(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230308BHJP
H02M 7/49 20070101ALI20230308BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 Z
H02M7/49
(21)【出願番号】P 2019080719
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2021-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 智之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 航平
(72)【発明者】
【氏名】花岡 勇
(72)【発明者】
【氏名】伊村 正幸
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/087891(WO,A1)
【文献】特開平11-144603(JP,A)
【文献】特開2015-115974(JP,A)
【文献】特開2015-115975(JP,A)
【文献】特開2009-136098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の単位変換器を含む電力変換器
を備え、
前記複数の単位変換器は、
コンデンサと、
前記コンデンサを充放電するスイッチング回路と、
前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続さ
れた第1ヒューズおよび第2ヒューズを含
む第1並列回路と、
前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続さ
れた第3ヒューズおよび第4ヒューズを含む第2並列回路と、
前記コンデンサの高電位側の端子と前記スイッチング回路の高電位側の端子とを接続する第1配線部材と、
前記コンデンサの低電位側の端子と前記第1並列回路の一方の端子とを接続する第2配線部材と、
前記第1並列回路の他方の端子と前記スイッチング回路の低電位側の端子とを接続する第3配線部材と、
前記スイッチング回路の低電位側の端子と前記第2並列回路の一方の端子とを接続する第4配線部材と、
前記第2並列回路の他方の端子と前記コンデンサの低電位側の端子とを接続する第5配線部材と、
をそれぞれ含み、
前記第1ヒューズ、前記第2ヒューズ、前記第3ヒューズおよび前記第4ヒューズは、同一平面上で、それぞれに電流が流れる方向に平行に配置され、
前記第2配線部材および前記第4配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなり、
前記第3配線部材および前記第5配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなり、
前記第2配線部材、前記第1並列回路および前記第3配線部材の組、ならびに、前記第4配線部材、前記第2並列回路および前記第5配線部材の組は、
前記第1並列回路および前記第2並列回路の間
であって前記同一平面上の点を点対称の中心にして点対称の位置に配置され
、
前記コンデンサから前記第2配線部材を介して前記第1並列回路の一方の端子に電流が流入する場合には、前記コンデンサから前記第5配線部材を介して前記第2並列回路の他方の端子に電流が流入し、
前記スイッチング回路から前記3配線部材を介して前記第1並列回路の他方の端子に電流が流入する場合には、前記スイッチング回路から前記第4配線部材を介して前記第2並列回路の一方の端子に電流が流入する電力変換装置。
【請求項2】
直列に接続された複数の単位変換器を含む電力変換器
を備え、
前記複数の単位変換器は、
コンデンサと、
前記コンデンサを充放電するスイッチング回路と、
前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続さ
れた第1ヒューズおよび第2ヒューズを含
む第1並列回路と、
前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続さ
れた第3ヒューズおよび第4ヒューズを含む第2並列回路と、
前記コンデンサの低電位側の端子と前記スイッチング回路の低電位側の端子とを接続する第1配線部材と、
前記コンデンサの高電位側の端子と前記第1並列回路の一方の端子とを接続する第2配線部材と、
前記第1並列回路の他方の端子と前記スイッチング回路の高電位側の端子とを接続する第3配線部材と、
前記スイッチング回路の高電位側の端子と前記第2並列回路の一方の端子とを接続する第4配線部材と、
前記第2並列回路の他方の端子と前記コンデンサの高電位側の端子とを接続する第5配線部材と、
をそれぞれ含み、
前記第1ヒューズ、前記第2ヒューズ、前記第3ヒューズおよび前記第4ヒューズは、同一平面上で、それぞれに電流が流れる方向に平行に配置され、
前記第2配線部材および前記第4配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなり、
前記第3配線部材および前記第5配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなり、
前記第2配線部材、前記第1並列回路および前記第3配線部材の組、ならびに、前記第4配線部材、前記第2並列回路および前記第5配線部材の組は、
前記第1並列回路および前記第2並列回路の間
であって前記同一平面上の点を点対称の中心にして点対称の位置に配置され
、
前記コンデンサから前記第2配線部材を介して前記第1並列回路の一方の端子に電流が流入する場合には、前記コンデンサから前記第5配線部材を介して前記第2並列回路の他方の端子に電流が流入し、
前記スイッチング回路から前記3配線部材を介して前記第1並列回路の他方の端子に電流が流入する場合には、前記スイッチング回路から前記第4配線部材を介して前記第2並列回路の一方の端子に電流が流入する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流を直流に変換し、あるいは直流を交流に変換する電力変換装置がある。このような電力変換装置は、大容量化がはかられ、たとえば基幹系の電力網に用いられることがある。
【0003】
自己消弧形の半導体スイッチング素子を用いることによって小型化をはかりつつ、大容量化を実現することができる電力変換方式として、モジュラーマルチレベルコンバータ(Modular Multilevel Converter、MMC)の実用化が進められている。
【0004】
MMCは、多数の直列接続された単位変換器(セル)を有する。各セルは、スイッチング素子によって充放電する大容量のコンデンサを含んでいる。スイッチング素子が短絡故障した場合には、コンデンサから大電流が流れることによってスイッチング素子が爆発する等の不具合を防止するために、電流経路にヒューズを挿入する場合がある。
【0005】
基幹系に用いられるMMCでは、長寿命化の観点からヒューズに流す電流を適切にディレーティングする必要がある。そのために、ヒューズを複数個並列に接続することがある。
【0006】
セルの短絡防止用に用いられるヒューズは、接続ブスの途中に挿入するため、接続ブスや配線によって生じるインダクタンスに相違が生じ、ヒューズに流れる電流や、接続ブスに流れる往復の電流にアンバランスが生じるおそれがある。
【0007】
ヒューズを並列接続する場合には、各ヒューズと接続ブスとを接続する配線やヒューズ自体のインダクタンスによって、さらにアンバランスな電流を生じたり、配線のインダクタンスによって過大なサージ電圧が発生したりする。
【0008】
並列に接続した複数個のヒューズに電流が流れると、他方の発熱が自己の遮断電流に影響をおよぼす等の事態も生じ得る。
【0009】
ヒューズを並列に接続して長寿命化をはかりつつ、ヒューズの挿入によるセルの性能や機能に対する影響を抑制した電力変換装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実施形態は、並列に接続したヒューズを挿入しても、単位変換器の性能への影響を抑制した電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に係る電力変換装置は、直列に接続された複数の単位変換器を含む電力変換器を備える。前記複数の単位変換器は、コンデンサと、前記コンデンサを充放電するスイッチング回路と、前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続された第1ヒューズおよび第2ヒューズを含む第1並列回路と、前記コンデンサと前記スイッチング回路との間で並列に接続された第3ヒューズおよび第4ヒューズを含む第2並列回路と、前記コンデンサの高電位側の端子と前記スイッチング回路の高電位側の端子とを接続する第1配線部材と、前記コンデンサの低電位側の端子と前記第1並列回路の一方の端子とを接続する第2配線部材と、前記第1並列回路の他方の端子と前記スイッチング回路の低電位側の端子とを接続する第3配線部材と、前記スイッチング回路の低電位側の端子と前記第2並列回路の一方の端子とを接続する第4配線部材と、前記第2並列回路の他方の端子と前記コンデンサの低電位側の端子とを接続する第5配線部材と、をそれぞれ含む。前記第1ヒューズ、前記第2ヒューズ、前記第3ヒューズおよび前記第4ヒューズは、同一平面上で、それぞれに電流が流れる方向に平行に配置される。前記第2配線部材および前記第4配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなる。前記第3配線部材および前記第5配線部材は、インダクタンスが同一となるように同一の長さを有する同一形状の部材からなる。前記第2配線部材、前記第1並列回路および前記第3配線部材の組、ならびに、前記第4配線部材、前記第2並列回路および前記第5配線部材の組は、前記第1並列回路および前記第2並列回路の間であって前記同一平面上の点を点対称の中心にして点対称の位置に配置される。前記コンデンサから前記第2配線部材を介して前記第1並列回路の一方の端子に電流が流入する場合には、前記コンデンサから前記第5配線部材を介して前記第2並列回路の他方の端子に電流が流入する。前記スイッチング回路から前記3配線部材を介して前記第1並列回路の他方の端子に電流が流入する場合には、前記スイッチング回路から前記第4配線部材を介して前記第2並列回路の一方の端子に電流が流入する。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態では並列に接続したヒューズを挿入しても、単位変換器の性能への影響を抑制した電力変換装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を例示するブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の電力変換装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した側面図である。
図3(b)は、
図3(a)の実体配線図を等価回路として例示した模式図である。
【
図4】
図4(a)は、第2の実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した平面図であり、
図4(b)は側面図である。
【
図5】第3の実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した側面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、第4の実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0017】
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置を例示するブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置10は、電力変換器20を備える。電力変換装置10は、このほか図示しないが制御装置を備えており、電力変換器20は、制御装置によって制御される。電力変換装置10は、電力変換器20に設けられた交流端子21a~21cを介して、交流系統1に接続される。この例のように、電力変換装置10は、変圧器2を介して交流系統1に接続されてもよい。たとえば、交流系統1は、三相または単相の50Hz若しくは60Hzの電源、負荷および交流送電線を備える構成とすることができる。電力変換装置10は、直流系統3に接続される。直流系統3は、たとえば直流送電線等を含む。
【0020】
電力変換装置10は、交流系統1と直流系統3との間に接続されて、双方向の電力変換を行うことができる。電力変換装置10は、双方向の電力変換を行う場合に限らず、交流から直流、または、直流から交流の一方向の電力変換を行う場合を含んでもよい。
【0021】
電力変換器20は、三相交流の各相に対応したアーム22を含む。2つのアーム22は、直流端子21d,21e間で直列に接続されている。アーム22には、変圧器24が直列に接続されている。変圧器24に代えてバッファリアクトルを接続してもよい。
【0022】
アーム22は、複数の単位変換器30を含む。複数の単位変換器30は、カスケード接続されている。
【0023】
図2は、本実施形態の電力変換装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
【0024】
図2には、電力変換装置10の単位変換器(セル)30の具体的な構成が示されている。
【0025】
図2に示すように、セル30は、端子31a,31bを含む。セル30は、端子31a,31bを介して、他のセル30に接続され、あるいは、端子21d,21eに接続される。
【0026】
セル30は、スイッチング回路32aと、コンデンサ32dと、ヒューズ33と、を含む。スイッチング回路32aおよびコンデンサ32dは、ブスバー35a、ブスバー35b1、ヒューズ33、およびブスバー35b2によって、相互に接続されている。
【0027】
ブスバー35a,35b1,35b2は、スイッチング回路32aとコンデンサ32dとの間に設けられた板状の導電部材である。ブスバー35a,35b1,35b2は、スイッチング回路32aの端子からコンデンサ32dの端子へ延びている。ブスバー35aは、スイッチング回路32aおよびコンデンサ32dのそれぞれの高電位側を接続し、ブスバー35b1,35b2は、スイッチング回路32aおよびコンデンサ32dのそれぞれの低電位側を接続している。
【0028】
ブスバー35b1,35b2は、接続部35c1,35c2をそれぞれ有している。接続部35c1,35c2の間にヒューズ33がその接続配線36a,36bを介して接続されている。これによって、スイッチング回路32aおよびコンデンサ32dの低電位側が電気的に接続される。スイッチング回路32a等が短絡故障した場合には、ヒューズ33が溶断して、スイッチング回路32aおよびコンデンサ32dからなる回路に流れる短絡電流を遮断する。
【0029】
ヒューズ33は、端子33a,33bを含む。2つのヒューズ33は、端子33a,33bによって、接続配線36a,36bにそれぞれ接続されている。この例では、2つのヒューズ33が並列に接続されている。複数のヒューズ33が並列に接続されることによって、通常運転時の電流が分流され、1つあたりのヒューズ33に流れる電流は並列数に応じてディレーティングされる。
【0030】
スイッチング回路32aは、スイッチング素子32bと、ダイオード32cと、を含む。スイッチング素子32bは、直列に接続されている。スイッチング素子32bの直列回路がコンデンサ32dに並列に接続されている。ダイオード32cは、スイッチング素子32bに逆並列にそれぞれ接続されている。スイッチング素子32bは、IGBT等の自己消弧形の半導体素子であり、制御装置から供給されるゲート信号に応じて、オンオフしてコンデンサ32dを充放電する。ダイオード32cは、還流ダイオードとして動作する。
【0031】
スイッチング回路32aは、たとえばスイッチング素子32bおよびダイオード32cを含むスタックや半導体モジュール等である。つまり、スイッチング回路32aでは、スイッチング素子32bやダイオード32cが必要な耐圧や電流等の性能を実現するように組み合わされる等して収納されている。なお、スイッチング素子32bやダイオード32cは、単一のパッケージやスタック構造にすべて収納されている場合に限らず、たとえば、スイッチング素子32bのスタックにダイオード32cが接続され、実質的に一体である場合も含む。
【0032】
また、スイッチング回路32aは、上述のハーフブリッジ構成の場合について説明するが、ハーフブリッジ構成に限らず、フルブリッジ構成であってももちろんよい。
【0033】
本実施形態の電力変換装置の構成について、より詳細に説明する。
【0034】
図3(a)は、本実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した側面図である。
図3(b)は、
図3(a)の実体配線図を等価回路として例示した模式図である。
【0035】
図3(a)および
図3(b)には、セル130の実体配線図および等価回路図がそれぞれ模式的に示されている。
【0036】
図3(a)および
図3(b)に示すように、セル130は、2つのコンデンサ132dと、これらのコンデンサ132dの間に配置されたスイッチング回路32aを有する。2つのコンデンサ132dは、ほぼ同一の形状を有している。好ましくは、2つのコンデンサ132dは、ほぼ同一の静電容量を有する。この例では、スイッチング回路32aおよびコンデンサ132dは、いずれも長方形状または円柱形状であり、長手方向がXY平面に垂直な方向を向くように配置されている。
【0037】
スイッチング回路32aおよびコンデンサ132dの長手方向をZ軸方向とした場合には、スイッチング回路32aおよびコンデンサ132dの実装される面における占有面積をより小さくすることができる。スイッチング回路32aおよびコンデンサ132dの長手方向をXY平面に平行になるように配置してももちろんよい。
【0038】
セル130では、一方のコンデンサ132dとスイッチング回路32aとの間にヒューズ33を有する。他方のコンデンサ132dとスイッチング回路32aとの間にもヒューズ33を有する。ヒューズ33の一方の端子33aはスイッチング回路32aの側に配置され、他方の端子33bはコンデンサ132dの側に配置されている。
【0039】
この例では、2つのコンデンサ132d、スイッチング回路32a、および2つのヒューズ33は、1つのXY平面上に配置されている。また、この例では、XY平面上をX軸に沿って、コンデンサ132d、ヒューズ33、スイッチング回路32a、ヒューズ33およびコンデンサ132dの順にほぼ直線状に配置されている。
【0040】
一方のコンデンサ132dの高電位側の端子132daとスイッチング回路32aの高電位側の端子32aHとの間は、ブスバー135aによって電気的に接続されている。一方のコンデンサ132dの低電位側の端子132dbとヒューズ33の端子33bとの間は、ブスバー135b2によって電気的に接続されている。ヒューズ33の端子33aとスイッチング回路32aの低電位側の端子32aLとの間は、ブスバー135b1によって電気的に接続されている。
【0041】
他方のコンデンサ132dの高電位側の端子132daとスイッチング回路32aの高電位側の端子32aHとの間は、ブスバー135aによって電気的に接続されている。他方のコンデンサ132dの低電位側の端子132dbと他方のコンデンサ132dの側に設けられたヒューズ33の端子33bとの間は、ブスバー135b2によって電気的に接続されている。他方のコンデンサ132d側に設けられたヒューズ33の端子33aとスイッチング回路32aの低電位側の端子32aLとの間は、ブスバー135b1によって電気的に接続されている。
【0042】
なお、この図では省略されているが、
図2(a)で示したように、ブスバー135b1,135b2は接続部をそれぞれ有しており、それらの接続部と端子33a,33bとの間は、ほぼ同一の長さおよび形状を有する配線でそれぞれ接続されている。
【0043】
2つのコンデンサ132dとスイッチング回路32aとの間に設けられている各ブスバーは、ほぼ同一の形状を有している。コンデンサ132dやスイッチング回路32aの各端子は、高電位側および低電位側でそれぞれほぼ同じ位置(高さ)に設けられている。そのため、コンデンサ132d、スイッチング回路32aおよびヒューズ33の組のそれぞれは、対称線C1に関して線対称の位置に配置されていることとなる。
【0044】
好ましくは、ブスバー135a,135b1は、たとえば絶縁板を介して密着され、または近接して設けられている。ブスバー135a,135b2も、絶縁板を介して密着され、または近接して設けられている。
【0045】
本実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
【0046】
本実施形態の電力変換装置のセル130では、コンデンサ132d、ヒューズ33、スイッチング回路32a、ヒューズ33およびコンデンサ132dの順に配置されるとともに、スイッチング回路32aのZ軸方向の中心を対称線C1として、X軸方向の正負の側に線対称となるように配置されている。そして、ブスバー135a,135b1,135b2は、それぞれの接続先との間を最短の長さで接続するように設けられている。したがって、線対称の位置にあるブスバー135a,135b1,135b2によるインダクタンスの値はほぼ同一とすることができる。
【0047】
そのため、線対称な位置に配置された2つのコンデンサ132dにそれぞれ流出入する電流の波形は、ほぼ同一となり、2つのヒューズ33に流れる電流もほぼ同一とすることができる。
【0048】
スイッチング回路32aのスイッチング素子32bが短絡故障等を生じた場合であっても、2つのコンデンサ132dからスイッチング素子32bを介して2つのヒューズ33にそれぞれ流れる短絡電流も、ほぼ均等に分流される。
【0049】
また、本実施形態では、ブスバー135a,135b1を、絶縁板を介して密着または近接配置し、ブスバー135a,135b2を同様に、絶縁板を介して密着または近接配置されている。これによって、ブスバー135a,135b1間およびブスバー135a,135b2間の相互インダクタンスを小さくすることができ、ブスバーを含めた配線全体のインダクタンス値を低減することができる。配線全体のインダクタンス値を低減することによって、スイッチング素子32b等に印加されるサージ電圧を抑制することができる。
【0050】
上述では、コンデンサ132dおよびスイッチング回路32aは、すべて同じXY平面上にあるものとして説明した。コンデンサ、ヒューズおよびブスバーを、対称線C1を中心にして対称に配置して、ブスバーによる配線のインダクタンスをそろえることができれば、これに限定されない。たとえば、2つのコンデンサ132dは同一平面上に配置され、スイッチング回路32aは一段高い面(Z軸の正方向)あるいはその逆に一段低い面(Z軸の負方向)に配置するようにしてもよい。
【0051】
また、上述の具体例では、コンデンサ132d、ヒューズ33、スイッチング回路32a、ヒューズ33、およびコンデンサ132dがX軸上で直線状に配置されるものとしたが、これに限定されない。たとえば、XY平面視で、一方のコンデンサ132d、ヒューズ33およびスイッチング回路32aがX軸上で直線状に配置され、対称線C1を中心にx軸から角度をもった直線上に他方のコンデンサ132dおよびヒューズ33を配置する等してもよい。
【0052】
本実施形態の電力変換装置10のようなMMCでは、1つのセルに短絡故障が発生し、ヒューズ33による短絡保護が働いた後には、故障セル自体は開放状態となる。開放状態となった故障セルは、MMCの保護機能によってバイパスされる。本実施形態では、並列に接続されたヒューズ33であっても上述のように確実に溶断させることができるので、特定のセル30に短絡故障を生じた場合であっても、他のセル30に不具合を波及させることない。そして、短絡セルがバイパスされることによって、電力変換装置10自体は、運転を継続することができる。たとえば、次回の点検時等に故障セルを修理あるいは交換等することにより、迅速に電力変換装置10を正常な状態に復帰させることができる。
【0053】
上述では、ヒューズは、コンデンサの低電位側に接続されるものとして説明したが、コンデンサの高電位側に接続されるようにしてももちろんかまわない。以下説明する他の実施形態でも同様である。
【0054】
(第2の実施形態)
図4(a)は、本実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した平面図であり、
図4(b)は側面図である。
【0055】
本実施形態では、スイッチング回路32a、コンデンサ232dおよびヒューズ33を含む主回路の部分が一体的に構成され、それぞれを接続するブスバーの長さを短くすることによって、配線のインダクタンスを小さくする。
【0056】
図4(a)および
図4(b)には、本実施形態の電力変換装置のセル230の構成が示されている。
【0057】
図4(a)および
図4(b)に示すように、セル230は、スイッチング回路32aと、コンデンサ232dと、ヒューズ33と、を含む。スイッチング回路32aおよびヒューズ33は、配線部材235a,235b1,235b2によって、相互に電気的に接続されるとともに、コンデンサ232dの上方に支持されている。
【0058】
なお、以下では、コンデンサ232dの上方にその他の構成要素が配置されているものとして説明するが、これは相対的なものである。後に詳述するように、各構成要素が線対称に配置され、対称位置の電流経路に関するインダクタンス値がほぼ同一になれば上下関係は問わない。たとえば、コンデンサ232dの下方にスイッチング回路32aおよびヒューズ33が配置されてもかまわない。
【0059】
コンデンサ232dは、XY平面に平行な面を有する直方体であり、この例では、XY平面に平行な面上に載置されている。コンデンサ232dは、端子232da,232dbを含む。端子232da,232dbは、コンデンサ232dが載置されている面とは反対側の面(上面)に設けられている。この例では、1つの端子232daが高電位側に設けられており、2つの端子232dbが低電位側に設けられている。
【0060】
セル230の各構成要素は、X軸に平行な対称線C2に関して線対称となるように配置されている。端子232daは、対称線C2上でX軸の正側に偏在して配置されている。2個の端子232dbは、対称線C2に対して線対称な位置で端子232daよりもX軸の負側に偏在して設けられている。
【0061】
図では、コンデンサ232dの内部の構成は示されていないが、好ましくは、コンデンサ232dは、内部に複数個のコンデンサを有しており、複数個のコンデンサは、並列に接続されている。複数個のコンデンサの低電位側の内部配線は、複数個の1/2ずつ接続されたものがほぼ同じ長さになるようにして、端部が端子232dbにそれぞれ接続されている。つまり、対称線C2に関して線対称の位置にある内部配線は、ほぼ同一の長さであって、ほぼ同一のインダクタンスを有している。
【0062】
スイッチング回路32aは、対称線C2に沿って、長手方向を有するようにコンデンサ232d上に設けられている。この例では、高電位側の端子32aHは対称線C2上にあり、低電位側の2つの端子32aLは対称線C2に関して線対称となる位置に設けられている。
【0063】
2つのヒューズ33は、X軸にほぼ平行な方向に電流の経路を有するように設けられ、対称線C2に関して線対称となる位置にそれぞれ配置されている。
【0064】
スイッチング回路32aの高電位側の端子32aHは、配線部材235aによって、コンデンサ232dの高電位側の端子232daに電気的に接続されている。好ましくは、端子32aHは、端子232daの直上になるように配置されている。その場合には、配線部材235aの長さが最短となり、配線部材235aによるインダクタンスも最小とすることができる。
【0065】
コンデンサ232dの一方の低電位側の端子232dbは、配線部材235b2によって、ヒューズ33の端子33bに電気的に接続されている。ヒューズ33の端子33aは、配線部材235b1によって、スイッチング回路32aの低電位側の端子32aLに電気的に接続されている。
【0066】
コンデンサ232dの他方の低電位側の端子232dbも、配線部材235b2によって、ヒューズ33の端子33に電気的に接続されている。他方の端子232db側のヒューズ33の端子33aは、配線部材235b1によって、スイッチング回路32aの低電位側の端子32aLに電気的に接続されている。
【0067】
配線部材235a,235b1,235b2は、たとえばブスバーのような平らな板状の部材である。配線部材235b1,235b2からなる2組の配線は、対称線C2に関して線対称となる形状に成形されている。そのため、これらの配線によるインダクタンス値は、ほぼ同一となり、コンデンサ232dの一方の端子232dbに流出入する電流は、コンデンサ232dの他方の端子232dbに流出入する電流とほぼ同一の値を有し、ほぼ同一の電流波形となる。
【0068】
本実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
【0069】
本実施形態では、スイッチング回路32aおよび2個のヒューズ33をコンデンサ232dの端子を有する面の側に3次元的に配置することによって、それぞれを接続する配線部材の長さを短くすることができる。配線部材の長さを短くすることによって、配線部材を含む電流経路に関するインダクタンス値を小さくすることができ、スイッチング素子等に印加されるサージ電圧を抑制することができる。
【0070】
ヒューズ33およびこれと電気的接続をとる配線部材235b1,235b2を対称線C2に関して線対称となるように配置することによって、2つのヒューズ33をそれぞれ含む電流ループに流れる電流をほぼ同一とし、電流値をほぼ一致させ、それぞれの電流波形をそろえることができる。これによって、2つのヒューズ33を均等にディレーティングすることができ、溶断に至る電流もほぼ同一とすることができる。
【0071】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した側面図である。
【0072】
図5には、電力変換装置のセル330の一部が示されており、ヒューズ33が接続されている状態が模式的に示されている。
図5、後述する
図6(a)および
図6(b)には、すでに
図1において説明したブスバー35b1の接続部35c1およびブスバー35b2の接続部35c2が示されており、その他の部分は省略されている。
【0073】
図5に示すように、ヒューズ33は、長手方向を有する直方体形状または円柱形状の外囲器を有する。2個のヒューズ33は、X軸に沿って、直線状に配置され、その外囲器の長手方向がXY平面にほぼ垂直になるように配置されている。この例では、ヒューズ33の長手方向は電流が流れる方向とされている。2個のヒューズ33をX軸に沿って配置することによって、ヒューズ33を近接して配置しても、互いの発熱の影響を小さくすることができる。また、2個のヒューズ33をいずれも長手方向がXY平面に垂直、すなわちZ軸に沿って延伸するように配置することによって、XY平面に平行な実装面に配置した場合の占有面積を抑制することができる。
【0074】
配線部材336aは、コンデンサ側の接続部35c1とヒューズ33の端子33aとを接続している。配線部材336bは、スイッチング回路32a側の接続部35c2とヒューズ33の端子33bとを接続している。配線部材336a,336bは、点対称の中心C3に関して点対称となるような形状に形成され、それぞれ配置されている。これにより、2個のヒューズ33のそれぞれについて、配線の長さをほぼ等しくすることができる。
【0075】
たとえば、電流が、接続部35c1側から接続部35c2側に流れる場合には以下のようになる。すなわち、図の左のヒューズに流入する電流の経路の長さは、図の右のヒューズから流出する電流の経路の長さにほぼ等しい。また、図の右のヒューズに流入する電流の経路の長さは、左のヒューズから流出する電流の経路の長さにほぼ等しい。つまり、左のヒューズの電流経路の長さは、右のヒューズの電流経路の長さにほぼ等しいので、それぞれのヒューズからみたときの配線のインダクタンス値はほぼ等しいと考えられる。そのため、それぞれのヒューズに流れる電流値はほぼ同一となり、電流波形をほぼ同一とすることができる。
【0076】
上述では、並列に接続するヒューズを2個としたが、3個以上であってもかまわない。3個のようにヒューズの個数が奇数の場合には、対称点の周囲を取り囲む正多角形状に配置すればよい。
【0077】
また、各ヒューズ33の長手方向をZ軸に沿って設ける場合に限らず、Z軸から角度をもたせて配置するようにしてももちろんかまわない。
【0078】
(第4の実施形態)
上述した第3の実施形態の場合には、ヒューズの長手方向をZ軸に沿って配置するので、ヒューズの長手方向の長さが長い場合には、上下に引き出す配線が長くなる傾向にある。配線のインダクタンス値を小さくするために、配線長を短くすることが好ましい。
【0079】
図6(a)および
図6(b)は、本実施形態の電力変換装置の一部を模式的な実体配線図として例示した平面図である。
【0080】
図6(a)に示すように、2個のヒューズ33は、XY平面に平行な面上に配置されている。2個のヒューズ33は、電流が流れる方向がほぼ平行になるように配置されている。配線部材436a,436bの形状は、点対称の中心C4aに関して点対称となるように成形されており、このため、配線部材436a,436bの長さはほぼ等しく、配線のインダクタンス値もほぼ等しい。
【0081】
本実施形態では、ヒューズ33の配置および配線部材436a,436bの形状は、点対称の中心C4aに関して、点対称となるように設定されていれば、上述の例に限らない。たとえば、ヒューズ33を配置可能な領域に応じて、ヒューズ33の位置を直線上に配置したり、ヒューズ33を平行に配置しつつ、X軸方向にずらして配置したりしてもよい。
【0082】
図4(b)は、ヒューズ33の並列数を増やした例を示したものである。この例では、4個のヒューズ33が並列に接続されている。4個のヒューズ33のうち2個が、
図4(a)の場合と同様に、X軸上のほぼ同一の位置に配置されている。このような2個のヒューズ33の組のうち図上右側の組は、配線部材436e,436dによって、接続部35c1,35c2にそれぞれ接続されている。図上左側の組は、配線部材436c,436fによって、接続部35c1,35c2にそれぞれ接続されている。
【0083】
配線部材436c,436dは、同一の形状を有している。配線部材436e,436fは、同一の形状を有している。X軸上ほぼ同一の位置に平行して配置されているヒューズ33の右側の組、配線部材436e,436dおよびヒューズ33の左側の組、配線部材436c,436fは、点対称の中心C4bに関して、180°点対称に配置されている。
【0084】
本実施形態では、各ヒューズ33をXY平面に平行に配置することによって、高さ方向の寸法を抑制するとともに、高さ方向の配線の引き回しをなくすことができる。そのため、ヒューズ33の長手方向の長さが長い場合に、配線の長さを短くすることができ、配線に関するインダクタンス値を抑制することができる。
【0085】
上述した各実施形態は、単独で実施する場合に限らず、複数の実施形態を組み合わせることができる。たとえば、第1の実施形態(
図3)または第2の実施形態(
図4)のヒューズ33をさらに並列に接続する場合に、第3の実施形態または第4の実施形態の場合を組み合わされてもよい。また、ヒューズ33の配置箇所に応じて、第3の実施形態のようにヒューズ33の長手方向をZ軸に向けたものと、第4の実施形態のようにヒューズ33の長手方向をXY平面に平行に配置するものとを組み合わせることもできる。
【0086】
上述では、MMCのセルの短絡保護にヒューズを用いる場合について説明したが、上述の例は、MMC以外のコンデンサおよびスイッチング回路からなる主回路を有する電力変換装置にも適用することができる。大容量のコンデンサが用いられる場合に、並列接続されたヒューズの電流を分配して通常運転時には適切にディレーティングし、短絡保護時には、適切に溶断して短絡保護できる電力変換装置とすることができる。
【0087】
以上説明した実施形態によれば、並列に接続したヒューズを挿入しても、単位変換器の性能への影響を抑制した電力変換装置を実現することができる。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 交流系統、2 変圧器、3 直流系統、10 電力変換装置、20 電力変換器、22 アーム、24 変圧器、30,130,230,330,430a,430b 単位変換器、32a スイッチング回路、33 ヒューズ、35a,35b1,35b2,135a,135b1,135b2 ブスバー、36a,36b,235a,235b1,235b2,336a,336b,436a~436f 配線部材