(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電極形成材料、電極の製造方法及び電極
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20230308BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20230308BHJP
C23C 18/32 20060101ALI20230308BHJP
C23C 18/38 20060101ALI20230308BHJP
C23C 18/42 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01B5/00 C
C01G49/00 A
C01G49/00 C
C23C18/32
C23C18/38
C23C18/42
(21)【出願番号】P 2020569539
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020002011
(87)【国際公開番号】W WO2020158520
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019013667
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231970
【氏名又は名称】パウダーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】安賀 康二
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-49095(JP,A)
【文献】特開2005-194542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
C01G 49/00
C23C 18/32
C23C 18/38
C23C 18/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト複合粉末を含む電極形成材料であって、
前記フェライト複合粉末が、複数の金属被覆フェライト粒子から構成され、
前記フェライト複合粉末の形状係数SF-1が、100~130であり、
前記金属被覆フェライト粒子が、フェライト粒子と、該フェライト粒子の表面に設けられた導電性金属を含む被覆層と、を備える、材料。
【請求項2】
前記導電性金属が、銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記被覆層の厚さが10~1000nmである、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記フェライト複合粉末の体積平均粒子径(D50)が、1~50μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記フェライト粒子が、マンガン(Mn)系フェライト、マンガン-亜鉛(Mn-Zn)系フェライト、ニッケル(Ni)系フェライト、ニッケル-亜鉛(Ni-Zn)系フェライト、ニッケル-亜鉛-銅(Ni-Zn-Cu)系フェライト、マグネシウム(Mg)系フェライト、マグネシウム-亜鉛(Mg-Zn)系フェライト、ストロンチウム(Sr)系フェライト
、バリウム(Ba)系フェライト、マンガン-マグネシウム(Mn-Mg)系フェライト、マンガン-マグネシウム-ストロンチウム(Mn-Mg-Sr)系フェライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の電極形成材料を、基体上に堆積して堆積物とする堆積工程と、前記堆積物を焼結し、堆積物に導電性を持たせる焼結工程と、を含む、電極の製造方法。
【請求項7】
前記堆積工程の際、電極形成材料に磁場を印加し、印加磁場により電極形成材料中の金属被覆フェライト粒子を整列させて、堆積物をパターニングする、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記基体が非磁性薄板であり、前記堆積工程の際、非磁性薄板の下に設けられた磁石が発生する印加磁場により、金属被覆フェライト粒子を整列させる、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の材料の焼結体を含む電極であって、
前記電極は、導電性金属からなるマトリックスと、前記マトリックス中に分散されてなるフェライト粒子とを含む、電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極形成材料、電極の製造方法及び電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品の電極の形成方法として、導電性ペーストを用いた焼き付け法(厚膜法)、電気めっき法及び物理気相成長による薄膜法などが知られている。このうち、焼き付け法は、手法が簡易で且つ厚く導電性に優れた電極が得られるため、広く用いられている。焼き付け法では、銀粉などの導電性金属粉を含有する導電性ペーストを、基体上に塗布及び乾燥し、その後、焼結して電極が形成される。
【0003】
焼き付け法では、細線電極などのパターン化された電極(パターン電極)を得るために、印刷スクリーンを用いる手法、電極をエッチングする手法、あるいは感光性導電性ペーストを用いる手法が用いられている。このうち、印刷スクリーンを用いる手法では、所定のパターンを有する印刷スクリーンを用いて、基体上に導電性ペーストをパターン印刷する。電極をエッチングする手法では、焼結後の電極にフォトレジストをコーティングし、露光、現像及びエッチングを行い、パターン電極とする。感光性導電性ペーストを用いる手法では、導電性ペースト中に感光性樹脂を加え、基体上に塗布した感光性導電性ペーストに、マスクを用いた露光及び現像を行う。
【0004】
このような焼き付け法(厚膜法)による電極形成方法は、特許文献1及び特許文献2に開示されている。例えば、特許文献1には、金属板、樹脂板、ガラス板あるいはセラミックス板のような基板上に分散型導電性ペーストをパターン形成し、これを電気伝導性を有する粉末と結合剤としての樹脂粉末とを混合した材料の面に当て加圧成形すると同時に電極パターンを転写することを特徴とする電極の形成法に関して、基板上に分散型導電性ペーストをスクリーン印刷する旨が記載されている(特許文献1の請求項1及び発明の構成欄)。
【0005】
また、特許文献2には、光重合性モノマーと、光重合性開始剤と、銀粉末等の金属粉末と、を含んで構成されることを特徴とする電極用ペースト組成物及び基板に前記電極用ペースト組成物を塗布する段階と、マスクを配置する段階と、露光を行う段階と、現像する段階と、基板にパターニングされた電極用ペースト組成物を焼成する段階とを含む、プラズマディスプレイパネルの製造方法が開示されている(特許文献2の請求項1及び請求項10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平1-136306号公報
【文献】日本国特開2008-66268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の焼き付け法(厚膜法)による電極形成には、種種の問題点がある。すなわち、焼き付け法で用いられる導電性ペーストには、多くの場合、メチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤が含まれており、ペーストの塗布及び乾燥の際に、環境空気の汚染や作業者への健康障害を防止するための方策をとる必要がある。また、パターン電極を形成する際、多くの場合、パターン以外の領域に設けられたペーストや電極は破棄される。したがって、材料ロスが発生し、製造コスト上昇につながる。また、エッチングや感光性導電性ペーストを用いる手法では、露光工程や現像工程といった煩雑な工程が多く必要であり、サイクルタイムが長くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の金属被覆フェライト粒子から構成されるフェライト複合粉末が電極形成材料となり得ること、及びこの電極形成材料を用いることで、簡易な手法で電極を製造できるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、簡易な手法で電極を形成することができる、電極形成材料、電極の製造方法及び電極の提供を課題とする。
【0010】
本発明は、下記<1>~<9>の態様を包含する。
<1>
フェライト複合粉末を含む電極形成材料であって、
前記フェライト複合粉末が、複数の金属被覆フェライト粒子から構成され、
前記フェライト複合粉末の形状係数SF-1が、100~130であり、
前記金属被覆フェライト粒子が、フェライト粒子と、該フェライト粒子の表面に設けられた導電性金属を含む被覆層と、を備える、材料。
<2>
前記導電性金属が、銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属を含む、<1>に記載の材料。
<3>
前記被覆層の厚さが10~1000nmである、<1>又は<2>に記載の材料。
<4>
前記フェライト複合粉末の体積平均粒子径(D50)が、1~50μmである、<1>~<3>のいずれか一項に記載の材料。
<5>
前記フェライト粒子が、マンガン(Mn)系フェライト、マンガン-亜鉛(Mn-Zn)系フェライト、ニッケル(Ni)系フェライト、ニッケル-亜鉛(Ni-Zn)系フェライト、ニッケル-亜鉛-銅(Ni-Zn-Cu)系フェライト、マグネシウム(Mg)系フェライト、マグネシウム-亜鉛(Mg-Zn)系フェライト、ストロンチウム(Sr)系フェライト
、
バリウム(Ba)系フェライト、マンガン-マグネシウム(Mn-Mg)系フェライト、マンガン-マグネシウム-ストロンチウム(Mn-Mg-Sr)系フェライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、<1>~<4>のいずれか一項に記載の材料。
<6>
<1>~<5>のいずれか一項に記載の電極形成材料を、基体上に堆積して堆積物とする堆積工程と、前記堆積物を焼結し、堆積物に導電性を持たせる焼結工程と、を含む、電極の製造方法。
<7>
前記堆積工程の際、電極形成材料に磁場を印加し、印加磁場により電極形成材料中の金属被覆フェライト粒子を整列させて、堆積物をパターニングする、<6>に記載の方法。
<8>
前記基体が非磁性薄板であり、前記堆積工程の際、非磁性薄板の下に設けられた磁石が発生する印加磁場により、金属被覆フェライト粒子を整列させる、<7>に記載の方法。
<9>
<1>~<5>のいずれか一項に記載の材料の焼結体を含む電極であって、
前記電極は、導電性金属からなるマトリックスと、前記マトリックス中に分散されてなるフェライト粒子とを含む、電極。
本発明は、上記<1>~<9>の態様を包含するが、以下、それ以外の事項(例えば、下記(1)~(10)の態様)についても記載する。なお、本明細書において、「~」なる表現は、その両端の数値を含む。すなわち、「X~Y」は、「X以上Y以下」と同義である。
【0011】
(1)フェライト複合粉末を含む電極形成材料であって、
前記フェライト複合粉末が、複数の金属被覆フェライト粒子から構成され、
前記金属被覆フェライト粒子が、フェライト粒子と、該フェライト粒子の表面に設けられた導電性金属を含む被覆層と、を備える、材料。
【0012】
(2)前記導電性金属が、銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属を含む、上記(1)に記載の材料。
【0013】
(3)前記被覆層の厚さが10~1000nmである、上記(1)又は(2)に記載の材料。
【0014】
(4)前記フェライト複合粉末の体積平均粒子径(D50)が、1~50μmである、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の材料。
【0015】
(5)前記フェライト複合粉末の形状係数SF-1が、100~130である、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の材料。
【0016】
(6)前記フェライト粒子が、マンガン(Mn)系フェライト、マンガン-亜鉛(Mn-Zn)系フェライト、ニッケル(Ni)系フェライト、ニッケル-亜鉛(Ni-Zn)系フェライト、ニッケル-亜鉛-銅(Ni-Zn-Cu)系フェライト、マグネシウム(Mg)系フェライト、マグネシウム-亜鉛(Mg-Zn)系フェライト、ストロンチウム(Sr)系フェライト、バリウム(Ba)系フェライト、マンガン-マグネシウム(Mn-Mg)系フェライト、マンガン-マグネシウム-ストロンチウム(Mn-Mg-Sr)系フェライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の材料。
【0017】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の電極形成材料を、基体上に堆積して堆積物とする堆積工程と、前記堆積物を焼結し、堆積物に導電性を持たせる焼結工程と、を含む、電極の製造方法。
【0018】
(8)前記堆積工程の際、電極形成材料に磁場を印加し、印加磁場により電極形成材料中の金属被覆フェライト粒子を整列させて、堆積物をパターニングする、上記(7)に記載の方法。
【0019】
(9)前記基体が非磁性薄板であり、前記堆積工程の際、非磁性薄板の下に設けられた磁石が発生する印加磁場により、金属被覆フェライト粒子を整列させる、上記(8)に記載の方法。
【0020】
(10)導電性金属からなるマトリックスと、前記マトリックス中に分散されてなるフェライト粒子とを含む、電極。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な手法で電極を形成することができる、電極形成材料、電極の製造方法及び電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
電極形成材料
本発明の電極形成材料は、フェライト複合粉末を含む。フェライト複合粉末は、複数の金属被覆フェライト粒子(「フェライト複合粒子」ともいう)から構成される。すなわち、フェライト複合粉末は、複数の金属被覆フェライト粒子の集合体である。また、金属被覆フェライト粒子は、フェライト粒子と被覆層を備える。
【0024】
本発明の電極形成材料は、金属被覆フェライト粒子の被覆層が導電性金属を含む。この導電性金属は、電極形成材料を焼結して得た電極の導電性成分として機能する。そのため、本発明の電極形成材料を用いることで、簡易な手法で、導電性の高い電極を得ることができる。
【0025】
また、電極形成材料は、金属被覆フェライト粒子を含む。そのため、電極形成時に磁場印加することで、電極形成材料及びその焼結体たる電極のパターニングが可能である。すなわち、金属被覆フェライト粒子は、強磁性体たるフェライト粒子を含んでいる。そのため、磁場を印加すると、磁力線に従って整列(配列)する。このとき、磁力線の向き及び強さを調整することで、フェライト粒子の整列パターンを制御でき、その結果、電極形成材料及び電極に種種のパターンを付与することができる。
【0026】
導電性金属として、特に限定されないが、公知の電極材料である銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)及びこれらの組み合わせからなる合金などを使用することができる。しかしながら、導電性金属は、銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属を含むのが好ましい。これらの金属や合金は、安価で導電性に優れるからである。
【0027】
なお、本明細書において、金属は合金又は金属間化合物を含む概念である。したがって、被覆層は、銀(Ag)、銅(Cu)又はニッケル(Ni)のみからなっていてもよく、これらの金属の合金又は金属間化合物であってもよい。あるいは、銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)以外の金属を含む合金又は金属間化合物であってもよい。しかしながら、被覆層中の銀(Ag)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)の含有量(複数種含む場合はその合計量)は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0028】
被覆層が、銀(Ag)及び銅(Cu)のみからなる場合、被覆層中の銀(Ag)の含有量と銅(Cu)の含有量との質量比(銀(Ag)の含有量:銅(Cu)の含有量)は、5:95~95:5が好ましく、15:85~85:15がより好ましい。
被覆層が、銀(Ag)及びニッケル(Ni)のみからなる場合、被覆層中の銀(Ag)の含有量とニッケル(Ni)の含有量との質量比(銀(Ag)の含有量:ニッケル(Ni)の含有量)は、5:95~95:5が好ましく、15:85~85:15がより好ましい。
被覆層が、銅(Cu)及びニッケル(Ni)のみからなる場合、被覆層中の銅(Cu)の含有量とニッケル(Ni)の含有量との質量比(銅(Cu)の含有量:ニッケル(Ni)の含有量)は、5:95~95:5が好ましく、15:85~85:15がより好ましい。
【0029】
また、被覆層が、銀(Ag)、銅(Cu)、及びニッケル(Ni)のみからなる場合は、下記の(態様1)~(態様4)が好ましい。
【0030】
(態様1)
被覆層中の銀(Ag)の含有量は、60~80質量%であり、
被覆層中の銅(Cu)の含有量は、5~20質量%であり、
被覆層中のニッケル(Ni)の含有量は、5~20質量%であり、
上記銀(Ag)の含有量、銅(Cu)の含有量、ニッケル(Ni)の含有量の合計量が100質量%である。
【0031】
(態様2)
被覆層中の銀(Ag)の含有量は、5~20質量%であり、
被覆層中の銅(Cu)の含有量は、60~80質量%であり、
被覆層中のニッケル(Ni)の含有量は、5~20質量%であり、
上記銀(Ag)の含有量、銅(Cu)の含有量、ニッケル(Ni)の含有量の合計量が100質量%である。
【0032】
(態様3)
被覆層中の銀(Ag)の含有量は、5~20質量%であり、
被覆層中の銅(Cu)の含有量は、5~20質量%であり、
被覆層中のニッケル(Ni)の含有量は、60~80質量%であり、
上記銀(Ag)の含有量、銅(Cu)の含有量、ニッケル(Ni)の含有量の合計量が100質量%である。
【0033】
(態様4)
被覆層中の銀(Ag)の含有量は、20~50質量%であり、
被覆層中の銅(Cu)の含有量は、20~50質量%であり、
被覆層中のニッケル(Ni)の含有量は、20~50質量%であり、
上記銀(Ag)の含有量、銅(Cu)の含有量、ニッケル(Ni)の含有量の合計量が100質量%である。
【0034】
被覆層の厚さは、10~1000nmが好ましい。被覆層が厚いほど、フェライト複合粉末中の導電性成分の割合が多くなり、電極とした場合の電極の導電性が高くなる。一方で、被覆層が過度に厚いと、フェライト粒子の割合が少なくなる。被覆層の厚さは、50~500nmがより好ましく、100~200nmがさらに好ましい。
被覆層(金属被覆層ともいう)の厚さは、フェライト複合粒子の断面観察により、測定できる。具体的には、以下の通りである。
被覆層の厚さはフェライト複合粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で測定することができる。具体的には測定対象の粉末9gと粉末樹脂1gを50ccガラス瓶に入れ、ボールミルにて30分間混合し、得られた混合物を直径13mmのダイスに入れて30MPaの圧力で加圧成型した。その後、成形体の断面が見えるように垂直に立てた状態で樹脂に包埋し、研磨機で研磨して厚さ測定用サンプルとした。次に、準備した厚さ測定用サンプルを倍率500~5000倍(概ね位1粒子が1視野に収まる倍率)のSEMにて20粒子撮影する。その後、粒子断面全体をEDXで元素分析し、被覆層の存在を確定したのち、1粒子あたり5か所選び撮影したSEM像から測長機能を使って求め、撮影した20粒子の5か所の平均の厚さを被覆層の厚さとした。
なお、SEMは日立ハイテクノロジーズ社製SU-8020を用い、加速電圧1KV,LAモードで撮影し、EDXは堀場製作所社製X―MAXを使用し、加速電圧15KV,LAモードでSEMから画像情報を得ながら粒子解析を行った。
上記粉末樹脂としてアルケマ社製Kynar301Fを使用した。
【0035】
被覆層は、均一に形成されていてもよいし、不均一に形成されていてもよい。粒子の被覆率は粒子の表面積の50%以上が被覆されていればよく、70%以上被覆されていることが好ましい。ここで、被覆率は粒子の断面SEM写真を撮影し、被覆率=金属被覆層が存在する部分(長さ)/複合粒子の周囲長×100(%)とし、少なくとも100粒子以上の複数の粒子について被覆率を算出したものを平均して求める。具体的には得られた断面SEM写真に対して画像解析を行い、粒子表面に存在する金属被覆層の面積を算出し、金属被覆層が存在する部分(長さ)=金属被覆層の面積/金属被覆層の厚さとすることで金属被覆層が存在する部分(長さ)を求める。金属被覆層の厚さは、上記の方法により求める。粒子の周囲長についても画像解析によって求める。なお、金属被覆層の厚さが極端に薄い場合には被覆率が100%を計算上超えることがあるが、その場合は100%とする。
【0036】
被覆層は、導電性金属以外の成分を含んでいてもよい。このような成分の例として、被覆層形成時に設けられた下地層由来の成分が挙げられる。しかしながら、導電性の高い電極を得る観点から、導電性金属の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。
【0037】
金属被覆フェライト粒子は、被覆層以外の層を備えていてもよい。したがって、フェライト粒子と被覆層の間に中間層が設けられてもよく、被覆層の上に表面層が設けられていてもよい。このような中間層として、被覆層形成の際に設けられる下地層や、フェライト粒子と被覆層の間の密着性改善のための密着層が挙げられる。下地層として、例えば、パラジウム(Pd)含有層が挙げられる。また、表面層としては、フェライト複合粉末の流動性等の性質を改善するための表面処理層が挙げられる。
【0038】
フェライト複合粉末の体積平均粒子径(D50)は、1~50μmが好ましい。体積平均粒子径を1μm以上とすることで、粒子の流動性を高めることができる。体積平均粒子径が過度に小さい粒子は、凝集しやすいからである。体積平均粒子径は、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。一方で、体積平均粒子径を50μm以下とすることで、緻密な電極とすることができる。粒子径が過度に大きな粒子は、堆積したときに大きな空隙を生じさせ易いからである。体積平均粒子径は、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0039】
フェライト複合粉末の体積平均粒子径(D50)、体積平均粒子径(D10)、及び体積平均粒子径(D90)を、次のようにして測定した。まず、試料10g及び水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを2滴添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(株式会社エスエムテー、UH-150型)を用いて分散を行った。このとき、超音波ホモジナイザーの出力レベルを4に設定し、20秒間の分散を行った。その後、ピーカー表面にできた泡を取り除き、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社、SALD-7500nano)に導入して測定を行った。この測定により、体積粒度分布における10%径(体積平均粒径(D10))、50%径(体積平均粒径(D50))及び90%径(体積平均粒径(D90))を求めた。ここで、測定条件はポンプスピード7、内蔵超音波照射時間30、屈折率1.70-050iとした。
【0040】
フェライト複合粉末の体積平均粒径(D10)は、0.1~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、3~10μmがさらに好ましい。
フェライト複合粉末の体積平均粒径(D90)は、15~80μmが好ましく、15~60μmがより好ましく、15~45μmがさらに好ましい。
【0041】
フェライト複合粉末中の粒子の形状は限定されず、任意の形状であってよい。しかしながら、形状は、球状又は多面体形状が好ましい。球状又は多面体形状の粒子とすることで、粒子の流動性が高まり、緻密な電極とすることができる。
【0042】
フェライト複合粉末の形状係数SF-1は、100~130が好ましい。SF-1は、粒子の球形度の指標となるものである。SF-1は、完全な球形では100となり、球形から離れるほど大きくなる。SF-1を130以下とすることで、粒子の流動性が高まる。SF-1は、120以下がより好ましく、110以下がさらに好ましい。
【0043】
フェライト複合粉末の形状係数SF-2は、100~120が好ましい。SF-2は、粒子表面の凹凸程度を示す指標となるものである。SF-2は、表面の凹凸が無ければ100となり、凹凸が深くなるほど大きくなる。SF-2を120以下とすることで、表面の凹凸が少なく均一に金属の被覆層が形成されていることを意味しており、堆積時に複合粒子同士が密に詰まりやすく、焼結による被覆した金属元素のネットワークの形成を早める効果が期待できる。一方で、凹凸が過度に深いと、粒子の流動性が阻害される。したがって、SF-2を120以下とすることで、電極形成の粒子の流動性が向上し、電極のより一層の高密度化を図ることが可能となる。形状係数SF-2は、100~118がより好ましく、100~115がさらに好ましい。
【0044】
なお、形状係数SF-1及びSF-2は、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、フェライト複合粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の最大長(水平フェレ径)R(単位:μm)、投影周囲長L(単位:μm)及び投影面積S(単位:μm2)を求める。その後、下記式(1)、式(2)にしたがって、粒子のSF-1及びSF-2を算出する。複数の粒子について、同様の操作を行って、粒子のSF-1及びSF-2を求め、その平均値を算出することで、フェライト複合粉末のSF-1及びSF-2とする。
式(1): SF-1=(R2/S)×(π/4)×100、
式(2): SF-2=(L2/S/4π)×100
【0045】
フェライト複合粉末の真密度は、5g/cm3以上8g/cm3以下であるのが好ましく、5.2g/cm3以上7.5g/cm3以下であるのがより好ましい。
フェライト複合粉末の真密度は、JIS Z 8807:2012に準拠して、マウンテック社製全自動真密度測定装置Macpycnoを用いて測定した。
【0046】
フェライト複合粉末のタップ密度は、3.0g/cm3以上5.5g/cm3以下であるのが好ましく、3.2g/cm3以上5.0g/cm3以下であるのがより好ましい。
【0047】
なお、本明細書中において、タップ密度とは、JIS R1628に準拠した測定により求められる密度のことをいう。
タッピング装置としては、USPタップ密度測定装置(パウダテスタPT-X、ホソカワミクロン社製)を用いることができる。
【0048】
フェライト粒子はフェライト成分を主として含有する。ここで、主として含有するとは、フェライト成分の含有量が50質量%以上であることを意味する。フェライト成分の含有量を高くすることで、フェライトに基づく効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0049】
フェライト粒子の組成は、強磁性を示す限り、特に限定されない。しかしながら、フェライト粒子が、マンガン(Mn)系フェライト、マンガン-亜鉛(Mn-Zn)系フェライト、ニッケル(Ni)系フェライト、ニッケル-亜鉛(Ni-Zn)系フェライト、ニッケル-亜鉛-銅(Ni―Zn―Cu)系フェライト、マグネシウム(Mg)系フェライト、マグネシウム-亜鉛(Mg-Zn)系フェライト、ストロンチウム(Sr)系フェライト、バリウム(Ba)系フェライト、マンガン-マグネシウム(Mn-Mg)系フェライト、マンガン-マグネシウム-ストロンチウム(Mn-Mg-Sr)系フェライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるのが好ましい。このうち、ストロンチウム(Sr)系フェライト及びバリウム(Ba)系フェライトは主としてハードフェライトであり、その他はソフトフェライトである。このような組成を有するフェライト粒子は高い磁化を有する。したがって、パターン電極を印加する際、極端に強い磁場を印加しなくても、十分に整列する。
【0050】
より具体的には、Mn系フェライトとしては、例えば、Feを48質量%以上69質量%以下、Mnを1.5質量%以上24質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
Mn-Zn系フェライトとしては、例えば、Feを47質量%以上61質量%以下、Mnを7.5質量%以上23質量%以下、Znを1質量%以上14質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
【0051】
Ni-Zn系フェライトとしては、例えば、Feを45質量%以上50質量%以下、Niを2質量%以上25質量%以下、Znを2.5質量%以上23質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
Ni-Zn-Cu系フェライトとしては、例えば、Feを45質量%以上50質量%以下、Niを4質量%以上10質量%以下、Znを10質量%以上20質量%以下、Cuを0.5質量%以上7質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
【0052】
Sr系フェライトとしては、例えば、Feを61質量%以上65質量%以下、Srを7質量%以上10質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
【0053】
Mn-Mg系フェライトとしては、例えば、Feを45質量%以上55質量%以下、Mnを4質量%以上24質量%以下、Mgを0.1質量%以上12質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
【0054】
Mn-Mg-Sr系フェライトとしては、例えば、Feを45質量%以上55質量%以下、Mnを4質量%以上24質量%以下、Mgを0.1質量%以上12質量%以下、Srを0質量%超3質量%以下の含有率で含むものを用いることができる。
【0055】
電極形成材料は、フェライト複合粉末以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、電極の導電性を高めるために、銀(Ag)粉、銅(Cu)粉及びニッケル(Ni)粉などの導電性金属粉を含んでいてもよい。また、ガラス粉末からなる融剤やその他の添加剤を含んでいてもよい。しかしながら、磁場印加によるパターニングの効果を高める観点から、電極形成材料中のフェライト複合粉末の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。電極形成材料はフェライト複合粉末のみからなってもよい。
【0056】
また、電極形成材料は、乾粉、溶媒を含んだスラリー、並びに溶媒及び有機バインダーを含んだペーストのいずれの態様であってよい。しかしながら、スラリーやペーストは、溶媒を除去するための乾燥処理や、有機バインダーを除去するための脱バインダー処理が必要である。したがって、工程の簡易さの観点から、電極形成材料は、溶媒や有機バインダーを含まない乾粉であるのが好ましい。
【0057】
電極形成材料の製造
次に、電極形成材料の製造方法について説明する。電極形成材料を製造するには、まずフェライト複合粉末を作製する。フェライト複合粉末の製造方法は、フェライト粒子で構成されるフェライト粉末を作製する工程と、フェライト粒子に被覆層を形成する工程と、を備える。各工程について、以下において説明する。
【0058】
<フェライト粉末の作製>
フェライト粉末は、公知の手法で作製すればよい。例えば、原料を混合し、混合物を仮焼成し、仮焼成物を粉砕し、粉砕物を造粒し、造粒物を溶射又は本焼成して作製することができる。原料として、酸化物、炭酸塩、水酸化物及び塩化物などの公知のフェライト原料を使用することができる。また、原料の混合は、ヘンシェルミキサー等の公知の混合機を用いて行い、乾式及び湿式のいずれか一方又は両方で行えばよい。
【0059】
次に、得られた原料混合物を仮焼成して、仮焼成物とする。仮焼成は公知の手法で行う。例えば、ロータリーキルン、連続炉、バッチ炉などの炉を用いて行えばよい。仮焼成条件も公知の条件でよい。例えば、大気雰囲気下、700~1300℃の温度で行えばよい。
【0060】
その後、得られた仮焼成物を粉砕及び造粒して、造粒物とする。粉砕方法は、特に限定されない。例えば、振動ミル、ボールミル又はビーズミルなどの粉砕機を用い、乾式及び湿式のいずれか一方又は両方で行う。造粒方法も公知の手法でよい。例えば、粉砕後の仮焼物に、水と、必要に応じてポリビニルアルコール等のバインダーと、分散剤及び/又は消泡剤などの添加剤を加えて粘度を調整し、その後、スプレードライヤー等の造粒機を用いて行う。また、必要に応じて、得られた造粒物に脱バインダー処理を施し、バインダー等の有機成分を除去してもよい。脱バインダー処理の条件は、バインダー等の有機成分の種類に応じて決めればよいが、例えば、大気雰囲気中500~900℃の条件が挙げられる。
【0061】
次に、得られた造粒物を溶射又は本焼成して、溶射物又は焼成物を作製する。
【0062】
溶射により溶射物を作製する場合には、可燃性ガス燃焼炎として燃焼ガスと酸素との混合気体を用いることができる。燃焼ガスと酸素との容量比は、1:3.5~1:6.0であるのが好ましい。揮発した材料の凝縮による粒径が小さい粒子の形成を好適に進行させることができる。また、得られるフェライト粒子の形状を好適に調整することができる。さらに、後の工程での分級等の処理を省略又は簡略化することができ、フェライト粒子の生産性をさらに優れたものとすることができる。例えば、燃焼ガス10Nm3hrに対して酸素35Nm3/hr~60Nm3/hrの割合で用いることができる。
【0063】
溶射に用いる燃焼ガスとして、プロパンガス、プロピレンガス、アセチレンガス等が挙げられる。中でもプロパンガスを好適に用いることができる。また、造粒物を可燃性ガス中に搬送するために、搬送ガスとして窒素、酸素、空気等を用いることができる。搬送される造粒物の流速は、20~60m/秒が好ましい。さらに、溶射は、温度1000~3500℃で行うのが好ましく、2000~3500℃で行うのがより好ましい。
【0064】
このような条件を満足することにより、揮発した材料の凝縮による粒径が比較的小さい粒子の形成をさらに好適に進行させることができる。また、得られるフェライト粒子の形状をさらに好適に調整することができる。さらに、後の工程での分級等の処理を省略又は簡略化することができ、フェライト粒子の生産性をさらに優れたものとすることができる。その上、後の工程での分級により除去する粒子の割合をより少なくすることができ、フェライト粒子の収率をさらに優れたものとすることができる。
【0065】
このようにして溶射してフェライト化された粒子は、水中又は大気雰囲気下で急冷及び凝固され、これをサイクロン及び/又はフィルターによって捕集する。その後、サイクロン及び/又は補修用フィルターで回収したフェライト粒子を、必要に応じて分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降などを用いて所望の粒径に粒度調整する。なお、サイクロン等で粒径の大きい粒子と分離して回収することも可能である。
【0066】
一方で、本焼成により焼成物を作製する場合には、造粒物を、バッチ炉や連続炉などの既存の炉に入れて、本焼成を行う。焼成条件は、一概に限定されず、フェライト粒子の組成に応じて決めればよい。一例として、大気雰囲気下で、800~1500℃の温度で1~24時間保持する条件が挙げられる。また、本焼成の際に、炉中酸素濃度を調整してもよい。さらに、必要に応じて、得られた焼成物を、ハンマーミル等の公知の解砕機を用いて解砕してもよい。
【0067】
必要に応じて、得られた溶射物又は焼成物を解砕し、その後、分級して粗粒子や微粒子を取り除いてもよい。解砕は、ハンマーミル等の公知の解砕機を用いればよい。また、分級も公知の手法で行えばよい。例えば、篩を用いて分級し、その後、気流分級する手法が挙げられる。このようにして、フェライト粒子で構成されるフェライト粉末が作製される。
【0068】
<被覆層の形成>
被覆層の形成は、得られたフェライト粉末(フェライト粒子)に、導電性金属の無電解めっきを施すことにより行う。無電解めっきは、公知の手法で行えばよい。また、被覆層の形成に先立ち、フェライト粒子上に下地層を形成してもよい。このようにして、金属被覆フェライト粒子からなるフェライト複合粉末が作製される。
【0069】
フェライト複合粉末に、必要に応じて、他の導電性金属粉、融剤及び/又は添加剤などを加えて、電極形成材料とする。
【0070】
電極の製造方法
本発明の電極の製造方法は、電極形成材料を、基体上に堆積して堆積物とする堆積工程と、前記堆積物を焼結し、堆積物に導電性を持たせる焼結工程と、を含む。各工程について、以下において説明する。
【0071】
<堆積工程>
堆積工程では、電極形成材料を基体上に堆積して堆積物とする。堆積する手法は特に限定されない。例えば、電極形成材料をノズルから供給し、基体上に自然堆積させる手法が挙げられる。あるいは、電極形成材料を、気流にのせて基体上に吹き付ける手法が挙げられる。
【0072】
好ましくは、堆積工程の際に、電極形成材料に磁場を印加して、印加磁場により電極形成材料中の金属被覆フェライト粒子を整列させる。これにより堆積物(電極形成材料)がパターニングされる。磁場は、堆積中の電極形成材料に印加してもよく、あるいは、堆積後の電極形成材料(堆積物)に印加してもよい。いずれであっても、電極形成材料中の金属被覆フェライト粒子は整列する。
【0073】
印加磁場発生の手段は、所望のパターンが得られる限り、限定されるものではない。しかしながら、簡易さの観点から、永久磁石を用いるのが好ましい。永久磁石として、フェライト磁石や希土類磁石などの公知の磁石を用いることができる。また、焼結磁石であってもよく、ボンド磁石であってもよい。また、マグネトグラフィのような現像方式であってもよい。
【0074】
磁石を用いた磁場印加の手段の一例を
図1に示す。
図1において、基体(1)の直下に磁石(2)が設けられている。ここで、基体(1)は非磁性薄板からなり、磁石(2)は薄板磁石である。基体(非磁性薄板)(1)はその厚みが鉛直方向を向くように配置され、磁石(薄板磁石)(2)はその厚みが水平方向を向くように配置されている。また、磁石(薄板磁石)(2)は、第1面(3)がN極、第1面(3)に対向する第2面(4)がS極となるように着磁されている。そのため、磁石(2)の外部には、N極からS極に向かう方向に沿って磁力線(5)がのびている。
図1においては、磁石(2)の上部を通過する磁力線(5)のみを矢印で示してあり、その他の磁力線は省略してある。
【0075】
基体(1)は非磁性薄板からなるので、磁力線(5)は基体(非磁性薄板)(1)を通過する。そのため、基体(1)の上に電極形成材料を堆積させると、その中の金属被覆フェライト粒子(6)は、磁力線(5)の影響を受けて整列する。
図1に示す例では、金属被覆フェライト粒子(6)は、基体(1)直下にある磁石(2)の1辺に沿うように整列する。したがって、金属被覆フェライト粒子(6)を含む電極形成材料(堆積物)は、細線状にパターニングされる。
【0076】
磁石(2)の形状は、四角板状でもよく、円板状でもよく、任意の多角板状であってもよい。例えば、磁石(2)を円板状とすることで、磁石を回転させながら、電極形成材料を基体(1)上に供給する態様とすることが可能である。一方で、磁石(2)は、その厚みに対するそれ以外の方向の長さ(幅、長さ、径等)の比、すなわち板状比が大きいほど好ましい。これは、板状比が過度に小さいと、不所望な方向を向く磁力線の影響が無視し得なくなるからである。このような不所望な磁力線は、金属被覆フェライト粒子の整列乱れを引き起こす。したがって、磁石(2)の板状比(厚みに対するそれ以外の方向の長さの比)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。
【0077】
基体(1)は、非磁性である限り、その材質は限定されない。例えば、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルム、あるいはセラミックス薄板や非磁性金属薄板が挙げられる。一方で、基体(1)の厚さは薄い方が好ましい。基体(1)が過度に厚いと、金属被覆フェライト粒子を整列させるのに十分な磁場が電極形成材料に印加されないからである。基体(1)の厚さの上限は、用いる磁石の発生磁場の強さにより、一概に限定されるものではない。しかしながら、厚さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0078】
磁石を用いた磁場印加の手段の別の一例として、磁石自体を基体として用いる手法が挙げられる。この手法では、基体たる磁石上に電極形成材料を供給する。金属被覆フェライト粒子を含む電極形成材料は、磁石の磁極上に吸着して堆積する。堆積した電極形成材料を、他の基体に転写することで、パターニング化された堆積物を得ることができる。
【0079】
このように、堆積工程の際に、電極形成材料に磁場を印加することが好ましく、これにより堆積物(電極形成材料)がパターニングされ、その結果、後続の焼結工程を経て、パターン電極を得ることができる。ただし、本発明の電極の製造方法は、堆積工程で磁場を印加する態様に限定されるものではない。磁場を印加しなくても、焼結工程を経ることで、導電性の高い電極を得ることができる。
【0080】
<焼結工程>
焼結工程では、堆積物(電極形成材料)を焼結(焼成)し、堆積物に導電性を持たせて、電極とする。焼結により、金属被覆フェライト粒子の被覆層(導電性金属)が結合及び一体化する。そのため、焼結後の電極中では、導電性金属からなる三次元的に連続する金属マトリックスが形成され、堆積物(電極)の導電性が発現する。
【0081】
焼結は、所望の導電性を有する電極が得られる限り、その手法は限定されない。基体がセラミックス薄板や非磁性金属薄板などの耐熱材料からなる場合には、堆積物を基体ごと焼結炉に入れて焼結を行うことが可能である。一方で、基体が樹脂フィルム等の非耐熱材料からなる場合には、基体へのダメージを最小限に抑えるため、光焼成方法で行うのが好ましい。
【0082】
焼結温度の下限は、導電性金属の材質や電極形成材料の成分などによって決まり、一概に限定されるものではない。しかしながら、被覆層(導電性金属)の結合を促進させる観点から、過度に低い焼結温度は好ましくない。焼結温度は、600℃以上が好ましく、700℃以上がより好ましく、800℃以上がさらに好ましい。また、焼結温度の上限は、フェライト粒子の組成や電極形成材料の成分などによって決まり、一概に限定されるものではない。しかしながら、焼結温度が過度に高いと、被覆層中の導電性金属がフェライト粒子に拡散するか、被覆した金属だけが凝集し、電極の導電性が得られない恐れがある。焼結温度は、1350℃以下が好ましく、1320℃以下がより好ましく、1300℃以下がさらに好ましい。また、焼結保持時間は、1分~2時間が好ましい。
【0083】
焼結は、被覆層を構成する導電性金属が酸化されない雰囲気で行うのが好ましい。導電性金属が酸化されると、電極の導電性が劣化してしまうからである。このような雰囲気として、弱還元性雰囲気(例えば水素ガスと不活性ガスの混合ガス)、低酸素雰囲気、無酸素雰囲気、真空雰囲気及び不活性ガス雰囲気が挙げられる。雰囲気中の酸素濃度は、10容量%以下が好ましく、5容量%以下がより好ましく、1容量%以下がさらに好ましい。
【0084】
このようにして、電極形成材料から電極が形成される。得られた電極は、導電性金属からなるマトリックスとその中に分散されるフェライト粒子を含む。導電性金属からなる金属マトリックスは、三次元連続構造を有している。そのため、電極は高い導電性を示す。また、堆積工程で、電極形成材料に磁場を印加することで、パターン電極を得ることができる。
【0085】
電極
本発明は電極にも関する。本発明の電極は、導電性金属からなるマトリックスと、前記マトリックス中に分散されてなるフェライト粒子とを含む。本発明の電極の製造方法は特に限定されないが、例えば上記の電極の製造方法により製造することが挙げられる。
前記マトリックス及び前記マトリックス中に分散されてなるフェライト粒子は、電極形成後、電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。
【実施例】
【0086】
本発明を、以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0087】
例1(ニッケル(Ni)被覆層)
(1)フェライト複合粉末(フェライト複合粒子)の作製
<原料混合>
原料として、酸化鉄(Fe2O3)、四酸化三マンガン(Mn3O4)を用い、Fe2O3:80mol、Mn3O4:6.67molの割合で秤量し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0088】
<仮焼成及び粉砕>
得られた混合物を、ロータリーキルンを用いて大気中950℃で4時間仮焼成した。得られた仮焼成物を、乾式ビーズミル(5/8インチの鋼球ビーズ)を用いて粗粉砕し、その後、水を加えて、湿式ビーズミル(3/8インチのジルコニアビーズ)を用いて微粉砕してスラリーを得た。得られたスラリーは、固形分濃度が55質量%であり、スラリー中の粉砕粉の粒径(スラリー粒径)は、2.42μmであった。
【0089】
<造粒>
得られたスラリーに、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を固形分換算で0.3質量%加え、さらに分散剤(ポリカルボン酸化合物)0.25重量%と消泡剤(多価アルコール系化合物)0.2重量%を加えた。その後、分散剤と消泡剤を加えたスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒して、造粒物を得た。
【0090】
<溶射>
得られた造粒物を可燃性ガス燃焼炎中で溶射及び急冷した。溶射は、プロパンガス流量を7m3/時間、酸素流量を35m3/時間の条件で行った。このとき、造粒物を連続的に流動しながら溶射したため、溶射、急冷後の粒子は互いに決着することなく独立していた。続いて、冷却した粒子を気流の下流側に設けたサイクロンによって回収して、溶射物を得た。得られた溶射物から、篩を用いて微粉を取り除き、さらに気流分級してマンガン(Mn)系フェライト粒子から構成されるフェライト粉末を得た。
【0091】
<被覆層の形成>
フェライト粉末(フェライト粒子)に対して無電解めっきを施すことにより、ニッケル(Ni)被覆層を表面に備えた金属被覆フェライト粒子からなるフェライト複合粉末を得た。得られたフェライト複合粉末は、ニッケル(Ni)被覆層の厚さが200nmであった。このフェライト複合粉末を電極形成材料とした。
【0092】
(2)電極の形成
<堆積工程>
得られた電極形成材料10質量%をPVA水溶液90質量%に分散混合しバーコーターを用いて基体上に塗工し、堆積物とした。この際、
図1に示す磁場印加手段を用いて、堆積物に磁場を印加した。基体として、厚さ0.635mのアルミナ板を用いた。また、磁石として、厚さ0.5mm、幅50mm、高さ50mmのボンド磁石を用いた。磁場印加により、電極形成材料は整列し、細線状にパターニングされた堆積物が得られた。
PVA水溶液のPVAの濃度は10質量%であった。
分散混合は自転公転型撹拌混合装置を用いて混合時間は1分とした。
【0093】
<焼結工程>
得られた堆積物の水分を乾燥させたのち、電気炉を用いて基体ごと焼結して、電極とした。焼結は、酸素濃度0容量%の雰囲気下、1300℃で行った。電極は、細線状のパターンを有していた。
【0094】
例2(銅(Cu)被覆層)
(1)フェライト複合粉末(フェライト複合粒子)の作製
ニッケル(Ni)被覆層の代わりに、銅(Cu)被覆層を形成した以外は、例1と同様にして、フェライト複合粉末を作製した。得られたフェライト複合粉末は、銅(Cu)被覆層の厚さが200nmであった。このフェライト複合粉末を電極形成材料とした。
【0095】
(2)電極の形成
得られた電極形成材料を用いて、焼成条件を850℃、2時間とした以外は例1と同様の手法で電極を形成した。電極は、細線状のパターンを有していた。
【0096】
例3(銀(Ag)被覆層)
(1)フェライト複合粉末(フェライト複合粒子)の作製
<原料混合>
原料として、酸化鉄(Fe2O3)、四酸化三マンガン(Mn3O4)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)及び炭酸ストロンチウム(SrCO3)を用い、Fe2O3:50mol、Mn3O4:13.30mol、Mg(OH)2:10mol及びSrCO3:0.2molの割合で秤量し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0097】
<仮焼成及び粉砕>
得られた混合物を、ロータリーキルンを用いて大気中950℃で4時間仮焼成した。得られた仮焼成物を、乾式ビーズミルを用いて粗粉砕し、その後、水を加えて、湿式ビーズミルを用いて微粉砕した。得られたスラリーは、固形分濃度が55質量%であり、スラリー中の粉砕粉の粒径(スラリー粒径)は、1.85μmであった。
【0098】
<造粒>
得られたスラリーに、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を固形分換算で0.3質量%加え、さらに分散剤と消泡剤を加えた。その後、分散剤と消泡剤を加えたスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒した。
【0099】
<溶射>
得られた造粒物を可燃性ガス燃焼炎中で溶射及び急冷した。溶射は、プロパンガス流量を7m3/時間、酸素流量を35m3/時間の条件で行った。このとき、造粒物を連続的に流動しながら溶射したため、溶射、急冷後の粒子は互いに決着することなく独立していた。続いて、冷却した粒子を気流の下流側に設けたサイクロンによって回収して、溶射物を得た。得られた溶射物から、篩を用いて微粉を取り除き、さらに気流分級してマグネシウム(Mg)及びストロンチウム(Sr)を含有するマンガン(Mn)-マグネシウム(Mg)-ストロンチウム(Sr)系フェライト粒子から構成されるフェライト粉末を得た。
【0100】
<被覆層の形成>
フェライト粉末(フェライト粒子)に対して無電解めっきを施すことにより、銀(Ag)被覆層を表面に備えた金属被覆フェライト粒子からなるフェライト複合粉末を得た。得られたフェライト複合粉末は、銀(Ag)被覆層の厚さが200nmであった。このフェライト複合粉末を電極形成材料とした。
【0101】
(2)電極の形成
得られた電極形成材料を用いて、焼成条件を850℃、2時間とした以外は例1と同様の手法で電極を形成した。電極は、細線状のパターンを有していた。
【0102】
例4(被覆層なしフェライト粉末)
(1)フェライト複合粉末(フェライト複合粒子)の作製
<原料混合>
原料として、酸化鉄(Fe2O3)、四酸化三マンガン(Mn3O4)を用い、Fe2O3:80mol、Mn3O4:6.67molの割合で秤量し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0103】
<仮焼成及び粉砕>
得られた混合物を、ロータリーキルンを用いて大気中950℃で4時間仮焼成した。得られた仮焼成物を、乾式ビーズミル(5/8インチの鋼球ビーズ)を用いて粗粉砕し、その後、水を加えて、湿式ビーズミル(3/8インチのジルコニアビーズ)を用いて微粉砕してスラリーを得た。得られたスラリーは、固形分濃度が55質量%であり、スラリー中の粉砕粉の粒径(スラリー粒径)は、2.42μmであった。
【0104】
<造粒>
得られたスラリーに、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を固形分換算で0.3質量%加え、さらに分散剤(ポリカルボン酸化合物)0.25重量%と消泡剤(多価アルコール系化合物)0.2重量%を加えた。その後、分散剤と消泡剤を加えたスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒して、造粒物を得た。
【0105】
<溶射>
得られた造粒物を可燃性ガス燃焼炎中で溶射及び急冷した。溶射は、プロパンガス流量を7m3/時間、酸素流量を35m3/時間の条件で行った。このとき、造粒物を連続的に流動しながら溶射したため、溶射、急冷後の粒子は互いに決着することなく独立していた。続いて、冷却した粒子を気流の下流側に設けたサイクロンによって回収して、溶射物を得た。得られた溶射物から、篩を用いて微粉を取り除き、さらに気流分級してマンガン(Mn)系フェライト粒子から構成されるフェライト粉末を得た。
【0106】
(2)電極の形成
得られた電極形成材料を用いて例1と同様の手法で電極を形成したが金属被覆がなかったため焼結後基体上に形成した細線状のパターンが維持できなかった。
【0107】
[電極形成材料の評価]
例1~4で得られた電極形成材料(フェライト複合粉末)について、各種特性の評価を以下のとおり行った。
【0108】
<磁気特性>
フェライト複合粉末の磁気特性(飽和磁化(σs)、残留磁化(σr)及び保磁力(Hc))を、次のようにして測定した。まず、内径5mm、高さ2mmのセルに試料を詰めて、振動試料型磁気測定装置(東英工業株式会社、VSM-C7-10A)にセットした。次に、印加磁場を加え、5kOeまで掃引し、次いで、印加磁場を減少させて、ヒステリシスカーブを描かせた。その後、このカーブのデータにより、試料の飽和磁化σs、残留磁化σr及び保磁力Hcを求めた
同様にして、フェライト複合粉末が備えるフェライト粉末(フェライト粒子)の飽和磁化σs、残留磁化σr及び保磁力Hcについても同様に測定した。フェライト粉末(フェライト粒子)の飽和磁化σs、残留磁化σr及び保磁力Hcを表1に示す。
【0109】
<元素分析(金属成分含有量)>
フェライト複合粉末の金属成分含有量を、次のようにして測定した。まず、試料0.2gを秤量し、これに純水60mlに1Nの塩酸20ml及び1Nの硝酸20mlを加えた後に加熱して、試料を完全溶解させた水溶液を調整した。得られた水溶液をICP分析装置(株式会社島津製作所、ICPS-10001V)にセットし、金属成分含有量を測定した。
同様にして、フェライト複合粉末が備えるフェライト粉末(フェライト粒子)の金属成分含有量についても同様に測定した。フェライト粉末(フェライト粒子)の金属成分含有量を表1に示す。
【0110】
<真密度>
フェライト複合粉末の真密度は、JIS Z 8807:2012に準拠して、マウンテック社製全自動真密度測定装置Macpycnoを用いて測定した。
【0111】
<タップ密度>
フェライト複合粉末のタップ密度とは、JIS R1628に準拠した測定により求められる密度のことをいう。
タッピング装置としては、USPタップ密度測定装置(パウダテスタPT-X、ホソカワミクロン社製)を用いた。
【0112】
<粒度分布>
フェライト複合粉末の粒度分布を、次のようにして測定した。まず、試料10g及び水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを2滴添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(株式会社エスエムテー、UH-150型)を用いて分散を行った。このとき、超音波ホモジナイザーの出力レベルを4に設定し、20秒間の分散を行った。その後、ピーカー表面にできた泡を取り除き、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社、SALD-7500nano)に導入して測定を行った。この測定により、体積粒度分布における10%径(体積平均粒経(D10))、50%径(体積平均粒径(D50))及び90%径(体積平均粒径(D90))を求めた。ここで、測定条件はポンプスピード7、内蔵超音波照射時間30、屈折率1.70-050iとした。
【0113】
<形状係数>
フェライト複合粉末の形状係数(SF-1及びSF-2)を、次のようにして測定した。まず、試料の観察を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、SU-8020)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDX;株式会社堀場製作所、E-MAX)を用いて行った。観察の際に倍率は1000倍に設定した。その後、EDX付属の粒子解析機能を用いて、試料中100粒子の最大長(水平フェレ径)R(単位:μm)、投影周囲長L(単位:μm)及び投影面積S(単位:μm2)を自動測定した。
【0114】
次に、各粒子について、以下の式(1)、式(2)にしたがって、SF-1及びSF-2を算出し、100粒子についての平均値を、それぞれ粉末のSF-1及びSF-2とした。
式(1): SF-1=(R2/S)×(π/4)×100
式(2): SF-2=(L2/S/4π)×100
【0115】
<被覆層の厚さ>
被覆層の厚さは、以下のようにして求めた。
被覆層の厚さはフェライト複合粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で測定した。具体的には測定対象の粉末9gと粉末樹脂1gを50ccガラス瓶に入れ、ボールミルにて30分間混合し、得られた混合物を直径13mmのダイスに入れて30MPaの圧力で加圧成型した。その後、成形体の断面が見えるように垂直に立てた状態で樹脂に包埋し、研磨機で研磨して厚さ測定用サンプルとした。次に、準備した厚さ測定用サンプルを倍率500~5000倍(概ね位1粒子が1視野に収まる倍率)のSEMにて20粒子撮影する。その後、粒子断面全体をEDXで元素分析し、被覆層の存在を確定したのち、1粒子あたり5か所選び撮影したSEM像から測長機能を使って求め、撮影した20粒子の5か所の平均の厚さを被覆層の厚さとした。
なお、SEMは日立ハイテクノロジーズ社製SU-8020を用い、加速電圧1KV,LAモードで撮影し、EDXは堀場製作所社製X―MAXを使用し、加速電圧15KV,LAモードでSEMから画像情報を得ながら粒子解析を行った。
上記粉末樹脂としてアルケマ社製Kynar301Fを使用した。
【0116】
[結果]
例1~4において、フェライト複合粉末(電極形成材料)の評価結果は、表2に示されるとおりであった。例1~3のフェライト複合粉末は、金属被覆後も飽和磁化(σs)が高く十分使用できるレベルであることが確認できた。また、元素分析の結果、被覆層成分たるニッケル(Ni)、銅(Cu)又は銀(Ag)が検出され、被覆層が形成されていることが裏付けられた。また、フェライト複合粉末は、形状係数SF-1及びSF-2が小さく(100に近く)、表面凹凸の少ない球状粒子からなることが分かった。さらに、フェライト複合粉末は、タップ密度が比較的高く、流動性及び充填性に優れることが分かった。
【0117】
例1~3で得られた電極における基体上の細線パターンについて導通試験を行った。
導通試験はKEITHELY社2000型デジタルマルチメーターを用いて抵抗測定モードで測定値が0.1Ω以下であれば導電性であると判断した。
例1~3で得られた電極について測定したところ、測定値が0.1Ω以下となっており、導電性があったことから、例1~3で得られた電極は、電極として機能できることがわかる。
【0118】
例2において、電極断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。得られたSEM像を
図2に示す。
図2において、グレーの色調を有する丸い部分はフェライト粒子であり、白い部分(薄灰色)が銅(Cu)である。
図2に示されるように、電極中で、導電性金属である銅(Cu)は、連続する金属マトリックスを構成していた。このことから、電極が高い導電性を有することが裏付けられる。また、フェライト粒子は、マトリックス中に分散していた。
【0119】
【0120】
【0121】
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、簡易な手法で電極を形成することができる、電極形成材料、電極の製造方法及び電極を提供することができる。
【0123】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2019年1月29日出願の日本特許出願(特願2019-013667)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 基体
2 磁石
3 第1面
4 第2面
5 磁力線
6 金属被覆フェライト粒子