(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】イス
(51)【国際特許分類】
A47C 7/02 20060101AFI20230308BHJP
A47C 7/32 20060101ALI20230308BHJP
A47C 7/56 20060101ALI20230308BHJP
A47C 3/04 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
A47C7/02 A
A47C7/32
A47C7/56
A47C3/04
(21)【出願番号】P 2021187180
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2020104178の分割
【原出願日】2014-11-19
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2014076803
(32)【優先日】2014-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 工
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-090786(JP,A)
【文献】特開2011-136101(JP,A)
【文献】特開2003-235670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/02
A47C 7/32
A47C 7/56
A47C 3/04
A47C 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びる支持フレームを脚部により支持してなる脚体と、
枠体と、
前記枠体に張り掛けられて着座面となるシート状部材と、を備え、左右方向に延びる軸を中心として回動可能に構成された座体と、
前記座体における前記着座面となる側とは反対側に設けられ、前記支持フレームに支持されることにより、前記座体を着席可能な状態に位置決めする位置決め部材と、を備え、
前記位置決め部材は、一端が前記枠体のうち左側方において前後に延びる左片から延び出し、他端が前記枠体のうち右側方において前後に延びる右片から延び出しており、
前記シート状部材は、変形可能であり、
前記位置決め部材は、前後方向の幅が下側に向けて狭くなる形状であると共に、左右方向の外側面が前記枠体から左右方向内側に向けて傾斜するように突出しており、該座体の左右外側面よりも内側となる位置において前記支持フレームと接触するように構成される
ことを特徴とするイス。
【請求項2】
左右方向に延びる支持フレームを脚部により支持してなる脚体と、
枠体と、前記枠体に張り掛けられて着座面となるシート状部材と、を備え、左右方向に延びる軸を中心として回動可能に構成された座体と、
前記座体における前記着座面となる側とは反対側に設けられ、前記支持フレームに支持されることにより、前記座体を着席可能な状態に位置決めする位置決め部材と、を備え、
前記位置決め部材は、一端が前記枠体の左片から延び出し、他端が前記枠体の右片から延び出しており、
前記シート状部材は、変形可能であり、
前記位置決め部材は、前後方向の幅が前記着座面から離れる方向に向けて狭くなる形状であると共に、左右方向の外側面が前記枠体から左右方向内側に向けて傾斜するように突出しており、該座体の左右外側面よりも内側となる位置において前記支持フレームと接触するように構成される
ことを特徴とするイス。
【請求項3】
左右方向に延びる支持フレームを脚部により支持してなる脚体と、
平面視で四角形の枠体と、変形可能に構成され、前記枠体に張り掛けられて着座面となるシート状部材と、を備え、左右方向に延びる軸を中心として回動可能に構成された座体と、
前記座体における前記着座面となる側とは反対側に設けられ、左右方向に長さを有し、前後方向に幅を有する一端が前記枠体の左片から延び出し、前後方向に幅を有する他端が前記枠体の右片から延び出す位置決め部材であって、前記シート状部材から間隔を開けた位置に配置され、上下方向の幅よりも前後方向の幅が大きい部材を有し、該部材が前記支持フレームに支持されることにより、前記座体を着席可能な状態に位置決めする位置決め部材と、を備える
ことを特徴とするイス。
【請求項4】
左右方向に延びる支持フレームを脚部により支持してなる脚体と、
枠体と、前記枠体に四方を囲まれた領域に張り掛けられて着座面となるシート状部材と、を備え、左右方向に延びる軸を中心として回動可能に構成された座体と、
前記座体における前記着座面となる側とは反対側に設けられ、左右方向に長さを有し、一端が前記枠体の左片から延び出し、他端が前記枠体の右片から延び出す位置決め部材であって、前記シート状部材から間隔を開けた位置に配置される部材を有し、該部材が前記支持フレームに支持されることにより、前記座体を着席可能な状態に位置決めする位置決め部材と、を備え、
前記シート状部材は、変形可能であり、
前記枠体は、相対的に表側に位置する表側の部材と、相対的に裏側に位置する裏側の部材と、を備え、
前記表側の部材には前記シート状部材が設けられており、前記裏側の部材には前記位置決め部材が該裏側の部材と一体に設けられている
ことを特徴とするイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚体と座体とを備えたイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホールなどで使用するイスとして、未使用時に収容スペースを小さくすべく、座体を上方に跳ね上げた状態で前後方向に重ねて収容する、いわゆるネスティング可能に構成されたものが知られている。
【0003】
この種のイスでは、ネスティング状態においてコンパクトに収容できるようにすることだけでなく、イスとしての充分な強度を確保できるようにするために、脚体上部において左右方向に延びるフレームにより座体を位置決めすることが一般的である(特許文献1,
2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-279032号
【文献】特開2005-218534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述したようなネスティング可能なイスに限らず、座体を枠体にシート状部材を張り掛けたものとするなどし、イスとしての座り心地を向上させることが行われているが、上記先行技術では、このような要請にそのまま応えることはできない。
【0006】
なぜなら、コンパクト性を維持すべく、座体の直下に配置されたフレームで荷重を受ける構造となっているため、座体への着席でシート状部材が下方向に変形すると、フレームに接触してそれ以上の変形が妨げられ、かえって座り心地が悪くなるからである。
【0007】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ネスティング可能に構成されたイスにおいて、ネスティング状態におけるコンパクト性を低下させることなく、イスとしての座り心地を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため第1の構成は、左右方向に延びる支持フレームを脚部により支持してなる脚体と、枠体に囲まれた領域に着座面となるシート状部材を張り掛けてなり、前記枠体の後方側において左右方向に延びる軸を中心として回動可能に固定された座体と、を備えており、前記座体の枠体のうち、左右側方において前後に延びる左片および右片それぞれの裏面には、該裏面から突出して前記支持フレームに接触することにより、前記座体を着席可能な状態に位置決めする一対の位置決め部材が設けられており、前記位置決め部材は、前記座体への着席で前記シート状部材が変形した場合における該シート状部材の下端が、前記支持フレームの上端よりも上方にある状態で前記支持フレームに接触する位置関係となるように、前記枠体の裏面からの突出量が定められている。
【0009】
このように構成されたイスであれば、座体の直下に配置した支持フレームで荷重を受ける構造を採用しているにも拘らず、座体への着席でシート状部材が変形したとしても、その下端が支持フレームに接触することはなく、着席に伴うシート状部材の変形が妨げられることがない。そのため、上記構造によりネスティング状態におけるコンパクト性を確保
しつつ、好適にイスとしての座り心地を向上させることができる。
【0010】
ところで、上記構成においては、着席者の坐骨結節に対応する前後位置、つまり着席者の坐骨結節が位置すると想定される前後方向に沿った位置が、着席者の前後方向における重心位置となりうるため、少なくとも座体における枠体の裏面のうち、この位置を基準位置として前後に延びる領域で荷重を受けられるようにすることが、イスとしての着席時の強度を確保するためには有効である。
【0011】
このためには、上記構成を、以下に示す第2の構成または第3の構成のようにすることが考えられる。
第2の構成において、前記位置決め部材は、前記枠体の裏面のうち、前記基準位置を含めて前後方向に拡がる所定領域の前後端それぞれから突出する一組の突出片と、前記一組の突出片をそれぞれの先端側で連結する連結片と、からなり、前記連結片が前記支持フレームに接触することにより前記座体を位置決めする。
【0012】
第3の構成において、前記位置決め部材は、前記枠体の裏面のうち、前記基準位置を含めて前後方向に拡がる所定領域にわたって突出する板状の突起として形成されている。
これら構成に係るイスであれば、位置決め部材により、座体において着席者の重心位置となりうる領域で荷重を受けることができるため、イスとしての着席時の強度を好適に確保することができる。
【0013】
特に、第2の構成のように、一組の突出片と連結片とで位置決め部材を構成した場合には、この枠状の構造により弾性変形を生じやすくすることができるため、例えば、着席状態での荷重を超える大きさの荷重でのみ弾性変形する設計としておくことにより、着席時に生じる大きな荷重を吸収する機能を持たせることができる。
【0014】
また、これらの構成は、以下に示す第4の構成とすることが考えられる。
第4の構成において、前記位置決め部材は、前後方向の幅が先端に向けて狭くなる形状となっており、前記支持フレームは、部材としての上面が前記位置決め部材との接触領域となり、側面視で前記位置決め部材の前端面を該前端面に沿って延長した線と重なる位置まで、部材としての前端が到達している。
【0015】
このように構成されたイスであれば、位置決め部材における前後方向の幅が先端に向けて狭くなっているため、この前後幅にあわせて、支持フレームにおいて位置決め部材と接触する領域の前後幅も短くすることができ、これによりネスティング時のコンパクト性をより向上させることができる。
【0016】
また、上記各構成は、以下に示す第5の構成のようにするとよい。
第5の構成において、前記位置決め部材は、側面視で前方に延出する延出領域を有し、該延出領域を含む前後方向の幅が先端に向けて狭くなる形状とされている。
【0017】
このように構成されたイスであれば、位置決め部材の延出領域を含む前端側が座体の左右端それぞれを裏面から支持して補強する状態となり、座体としての強度を向上させることができるだけでなく、座体がその前端ほど徐々に撓りやすくなるように作用するため、着席者の脚(特に大腿部裏側)が接触したことによる座体の変形が妨げられにくくなる結果、イスとしての座り心地を良好なものとすることができる。
【0018】
また、上記各構成は以下に示す第6の構成とすることが考えられる。
第6の構成において、前記一対の位置決め部材は、一方における先端から他方における先端が、左右方向に延びる補強フレームによって接続されている。
【0019】
このように構成されたイスであれば、位置決め部材それぞれを補強フレームによって接続することで、イスとしての着席時の強度をより向上させることができる。
また、上記各構成は以下に示す第7,第8の構成とするとよい。
【0020】
第7の構成において、前記支持フレームは、前記位置決め部材との接触領域と隣接する領域に、該位置決め部材が左右方向の内側へ変位することを規制する内側規制片が形成されている。
【0021】
第8の構成において、前記支持フレームには、前記位置決め部材との接触領域と隣接する領域に、該位置決め部材が左右方向の外側へ変位することを規制する外側規制片が形成されている。
【0022】
これら構成に係るイスであれば、支持フレームの規制片が位置決め部材との接触領域と隣接する領域に配置され、両者の位置関係が明確になっているため、利用者にとって、座体の着席可能な状態への位置決めを確実かつ容易に行うことができるようになる。
【0023】
また、内側規制片を形成した構成においては、着席時の荷重で位置決め部材が左右方向内側へ変位させられてしまうような場合でも、この変位が内側規制片により規制されるため、イスとしての着席時の強度をより向上させることができる。
【0024】
また、外側規制片を形成した構成においては、着席時など大きな荷重が加わって位置決め部材が左右方向外側へ変位させられるような場合でも、この変位が外側規制片により規制されるため、このような荷重による意図しない変形を防止することができる。
【0025】
また、上記各構成は以下に示す第9の構成とするとよい。
第9の構成において、前記位置決め部材は、前記座体の裏面から左右方向内側に向けて傾斜するように突出しており、該座体の左右外側面よりも内側となる位置において前記支持フレームと接触するように構成されている。
【0026】
このように構成されたイスであれば、位置決め部材が座体の左右外側面よりも内側となる位置において支持フレームと接触するため、この接触領域までに一定の距離が確保される結果、着席者の指先などが挟まるといった事態を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】イスの全体構成を示す六面図(左側面図は書略)
【
図4】別の実施形態におけるイスの特徴部分を示す斜視図
【
図5】複数のイスをネスティング状態とする様子を示す図
【
図6】別の実施形態におけるイスの特徴部分を示す斜視図
【
図7】別の実施形態におけるイスの特徴部分を示す要部正面図
【
図8】別の実施形態における座体の枠体を示す要部右側面図
【
図9】別の実施形態におけるイスの全体構成を示す正面図および右側面図
【
図10】別の実施形態における複数のイスをネスティング状態とする様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための形態を図と共に説明する。
(1)構成
イス1は、
図1に示すように、背もたれ10と、座体20と、左右一対の脚部30,4
0と、左右方向に延びる支持フレーム50と、を備え、同一のイス1を前後方向に重ねて収納(いわゆるネスティング)可能なネスティングチェアーである。
【0029】
背もたれ10は、板状の部材を、平面視で後方に向けて凸となる円弧状とすることで、全体として着席者の背中に沿うような形状とされたものであり、その上端側から後方に向けて延出する帯状の帯状片11と、左右両側の下端それぞれから下方に延びて支持フレーム50に連結される一対の背側連結片13と、を備えている。
【0030】
これらのうち、帯状片11は、背もたれ10上端の左右端部側それぞれから後方に延出する部位と、該部位それぞれを左右方向に連結する帯状の部位とからなり、これにより、背もたれ10上端と帯状片11とで囲まれた横長の空間を形成している。この帯状片11における帯状の部位は、イス1を移動させる際などの取っ手として使用される。なお、この帯状片11は、この構成に限らず、
図4(a)に示すように、帯状の部位のみからなるものとし、横長の空間が形成されていない構成としてもよい。
【0031】
また、一対の背側連結片13は、座体20の後端側を左右から挟む位置関係で配置され、
図2に示すように、この座体20を、左右方向に延びる軸体15を中心として回動可能に固定している。これにより、座体20を着座面が地面に沿った面となるように倒す使用状態(
図3(a))と、この着座面を地面と交差する面となるように座体20を跳ね上げる収容状態(
図3(b))と、の間で回動可能となる。
【0032】
この背もたれ10は、座体20の上方において支持フレーム50に支持されており、これにより、
図3(c)に示すように、座体20の後端および背もたれ10の下端に囲まれた横長の空間が形成されている。
【0033】
座体20は、平面視で四角形の枠体21に囲まれた領域に、着座面となるシート状部材23が張り掛けられたものである。本実施形態では、枠体21が、
図2に示すように、表側枠体21aと裏側枠体21bとが表裏方向に重ねられ、表側枠体21aにシート状部材23が張り掛けられ、裏側枠体21bに後述する位置決め部材100が設けられている。なお、この座体20は、その後端部から前端部に向かう上り勾配の傾斜面となっており(右側面図参照)、その前端部は下方向に垂れ下がる垂下片となっている。
【0034】
この座体20には、背もたれ10の一対の背側連結片13に対応する位置(後端側における左右両側)それぞれに、背もたれ10に対して座体20を固定するための一対の座側固定片25が備えられ、ここに上述した軸体15を通して固定することにより、座体20全体が背もたれ10に対して回転可能となる(
図3(a)(b)参照)。
【0035】
また、この座体20における枠体21のうち、左右側方において前後に延びる左片および右片それぞれの裏面には、座体20を着席可能な状態に位置決めする一対の位置決め部材100が設けられている。
【0036】
この位置決め部材100は、座体20裏面から突出したものであり、本実施形態では、側面視で前後方向の幅が先端に向けて狭くなる形状(本実施形態では台形状)となっている。この座体20からの突出量は、座体20への着席でシート状部材23が変形した場合におけるシート状部材23の下端が、支持フレーム50上端よりも上方にある状態で支持フレーム50に接触する位置関係となるように定められている。なお、本実施形態において、位置決め部材100は、座体20の裏面から左右方向内側に向けて傾斜するように突出しており、座体20の左右外側面よりも内側となる位置において支持フレーム50と接触する(
図1の正面図参照)。
【0037】
ここで、
図2に示すように、座体20において着席者の坐骨結節に対応する前後位置(つまり着席者の坐骨結節が位置すると想定される前後方向に沿った位置)を基準位置aと仮定すると、位置決め部材100は、枠体21の裏面のうち、基準位置aを含めて前後方向に拡がる所定領域bの前後端それぞれから突出する一組の突出片101と、突出片101をそれぞれの先端側で連結する連結片103と、からなり、連結片103が支持フレーム50に接触することにより座体20を位置決めする。ここで、位置決め部材100は、一組の突出片101と連結片103とからなる構成に限られず、例えば、
図4(b)に示すように、枠体21の裏面のうち、所定領域b全域にわたって突出する突起として形成してもよい。
【0038】
また、位置決め部材100それぞれは、
図3(b)に示すように、一方における先端(連結片103)から他方における先端(連結片103)が、左右方向に延びる補強フレーム105によって接続されている。この補強フレーム105は、位置決め部材100をそれぞれの前後端においてのみ接続した構成とされているが、この構成に限られず、
図4(c)に示すように、板状の部材を採用し、位置決め部材100の先端それぞれを前後幅全域にわたって接続した構成としてもよく、
図6(b)に示すように、これを設けない構成としてもよい。
【0039】
なお、本実施形態において、位置決め部材100それぞれは、いすの強度と耐久性の試験方法に関するJIS規格(S1203)に規定された静的強度試験または耐衝撃性試験における荷重を加えた状態で、この荷重で変形したシート状部材23の下端が少なくとも支持フレーム50の上面に接触しないように定められた高さ(荷重の大きさとシート状部材23の弾性に応じた高さとして具体的には50mm)が確保されている。この荷重で座体20の下端部が支持フレーム50の上面に接触しない構成であれば、その荷重以下の着席者による着席で、座体20への着席でシート状部材23が変形したとしても、シート状部材23の下端が、支持フレーム50上端に接触してしまうことはない。
【0040】
脚部30,40は、支持フレーム50における端部側それぞれの下部から斜め前方へ延
びるように設けられた前脚31,41と、支持フレーム50において前脚31,41よりも外側の端部側それぞれの下部から斜め後方へ延びるように設けられた後脚33,43と、各脚の下端に設けられたキャスター35,45を備えている。こうして、支持フレーム50を脚部30,40に支持されてなる脚体を構成している。なお、イス1としては、これらキャスター35,45を備えていない構成を採用してもよい。
【0041】
なお、脚部30,40は、それぞれの間隔が前脚31,41側よりも、後脚33,43側において左右に広く形成され、これにより、同一形状のイス1を前後方向に積重ねられるように構成している。
【0042】
支持フレーム50は、左右方向に延びる板状のフレーム本体51と、フレーム本体51における左右方向の端部側それぞれの上部から上方に延びて背もたれ10と連結される一対の支持側連結片53と、を備え、本実施形態においては、フレーム本体51が脚部30,40を左右方向に連結している。このフレーム本体51は、
図2に示すように、部材としての上面が位置決め部材100との接触領域となり、側面視で位置決め部材100の前端面をこの前端面に沿って延長した線と重なる位置まで、部材としての前端が到達している。
【0043】
このフレーム本体51における前端は、下方向に傾斜する曲面(本実施形態では側面視
で半円形)となっており、ここに位置決め部材100の先端に形成された凸部107が嵌
合するように構成されている。
【0044】
以上のような構成のイス1は、座体20の着座面を地面と交差する面となるように座体20を跳ね上げることにより、
図5に示すように、これを前後方向に重ねることができる状態となり未使用時の収容スペースを小さくすることができる。
(2)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、支持フレーム50のフレーム本体51として左右方向に延びる板状のものを採用した構成を例示した。しかし、このフレーム本体51は、この構成に限らず、例えば、
図6に示すように、左右方向に延びる円柱状のものを採用してもよい。
【0046】
この構成では、位置決め部材100がフレーム本体51における曲面状の外周面に沿って弾性変形しやすくなることを考慮し、側面視で位置決め部材100の前端面をこの前端面に沿って延長した線と重なる位置よりも一定距離だけ後方まで、部材としての前端を到達させる前後幅を有したものとしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、支持フレーム50と位置決め部材100との接触領域は、座体20の位置決めやイス1としての強度確保の観点から、以下のような構成としてもよい。具体的には、
図7に示すように、支持フレーム50のうち、位置決め部材100との接触領域と隣接する領域に、位置決め部材100が左右方向の内側へ変位することを規制する内側規制片55や、位置決め部材100が左右方向の外側へ変位することを規制する外側規制片57などを設ける、といった構成である。
【0048】
ここでは、支持フレーム50側に突起を形成し、この突起における左右方向の外側が内側規制片55、左右方向の内側が外側規制片57として機能すると共に、位置決め部材100側に、これら規制片55,57からなる突起の先端において支持フレーム50と接触するように位置決め孔109を形成した構成を例示している。しかし、内側規制片55と外側規制片57とはそれぞれ別の部材として形成されたものとしてもよいし、これら規制片55,57を、位置決め部材100の左右方向の外側および内側それぞれに配置した構成としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、位置決め部材100が側面視で前後方向の幅が先端に向けて直線的に狭くなる台形状となっている構成を例示した。しかし、この位置決め部材100は、側面視で前後方向の幅が先端に向けて狭くなる形状であれば、台形状以外の形状としてもよい。具体的には、
図8に示すように、側面視で前方に延出する延出領域120を有し、この延出領域120を含む前後方向の幅が先端に向けて狭くなる(上下方向の厚さが前方へ向かうほど小さくなる)形状とする、ことなどが考えられる。なお、この延出領域12は、位置決め部材100本体の前端面から、座体20において下方に垂下し始める領域までの間における所定の位置まで、延出させたものとすればよい。
【0050】
また、上記実施形態では、左右一対の脚部30,40と、脚部30,40を左右方向に連結する支持フレーム50とにより、脚部30,40が支持フレーム50に支持されてなる脚体を構成したものを例示した。しかし、脚体としては、左右方向に延びる支持フレーム50を脚部30,40に支持されたものであればよく、この構成に限定されない。
【0051】
例えば、
図9に示すように、支持フレーム50と、この支持フレーム50の下方から下方向に延びる軸体210と、軸体210に対してそれぞれ回転可能に取付けられてなる脚部30,40の各脚31,41,33,43と、により脚体を構成したものとすることが考
えられる。この構成においては、軸体210を中心に回転可能な筒状体220を設け、この筒状体220の外周面からそれぞれ異なる方向へ延びるように各脚31,41,33,43を設ければよい。ただし、脚部30,40は、左右の間隔が前脚31,41側よりも後脚33,43側において広く形成されるとともに、後脚33,43の方が前脚31,41よりも高い位置に設けられ、これにより、同一形状のイス1を前後方向に積重ねられるように構成している。
【0052】
このような脚体のイス2であっても、座体20の着座面を地面と交差する面となるように座体20を跳ね上げることにより、
図10に示すように、これを前後方向に重ねることができる状態となり未使用時の収容スペースを小さくすることができる。
(3)作用,効果
このように構成されたイス1であれば、座体20の直下に配置した支持フレーム50で荷重を受ける構造を採用しているにも拘らず、座体20への着席でシート状部材23が変形したとしても、その下端が支持フレーム50に接触することはなく、着席に伴うシート状部材23の変形が妨げられることがない。そのため、上記構造によりネスティング状態におけるコンパクト性を確保しつつ、好適にイス1としての座り心地を向上させることができる。
【0053】
また、上記構成のようなイス1では、着席者の坐骨結節に対応する前後位置、つまり着席者の坐骨結節が位置すると想定される前後方向に沿った位置が、着席者の前後方向における重心位置となりうるため、少なくとも座体20における枠体21の裏面のうち、この位置を基準位置aとして前後に延びる領域bで荷重を受けられるようにすることが、イス1としての着席時の強度を確保するために有効である。この点、この上記構成では、位置決め部材100により、座体20において着席者の重心位置となりうる領域bで荷重を受けることができるため、イス1としての着席時の強度を好適に確保することができる。
【0054】
また、一組の突出片101と連結片103とで位置決め部材100を構成した場合には、この枠状の構造により弾性変形を生じやすくすることができるため、着席状態での荷重を超える大きさの荷重でのみ弾性変形する設計としておくことにより、着席時に生じる大きな荷重を吸収する機能を持たせることができる。
【0055】
また、上記構成では、位置決め部材100における前後方向の幅が先端に向けて狭くなっているため、この前後幅にあわせて、支持フレーム50において位置決め部材100と接触する領域の前後幅も短くすることができ、これによりネスティング時のコンパクト性をより向上させることができる。
【0056】
また、上記構成では、位置決め部材100それぞれを補強フレーム105によって接続することで、イス1としての着席時の強度をより向上させることができる。
また、上記構成では、位置決め部材100が座体20の左右外側面よりも内側となる位置において支持フレーム50と接触するため、この接触領域までに一定の距離が確保される結果、着席者の指先などが挟まるといった事態を未然に防止することができる。
【0057】
また、支持フレーム50に内側規制片55や外側規制片57を設けた構成であれば、支持フレーム50の規制片55,57が位置決め部材100との接触領域と隣接する領域に配置され、両者の位置関係が明確になっているため、利用者にとって、座体20の着席可能な状態への位置決めを確実かつ容易に行うことができるようになる。
【0058】
また、内側規制片55を形成した構成においては、着席時の荷重で位置決め部材100が左右方向内側へ変位させられてしまうような場合でも、この変位が内側規制片55により規制されるため、イス1としての着席時の強度をより向上させることができる。
【0059】
また、外側規制片57を形成した構成においては、着席時など大きな荷重が加わって位置決め部材100が左右方向外側へ変位させられるような場合でも、この変位が外側規制片57により規制されるため、このような荷重による意図しない変形を防止することができる。
【0060】
また、位置決め部材100に延出領域120を設け、この延出領域120を含む前後方向の幅が先端に向けて狭くなる形状とした構成であれば、位置決め部材100の延出領域120を含む前端側が座体20の左右端それぞれを裏面から支持して補強する状態となり、座体20としての強度を向上させることができるだけでなく、座体20がその前端ほど徐々に撓りやすくなるように作用するため、着席者の脚(特に大腿部裏側)が接触したことによる座体20の変形が妨げられにくくなる結果、イス1としての座り心地を良好なものとすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…イス、10…背もたれ、11…帯状片、13…背側連結片、15…軸体、20…座体、21…枠体、21a…表側枠体、21b…裏側枠体、23…シート状部材、25…座側固定片、30…脚部、31…前脚、33…後脚、35…キャスター、40…脚部、41…前脚、43…後脚、45…キャスター、50…支持フレーム、51…フレーム本体、53…支持側連結片、55…内側規制片、57…外側規制片、100…位置決め部材、101…突出片、103…連結片、105…補強フレーム、107…凸部、109…位置決め孔、120…延出領域、210…軸体、220…筒状体。