IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カトリック ユニヴェルシテット ルーヴェンの特許一覧

特許7240029フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン
<図1>
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図1
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図2
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図3
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図4
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図5
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図6
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図7
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図8
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図9
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図10
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図11-1
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図11-2
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図12
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図13
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図14
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図15
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図16-1
  • 特許-フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン 図16-2
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】フラビウイルスとリッサウイルスとのキメラワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20230308BHJP
   C12N 15/47 20060101ALI20230308BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230308BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230308BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 39/295 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N15/47
C12N15/86 Z
C12N15/09 Z
C12N7/04
A61K39/205
A61K39/295
A61P31/14
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021512782
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019073897
(87)【国際公開番号】W WO2020049175
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】1814563.1
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512320560
【氏名又は名称】カトリック ユニヴェルシテット ルーヴェン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】ダルマイヤー,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,ニラージ
(72)【発明者】
【氏名】ネイツ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス,ロレーナ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518132(JP,A)
【文献】特表2001-514622(JP,A)
【文献】国際公開第2018/027290(WO,A1)
【文献】Conservation of Binding Epitopes for Monoclonal Antibodies on the Rabies Virus Glycoprotein, J Antivirals Antiretrovirals, 2013, vol.5, p.037-043
【文献】A Short N-Terminal Peptide Motif on Flavivirus Nonstructural Protein NS1 Modulates Cellular Targeting and Immune Recognition, J Virol, 2010, vol.84, no.18, p.9516-9532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性弱毒化生フラビウイルスのE遺伝子とNS1遺伝子との間の遺伝子間領域にリッサウイルスGタンパク質の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列がキメラウイルスを発現するように配置されている前記フラビウイルスのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記フラビウイルスのEタンパク質のC末端及び前記フラビウイルスのNS1タンパク質のシグナルペプチドのN末端の間のコードされた配列は、以下の順序で、
フラビウイルスのNS1タンパク質の更なるシグナルペプチドと、
機能的シグナルペプチドを欠如し、IIbエピトープを含み、C末端TMドメインを含み、かつC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質と、
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインと、
を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記感染性弱毒化生フラビウイルスの配列は、黄熱ウイルス(YFV)、典型的にはYF17D株の配列である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記感染性弱毒化生フラビウイルスは、キメラウイルスである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記リッサウイルスは、狂犬病ウイルスである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
狂犬病G(RabG)タンパク質は、ERA株のタンパク質である、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記Gタンパク質のヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞における発現改善のためにコドン最適化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記NS1タンパク質のシグナルペプチドは、配列DQGCAINFG(配列番号6)を含む又は該配列からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記IIbエピトープは、配列GCTNLSGFS(配列番号15)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインは、ウエストナイルウイルス由来である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインは、配列RSIAMTFLAVGGVLLFLSVNVHA(配列番号13)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
RabGのシグナルペプチドは、シグナルペプチドを非機能的にするF14S突然変異を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
RabGは、アミノ酸1~19のN末端シグナル配列MVPQALLFVPLLVFPLCFG(配列番号18)を欠如している、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記キメラウイルスの配列は、フラビウイルスE遺伝子-NS1シグナルペプチド-RabGタンパク質からなる接合部の配列に、配列LGVGA DQGCAINFGKFPIY(配列番号21)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記キメラウイルスの配列は、WNVのTM2ドメイン-NS1シグナル配列-黄熱ウイルス(YFV)からなる接合部の配列に、配列VNVHA DQGCAINFGKRELK(配列番号22)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記キメラウイルスのコードされた配列は、配列番号2の配列又はそれと95%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号1の配列又はそれと95%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
細菌人工染色体である、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
医薬として使用される、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記医薬はワクチンである、請求項18に記載の医薬として使用されるポリヌクレオチド。
【請求項20】
リッサウイルスに対するワクチン接種で使用される、請求項1~17のいずれか一項に記
載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
キメラの感染性弱毒化生フラビウイルスであって、リッサウイルスGタンパク質の少なくとも一部が、前記フラビウイルスのEタンパク質とNS1タンパク質との間にあって、該Eタンパク質のC末端及び該NS1タンパク質のシグナルペプチドのN末端の間で、該ウイルスが、以下の順序で、
フラビウイルスのNS1タンパク質の更なるシグナルペプチドと、
機能的シグナルペプチドを欠如し、かつIIbエピトープを含み、C末端TMドメイン及びC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質と、
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインと、
を含むように配置されている、キメラの感染性弱毒化生フラビウイルス。
【請求項22】
前記フラビウイルスは、黄熱ウイルス(YFV)である、請求項21に記載のキメラフラビウイルス。
【請求項23】
前記リッサウイルスは、狂犬病ウイルスである、請求項22に記載のキメラフラビウイルス。
【請求項24】
医薬として使用される、請求項21~23のいずれか一項に記載のキメラウイルス。
【請求項25】
リッサウイルス感染の未然防止に使用される、請求項21~24のいずれか一項に記載のキメラウイルス。
【請求項26】
リッサウイルスの未然防止及びフラビウイルスの未然防止に使用される、請求項21~25のいずれか一項に記載のヌクレオチドによってコードされるキメラウイルス。
【請求項27】
リッサウイルス感染に対するワクチンを作製する方法であって、
a)以下:
細菌細胞当たり11コピー以上までBACを増幅する誘導性の細菌ori配列と、
請求項1~15のいずれか一項に記載のフラビウイルスとリッサウイルスとのキメラウイルスのcDNAを含み、かつ哺乳動物細胞における前記ウイルスcDNAの転写及び転写されたRNAを感染性RNAウイルスにプロセシングするシス調節エレメントを含むウイルス発現カセットと、
を含むBACを準備する工程と、
b)哺乳動物細胞を工程a)の該BACでトランスフェクションし、感染細胞を継代させる工程と、
c)工程b)のトランスフェクションされた細胞の複製されたウイルスを、病原性及び抗体を生成してリッサウイルス感染に対する防御を誘導する能力について検証する工程と、
d)工程c)で検証されたウイルスをベクターへとクローニングする工程と、
e)該ベクターをワクチン製剤へと製剤化する工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
前記フラビウイルスは、黄熱ウイルス(YFV)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記リッサウイルスは、狂犬病ウイルスである、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクターは、細菌細胞当たり11コピー以上までBACを増幅する誘導性の細菌ori配列を含むBACである、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラビウイルスベースのキメラワクチンに関する。さらに、本発明は、狂犬病に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトに使用される狂犬病ワクチンは、不活化狂犬病ウイルス(RABV)を含む精製された細胞培養物及び孵化卵に基づく狂犬病ワクチン(CCEEV)である。
【0003】
これらのワクチンは、多回投与レジメン、コールドチェーン、並びにそれらの製造及び維持に高いコストを要する不活化ウイルスワクチンである。これらのワクチンは、流行地域の人々である主要な標的群においてヒト狂犬病を未然防止することができない。さらに、予防接種によって誘導される免疫防御は比較的急速に弱まることから、免疫グロブリン(RIG)及びワクチン接種計画の組み合わせによる曝露後治療の必要性を伴う。
【0004】
細胞接着及び膜融合を担う狂犬病糖タンパク質G(RabG)は、ワクチン開発の標的となる重要な免疫原である。狂犬病糖タンパク質G及びそのエピトープは、非特許文献1でレビューされている。
【0005】
非特許文献2は、非フラビウイルス抗原が黄熱ウイルス(YFV)ゲノムに挿入されているYFVキメラコンストラクトをレビューしている。
【0006】
複製欠損ワクチンプラットフォームRepliVax(商標)(RV)ウエストナイルウイルス(WNV)を伴うアプローチを使用して、狂犬病ワクチン(RV-RabG)が得られた(非特許文献3)。このアプローチでは、狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子を種々のWN欠失突然変異体に挿入することによって、幾つかのRV-RabGコンストラクトが作製された(WNのC遺伝子、prME遺伝子、又はCprME遺伝子がRabG遺伝子と交換された)。C末端に2A自己切断エレメントを有するネイティブなRabGシグナル配列を含む全長RabGタンパク質が使用された。
【0007】
これらのコンストラクトは、ワクチンとして使用される単一コンポーネントの擬似感染性ウイルス(sPIV)としてRV-RabGレプリコンをパッケージングするのに必要とされるWNのC-prM-E構造タンパク質を発現するベビーハムスター腎臓(BHK)ヘルパー細胞(HC)においてinvitroで転写及びトランスフェクションさせる必要がある。これらのPIVは、狂犬病及びWNに対して特異的な抗体応答を誘導する。
【0008】
黄熱ウイルス17Dは、ラッサウイルス糖タンパク質(GPC)又はそのサブユニットGP1及びGP2のためのベクターとして使用されている(非特許文献4及び非特許文献5)。これらのコンストラクトでは、GP遺伝子(シグナルペプチド(SSP)を欠如)(又はGP1配列若しくはGP2配列のいずれか)がYF-E/NS1の間に挿入された。これらのコンストラクトは、YF-E由来の挿入融合配列のC末端(YF-Eの23個のC末端疎水性アミノ酸)に、WNV-E又は人工設計配列を有する。これらのコンストラクトは細胞にトランスフェクションさせる必要があり、該細胞から取得されたウイルスがワクチンとして使用される。
【0009】
RepliVax(商標)-RabG(RV-RabG)コンストラクトは、直接的にワクチンとして使用することはできず、WNVバックボーンから欠失されたタンパク質をトランスで供給するBHKヘルパー細胞(HC)において最初に擬似感染性ウイルス(PIV)を作製して、ワクチン接種に使用されるPIVを得る必要がある。これは高い生産コストを伴うだけでなく、PIVを維持するのにコールドチェーンを必要とする。
【0010】
糖タンパク質前駆体を発現するベクターとしてのYFV17Dの使用に関して、この組換えウイルスの主な問題は不安定性であり、そのためワクチン生産に必要とされる技術をスケールアップすることができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Kuzmina et al.(2013) J antivir antiretrovir. 5:2 37-43
【文献】Bonaldo et al.(2014) Human Vacc. & Immunother. 10, 1256-1265
【文献】Giel-Moloney et al.(2017) Vaccine. 35(49PtB), 6898-6904
【文献】Bredenbeek et al.(2006) Virology 345, 299-304
【文献】Jiang et al. (2011)Vaccine. 29, 1248-1257
【発明の概要】
【0012】
本発明は、E/NS1遺伝子間領域にリッサウイルスGタンパク質を含むキメラフラビウイルスコンストラクトを記載する。
【0013】
新規の黄熱ウイルスベースのトランスジェニックワクチンは、以下のようにRabGをYFV-17Dの黄熱E/NS1遺伝子間領域へと挿入することによって操作された:RabGのN末端(Nt)シグナルペプチドを欠失させ、NS1の最初の9アミノ酸(27ヌクレオチド)をRabGのN末端に付加してRabGタンパク質の適切な放出を可能にし、RabGの細胞質C末端配列を保存して、WNV(ウエストナイルウイルス)の膜貫通ドメイン2に融合させた。得られた狂犬病/YFV-17Dコンストラクトは、機能的なRabGタンパク質及びYFV-17Dタンパク質を発現する生存する弱毒化生ウイルスを放出する。そのようなYFV17D-RabGコンストラクトを含む細菌人工染色体は直接的にワクチンとして使用することができることから、YFV17D-RabGコンストラクトのそのようなDNAベースのモダリティを熱安定性ワクチンとして使用することができることを示している。該ワクチンは、単一ショット後にRABV及びYFVの両方に対する免疫応答を誘導する。YFV17D-RabGは、YFV及び狂犬病ウイルスに特異的な免疫を誘導するデュアルワクチンである。YFV17D-RabGを含むBACは、組織培養由来の弱毒化生ワクチンの生産にも使用され得る。
【0014】
本発明を、以下の記載にまとめる:
1. 感染性弱毒化生フラビウイルスのE遺伝子とNS1遺伝子との間の遺伝子間領域にリッサウイルスGタンパク質の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列がキメラウイルスを発現するように挿入/配置されているフラビウイルスの配列を含むポリヌクレオチドであって、フラビウイルスのEタンパク質のC末端及びフラビウイルスのNS1タンパク質のシグナルペプチドのN末端のコードされた配列は、以下の順序で、
フラビウイルスのNS1タンパク質の更なるシグナルペプチドと、
欠損した機能的シグナルペプチドを含み又は機能的シグナルペプチドを欠如し、IIbエピトープを含み、C末端TMドメインを含み、かつC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質と、
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインと、
を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【0015】
2. 感染性弱毒化生フラビウイルスの配列は、黄熱ウイルス、典型的にはYF17D株の配列である、記載1によるポリヌクレオチド。
【0016】
3. フラビウイルスバックボーンは、キメラウイルスである、記載2によるポリヌクレオチド。
【0017】
4. リッサウイルスは、狂犬病ウイルスである、記載1~3のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0018】
5. 狂犬病Gタンパク質は、ERA株のタンパク質である、記載1~4のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0019】
6. Gタンパク質のヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞における発現改善のためにコドン最適化されている、記載1~5のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0020】
7. 感染性弱毒化生フラビウイルスのNS1タンパク質の更なるシグナルペプチドは、配列DQGCAINFG(配列番号6)を含む又は該配列からなる、記載1~6のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0021】
8. TM2ドメインのC末端に位置するNS1タンパク質のシグナルペプチドは、配列DQGCAINFG(配列番号6)を含む又は該配列からなる、記載1~6のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0022】
9. IIbエピトープは、配列GCTNLSGFS(配列番号15)を有する、記載1~8のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0023】
10. フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインは、ウエストナイルウイルス由来である、記載1~9のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0024】
11. フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインは、配列RSIAMTFLAVGGVLLFLSVNVHA(配列番号13)を有する、記載1~10のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0025】
12. RabGの欠損した機能的シグナルペプチドは、F14S突然変異を含む、記載1~11のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0026】
13. RabGは、アミノ酸1~19のN末端シグナル配列MVPQALLFVPLLVFPLCFG(配列番号18)を欠如している、記載1~12のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0027】
14. キメラウイルスの配列は、フラビウイルスE遺伝子、NS1シグナルペプチド、及びRabGタンパク質の接合部に、配列LGVGA DQGCAINFGKFPIY(配列番号21)を含む、記載1~13のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0028】
15. キメラウイルスの配列は、WNVのTM2ドメイン及びYFVタンパク質の接合部に、配列VNVHA DQGCAINFGKRELK(配列番号22)を含む、記載1~14のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0029】
16. キメラウイルスのコードされた配列は、配列番号2の配列又は95%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、記載1~15のいずれか1つによるポリヌクレオチド又は配列番号1の配列又はそれと95%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、記載1~15のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0030】
17. 細菌人工染色体である、記載1~16のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0031】
18. 医薬として使用される、記載1~17のいずれか1つによるポリヌクレオチド。
【0032】
19. 医薬はワクチンである、記載18による医薬として使用されるポリヌクレオチド。
【0033】
20. リッサウイルスに対するワクチン接種で使用される、記載1~19のいずれか1つによるポリヌクレオチド配列。
【0034】
21. キメラの感染性弱毒化生フラビウイルスであって、リッサウイルスGタンパク質、例えば狂犬病Gタンパク質の少なくとも一部が、上記フラビウイルスのEタンパク質とNS1タンパク質との間に、Eタンパク質のC末端及びNS1タンパク質のシグナルペプチドのN末端で、ウイルスが、以下の順序で、
フラビウイルスのNS1タンパク質の更なるシグナルペプチドと、
欠損した機能的シグナルペプチドを含み又は機能的シグナルペプチドを欠如し、かつIIbエピトープを含み、C末端TMドメイン及びC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質と、
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインと、
を含むように配置されている、キメラの感染性弱毒化生フラビウイルス。
【0035】
22. 医薬として使用される、記載21によるキメラウイルス。
【0036】
23. リッサウイルスの未然防止に使用される、記載22によるキメラウイルス。
【0037】
24. リッサウイルスの未然防止及びフラビウイルスの未然防止に使用される、記載23によるヌクレオチドによってコードされるキメラウイルス。
【0038】
25. 狂犬病等のリッサウイルス感染に対するワクチンを作製する方法であって、
a)以下:
細菌細胞当たり11コピー以上までBACを増幅する誘導性の細菌ori配列と、
記載1~15のいずれか1つによるフラビウイルスとリッサウイルスとのキメラウイルスのcDNAを含み、かつ哺乳動物細胞における上記ウイルスcDNAの転写及び転写されたRNAを感染性RNAウイルスにプロセシングするシス調節エレメントを含むウイルス発現カセットと、
を含むBACを準備する工程と、
b)哺乳動物細胞を工程a)のBACでトランスフェクションし、感染細胞を継代させる工程と、
c)工程b)のトランスフェクションされた細胞の複製されたウイルスを、病原性及び抗体を生成してリッサウイルス感染に対する防御を誘導する能力について検証する工程と、
d)工程c)で検証されたウイルスをベクターへとクローニングする工程と、
e)ベクターをワクチン製剤へと製剤化する工程と、
を含む、方法。
【0039】
26. ベクターは、細菌細胞当たり11コピー以上までBACを増幅する誘導性の細菌ori配列を含むBACである、記載25による方法。
【0040】
本プロジェクトは、RABYD-VAX助成合意番号733176の下、欧州連合のホライズン2020の研究・イノベーションプログラムから資金提供を受けている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】A)YFV17D-RabG-ERA(E/NS1)の概略図。SP:シグナルペプチド、TM:膜貫通ドメイン。B)YFV17D-RabG-ERA(E/NS1)とYFV17Dとのプラーク表現型の比較。C)AG129マウスにおけるYFV17D-RabG-ERA(E/NS1)の免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール。AG129マウスにおけるYFV17D-RabG-ERA(E/NS1)に対する死亡率及び血清学的応答(表)(IP - 腹腔内、TCID50 - 中央組織培養感染量、PEI - ポリエチレンイミン)。
図2】A)YF-E/NS1部位に挿入されたERA-RabG又はΔ82-ERA-RabGを発現するBAC子孫のプラーク表現型。B)パネルAに示されるコンストラクトの凡例。
図3】A)AG129マウスにおけるYFV17D-RabG-ERA-Δ82及びRabipurの免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール(IP - 腹腔内、TCID50 - 中央組織培養感染量)。B)RABVに対する中和抗体価。
図4】A)YFV17D-RabG-CVS(E/NS1)の概略図。SP:シグナルペプチド、TM:膜貫通ドメイン。B)YFV17D-RabG-CVS(E/NS1)とYFV17Dとのプラーク表現型の比較。
図5】A)AG129マウスにおけるYFV17D-RabG-CVS(E/NS1)の免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール。B)AG129マウスにおけるYFV17D-RabG-CVS(E/NS1)に対する死亡率及び血清学的応答(IP - 腹腔内)。
図6】A)RabG-ERAをYF-E/NS1の間に以下のように挿入した:N末端のRabGシグナルペプチド(SP)を除去してRabGをYFポリタンパク質に収容し、NS1の最初の9アミノ酸をRabGのN末端に付加してRabGの適切な放出を可能にし、RabG細胞質ドメインのC末端を保存し、WNVの膜貫通ドメインアンカー-2に融合させて、RabGをYFポリタンパク質のトポロジーに適合させた。B)YFV17D-RabGERAΔSPコンストラクトの概略図。
図7】A)RabGERAΔSPを発現するBAC子孫のプラーク表現型。B)pShuttle-YF17D-RabGERAΔSPでトランスフェクションされた細胞の上清で感染されたBHK21J細胞の免疫蛍光によって検出されたRabGERAΔSP及びYFV抗原の同時発現。細胞を感染48時間後に固定し、RabG及びYFVについて染色した。
図8】YF17D-RabGERAΔSPウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料のRT-PCR分析。C+:pSYF17D-YF17D-RabGERAΔSP陽性のコントロール、-RT:レトロトランスクリプターゼなしでのRT-PCR反応、RNA:ウイルスRNAを用いたRT-PCR(パネルA:継代1~6、パネルB:継代7~10)。
図9】A)AG129マウスにおけるYF17D-RabGERAΔSPウイルスの免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール。B)狂犬病に対する血清中和抗体(SNA)価。
図10】AG129マウスにおける(i)PLLAV-YF17D-RabGERAΔSP、(ii)YF17D-RabGERAΔSPウイルス、(iii)YF17D-CVS-RabG-F14Sを含むBAC、及び(iv)YF17D-CVS-RabG-F14Sウイルスのin vivoでの免疫原性を試験するための1回ワクチン接種スケジュール。YFV-17D-NLuc及びRabipur(1回ワクチン接種又は2回ワクチン接種)を、それぞれYFワクチン接種及び狂犬病ワクチン接種についてのポジティブコントロールとして使用した。
図11-1】AG129マウスにおける(i)PLLAV-YF17D-RabGERAΔSP、(ii)YF17D-RabGERAΔSPウイルス、(iii)YF17D-CVS-RabG-F14Sを有するBAC、(iv)YF17D-CVS-RabG-F14S、(v)YFV-17D-NlucによるIPでのワクチン接種後、並びに(vi)Rabipurでの1回免疫化後及び(vii)2回免疫化後から(A)7日目、(B)14日目、(C)21日目、及び(D)28日目でのRABVに対する血清中和抗体(SNA)価。Rabipur2ショット:マウスにRabipurでブーストを行った後から7日目、14日目、21日目、及び28日目と一致するデータ。
図11-2】同上
図12】A)JE-EとYF-NS1との間に挿入されたRabG(ChimeriVax JEバックボーン)の概略図。B)ChimeriVaxJE-RabGとYF17Dとのプラーク表現型の比較。C)ChimeriVaxJE-RabGウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料のRT-PCR分析。C+:pShuttle-ChimeriVaxJE-RabG陽性のコントロール、-RT:レトロトランスクリプターゼなしでのRT-PCR反応、RNA:ウイルスRNAを用いたRT-PCR。
図13】A)AG129マウスにおけるChimeriVaxJE-RabGの免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール。B)AG129マウスにおけるChimeriVaxJE-RabGに対する死亡率及び血清学的応答(IP - 腹腔内)。
図14】A)ZIK-EとYF-NS1との間に挿入されたRabG(ChimeriVaxZIKバックボーン)の概略図。B)ChimeriVaxZIK-RabGとYF17Dとのプラーク表現型の比較。C)ChimeriVaxZIK-RabGウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料のRT-PCR分析。C+:pShuttle-ChimeriVaxZIK-RabG陽性のコントロール、-RT:レトロトランスクリプターゼなしでのRT-PCR反応、RNA:ウイルスRNAを用いたRT-PCR。
図15】A)AG129マウスにおけるChimeriVaxZIK-RabGの免疫原性を試験するためのワクチン接種スケジュール。B)AG129マウスにおけるChimeriVaxZIK-RabGに対する死亡率及び血清学的応答(IP - 腹腔内)。
図16-1】バックボーン改変の実施形態。(A)フラビウイルスベクターバックボーン。生ワクチンとして使用される典型的な弱毒化生フラビウイルスのゲノム構成の概略図。各ワクチンウイルスは、C遺伝子及びNS1~NS5遺伝子を含むバックボーン(1)並びにウイルス表面タンパク質prME(2)をコードする。コンポーネント(1)及び(2)は、ウイルス特異的な体液性免疫及び細胞性免疫を誘導することが知られている。コンポーネント(2)、特に中和抗体(nAb)。YF17D- 黄熱ワクチン株17D、JE SA14-14-2 - 日本脳炎ワクチン株SA14-14-2、ZIKV - ジカウイルス又はワクチンとして使用されるその弱毒化生ジカウイルス変異体。(B)フラビウイルス表面タンパク質に変化を伴うYF17Dベクターバックボーンから発現される原型のリッサウイルスワクチン。狂犬病に対するワクチンとして使用される、原型のリッサウイルスである狂犬病ウイルスに由来する防御抗原としての狂犬病ウイルスGタンパク質(RabG、コンポーネント3)に関してトランスジェニックである典型的な弱毒化生フラビウイルスのゲノム構成の概略図。YF17Dウイルスのコンポーネント(1)をバックボーンとして使用し、それぞれYF17D、JE SA14-14-2、及びZIKVからのコンポーネント(2)をフラビウイルス表面タンパク質として使用する3つの考えられる変異体が示されている。YF17D-RabG - RabGを発現する組換えYF17D、CVax-JE-RabG - RabGを発現するキメラYF17D/JEワクチン株(例えば、Arroyo et al. 2001 PMID:11134306によって開示される)。CVax-ZIK-RabG - RabGを発現するYF17D/ZIKワクチン株(例えば、Kum et al. 2018 PMID:30564463によって開示される)。(C)YF17Dベクターバックボーンから発現される抗原性リッサウイルスワクチン変異体。YF17Dウイルスのコンポーネント(1)をバックボーンとして使用し、それぞれ抗原的に異なる系統群I(狂犬病ウイルス)、系統群II(ラゴスコウモリウイルス(LBV)及びモコラウイルス(MOKV))、及び系統群III(リェイダバットウイルス(Lleida bat virus)(LLEBV))を表す一連のリッサウイルスのGタンパク質配列を導入遺伝子コンポーネント(3)として使用する典型的な弱毒化生フラビウイルスのゲノム構成の概略図。各Gタンパク質は、少なくとも同じ系統群に属するウイルスに対して、関連するリッサウイルスに対する免疫を誘導する防御抗原であるとみなされる。YF17D-RabG - RabGを発現する組換えYF17D、YF17D-LBV-G - LBVのGタンパク質を発現する組換えYF17D、YF17D-MOKV-G - MOKVのGタンパク質を発現する組換えYF17D、YF17D-LLEBV- LLEBVのGタンパク質を発現する組換えYF17D。(D)JE SA14-14-2ベクターバックボーンから発現される原型のリッサウイルスワクチン。JE SA14-14-2ウイルスのコンポーネント(1)をバックボーンとして使用し、コンポーネント(3)を導入遺伝子として使用する弱毒化生フラビウイルスのゲノム構成の概略図。
図16-2】同上
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、黄熱ウイルスについて例示されているが、限定されるものではないが、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、マレーバレー脳炎(MVE)ウイルス、セントルイス脳炎(SLE)ウイルス、ウェストナイル(WN)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、ロシア春夏脳炎(RSSE)ウイルス、クンジンウイルス、ポワッサンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、ジカウイルス、ウスツウイルス、ウェッセルスブロンウイルス及びオムスク出血熱ウイルスのようなフラビウイルス種の他のウイルスバックボーンを使用して適用することもできる。
【0043】
さらに、本発明は、フラビウイルス属だけでなく、ペギウイルス属、ヘパシウイルス属、及びペスチウイルス属も含むフラビウイルス科に適用可能である。
【0044】
ヘパシウイルス属は、例えば、ヘパシウイルスC(C型肝炎ウイルス)及びヘパシウイルスB(GBウイルスB)を含む。
【0045】
ペギウイルス属は、例えば、ペギウイルスA(GBウイルスA)、ペギウイルスC(GBウイルスC)、及びペギウイルスB(GBウイルスD)を含む。
【0046】
ペスチウイルス属は、例えば、牛ウイルス性下痢ウイルス1型及び古典的ブタ熱ウイルス(以前は豚コレラウイルス)を含む。
【0047】
バックボーンとして使用されるフラビウイルス自体は、異なるフラビウイルスの部分から構成されるキメラウイルスであり得る。
【0048】
例えば、C領域及びNS1~NS5領域は黄熱ウイルスに由来し、prME領域は日本脳炎ウイルス又はジカウイルスに由来する。この例は表2及び図16に表されている。
【0049】
本発明は、狂犬病リッサウイルスのGタンパク質について例示されているが、他のリッサウイルスのGタンパク質にも適用可能である。その例は、アラバンリッサウイルス、アラバンウイルス(ARAV)、オーストラリアコウモリリッサウイルス、ボケロバットリッサウイルス、ドゥベンヘイジリッサウイルス、ヨーロピアンバットリッサウイルス1、ヨーロピアンバットリッサウイルス2、イコマリッサウイルス、イルカットリッサウイルス、クジャンドリッサウイルス、ラゴスバットリッサウイルス、モコラリッサウイルス、狂犬病リッサウイルス、シモニバットリッサウイルス、及び西コーカサスバットリッサウイルス、並びにそれらの考えられるキメラ及び抗原性変異体である。これらの種の多くはコウモリに見出される。しかしながら、コウモリからヒトへのウイルスの伝播は重大な健康上のリスクである。
【0050】
本発明のコンストラクトは、コードされた挿入物のER内腔への適切な提示及びタンパク質分解プロセシングを可能にする。RabGタンパク質によって例示されるように、挿入物のみによってコードされるタンパク質は、膜貫通ドメインに続いて細胞質ゾルに存在するペプチドをC末端近くに含む。この構成を実現するために、RabGのN末端シグナルペプチドが除去されている(又は非機能的にされている)。この原理に基づき、タンパク質がN末端の膜標的ドメインを欠如し、標的化ドメイン(targeting membrane)に続いてNS1タンパク質に先行する標的化ドメインと接続させる細胞質配列をC末端に含む本発明のベクターを介して、あらゆる免疫原性タンパク質が提示され得る。
【0051】
ここでさらに、フラビウイルスがバックボーンとして使用され、リッサウイルスのGタンパク質が挿入物として使用される実施形態について本発明を記載する。
【0052】
狂犬病Gタンパク質は、非特許文献1でレビューされている。配列中の特徴の番号付けは、19アミノ酸のシグナルペプチド(MVPQALLFVPLLVFPLCFG)(配列番号18)が先行する成熟タンパク質に関するものである。成熟タンパク質における関連の配列エレメントは、IIbエピトープGCTNLSGFS(アミノ酸34~42)(配列番号15)、膜貫通ドメインVLLSAGALTALMLIIFLMTCC(アミノ酸440~461)(配列番号19)、及び細胞質ドメインRRVNRSEPTQHNLRGTGREVSVTPQSGKIISSWESHKSGGETRL(配列番号20)(アミノ酸462~505)である。
【0053】
異なるリッサウイルスのGタンパク質間の配列同一性が高くても、当業者は問題なく、関連した配列において狂犬病ウイルスGタンパク質に存在する配列エレメントに対応する配列エレメントを特定する。
【0054】
フラビウイルスは、およそ11000ヌクレオチドの長さの一本鎖プラス鎖RNAゲノムを有する。ゲノムは、5'非翻訳領域(UTR)、長いオープンリーディングフレーム(ORF)、及び3'UTRを含む。ORFは、3つの構造タンパク質(キャプシド(C)、前駆体膜(prM)、及びエンベロープ(E))及び7つの非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、及びNS5)をコードしている。ゲノムRNAとともに、構造タンパク質がウイルス粒子を形成する。非構造タンパク質は、ウイルスのポリタンパク質のプロセシング、複製、ビリオンの集合、及び宿主免疫応答の逃避に関与する。Cタンパク質のC末端にあるシグナルペプチド(Cシグナルペプチド、Cアンカードメインとも呼ばれる)は、シグナルペプチド配列のN末端での配列の切断(細胞質内のウイルスNS2B/NS3プロテアーゼによる)とC末端での配列の切断(小胞体(ER)内腔内の宿主シグナラーゼによる)との協調によってフラビウイルスのパッケージングを調節する。
【0055】
一本鎖プラス鎖ゲノムは、単一のポリタンパク質へと翻訳され、これはウイルスタンパク質及び宿主タンパク質によって翻訳時及び翻訳後に3つの構造タンパク質(キャプシド(C)、前駆膜(prM)、エンベロープ(E))、及び7つの非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、NS5)へと切断される。構造タンパク質は、(球形)構造のビリオンを形成し、ビリオンの接着、内部移行、及び細胞へのウイルスRNAの放出を開始し、それによってウイルスのライフサイクルが開始される。他方で、非構造タンパク質は、ウイルスの複製、感染細胞における免疫応答の調節及び逃避、並びに蚊へのウイルスの伝播に関与している。構造タンパク質と非構造タンパク質との間の分子内相互作用及び分子間相互作用は、ウイルス感染及び病因に重要な役割を担う。
【0056】
Eタンパク質は、そのC末端に、例えば図6にTM1及びTM2として示される2つの膜貫通配列を含む。
【0057】
NS1は、Eの最後の24アミノ酸に対応するシグナル配列を介してERの内腔に輸送され、ER保留宿主シグナルペプチダーゼによる切断を介してそのアミノ末端でEから放出される(Nowak et al. (1989) Virology 169,365-376)。NS1は、そのC末端にプロテアーゼに関する認識部位を含む8~9アミノ酸のシグナル配列を含む(Muller& Young (2013) Antiviral Res. 98, 192-208)。
【0058】
本発明のコンストラクトは、リッサウイルスGタンパク質がEタンパク質とNS1タンパク質との間の境界に挿入されているキメラウイルスである。しかしながら、Gタンパク質挿入物のN末端及びC末端には、追加の配列エレメントが提供される。
【0059】
本発明は、感染性弱毒化生フラビウイルスのE遺伝子とNS1遺伝子との間の遺伝子間領域にリッサウイルスGタンパク質の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列がキメラウイルスを発現するように挿入されている上記フラビウイルスの配列を含むポリヌクレオチドであって、上記フラビウイルスのEタンパク質のC末端及び上記フラビウイルスのNS1タンパク質のN末端のコードされた配列は、以下の順序で、
シグナルペプチダーゼによるEタンパク質からのGタンパク質のタンパク質分解プロセシングを可能にする配列エレメントと、
欠損した機能的シグナルペプチドを含み又は機能的シグナルペプチドを欠如し、IIbエピトープを含み、C末端TMドメインを含み、かつC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質と、
フラビウイルスEタンパク質のTM2ドメインと、
を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチドに関する。
【0060】
アミノ末端でフラビウイルスEタンパク質からのリッサウイルスGタンパク質のタンパク質分解プロセシングを可能にし、C末端でフラビウイルスNS1タンパク質からのリッサウイルスGタンパク質のタンパク質分解プロセシングを可能にするために、シグナルペプチダーゼの基質である配列エレメントが提供される。これらの長さ及び配列は様々であってよく、上記で引用したJang et al.に示される1アミノ酸のような短さであってもよい。シグナル伝達プロテアーゼに適した認識部位に対する議論は、Nielsen et al. (1997) Protein Eng. 10, 1-6に見出される。
【0061】
典型的には、Gタンパク質のC末端では、NS1タンパク質のN末端にあるシグナルペプチド(又はタンパク質分解プロセシングを可能にする断片)が使用される。典型的には、Gタンパク質のN末端では、フラビウイルスバックボーンのNS1タンパク質の同じシグナルペプチド(又は断片)が導入される。
【0062】
本発明は同様に、感染性弱毒化生フラビウイルスの配列を含むポリヌクレオチドに関する。本明細書では、リッサウイルスGタンパク質の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、上記フラビウイルスのE遺伝子とNS1遺伝子との間の遺伝子間領域に挿入される。Eタンパク質のC末端からNS1タンパク質のシグナルペプチドのN末端までのコードされた配列が、以下の順序で、
Eタンパク質のC末端及びNS1タンパク質のN末端のフラビウイルスNS1遺伝子の更なるシグナルペプチド(又はその切断可能な断片)、
欠損した機能的シグナルペプチドを含み又は機能的シグナルペプチドを欠如し、IIbエピトープを含み、C末端TMドメイン及びC末端細胞質配列を含むリッサウイルスGタンパク質、
を含むようにキメラウイルスが発現されるように、追加の配列が提供される。このGタンパク質は、NS1シグナルペプチドからのC末端にある。Gタンパク質のC末端には、フラビウイルスのフラビウイルスTM2膜貫通ドメインの配列がある。このTM2配列のC末端に続いて、その天然のシグナルペプチド配列を含むNS1タンパク質がある。
【0063】
したがって、Gタンパク質及びTM2ドメインは、NS1配列にN末端及びC末端で隣接している。実施例に開示される実施形態では、両方のNS1のタンパク質配列及びDNA配列は同一である。
【0064】
典型的な実施形態では、両方のNS1シグナル配列は、配列DQGCAINFG(配列番号6)を有する。
【0065】
本発明のコンストラクトは、この反復配列が存在するため組換えを示さなかった。コードされたペプチドがこれらのNS1のN末端シグナル配列をプロセシングするプロテアーゼからの標的のままである場合、配列改変を導入して又は異なるフラビウイルスからのNS1配列を使用して、同一の配列が存在するのを避けることができる。
【0066】
典型的な実施形態では、実施例に開示されるように、Gタンパク質は、狂犬病ウイルスのGタンパク質であり、好ましくは、狂犬病ウイルスのERA株のGタンパク質である。
【0067】
哺乳動物宿主におけるウイルスの産生を促進するために、Gタンパク質のヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0068】
本発明のコンストラクト内のGタンパク質は、IIbエピトープが存在する場合に免疫原性を与える。狂犬病ウイルスのIIbエピトープは典型的には、配列GCTNLSGFS(配列番号15)を有する。
【0069】
さらに、ウイルスのプロセシングの間に狂犬病Gタンパク質の望ましいトポロジーを得るには、Gタンパク質の膜貫通配列の存在だけでなく、C末端の細胞質配列の存在も必要とされる。Gタンパク質のTMドメインの配列及び細胞質配列は典型的には、狂犬病Gタンパク質のそれぞれアミノ酸440~461及びアミノ酸462~505の配列である。
【0070】
Gタンパク質及びC末端テールにおけるマイナーな配列の改変は、これらの配列エレメントの機能を失うことなく導入され得ると考えられる。例としては、疎水性側鎖が膜貫通ドメインで保存されるアミノ酸置換、又は細胞質ドメインのN末端及びC末端での膜貫通ドメインの適切な局在化を可能にするのに十分な長さを有する細胞質ドメインの短縮型がある。
【0071】
Gタンパク質の機能的シグナルペプチドの存在が選択圧をもたらすことにより、そのシグナルペプチドを含むGタンパク質の一部が欠失又は突然変異されることが判明した。したがって、本発明のコンストラクトは典型的には、この配列の部分的若しくは完全な除去により又はシグナルタンパク質を非機能的にする突然変異(シグナルペプチドMVPQALLFVPLLVFPLCFG(配列番号18)内のRabGのF14S突然変異等)の導入により、欠損したGタンパク質シグナルを含む。
【0072】
Gタンパク質のC末端及びNS1のN末端に位置するTMドメインは、一般にフラビウイルスのTMドメインであり、典型的にはEタンパク質に由来し、より典型的にはEタンパク質のTM2ドメインである。好ましい実施形態では、Eタンパク質のこのTM2ドメインは、バックボーンを形成するウイルスとは異なるフラビウイルスに由来する。本発明の実施例は、ウエストナイルウイルスのEタンパク質のTM2ドメインを記載している。このドメインは、配列RSIAMTFLAVGGVLLFLSVNVHA(配列番号13)を有する。
【0073】
以下の実施例のセクション及び概略図では、全ての配列エレメントは、介在配列エレメントを一切有しない連続配列を形成する。ER内腔又は細胞質ゾルのいずれかでのタンパク質の局在化が妨害されず、タンパク質分解プロセシングが維持される限り、これらの配列エレメント間に追加のアミノ酸が存在し得ることが考えられる。
【0074】
上記のヌクレオチド配列は、ウイルス自体の配列であり得る又はベクター内の配列を指し得る。以下でより詳細に説明するように、フラビウイルス及びキメラ型のクローニングに適したベクターは、細菌人工染色体である。
【0075】
本発明の方法及び化合物は、ウイルス又はウイルスをコードするベクターを使用して、フラビウイルス内にクローニングされたGタンパク質を含むリッサウイルスに対するワクチンを接種することができる医療用途を有する。さらに、フラビウイルス由来のタンパク質は同様に防御をもたらすため、本発明の化合物を使用して、単一のウイルス又はDNAワクチンを使用してフラビウイルス及びリッサウイルスに対するワクチンを接種することができる。
【0076】
細菌人工染色体の使用、特に国際公開第2014174078号で本発明者らによって開示された誘導性BACSの使用は、本発明のキメラコンストラクト等のRNAウイルスのcDNAの高収率で高品質の増幅に特に適している。
【0077】
この公報に記載されるBACは、
細菌細胞当たり11コピー以上まで上記BACを増幅する誘導性の細菌ori配列と、
RNAウイルスゲノムのcDNAを含み、かつ哺乳動物細胞における上記ウイルスcDNAの転写及び転写されたRNAを感染性RNAウイルスにプロセシングするシス調節エレメントを含むウイルス発現カセットと、
を含む。
【0078】
本発明の場合のように、RNAウイルスゲノムは、RNAウイルスゲノム及び狂犬病Gタンパク質のキメラウイルスcDNAコンストラクトである。
【0079】
これらのBACSでは、ウイルス発現カセットは、プラス鎖RNAウイルスゲノムのcDNA、典型的には、
上記cDNAの転写を開始する上記cDNAの5'末端に先行するRNAポリメラーゼ駆動プロモーターと、
上記ウイルスcDNAのRNA転写物を定められた位置で切断する上記cDNAの3'末端に続くRNA自己切断のためのエレメントと、
を含む。
【0080】
BACは、上記細菌人工染色体を酵母にシャトルして維持する酵母自律複製配列を更に含み得る。酵母ori配列の例は、2μプラスミドの起点若しくはARS1(自律複製配列1)又はそれらの機能的に相同な誘導体である。
【0081】
本発明のこの第1の態様のRNAポリメラーゼ駆動プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期(CMV-IE)プロモーター若しくはシミアンウイルス40プロモーター又はそれらの機能的に相同な誘導体等のRNAポリメラーゼIIプロモーターであり得る。
【0082】
RNAポリメラーゼ駆動プロモーターは同様に、RNAポリメラーゼIプロモーター又はRNAポリメラーゼIIIプロモーターであり得る。
【0083】
BACはまた、D型肝炎ウイルスのゲノムリボザイムのcDNA又は機能的に相同なRNAエレメント等のRNA自己切断のためのエレメントを含み得る。
【0084】
ワクチン調製物へのDNAの製剤化は当該技術分野で知られており、例えば、"DNA Vaccines" Methods in Molecular Medicine 第127版, (2006年) Springer Saltzman, Shen and Brandsma (編集)Humana Press.(ニュージャージー州トトワ(totowa))のチャプター6~10、及びVaccines(第6版)(2013年)(Plotkinら編)のAlternative vaccine delivery methods, 第1200頁~第1231頁のチャプター61に詳細に記載されている。DNAワクチンの調製に適した許容可能な担体、希釈剤、添加剤、及びアジュバントについての詳細は、以下に示されるように、国際公開第2005042014号にも見出され得る。
【0085】
「許容可能な担体、希釈剤、又は添加剤」は、特に免疫療法に関してヒト医学及び/又は獣医学で使用するのに許容可能な追加の物質を指す。
【0086】
例として、許容可能な担体、希釈剤、又は添加剤は、全身投与又は局所投与で安全に使用され得る固体又は液体の充填剤、希釈剤、又は封入物質であり得る。特定の投与経路に応じて、当該技術分野でよく知られる様々な担体を使用することができる。これらの担体は、糖類、デンプン、セルロース及びそれらの誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム及び炭酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張生理食塩水、並びに塩酸塩、臭化物、及び硫酸塩を含む無機酸塩等の塩、酢酸塩、プロピオン酸塩及びマロン酸塩等の有機酸、並びにパイロジェンフリー水を含む群から選択され得る。
【0087】
薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び添加剤を記載する有用な参考文献は、Remington's Pharmaceutical Sciences(MackPublishing Co.(米国ニュージャージー州)(1991年))(引用することにより本明細書の一部をなす)である。
【0088】
患者にDNAワクチンを供給するために、あらゆる安全な投与経路を使用することができる。例えば、経口、直腸、非経口、舌下、頬側、静脈内、関節内、筋肉内、皮内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内、経皮等を使用することができる。筋肉内注射及び皮下注射は、例えば、免疫療法組成物、タンパク質ワクチン、及び核酸ワクチンの投与に適切であり得る。微粒子銃法又はエレクトロポレーションが、核酸ワクチンの送達に特に有用であり得ることも企図されている。
【0089】
剤形には、錠剤、分散液剤、懸濁液剤、注射剤、溶液剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、エアロゾル剤、経皮パッチ剤等が含まれる。これらの剤形はまた、この目的のために特別に設計された制御放出デバイス又は更にこの様式で作用するように改変された他の形態のインプラントを注射又は移植することを含み得る。治療剤の制御放出は、例えば、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース等の或る特定のセルロース誘導体を含む疎水性ポリマーで該治療剤をコーティングすることによって達成され得る。さらに、制御放出は、他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はミクロスフェアを使用することによって達成され得る。
【0090】
経口投与又は非経口投与に適したDNAワクチンは、それぞれ予め決められた量のプラスミドDNAを含有するカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤、粉剤若しくは顆粒剤、又は水性液体、非水性液体中の溶液若しくは懸濁液、水中油型エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョン等の個別の単位として存在し得る。そのような組成物は、あらゆる薬学の方法によって調製され得るが、全ての方法は、上記の1つ以上の作用物質を1つ以上の必要成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般に、組成物は、DNAプラスミドを液体担体若しくは微細固体担体又はその両方と均一かつ密接に混合した後に、必要に応じて生成物を所望の表象へと成形することにより調製される。
【0091】
上記組成物は、投与製剤と適合可能な様式で、かつ有効な量で投与され得る。患者に投与される用量は、適切な期間にわたって患者に有益な奏効を引き起こすのに十分であるべきである。投与される作用物質(複数の場合もある)の量は、年齢、性別、体重、及びそれらの一般的な健康状態、医師の判断に依存する要因を含めて治療される被験体に依存し得る。さらに、DNAワクチンは、参照として示されるDarji et al. (2000) FEMSImmunol Med Microbiol 27, 341-349及びCicin-Sain et al.(2003) J Virol 77, 8249-8255によって例示される上記DNAプラスミドで形質転換されたサルモネラの弱毒化生株を使用するような細菌形質導入によって送達され得る。
【0092】
典型的には、DNAワクチンは、ヒトの予防免疫又は治療免疫に使用されるが、或る特定のウイルスについては、産業動物等の家畜及び伴侶動物を含む脊椎動物(典型的には、哺乳動物、鳥、及び魚)に対しても適用され得る。ワクチン接種は、サル、イヌ、マウス、ラット、鳥、及びコウモリ等のウイルス(人獣共通感染症)の生きた保有体である動物を想定している。
【0093】
或る特定の実施形態では、ワクチンは、アジュバント、すなわち、ワクチン組成物の免疫原性及び/又は効力を増強する1つ以上の物質を含み得る。しかしながら、生ワクチンは最終的に、ウイルス複製とは無関係の自然免疫応答を刺激し得るアジュバントによって害される可能性がある。適切なアジュバントの非限定的な例には、スクアラン及びスクアレン(又は動物由来のその他の油)、ブロックコポリマー、Tween-80等の界面活性剤、Quil A、Drakeol若しくはMarcol等の鉱油、落花生油等の植物油、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacteriumparvum)等のコリネバクテリウム由来のアジュバント、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)等のプロピオニバクテリウム由来のアジュバント、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)(カルメット・ゲラン桿菌、すなわちBCG)、インターロイキン2及びインターロイキン12等のインターロイキン、インターロイキン1等のモノカイン、腫瘍壊死因子、γ型インターフェロン等のインターフェロン、サポニン-水酸化アルミニウム又はQuil-A水酸化アルミニウム等の組み合わせ、リポソーム、ISCOMt)及びISCOMATRIX(B)アジュバント、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ムラミルジペプチド等の合成糖ペプチド若しくは他の誘導体、アブリジン、リピドA誘導体、硫酸デキストラン、DEAE-デキストラン若しくはリン酸アルミニウムと一緒に、Carbopol'EMA等のカルボキシポリメチレン、Neocryl A640等のアクリルコポリマーエマルジョン、ワクシニア若しくは動物ポックスウイルスタンパク質、コレラ毒素等のサブウイルス粒子アジュバント、又はそれらの混合物が含まれる。
【実施例
【0094】
実施例1. RabGのE/NS1への挿入
1.1. PLLAV-YFV17D-RabG-ERA
YF-E/NS1遺伝子間の遺伝子間領域に挿入された全長RabG(ERA株)を有する第1のコンストラクトを、以下のようにクローニングした:NS1の最初の9アミノ酸(27ヌクレオチド)をRabGシグナルペプチド(SP)の前に付加して、EとNS1との間のシグナルペプチダーゼ切断部位を再現し、RabGタンパク質の放出を可能にし、RabGのC末端は保存して、WNV-Eの第2の膜貫通ドメインに融合した(図1A)。
【0095】
連続継代及びプラーク精製されたYFV17D-RabG-ERA(E/NS1)ウイルスの配列分析により、ERA-RabGコーディング配列の始めに246塩基対の欠失(82アミノ酸)が明らかになったことから、このコンストラクトが安定でないことが示される。この欠失はRabGのシグナルペプチド(SP)の最初のアミノ酸から始まり、エピトープIIの一部だけでなくタンパク質フォールディングに必要とされる幾つかのジスルフィド架橋の損失も伴う。しかしながら、この弱毒化生YFV-ERA-RabG(E/NS1)ウイルスはマウスにおいてRABVに対する中和抗体を誘導することができ、それによりYF及び狂犬病の両方に血清転換した(図1C)。このΔ82-ERA-RabGタンパク質は免疫原性であると思われるので、プラーク精製されたウイルスに由来するcDNAを、誘導性oriを有する上記のBACベクターへとクローニングした(PLLAV-YFV17D)。13個のE.コリ(E.coli)クローンのシーケンシング後に、異なる突然変異を有する4つの変異体が検出された(それぞれpSYF17D-Δ82-ERA-RabG-ENS1の#1、#2、#9、及び#12、図2)。これらの新たなpSYF17D-Δ82-ERA-RabG(E/NS1)コンストラクトのそれぞれをBHK21J細胞にトランスフェクションさせた。それら全ては、典型的なウイルス誘導性の細胞変性効果(CPE)の一貫した誘導を示した。同様に、トランスフェクションされた細胞から採取されたウイルス上清には、特徴的なウイルス溶解プラークを形成し得る感染性粒子が含まれていた(図2)。cDNAの作製にも使用されたプラーク精製されたウイルスをAG129マウスに接種したところ、YFへの血清転換はあったが、狂犬病ウイルスに対する中和抗体は検出されなかった(図3)。したがって、これらのコンストラクトの更なるin vitro及び/又はin vivoでの特性評価を続行しなかった。
【0096】
1.2. PLLAV-YFV17D-RabG-CVS
ERA-RabGタンパク質は顕著なアポトーシスを誘導することが分かっている(Prehaud etal. (2003) J Virol. 77, 10537-10547)。非アポトーシス性の狂犬病チャレンジウイルス株(CVS)からのコドン最適化された全長RabGを、ERA株について記載したのと同じ構成でE/NS1間に挿入する(図4A)。
【0097】
このコンストラクトをBHK-21Jにトランスフェクションし、ウイルス誘導性のCPEを観察した。組織由来のウイルス上清は、CPE及びプラークを誘導することができた(図4B)。このコンストラクトに由来する3つのプラーク精製されたウイルスの更なる特性評価により、この場合に、RabG配列に欠失はないが、RabGタンパク質のシグナルペプチドに単一のヌクレオチド点突然変異が検出されることが明らかになった。この突然変異はアミノ酸フェニルアラニンをセリンに変えた(F14S)。コンストラクト及びプラーク精製されたウイルスでトランスフェクションした後に採取した組織培養されたウイルス上清をAG129マウスに接種して免疫原性を調べた。全てのマウスは、RABV及びYFVの両方に血清転換した(図5)。したがって、このCVS-RabG-F14Sは免疫原性であることが分かったため、プラーク精製されたウイルスに由来するcDNAをpShuttle-YF17D(PLLAV)へとクローニングし、この新たなコンストラクトを以前のコンストラクトについて上記で説明したように特性評価(CPE及びプラーク表現型決定)したところ、生存する完全な複製能力のある組換えトランスジェニックワクチンウイルスを放出可能であることが分かった。PLLAV-YFV17D-RabG-CVS-F14Sと並行してプラーク精製されたウイルスYF17D-CVS-RabG-F14SをAG129マウス(n=10)に注射したところ、4/10の動物及び9/10の動物がそれぞれRABV及びYFVの両方に血清転換した(表1及び図11)。この結果により、PLLAVYF17D-RabG(E/NS1)の免疫原性を改善するために、依然として更なるPLLAVの最適化が必要であることが示唆された。
【0098】
上記の実施例により、シグナルペプチド全体の欠失又はシグナルペプチドへの突然変異の導入のいずれか(either)によって当初のRabGタンパク質シグナルペプチドの非機能的変異体を得る圧が存在することが示された。
【0099】
したがって、発現されたRabGタンパク質の免疫原性を改善するためにRabGのSP配列を欠失させて、新たなsYF17D-RabGコンストラクトを作製した。
【0100】
実施例2. PLLAVYF17D-RabG-ΔSP(E/NS1)コンストラクト
RabGのシグナルペプチドは、上記タンパク質の免疫原性に関与している。RabGタンパク質は、導入遺伝子の適切な発現及びYFVベクターの複製を可能にするために、YFポリタンパク質の全体的なトポロジーに適合される必要がある(図6)。全長のRabGのSPの存在は、ウイルスコンストラクトへと1つの余分な膜貫通を追加することから、YFポリタンパク質のコンフォメーションが乱され、完全な抗原性に必要とされるRabGのネイティブなフォールディングに影響が及ぼされる。
【0101】
RabGERAΔSPを有する最適化されたコンストラクト(図3)を作製し、上記のようにin vitroで特性評価した(図7A)。YFVポリタンパク質と一緒にRabGが同時発現するのを確認することができ(図7B)、こうしてRabGの適切なフォールディングが示される。図1Aに示され、実施例1に記載されるコンストラクトと比較して、19個のN末端アミノ酸をコードする配列が欠失している。
【0102】
RT-PCRを実施してYF17D-RabGERAΔSPウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料において導入遺伝子挿入物を検出することによって、pShuttle-YF17D-RabGERAΔSP由来ウイルスの安定性を調べた(図8)。RT-PCR産物のシーケンシングにより、N末端欠損型のRabG挿入物が、突然変異せずに7継代まで検出され得ることが分かった。
【0103】
BACコンストラクトPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPの免疫原性を、このPLLAVを細胞にトランスフェクションした後に得られた組換えウイルスでIP接種した後のAG129マウス(n=5)においてinvivoで評価した(図9A)。このN末端欠損型のRabGコンストラクトに由来するウイルスでワクチン接種された全ての動物は、1回ワクチン接種後にYFV及びRABVの両方に血清転換した。狂犬病に対する血清中和抗体(SNA)価も10 IU/mlを超えることが判明した。引き続き、その抗体価は各ブースター後に増加した(図9B)。
【0104】
YF17D-RabGERAΔSPウイルスを用いて得られた結果を確認し、その対応する誘導性BACの免疫原性をin vivoで評価するために、並行して市販の狂犬病ウイルスワクチンRabipur(商標)を用いて1回ワクチン接種(0日目)及び2回ワクチン接種(-7日目及び0日目)後に新たな実験を実施した(図10)。第1世代のコンストラクトYF17D-CVS-RabG-F14Sの免疫原性を考慮して、この研究にPLLAV-YF17D-CVS-RabG-F14S BACも含めた(B.1セクションを参照)。YFV-17-NLucをYFワクチン接種についてのポジティブコントロールとして使用した(表3)。全ての操作はIPで実施した。
【0105】
血清学的分析により、YFV17D-RabGウイルスだけでなく、対応するBACSも抗YFV抗体及び抗RABV抗体を誘導し得ることが初めて明らかになった(表1及び図11)。BACコンストラクトPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPは、有効性(ワクチン接種から21日後にBAC対ウイルスワクチンについてn=9/10対n=8/9)及び動態(ワクチン接種からわずか7日後に抗体の誘導)において、抗YFV特異抗体及び抗RABV特異抗体の両方を誘導するYF17D-RabGERAΔSPウイルスワクチンと同等に強力であった。予想通り、YFV-17D-NLuc又はRabipurでワクチン接種された全ての動物は、それぞれワクチン接種後から7日目又は14日目にYFV又はRABVに血清転換した。YFV17D-RabG-CVS-F14Sウイルスワクチンも有効性(ワクチン接種から21日後のn=9/10の動物におけるYFV及びRABVに対する二重免疫応答)においてYFV17D-RabGERAΔSPと同等に強力な免疫応答を誘導したが、動態は遅延した(ワクチン接種から14日後の二重免疫応答)。さらに、PLLAV-YFV17D-RabG-CVS-F14SもYFV及びRABVに対する二重免疫応答を誘導したが、これは最適化されたコンストラクトと比較して、有効性が顕著により低く(n=4/10)、動態がより遅かった(ワクチン接種から21日後に開始)。Rabipur、YF17D-RabGERAΔSP、及びBACコンストラクトPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPによる1回ワクチン接種は、有効性(ワクチン接種から7日後に90%超の動物)及び大きさ(ワクチン接種から14日後)において同様の二重免疫応答を誘導し得た。Rabipurでの1回ワクチン接種はYF17D-RabGERAΔSP及びBACコンストラクトPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPより素早かったが(SNA、それぞれワクチン接種から7日後対14日後に10 IU/ml)、全ての動物ではワクチン接種後にWHO推奨の防御力価(0.5 IU/ml)よりも有意により高い免疫応答が明らかとなった。Rabipurの2回ワクチン接種レジメン(-7日目及び0日目)では、1回のYF17D-RabGERAΔSP及びBACコンストラクトPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPのワクチン接種と比較して、RABVに対して有意により高い免疫応答が明らかとなった。これにより、Rabipurに対する比較的低い免疫応答は、むしろワクチン接種のためのYF17D-RabGERAΔSP及びPLLAV-YF17D-RabGERAΔSPの有効用量の最適化に関連しており、用量漸増試験で最適化することができることが示される。
【0106】
表1:AG129マウスにおける第2世代のYFV-RabGコンストラクトに対する死亡率及び血清学的応答
【表1】

Day 7 7日目
Day 14 14日目
Day 21 21日目
Day 28 28日目
survival 生存
Anti-YFV-IgG 抗YFV-IgG
Anti-RABV nb 抗RABV nb
rabipurTM rabipur(商標)
2-shots 2ショット
1-shot 1ショット
*Rabipur(商標) 2ショット:これらのマウスをRabipur(商標)でワクチン接種し、7日後に同じ条件でブーストを行った。したがって、これらの動物についての7日目、14日目、21日目、及び28日目は、ブーストを行ってから7日後、14日後、21日後、及び28日後と一致している。
【0107】
PLLAV-YFV17D-RabGERAΔSPに加えて、CVS株からのRabG配列を有する同様のコンストラクト(ΔSP)を作製した。さらに、文献(上記引用のBonaldo et al. (2007)、Trindade etal. (2012) Mem Inst Oswaldo Cruz 107, 262-272)には、YFタンパク質のEとNS1との間に挿入されたタンパク質が、YFV又は一般にフラビウイルスに見られる保留シグナル、すなわち論文(Op DeBeeck et al (2004) J Virol. 78, 12591-125602、Op De Beeck et al.(2003) J Virol. 77, 813-820)に記載される挿入物の末端にある膜貫通ドメインのおかげでER中に保留され得る可能性があるかもしれないと記載されている。本発明者らは、YFのTM1とは異なるシグナルを有する本発明者らのコンストラクト内にRabGの当初の膜貫通ドメインを保存したが、ER保留シグナルを補償するために2A自己切断ペプチドをRabGの細胞質テールの末端に付加して、更に2つのPLLAV(ERA-ΔSP及びCVS-ΔSP RabG)をクローニングした。
【0108】
予想外にも、非特許文献3(上記引用)によって提案された最適なRabG発現とは対照的に、YFV17D-RabGERAΔSP/2Aの複製能力は、2Aを欠如するYFV17D-RabGERAΔSPウイルスと比較した場合に、それぞれYFV17D-RabGERAΔSP/2Aの場合に0.8×104~1.4×104のTCID50/mLの力価及びYFV17D-RabGERAΔSPの場合に8×105のTCID50/mLの力価によって例示されるウイルス力価測定によって測定されるように、BHK21J細胞へのBACのトランスフェクション後のウイルス収量に関してはるかにより低かった。pShuttle-YFV17D-RabGCVSΔSP/2A対pShuttle-YFV17D-RabGcvsΔSPについては、同様のウイルス収量の減少が見られた。
【0109】
しかしながら、YFV17D-RabGERAΔSP/2A(ウイルス)でワクチン接種されたAG129マウス(n=9)は、狂犬病及びYFの両方に血清転換した(9匹中7匹のマウス)。
【0110】
実施例3. ChimeriVax-JE-RabG
PLLAV-YF17D-RabGERAΔSP(図6)の作製で得られた知識に基づいて、最適化されたGタンパク質配列(RabGERAΔSP)を有する最適化された狂犬病/ChimeriVax-JE PLLAVワクチンコンストラクトを作製した。このコンストラクトは、RABV、JEV、及びYFVに対して特異的な免疫応答を誘導することが予想される。
【0111】
RabGERAΔSP配列をPLLAV ChimeriVax-JEバックボーンに導入して、PLLAV ChimeriVaxJE-RabGワクチンコンストラクトを作製した(図12A)。このPLLAV ChimeriVax-JEは、日本脳炎LAVウイルス(JE SA14-14-2)のprME(表面糖タンパク質)コーディング領域を有している。RabGERAΔSP配列を、JE-E遺伝子とYF17D-NS1遺伝子との間に挿入した。
【0112】
PLLAV ChimeriVaxJE-RabGをBHK21J細胞へとトランスフェクションしたところ、典型的なCPEが観察されただけでなく、これらから採取されたウイルス上清はYFV17Dのプラーク表現型と比較して著しく小さいプラークを形成した(図12B)。したがって、得られたキメラ(JEV/YFV)トランスジェニック(RabG)ウイルスは更に弱毒化されており、狂犬病/キメラ(JEV/YFV)PLLAVコンストラクトからのウイルス収量は、相同の狂犬病/YFV PLLAVからのウイルス収量の少なくとも100分の1未満であった。
【0113】
RT-PCRを実施してChimeriVaxJE-RabGウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料において導入遺伝子挿入物を検出することによって、PLLAV ChimeriVaxJE-RabGの安定性を調べた(図12C)。RT-PCR産物のシーケンシングにより、突然変異を有しないRabG挿入物が、少なくとも継代4(更なる継代が分析されることとなる)まで検出され得ることが分かった。
【0114】
PLLAV-ChimeriVaxJE-RabGの免疫原性に関して、このPLLAVで細胞をトランスフェクションした後に得られた組換えウイルスを、IP接種後のAG129マウス(n=9)においてinvivoで評価した(図13A)。JEV、YFV、及びRABVに特異的な抗体応答を、間接免疫蛍光アッセイ(IIFA)(Euroimmune YFV及びJEV)及び/又は血清中和アッセイ(SNA)(JEV及びRABV)によって定量化した。
【0115】
ワクチン接種されたマウスを罹患率/死亡率について毎日監視し、血清学的分析のためにベースライン及び2週間間隔で血液採取した。一部の動物(9匹中4匹のマウス)には、最初のワクチン接種と同じ用量及び経路を使用して、ChimeriVaxJE-RabG(ウイルス)による最初の接種から2週間後にブーストを行った(図13A)。
【0116】
ChimeriVaxJE-RabGの免疫原性分析により、細胞培養由来ウイルスのIP投与によりワクチン接種された9匹中8匹のマウスが、ワクチン接種から14日後にJEV、YFV、及びRABVに血清転換したことが明らかになった(図13B)。さらに、0.5 IU/mlを上回る抗RABV抗体を、ワクチン接種後から7日目に2匹のウイルスワクチン接種マウスで検出することができ、4匹の動物では0.48 IU/mlの抗体価が既に同時に観察された。注目すべきことに、WHOガイドラインによれば、ワクチン接種後の適切な血清転換の尺度として、0.5IU/mlの最小血清抗体濃度が使用される。さらに、JEVのSNA試験(ワクチン接種後から42日目に採取された血清試料)により、IIFAによって結合抗体が検出された8匹のマウスにおいてJEVに対する中和抗体の存在が確認された。さらに、ワクチンの安全性に関しては、AG129マウスにワクチンウイルスを接種した後に死亡は観察されなかった。
【0117】
これらの結果により、1.2 PFUという低い用量でさえ、JEV、RABV、及びYFVの3つのウイルスに対して強力な免疫応答を誘導することが分かった。
【0118】
実施例4. ChimeriVax-ZIK-RabG
PLLAV ChimeriVaxJE-RabGについて記載したのと同様に、最適化されたGタンパク質配列(RabGERAΔSP)を有する最適化された狂犬病/ChimeriVax-ZIKV PLLAVワクチンコンストラクトを作製した。このコンストラクトは、RABV、ZIKV、及びYFVに対して特異的な免疫応答を誘導することが予想される。
【0119】
このRabGERAΔSP配列をPLLAV ChimeriVax-ZIKVバックボーンに導入して、PLLAV ChimeriVaxZIKV-RabGワクチンコンストラクトを作製した(図14A)。このPLLAV ChimeriVax-ZIKVは、ジカウイルス(アジア系譜、2007年のヤップ島、Genbank EU545988)のprME(表面糖タンパク質)コーディング領域を有している。RabGERAΔSP配列を、ZIKV-E遺伝子とYF17D-NS1遺伝子との間に挿入した。
【0120】
PLLAV ChimeriVaxZIKV-RabGをBHK21J細胞へとトランスフェクションしたところ、典型的なCPEが観察されただけでなく、これらから採取されたウイルス上清はYFV17Dのプラーク表現型と比較して著しく小さいプラークを形成した(図14B)。したがって、得られたキメラ(ZIKV/YFV)トランスジェニック(RabG)ウイルスは更に弱毒化されており、狂犬病/ZIKV PLLAVコンストラクトからのウイルス収量は、相同の狂犬病/YFV PLLAVからのウイルス収量の少なくとも100分の1未満であった。
【0121】
RT-PCRを実施してChimeriVaxJE-RabGウイルスの連続継代の間に採取されたウイルス試料において導入遺伝子挿入物を検出することによって、PLLAV ChimeriVaxZIKV-RabGの安定性を調べた(図14C)。RT-PCR産物のシーケンシングにより、突然変異を有しないRabG挿入物が、継代2まで検出され得たことが分かった。
【0122】
コンストラクトPLLAV-ChimeriVaxZIKV-RabG及びこのPLLAVで細胞をトランスフェクションした後に得られた組換えウイルスの免疫原性を、IP接種後のAG129マウス(n=5)においてinvivoで評価した(図15A)。ZIKV、YFV、及びRABVに特異的な抗体応答を、間接免疫蛍光アッセイ(IIFA)(Euroimmune YFV及びZIKV)及び/又は血清中和アッセイ(SNA)(ZIKV及びRABV)によって定量化した。
【0123】
ワクチン接種されたマウスを罹患率/死亡率について毎日監視し、血清学的分析のためにベースライン及び2週間間隔で血液採取した。
【0124】
ChimeriVaxZIKV-RabGの免疫原性分析により、細胞培養由来ウイルスでワクチン接種(i.p.)された全てのマウスが、ワクチン接種から17日後にZIKV、YFV、及びRABVに血清転換したことが明らかになった(図15B)。ワクチン接種後から28日目に実施されたZIKVのSNA(データは示していない)により、抗体の結合について陽性(IIFA)であった細胞培養由来ウイルスでワクチン接種された5匹中4匹のマウスにおいてZIKVに対する中和抗体の存在が確認された。
【0125】
さらに、ワクチンの安全性に関しては、AG129マウスにワクチンウイルスを接種した後に死亡は観察されなかった。
【0126】
結論として、ChimeriVaxZIKV-RabGは、YF17D-RabGと比較してかなり弱毒化されているにもかかわらず、ZIKVウイルス、YFVウイルス、及びRABVウイルスに対して強力な免疫応答を誘導した。
【0127】
実施例5. キメラフラビウイルスバックボーンを有するコンストラクト
リッサウイルスGタンパク質を含み、フラビウイルスバックボーン自体が2つの異なるフラビウイルスのキメラ(chimera)である種々のコンストラクトを作製する。図16は、バックボーンが黄熱ウイルス、ジカウイルス、又は日本脳炎ウイルスの部分を含み得る例示的なコンストラクトの概要を示している。
【0128】
これにより、リッサウイルス及び2つ以上のフラビウイルスに対する防御をもたらすワクチンを生産することができる。これは表2に示され、そこには、ワクチンのどの部分が体液性免疫、細胞性免疫、及び中和抗体を与えるかが示されている。
【0129】
表2. キメラバックボーンを有するコンストラクトの免疫応答
【表2】
Construct No. コンストラクト番号
Humoral immunity against Lyssavirus G protein リッサウイルスGタンパク質に対する体液性免疫
CMI against Lyssavirus G protein リッサウイルスGタンパク質に対するCMI
nAb against Flavivirus prME フラビウイルスprMEに対するnAb
Humoral immunity against backbone バックボーンに対する体液性免疫
CMI against backbone バックボーンに対するCMI
None なし
phylogroup I 系統群I
phylogroup II 系統群II
phylogroup III 系統群III
[RabG - rabies virus G protein; CMI - cellmediated immunity; nAb - neutralizing antibody; prME - Flavivirus surfaceglycoproteins; YFV - yellow fever virus] (RabG - 狂犬病ウイルスGタンパク質、CMI - 細胞性免疫、nAb - 中和抗体、prME - フラビウイルス表面糖タンパク質、YFV - 黄熱ウイルス)
【0130】
本出願に記述される配列の概要
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】

【表3-5】
配列番号3:YF-Eタンパク質のC末端部分
配列番号6:NS1のN末端の9アミノ酸
配列番号7:RabGのN末端部分(シグナルペプチドなし)
配列番号10:狂犬病糖タンパク質GのC末端部分
配列番号11:狂犬病糖タンパク質GのTMドメイン
配列番号12:Rab細胞質C末端
配列番号14:YFのNS1のN末端部分
配列番号15:狂犬病糖タンパク質GのIIbエピトープ
配列番号16:狂犬病ウイルスの糖タンパク質G(ERA株にコドン最適化)
配列番号17:RabGタンパク質配列(シグナルペプチド)
配列番号18:狂犬病糖タンパク質Gのアミノ酸1~18
配列番号19:狂犬病糖タンパク質GのTMドメイン
配列番号20:RABGの細胞質テール
配列番号21:YFVのNS1シグナルペプチド-狂犬病糖タンパク質Gの接合部
配列番号22:WNVのTM2-NS1シグナル配列-YFVの接合部
【符号の説明】
【0131】
図面訳
図1
9 aa NS1 NS1の9アミノ酸
Plaques stained at 6dpi 感染6日後に染色されたプラーク
BHK-21J cells BHK-21J細胞
bleeding 採血
boosted ブースト
termination 終了
or 又は
plasmid プラスミド
AG129 mice AG129マウス
n=3 each それぞれn=3
Day 14 14日目
Day 28 28日目
Day 42 42日目
Condition 条件
survival 生存
Anti-YFV IgG 抗YFV IgG
Anti-RABV nAb 抗RABV nAb

図2
Clone 9 クローン9
Constructs insertion in YF E/NS1 D82 YF E/NS1 D82におけるコンストラクトの挿入
3 mutations in RabG RabGにおける3つの突然変異
1 mutation in TM-WNV TM-WNVにおける1つの突然変異
1 mutation in RabG RabGにおける1つの突然変異
1 mutation in YF-E TM-1 YF-E TM-1における1つの突然変異
1 mutation in YF-E TM-2 YF-E TM-2における1つの突然変異
No mutation 突然変異なし

図3
bleeding 採血
boosted ブースト
Day -35 -35日目
Day -14 -14日目
Day 0 0日目
Day 14 14日目
Day 21 21日目
Day 28 28日目
AG129 mice AG129マウス
1/10 human dose ヒト用量の1/10
Neutralzing antibodies titer 中和(正:Neutralizing)抗体価
Day 15 15日目
Day 22 22日目

図4
9 aa NS1 NS1の9アミノ酸

図5
Virus 4dpt or purified from plaque 1 トランスフェクション4日後のウイルス又はプラーク1から精製されたウイルス
bleeding 採血
boosted ブースト
termination 終了
AG129 mice AG129マウス
n=3 each それぞれn=3
Day 14 14日目
Day 28 28日目
Day 42 42日目
Condition 条件
survival 生存
Anti-YFV IgG 抗YFV IgG
Anti-RABV nAb 抗RABV nAb
YFV 17D-coCVS-RabG 4dpt トランスフェクション4日後のYFV 17D-coCVS-RabG
dead 死亡
YFV 17D-coCVS-RabG Plaque purified プラーク精製されたYFV 17D-coCVS-RabG
mutation 突然変異

図6
ER lumen ER内腔
Cytosol 細胞質ゾル
9 aa NS1 NS1の9アミノ酸

図7
Merge マージ

図8
Whole insert 挿入物全体
Passage 1 継代1
Passage 2 継代2
Passage 6 継代6
Passage 7 継代7
Passage 8 継代8
Passage 9 継代9
Passage 10 継代10

図9
Virus 4dpt トランスフェクション4日後のウイルス
bleeding 採血
boosted ブースト
termination 終了
AG129 mice AG129マウス
n=5 each それぞれn=5
Day 14 14日目
Day 28 28日目
Day 42 42日目
Neutralizing antibodies titer 中和抗体価

図10
AG129 mice AG129マウス
Day -7 -7日目
Day 0 0日目
Day 7 7日目
Day 14 14日目
Day 21 21日目
Day 28 28日目
#animals 動物数
Rabipur 2 shots (1/10 human dose) Rabipur 2ショット(ヒト用量の1/10)
Rabipur 1 shot (1/10 human dose) Rabipur 1ショット(ヒト用量の1/10)
YF17D-NLuc virus YF17D-NLucウイルス
YF17D-RabGERA(DSP) virus YF17D-RabGERA(DSP)ウイルス
YF17D-CVS-F14S plaque purified プラーク精製されたYF17D-CVS-F14S
1 vaccination 1回ワクチン接種
Boosting ブースト
Bleeding 採血

図11
Neutralizing antibody titer 中和抗体価
Rabipur 2-shots Rabipur 2ショット
Rabipur 1-shot Rabipur 1ショット
Day 7 7日目
Day 14 14日目
Day 21 21日目
Day 28 28日目

図12
9 aa NS1 NS1の9アミノ酸
Whole insert 挿入物全体
Passage 1 継代1
Passage 2 継代2
Passage 4 継代4

図13
Virus ウイルス
AG129 mice AG129マウス
bleeding 採血
4 mice were boosted 4匹のマウスにブーストを行った
termination 終了
Day 7 7日目
Day 14 14日目
Day 28 28日目
Day 42 42日目
Condition 条件
Survival 生存
Anti-JEV IgG 抗JEV IgG
Anti-YFV IgG 抗YFV IgG
Anti-RABV nAb 抗RABV nAb

図14
9 aa NS1 NS1の9アミノ酸
Whole insert 挿入物全体
Passage 1 継代1
Passage 2 継代2
Passage 4 継代4

図15
Virus ウイルス
AG129 mice AG129マウス
bleeding 採血
termination 終了
Day 17 17日目
Day 28 28日目
Day 42 42日目
Condition 条件
Survival 生存
Anti-ZIKV IgG 抗ZIKV IgG
Anti-YFV IgG 抗YFV IgG
Anti-RABV nAb 抗RABV nAb

図16
phylogroup I 系統群I
phylogroup II 系統群II
phylogroup III 系統群III
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
【配列表】
0007240029000001.app