は調整可能な左手系材料による伝送線路に基づくデュアル入力タイプのPLL結合構造のオンチップの同期自己修復システムを提供し、該システムは低周波基準信号に基づくものであり、同期システム全体が星状又は蝶形構造に接続され、ICチップが位相同期回路によって送信された基準信号と受信された基準信号とを同期化し、各アレイエレメントタイルが1つの同じ位相の基準信号を得られると仮定し、これを基にタイル内の各無線周波数送受信チップのローカル信号の同期を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が上記目的を実現するために用いた技術案は以下のとおりである。
低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システムであって、デュアル入力タイプのPLL星状結合構造又はデュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造を用い、且つPLL同士が単線で結合され、デュアル入力タイプのPLL星状結合構造は、チェーンでn個のデュアル入力タイプのPLLを閉鎖して接続し、四分の一のローカル信号を互いに伝送してインターロックを行うことでオンチップのローカル信号の同期を実現し、デュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造は、集中定数回路によりm個のデュアル入力タイプのPLLを接続し、所定の基準信号によってオンチップの各ICチップにおけるローカル信号を同期化し、n≧3、m≧3であり、前記デュアル入力タイプのPLL同士の相互接続が左手系材料による伝送線路を用いることを特徴とする。
【0006】
更に、前記デュアル入力タイプのPLL星状結合構造は、そのデュアル入力タイプのPLLモジュールがICチップ内に位置し、各ICチップが順に1つの共通IOポートを介して相互接続され、DLLモジュールによって伝送線路に発生した相互接続による位相シフトを補償し、その構造は、
デュアル入力タイプのPLL1の1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL2の1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLL2のもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL3の1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLL3のもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL4の1つの共通IO端に接続され、このように類推し、デュアル入力タイプのPLLn-1の1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLLnの1つの共通IO端に接続され、デュアル入力タイプのPLLnのもう1つの共通IO端がデュアル入力タイプのPLL1のもう1つの共通IO端に接続され、これにより1つの閉鎖ループを形成することを特徴とする。
【0007】
更に、前記デュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造は、そのLOモジュール及びPLLモジュールがICチップ内に位置するが、そのDLLモジュールがICチップの外に位置し、これらのDLLモジュールが互いに接続され、集中定数回路によって所定の基準信号を伝送し、各ICチップが1つの共通IOポートを介して集中DLLモジュールに接続され、その構造は、
デュアル入力タイプのPLL1、PLL2・・・PLLmのm個のDLLは、相互接続され、DLLモジュールによって伝送による位相シフトを補償し、集中定数回路によって所定の基準信号を伝送し、共通IOポートを介してそれぞれPLL1、PLL2・・・PLLmに接続され、これによりオンチップの各ICチップのLO信号を同期化することを特徴とする。
【0008】
更に、前記デュアル入力タイプのPLL星状結合構造及び蝶形結合構造に使用されるデュアル入力タイプのPLLは、LC VCO発振器、注入同期2分周器、4分周器、単線接続ブロック1、単線接続ブロック2と、位相検出器PD1、PD2と、ドライブGM1、GM2、GM3、GM4、GM5、GM6、GM7、GM8と、バッファBUF1、BUF2、BUF3、BUF4、BUF5、BUF6と、ローパスフィルタLPF1、LPF2、LPF3とを備え、位相検出器PD1がミキサMixer1及びMixer2を備え、位相検出器PD2がミキサMixer3及びMixer4を備える。
【0009】
デュアル入力タイプのPLLの接続は、PLLの一端に接続される伝送線路が単線接続ブロック1の1つの入力端に接続され、単線接続ブロック1の出力端がバッファBUF3の入力端、バッファBUF4の入力端に接続され、単線接続ブロック1のもう1つの入力端がバッファBUF1の出力端に接続され、バッファBUF3の出力端がミキサMixer1の入力端に接続され、バッファBUF4の出力端がミキサMixer2の1つの入力端に接続され、ミキサMixer1の出力端がドライブGM1、GM7の入力端に接続され、ミキサMixer2の出力端がドライブGM2、GM8の入力端に接続され、ドライブGM7、GM8の出力端がいずれも単線接続ブロック1の制御端及びローパスフィルタLPF3の入力端に接続され、ミキサMixer1のもう1つの入力端、Mixer2のもう1つの入力端が4分周器の出力端、バッファBUF1の入力端、バッファBUF2の入力端及びミキサMixer3の1つの入力端、Mixer4の1つの入力端に接続され、4分周器の入力端が注入同期2分周器の出力端に接続され、注入同期2分周器の入力端がLC VCO発振器の出力端に接続され、LC VCO発振器の入力端がドライブGM1、GM2、GM3、GM4の出力端及びローパスフィルタLPF1の入力端に接続され、ミキサMixer3のもう1つの入力端がバッファBUF5の出力端に接続され、ミキサMixer4のもう1つの入力端がバッファBUF6の出力端に接続され、ミキサMixer3の出力端がドライブGM3、GM5の入力端に接続され、ミキサMixer4の出力端がドライブGM4、GM6の入力端に接続され、バッファBUF5、BUF6の入力端がいずれも単線接続ブロック2の出力端に接続され、ドライブGM5、GM6の出力端がいずれもローパスフィルタLPF2の入力端、単線接続ブロック2の制御端に接続され、単線接続ブロック2の入力端がバッファBUF2の出力端に接続され、単線接続ブロック2のもう1つの入力端がPLLの他端の伝送線路に接続される。
【0010】
更に、前記デュアル入力タイプのPLL同士の相互接続は、左手系材料による集中素子のラダーネットワークにおける伝送線路を用い、該集中素子のラダーネットワークは、無限小回路モデルと同一のLCユニットがカスケード接続されており、無損失の場合に、その伝送係数が次式のように表され、
【0011】
【数1】
Cが伝送線路の単位長さの容量値であり、Lが伝送線路の単位長さのインダクタンス値であり、ωが伝送線路の信号角速度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明に係るオンチップの同期自己修復システムはいかなる環境においてアレイエレメントタイル内の各無線周波数送受信チップの厳格な同期を実現することができ、且つ該システムは面積が小さく、損失が低く、自己適応性が高い。
【0013】
本発明は、調整可能な左手系材料による伝送線路を遅延線路として用い、左手系伝送線路が進み位相を発生することができるため、シングルトーン伝送において正の遅延を補償することができる。しかも、低周波においてキャパシタンス及びインダクタンスの集中素子のラダーネットワークを用い、より短い伝送線路だけで同期補償を完了することができ、損失が低く物理距離が短い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】低周波基準信号に基づくアレイエレメントタイル内のオンチップの同期自己修復システムの構造模式図であり、
図1aはデュアル入力タイプのPLL星状結合構造を示す図であり、
図1bはデュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造を示す図である。
【
図2】デュアル入力タイプのPLLの構造模式図である。
【
図3】左手系材料による人工伝送線路の等価回路の模式図である。
【
図4】左手系伝送線路位相の模擬結果の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を図面および好ましい実施形態に基づいて詳しく説明し、本発明の目的及び効果が明らかになり、以下に図面を参照しながら実施例によって本発明を更に詳しく説明する。理解されるべきのように、ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
【0016】
低周波基準信号に基づくオンチップの同期自己修復システムであって、前記システムは、デュアル入力タイプのPLL星状結合構造又はデュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造を用い、且つPLL同士が単線で結合され、デュアル入力タイプのPLL星状結合構造は、チェーンでn個のデュアル入力PLLを閉鎖して接続し、四分の一のローカル信号を互いに伝送してインターロックを行うことでオンチップのローカル信号の同期を実現し、デュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造は、集中定数回路によりm個の各デュアル入力タイプのPLLを接続し、所定の基準信号によってオンチップの各ICチップにおけるローカル信号を同期化し、n≧3、m≧3であり、前記PLL同士の相互接続が左手系材料による伝送線路を用いる。
【0017】
本実施例では、デュアル入力タイプのPLL星状結合構造又はデュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造におけるデュアル入力タイプのPLLがいずれも4つあり、
図1に示すように、
図1(a)はデュアル入力タイプのPLL星状結合構造を示す図であり、該構造はデュアル入力タイプのPLL1、PLL2、PLL3、PLL4からなり、デュアル入力タイプのPLLがいずれもそれぞれのICチップ内に位置し、デュアル入力タイプのPLL1のA端がデュアル入力タイプのPLL2のB端に接続され、デュアル入力タイプのPLL2のA端がデュアル入力タイプのPLL3のB端に接続され、デュアル入力タイプのPLL3のA端がデュアル入力タイプのPLL4のB端に接続され、デュアル入力タイプのPLL4のA端がデュアル入力タイプのPLL1のB端に接続され、これにより1つの閉鎖ループを形成し、PLL同士を接続している線路によって双方向伝送を実現することができる。各チップが四分の一のローカル信号を互いに伝送してインターロックを行い、位相同期回路によってローカル信号と基準信号とを同期化することでオンチップの各ICチップの位相の同期を確保する。
【0018】
図1(b)はデュアル入力タイプのPLL蝶形結合構造を示す図であり、該構造はデュアル入力タイプのPLL1、PLL2、PLL3、PLL4からなり、PLLモジュール及びLOモジュールがいずれもそれぞれのICチップ内に位置し、DLLモジュールがいずれもICチップの外に位置し、デュアル入力タイプのPLL1のDLLモジュールがデュアル入力タイプのPLL2、デュアル入力タイプのPLL3、デュアル入力タイプのPLL4のDLLモジュールと互いに接続され、1つの基準信号が与えられると、DLLを対応するPLLモジュールにと接続することにより、伝送線路は双方向伝送を実現することができる。
【0019】
図2は結合構造に使用されるデュアル入力タイプのPLLの構造模式図である。デュアル入力タイプのPLLは、LC VCO発振器と、注入同期2分周器Injection-Locked 2-Dividerと、4分周器Div4と、単線接続ブロックSingle-wire coupling block1、Single-wire coupling block2と、位相検出器PD1、PD2と、ドライブGM1、GM2、GM3、GM4、GM5、GM6、GM7、GM8と、バッファBUF1、BUF2、BUF3、BUF4、BUF5、BUF6と、ローパスフィルタLPF1、LPF2、LPF3とからなる。位相検出器PD1がミキサMixer1とMixer2とからなり、位相検出器PD2がミキサMixer3とMixer4とからなる。
デュアル入力タイプのPLLの接続方式は
図2に示されるとおりであり、A端の伝送線路が単線接続ブロックsingle-wire coupling block1のa端に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block1のc端がバッファBUF3のa端、バッファBUF4のa端に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block1のb端がバッファBUF1のa端に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block1のd端がドライブGM7のb端、ドライブGM8のb端、ローパスフィルタLPF3のa端に接続され、バッファBUF3のb端がミキサMixer1のa端に接続され、バッファBUF4のb端がミキサMixer2のa端に接続され、ミキサMixer1のc端がドライブGM1のa端、ドライブGM7のa端に接続され、ミキサMixer2のc端がドライブGM2のa端、ドライブGM8のa端に接続され、ミキサMixer1のb端、ミキサMixer2のb端が4分周器Div4のa端、バッファBUF1のb端、バッファBUF2のb端及びミキサMixer3のb端、ミキサMixer4のb端に接続され、4分周器Div4のb端が注入同期2分周器Injection-Locked 2-Dividerのa端に接続され、注入同期2分周器Injection-Locked 2-Dividerのb端がLC VCO発振器のa端に接続され、LC VCO発振器のb端がドライブGM1のb端、ドライブGM2のb端、ドライブGM3のb端、ドライブGM4のb端及びローパスフィルタLPF1のa端に接続され、ミキサMixer3のc端がドライブGM3のa端、ドライブGM5のa端に接続され、ミキサMixer4のc端がドライブGM4のa端、ドライブGM6のa端に接続され、ミキサMixer3のa端がバッファBUF5のb端に接続され、ミキサMixer4のa端がバッファBUF6のb端に接続され、バッファBUF5のa端、バッファBUF6のa端が単線接続ブロックsingle-wire coupling block2のc端に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block2のb端がバッファBUF2のa端に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block2のa端がB端の伝送線路に接続され、単線接続ブロックsingle-wire coupling block2のd端がドライブGM5のb端、ドライブGM6のb端及びローパスフィルタLPF2のa端に接続される。
【0020】
以上に説明されるデュアル入力タイプのPLLの動作原理は、LOチェーンがLC-VCOからなり、低電力・周波数調整可能な注入同期2分周器を駆動することができ、次に4分周器Div4によって信号を生成して位相検出器PD1、PD2及び50Ωにマッチングする出力バッファBUF1、BUF2を駆動するということである。デュアル入力タイプのPLLにおける出力バッファによって双方向結合を実現するとともに、各共通IOポートでのVCO信号及び基準信号を区分する。且つ、PLLKにおける出力ドライブ(BUF1K又はBUF2K)と隣接するPLLにおける位相検出器(PD2K-1又はPD1K+1)の入力端との間に2πより大きな調整可能な位相シフトを導入して相互接続による位相シフトを調整することにより位相検出器の入力の間の低静的位相偏移を実現する。出力バッファBUF1及びBUF2によってCML周波数分割器からいずれか1つの直交位相を選択して約90度の位相シフトの粗調整を実現して、DLLモジュールによってIO結合モジュールにおける可変容量を制御し、これにより可変位相シフトを実現してPLL同士を接続している伝送線路に発生した位相シフトを補償し、微調整を実現し、それにより位相検出器PD1、PD2の入力信号間の直交位相差を確保する。
【0021】
図3はPLL同士の接続に使用される調整可能な左手系材料による伝送線路の等価回路の模式図であり、デュアル入力タイプのPLL同士の相互接続は左手系材料による集中素子のラダーネットワークにおける伝送線路を用い、該ラダーネットワークは、
図3に示すような単位長さのイミタンス値が非常に小さなLCユニットがカスケード接続されており、無損失の場合にその伝送係数は、次式のように表され、
【0022】
【数2】
Cが伝送線路の単位長さの容量値であり、Lが伝送線路の単位長さのインダクタンス値であり、ωが伝送線路の信号角速度である。
【0023】
図4は左手系材料伝送線路の模擬結果の模式図である。左手系伝送線路は進み位相を発生することができるため、シングルトーン伝送において正の遅延を補償することができる。低周波においてキャパシタンス及びインダクタンスの集中素子のラダーネットワークを用い、より短い伝送線路だけで同期補償を完了することができ、伝送線路の損失を低くして物理距離を短くし、次に遅延位相同期回路によって基準信号の各無線周波数送受信チップでの位相が同じであるように確保し、それにより環境の変化による非同期現象を自動的に修復する。
【0024】
当業者であれば理解されるように、以上の説明は本発明の好適な実施例であって、本発明を制限するためのものではなく、上記実施例によって本発明を詳しく説明したが、当業者であれば、依然として上記各実施例に記載された技術案を修正し、又はその一部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができる。本発明の趣旨や原則内に行われた修正や等価置換は、いずれも本発明の範囲内に含まれるべきである。