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特許7240025ガス吸着部および補強部を含む炭化水素吸脱着複合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ガス吸着部および補強部を含む炭化水素吸脱着複合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20230308BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B01J20/18 B
B01D53/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021189495
(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公開番号】P2022083429
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0158378
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518107501
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145,Anam-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェー ジュン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,クァン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェー,ラ-ヨン
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079428(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199945(WO,A1)
【文献】特開2012-162446(JP,A)
【文献】特開平07-080291(JP,A)
【文献】特開平05-096182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209769(US,A1)
【文献】特表2021-509635(JP,A)
【文献】特開2020-073273(JP,A)
【文献】特表2014-530163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/18
B01D 53/04
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粒子を含み、ゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が1~50であるガス吸着部、および
前記ガス吸着部の表面に形成され、前記ガス吸着部のゼオライト粒子と構造が同一のシリカ-ゼオライト粒子を含む補強部を含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子に金属イオンが結合され、補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部との界面に金属酸化物が備えられたことを特徴とする炭化水素吸脱着複合体。
【請求項2】
前記ガス吸着部のゼオライト粒子はMFI(Zeolite Socony Mobil-five)、ベータ(BEA)、菱沸石(CHA)、KFI、MOR、FAU、FER、AEI、LEV、ERI、AFX、SFW、DDR、LTAの中のいずれか一つ以上のゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項3】
炭化水素吸脱着複合体はガス吸着部対比補強部の重量比率が5~95であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項4】
前記炭化水素吸脱着複合体は下記式(1)を充足することを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体:
【数2】
前記式(1)で、
Inは炭化水素吸着剤に注入される全体炭化水素の量を表し、
Outは炭化水素吸着剤を経て排出される全体炭化水素の量を表し、
Aは10以上の数で、炭化水素処理効率を表す。
【請求項5】
請求項4に記載の炭化水素吸脱着複合体の製造方法であって、
前記炭化水素吸脱着複合体を600℃~900℃で1時間~96時間の間、5~15体積%の水蒸気を利用して水熱処理するステップを有し、
水熱処理された炭化水素吸脱着複合体は、前記式(1)で、Aは3以上の数である、製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素吸脱着複合体の大きさは50~5000nmで、
前記金属酸化物の大きさは1~10nmであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項7】
前記金属イオンは3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の陽イオンであり、
前記金属酸化物は3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項8】
前記金属イオンはガス吸着部のゼオライト粒子に存在する気孔内部に結合されたことを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項9】
炭化水素吸脱着複合体は300℃以下の温度で吸着能を表し、
180℃以上の温度で酸化能を表すことを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項10】
炭化水素吸脱着複合体の炭化水素吸着量は0.1~1.5mmolCH4/gであり、
炭化水素吸脱着複合体の炭化水素酸化開始温度は180~350℃であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素吸脱着複合体。
【請求項11】
請求項1~4、6~10のいずれか一つに記載の炭化水素吸脱着複合体を調製する方法であって、
ゼオライト粒子を金属イオンを含む溶液に混合してガス吸着部を形成するステップ、および
前記ガス吸着部のゼオライト粒子をケイ素前駆体および構造誘導体を含むゾル溶液に添加し4時間~96時間の間、前記ゾル溶液において水熱合成を実施し、補強部を形成するステップを含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)は、1~50である方法。
【請求項12】
金属イオンは3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の陽イオンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法
【請求項13】
補強部を形成するステップで、ゾル溶液はケイ素前駆体:構造誘導体:溶媒のモル比は10:1~15:10~50000のモル比で構成され、
ゾル溶液対比ガス吸着部の混合比率は0.03g/30mL~3g/30mLであることを特徴とする請求項11に記載の方法
【請求項14】
記構造誘導体は、TPAOH(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、tetrapropylammonium hydroxide)、TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、tetraethylammonium hydroxide)、TMAdaOH(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムプロミド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムフルオリド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムクロリド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヨーシド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium iodide)、TEABr(テトラエチルアンモニウムブロミド、tetraethylammonium bromide)、TEAF(テトラエチルアンモニウムフルオリド、tetraethylammonium fluoride)、TEACl(テトラエチルアンモニウムクロリド、tetraethylammonium chloride)、TEAI(テトラエチルアンモニウムヨーシド、tetraethylammonium iodide)、TPABr(テトラプロピルアンモニウムブロミド、tetrapropylammonium bromide)、TBPOH(テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、Tetrabutylphosphonium Hydroxide)、TBACl(テトラブチルアンモニウムクロリド、Tetrabutylammonium chloride)、TBAOH(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、Tetrabutylammonium hydroxide)、TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド、Tetrabutylammonium fluoride)およびシクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)で構成された群で選択される1種以上であることを特徴とする請求項11に記載の方法
【請求項15】
補強部を形成するステップ以後に600℃~900℃の温度で1時間~96時間の間5~15体積%の水蒸気を注入して水熱処理するステップをさらに含み、
前記炭化水素吸脱着複合体の重量に対する水蒸気を含む模擬排出ガスの時間当りガス流量は10000~200000mL/g・hであることを特徴とする請求項11に記載の方法
【請求項16】
請求項1~4、6~10のいずれか一つに記載の炭化水素吸脱着複合体を含む自動車用炭化水素吸脱着複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車排出ガスから出る炭化水素の排出を低減させ、装置の水熱安定性を向上させる炭化水素吸脱着複合体に関し、具体的には、アルミニウムが含まれたゼオライト粒子を含むガス吸着部の表面にシリカ-ゼオライトを含む 補強部が形成さ吸脱着複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染に対する関心が高くなるにつれて、アメリカ、ヨーロッパなどでガソリン車、ディーゼル車で排出される一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC、hydrocarbon)、粒子状物質(PM、particulate matter)などの排出ガス規制が強化されている。特に、1992年のユーロ1から2020年ユーロ6dで、時間が経つにつれて炭化水素(HC)の排出量を1992年に比べて~80%以上減縮しなければならない。ガソリン車で排出される炭化水素(HC)の場合、三元触媒(three-way catalysts;TWCs、HC酸化に作用する)が活性を見せない低温始動区間(cold start period)で運行期間中に排出される炭化水素排出量の50~80%にあたる炭化水素が排出される。低温始動区間で排出される炭化水素を低減するために、炭化水素吸着剤(HC trap)に対する研究が行われている。炭化水素吸着剤とは、低温始動区間で排出される炭化水素を吸着して三元触媒が活性を表す温度(約200~300℃)に到逹する時に既に吸着した炭化水素を脱着させる装置である。
【0003】
物理的、化学的安全性の高いゼオライトを炭化水素吸着剤として用いた研究がたくさん行われている。ガソリン車の代表的な炭化水素排出物質であるプロペン(propene)、トルエン(toluene)の吸着および脱着測定を通じて炭化水素吸着剤の性能をテストしている。ゼオライト構造およびSi/Al値、金属含浸有無による炭化水素吸着剤性能に関する研究が行われた。ゼオライトのAl含有量が多くなるほど(つまり、Si/Al値が小さくなるほど)ゼオライトに多量の炭化水素が吸着された。また、多様なゼオライト構造の中でZSM-5とbeta構造ゼオライトが高い性能を表した。しかしながら、このようなゼオライトのみからなる炭化水素吸着剤は300℃以下での炭化水素吸着および酸化力が低くて、三元触媒が活性を帯びる温度に到逹するまでの低温始動区間で発生する炭化水素を充分に処理できず、さらに、多量の水分(~10体積%)が存在する場合、炭化水素吸着剤の性能が低下されるという問題点がある。
【0004】
このような問題を解決するために、三元触媒が活性を帯びる温度よりも低い温度で炭化水素を吸着および酸化させ、多量の水分が存在する場合にも優れた炭化水素の吸着能および酸化能を表し、装置の水熱安定性を向上させる吸着剤の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-512022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が低いゼオライトを含むガス吸着部とケイ素からなるゼオライトを含む補強部で構成されて、低温始動区間で多量の炭化水素を合着して水熱安定性を表す炭化水素吸脱着複合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゼオライト粒子を含み、ゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が1~50であるガス吸着部、および
前記ガス吸着部の表面に形成され、前記ガス吸着部のゼオライト粒子と構造が同一のシリカゼオライト粒子を含む補強部を含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子に金属イオンが結合され、シリカ-ゼオライトを含む補強部とガス吸着部との界面に金属酸化物が備えられたことを特徴とする炭化水素吸脱着複合体を提供する。
【0008】
また、本発明はゼオライト粒子を金属イオンを含む溶液に混合してガス吸着部を形成するステップ、および
ガス吸着部のゼオライト粒子をケイ素前駆体および構造誘導体含むゾル溶液に添加し、3時間~96時間の間水熱合成して補強部を形成するステップを含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が1~50であることを特徴とする炭化水素吸脱着複合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による炭化水素吸脱着複合体は、アルミニウムを含むガス吸着部に金属イオンを結合して炭化水素の吸着能を向上し、前記ガス吸着部の表面にシリカからなる補強部を形成して水熱安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例による炭化水素吸脱着複合体の模式図を示したイメージである。
図2】本発明の一実施例による炭化水素吸脱着複合体を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージとX線回折分析(XRD)グラフである。
図3】本発明の一実施例による炭化水素吸脱着複合体を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージとX線回折分析(XRD)グラフである。
図4】本発明の一実施例による炭化水素吸脱着複合体の低温始動実験結果グラフである。
図5】本発明の一実施例による炭化水素吸脱着複合体の補強部合成時間によるガス吸着部対比補強部の重量比および炭化水素処理効率を示したグラフである。
図6】本発明の他の一実施例による炭化水素吸脱着複合体の低温始動実験結果グラフである。
図7】本発明の他の一実施例による炭化水素吸脱着複合体の補強部合成時間によるガス吸着部対比補強部の重量比および炭化水素処理効率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより具体的に説明するために、本発明による好ましい実施例を添付された図面を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化されることもあり得る。
【0012】
本明細書で、「全体炭化水素」はメタンを基準とした炭化水素を意味する。具体的には、プロペン、トルエンなどをガスクロマトグラフィー(GC FID)を通じてメタンに相応する値に変換し、変換されたメタンの量で定量化したのである。
【0013】
本発明はゼオライト粒子を含み、ゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が1~50であるガス吸着部、および
前記ガス吸着部の表面に形成され、前記ガス吸着部のゼオライト粒子と構造が同一のシリカゼオライト粒子を含む補強部を含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子に金属イオンが結合され、補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部との界面に金属酸化物が備えられたことを特徴とする炭化水素吸脱着複合体を提供する。
【0014】
図1は本発明による炭化水素吸脱着複合体を概略的に示したイメージである。図1によれば、本発明の炭化水素吸脱着複合体はアルミニウムの含量が高いゼオライト粒子からなるガス吸着部とシリカ-ゼオライト粒子からなる補強部を含む。具体的には、ガス吸着部を補強部が取り囲む形態であってもよい。
【0015】
例えば、本発明による炭化水素吸脱着複合体は、ガス吸着部と補強部がコア-シェル構造で形成されたものであり得る。この時、コア部はガス吸着部、シェル部は補強部であり得る。
【0016】
具体的には、前記ガス吸着部のゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)は1~50、5~50、5~45または5~40であり得る。上記のようなアルミニウム対比ケイ素のモル比を有するゼオライト粒子を含むことにより、金属イオンの担持時、ゼオライト粒子に金属イオンが結合されて炭化水素吸着能を向上させることができる。
【0017】
前記ガス吸着部のゼオライト粒子は、独立的にMFI(ZSM-5(Zeolite Socony Mobil-five))、ベータ(BEA)、菱沸石(CHA)、KFI、MOR、FAU、FER、AEI、LEV、ERI、AFX、SFW、DDR、LTAの中のいずれか一つ以上のゼオライトであってもよく、補強部は同種のシリカ-ゼオライトを含んでもよい。前記MFI骨格構造のゼオライトはSi/Al値が10~15または10~12のゼオライトで、ゼオライトの活性部位に水素陽イオンが結合されたものである。また、前記ベータゼオライト(BEA)はSi/Al値が10~25または10~20のゼオライトで、ゼオライトの活性部位に水素陽イオンが結合されたものである。
【0018】
上記のように、ゼオライト粒子を含む場合、ゼオライト気孔内に結合する金属イオンの含量が高くて炭化水素吸脱着複合体の炭化水素吸着性能を向上させ、ゼオライト粒子間界面に位置する金属酸化物の大きさが小さくて炭化水素吸脱着複合体の炭化水素酸化の性能を向上させる。
【0019】
前記炭化水素吸脱着複合体の大きさは50~5000nmであり得る。具体的には、前記炭化水素吸脱着複合体の大きさは50~4000nm、100~2000nmまたは200~1000nmであり得る。
【0020】
また、前記ガス吸着部のゼオライト粒子には微細気孔が存在し、前記ガス吸着部のゼオライト粒子に存在する気孔内部に金属イオンが結合されたものである。具体的には、前記ガス吸着部のゼオライト粒子の微細気孔の体積は0.05~0.25cm/g、0.07~0.2cm/gまたは0.1~0.18cm/gであり得る。上記のように、ゼオライト粒子に微細気孔が存在し、前記微細気孔に金属イオンが結合されてプロペンおよびトルエンのような炭化水素の吸着能が向上されることができる。
【0021】
前記金属イオンは3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の陽イオンであり得る。具体的には、金属イオンは鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウムおよびカドミウムの中のいずれか一つの金属の陽イオンであり得る。より具体的には、前記金属イオンは、1価鉄、2価鉄、3価鉄、1価コバルト、2価コバルト、1価ニッケル、2価ニッケル、1価銅または2価銅の陽イオンであり得る。
【0022】
また、補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部との界面に金属酸化物が備えられたものであり得る。前記金属酸化物は3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の酸化物であり得る。具体的には、前記金属酸化物は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウムおよびカドミウムの中のいずれか一つの金属の酸化物であり得る。より具体的には、前記金属酸化物は、FeO、Fe、Fe、Co、CoO、NiO、CuO、CuまたはCuOであり得る。
【0023】
例えば、前記金属酸化物は補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部との界面に位置するもので、平均直径が1~10nmであり得る。具体的には、前記金属酸化物の平均直径は1~9nm、1~7nm、2~8nmまたは2~6nmであり得る。上記のような金属酸化物を補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部の界面上に位置させることにより、本発明による炭化水素吸脱着複合体は炭化水素の酸化温度が低くて高い水熱安定性を有することができる。
【0024】
本発明による炭化水素吸脱着複合体は、ガス吸着部対比補強部の重量比率が5~95であり得る。具体的には、炭化水素吸脱着複合体はガス吸着部対比補強部の重量比率が20~90、20~80、15~90、15~80または15~60であり得る。上記のように、ガス吸着部と補強部の重量比率を調節して炭化水素吸脱着複合体の炭化水素処理効率と水熱安定性を効率的に制御することができる。
【0025】
上記のような特性を有して、本発明による炭化水素吸脱着複合体は下記式(1)を充足することができる:
【0026】
【数1】

前記式(1)で、
Inは炭化水素吸脱着複合体に注入される全体炭化水素の量を表し、
Outは炭化水素吸脱着複合体を経て排出される全体炭化水素の量を表し、
Aは10以上の数で、炭化水素処理効率を表す。
【0027】
前記式(1)は炭化水素吸脱着複合体に炭化水素を注入し、注入された量と炭化水素吸脱着複合体から排出される炭化水素の量を測定し、まだ完璧な三元触媒活性に到逹しなかったと見られる300℃まで炭化水素吸脱着複合体に注入された全体炭化水素の量と炭化水素吸脱着複合体を経て排出された全体炭化水素の量の比率を通じて炭化水素吸脱着複合体の全体炭化水素処理効率を計算した式である。この時、前記全体炭化水素処理効率であるAは10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、40以上、50以上、60以上または70以上を表すことができる。
【0028】
また、本発明による炭化水素吸脱着複合体は300℃以下の温度で炭化水素の吸着能を表し、200℃以上の温度で炭化水素の酸化能を表すことができる。具体的には、本発明の炭化水素吸脱着複合体は、70℃~300℃または100℃~300℃の温度で炭化水素の吸着能を表し、210℃以上、220℃以上、230℃以上、240℃以上または250℃以上の温度で炭化水素の酸化能を表すことができる。普段走行中に排出される全体炭化水素の中で50~80%が低温始動区間(300℃以下)で発生する。上記特性によって本発明による炭化水素吸脱着複合体は低温始動区間でも炭化水素を効率的に吸着および酸化させることができ、高い水熱安定性を表すことができる。
【0029】
同時に、本発明による炭化水素吸脱着複合体は、炭化水素吸着量が0.1~1.5mmolCH4/gであり、炭化水素酸化開始温度が180℃~350℃であり得る。具体的には、本発明の炭化水素吸脱着複合体は、炭化水素吸着量が0.1~1.3mmolCH4/g、0.3~1.2mmolCH4/gまたは0.3~0.6mmolCH4/gであり、炭化水素酸化開始温度は180℃~320℃、180℃~300℃または180℃~250℃であり得る。この時、酸化開始温度は全体炭化水素対比COの生成量が5%以上になる地点の温度を言う。
【0030】
本発明による炭化水素吸脱着複合体は600℃~900℃で1時間~96時間の間5~15体積%の水蒸気を利用して水熱処理されたものであり得る。具体的には、前記炭化水素吸着剤は600℃~850℃、600℃~800℃、600℃~750℃または700℃~800℃の温度で1時間~72時間、1時間~36時間または5時間~30時間の間水熱処理されたものであり得る。この時、前記炭化水素吸脱着複合体の重量に対する水蒸気を含んだ模擬排出ガスの時間当りガス流量は10000~200000ml/g・hまたは100000~200000ml/g・hであり得、前記条件は自動車を長期間運用した時と同様に苛酷な条件である。上記のように水熱処理された炭化水素吸脱着複合体は水蒸気のある条件で炭化水素を吸着して、酸化させる性能が低下され、耐久性が低下される虞がある。
【0031】
例えば、水熱処理された炭化水素吸脱着複合体は、前記式(1)で全体炭化水素処理効率であるAが3以上、7以上、10以上、30以上または40以上であり得る。水熱処理された炭化水素吸脱着複合体は水熱処理されない炭化水素吸脱着複合体に比べて比較的低い炭化水素処理効率を表すが、シリカ-ゼオライトからなる補強部が含まれた炭化水素吸脱着複合体がガス吸着部のみある既存の炭化水素吸脱着複合体よりも前記水熱処理した後比べた時に耐熱性がさらに向上され、優れた吸着能および酸化能を表す。
【0032】
本発明による炭化水素吸脱着複合体は炭化水素吸着性能以外にも選択的還元触媒(Selective catalytic reduction、SCR)として活用が可能で、これを通じて、窒素酸化物(NO)を効果的に除去して大気浄化能力を表すことができる。
【0033】
また、本発明はゼオライト粒子を金属イオンを含む溶液に混合してガス吸着部を形成するステップ、および
ガス吸着部のゼオライト粒子をケイ素前駆体および構造誘導体を含むゾル溶液に添加し、3時間~96時間の間水熱合成して補強部を形成するステップを含み、
前記ガス吸着部のゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)が1~50であることを特徴とする炭化水素吸脱着複合体の製造方法を提供する。
【0034】
本発明による炭化水素吸脱着複合体の製造方法を通じて製造した炭化水素吸脱着複合体はガス吸着部および補強部で形成され、ガス吸着部と補強部がコア-シェル構造に形成されたものであり得る。この時、コア部はガス吸着部、シェル部は補強部であり得る。
【0035】
本発明の炭化水素吸脱着複合体の製造方法で、前記ガス吸着部のゼオライト粒子のアルミニウム対比ケイ素のモル比(Si/Al)はm1~50、5~50、5~45または5~40であり得る。上記のようなアルミニウム対比ケイ素のモル比を有するゼオライト粒子を形成することにより、金属イオンの担持時に、ゼオライト粒子に金属イオンを結合して炭化水素吸着能を向上させることができる。
【0036】
具体的には、前記ガス吸着部のゼオライト粒子は、独立的にMFI(Zeolite Socony Mobil-five)骨格構造のゼオライトまたはベータ(BEA)ゼオライトであり得る。前記MFI骨格構造のゼオライトはSi/Al値が10~15または10~12のゼオライトで、ゼオライトの活性部位に水素陽イオンが結合されたものである。また、前記ベータ(BEA)ゼオライトはSi/Al値が10~25または10~20のゼオライトで、ゼオライトの活性部位に水素陽イオンが結合されたものである。
【0037】
上記のように、ゼオライト粒子を含む場合、ゼオライト気孔内に結合する金属イオンの含量が高くて吸脱着複合体の吸着能を向上させ、ゼオライト粒子の表面に形成された金属酸化物の大きさが小さくて、吸着された炭化水素に対して酸化性能を有する。
【0038】
前記ガス吸着部を形成するステップは、混合方法で湿式含浸方法、乾式含浸方法およびイオン交換方法の中のいずれか一つの方法を利用して金属イオンを含む金属前駆体溶液にゼオライト粒子を混合して製造し、この時、金属の含量は1~9重量%、2~8重量%、3~8重量%または4~7重量%であり得る。具体的には、ガス吸着部を形成するステップは、湿式含浸法、乾式含浸法およびイオン交換方法の中の一つの方法を利用して金属イオンが含浸されたゼオライト粒子を形成することができる。
【0039】
前記金属イオンを含む溶液は3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の陽イオンを含む。具体的には、前記金属イオンを含む溶液は鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウムおよびカドミウムの中のいずれか一つ以上の金属の陽イオンを含む。具体的には、前記金属イオンは1価鉄、2価鉄、3価鉄、1価コバルト、2価コバルト、1価ニッケル、2価ニッケル、1価銅または2価銅の陽イオンであり得る。
【0040】
前記金属イオンを含む溶液をゼオライトに混合して形成された金属酸化物は3族~12族の元素の中のいずれか一つ以上の金属の酸化物であり得る。具体的には、前記金属酸化物は鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウムおよびカドミウムの中のいずれか一つ以上の金属酸化物であり得る。より具体的には、前記金属酸化物はFeO、Fe、Fe、Co、CoO、NiO、CuO、CuまたはCuOであり得る。
【0041】
前記ゼオライト粒子を金属イオンを含む溶液に混合し、これを焼成してゼオライト粒子上に金属酸化物を形成することができ、形成された金属酸化物の平均直径が1~10nmであり得る。具体的には、前記金属酸化物の平均直径は1~9nm、1~7nm、2~8nmまたは2~6nmであり得る。前記のような金属酸化物を補強部のシリカ-ゼオライト粒子とガス吸着部との界面に位置させることにより、本発明による炭化水素吸着剤は炭化水素吸着性能に優れ、炭化水素の酸化温度が低く、高い水熱安定性を有することができる。
【0042】
前記補強部を形成するステップは、金属イオンが含浸されたゼオライト粒子をケイ素前駆体および構造誘導体を含むゾル溶液に添加し、3時間~96時間の間水熱合成して行うことができる
具体的には、前記ゾル溶液は、ケイ素前駆体:構造誘導体:溶媒のモル比は10:1~15:10~50000のモル比で構成されてもよく、より具体的には、ケイ素前駆体:構造誘導体:溶媒のモル比は10:2~7:50~10000または10:1~4:100~3000のモル比で構成されてもよい。
【0043】
具体的には、前記ケイ素前駆体は、二酸化ケイ素(SiO)として、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS、tetramethyl orthosilicate)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、tetraethyl orthosilicate)、オルトケイ酸テトラプロピル(TPOS、tetrapropyl orthosilicate)、オルトケイ酸テトラブチル(TBOS、tetrabutyl orthosilicate)、フュームドシリカ(fumedSilica)、またはコロイダルシリカ(colloidal silica)であり得、溶媒は蒸溜水(HO)またはエタノールであり得る。
【0044】
また、前記有機構造誘導体は、TPAOH(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、tetrapropylammonium hydroxide)、TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、tetraethylammonium hydroxide)、TMAdaOH(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムプロミド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムフルオリド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムクロリド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヨーシド、N,N,N-trimethyl adamantylammonium iodide)、TEABr(テトラエチルアンモニウムブロミド、tetraethylammonium bromide)、TEAF(テトラエチルアンモニウムフルオリド、tetraethylammonium fluoride)、TEACl(テトラエチルアンモニウムクロリド、tetraethylammonium chloride)、TEAI(テトラエチルアンモニウムヨーシド、tetraethylammonium iodide)、TPABr(テトラプロピルアンモニウムブロミド、tetrapropylammonium bromide)、TBPOH(テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、Tetrabutylphosphonium Hydroxide)、TBACl(テトラブチルアンモニウムクロリド、Tetrabutylammonium chloride)、TBAOH(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、Tetrabutylammonium hydroxide)、TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド、Tetrabutylammonium fluoride)およびシクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)で構成された群で選択される1種以上であり得、より具体的には、TPAOH(テトラプロビルアンモニウムヒドロキシド、tetrapropylammonium hydroxide)またはTEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、tetraethylammonium hydroxide)であり得る。
【0045】
また、補強部を形成するステップで、ゾル溶液対比ガス吸着部のゼオライト粒子の混合比率は0.03g/30mL~3g/30mL、0.05g/30mL~3g/30mL、0.05g/30mL~2g/30mL、0.05g/30mL~0.5g/30mL、0.05g/30mL~0.4g/30mL、0.1g/30mL~2g/30mL、0.1g/30mL~0.5g/30mL、0.15g/30mL~1g/30mLまたは0.15g/30mL~0.35g/30mLであり得る。上記のような比率でゾル溶液とガス吸着部のゼオライト粒子を混合して補強部を形成する場合、適切な重量比率で補強部を形成して炭化水素吸着能は阻害しないながら、水熱安定性を向上させることができる。
【0046】
また、補強部を形成するステップは、ガス吸着部のゼオライト粒子と前記ゾル溶液を混合して50℃~300℃または100℃~200℃の温度で4時間~96時間、4時間~12時間または24時間~48時間の間水熱合成して行うことができる。この時、水熱合成する過程を通じてガス吸着部のゼオライト粒子の表面にガス吸着部のゼオライト粒子と同一構造のシリカ-ゼオライト粒子を形成する。
【0047】
上記のように、金属担持過程で、ガス吸着部に金属陽イオンの含浸および金属酸化物の形成が発生し、シリカ-ゼオライト粒子によって補強部が形成されることにより、本発明による炭化水素吸着剤は炭化水素の吸着性能に優れ、炭化水素の酸化温度が低く、高い水熱安定性を有することができる。上記のような過程を経て製造された炭化水素吸脱着複合体は、ガス吸着部対比補強部の重量比率が5~95であり得る。具体的には、炭化水素吸脱着複合体はガス吸着部対比補強部の重量比率が20~90、20~80、15~90、15~80または15~60であり得る。上記のように、ガス吸着部と補強部の重量比率を調節して炭化水素吸脱着複合体の炭化水素吸着能と水熱安定性を効率的に制御することができる。
【0048】
本発明による炭化水素吸着剤の製造方法は、補強部を形成するステップ後に600℃~900℃の温度で1時間~96時間の間5~15体積%の水蒸気を注入して水熱処理するステップをさらに含む。具体的には、前記水熱処理するステップは、600℃~800℃、600℃~750℃、600℃~700℃または700℃~800℃の温度で1時間~72時間、1時間~36時間または5時間~30時間の間5~15体積%の水蒸気を注入して熱処理して実施することができる。この時、前記炭化水素吸脱着複合体の重量に対する水蒸気を含む模擬排出ガスの時間当りガス流量は10000~200000ml/g・hまたは100000~200000ml/g・hであり得、上記条件は自動車を長期間運用した時と同様に苛酷な条件である。
【0049】
前記水熱処理を通じて得られた炭化水素吸脱着複合体は水熱処理されない炭化水素吸脱着複合体よりも比較的低い炭化水素処理効率を表すが、シリカ-ゼオライトからなる補強部が含まれた炭化水素吸脱着複合体がガス吸着部のみある既存の炭化水素吸脱着複合体よりも前記水熱処理した後と比べて耐熱性がより向上され、優れた吸着能および酸化能を表す。
【0050】
また、本発明は上述した炭化水素吸脱着複合体を含む自動車用炭化水素吸脱着複合体を提供する。本発明による炭化水素吸脱着複合体は優れた吸着能を表し、約200℃の温度で炭化水素酸化能を有することにより、吸着された炭化水素が比較的低温でも酸化され、高温で水熱安定性を表すので、自動車排出ガスで排出される炭化水素の除去に適用することができ、三元触媒が充分に活性を帯びる前の低温始動区間でも優れた炭化水素吸着能および酸化能を表して、大気浄化効果があることと見える。
【0051】
以下、本発明の実施例を記載する。しかしながら、下記実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明の権利範囲が下記実施例によって制限されるのではない。
【0052】
[実施例]
実施例1(MFI/MFI)
Si/Al比が10のH-form ZSM-5粒子に湿式含浸法を利用して5重量%のCuを担持してガス吸着部のゼオライト粒子を製造した。40TEOS(オルトケイ酸テトラエチル、tetraethyl orthosilicate):9TPAOH(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、
tetrapropylammonium hydroxide):9600HOのモル比のゾル溶液を製造し、前記ガス吸着部のゼオライト粒子と前記ゾル溶液の比率が0.3g/30mlになるように混合した。その後、テフロンライナーに入れて100℃のオーブンで時間別(3時間、6時間、9時間、12時間、24時間)に水熱合成してガス吸着部の表面に補強部を形成して炭化水素吸脱着複合体を製造した。
【0053】
実施例2(BEA/BEA)
Si/Al比が19のH-form BEA粒子に湿式含浸方法を利用して5重量%のCuを担持して、ガス吸着部のゼオライト粒子を製造した。1SiO:0.4 TEAOH(tetraethylammonium hydroxide):11.6 HOのモル比のゾル溶液を製造し、前記ガス吸着部のゼオライト粒子と前記ゾル溶液の比率が0.3g/30mLになるように混合した。その後、テフロンライナーに入れて130℃のオーブンで時間別(24時間、48時間、96時間)に水熱合成してガス吸着部の表面に補強部を形成して炭化水素吸脱着複合体を製造した。
【0054】
実施例3(MFI/MFI_HT)
前記実施例1で製造した炭化水素吸脱着複合体を空気気流下で10体積%のHO水蒸気を通じて800℃で24時間水熱処理して炭化水素吸脱着複合体を製造した。この時、前記炭化水素吸脱着複合体の重量に対する水蒸気を含む模擬排出ガスの時間当りガス流量は100000mL・g-1・h-1である。
【0055】
実施例4(BEA/BEA_HT)
前記実施例2で製造した炭化水素吸脱着複合体を空気気流下で10体積%のHO水蒸気を通じて800℃で24時間水熱処理して炭化水素吸脱着複合体を製造した。この時、前記炭化水素吸脱着複合体の重量に対する水蒸気を含む模擬排出ガスの時間当りガス流量は100000mL・g-1・h-1である。
【0056】
[実験例]
実験例1
本発明による炭化水素吸脱着複合体の形態を確認するために、実施例1および2の炭化水素吸脱着複合体を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影し、X線回折分析(XRD)を行い、その結果は図2および図3に示した。
【0057】
図2によれば、実施例1の炭化水素吸脱着複合体として、MFIの骨格構造のゼオライト粒子を含むガス吸着部の表面に同種のシリカ-ゼオライト粒子が形成されたもので、(a)は銅イオンが担持されたMFIの骨格構造のゼオライト粒子のガス吸着部、(b)はガス吸着部とゾル溶液を3時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体、(c)はガス吸着部とゾル溶液を6時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体、(d)はガス吸着部とゾル溶液を9時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体の走査電子顕微鏡イメージである。前記走査電子顕微鏡イメージを見れば、合成時間が増加するほど補強部のシリカ-ゼオライト粒子の形態が明らかになることを確認した。
【0058】
また、X線回折分析グラフによれば、補強部を形成する時間(水熱合成する時間)が増加してもX線回折分析グラフはMFI骨格構造のゼオライトと同様に現れるので、補強部を形成する時間に関係なく他の形態のゼオライト粒子が合成されないことを確認した。従って、実施例1の炭化水素吸脱着複合体はMFI骨格構造のゼオライトの外に他の構造のゼオライトはないことが分かる。
【0059】
図3によれば、実施例2の炭化水素吸脱着複合体として、BEAの骨格構造のゼオライト粒子を含むガス吸着部の表面に同種のシリカ-ゼオライト粒子が形成されたもので、(a)は銅イオンが担持されたBEAの骨格構造のゼオライト粒子のガス吸着部、(b)はガス吸着部とゾル溶液を24時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体、(c)はガス吸着部とゾル溶液を48時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体、(d)はガス吸着部とゾル溶液を96時間水熱合成して製造した炭化水素吸脱着複合体の走査電子顕微鏡イメージである。前記走査電子顕微鏡イメージによれば、合成時間が増加するほど補強部のシリカ-ゼオライト粒子の形態が明らかになることを確認した。
【0060】
また、X線回折分析グラフによれば、補強部を形成する時間(水熱合成する時間)が増加してもX線回折分析グラフはBEA骨格構造のゼオライトと同様に現れるので、補強部を形成する時間に関係なく他の形態のゼオライト粒子が合成されないことを確認した。よって、実施例2の炭化水素吸脱着複合体はBEA骨格構造のゼオライトの外に他の構造のゼオライトはないことが分かる。
【0061】
実験例2
本発明による炭化水素吸脱着複合体の補強部合成時間による炭化水素吸着量および炭化水素処理効率を確認するために、実施例1および実施例2の炭化水素吸脱着複合体を対象として補強部合成時間別低温始動試験(Cold start test、CST)を行い、その結果は図4図6および表1に示した。
【0062】
【表1】
低温始動実験は30mL/minのHe条件下で600℃で30分間前処理過程を経た0.06gのゼオライト粒子に100mL/minの模擬排出ガスフィード(feed)を流す。この時、模擬排出ガスフィードの組成は100ppmのプロペン、100ppmのトルエン、1体積%の酸素(O)、10体積%の水蒸気(HO)、ヘリウム(He balance)100mL/min、注入/重量(Feed/weight)=100000mL・g-1・h-1で、70℃で5分間露出し、53℃/minの昇温条件で行った後、600℃で5分間露出し、質量分析計とガスクロマトグラフィーを通じて炭化水素のプロペン、トルエンおよび全体炭化水素の吸着および脱着挙動を確認した。
【0063】
表1で、全体炭化水素吸着量は排出される全体炭化水素濃度がプロペンおよびトルエンに相応するメタン濃度(inlet濃度、1000ppm)と同一になるまで吸着した量を全体炭化水素吸着量に計算した。
【0064】
図4は実施例1および実施例3による炭化水素吸脱着複合体を対象として補強部の合成時間をそれぞれ3時間、6時間、9時間、12時間、24時間で製造した後、それぞれの炭化水素吸脱着複合体の低温始動実験結果を表したグラフである。
【0065】
図5は実施例1および実施例3による炭化水素吸脱着複合体を対象として補強部合成時間によるガス吸着部対比補強部が占める重量比の変化(左側)と炭化水素処理効率(右側)を表したグラフである。
【0066】
表1、図4および図5によれば、水熱処理しない実施例1の炭化水素吸脱着複合体の場合、補強部の合成時間が増加するほどプロペンの吸着量が減少し、脱着するトルエンの量が増加することを確認し、補強部の合成時間が増加するほど全体炭化水素処理効率が減少することを確認した。これは補強部の合成時間が増加するほどガス吸着部対比補強部の重量比が増加することと関連する。
【0067】
また、10体積%のHOが混合された空気流れ条件下で、800℃、24時間処理した実施例3の炭化水素吸脱着複合体の場合、補強部を形成しなくてガス吸着部のみある場合、水熱処理後炭化水素吸着性能を表すことができないことを確認した。しかし、補強部を形成した場合にはプロペンおよびトルエンの吸着性能が漸次に増加してから減少することを確認した。図5で全体炭化水素処理効率を見れば、補強部の合成時間が増加するほど水熱処理しない実施例1の炭化水素吸脱着複合体対比水熱処理した粒子の全体炭化水素処理効率が増加することが分かる。特に、24時間の間補強部を形成した場合、水熱処理しない複合体と水熱処理した複合体の全体炭化水素効率がほとんど類似することから、補強部を形成することにより水熱安定性が向上されたことが分かる。
【0068】
図6は実施例2および実施例4による炭化水素吸脱着複合体を対象として補強部の合成時間をそれぞれ24時間、48時間、96時間で製造した後、それぞれの炭化水素吸脱着複合体の低温始動実験結果を表したグラフである。
【0069】
図7は実施例2および実施例4による炭化水素吸脱着複合体を対象として補強部の合成時間によるガス吸着部対比補強部の重量比の変化(左側)と全体炭化水素処理効率(右側)を表したグラフである。
【0070】
表1、図6および図7によれば、水熱処理しない実施例2の炭化水素吸脱着複合体の場合、補強部を合成した後にプロペン吸着量は減少したが、補強部の合成時間に関係なく全体炭化水素処理効率は類似することを確認した。これを通じて補強部の合成時間に関係なく全体炭化水素処理効率が類似していることと関連されたことが分かる。
【0071】
また、10体積%HOが混合された空気流れ条件下で800℃、24時間の間処理した実施例4の炭化水素吸脱着複合体の場合、補強部を形成しなくてガス吸着部のみある場合、水熱処理後に炭化水素吸着性能を表すことができないことを確認した。しかしながら、補強部を形成した場合にはプロペンおよびトルエンの吸着性能が向上され、特に、24時間の間補強部を形成した場合には、プロペンおよびトルエンの吸着性能に最もすぐれ、その後、補強部の合成時間が増加するにつれてプロペンおよびトルエン吸着量が漸次に減少することを確認した。図7の全体炭化水素処理効率によれば、24時間の間補強部を合成した炭化水素吸脱着複合体が水熱処理後に最も高い全体炭化水素処理効率を表すことを確認した。これは実施例1と同じく、最適な全体炭化水素処理効率を見せながら水熱安定性を表す補強部の合成時間範囲が存在することが分かる。
【0072】
したがって、本発明の炭化水素吸脱着複合体は補強部を合成する時間を制御することにより、ガス吸着部対比補強部が占める割合を調節して既存のガス吸着部のみからなる炭化水素吸脱着複合体よりも複合体の炭化水素吸着能及び水熱安定性を同時に向上させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7