(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ワーク研磨装置および研磨補助装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20230308BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20230308BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230308BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B24B37/30 Z
B24B37/10
B24B41/06 L
H01L21/304 622R
(21)【出願番号】P 2023012656
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2021139524の分割
【原出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214928
【氏名又は名称】直江津電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小杉 明
(72)【発明者】
【氏名】栗本 宏高
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-158333(JP,A)
【文献】特開平01-301057(JP,A)
【文献】特開平07-130687(JP,A)
【文献】特開2013-052455(JP,A)
【文献】特開平04-075870(JP,A)
【文献】特開2017-144531(JP,A)
【文献】特開2012-206189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
B24B41/06
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のワークを保持しながら従動回転可能な保持部と、前記保持部を支持する支持部材と、前記保持部により保持された前記ワークに当接して研磨する研磨面を有する定盤と、を備える研磨装置本体と、
前記保持部の回転を補助する研磨補助装置と、
前記研磨補助装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記研磨補助装置は、モーターと、当該モーターにより回転駆動するサポートローラーとを有し、
前記制御装置は、前記サポートローラーの位置を、前記保持部に当接しない第1位置と、前記保持部に当接する第2位置とで切り替える制御を行い、
前記研磨装置本体は、前記ワークを研磨する際に、前記サポートローラーが前記保持部に当接しない前記第1位置である場合も、前記ワークを保持する前記保持部が前記支持部材により支持されることで、前記ワークを一定位置で保持し研磨することが可能であり、
前記制御装置は、前記研磨補助装置に、前記サポートローラーを前記第2位置まで移動させて前記サポートローラーを前記保持部に当接させることで、前記保持部に回転力を付与し、前記保持部が保持する前記ワークを回転することを補助させる、ワーク研磨装置。
【請求項2】
前記サポートローラーが前記第1位置である場合に、前記ワークは、当該ワークに当接する前記定盤の周速度差のみを利用して回転し、
前記サポートローラーが前記第2位置である場合には、前記ワークは、当該ワークに当接する前記定盤の周速度差と、前記保持部を介して前記サポートローラーから付与される回転力とを利用して回転する、請求項1に記載のワーク研磨装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記定盤の中心位置に配設され前記保持部の回転に従動して回転可能なセンターローラー、前記定盤の外周側に配置され前記保持部の回転に従動して回転可能なガイドローラー、および/または、前記保持部と連結する回転軸であり、前記ワークを研磨する際に前記保持部を介して前記ワークに回転力を付与する機能を有しない、請求項1または2に記載のワーク研磨装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記定盤を駆動する駆動源の回転出力の1/100以下の回転出力で、前記サポートローラーを回転させる、請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク研磨装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記保持部の回転速度が所定値以下である場合、前記保持部の回転速度が安定せず所定値以上ばらつく場合、または、前記保持部で保持するワークのサイズが所定値以下である場合に、前記サポートローラーを前記第1位置から前記第2位置へと移動させる、請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク研磨装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記保持部がワークを前記定盤に圧接する押圧力が第1圧力値以上である場合、または、前記第1圧力値よりも低い第2圧力値以下である場合に、前記サポートローラーを前記第1位置から前記第2位置へと移動させる、請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク研磨装置。
【請求項7】
複数の前記保持部と、当該複数の保持部にそれぞれ対応して設けられた複数の前記研磨補助装置とを有し、
前記制御装置は、前記複数の保持部間における、前記保持部の回転速度のばらつきが所定値以下となるように、1または複数の前記研磨補助装置の前記サポートローラーの動作を制御する、請求項1ないし6のいずれかに記載のワーク研磨装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記サポートローラーが前記第2位置にある場合に、前記保持部の回転速度、若しくは、前記保持部で保持する前記ワークのサイズまたは前記保持部の前記ワークに対する押圧力に基づいて、前記サポートローラーの回転出力を変更する、請求項1ないし7のいずれかに記載のワーク研磨装置。
【請求項9】
平板状のワークを保持しながら従動回転可能な保持部と、前記保持部を支持する支持部材と、前記保持部により保持された前記ワークに当接して研磨する研磨面を有する定盤とを備えるワーク研磨装置に、着脱可能な研磨補助装置であって、
モーターと、
前記モーターにより回転駆動するサポートローラーと、
前記サポートローラーの位置を、前記保持部に当接しない第1位置と、前記保持部に当接する第2位置とで切り替える制御を行う制御部と、を有し、
前記ワーク研磨装置は、前記ワークを研磨する際に、前記サポートローラーが前記保持部に当接しない前記第1位置である場合も、前記ワークを保持する前記保持部が前記支持部材により支持されることで、前記ワークを一定位置で保持し研磨することが可能であり、
前記研磨補助装置は、前記サポートローラーを前記第2位置まで移動させて前記サポートローラーを前記保持部に当接することで、前記保持部に回転力を付与し、前記保持部が保持する前記ワークを回転することを補助する、研磨補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク研磨装置および研磨補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを保持具で保持し、保持具で保持したワークを定盤の研磨面に押し当てることで、ワークを研磨するワーク研磨装置が知られている。また、このようなワーク研磨装置において、定盤の中央位置にセンターローラーを配置するとともに、定盤の周囲にガイドローラーを配置し、ワークを研磨する際に、センターローラーとガイドローラーとで保持具を支持しながらワークを研磨する、ワーク研磨装置が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したワーク研磨装置では、定盤が回転することで、定盤の研磨面に当接するワークが研磨されるが、定盤が回転する際に、定盤の内側の周速度よりも外側の周速度が速いため、定盤と当接するワークにおいては、定盤の内側に対応する部分よりも、定盤の外側に対応する部分で多く研磨されることとなり、研磨ムラが生じてしまうおそれがある。しかしながら、保持具で1枚のワークを研磨する場合、通常は、定盤の内側と外側の周速度の差により定盤からワークに作用する力が、定盤の内側に対応する部分よりも、定盤の外側に対応する部分において大きくなるため、ワークが定盤上で自転し、研磨ムラの発生を防止することができる。一方で、ワークのサイズが小さく、定盤の内側と外側の周速度の差が小さい場合や、保持具のワークに対する押圧力が大きい場合などに、ワークが自転する力よりも、ワークと定盤との間で発生する摩擦抵抗力が大きくなり、ワークが自転せずに研磨ムラが生じてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、ワークを適切に研磨することができる、ワーク研磨装置および研磨補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワーク研磨装置は、平板状のワークを保持しながら従動回転可能な保持部と、前記保持部により保持された前記ワークに当接して研磨する研磨面を有する定盤と、前記保持部を支持する支持部材と、を備える研磨装置本体と、前記保持部の回転を補助する研磨補助装置と、
前記研磨補助装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記研磨補助装置は、モーターと、当該モーターにより回転駆動するサポートローラーとを有し、前記制御装置は、前記サポートローラーの位置を、前記保持部に当接しない第1位置と、前記保持部に当接する第2位置とで切り替える制御を行い、前記研磨装置本体は、前記ワークを研磨する際に、前記サポートローラーが前記保持部に当接しない前記第1位置である場合も、前記ワークを保持する前記保持部が前記支持部材により支持されることで、前記ワークを一定位置で保持し研磨することが可能であり、前記制御装置は、前記研磨補助装置に、前記サポートローラーを前記第2位置まで移動させて前記サポートローラーを前記保持部に当接させることで、前記保持部に回転力を付与し、前記保持部が保持する前記ワークを回転することを補助させる。
上記ワーク研磨装置において、前記サポートローラーが前記第1位置である場合に、前記ワークは、当該ワークに当接する前記定盤の周速度差のみを利用して回転し、前記サポートローラーが前記第2位置である場合には、前記ワークは、当該ワークに当接する前記定盤の周速度差と、前記保持部を介して前記サポートローラーから付与される回転力とを利用して回転する構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、前記支持部材は、前記定盤の中心位置に配設され前記保持部の回転に従動して回転可能なセンターローラー、前記定盤の外周側に配置され前記保持部の回転に従動して回転可能なガイドローラー、および/または、前記保持部と連結する回転軸であり、前記ワークを研磨する際に前記保持部を介して前記ワークに回転力を付与する機能を有しない構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、前記制御装置は、前記定盤を駆動する駆動源の回転出力の1/100以下の回転出力で、前記サポートローラーを回転させる構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、前記制御装置は、前記保持部の回転速度が所定値以下である場合、前記保持部の回転速度が安定せず所定値以上ばらつく場合、または、前記保持部で保持するワークのサイズが所定値以下である場合に、前記サポートローラーを前記第1位置から前記第2位置へと移動させる構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、前記制御装置は、前記保持部がワークを前記定盤に圧接する押圧力が第1圧力値以上である場合、または、前記第1圧力値よりも低い第2圧力値以下である場合に、前記サポートローラーを前記第1位置から前記第2位置へと移動させる構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、複数の前記保持部と、当該複数の保持部にそれぞれ対応して設けられた複数の前記研磨補助装置とを有し、前記制御装置は、前記複数の保持部間における、前記保持部の回転速度のばらつきが所定値以下となるように、1または複数の前記研磨補助装置の前記サポートローラーの動作を制御する構成とすることができる。
上記ワーク研磨装置において、前記制御装置は、前記サポートローラーが前記第2位置にある場合に、前記保持部の回転速度、若しくは、前記保持部で保持する前記ワークのサイズまたは前記保持部の前記ワークに対する押圧力に基づいて、前記サポートローラーの回転出力を変更する構成とすることができる。
本発明に係る研磨補助装置は、平板状のワークを保持しながら従動回転可能な保持部と、前記保持部により保持された前記ワークに当接して研磨する研磨面を有する定盤とを備えるワーク研磨装置に、着脱可能な研磨補助装置であって、モーターと、前記モーターにより回転駆動するサポートローラーと、前記サポートローラーの位置を、前記保持部に当接しない第1位置と、前記保持部に当接する第2位置とで切り替える制御を行う制御部と、を有し、前記ワーク研磨装置は、前記ワークを研磨する際に、前記サポートローラーが前記保持部に当接しない前記第1位置である場合も、前記ワークを保持する前記保持部が前記支持部材により支持されることで、前記ワークを一定位置で保持し研磨することが可能であり、前記研磨補助装置は、前記サポートローラーを前記第2位置まで移動させて前記サポートローラーを前記保持部に当接することで、前記保持部に回転力を付与し、前記保持部が保持する前記ワークを回転することを補助する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークの回転を適切に制御することで、ワークを適切に研磨することができる、ワーク研磨装置および研磨補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るワーク研磨装置の平面図である。
【
図2】本実施形態に係るワーク研磨装置の側面断面図である。
【
図3】ワーク研磨装置におけるワークの回転を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る研磨補助装置の動作を説明するための図である。
【
図6】研磨補助装置の補助がない場合の、ワークのサイズと、ワークの回転との関係を説明するための図である。
【
図7】複数のワークを研磨する場合の研磨補助装置の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図を参照して、本発明に係るワーク研磨装置および研磨補助装置の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、ワークとして、半導体ウエハを研磨するワーク研磨装置を例示して説明するが、ワークは半導体ウエハに限定されず、たとえば、平板状のガラス、セラミックスなどであってもよい。また、半導体ウエハの種類も特に限定されず、たとえばシリコン単結晶ウエハ、SOI(Silicon on Insulator)ウエハ、SiCウエハなどの化合物半導体ウエハなどを用いることができる。
【0010】
図1は、本実施形態にかかるワーク研磨装置1を示す平面図である。また、
図2は、本実施形態に係るワーク研磨装置1を、
図1に示すII方向から見た側面断面図である。なお、
図2においては、説明の便宜上、ワーク研磨装置1に内蔵される制御装置30を図示している。また、
図2においては、回転検出センサー24,25による回転検出用の光線を破線で示している。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るワーク研磨装置1は、研磨装置本体10と、研磨補助装置20と、制御装置30と、を有する。以下に、本実施形態に係るワーク研磨装置1の各構成について説明する。
【0011】
まず、研磨装置本体10について説明する。研磨装置本体10は、
図1に示すように、ワークWを研磨するための定盤11と、ワークWを保持する保持部12と、定盤11の中心位置に設置されたセンターローラー13と、ガイドローラー40とを有する。定盤11は、
図2に示すように、ワークWと接する表面に研磨布や研磨パッドなどが敷設された研磨面110を有し、図示しない定盤11用の回転モーターにより回転駆動することで、研磨面110と当接するワークWの表面を研磨することができる。
【0012】
保持部12は、
図2に示すように、研磨ヘッド120および保持プレート121を有している。研磨ヘッド120は、円筒形の形状を有し、少なくともセンターローラー13、ガイドローラー40およびサポートローラー21が当接する面はSUSなどの金属で構成し、あるいは、SUSなどの金属を樹脂シールや樹脂コートした構成とすることができる。また、研磨ヘッド120のサポートローラー21との当接部は、サポートローラー21の駆動力を受け取り易い所定の摩擦係数を持つことが好ましい。本実施形態において、研磨ヘッド120は、保持プレート121を介して、ワークWを保持する。具体的には、研磨ヘッド120は、研磨ヘッド120の外形と同じ外径を有する保持プレート121を保持することで、保持プレート121に貼り付けられたワークWを保持する。また、研磨ヘッド120は、センターローラー13およびガイドローラー40により側面方から支持される。保持プレート121としては、たとえば、セラミックスやガラスからなる円盤状のプレートであって、保持プレートの下面にワックスなどでワークWを貼付して保持するものを例示することができる。また、研磨ヘッド120は、保持したワークWを定盤11の研磨面110に押し当てることで、ワークWの研磨を行うことができる。本実施形態において、保持部12(研磨ヘッド120)は、自ら回転駆動は行わないが、後述する定盤11の周速度の差に応じたワークWの回転や、研磨補助装置20のサポートローラー21の回転に従動して、回転可能となっている。
【0013】
また、本実施形態に係る研磨装置本体10では、
図1に示すように、定盤11の中心位置にセンターローラー13が配設され、定盤11の外周側にガイドローラー40が配置される。センターローラー13は、
図1に示すように、保持部12(より具体的には研磨ヘッド120の側面)と当接し、保持部12の回転に従動して回転可能となっている。同様に、ガイドローラー40も、保持部12(より具体的には研磨ヘッド120の側面)と当接し、保持部12の回転に従動して回転可能となっている。そのため、研磨補助装置20のサポートローラー21でワークWの回転を補助する場合、センターローラー13と、ガイドローラー40とが、保持部12(より具体的には研磨ヘッド120の側面)を支持することができ、保持部12が保持するワークWを安定して研磨することが可能となる。なお、センターローラー13およびガイドローラー40の素材は、特に限定されないが、保持部12と当接する面には、高密度ポリエチレン(HDPE)や超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用いることが好ましい。
【0014】
本実施形態において、研磨装置本体10は、公知の研磨方法で、ワークWを研磨することができる。たとえば、ワークWが半導体ウエハである場合、研磨スラリーを用いた湿式研磨や、乾式研磨を行ことができる。また、研磨に使用する砥粒も特に限定されず、遊離砥粒、固定砥粒、あるいは砥粒なしで研磨を行うことができる。さらに、定盤11の研磨面110に公知の研磨布や研磨パッドを貼り付ける構成に代えて、金属製(鋳鉄、錫、銅など)の研磨面110で、そのままワークWを研磨する構成とすることもできる。
【0015】
ここで、
図3を参照して、従来のワーク研磨装置について説明する。
図3は、ワーク研磨装置におけるワークWの回転を説明するための図である。ワーク研磨装置1では、ワークWを定盤11に当接させることでワークWが研磨されるが、保持部12により保持されるワークWは、
図3に示すように、定盤11の中心位置から外れた位置に配置される。この場合、定盤11の内周側の周速度Siよりも、外周側の周速度Soが速くなるため、ワークWの研磨面のうち、定盤11の内周側よりも、定盤11の外周側の方が、研磨の度合いが高くなり、研磨ムラが生じるおそれがある。しかしながら、定盤11の内周側の周速度Siと外周側の周速度Soとに差が生じるため、定盤11からワークWに作用する力は、定盤11の内周側の力Fiよりも、定盤11の外周側の力Foの方が高くなる。その結果、ワークWに対して、定盤11の外周側の回転方向に回転する回転力Fcが働き、この回転力FcがワークWと定盤11との間の摩擦抵抗力μよりも高くなる場合に、ワークWは定盤11の回転方向と同じ方向に回転(自転)することとなる。このように、ワークWが研磨されながら回転することで、ワークWを均一に研磨することが可能となっている。
【0016】
一方、
図3に示す例において、ワークWのサイズを小さくすると、ワークWにかかる定盤11の内周側の力Fiと定盤11の外周側の力Foとの差は小さくなり、ワークWに作用する回転力Fcよりも、ワークWと定盤11との摩擦抵抗力μが高くなり、ワークWや研磨ヘッド120が回転しない場合や、ワークWや研磨ヘッド120の回転が安定しない場合がある。本実施形態に係るワーク研磨装置1は、ワークWや研磨ヘッド120が回転しない場合や、ワークWや研磨ヘッド120の回転が安定しない場合に、研磨補助装置20により、保持部12(研磨ヘッド120)に回転力を付与することで、ワークWの回転を補助し、ワークWの研磨精度を高めることを特徴とする。
【0017】
このような機能を実行するため、本実施形態に係るワーク研磨装置1は、1または複数の研磨補助装置20と、制御装置30とを有する。なお、本実施形態では、ワーク研磨装置1が4台の研磨補助装置20を有する構成を例示するが、この構成に限定されず、たとえば、1~3台、あるいは5台以上の研磨補助装置20を有する構成とすることができる。また、本実施形態において、各研磨補助装置20は、研磨装置本体10から分離可能となっており、既存の研磨装置本体10に自在に着脱可能となっている。
【0018】
まず、研磨補助装置20について説明する。研磨補助装置20は、
図1および
図2に示すように、サポートローラー21と、アクチュエーター22と、回転モーター23と、回転検出センサー24,25と、を有する。
【0019】
サポートローラー21は、回転モーター23と連結し、回転モーター23の回転動作に応じて回転可能となっている。なお、サポートローラー21の動作は、制御装置30により制御されている。また、サポートローラー21の素材としては、ウレタンゴムなどの弾性ゴムを用いることが好ましい。また、ウレタンゴムの他、天然ゴム、合成天然ゴム、ブタジェンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどの弾性ゴムも用いることができる。このような弾性ゴムを用いることで、研磨ヘッド120と接触する場合も発塵などを抑制することができる。
【0020】
回転モーター23は、サポートローラー21を回転させるためのモーターであり、本実施形態においては、サポートローラー21に直接連結している。回転モーター23の回転出力は、制御装置30の制御に基づいて適宜調整することができる。なお、制御装置30による回転モーター23の回転出力の調整については、後述する。
【0021】
アクチュエーター22は、たとえばエアシリンダーなどの駆動機構であり、サポートローラー21の位置を移動させることができる。なお、アクチュエーター22は、エアシリンダーに限定されず、リニアモーター、ボールベアリング、バネ、ギア、ラックアンドピニオンなどの駆動機構を用いることができる。ここで、
図4は、研磨補助装置20の動作を説明するための図である。具体的には、
図4(A)は、アクチュエーター22が、サポートローラー21を、保持部12(より具体的には研磨ヘッド120の側面)に当接しない第1位置に移動している場面を例示しており、
図4(B)は、サポートローラー21を、保持部12に当接する第2位置に移動している場面を例示している。
【0022】
図4(A),(B)に示すように、アクチュエーター22は、サポートローラー21を研磨ヘッド120側に距離Lだけ進出させることで、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる。また、本実施形態では、サポートローラー21が第1位置から第2位置へと移動する前に、回転モーター23を駆動させてサポートローラー21を回転させることで、サポートローラー21が研磨ヘッド120の側面に当接するタイミングから、当接する研磨ヘッド120の回転を補助することができる。また、
図4(A),(B)に示すように、アクチュエーター22は、サポートローラー21を研磨ヘッド120側から距離Lだけ後退させることで、サポートローラー21を、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置から、研磨ヘッド120に当接しない第1位置へと移動させることもできる。
【0023】
また、アクチュエーター22を、
図5に示す構成とすることもできる。
図5は、研磨補助装置20の他の動作例を示す図である。たとえば、
図5(A),(B)に示すように、アクチュエーター22aがアーム221を有し、アーム221の先端にサポートローラー21が取り付けられている。また、アーム221は、軸222において軸支された構成とする。そして、アクチュエーター22aは、アーム221を軸222に固定したまま、
図5(A),(B)に示すように、アーム221の他端(サポートローラー21を取り付けている端部と反対側の端部)を水平方向にスライドさせることで、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置と、研磨ヘッド120に当接する第2位置との間で移動させる構成とすることができる。さらに、
図5(C),(D)に示すように、アクチュエーター22bがサポートローラー21および回転モーター23を上下方向(鉛直方向)に移動させることで、サポートローラー21を、研磨ヘッド120の側面に当接しない第1位置と、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置との間で移動させる構成とすることもできる。加えて、
図5(E),(F)に示すように、アクチュエーター22cが、軸X2を中心としてピッチ方向に旋回可能となっており、サポートローラー21を、軸X2を中心としてピッチ方向に旋回させることで、サポートローラー21を、研磨ヘッド120の側面に当接しない第1位置と、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置との間で移動させる構成とすることもできる。
【0024】
さらに、本実施形態に係る研磨補助装置20は、
図2に示すように、保持部12(より具体的には研磨ヘッド120)の回転を検出する回転検出センサー24,25を有する構成とすることができる。たとえば、回転検出センサー24,25として光センサーを用い、研磨ヘッド120の上面や側面にマーカーを付与しておき、そのマーカーを回転検出センサー24,25で検出することで、回転数や回転速度などの回転情報を検出する構成とすることができる。また、回転検出センサー24,25として画像センサー、近接センサーまたは磁気センサーを用いる構成としてもよい。また、回転検出センサー24,25は、研磨ヘッド120の回転を検出する構成に限定されず、保持プレート121の回転を検出する構成としてもよい。回転検出センサー24,25により検出された研磨ヘッド120の回転情報は、制御装置30へと出力される。
【0025】
制御装置30は、研磨補助装置20の動作を制御する。具体的には、制御装置30は、回転検出センサー24,25により検出された研磨ヘッド120の回転速度の情報を回転情報として取得する。そして、制御装置30は、取得した研磨ヘッド120の回転情報に基づいて、研磨補助装置20のアクチュエーター22の動作を制御する。
【0026】
具体的には、制御装置30は、研磨ヘッド120の回転速度が所定値以下である場合に、アクチュエーター22の動作を制御して、サポートローラー21を、
図4(A)に示す、研磨ヘッド120の側面に当接しない第1位置から、
図4(B)に示す、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置へと移動させる。また、制御装置30は、サポートローラー21を第2位置へと移動する前から、回転モーター23を予め回転させることで、サポートローラー21が研磨ヘッド120の側面に当接したタイミングから、研磨ヘッド120の回転を補助することができる。
【0027】
また、制御装置30は、サポートローラー21を回転させる場合には、ワークWの研磨面全体が均一に一定の研磨速度で研磨されるように、回転モーター23の駆動出力を制御する。たとえば、
図3に示す例のように、ワークWに係る定盤11の周速度の差に応じてワークWに作用する回転力をFcとし、ワークWと定盤11との間の摩擦抵抗力をμとした場合、制御装置30は、ワークWの回転力Fcと摩擦抵抗力μとの差(Fc-μ)とサポートローラー21が付与するワークWの回転力Fsとの合算値が少なくとも「正(0>(Fc-μ)+Fs)」、好ましくはワークWが所定の安定した回転数を得られる程度に、回転モーター23の回転出力を調整する。なお、通常、回転モーター23の駆動出力を、定盤11を回転させる回転モーターの1/100以下の出力としても、上記関係(0>(Fc-μ)+Fs)を満たすことができ、定盤11の回転モーターの出力の1/300以下、あるいは、1/500以下としても、上記関係を満たすことができる場合が多い。よって、制御装置30は、単に、定盤11を回転させる回転モーターの1/100以下の出力で回転モーター23を駆動させる構成としてもよいし、定盤11の回転モーターの出力の1/300以下、あるいは、1/500以下の出力で回転モーター23を駆動させる構成としてもよい。
【0028】
また、ワークWの摩擦抵抗力μは、ワークWの面積が大きくなるほど、あるいは、ワークWにかかる荷重が大きくなるほど、大きくなり、また、定盤11の回転速度、ワークWと定盤11の研磨面(研磨布や研磨パッドとの動摩擦係数)、研磨剤(スラリー、砥粒、水など)に応じても変動する。そのため、制御装置30は、これら研磨条件に応じて、回転モーター23の回転出力を予め調整可能な構成とすることができる。このように、制御装置30は、研磨補助装置20により研磨ヘッド120を回転させることで、研磨ヘッド120の回転を介してワークWを回転させることができ、ワークWの研磨ムラを防止することができる。
【0029】
また、制御装置30は、研磨補助装置20がワークWの回転を補助している場合に、回転モーター23の出力と、研磨ヘッド120の回転速度とに基づいて、研磨補助装置20の補助がなくても、ワークWが回転するか否かを判定する構成とすることができる。そして、制御装置30は、研磨補助装置20の補助がなくてもワークWが安定して回転すると判断した場合には、アクチュエーター22の動作を制御して、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接する第2位置から、研磨ヘッド120に当接しない第1位置へと移動させ、サポートローラー21の動作を停止するように、回転モーター23の動作を停止させることができる。このように、制御装置30は、研磨補助装置20の補助が必要ない場合には、研磨補助装置20の動作を停止することで、研磨補助装置20の長寿命化を図ることもできる。また、この場合、制御装置30は、サポートローラー21が第2位置から第1位置へと移動した後に、回転モーター23の回転を停止することで、サポートローラー21が研磨ヘッド120から離れた後のタイミングで、サポートローラー21の回転を停止させることができる。
【0030】
さらに、制御装置30は、それぞれの研磨ヘッド120について、研磨ヘッド120の回転速度を時系列に沿って記憶し、時間的に回転速度が所定値以上ばらつく場合に、研磨ヘッド120の回転速度が一定(時間的な回転速度のばらつきが所定値以内)となるように、サポートローラー21の回転速度を調整し、サポートローラー21を研磨ヘッド120の側面に当接させる構成としてもよい。あるいは、制御装置30は、複数の研磨ヘッド120間の回転速度を比較し、複数の研磨ヘッド120間における回転速度のばらつきが所定値以上である場合には、研磨ヘッド120間の回転速度のばらつきが所定値以内となるように、回転速度の遅い研磨ヘッド120に対応するサポートローラー21の回転速度を調整し、研磨ヘッド120の側面に当接させる構成としてもよい。
【0031】
また、制御装置30は、保持部12で保持するワークWのサイズに基づいて、研磨補助装置20の動作を制御する構成としてもよい。ここで、
図6は、研磨補助装置20の補助がない場合の、ワークWのサイズと、ワークWの回転との関係を説明するための図である。
図6では、(A)から(D)に向かうほど、ワークWのサイズは小さくなっており、(A)ではワークWのサイズをφ300とし、(B)ではワークWのサイズをφ200とし、(C)ではワークWのサイズをφ150とし、(D)ではワークWのサイズをφ100としている。また、
図6に示す例では、定盤11の直径を900mmとし、研磨ヘッド120の直径を360mmとし、定盤11を20rpmで回転させた場合の、各ワークWに係る周速度の差(ワークWの研磨面のうち、最も定盤11の内側における定盤11の周速度と、最も定盤11の外側における定盤11の周速度との差)をシミュレーションした。その結果、(A)において、ワークWの研磨面での周速度の差は1884cm/分となり、(B)において、ワークWの研磨面での周速度の差は1256cm/分となり、(C)において、ワークWの研磨面での周速度の差は942cm/分となり、(D)において、ワークWの研磨面での周速度の差は628cm/分となることがわかった。このように、ワークWのサイズが大きいほど、ワークWの研磨面での周速度の差は大きくなり、周速度の差に応じてワークWに作用する回転力Fcは大きくなる一方、ワークWのサイズが小さいほど、ワークWの研磨面での周速度の差は小さくなり、ワークWに作用する回転力Fcが小さくなる。
【0032】
実際に、
図6に示す例において、ワークWとしてSiウエハを用い、ワークWを定盤11に圧接させる際の加重を200g/cm
2とし、コロイダルシリカ含有の研磨スラリーを用いて研磨試験を行った結果、ワークWのサイズが大きい(A),(B)に示す研磨条件では、研磨補助装置20の補助が無くても、ワークWは定盤11の周速度の差に応じた回転力Fcにより回転した。これに対して、ワークWのサイズが小さい(C),(D)に示す研磨条件では、研磨補助装置20の補助が無い場合には、ワークWの研磨面における定盤11の周速度の差が小さくなり、ワークWは回転しなかった。このように、ワークWを保持部12で保持して研磨する場合、ワークWのサイズによってはワークWが研磨補助装置20の補助なしで回転しない場合がある。そのため、本実施形態において、制御装置30は、ワークWのサイズに基づいて、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とすることができる。
【0033】
ここで、
図6および
図7を参照して、研磨ヘッド120で複数のワークWを研磨する場合の研磨補助装置20の制御方法について説明する。
図7は、複数のワークWを研磨する場合の研磨補助装置20の制御方法を説明するための図である。たとえば、
図6および
図7(A)に示すように、保持部12(研磨ヘッド120)で保持するワークWが1枚である場合は、
図6に示す例のように、ワークWそのもののサイズが小さい場合に、ワークWが補助なしでは回転しない場合があるため、制御装置30は、当該ワークWのサイズが所定値以下である場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とする。
【0034】
たとえば、
図6に示す例では、サイズがφ200のワークW(B)では研磨補助装置20の補助なしでワークWは回転するが、サイズがφ150のワークW(C)では研磨補助装置20の補助なしでワークWは回転しないため、たとえば、ワークWのサイズがφ180以下である場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とすることができる。また、
図7(A)に示すように、定盤11の中心点C1とワークWの中心点C2と通過する直線の、ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1と、ワークWの内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2との比(ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1÷ワークWの内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2」)に基づいて、サポートローラー21の動作を制御する構成とすることができる。たとえば、
図6に示す例においては、ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1÷ワークWの内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2は、(A)~(D)の各ワークWにおいて、下記の通りとなった。
(A)φ300mm 690φ/390φ=1.77
(B)φ200mm 640φ/440φ=1.45
(C)φ150mm 615φ/465φ=1.32
(D)φ100mm 590φ/490φ=1.20
そのため、ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1と、ワークWの内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2との比が1.45未満の場合、より好ましくは1.35未満の場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とすることができる。
なお、ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1および内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2は、ワークWの外周側の周速度と内周側の周速度の速度にそれぞれ比例するため、ワークWの外周側と内周側との周速度比が1.45未満、の場合、より好ましくは1.35未満の場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とすることもできる。また、当然ながら、ワークWの内周側から定盤11の中心点C1までの距離L2÷ワークWの外周側から定盤11の中心点C1までの距離L1でサポートローラー21の動作を制御する構成とすることもできる。
【0035】
一方、
図7(B)に示すように、保持部12(研磨ヘッド120)で保持するワークWが複数枚ある場合は、制御装置30は、複数のワークWを1枚の仮想ワークW’とみなし、この仮想ワークW’のサイズを、本発明における「ワークWのサイズ」とみなして、研磨補助装置20の動作を制御する。具体的には、制御装置30は、複数のワークWの全てが周内に含まれる円領域であって、かつ、半径が最も小さくなる円領域(面積が最も小さくなる円領域)を、仮想ワークW’として特定する。たとえば、
図7(B)に示す例では、3つのワークWが半径r1内に配置されるため、制御装置30は、半径r1の円領域を仮想ワークW’として特定する。また、
図7(C)に示す例では、3つのワークWが半径r2(r2<r1)内に配置されるため、制御装置30は、半径r2の円領域を仮想ワークW’として特定する。ここで、仮想ワークW’の要件を、「半径が最も小さくなる円領域」と定義したのは、「複数のワークWの全てが周内に含まれる円領域」だけでは、
図7(D)に示すような円領域も仮想ワークW’として特定できてしまうためである。すなわち、
図7(D)に示す例は、
図7(C)と同様にワークWが配置されている場面を示す例であるが、
図7(D)に示す円領域Cも、複数のワークWの全てが周内に含まれる円領域となっている。しかしながら、円領域Cは、
図7(C)に示す仮想ワークW’よりも半径が大きく、面積が大きい円領域となっている。この場合、円領域Cに応じたサイズを、仮想ワークW’のサイズとしてしまうと、仮想ワークW’のサイズが、ワークWの実際の配置から乖離してしまい、ワークWに作用する周速度の差に基づく回転力Fcが仮想ワークW’のサイズに見合うものとはならず、ワークWの回転を適切に補助することができない場合がある。そのため、制御装置30は、
図7(B),(C)に示すように、複数のワークWの全てが周内に含まれる円領域であって、かつ、半径が最も小さくなる円領域を、仮想ワークW’として特定する。
【0036】
なお、通常の研磨作業では、作業者が、ワークWを均等に配置するとともに、各ワークWを、保持部12(研磨ヘッド120)の中心から一定距離となる位置に配置するため、
図7(B),(C)に示すように、全てのワークWは、外周の一部が仮想ワークW’の外周と接した状態で配置されることとなる。このように、通常、複数のワークWをどのように配置して研磨するかは研磨作業の設計事項として予め決められており、これにより、仮想ワークW’のサイズ(直径)も予め決定することができる。そのため、ワークWの研磨前に、仮想ワークW’のサイズを、制御装置30に入力することが可能である。なお、
図7(E)に示すように、ワークWが4枚の場合も、同様に、制御装置30は、4枚全てのワークWが外周内に含まれ、かつ、半径が最も小さくなる(面積が最小となる)円領域を、仮想ワークW’のサイズとして求めておき、予め求めた仮想ワークW’のサイズに基づいて、研磨補助装置20の動作を制御することができる。なお、ワークWが4枚以上の場合も同様である。このように、本実施形態では、研磨ヘッド120で複数のワークWを研磨する場合には、仮想ワークW’のサイズを「ワークWのサイズ」とみなし、「ワークWのサイズ」が所定値以下である場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120に当接する第2位置へと移動させる構成とすることができる。
【0037】
さらに、制御装置30は、研磨ヘッド120がワークWを定盤11に圧接する押圧力が、適切な押圧力を超えており、定盤11の周速度の差に応じたワークWの回転を止めてしまう第1圧力値以上である場合、または、適切な押圧力を下回り、ワークWがスリップして回転しない、あるいは、センターローラー13やガイドローラー40の摩擦力により研磨ヘッド120の回転が停止してしまう第2圧力値(第2圧力値<第1圧力値)以下である場合に、アクチュエーター22の動作を制御して、サポートローラー21を、研磨ヘッド120の側面に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置へと移動させる構成とすることもできる。
【0038】
なお、制御装置30は、研磨ヘッド120が保持するワークWのサイズに基づいて、あるいは、研磨ヘッド120のワークWに対する押圧力に基づいて、サポートローラー21を研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置へと移動させる場合、ワークWを研磨装置本体10にセットして、ワークWの研磨が開始されてから一定時間が経過した後に、サポートローラー21を第2位置へと移動させる構成とすることが好ましい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るワーク研磨装置1は、平板状のワークWを保持しながら回転可能な保持部12と、保持部12により保持されたワークWに当接して研磨する研磨面を有する定盤11と、を備え、さらに、保持部12の回転を補助する研磨補助装置20と、研磨補助装置20の動作を制御する制御装置30と、を備える。そして、制御装置30は、保持部12の回転速度が所定値以下である場合に、研磨補助装置20がワークWの回転を補助するように、研磨補助装置20の動作を制御する。これにより、本実施形態に係るワーク研磨装置1は、ワークWや保持部12(あるいは研磨ヘッド120)が回転しない場合や、ワークWの回転や保持部12(あるいは研磨ヘッド120)の回転が安定しない場合に、ワークWや保持部12(あるいは研磨ヘッド120)を回転させることができ、ワークWの研磨ムラを防止し、あるいは、ワークWのエッジ部分だけが研磨されてエッジ部分がテーパー形状となってしまうことを防止し、ワークWの平坦化を高めることができる。また、本実施形態に係るワーク研磨装置1では、研磨ヘッド120の側面にサポートローラー21を当接させる構成のため、研磨ヘッド120が、研磨ヘッド120を支持するための回転軸を有しない構造である場合でも、有効に動作することができる。
【0040】
また、本実施形態に係るワーク研磨装置1では、ワークWのサイズが所定値以下である場合に、研磨補助装置20を保持部12に当接しない第1位置から、保持部12に当接する第2位置へと移動させることができる。これにより、
図6(C),(D)に示すように、ワークWのサイズが小さく、ワークWの研磨面における定盤11の周速度の差が小さくなり、ワークWに作用する回転力Fcが小さくなることで、ワークWが回転しない場合でも、研磨補助装置20でワークの回転を適切に補助することができる。また、本実施形態では、研磨ヘッド120がワークWを定盤11に圧接する押圧力が、ワークWの回転を止めてしまう第1圧力値以上である場合、または、ワークWが空転してしまう第2圧力値(第2圧力値<第1圧力値)以下である場合に、サポートローラー21を、研磨ヘッド120の側面に当接しない第1位置から、研磨ヘッド120の側面に当接する第2位置へと移動させることで、既設の研磨装置本体10だけでは研磨できなかった押圧力での研磨で、ワークを研磨することも可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、研磨補助装置20は、サポートローラー21を有し、サポートローラー21を予め回転させながら、サポートローラー21を保持部12に当接させることで、ワークWの回転を阻害することなく、ワークWの回転を補助することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
たとえば、上述した実施形態では、研磨装置本体10がセンターローラー13およびガイドローラー40を備える構成を例示したが、この構成に限定されず、研磨装置本体10がセンターローラー13およびガイドローラー40を備えない構成とすることができる。また、研磨装置本体10が、センターローラー13を備えず、複数のガイドローラー40を備え、複数のガイドローラー40で保持部12を保持する構成とすることもできる。この場合、研磨補助装置20は、保持部12に当接することで、あるいは、保持プレート121に当接することで、ワークWの回転を補助する構成とすることもできる。
【0044】
また、上述した実施形態では、研磨ヘッド120が保持プレート121を介してワークWを保持する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、研磨ヘッド120が、ワークWの側面を把持することなどで、ワークWを直接保持する構成とすることができる。また、上述した実施形態では、ワークWをワックスなどにより保持プレート121に貼付して保持する構成を例示したが、この構成に限定されず、保持プレートの下面に形成され、ワークを保持するための孔部を有するテンプレートにワークWをはめ込み、ワークWを側面から支持することで、保持プレート121でワークWを保持する構成とすることもできる。
【0045】
また、上述した実施形態では、サポートローラー21が研磨ヘッド120に当接することで、ワークWの回転を補助する構成を例示したが、この構成に限定されず、サポートローラー21が、研磨ヘッド120が保持する保持プレート121の側面に当接することで、ワークWの回転を補助する構成としてもよい。
【0046】
加えて、上述した実施形態では、回転モーター23がサポートローラー21に連結し、サポートローラー21を回転させる構成を例示したが、この構成に限定されず、回転モーター23が、ベルトやギアなどの駆動伝達系を駆動し、当該駆動伝達系を介して、サポートローラー21を回転駆動させる構成とすることもできる。
【0047】
また、上述した実施形態では、制御装置30を、研磨装置本体10に組み込んだ構成を例示したが、この構成に限定されず、制御装置30を研磨装置本体10および研磨補助装置20から独立した装置とする構成とすることもできるし、研磨補助装置20に制御装置30を組み込む構成とすることもできる。また、研磨装置本体10および研磨補助装置20に制御装置30の機能をそれぞれ分離して組み込む構成とすることもできる。
【0048】
さらに、上述した実施形態では、研磨ヘッド120の側面にサポートローラー21を当接させて、研磨ヘッド120を回転させる構成を例示したが、この構成に限定されず、研磨ヘッド120の上面にサポートローラー21を当接させて、研磨ヘッド120を回転させる構成とすることもできる。
【0049】
また、上述した実施形態に係るワーク研磨装置1では、研磨装置本体10と研磨補助装置20とを独立して備える構成を例示したが、研磨装置本体10と研磨補助装置20とを一体的に備える構成とすることもできる。
【0050】
加えて、上述した実施形態では、2つの回転検出センサー24,25を用いて、保持部12(研磨ヘッド120)の回転を検出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、回転検出センサー24,25のいずれか一方のみを用いて、保持部12(研磨ヘッド120)の回転を検出する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…ワーク研磨装置
10…研磨装置本体
11…定盤
110…研磨面
12…保持部
120…研磨ヘッド
121…保持プレート
13…センターローラー
20…研磨補助装置
21…サポートローラー
22…アクチュエーター
23…回転モーター
24,25…回転検出センサー
30…制御装置
40…ガイドローラー
W…ワーク
【要約】
【課題】ワークを適切に研磨することができるワーク研磨装置および研磨補助装置を提供する。
【解決手段】研磨装置本体10と、保持部12の回転を補助する研磨補助装置20と、研磨補助装置20の動作を制御する制御装置30と、を備え、研磨補助装置20は、モーター23により回転駆動するサポートローラー21を有し、制御装置30は、サポートローラー21の位置を、保持部12に当接しない第1位置と、保持部12に当接する第2位置とで切り替え、研磨装置本体10は、ワークWを研磨する際に、サポートローラー21が保持部12に当接しない第1位置である場合も、ワークWを一定位置で保持し研磨することが可能であり、制御装置30は、研磨補助装置20に、サポートローラー21を第2位置まで移動させてサポートローラー21を保持部12に当接させることで、保持部12に回転力を付与し、保持部12が保持するワークWを回転することを補助させる。
【選択図】
図1