(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】貫通型電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
G01R15/18 B
(21)【出願番号】P 2018134506
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 君彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英雄
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300915(JP,A)
【文献】特開平02-124470(JP,A)
【文献】特開2000-223330(JP,A)
【文献】特開2010-249605(JP,A)
【文献】特開2015-095323(JP,A)
【文献】特開2017-053810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、
磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、
前記配置部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記配置部材の径方向における断面が前記ケースの厚さ方向において上側と下側とに凹部を有するH字形状であり、
前記H字形状の一方の凹部に前記一対のセンサ素子の一方が配置され、前記H字形状の他方の凹部に前記一対のセンサ素子の他方が配置されることにより、前記ケースの径方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制し、
前記仕切部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、前記凹部の各々に収容された前記センサ素子に接触した状態で、前記凹部の各々に収容された前記センサ素子と前記ケースとの間に配置されることにより、前記ケースの厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する、
貫通型電流センサ。
【請求項2】
請求項
1に記載の貫通型電流センサであって、
前記仕切部材が緩衝性材料を用いて形成された、
貫通型電流センサ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の貫通型電流センサであって、
前記ケースは、
径方向の断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記配置部材を収容可能に形成されたケース本体と、
前記ケース本体の少なくとも前記凹部の開口を覆うケース蓋体と、を有する、
貫通型電流センサ。
【請求項4】
磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、
磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、
前記配置部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記配置部材の径方向における断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記ケースの径方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制し、
前記仕切部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記仕切部材は、
第一仕切部材と、第二仕切部材とを有し、
前記一対のセンサ素子が、前記第一仕切部材を介して重ねた状態で前記U字形状の凹部に収容され、前記第二仕切部材が、前記一対のセンサ素子の一方と接触した状態で、前記一方のセンサ素子と前記ケースとの間に配置されることにより、前記ケースの厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する、
貫通型電流センサ。
【請求項5】
請求項
4に記載の貫通型電流センサであって、
前記仕切部材が緩衝性材料を用いて形成された、
貫通型電流センサ。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の貫通型電流センサであって、
前記ケースは、
径方向の断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記配置部材を収容可能に形成されたケース本体と、
前記ケース本体の少なくとも前記凹部の開口を覆うケース蓋体と、を有する、
貫通型電流センサ。
【請求項7】
磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、
磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、
前記配置部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記配置部材は、
径方向における断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であって前記一対のセンサ素子の一方が収容される第一U字部材と、径方向における断面が前記ケースの厚さ方向の他方側に凹部を有するU字形状であって前記一対のセンサ素子の他方が収容される第二U字部材と、を有し、
前記第一U字部材における前記凹部及び前記第二U字部材における前記凹部によって、前記ケースの径方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制し、
前記仕切部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、前記第一U字部材と前記第二U字部材とが、前記仕切部材を介して、互いの前記凹部の開口を突き合わせ、前記仕切部材が前記一対のセンサ素子に接触した状態で配置されることにより、前記ケースの厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する、
貫通型電流センサ。
【請求項8】
請求項
7に記載の貫通型電流センサであって、
前記仕切部材が緩衝性材料を用いて形成された、
貫通型電流センサ。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の貫通型電流センサであって、
前記ケースは、
径方向の断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記配置部材を収容可能に形成されたケース本体と、
前記ケース本体の少なくとも前記凹部の開口を覆うケース蓋体と、を有する、
貫通型電流センサ。
【請求項10】
磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、
磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、
前記配置部材は、絶縁性材料を用いて形成され、
前記配置部材は、
径方向における断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であって前記一対のセンサ素子の一方が収容される第一U字部材と、径方向における断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であって前記一対のセンサ素子の他方が収容される第二U字部材と、を有し、
前記第一U字部材における前記凹部及び前記第二U字部材における前記凹部によって、前記ケースの径方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制し、
前記仕切部材は、絶縁性材料を用いて形成され、
前記仕切部材は、
第一仕切部材と、第二仕切部材とを有し、
前記第一仕切部材が、前記第一U字部材の底面部と前記第二U字部材に収容された前記センサ素子とに接触した状態で、前記第一U字部材の底面部と前記第二U字部材に収容された前記センサ素子との間に配置され、前記第二仕切部材が、前記第一U字部材に収容された前記センサ素子に接触した状態で、前記ケースと前記第一U字部材に収容された前記センサ素子との間に配置されることにより、前記ケースの厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する、
貫通型電流センサ。
【請求項11】
請求項
10に記載の貫通型電流センサであって、
前記仕切部材が緩衝性材料を用いて形成された、
貫通型電流センサ。
【請求項12】
請求項
10又は11に記載の貫通型電流センサであって、
前記ケースは、
径方向の断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記配置部材を収容可能に形成されたケース本体と、
前記ケース本体の少なくとも前記凹部の開口を覆うケース蓋体と、を有する、
貫通型電流センサ。
【請求項13】
磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、
磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、
前記配置部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記仕切部材は、
絶縁性材料を用いて形成され、
前記配置部材は、径方向における断面がL字形状である第一L字部材と、径方向における断面がL字形状である第二L字部材とを有し、前記一対のセンサ素子が前記仕切部材を介して重ね合わされた状態で前記第一L字部材と前記第二L字部材とに取り囲まれるように配置されたことにより、前記ケースの径方向及び厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する、
貫通型電流センサ。
【請求項14】
請求項
13に記載の貫通型電流センサであって、
前記仕切部材が緩衝性材料を用いて形成された、
貫通型電流センサ。
【請求項15】
請求項
13又は14に記載の貫通型電流センサであって、
前記ケースは、
径方向の断面が前記ケースの厚さ方向の一方側に凹部を有するU字形状であり、前記配置部材を収容可能に形成されたケース本体と、
前記ケース本体の少なくとも前記凹部の開口を覆うケース蓋体と、を有する、
貫通型電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体コアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電流ケーブル等の導体を流れる電流を測定するためのセンサとしては、測定対象である導体を挿通可能な円環形状に形成した貫通型電流センサが知られている。この貫通型電流センサは、円環中心を通り円環平面に対して直交する軸方向に重ねられた一対のフラックスゲートセンサ素子と、これらフラックスゲートセンサ素子を、絶縁層を介して重ねて収納するフェライトケースと、フェライトケースの外表面に巻回されたトロイダルコイルとを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
このような貫通型電流センサにおいて、フラックスゲートセンサ素子の各々は、円環状に形成された磁性体コアを、同じく円環状に形成された絶縁性のリングコアに封入して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような貫通型電流センサにおいて、絶縁層を配置する手法として、上述のようなセンサ素子の各々にポリエステルテープを巻回する手法がある。このような手法においては、作業者がセンサ素子にポリエステルテープを巻回する作業を行う際に、リングコア及びその内部に収容された磁性体コアからなるセンサ素子に不要な応力がかかることがあり、このため、センサ素子の性能が低下することがあった。
【0006】
また、ポリエステルテープが巻回されたセンサ素子をフェライトケースに配置した際に、ポリエステルテープが巻回されたセンサ素子とフェライトケースとの間に隙間が生じやすく、フェライトケース内部において、一対のセンサ素子の位置ずれが生じることがあった。
【0007】
そして、これらの理由が貫通型電流センサの性能の個体差を許容範囲から逸脱させる要因になっていた。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、性能の個体差が小さい貫通型電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様としての貫通型電流センサは、磁性体からなるコアを有しており円環状に形成された一対のセンサ素子を備えた貫通型電流センサであって、磁性体を用いて形成された円環状のケースと、前記一対のセンサ素子と、配置部材と、仕切部材とを備え、前記一対のセンサ素子と前記配置部材と前記仕切部材とが前記ケースに収容されたメインコアを有し、前記配置部材は、絶縁性材料を用いて形成され、前記配置部材の径方向における断面が前記ケースの厚さ方向において上側と下側とに凹部を有するH字形状であり、前記H字形状の一方の凹部に前記一対のセンサ素子の一方が配置され、前記H字形状の他方の凹部に前記一対のセンサ素子の他方が配置されることにより、前記ケースの径方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制し、前記仕切部材は、絶縁性材料を用いて形成され、前記凹部の各々に収容された前記センサ素子に接触した状態で、前記凹部の各々に収容された前記センサ素子と前記ケースとの間に配置されることにより、前記ケースの厚さ方向において前記一対のセンサ素子の位置を規制する。
【発明の効果】
【0010】
この態様によれば、配置部材によって、一対のセンサ素子のケースの径方向における位置が規制されるので、センサ素子のケースの径方向における位置ずれを抑制することができる。そして、仕切部材によって、一対のセンサ素子のケースの厚さ方向における位置が規制されるので、センサ素子のケースの厚さ方向における位置ずれも抑制することができる。したがって、性能の個体差が小さい貫通型電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアを分解して説明する分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアの径方向断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第二実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアを分解して説明する分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第二実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアの径方向断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第三実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアの径方向断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第三実施形態の変形例に係る貫通型電流センサのメインコアの径方向断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第四実施形態に係る貫通型電流センサのメインコアの径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る貫通型電流センサについて、
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
図1は、第一実施形態に係る貫通型電流センサのメインコア1を分解して説明する分解斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る貫通型電流センサのメインコア1の径方向断面図である。なお、本実施形態において、「径方向」における「径」とは、円環形状における円環の径である。
【0013】
貫通型電流センサは、電流ケーブル等の導体を流れる電流を測定するためのセンサ素子を備えたセンサであって、測定対象である導体を挿通できるように円環形状に形成されている。
【0014】
第一実施形態に係る貫通型電流センサにおいて、メインコア1は、一対のセンサ素子10,20と、配置部材30と、ケース40と、仕切部材51,52とを有する。
【0015】
まず、センサ素子10,20について説明する。センサ素子10は、磁性体により円環状に形成されたリングコア11と、リングコア11を収容する環状ケース12と、環状ケース12に巻回されたトロイダル巻線13とを有するフラックスゲートセンサ素子である。
【0016】
リングコア11は、パーマロイ又はフェライト等の磁性体から形成されている。また、環状ケース12は、コアケース本体14及びコア蓋体15を有する。コアケース本体14及びコア蓋体15は、エポキシ樹脂又はプリプレグ等の絶縁性材料を用いて形成される。コアケース本体14には、リングコア11の径方向に沿った幅よりもやや幅広であるとともにリングコア11の厚さよりも深い溝Gが形成されており、この溝Gの内部にリングコア11が収容される。
【0017】
また、コア蓋体15は、コアケース本体14の溝Gの内部に収容されたリングコア11に対し過剰な応力がかからない程度に接触した状態で、コアケース本体14に嵌め込まれている。なお、コアケース本体14の溝Gには、経時変化により固化しないタイプの軟質材、例えば、シリコーン材が充填されている。
【0018】
センサ素子20は、センサ素子10と同様に、リングコア21と、コアケース本体24及びコア蓋体25を有する環状ケース22と、トロイダル巻線23とを備えたフラックスゲートセンサ素子である。ただし、センサ素子20におけるトロイダル巻線23の巻線方向は、センサ素子10におけるトロイダル巻線13の巻線方向とは逆である。
【0019】
続いて、配置部材30について説明する。配置部材30は、ケース40の径方向に沿った幅方向において一対のセンサ素子10,20の位置を規制するための部材である。
【0020】
配置部材30は、円環形状に形成されており、
図2に示すように、配置部材30の径方向における断面は、ケース40の厚さ方向において、上側と下側とに凹部31,32を有するH字形状に形成されている。また、配置部材30は、エポキシ樹脂又はプリプレグ等の絶縁性材料を用いて形成される。
【0021】
ここで、ケース40の厚さ方向とは、ケース40の円環中心を通り円環平面に対して直交する軸方向に相当する。
【0022】
H字形状の凹部31,32の内壁面の間隔は、センサ素子10,20の径方向における幅よりもやや幅広に形成されている。また、凹部31,32の底部までの深さは、センサ素子10,20の厚さよりも深く形成されている。
【0023】
H字形状の一方の凹部31には、センサ素子10が配置され、H字形状の他方の凹部32には、センサ素子20が配置される。
【0024】
続いて、仕切部材51,52について説明する。本実施形態においては、メインコア1は、配置部材30の凹部31,32のそれぞれに収容されたセンサ素子10,20とケース40との間に、仕切部材51,52を備える。仕切部材51,52は、ケース40の厚さ方向において一対のセンサ素子10,20の位置を規制するための部材である。
【0025】
仕切部材51,52は、凹部31,32に収容されたセンサ素子10,20に対し過剰な応力がかからない程度に接触した状態になるような厚さに形成されている。また、仕切部材51,52は、センサ素子10とケース40とを電気的及び電磁的に遮蔽可能な材料を用いて形成されている。
【0026】
次に、ケース40について説明する。ケース40は、円環形状に形成されたケース本体41と、ケース蓋体42とを有する。
【0027】
ケース本体41は、径方向の断面がU字形状であって、凹部における内壁面の間隔及び凹部の深さは、配置部材30を収容可能な長さに形成されている。また、ケース蓋体42は、ケース本体41の少なくとも凹部の開口を覆うように形成されている。また、ケース40は、図示されていないが、センサ素子10,20から引き出されたリード線を外方へと導出する導出部が形成されている。
【0028】
本実施形態において、「U字」とは、側面と湾曲した底面とがなだらかに連続している形状のほか、平面同士が折れ曲がって連続している形状も含む。後者の場合には、平面同士が直交する形状及び平面同士が鈍角に連続する形状を含む。なお、平面同士が折れ曲がって連続している形状のうち、平面同士が鋭角に連続する形状については、U字形状の凹部に配置部材30を収めることのできない程度に鋭角に折れ曲がった形状は除外される。
【0029】
ケース40は、フェライト又はパーマロイ等の磁性材料から形成されている。本実施形態においては、金型を用いて安価に量産が可能であり、また、より広い温度範囲において電流センサとしての諸特性を安定化できる観点から、ケース40の材料として、パーマロイを用いることが好ましい。
【0030】
上述した構成を備えたメインコア1の外側表面に絶縁テープ等が巻回され、さらに帰還巻線が巻回され、さらに帰還巻線の外側に銅等からなる導体テープが巻回されて静電シールドされることにより、第一実施形態に係る貫通型電流センサが得られる。
【0031】
次に、上述した第一実施形態に係る貫通型電流センサの作用効果について説明する。
【0032】
第一実施形態によれば、配置部材30の凹部31,32にセンサ素子10,20を配置し、ケース本体41に、仕切部材52を収容し、次にセンサ素子10,20が配置された配置部材30を収容し、続いて、仕切部材51を収容し、最後にケース蓋体42を装着するという一連の作業工程を経れば、貫通型電流センサのメインコア1が得られる。
【0033】
こうして得られるメインコア1によれば、H字形状を呈する配置部材30における凹部31,32によって、ケース40の径方向に沿った幅方向において、センサ素子10,20の位置が規制される。このため、ケース40の幅方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0034】
また、配置部材30内に収容されたセンサ素子10,20は、仕切部材51,52によって、ケース40の厚さ方向における位置が規制されるため、ケース40の厚さ方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0035】
さらに、配置部材30は、電気的に遮蔽可能な材料を用いて形成されているため、従来、フラックスゲートセンサ素子に絶縁層を配置するために作業者が行っていた、フラックスゲートセンサ素子に絶縁テープを巻回する作業を行わなくとも、センサ素子10,20同士の絶縁、センサ素子10とケース蓋体42との間の絶縁、及びセンサ素子20とケース本体41との間の絶縁を確保することができる。
【0036】
このため、作業者が絶縁層を形成するための作業を行う際に、フラックスゲートセンサ素子に不要な応力がかかることでフラックスゲートの性能が低下するという従来のリスクが低減される。
【0037】
上述のことから、性能の個体差の小さい貫通型電流センサを提供することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る貫通型電流センサによれば、例えば、センサ素子10,20の素子外形の設計が僅かに変更された場合であっても、配置部材30における各部の厚さ、仕切部材51,52の厚さを変更することにより、ケース40のサイズを変更しなくとも、センサ素子10,20のケース40内における位置ずれを抑えた貫通型電流センサを作製することができる。このため、大幅な設計変更が不要となり、製造コストの観点からも有用である。
【0039】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態に係る貫通型電流センサについて、
図3及び
図4を用いて詳細に説明する。
図3は、第二実施形態に係る貫通型電流センサのメインコア2を分解して説明する分解斜視図である。
図4は、貫通型電流センサのメインコア2の径方向断面図である。第二実施形態において、第一実施形態と同様の機能を有する構成については、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
第二実施形態に係る貫通型電流センサにおいて、配置部材60は、円環形状に形成されている。配置部材60は、
図4に示すように、径方向における断面がケース40の厚さ方向の一方側に凹部61を有するU字形状に形成されている。U字形状の凹部61の内壁面の間隔は、センサ素子10,20の径方向における幅よりもやや幅広に形成されている。また、凹部61の底部までの深さは、センサ素子10,20の両者を重ねた厚さよりも深く形成されている。
【0041】
また、メインコア2は、配置部材60に収容された一対のセンサ素子10,20を電気的及び電磁的に遮蔽する仕切部材62,63を備える。一対のセンサ素子10,20は、仕切部材62を介して重ねられた状態で、配置部材60のU字形状の凹部61に収容されている。
【0042】
また、仕切部材63は、センサ素子10とケース本体41との間に配置される。これにより、センサ素子10とケース本体41とが電気的及び電磁的に遮蔽される。仕切部材62,63の厚さは、凹部61に収容されたセンサ素子10,20に対し過剰な応力がかからない程度に接触した状態になるような厚さに形成されている。
【0043】
上述した構成を備えたメインコア2の外側表面に絶縁テープ等が巻回され、さらに帰還巻線が巻回され、さらに帰還巻線の外側に銅等からなる導体テープが巻回されて静電シールドされることにより、第二実施形態に係る貫通型電流センサが得られる。
【0044】
次に、上述した第二実施形態に係る貫通型電流センサの作用効果について説明する。
【0045】
第二実施形態によれば、センサ素子10と、仕切部材62と、センサ素子20と、仕切部材63とを、この順番に配置部材60の凹部61に収容し、続いて、配置部材60をケース本体41に収容し、最後にケース蓋体42を装着するという一連の作業工程を経れば、貫通型電流センサのメインコア2が得られる。
【0046】
こうして得られるメインコア2によれば、U字形状を呈する配置部材60における凹部61によって、ケース40の径方向に沿った幅方向において、センサ素子10,20の位置が規制される。このため、ケース40の幅方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0047】
また、配置部材60内に収容されたセンサ素子10,20は、仕切部材62,63によって、ケース40の厚さ方向における位置が規制されるため、ケース40の厚さ方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0048】
さらに、配置部材60は、電気的に遮蔽可能な材料を用いて形成されているため、上記一連の作業工程を経れば、センサ素子10,20同士の絶縁、センサ素子10とケース蓋体42との間の絶縁、及びセンサ素子20とケース本体41との間の絶縁を確保することができる。
【0049】
このため、作業工程において、フラックスゲートセンサ素子に不要な応力がかかることでフラックスゲートの性能が低下するという従来のリスクが低減される。
【0050】
(第三実施形態)
続いて、本発明の第三実施形態に係る貫通型電流センサについて、
図5を用いて詳細に説明する。
図5は、第三実施形態に係る貫通型電流センサのメインコア3の径方向断面図である。第三実施形態において、第一実施形態と同様の機能を有する構成については、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
第三実施形態に係る貫通型電流センサでは、
図5に示すように、メインコア3は、配置部材70として、第一U字部材71と第二U字部材72とを有する。
【0052】
第一U字部材71は、径方向における断面がケース40の厚さ方向の一方側に凹部73を有するU字形状に形成されている。U字形状の凹部73は、センサ素子10が収容可能に形成されている。また、第二U字部材72は、径方向における断面がケース40の厚さ方向の一方側に凹部74を有するU字形状に形成されている。U字形状の凹部74は、センサ素子20が収容可能に形成されている。
【0053】
また、メインコア3は、センサ素子10,20を電気的及び電磁的に遮蔽する仕切部材75を備える。メインコア3において、第一U字部材71と第二U字部材72は、仕切部材75を介して、互いの凹部73,74の開口を突き合わせた状態で配置されている。仕切部材75は、凹部73,74に収容されたセンサ素子10,20に対し過剰な応力がかからない程度に接触した状態になるような厚さに形成されている。
【0054】
上述した構成を備えたメインコア3の外側表面に絶縁テープ等が巻回され、さらに帰還巻線が巻回され、さらに帰還巻線の外側に銅等からなる導体テープが巻回されて静電シールドされることにより、第三実施形態に係る貫通型電流センサが得られる。
【0055】
次に、上述した第三実施形態に係る貫通型電流センサの作用効果について説明する。
【0056】
第三実施形態によれば、ケース本体41に、センサ素子20が配置された第二U字部材72を収容し、続いて、仕切部材75を配置し、続いて、ケース本体41に、センサ素子10が配置された第一U字部材71を収容し、最後にケース蓋体42を装着するという一連の作業工程を経れば、貫通型電流センサのメインコア3が得られる。
【0057】
こうして得られるメインコア3によれば、U字形状を呈する配置部材70によって、ケース40の径方向に沿った幅方向において、センサ素子10,20の位置が規制される。このため、ケース40の幅方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0058】
また、配置部材70内に収容されたセンサ素子10,20は、仕切部材75によって、ケース40の厚さ方向における位置が規制されるため、ケース40の厚さ方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0059】
さらに、配置部材70は、電気的に遮蔽可能な材料を用いて形成されているため、上記一連の作業工程を経れば、センサ素子10,20同士の絶縁、センサ素子10とケース蓋体42との間の絶縁、及びセンサ素子20とケース本体41との間の絶縁を確保することができる。
【0060】
このため、作業工程において、フラックスゲートセンサ素子に不要な応力がかかることでフラックスゲートの性能が低下するという従来のリスクが低減される。
【0061】
(第三実施形態の変形例)
続いて、本発明の第三実施形態に係る貫通型電流センサの変形例について説明する。
図6は、第三実施形態の変形例として示す貫通型電流センサのメインコア4の径方向断面図である。変形例において、第一実施形態と同様の機能を有する構成については、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
第三実施形態の変形例として示す貫通型電流センサでは、
図6に示すように、メインコア4は、第一U字部材71と第二U字部材72の開口部を同一方向に向けた状態で配置されている。
【0063】
また、メインコア4は、センサ素子10,20を電気的及び電磁的に遮蔽するための仕切部材76,77を有する。仕切部材76は、第一U字部材71におけるU字形状の底面部と第二U字部材72の開口部との間に配置され、仕切部材77は、第一U字部材71の開口部とケース蓋体42との間に配置される。
【0064】
上述した構成を備えたメインコア4の外側表面に絶縁テープ等が巻回され、さらに帰還巻線が巻回され、さらに帰還巻線の外側に銅等からなる導体テープが巻回されて静電シールドされることにより貫通型電流センサが得られる。
【0065】
上述した変形例によれば、第一U字部材71と第二U字部材72の開口部を上向きに向けた状態でケース本体41の内部に収容できるため、仕切部材75を介して開口部を突き合わせた状態でケース本体41に収容する作業に比べて、絶縁層を配置する作業を簡便にできる。
【0066】
(第四実施形態)
続いて、本発明の第四実施形態に係る貫通型電流センサについて、
図7を用いて詳細に説明する。
図7は、第四実施形態に係る貫通型電流センサのメインコア5の径方向断面図である。第四実施形態において、第一実施形態と同様の機能を有する構成については、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
第四実施形態に係る貫通型電流センサでは、
図7に示すように、メインコア5は、配置部材80として、径方向における断面がL字形状である第一L字部材81と、径方向における断面がL字形状である第二L字部材82とを備える。また、センサ素子10,20を電気的及び電磁的に遮蔽する仕切部材83を備える。仕切部材83は、センサ素子10と第二L字部材82との間、及びセンサ素子20と第一L字部材81との間において過剰な応力がかからない程度に接触した状態になるような厚さに形成されている。
【0068】
メインコア5においては、センサ素子10,20が仕切部材83を介して重ね合わされた状態で第一L字部材81と第二L字部材82に取り囲まれるように配置されている。
【0069】
上述した構成を備えたメインコア5の外側表面に絶縁テープ等が巻回され、さらに帰還巻線が巻回され、さらに帰還巻線の外側に銅等からなる導体テープが巻回されて静電シールドされることにより、第四実施形態に係る貫通型電流センサが得られる。
【0070】
次に、上述した第四実施形態に係る貫通型電流センサの作用効果について説明する。
【0071】
第四実施形態によれば、センサ素子10,20を仕切部材83を介して重ね合わせた状態で、第一L字部材81と第二L字部材82とで囲い、ケース本体41に収容し、最後にケース蓋体42を装着するという一連の作業工程を経れば、貫通型電流センサのメインコア5を得ることができる。
【0072】
こうして得られるメインコア5によれば、U字形状を呈する配置部材80によって、ケース40の径方向に沿った幅方向において、センサ素子10,20の位置が規制される。このため、ケース40の幅方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0073】
また、配置部材80内に収容されたセンサ素子10,20は、仕切部材83によって、ケース40の厚さ方向における位置が規制されるため、ケース40の厚さ方向において、センサ素子10,20の位置ずれを抑制することができる。
【0074】
さらに、配置部材80は、電気的に遮蔽可能な材料を用いて形成されているため、上記一連の作業工程を経れば、センサ素子10,20同士の絶縁、センサ素子10とケース蓋体42との間の絶縁、及びセンサ素子20とケース本体41との間の絶縁を確保することができる。
【0075】
このため、作業工程において、フラックスゲートセンサ素子に不要な応力がかかることでフラックスゲートの性能が低下するという従来のリスクが低減される。
【0076】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0077】
第二実施形態では、配置部材60は、円環U字形状に形成されており、センサ素子20とケース本体41との間が仕切部材63によって遮蔽されている場合について説明した。ここでは、仕切部材63の代わりに、ケース40におけるケース本体41とケース蓋体42の関係と対応付けたときのケース蓋体42に対応する蓋部材を用いて、センサ素子10,20を収容する構造としてもよい。
【0078】
また、第二実施形態において、仕切部材63の幅は、図示される長さに限定されない。すなわち、仕切部材63の幅は、凹部61の幅よりも長く形成されていても良い。
【0079】
第三実施形態においても同様に、仕切部材75,76,77の幅は、図示される長さに限定されない。すなわち、仕切部材75,76,77の幅は、凹部73,74の幅よりも長く形成されていても良い。
【0080】
上述の第一から第四の各実施形態において、仕切部材51,52、仕切部材62,63、仕切部材75,76,77、仕切部材83は、絶縁性を有するとともに、緩衝性を有する緩衝性材料を用いて形成することができる。仕切部材51,52、仕切部材62,63、仕切部材75,76,77、仕切部材83が緩衝性材料から形成されていることにより、センサ素子10,20に当接した際に不要な当接圧を吸収することができるため、センサ素子10,20に過剰な応力をかけることなく、センサ素子10,20の位置ずれを抑制する効果を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0081】
1~5 メインコア
10,20 センサ素子
11,21 リングコア
12,22 環状ケース
13,23 トロイダル巻線
14,24 コアケース本体
15,25 コア蓋体
30 配置部材
31,32 凹部
40 ケース
41 ケース本体
42 ケース蓋体
51,52 仕切部材
60 配置部材
61 凹部
62,63 仕切部材
70 配置部材
71 第一U字部材
72 第二U字部材
73,74 凹部
75 仕切部材
80 配置部材
81 第一L字部材
82 第二L字部材
83 仕切部材