(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】音響放射制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64D 33/00 20060101AFI20230308BHJP
B64C 1/40 20060101ALI20230308BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20230308BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230308BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B64D33/00 Z
B64C1/40
G01H17/00 Z
G01H17/00 C
G01M99/00 Z
G10K11/175
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018087995
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500461860
【氏名又は名称】オーロラ フライト サイエンシズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケアニー-フィッシャー, マーティン
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09415870(US,B1)
【文献】国際公開第2017/053634(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0018086(US,A1)
【文献】特開平11-255199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/00
B64C 1/40,39/00
G01H 17/00
G01M 99/00
G10K 11/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の音響放射を制御するためのシステムであって、
各々がローター(120)、前記ローター(120)を回転させるためのモーター、及び前記モーターの動作を制御するためのローターコントローラを有する、一又は複数のローターシステム(126)であって、飛行制御システム(106)から指令された飛行設定(108a)を受け取ると、個々に及び全体として、第1の音響挙動を有する望ましい音響放射を生成するように構成されている前記一又は複数のローターシステム(126)と、
前記飛行制御システム(106)及び前記一又は複数のローターシステム(126)の各々と動作可能に連結されて、前記一又は複数のローターシステム(126)からの音響放射を調整するノイズコントローラ(102)であって、前記飛行制御システム(106)からの前記指令された飛行設定(108a)を調整し、調整済みの飛行設定(108a)を前記一又は複数のローターシステム(126)に出力するように構成されている前記ノイズコントローラ(102)と
を備え、
前記一又は複数のローターシステム(126)が、前記ノイズコントローラ(102)から前記調整済みの飛行設定(108a)を受け取ると、個々に及び全体として、前記第1の音響挙動とは異なる第2の音響挙動を有する音響放射を生成するように構成されており、
前記ノイズコントローラ(102)が、前記一又は複数のローターシステム(126)からの音響放射の方向性を調節し、ノイズを所定の位置から離れるように方向付けるためにビーム形成技術を利用するように構成されている、
システム。
【請求項2】
前記ノイズコントローラ(102)が、前記ノイズコントローラ(102)に連結されたノイズ制御インターフェース(104)からのノイズ構成データに少なくとも部分的に基づいて、前記指令された飛行設定(108a)を調整するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
一又は複数の入力モジュール(122)を更に備え、前記ノイズコントローラ(102)が、前記一又は複数の入力モジュール(122)からの動作パラメータデータに少なくとも部分的に基づいて、前記指令された飛行設定(108a)を調整するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記動作パラメータデータが、(1)飛行設定(108a)の調節限度、(2)前記ローターコントローラの一又は複数のモデル、及び(3)航空機構成のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ノイズ構成データがターゲット音響挙動を特定する、請求項2
から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ノイズコントローラ(102)が、前記第2の音響挙動と前記ターゲット音響挙動とを比較して、前記第2の音響挙動が前記ターゲット音響挙動と適合するかを判定するように構成されている、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記一又は複数のローターシステム(126)からの音響放射の方向性が、前記一又は複数のローターシステム(126)内部の各ローター(120)の周波数コンテンツ及び位相を調整することにより制御される、請求項1から
6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ノイズコントローラ(102)が、前記一又は複数のローターシステム(126)の内部の各ローター(120)のブレードピッチを調整することにより各ローターからの推力を制御するように構成されている、請求項1から
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記一又は複数のローターシステム(126)の各々が、前記ノイズコントローラ(102)にフィードバックを提供するためのローターフィードバック装置を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
一又は複数のローターシステム(126)を有する航空機の音響放射を制御するための方法であって、
ノイズコントローラ(102)において、飛行制御システム(106)から指令された飛行設定(108a)を受け取ることと、
ノイズ制御インターフェース(104)から、前記一又は複数のローターシステム(126)のターゲット音響挙動を特定するように構成されたノイズ構成データを受け取ることと、
前記指令された飛行設定(108a)を調整し、少なくとも部分的に前記ノイズ構成データに基づいて、調整済みの飛行設定(108a)を生成することと、
前記調整済みの飛行設定(108a)を、前記一又は複数のローターシステム(126)の少なくとも一つに伝達することと
を含み、
前記調整済みの飛行設定(108a)が、前記一又は複数のローターシステム(126)からの音響放射の方向性を変更し、ノイズを所定の位置から離れるように方向付けるためにビーム形成技術を利用するように構成されている、方法。
【請求項11】
前記調整済みの飛行設定(108a)に応答して生成された、前記一又は複数のローターシステム(126)の音響挙動を決定するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記調整済みの飛行設定(108a)が、前記一又は複数のローターシステム(126)内部の各モーターの周波数コンテンツ及び位相を調整して、前記一又は複数のローターシステム(126)からの音響放射の方向性を変更するように構成される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
一又は複数の入力モジュール(122)から動作パラメータデータを受け取るステップを更に含み、前記調整済みの飛行設定(108a)が、少なくとも部分的に前記動作パラメータデータに基づいて生成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、音響放射を制御するためのシステムと方法に関し、具体的には、航空機のプロペラ、ファン、及び/又はローターによって生じた及び/又は発せられた音響放射を制御するためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]航空機の音響特性(音響放射源のすべての組み合わせ)を管理することは、多くの環境において重要である。乗客及び地上の人々への迷惑(騒音公害として知られる)を最小にすることが民間利用に重要であり、検出を回避することが軍用機の有効性に重要である。実際、騒音公害と、その制御(又は低減)に対する需要とにより、人々及び/又は居住エリア近傍での航空機の運航を防止又は抑制する重大な規制が設けられてきた。更に、この音響放射は、大きな方向性を有し、長距離を伝播し得る。不快であることを別にしても、特定のアプリケーションにおいて生成される高強度のノイズは、健康リスクを引き起こす可能性があり、場合によっては近くの材料の構造的一体性にリスクをもたらす可能性がある。
【0003】
[0003]航空機のローター/プロペラが音響放射の主要源であるローター駆動式の航空機は、音響放射を特に生成し易い。したがって、プロペラ/ファン/ローターが発する音響放射は、推力/推進力を生成するというそれらの主要機能の望ましくない副産物である。上述を鑑み、航空機、例えば航空機のプロペラ、ファン、及び/又はローターによって発せられる音響放射を制御するためのシステムと方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明は、航空機が発する音響放射を制御するためのシステムと方法を目的とする。
【0005】
[0005]第1の態様によれば、航空機の音響放射を制御するためのシステムは、各々がローター、ローターを回転させるためのモーター、及びモーターの動作を制御するためのローターコントローラを有する一又は複数のローターシステムであって、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取ると、個々に及び全体として、第1の音響挙動を有する望ましい音響放射を生成するように構成された一又は複数のローターシステムと、飛行制御システム及び一又は複数のローターシステムの各々と動作可能に連結されて、一又は複数のローターシステムからの音響放射を調整し、調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムへと出力するように構成されたノイズコントローラとを備えており、一又は複数のローターシステムは、ノイズコントローラからの調整済みの飛行設定を受け取ると、第1の音響挙動とは異なる第2の音響挙動を有する音響放射を、個々に及び全体として生成するように構成されている。
【0006】
[0006]第2の態様によれば、音響放射を制御するためのシステムは、各々がローター、ローターを回転させるためのモーター、及びモーターの動作を制御するためのローターコントローラを有する一又は複数のローターシステムと、飛行制御システム及び一又は複数のローターシステムの各々と動作可能に連結されて、一又は複数のローターシステムからの音響放射を調整するように構成されたノイズコントローラであって、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取り、調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムへと出力して、一又は複数のローターシステムからの音響放射を、ターゲット音響挙動と適合させるように調整するノイズコントローラとを備える。
【0007】
[0007]特定の態様では、ノイズコントローラは、音響放射の方向性をターゲット音響挙動と適合させるように調節する一又は複数のビーム形成技術を利用するように構成される。
【0008】
[0008]特定の態様では、ノイズコントローラは、制御インターフェースに対し、システムの現在及び未来のパフォーマンスを反映したフィードバックを提供するように構成される。
【0009】
[0009]特定の態様では、ノイズコントローラは、ノイズコントローラに連結されたノイズ制御インターフェースからのノイズ構成データに少なくとも部分的に基づいて、指令された飛行設定を調整するように構成される。
【0010】
[0010]特定の態様では、システムは一又は複数の入力モジュールを更に備え、ノイズコントローラは、前記一又は複数の入力モジュールからの動作パラメータデータに少なくとも部分的に基づいて、指令された飛行設定を調整する。
【0011】
[0011]特定の態様では、ノイズ構成データがターゲット音響挙動を特定する。
【0012】
[0012]特定の態様では、ノイズコントローラは、第2の音響挙動とターゲット音響挙動とを比較して、第2の音響挙動がターゲット音響挙動と適合するかを判定する。
【0013】
[0013]特定の態様では、ノイズコントローラは、ビーム形成技術を利用して一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を調整する。
【0014】
[0014]特定の態様では、一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性は、一又は複数のローターシステム内部の各ローターの周波数コンテンツ及び位相を調整することにより制御される。
【0015】
[0015]特定の態様では、ノイズコントローラは、各ローターのブレードのピッチを調整することにより一又は複数のローターシステム内部の各ローターからの推力を制御するように構成される。
【0016】
[0016]特定の態様では、一又は複数のローターシステムの各々は、ノイズコントローラへフィードバックを提供するローターフィードバック装置を含む。
【0017】
[0017]特定の態様では、ノイズコントローラは、各ローターフィードバック装置から飛行制御システムへフィードバックを伝達するように構成される。
【0018】
[0018]特定の態様では、動作パラメータデータは、(1)飛行設定調節限度、(2)ローターコントローラの一又は複数のモデル、及び(3)航空機の構成のうちの少なくとも一つを含む。
【0019】
[0019]第3の態様によれば、一又は複数のローターシステムを有する航空機の音響放射を制御するための方法は、ノイズコントローラにおいて、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取ること;ノイズ制御インターフェースから、一又は複数のローターシステムのターゲット音響挙動を特定するノイズ構成データを受け取ること;指令された飛行設定を調整し、ノイズ構成データに少なくとも部分的に基づいて生成された、調整済みの飛行設定を生成すること、及び調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムの少なくとも一つに伝達することを含む。
【0020】
[0020]特定の態様では、方法は、調整済みの飛行設定に応答して生成された一又は複数のローターシステムの音響挙動を決定するステップを更に含む。
【0021】
[0021]特定の態様では、方法は、調整済みの飛行設定に応答して生成された音響挙動とターゲット音響挙動とを比較するステップを更に含む。
【0022】
[0022]特定の態様では、方法は、音響挙動がターゲット音響挙動と適合しない場合に調整済みの飛行設定を調整するステップを更に含む。
【0023】
[0023]特定の態様では、調整済みの飛行設定は、ビーム形成技術を利用して一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を変更する。
【0024】
[0024]特定の態様では、調整済みの飛行設定は、一又は複数のローターシステム内部の各モーターの周波数コンテンツ及び位相を調整して一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を変更する。
【0025】
[0025]特定の態様では、方法は、一又は複数の入力モジュールから動作パラメータデータを受け取るステップを更に含み、調整済みの飛行設定は、少なくとも部分的に動作パラメータデータに基づいて生成される。
【0026】
[0026]特定の態様では、動作パラメータデータは、(1)飛行設定調節限度、(2)ローターコントローラの一又は複数のモデル、及び(3)航空機の構成のうちの少なくとも一つを含む。
【0027】
[0027]特定の態様では、方法は、一又は複数のローターシステム内部の各ローターを微調整して、一定範囲の周波数全体に音響エネルギーをできる限り分配するか、又はそれ以外の方法で各モーターの音響特性を最適化して、検出可能性及び/又は迷惑度を低減するステップを更に含む。
【0028】
[0028]本発明の一実施形態は航空機の音響放射を制御するためのシステムに関し、このシステムは、各々がローター、ローターを回転させるためのモーター、及びモーターの動作を制御するためのローターコントローラを有する一又は複数のローターシステムであって、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取ると、個々に及び全体として、第1の音響挙動を有する望ましい音響放射を生成するように構成された一又は複数のローターシステムと、飛行制御システム及び一又は複数のローターシステムの各々と動作可能に連結されて、一又は複数のローターシステムからの音響放射を調整するノイズコントローラであって、飛行制御システムからの指令された飛行設定を調整し、調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムへと出力するように構成されたノイズコントローラとを備え、一又は複数のローターシステムは、ノイズコントローラからの調整済みの飛行設定を受け取ると、第1の音響挙動とは異なる第2の音響挙動を有する音響放射を、個々に及び全体として生成するように構成されている。ノイズコントローラは、ノイズコントローラに連結されたノイズ制御インターフェースからのノイズ構成データに少なくとも部分的に基づいて、指令された飛行設定を調整するように構成され得る。これにより動作が向上し得る。システムは、一又は複数の入力モジュールも含むことができ、この場合ノイズコントローラは、前記一又は複数の入力モジュールからの動作パラメータデータに少なくとも部分的に基づいて、指令された飛行設定を調整するように構成される。ノイズ構成データは、ターゲット音響挙動を特定し得る。ノイズコントローラは、第2の音響挙動とターゲット音響挙動とを比較して、第2の音響挙動がターゲット音響挙動と適合するかを判定するように構成され得る。ノイズコントローラは、ビーム形成技術を利用して一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を調整するように構成され得る。一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性は、一又は複数のローターシステム内部の各ローターの周波数コンテンツ及び位相を調整することにより制御され得る。ノイズコントローラは、各ローターのブレードのピッチを調整することにより一又は複数のローターシステム内部の各ローターからの推力を制御するように構成され得る。一又は複数のローターシステムの少なくとも一つは、ノイズコントローラへフィードバックを提供するローターフィードバック装置を含むことができる。ノイズコントローラは、各ローターフィードバック装置から飛行制御システムへフィードバックを伝達するように構成され得る。動作パラメータデータは、(1)飛行設定調節限度、(2)ローターコントローラの一又は複数のモデル、及び(3)航空機の構成のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0029】
[0029]本発明の別の実施形態は、一又は複数のローターシステムを有する航空機の音響放射を制御するための方法に関し、この方法は、ノイズコントローラにおいて、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取ること、ノイズ制御インターフェースから、一又は複数のローターシステムのターゲット音響挙動を特定するように構成されたノイズ構成データを受け取ること;指令された飛行設定を調整し、ノイズ構成データに少なくとも部分的に基づいて調整済みの飛行設定を生成すること、及び調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムの少なくとも一つに伝達することを含む。方法は、調整済みの飛行設定に応答して生成された一又は複数のローターシステムの音響挙動を決定するステップも含むことができる。方法は、調整済みの飛行設定に応答して生成された音響挙動とターゲット音響挙動とを比較するステップも含むことができる。方法は、音響挙動がターゲット音響挙動と適合しない場合に調整済みの飛行設定を調整するステップも含むことができる。調整済みの飛行設定は、ビーム形成技術を利用して一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を変更するように構成され得る。調整済みの飛行設定は、一又は複数のローターシステム内部の各モーターの周波数コンテンツ及び位相を調整して、一又は複数のローターシステムからの音響放射の方向性を変更するように構成され得る。方法は、一又は複数の入力モジュールから動作パラメータデータを受け取るステップも含むことができ、調整済みの飛行設定は、少なくとも部分的に動作パラメータデータに基づいて生成される。動作パラメータデータは、(1)飛行設定調節限度、(2)ローターコントローラの一又は複数のモデル、及び(3)航空機の構成のうちの少なくとも一つを含み得る。方法は、一又は複数のローターシステム内部の各ローターを微調整し、一定範囲の周波数全体に音響エネルギーをできる限り分配するか、又はそれ以外の方法で各モーターの音響特性を最適化して、検出可能性及び/又は迷惑度を低減するステップも含むことができる。
【0030】
[0030]本発明の別の実施形態は、音響放射を制御するためのシステムに関し、このシステムは、各々がローター、ローターを回転させるためのモーター、及びモーターの動作を制御するためのローター コントローラを有する一又は複数のローターシステムと、飛行制御システム及び一又は複数のローターシステムの各々と動作可能に連結されて、一又は複数のローターシステムからの音響放射を調整するように構成されたノイズコントローラであって、飛行制御システムから指令された飛行設定を受け取り、調整済みの飛行設定を一又は複数のローターシステムへと出力して、一又は複数のローターシステムからの音響放射を、ターゲット音響挙動と適合させるように調整するノイズコントローラとを備える。ノイズコントローラは、音響放射の方向性をターゲット音響挙動と適合するように調節する一又は複数のビーム形成技術を利用するように構成され得る。これにより動作が向上するであろう。ノイズコントローラは、制御インターフェースに対し、システムの現在及び未来のパフォーマンスを反映したフィードバックを提供するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[0031]本発明の上記及びその他の利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより容易に理解されるであろう。
【0032】
【
図1】[0032]一つの例示的音響放射制御システムのアーキテクチャを示す。
【
図2a-b】[0033]遠隔観察者に対し、例示的な固定翼航空機が発する音響放射パターンを示す。
【
図2c】遠隔観察者に対し、例示的な固定翼航空機が発する音響放射パターンを示す。
【
図3】[0034]音響放射制御システムに使用するために適した第2の例示的航空機を示す。
【
図4】[0035]音響放射制御システムのための例示的音響放射制御プロセスを示す。
【
図5】[0036]音響放射制御プロセスを具現化する飛行制御システムの機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[0037]本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照して以下に記載する。図面内のコンポーネントは、必ずしも正確な縮尺で描かれておらず、むしろ本実施形態の原理を明瞭に示すことに重点が置かれている。例えば、要素の大きさは、明瞭性及び記載の利便性のために誇張されている場合がある。更に、可能な場合には、実施形態の同じ又は類似の要素を指すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用されている。以下の記載において、周知の機能又は構成については、不要な詳細で本発明を曖昧にしてしまう可能性があるため、詳細に記載しない。明細書のいかなる文言も、特許請求されない要素を実施形態の実施に必須のものとして示していると解釈されるべきではない。以下の記載において、「第1」、「第2」、「上」、「下」、「横」、「前」、「後」などの用語は、利便性のための言葉であり、限定的な用語でないことを理解されたい。本出願には、以下の用語及び定義が適用される。
【0034】
[0038]本明細書において使用される用語「約」及び「概ね」は、値(又は値の範囲)を調節又は記載するために使用されるとき、その値又は値の範囲に合理的に近いことを意味する。したがって、本明細書に記載される実施形態は、記載された値及び値の範囲のみに限定されず、むしろ合理的に実行可能な偏差を含む。水平及び垂直といった用語は、本明細書で使用されるとき、例えば航空機が地上にあるときの、地面に対する角度又は平面を説明するために使用される。
【0035】
[0039]本明細書において使用される用語「空中ビークル」及び「航空機」は、固定翼航空機、無人空中ビークル、可変翼航空機、及び垂直離着陸(VTOL)航空機を含むがこれらに限定されない飛行可能なマシンを指す。VTOL航空機には、固定翼航空機(例えば、ハリアージェット)、回転翼航空機(例えば、ヘリコプター)、チルトローター/チルトウイング航空機、マルチローター航空機などが含まれる。
【0036】
[0040]本明細書において使用される「及び/又は」は、「及び/又は」によって接続されるリスト中のアイテムのいずれか一つ又は複数を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、三つの要素の組{(x),(y),(x、y)}のいずれかの要素を意味する。換言すれば、「x及び/又はy」、「x及びyの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y、及び/又はz」は、七つの要素の組{(x),(y),(z),(x、y),(x、z),(y、z),(x、y、z)}のいずれかの要素を意味する。換言すれば、「x、y、及び/又はz」は、「x、y、及びzのうちの一又は複数」を意味する。
【0037】
[0041]本明細書において使用される用語「伝達する/通信する」及び「伝達/通信」は、ソースから宛先へデータを送信する又は他の方法で運ぶこと、及び通信媒体、システム、チャネル、ネットワーク、装置、ワイヤ、ケーブル、ファイバ、回路、及び/又はリンクに、宛先へ運ばれるべきデータを送達することの両方を指す。
【0038】
[0042]本明細書において使用される用語「回路」及び「回路網」は、ハードウエアを、ハードウエアによって実行されるように、及び/又はその他の方法でハードウエアと関連付けられるように構成することのできる物理的電子コンポーネント(即ち、ハードウエア)及び任意のソフトウエア及び/又はファームウエア(「コード」)を指す。本明細書で使用されるとき、例えば、特定のプロセッサ及びメモリは、一又は複数のコードラインの第1の組を実行するとき第1の「回路」を含むことができ、一又は複数のコードラインの第2の組を実行するとき第2の「回路」を含むことができる。
【0039】
[0043]本明細書において使用される用語「例示的」は、非限定的な例、場合、又は説明として働くことを意味する。本明細書において使用されるとき、用語「例えば(e.g.)」及び「例えば」は、一又は複数の非限定的な例、場合、又は説明の列挙を開始する。本明細書においては、機能の実行が無効にされる又は有効性を失う(例えば、オペレータによる設定、工場トリムなどによって)かどうかに関係なく、回路網は、機能を実行するための必要なハードウエア及びコード(いずれかが必要であれば)を備えるときは常に、機能を実行するために「動作可能」である。
【0040】
[0044]本明細書において使用される用語「プロセッサ」は、ハードウエア、有形に組み込まれたソフトウエア、又はそれらの両方に実装された、プログラム可能又は不能の、処理装置(device)、装置(apparatuses)、プログラム、回路、コンポーネント、システム、及びサブシステムを意味する。本明細書において使用される用語「プロセッサ」には、限定されないが、一又は複数のコンピューティング装置、ハードウエア回路、信号変調装置及びシステム、システムを制御するための装置及びマシン、中央処理装置、プログラム可能な装置及びシステム、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路、チップ上システム、個別の要素及び/又は回路を備えるシステム、状態マシン、仮想マシン、データプロセッサ、プロセシング機構、並びにこれらのいずれかの組み合わせが含まれる。プロセッサは、例えば、任意の種類の汎用マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、デジタル信号処理(DSP)プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)とすることができる。プロセッサは、メモリ装置に連結又は統合することができる。
【0041】
[0045]本明細書において使用される用語「メモリ装置」は、プロセッサによって使用される情報を記憶するためのコンピューターハードウエア又は回路網を意味する。メモリ装置は、任意の適切な種類のコンピューターメモリ又は他のあらゆる種類の電子記憶媒体、例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CDROM)、電気工学メモリ、光磁気メモリ、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、コンピュータ可読媒体などとすることができる。
【0042】
[0046]本明細書において使用される用語「ローター」は、回転運動を変換して推力及び/又は推進力を生成する一又は複数の放射状ブレードを有する中央ハブを有する装置を意味する。例示的なローターには、限定されないが、航空機のプロペラ、ファン、一体型ブレードローター(IBR)、ブレードディスク(例えば、ブリスク)、及びヘリコプターローターが含まれる。
【0043】
[0047]本明細書に開示されるのは、航空機のローターアセンブリ(例えば、機械的装置によって駆動されるプロペラ、又はその他のローター)を含む航空機が発する音響放射を制御するためのシステムと方法である。既存の解決法は消音型ローターブレード、消音型モーターなどの設計により音響放射を緩和しようとしているが、これら既存の解決法は、集合としての音響源に対処しておらず、これを全体として管理することで、さらに効果的な結果を生むことができる。放射されるエネルギーの、対象の音響エリア(例えば、地上の人)に対する知覚性及び/又は迷惑度を低減するために、一又は複数のローターの動作にリアルタイムで適用できる微調整が存在するが、それらも同様に集合としての音響放射源に対処しない。
【0044】
[0048]開示される音響放射制御システムは、伝統的に有意義な性能及び/又は運用上のペナルティを保持する音響放射を制御するための既存の解決法を上回る数々の利点を提供する。例えば、音響放射を制御するための一つの解決法は、回転速度及び/又は円盤荷重を制御することにより推力を低減すること、即ち音響放射を低減することである。音響放射を制御するための別の方法では、狭義の飛行側面図が必要である。しかしながら、本明細書に開示される音響放射制御システムは、中央ノイズコントローラを用いて集合体としてのローターシステムの一又は複数からの集約ノイズを管理する(即ち、ノイズ源をまとめて管理する)。したがって、ノイズコントローラは、ノイズ源が互いから独立して動作することが可能であるとき以前は可能でなかった方法で航空機の集約音響放射を変更することができる。航空機の推進制御システムに音響放射制御システムを一体化することにより、一又は複数のローターから生成される音響放射を調整すること、例えば、飛行を維持するというローターの主要な役割を致命的に損なうことなく対象の音響エリアに対する知覚性及び又は迷惑度を制御することが可能になる。
【0045】
[0049]
図1は、航空機(例えば、固定翼航空機202、マルチローター空中ビークル300)に用いられる例示的な音響放射制御システム100のアーキテクチャを示している。しかしながら、言うまでもなく、音響放射制御システム100のコンポーネントは様々な種類の航空機構成(例えば、ターボプロップ、全電気式、ハイブリッド電気)にわたって変化してよく、しかし航空機構成及びローターアセンブリ128の種類に関係なく音響放射制御システム100の基礎的な原理が適用される。
【0046】
[0050]図示のように、音響放射制御システム100は、中央ノイズコントローラ102、ノイズ制御インターフェース104、飛行制御システム106、飛行制御システムインターフェース108、複数の入力モジュール122、及び複数のローターシステム126を備えることができる。複数のローターシステム126の各々は、ローターアセンブリ128(例えば、ローター120とローター120を回転させる機械的装置124の組み合わせ)、ローターコントローラ116、及び/又はローターフィードバック装置118を含むことができる。複数の入力モジュール122は、例えば、許容偏差モジュール110、ロータードライバモジュール112、及び航空機レイアウトモジュール114を含む。
【0047】
[0051]ノイズコントローラ102は、複数のローターシステム126を連結(例えば、監視及び制御)して放射アレイをつくる。動作時には、放射アレイは、動的に(例えば、継続的にリアルタイムで又は準リアルタイムで)各ローターアセンブリ128の制御パラメータの一又は複数を設定する。制御パラメータには、例えば、各機械的装置124(例えば、電気モーター)の毎分回転数(RPM)、ブレードピッチ、及び位相が含まれる。制御パラメータは、ローターシステム126が主要機能設定点(例えば、望ましい推力設定)によって特定されうる許容可能な動作範囲内で動作するように、ノイズコントローラ102によって選択され得る。音響放射制御システム100は、高帯域幅の高速応答モーターコントローラを使用することができる。各ローターシステム126は、フィードバックとして、正確なモーターの状態に関する情報を提供することができ(例えば、ローターコントローラ116及び/又はローターフィードバック装置118を介して)、これは、例えば、高精度回転位置エンコーダを用いて容易となり得る。
【0048】
[0052]ノイズ管理コンポーネント。一次ノイズ管理コンポーネントには、ノイズ制御インターフェース104と通信可能に連結されたノイズコントローラ102が含まれる。ノイズ制御インターフェース104は、高レベルのオペレーター(例えば、自動操縦、人間パイロットなど)が、ノイズコントローラ102とインターフェースをとるか又はそれ以外の方法で通信してノイズ管理を容易にすることを可能にする。例えば、ノイズ制御インターフェース104は、ノイズコントローラに渡されて処理されるノイズ構成データを生成するために、高レベルのオペレーターが望ましいノイズ 構成を入力する(又はそれ以外の方法でノイズプロファイルを調整する)ことを可能にする。
【0049】
[0053]ノイズ制御インターフェース104は、別のシステム(例えば、自動操縦)と通信するインターフェースとすることができるか、或いは人間のオペレーターによって使用される一又は複数のユーザ作動入力装置を含むことができる。一又は複数のユーザ作動入力装置は、例えば、物理的ボタン、物理的スイッチ、デジタイザ(タッチパッド、又はディスプレイ装置上にかぶせた透明層)、及びその他入力装置を含む。ノイズ制御インターフェース104は更に、一又は複数の発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)スクリーン、スピーカー、アラームなどといった一又は複数のディスプレイ装置を含んでもよい。一又は複数のユーザ作動入力装置は、ローカルでも(即ち、航空機上にある)、リモートでも(例えば、航空機外にあって、無線通信などのネットワークを介して通信可能に連結される)よい。ノイズ制御インターフェース104は、指令された飛翔行動が航空機の音響シグネチャにどのように影響するか(例えば、ピッチアップは前方への音響エネルギー投射を増大させ、急速なスロットル変更は知覚性を増大させる)に関するフィードバック情報を提供することができ、このような情報は、望ましい音響シグネチャの達成に関する性能測定基準の表示、及び航空機の操縦がそれら基準(例えば、経験知覚騒音レベル(EPNL))にどのように影響するか又は閾値(例えば、居住エリア上での運行要件がn dBを超えないこと)にどのように違反するかの表示を含む。このようなフィードバックは、リアルタイムで提供されてもよく、又は飛行計画又は操作を容易にするために前もって予測されてもよい(この降下プロファイルを維持するとn秒以内に望ましい知覚閾値に違反するなど)。このようなフィードバックは、人間又は自律的コントローラによって、航空機の音響性能を計画、実行、及び/又は監視するために利用され得る。一実施例として、フィードバックは、あるルートの音響的影響を他のコストパラメータ(例えば、燃料の燃焼、飛行時間など)とバランスさせるためのルート計画ルーチンに有用な形態で提供され得る。
【0050】
[0054]ノイズ制御インターフェース104は、例えば、地理情報システム(GIS)に統合してもよい(又は組み込んでもよい)。GISは、少なくとも部分的に地理的条件、構造物、人口分布、その他GISデータに基づいて、所与の位置及び飛行操作のための望ましい音響管理技術を自動的に決定するために使用することができる。この目的のために、GISは、地球表面の地理に関するデータを捕獲、記憶、チェック、及び/又は表示するために利用され得る。GISは更に、ノイズコントローラ102が地球表面の地理的特徴を理解し分析することを可能にするために、地図データを表示及び/又は提供することができる。
【0051】
[0055]ノイズコントローラ102は、少なくとも一つのメモリ装置と動作可能に連結されて一又は複数のノイズ制御プロセス及び/又はメモリ装置(複数可)に記憶されたアルゴリズムを実行する一又は複数のプロセッサを含む。ノイズコントローラ102は、飛行制御システム106と複数のローターシステム126との間に通信可能に連結される。動作時には、ノイズコントローラ102は、飛行制御システム106から一又は複数の指令された飛行設定(例えば、ローターアセンブリコマンド及び/又はナビゲーションコマンド)を、受け取って調整(例えば修正)する。
【0052】
[0056]一又は複数の指令された飛行設定は、ノイズコントローラ102によって調整されて一又は複数の調整済み飛行設定となり、調整済み飛行設定は次いで複数のローターシステム126の各々に渡される。例えば、ノイズコントローラ102は、指令された飛行設定が、複数のローターシステム126に伝達されると、ノイズ制御インターフェース104を介して確認されたターゲット音響挙動とは異なる音響挙動を生成することを決定する(例えば、モデル化及び/又は実測により)ことができる。ターゲット音響挙動を達成するために、調整済み飛行設定は、複数のローターシステム126に伝達されて集約音響挙動を調節する。
【0053】
[0057]ノイズコントローラ102は更に、各ローターシステム126のローターフィードバック装置118を使用して、ローターシステム126の各々の一又は複数のパラメータを監視することができる。ノイズコントローラ102は、ローターシステム126から飛行制御システム106へ戻るローター/プロペラ位置データストリームとして一又は複数のパラメータを伝達する。
【0054】
[0058]機械的装置124は更に、音響エネルギーを可能な限り広帯域の周波数に分散するために微調整することができ、これは、各機械的装置124に異なるRPM設定を選択すること及び/又はRPM設定を経時的に急速に変化させることにより達成することができる。このようなエネルギーの分散により、強め合う干渉が抑制され、それ以外にもトーンの突出又は迷惑と知覚され易い又はみなされ易いその他属性が低減される。
【0055】
[0059]ノイズコントローラ102によって適用されるノイズ修正スキームは、複数の入力モジュール122の一又は複数からの動作パラメータデータを組み込むように設計される。動作パラメータデータは、動作情報及び/又はパラメータ(即ち、動作限界)を反映することができる。動作情報及び/又はパラメータには、例えば、望ましいノイズ修正スキーム、特定のノイズ修正スキームの一又は複数のパラメータ(例えば、ビーム形成が利用されるときのビーム方向)、飛行設定調節限度(例えば、許容偏差モジュール110から)、ローターコントローラ116の一又は複数のモデル(例えば、ロータードライバモジュール112から)、航空機構成データ(例えば、航空機レイアウトモジュール114から)などが含まれる。
【0056】
[0060]ノイズコントローラ102は、ターゲット音響挙動を達成するため、又はそうでなくともターゲット音響挙動に適合する(即ち、ターゲット音響挙動からの所定の許容偏差内で)ためには、飛行制御システム106からの指令された飛行設定をどのように調整するべきかを決定するために、ノイズ構成データ及び動作パラメータデータ、並びに任意の内部構造化スキームを利用する。ノイズコントローラ102は更に、ステータス情報(例えば、フィードバックデータ)をノイズ制御インターフェース104又は飛行制御システム106に伝達することができる。ステータス情報は、ノイズ制御スキームの現状に関する情報及び/又はフィードバックを含み得る。ステータス情報は更に、特定の実装態様の限界(例えば、航空機の構成に基づく)を前提としてノイズコントローラ102が生成することのできるノイズ修正を含み得る。
【0057】
[0061]入力モジュール122。上述のように、ノイズコントローラ102は、許容偏差モジュール110、ロータードライバモジュール112、及び航空機レイアウトモジュール114といった複数の入力モジュール122と通信可能に連結され得る。複数の入力モジュール122の各々は、メモリ装置に連結されたプロセッサ(又はその他回路網)を含むがこれに限定されない、それぞれのモジュールに関連付けられた機能を実行することのできるハードウエア、ファームウエア、及びソフトウエアのあらゆる組み合わせを利用することができる。複数の入力モジュール122からの動作パラメータデータは、指令された飛行設定がどのように調節又はそれ以外に変更されるかを限定及び/又は指示するために、ノイズコントローラ102によって使用される。
【0058】
[0062]許容偏差モジュール110は、ノイズコントローラ102が航空機の飛行特性又は安全性を損なうことなく飛行制御システム106からの指令された飛行設定を変更できる度合いを制限するための、一組のシステム限界(例えば、許容されるばらつき)を課すように構成され得る。システム限界は、飛行期間を通してリアルタイムで変化しうる任意の数の方法で(例えば、範囲、許容パーセンテージ偏差)設けることができる。これら限界は、様々な飛行フェーズ、気象条件などと複雑な関係を有していると思われる。例えば、許容偏差モジュール110は、航空機がその最大(又はほぼ最大)のグロス離陸重量で離陸し、したがってリフトオフを達成するためにすべての利用可能な推力を必要とするであろうことを示し得る。逆に、降下中には、許容偏差モジュール110は、ローターアセンブリ128が無負荷回転数又はほぼ無負荷回転数まで減速されうることを示し得る。
【0059】
[0063]許容偏差モジュール110は更に、少なくとも部分的に気象条件(例えば、雲)に基づくシステム限界の組を課すことができる。例えば、雲の位置又は雲の上を運行しているときには、雲が音を分散及び/又は反射することができるため、ローターアセンブリ128はノイズについて厳密に制御されなくともよい。したがって、雲の上を運行しているとき、雲が音を上方へ(地面から離れる方向へ)分散又は反射することができるため、航空機はより大きな音を出すことができる。しかしながら、雲の直下を運行しているとき、雲が音を下方へと(地面及び対象の音響エリアに向かって)偏向させうるために、航空機はノイズについてより厳しく(例えば、特に静かに)制御されなければならない。
【0060】
[0064]ロータードライバモジュール112は、ノイズコントローラ102に、種々のノイズ制御スキームの性能に影響するであろうローターコントローラ116の限界(例えば、ステップ応答時間)を理解させるために、ローターコントローラ116の動的モデルを利用することができる。例えば、ガスタービンは急速にRPMを変化させることができないので、高速RPM変調に基づく音響制御スキームは、機械的装置124としてガスタービンを使用する航空機には有用でないだろう。
【0061】
[0065]航空機レイアウトモジュール114は、航空機及び/又はローターシステム126の構成を説明する一組の構成データを提供するように構成される。例えば、構成データは、空間におけるローターシステム126の配置/レイアウト、プロペラ/ローターのブレード特性、胴体レイアウトなどを説明するものであり得る。構成データは更に、音の伝播に大きな影響を与える任意の航空機コンポーネント(例えば、胴体)を説明することができる。このような様々な属性は、音波伝達及び干渉を計算するためにノイズコントローラ102によって使用されうる(例えば、ビーム形成を達成するために必要な位相遅れを計算することは、三角法を使用したノイズ源と対象の音響エリアとの相対的位置を用いて達成されうる)。このような情報は、音響挙動を決定するためにソースの指向性モデルと組み合わせることができる。
【0062】
[0066]ローターシステム126。音響放射制御システム100は、ノイズコントローラ102に連結された複数のローターシステム126を含む。各ローターシステム126は、ローターコントローラ116、ローターフィードバック装置118、及びローターアセンブリ128(例えば、ローター120及びローター120を回転させるための機械的装置124)を含むことができる。機械的装置124は、DCブラシレスモーターなどの電気モーターとすることができるが、ガスタービンエンジン、ピストンエンジンなどといった他の機械的装置124も考慮される。
【0063】
[0067]ローター120は、様々な構成に配置されて、一又は複数のブレード(例えば、1から25又はそれより多いブレード,更に好適には2から20のブレード、それよりも更に好適には2から10のブレード、最も好適には2から6のブレード)を有することができる。一又は複数のローターブレードは、ブレードピッチ又はその他のパラメータ(例えば、統合されたフラップ、氷結防止ブラダーなど)の点で調節可能であってよい。ブレードピッチは、例えば、飛行制御システム106及び/又はノイズコントローラ102に接続された斜板により制御することができる。特定の態様では、ローター120は、バランスをとるためのカウンタウェイトを有する単一のローターブレードを使用する。更に、一又は複数のローターブレードは、本質的に低ノイズに設計することができる。
【0064】
[0068]音響放射制御システム100は、所定の数のローターシステム126に制限される。この目的のために、図示の音響放射制御システム100は、第1、第2、及び第nのローターシステム126を有し、ローターn120nは航空機の第nのローターを表わしている。音響放射制御システム100は、ローター120又はローターシステム126がどのような特定の面又はその他構成にも整列する必要がないという点で柔軟性を有している。
【0065】
[0069]動作時には、ローターコントローラ116は、機械的装置124及び/又はローター120を制御する。ローターコントローラ116は、例えば、ローター120の速度(例えば、RPM)を、機械的装置124への電流(又はスロットル/燃料の流れ)を制御することにより、制御することができる。ローターコントローラ116は、ブレードピッチ、シャフト位置、電流の流れ、推力、各電気モーターの位相などを制御又は調節することもできる。例えば、機械的装置124が電気モーターである場合、ローターコントローラ116は、例えば、ノイズコントローラ102及び/又は飛行制御システム106からの飛行設定コマンドに応答し、電流コントローラを介して、電気モーターへの動作電流を調節することにより電気モーターを制御することができる。
【0066】
[0070]ローターフィードバック装置118は、ローターアセンブリ128の一又は複数のパラメータを動的に監視するために一又は複数のセンサを使用する。一又は複数のパラメータは、例えば、ブレードピッチ、シャフト位置、RPM、ノイズレベル、電流の流れ、推力、各電気モーターの位相などを含むことができる。一又は複数のパラメータは、ローターパラメータデータのデータストリームとしてローターフィードバック装置118によりノイズコントローラ102に動的に伝達され得る。
【0067】
[0071]機械的装置124は、各々が同じ組の周波数を生成するように微調整することができる。変動するローター120半径を有する航空機の場合、例えば、望ましい音響周波数コンテンツ及び推力性能を達成するために、ノイズコントローラ102によって様々なRPM及び/又はブレードピッチが選択され得る。
【0068】
[0072]飛行制御コンポーネント。飛行制御コンポーネントには、飛行制御インターフェース108及び飛行制御システム106が含まれる。飛行制御インターフェース108は、望ましい航空機挙動の飛行コマンド(例えば、指令された飛行設定)を提供するために、高レベルのオペレーター(例えば、自動操縦、人間パイロットなど)と低レベルの飛行制御システムとの間に、航空機の飛行特性の通信を提供する。指令された飛行設定は、ローターアセンブリコマンド及び/又はナビゲーションコマンド、例えばターゲットウェイポイント位置、ローター速度/RPM、ブレードピッチなどを含み得る。飛行制御インターフェース108は、一又は複数のユーザ作動入力装置、例えば物理的ボタン、物理的スイッチ、デジタイザ(タッチパッド、又はディスプレイ装置にかぶせた透明層)、及びその他入力装置を含み得る。飛行制御インターフェース108は更に、一又は複数のディスプレイ装置、例えば一又は複数のLED、LCDスクリーン、スピーカー、アラームなどを含み得る。
【0069】
[0073]飛行制御インターフェース108は、一次飛行制御(操縦桿/ヨーク、操縦桿、サイドスティック又は集約的に、方向舵ペダル、ブレーキ、及びスロットル)、及び二次飛行制御(例えば、スイッチ、ノブ、ロッカー、フューズなど)といった一又は複数のコックピットコントロールと動作可能に連結され得る。コックピットコントロールは、ローカル(即ち、航空機上にある)でも、リモート(例えば、航空機外にあって、無線通信などのネットワークを介して通信可能に連結される)でもよい。
【0070】
[0074]飛行制御システム106は、ノイズコントローラ102と通信可能に連結される。飛行制御システム106は、オペレーターからの指令された挙動を、操縦翼面、ローターアセンブリ128の設定といった航空機の個別のコントロールエフェクタコマンドを反映する一又は複数の指令された飛行設定に変換するように構成される。伝統的なシステムでは、飛行制御システム106からのコマンドは、ローターコントローラ116に直接リンクされていた。しかしながら、音響放射制御システム100を使用するとき、飛行制御システム106は、代わりに一又は複数の指令された飛行設定(例えば、元の指令された飛行設定)をノイズコントローラ102に渡し、ノイズコントローラは、一又は複数の指令された飛行設定(例えば、調節済みの指令された飛行設定)をローターシステム126に中継及び/又は修正することができる。しかしながら、音響放射制御システム100の機能性を単一システムとしての飛行制御システム106に統合することも考慮され得る。
【0071】
[0075]飛行制御システム106は、既存の飛行制御装置又はシステム、例えば固定翼航空機及び回転翼航空機に使用されるものを含むか、又はそれらと通信することができる。この目的のために、例えばネットワークを介して、飛行制御システム106が他の装置(リモート又は遠隔装置を含む)と通信することを可能にする通信システムが提供され得る。通信システムは、通信コマンドと構成データを飛行制御インターフェース108から受け取り、ステータス及び応答情報を通信システムから飛行制御インターフェース108に送る。
【0072】
[0076]他の航空機システムコンポーネント。ノイズコントローラ102及び/又は飛行制御システム106は、機上データ記憶装置(例えば、ハードドライブ、フラッシュメモリなど)、無線通信装置、又は実質的に他のあらゆる望ましいサービス(複数可)と通信可能に連結することもできる。ノイズコントローラ102及び/又は飛行制御システム106は更に、例えば慣性測定装置(「IMU」)及び/又は全地球測位システム(GPS)(「GPS」)受信機)と通信可能に連結された慣性航法システム(「INS」)などのナビゲーション装置と通信可能に連結されてもよい。GPSは、INSソリューションをリセットするために使用できるか、又はカルマンフィルタのような数学的アルゴリズムの使用によりそれとブレンドされうるドリフトフリー位置の絶対値を提供する。飛行制御システム106は更に、データを収集し、エリアを監視し、及び/又は飛行制御システム106にフィードバックを提供するために使用されうる情報、監視、及び偵察(「ISR」)監視ペイロードに連結されてもよい。例えば、航空機は、一又は複数のカメラ、オーディオ装置、及び他のセンサを備えることができる。航空機によって収集された任意のビデオ、又はその他のデータは、地上制御ステーションに無線によりリアルタイムで伝達され得る。航空機は更に、前記ビデオ及びデータを機上データ記憶装置に記憶するように装備されてもよい。
【0073】
[0077]ノイズ修正スキーム。ノイズコントローラ102は、複数のノイズ修正スキーム(及び他のノイズ品質改善技術)の一又は複数を用いて調整済みの飛行設定を生成する及び/又はターゲット音響挙動を達成することができる。幾つかの例示的なノイズ修正スキームには、例えば、ビーム形成、スペクトルトーン拡散、テイラードスロットル変更プロファイル、又は周波数マスキングの活用が含まれる。
【0074】
[0078]例として、ノイズコントローラ102は、ビーム形成技術を利用してノイズをキャンセルする及び/又はノイズを特定エリア(例えば、対象の音響エリア)に向けて(又は特定エリアから離れるように)方向付けることができる。ビーム形成を開始するには、オペレーターは、(ノイズ制御インターフェース104を介して)ノイズコントローラ102にコマンド(例えば、方位角45度といったビームの方向)を入力する。これに応答して、ノイズコントローラ102は、ノイズを所定の位置に向かって(又は所定の位置から離れるように)方向付ける音響挙動(例えば、ターゲット音響挙動と適合する)を達成するように、航空機のノイズプロファイルを修正しうる。ビームの方向は、GISからの地理データ又はISRによって捕獲された画像に基づいて、ノイズコントローラ102によって自動的に決定されてもよい。例えば、GISは、特定の地理的領域の人口密度が高いことを識別することができる。地理データを使用して、特定の地理的領域を避ける音響挙動を有するように、自動的に及び/又は動的にノイズを修正するためにビーム形成技術が利用されうる。
【0075】
[0079]これを示すために、
図2aから2cは、二つの翼搭載型ローターアセンブリ128を有する例示的固定翼航空機202が発する音響放射パターン204を図示している。具体的には、
図2aは、対象の遠隔音響エリアから所定の高度(A)にある固定翼航空機202の音響放射パターン204の上面
図200aであり、
図2b及び2cは、それぞれ正面
図200b及び側面
図200cである。
【0076】
[0080]例示的な対象の音響エリアは、(1)二つの翼搭載型ローターアセンブリ128a、128b前方の前後方向距離(Dlong)、(2)左舷側ローターアセンブリ128aから第1の左右方向距離(DLat_1)、及び右舷側ローターアセンブリ128bから第2の左右方向距離(Dlat_2)、且つ(3)固定翼航空機202下の垂直方向距離(DV)に位置する観察者206である。この位置において観察者206から二つの音響放射パターン204までの距離(例えば、ローターアセンブリ128a、128bからの)は、ベクトルPath1及びPath2として識別され、等しくない。右舷側ローターアセンブリ128bの方が観察者206から離れているために、Path2はPath1より大きい(長い)(即ち、DLat_2はDLat_1より大きい)。更に、胴体208の前端が、右舷ローターアセンブリ128から観察者206を部分的に遮蔽する場合がある。
【0077】
[0081]異なる距離及び妨害はそれぞれ観察者206が経験するノイズに影響する。音響放射パターン(複数可)204及び一又は複数の観察者(複数可)206の既知の位置を使用して、ノイズコントローラ102は、音波伝達及び干渉を計算し、一又は複数のベクトル(例えば、Path1及びPath2)に沿ったノイズ(観察者に向かう方向への又は観察者から遠ざかる方向への)を制御することができる。例えば、ノイズコントローラ102は、三角法を用いて(例えば、DV、DLong、DLatといった既知の距離を使用して)、望ましいビーム形成ベクトルを達成するために必要とされる位相遅れを計算することができ、位相遅れとソースの指向性モデルとを組み合わせて音響挙動が決定され得る。
【0078】
[0082]ビーム形成は、音響エネルギーを望ましい方向へ向ける(例えば、音響放射パターンの極めて静かな部分であるヌルを近隣の人々の方向に向ける)ことを可能にする。音響ビーム形成は、個々の周波数コンテンツ及び各機械的装置124(例えば、電気モーター)の位相をそれぞれ微調整することにより達成することができる。例えば、ビーム形成技術は、アレイの方向性を変更し、それにより波面に建設的及び破壊的干渉のパターンを規定するために、各機械的装置124を制御することができる。種々の航空機コントローラ及びシステム(例えば、音響放射制御システム100、又はそのコンポーネント)は、電子機器モジュールを介して提供することができ、このようなモジュールは、機体、例えば胴体に統合されても、又は別個のハウジング若しくはポッドを介して提供されてもよい。
【0079】
[0083]
図2aから2cは二つのローターアセンブリ128を有する固定翼航空機を示しているが、音響放射制御システム100は、特定の航空機構成又はローターアセンブリの数に限定されない。実際には、音響放射制御システム100は、航空機及び航空機構成にとらわれず、したがって、とりわけ、ロータークラフト(ヘリコプター及びマルチローター空中ビークルを含む)、固定翼航空機(全翼航空機を含む)、チルトローター航空機、チルトウイング航空機などを含む、揚力及び/又は推力を生成するために一又は複数のローターアセンブリ128を利用する実質的にすべての航空機に組み込むことが可能である。この例には、限定されないが、Cessna-421、Northrop XB-35、Diamond DA42などが含まれる。
【0080】
[0084]
図3は、音響放射制御システム100を備えるように構成されうる例示的マルチローター空中ビークル300を示している。図示のように、マルチローター空中ビークル300は、機体302、着陸装置304(例えば、スキッド又はホイール式着陸装置)、複数のブーム306、及び複数のローターアセンブリ128を含み得る。機体302は、複数のブーム306の遠位端が機体302から半径方向に(例えば、上から見たとき図示のような「X」字型に)延びるように、複数のブーム306の各々の近位端に連結され得る。機体302及び複数のブーム306は、単一ユニットとして、又は互いに連結される別個のコンポーネントとして、作製することができる。複数のブーム306の各々の遠位端は、各々がローター120を駆動/回転するための機械的装置124に連結されたローター120として示されている、ローターアセンブリ128に連結することができる。機械的装置124は、電子速度コントローラ(ESC)を介して制御される電気モーターであってよい。図では、機械装置124はブーム306の遠位端に配置されているが、機械的装置124(又は単独の機械的装置124)は代わりに機体302内に配置され、機械的装置124 と一又は複数のローター120との間のギヤボックス及び/又はドライブシャフトを介して一又は複数のローター120を駆動(回転)するように構成されてもよい。
【0081】
[0085]図示のマルチローター空中ビークル300は、四つのブーム306(各々が単一のローターアセンブリ128をブーム306の遠位端に有する)を有する機体302を有しているが、当業者であれば、望ましい機能を達成するためにこれよりも多い又は少ないブーム306及び/又はローターアセンブリ128が使用されてよいことが分かるであろう。更に、図中の各ブーム306はローターアセンブリ128を一つしか有していないが、複数のローターアセンブリ128が各ブーム306の遠位端に提供されてもよい。例えば、横材を各ブーム306の遠位端に配置して、ローターアセンブリ128を互いに離間させ(例えば、ブーム306の長さに直交して)、ローター120間の干渉を防ぐことができる。マルチローター空中ビークル300には、ISR機能を提供するための一又は複数のカメラ、オーディオ装置、及びその他センサを備える一又は複数のペイロードポッド308を装備することができる。
【0082】
[0086]
図4は、音響放射低減システム100の例示的音響放射制御プロセス400を示している。図示の音響放射制御プロセス400は、ステップ404から420を有するが、当業者であれば、これよりも少ない又は多いステップが実施可能であることが分かるであろう。例えば、一又は複数のモードを、音響放射制御プロセス400から省略することができるか、又は別途及び/又はリクエストに応じて実行することができる。更に、ステップが実行される順序は、航空機の必要に応じて調節され得る。
【0083】
[0087]ステップ402での開始時に、音響放射低減システム100は、前記ノイズコントローラ102のプロセッサを介して、ステップ404から開始して複数のステップを循環するように構成され得る。ステップ404では、ノイズコントローラ102が、例えば飛行制御システム106から、指令された飛行設定(例えば、元の指令された飛行設定)を受け取る。
【0084】
[0088]ステップ406では、ノイズコントローラ102が、指令された飛行設定を一又は複数のローターシステム126に出力する。例えば、飛行制御システム106からの指令された飛行設定は、一又は複数のローターシステム126の各々のローターコントローラ116に伝達される。
【0085】
[0089]ステップ408では、ノイズコントローラ102は、例えば複数の入力モジュール122の一又は複数から、動作パラメータデータ(例えば、動作情報及び/又はパラメータ)を受け取る。動作パラメータデータは、例えば、望ましいノイズ修正スキーム、特定のノイズ修正のパラメータ、飛行設定調節限度の範囲、ローターコントローラ116の一又は複数のモデル、航空機構成などを含む。
【0086】
[0090]ステップ410では、ノイズコントローラ102は、指令された飛行設定に応答して一又は複数のローターアセンブリ128が生成したノイズの音響挙動を決定する。一実施例では、ノイズコントローラ102は、指令された飛行設定及び/又は動作パラメータデータに少なくとも部分的に基づいて、一又は複数のローターシステム126における音響挙動を決定するように構成される。
【0087】
[0091]ノイズコントローラ102は、航空機の音響シグネチャ(例えば、すべてのローターアセンブリ128及び航空機に関連付けられる他のノイズ源の全体の/集約的音響挙動)を決定する。代替的に、ノイズコントローラ102は、各ローターアセンブリ128又はノイズ源の音響挙動を別々に決定して、航空機の集約音響挙動を決定するように構成されてもよい。
【0088】
[0092]ノイズコントローラ102は、一又は複数のセンサを用いてローターアセンブリ128の音響挙動を測定及び/又は計算するように構成され得る。センサを用いて、航空機の集約音響挙動が、飛行制御システム106からの指令された飛行設定に対するローターアセンブリ128の実際の応答(例えば、ローターフィードバック装置118を介した)に基づいていることが確認される。例えば、航空機の集約音響挙動(例えば、波形、ノイズ地図など)を測定するために、マイクロフォン及び/又は他のオーディオセンサを、一又は複数のローターアセンブリ128の各々に又は各々の隣に/近くに設けることができる。
【0089】
[0093]代替的に、航空機の音響挙動は、指令された飛行設定をローターシステム126に実際に渡すことなく、モデル化を使用して決定されてもよく、その場合はステップ406は省略可能である。例えば、集約音響挙動は、計算により又は種々の航空機構成と利用可能な/既知の指令された飛行設定とに知られた音響挙動のルックアップテーブルにより決定することができる。
【0090】
[0094]ステップ412では、ノイズコントローラ102が、ステップ408で決定された集約音響挙動がターゲット音響挙動又はプロファイルと適合するかどうか(例えば、望ましい音響挙動又はプロファイルの所定の偏差/範囲内であるかどうか)を判定する。ターゲット音響挙動又はプロファイルは、航空機に関連付けられるか又はオペレーターによって動的に選択及び/又は更新される静的な値(又は値の組/範囲)であり得る。例えば、ターゲット音響挙動は、ノイズコントローラ102によって、ノイズ制御インターフェース104、飛行制御システム106、及び/又は複数の入力モジュール122から動的に受け取られる。航空機の集約音響挙動がターゲット音響挙動範囲内にない場合、プロセスはステップ414に進む。航空機の集約音響挙動がターゲット音響挙動範囲内にある場合、プロセスはステップ416に進む。
【0091】
[0095]ステップ414では、ノイズコントローラ102が、一又は複数のローターシステム126に伝達されるとターゲット音響挙動範囲と適合するノイズを生成することが予測される調整済みの飛行コマンド(例えば、調節済みの指令された飛行設定)を生成する(例えば、決定する/計算する)。
【0092】
[0096]ステップ416では、ノイズコントローラ102が、飛行設定(指令された飛行設定又は調整済みの飛行設定)を、一又は複数のローターシステム126に(例えば、ローターコントローラ116を介して)出力する。ステップ414で伝達された飛行設定は、測定された音響挙動がステップ412において適合していたかどうかに応じて変更され得る。具体的には、測定される音響挙動が適合していた場合は指令された飛行設定が一又は複数のローターシステム126に送られ、適合していなかった場合はステップ414の調整済みの飛行設定が一又は複数のローターシステム126に送られる。
【0093】
[0097]ステップ418では、音響放射低減システム100が、音響放射制御プロセス400を終了すべきかを決定する(例えば、ノイズ制御インターフェース104及び/又は飛行制御インターフェース108からの入力に基づいて)。音響放射制御プロセス400が終了される場合、プロセスはステップ420で終了する。ステップ420では、航空機がシャットオフするか、又は音響放射低減システム100による修正なしに、飛行制御システム106からの飛行コマンドに基づいて単純に正常動作を再開する。それ以外の場合には、プロセス400はステップ404に戻り、次の指令された飛行設定についてプロセスが繰り返される。
【0094】
[0098]
図5は、音響放射制御プロセス、例えば音響放射制御プロセス400に具現化された飛行制御システム106の機能
図500を示している。図示のように、当業者であれば、音響放射制御プロセス400を飛行制御システム106の飛行コントローラプロセスと、緩やかに統合するか又は緊密に統合するかを選択できるであろう。即ち、音響放射制御プロセス400は、飛行制御システム106とローターシステム(複数可)126の間に配置されるか、又は飛行制御システム106に直接統合される。
【0095】
[0099]飛行コントローラプロセスは、状態予測プロセス(例えば、ナビゲーションコマンド入力510に応答して)及び軌道最適化プロセス(例えば、飛行コマンド入力512に応答して)を含むことができる。図示のように、状態予測プロセスでは、複数のセンサ入力を取ること、及びそれらを航空機の位置、配向、及びその他健康/ステータスパラメータの統合予測に融合することを行い、軌道最適化プロセスは、航空機の状態(例えば、状態予測プロセスから)及び性能の知識に少なくとも部分的に基づいて航空機の好ましい軌道を算出する。軌道最適化プロセスは、出力518を介して操縦翼面520及びローターシステム(複数可)126にコマンド出力を生成することができる。
【0096】
[0100]ナビゲーションコマンド入力510は、例えば、INS、IMU、GPSなどといったナビゲーション装置又はシステムからの情報(例えば、一又は複数のパラメータを表すデータ)を含み、飛行コマンド入力512は、パイロット/自動操縦ナビゲーションコマンドといった飛行制御インターフェース108から受け取られた飛行コマンドを含む。
【0097】
[0101]要素502において、ノイズコントローラ102は、種々のデータ入力514から利用可能な情報(例えば、航空機状態データ、GISデータ、及びフィードバックデータ)を使用して、ノイズプロファイルを計算し、航空機の現在の状態のノイズパラメータ及び航空機の指令された飛行状態を出力することができる。種々のデータ入力514には、例えば、一又は複数のローターフィードバック装置118、ロータードライバモジュール112、航空機レイアウトモジュール114、飛行制御システム106などが含まれる。
【0098】
[0102]ノイズコントローラ102は、種々のデータ入力514から利用可能な情報を処理し(例えば、プロセッサを介して)、例えばグローバルノイズパラメータ、最大/最小値、又は航空機の音響効果に関するその他の情報の値を含む、ノイズデータを出力することができる。
【0099】
[0103]要素504では、ノイズコントローラ102は、ノイズデータが、指令された飛行設定(複数可)が一又は複数のノイズ目標入力516と適合していることを示すかどうかを判定する。一又は複数のノイズ目標入力516は、ノイズ制御インターフェース104から受け取られる。
【0100】
[0104]一又は複数のノイズ目標がステップ504において達成されない場合、プロセスはステップ506に進み、そこで上述のノイズ修正スキームの一又は複数(例えば、ビーム形成)が適用されてノイズが最適化された後、データ出力が生成されて調節済みの指令された飛行設定(複数可)108aが指令された飛行設定108aとして出力518に出力される。
【0101】
[0105]ノイズ目標入力516が指令された飛行設定(複数可)によって達成されていれば、ノイズコントローラ102は、修正なしで出力518に元の指令された飛行設定(複数可)を指令された飛行設定108aとして、ノイズデータ 508bをフィードバックとして、出力する。図示のように、出力518は、一又は複数のローターシステム126及び表面コントローラ520(例えば、フラップ、ラダーなどといった翼型表面)に通信可能に連結され得る。出力518は更に、フィードバックをノイズコントローラに(例えば要素502を介して)動的に提供することができる。
【0102】
[0106]本開示内容は航空機の用途に関して記載されているが、航空機は、本明細書に記載される音響放射制御システムを実証するための例示的プラットフォームとして提示されている。実際には、当業者であれば、基礎となる原理が、航空機以外のローター又はファンアレイを含め、ファン又はローターシステムによって生成されるノイズを制限することが望ましい他の用途に使用可能であることが分かるであろう。例示的用途には、冷却のためにファンを使用する暖房、換気、及び空調(HVAC)システム、風力タービン、電子機器の冷却システムなどが含まれる。
【0103】
[0107]種々の実施形態について、部品、特徴などの特定の構成を参照して記載したが、これらは、すべての可能な構成又は特徴を余すことなく説明することを意図しておらず、当業者には実際に他の多くの実施形態、修正例、及び変形例が確認できよう。したがって、本発明は、本明細書に具体的に記載した方法以外の方法でも実施することができる。上記に引用した特許及び特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。