(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】情報読取装置とその調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20230308BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20230308BHJP
【FI】
G02B7/08 Z
H04N23/55
(21)【出願番号】P 2018194996
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大悟
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-127059(JP,A)
【文献】特開2007-108460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置であって、
撮像素子と、
媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、
前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、
前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着するための被装着部と、を備え、
前記被装着部は、前記撮像素子、前記結像レンズ、および前記第一歯車を含むユニットが固定される被固定部材から突出した突起であ
り、
前記調整用治具には、前記突起を通すための孔部が設けられる情報読取装置。
【請求項2】
媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置であって、
撮像素子と、
媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、
前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、
前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着するための被装着部と、
前記結像レンズを内部に保持するレンズバレルと、
前記レンズバレルを内部に保持するバレルホルダと、
前記バレルホルダを内部に保持する保持フレームと、を備え、
前記バレルホルダには外周面から内周面まで達する孔部が形成されており、
前記保持フレームには、前記バレルホルダの前記孔部と重なる位置に、外周面から内周面まで達する孔部が形成されている情報読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の情報読取装置であって、
前記第一歯車と噛み合う第二歯車を備え、
前記被装着部に前記調整用治具が装着された状態において、前記第二歯車には前記歯車減速機構の出力側歯車が噛み合う情報読取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の情報読取装置であって、
前記調整用治具には、前記歯車減速機構の入力側歯車に当接し、且つ、前記入力側歯車の回転により発音するように構成された発音部材が含まれる情報読取装置。
【請求項5】
撮像素子と、媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、前記結像レンズを内部に保持するレンズバレルと、前記レンズバレルを内部に保持するバレルホルダと、を備える前記媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置の調整方法であって、
前記情報読取装置に設けられている被装着部に、前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着し、前記歯車減速機構の入力側歯車を回転させることで前記第一歯車を回転させて、前記結像レンズの前記光軸方向の位置を調整し、当該位置の調整後、前記レンズバレルと前記バレルホルダを固定する工程を有
し、
前記情報読取装置は、前記バレルホルダを内部に保持する保持フレームを備え、前記バレルホルダには外周面から内周面まで達する孔部が形成されており、前記保持フレームには、前記バレルホルダの前記孔部と重なる位置に、外周面から内周面まで達する孔部が形成されており、
前記工程では、前記保持フレームの前記孔部と前記バレルホルダの前記孔部に、接着剤又はボルトを挿入して、前記レンズバレルと前記バレルホルダを固定する情報読取装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポート又はIDカード等の媒体に記録された情報を光学的に読み取ることのできる情報読取装置とその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パスポート又はIDカード等の情報記録媒体を撮像するための撮像素子と、この撮像素子の前方に配置された結像光学系と、を有する情報読み取り装置が記載されている。この結像光学系に含まれる結像レンズを保持するレンズバレルは、レンズバレルを内部にて保持する筒状のバレルホルダに対して回転しながら前後方向に移動自在に構成されている。この情報読取装置には、外周面に歯車を有し、且つレンズバレルと係合する調整リングが更に設けられている。この調整リングが手で回されることで、調整リングとレンズバレルとが一体的に回転されて、レンズバレルがバレルホルダ内にて光軸方向に移動できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された情報読取装置のように、結像レンズの位置を手動にて調整することで、結像光学系の焦点位置の調整が可能となる。結像レンズの位置調整は、マイクロミリオーダーといった細かい精度にて行う必要がある。したがって、このような調整をより精度よく行うための構成が要求される。特許文献1では、結像レンズの位置調整の精度向上といった課題についての認識はなされていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、結像光学系に含まれるレンズの光軸方向の位置調整を高い精度にて行うことのできる情報読取装置とその調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報読取装置は、媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置であって、撮像素子と、媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着するための被装着部と、を備え、前記被装着部は、前記撮像素子、前記結像レンズ、および前記第一歯車を含むユニットが固定される被固定部材から突出した突起であるものである。
【0007】
本発明の情報読取装置の調整方法は、撮像素子と、媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、前記結像レンズを内部に保持するレンズバレルと、前記レンズバレルを内部に保持するバレルホルダと、を備える前記媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置の調整方法であって、前記情報読取装置に設けられている被装着部に、前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着し、前記歯車減速機構の入力側歯車を回転させることで前記第一歯車を回転させて、前記結像レンズの前記光軸方向の位置を調整し、当該位置の調整後、前記レンズバレルと前記バレルホルダを固定する工程を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、結像光学系に含まれるレンズの光軸方向の位置調整を高い精度にて行うことのできる情報読取装置とその調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態である情報読取装置1の斜視図である。
【
図2】
図1に示す情報読取装置1のガラス板3、カバー部材15、および照明4,5を抜き出して示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すガラス板3、カバー部材15、および照明4,5の正面図である。
【
図4】
図1に示す情報読取装置1の内部の光路を説明するための側面図である。
【
図5】
図1に示す情報読取装置1のシャッタ機構14の動作を説明するための側面図である。
【
図6】
図1に示す情報読取装置1の後側筐体10Bを取り外した状態を後ろ側から斜めに見た斜視図である。
【
図7】
図6に示すユニット110の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示すユニット110におけるA-A線の断面模式図である。
【
図9】
図7に示すユニット110の分解斜視図である。
【
図10】
図6に示す情報読取装置1の被装着部102に装着される調整用治具70の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図10に示す調整用治具70におけるB-B線の断面模式図である。
【
図12】
図6に示す状態の情報読取装置1に、
図10に示す調整用治具70が装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(情報読取装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施形態である情報読取装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示す情報読取装置1のガラス板3、カバー部材15、および照明4,5を抜き出して示す斜視図である。
図3は、
図2に示すガラス板3、カバー部材15、および照明4,5の正面図である。
図4は、
図1に示す情報読取装置1の内部の光路を説明するための側面図である。
図5は、
図1に示す情報読取装置1のシャッタ機構14の動作を説明するための側面図である。
【0012】
情報読取装置1は、情報記録媒体2に記録された情報を光学的に読み取る装置である。すなわち、情報読取装置1は、情報記録媒体2に印刷等された文字や図形等を読み取る装置である。この情報読取装置1は、手動式の読取装置であり、情報読取装置1への情報記録媒体2の挿入と情報読取装置1からの情報記録媒体2の抜取りとが手動で行われる。また、情報読取装置1は、比較的小さな卓上型の読取装置である。情報読取装置1で読み取られる情報記録媒体2は、冊子状の第一情報記録媒体の一例であるパスポート2A(
図1参照)と、カード状の第二情報記録媒体の一例であるIDカード2B(
図3参照)である。パスポート2AおよびIDカード2Bには、所有者の顔写真と生年月日を含む個人情報等が印刷された情報記録面が設けられている。
【0013】
パスポート2Aは、複数枚の紙を綴じた冊子であり、
図1に示すように、表紙2sの裏面である情報記録面2saと、表紙2sの隣の頁であって表紙2sの情報記録面2saと対面する頁面2sbとによって構成される見開き面のうちの情報記録面2saに記録された情報(顔写真と個人情報等)が情報読取装置1で光学的に読み取られる。
【0014】
パスポート2Aの背表紙2bには、非接触通信によって情報を読み取ることのできる非接触通信用IC(Integrated Circuit)および非接触通信用のアンテナが内蔵されている。
【0015】
IDカード2Bは、矩形状且つ板状のカード状の媒体である。IDカード2Bは、IDカード2Bの両面が情報記録面となっており、情報記録面に記録された情報(顔写真と個人情報等)が情報読取装置1で光学的に読み取られる。
【0016】
パスポート2Aは、表紙2sを開き上記の見開き面が見える状態で情報読取装置1に挿入される。開いた状態で情報読取装置1に挿入されたパスポート2Aの表紙2sの厚さ方向と、情報読取装置1に挿入されたIDカード2Bの厚さ方向を、それぞれ上下方向という。なお、
図4では、説明の便宜上、パスポート2AとIDカード2Bとが一緒に情報読取装置1に挿入されているが、実際には、パスポート2AおよびIDカード2Bのいずれか一方が情報読取装置1に挿入される。
【0017】
以下の説明では、情報読取装置1への情報記録媒体2の挿入方向側(
図1等の方向Y2側)を「奥」側または「後ろ」側とし、情報読取装置1からの情報記録媒体2の抜取り方向側(
図1等の方向Y1側)を「前」側とする。また、情報読取装置1に対する情報記録媒体2の挿入抜取り方向(
図1等の方向Y)を「前後方向」とし、上下方向と前後方向とに直交する方向(
図1等の方向X)を「左右方向」とする。
【0018】
情報読取装置1は、ガラス板3と、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の下面に光を照射する照明4(
図2および
図3参照)と、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の上面に光を照射する照明5(
図2および
図3参照)と、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の下面に記録された情報を読み取るための光学系6(
図4参照)と、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の上面に記録された情報を読み取るための光学系7(
図4参照)と、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子8(
図4および
図5参照)と、光学系6を通過した光(情報記録媒体2の光学像)を撮像素子8に結像させるとともに、光学系7を通過した光(情報記録媒体2の光学像)を撮像素子8に結像させる結像光学系9(
図4および
図5参照)と、これらの構成要素が収容される筐体10(
図1参照)とを備えている。筐体10は、前側の前側筐体10Aと、後ろ側の後側筐体10Bとによって構成されている。
【0019】
また、情報読取装置1は、光学系6を通過した光の一部を結像光学系9に向かって透過させるとともに光学系7を通過した光の一部を結像光学系9に向かって反射するビームスプリッタ13(
図4参照)と、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の下面に記録された情報を読み取るときに光学系7からビームスプリッタ13に入射する光を遮り、且つ、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の上面に記録された情報を読み取るときに光学系6からビームスプリッタ13に入射する光を遮るシャッタ機構14(
図5参照)とを備えている。ビームスプリッタ13およびシャッタ機構14は、筐体10に収容されている。
【0020】
さらに、情報読取装置1は、
図2および
図3に示すように、ガラス板3に載置される情報記録媒体2よりも上側に配置される上面部15aと、上面部15aの左右の両端側に繋がる2個の側面部15bと、上面部15aの奥端側に繋がる奥面部15cとを有するカバー部材15を備えている。カバー部材15は、例えば、透明なアクリル樹脂で形成されている。奥面部15cには、例えば、遮光性の塗料が塗布されており、光を遮断する遮光部を構成している。一方、上面部15aおよび側面部15bは、透明になっている。
【0021】
上面部15aは、長方形の平板状に形成されており、上面部15aの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、上面部15aは、上面部15aの端面が前後方向または左右方向と平行になるように配置されている。側面部15bは、長方形の平板状に形成されており、側面部15bの厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。奥面部15cは、長方形の平板状に形成されており、奥面部15cの厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。奥面部15cの左右方向の両端は、側面部15bの奥端に繋がっている。
【0022】
ガラス板3は、長方形の平板状に形成されており、ガラス板3の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、ガラス板3は、ガラス板3の端面が前後方向又は左右方向と平行になるように配置されている。2つの側面部15bの各々の下端および奥面部15cの下端は、ガラス板3の上面に接触している。ガラス板3とカバー部材15とによって、前面が開口するとともに情報記録媒体2の少なくとも一部が載置される箱状の媒体挿入部16が形成されている。
図1に示すように、媒体挿入部16の、前面の開口以外の部分は、筐体10によって覆われている。
【0023】
筐体10におけるガラス板3よりも前側には、
図1に示すように、パスポート2Aに内蔵される非接触通信用のアンテナと通信を行うためのアンテナ17を内蔵する傾斜面17aが形成されている。傾斜面17aは、ガラス板3に対し下方向に向かって傾斜している。
【0024】
また、情報読取装置1は、
図1に示すようにカメラ18を備えている。カメラ18は、媒体挿入部16よりも上側に配置されている。カメラ18の光軸は、前側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜している。カメラ18は、たとえば、情報記録媒体2の読取操作を行う者の顔を撮影する。
【0025】
(照明の構成および配置)
図3に示すように、照明4,5は、複数の光源が実装される基板24と、光源から射出された光が入射する照明レンズ25とを備えている。照明4,5は、光源として、白色光を射出する複数の白色LEDと、赤外光を射出する複数の赤外線LEDと、紫外光を射出する複数の紫外線LEDとを備えている。基板24は、細長い長方形の平板状に形成されている。照明レンズ25は、細長い略直方体状に形成されている。この照明レンズ25は、基板24の、光源が実装された面に固定されている。
【0026】
照明レンズ25には、白色LEDが射出する白色光と赤外線LEDが射出する赤外光と紫外線LEDが射出する紫外光とが入射し、照明レンズ25を透過した光が情報記録媒体2に照射される。なお、照明4,5から照射される赤外光は、OCR文字等の機械読取式の印刷情報の読取りに用いられる。また、照明4,5から照射される紫外光は、情報記録媒体2の真偽判定に必要な印刷情報の読取りに用いられる。具体的には、照明4,5から照射される紫外光は、目に見えない蛍光発色インクによる印刷情報の読取りに用いられる。
【0027】
図3に示すように、照明4は、ガラス板3よりも下側に配置されている。また、情報読取装置1は、2個の照明4を備えており、照明4は、左右方向におけるガラス板3の両外側のそれぞれに配置されている。照明4は、ガラス板3に載置される情報記録媒体2に向かって左右方向の外側から、かつ、斜め下側から光を照射する。また、照明4から射出されガラス板3を透過した光が、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の下面に照射される。
【0028】
照明5は、ガラス板3に載置される情報記録媒体2よりも上側に配置されている。また、情報読取装置1は、2個の照明5を備えており、照明5は、左右方向における媒体挿入部16の両外側のそれぞれに配置されている。すなわち、2個の照明5のうちの一方の照明5は、右側に配置される側面部15bの右側に配置され、2個の照明5のうちの他方の照明5は、左側に配置される側面部15bの左側に配置されている。照明5は、ガラス板3に載置される情報記録媒体2に向かって左右方向の外側から、かつ、斜め上側から光を照射する。また、照明5から射出され側面部15bを透過した光が、ガラス板3に載置される情報記録媒体2の上面に照射される。
【0029】
(光学系、結像光学系、ビームスプリッタ、撮像素子の構成および配置)
図4に示すように、光学系6は、長方形の平板状に形成された3個の反射ミラー(全反射ミラー)30、31、32を備えている。反射ミラー30は、反射ミラー31よりも大きくなっており、反射ミラー31は、反射ミラー32よりも大きくなっている。反射ミラー30、31は、ガラス板3よりも下側に配置されている。具体的には、反射ミラー30は、ガラス板3に載置されるパスポート2Aの下側に配置されている。また、反射ミラー31は、反射ミラー30と略同じ高さに配置されるとともに、反射ミラー30よりも後ろ側に配置されている。反射ミラー32は、媒体挿入部16の後ろ側に配置されている。また、反射ミラー32は、反射ミラー31の上側に配置されている。
【0030】
反射ミラー30~32は、上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。具体的には、反射ミラー30~32は、左右方向から見たときに上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。反射ミラー30は、後ろ側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜し、反射ミラー31、32は、後ろ側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜している。反射ミラー30~32の上下方向に対する傾斜角度は、略45°となっている。
【0031】
反射ミラー30には、ガラス板3に載置された情報記録媒体2の下面で反射された光が入射する。反射ミラー31には、反射ミラー30で反射された光が入射し、反射ミラー32には、反射ミラー31で反射された光が入射する。反射ミラー30では、情報記録媒体2の下面で反射されて下側へ向かう光の光軸が後ろ側に折り曲げられる。また、反射ミラー31では、反射ミラー30で反射されて後ろ側へ向かう光の光軸が上側に折り曲げられ、反射ミラー32では、反射ミラー31で反射されて上側に向かう光の光軸が後ろ側に折り曲げられる。
【0032】
図4に示すように、光学系7は、長方形の平板状に形成された2個の反射ミラー(全反射ミラー)33、34を備えている。反射ミラー33は、反射ミラー34よりも大きくなっている。反射ミラー33,34は、ガラス板3に載置される情報記録媒体2よりも上側に配置されている。具体的には、反射ミラー33は、ガラス板3に載置されるIDカード2Bの上側に配置されている。また、反射ミラー34は、反射ミラー33と略同じ高さに配置されるとともに、ガラス板3よりも後ろ側(すなわち、媒体挿入部16よりも後ろ側)に配置されている。また、反射ミラー33,34は、カバー部材15の上面部15aよりも上側(すなわち、媒体挿入部16よりも上側)に配置されている。
【0033】
反射ミラー33,34は、上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。具体的には、
図4に示すように、反射ミラー33,34は、左右方向から見たときに上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。反射ミラー33は、後ろ側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜し、反射ミラー34は、後ろ側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜している。反射ミラー33,34の上下方向に対する傾斜角度は、略45°となっている。
【0034】
反射ミラー33には、ガラス板3に載置された情報記録媒体2の上面で反射された光が入射する。反射ミラー34には、反射ミラー33で反射された光が入射する。反射ミラー33では、情報記録媒体2の上面で反射されて上側へ向かう光の光軸が後ろ側に折り曲げられ、反射ミラー34では、反射ミラー33で反射されて後ろ側へ向かう光の光軸が下側に折り曲げられる。
【0035】
結像光学系9は、結像レンズ35を備えている。結像レンズ35は、反射ミラー32の後ろ側に配置されている。また、結像レンズ35は、反射ミラー34よりも後ろ側に配置されている。撮像素子8は、結像レンズ35の後ろ側に配置されている。撮像素子8は、撮像面が前側を向くように配置されている。
【0036】
ビームスプリッタ13は、長方形の平板状に形成されている。ビームスプリッタ13は、光の透過率と反射率とが等しいハーフミラーである。ビームスプリッタ13は、前後方向において、反射ミラー32と結像レンズ35との間に配置されている。すなわち、ビームスプリッタ13は、反射ミラー32の後ろ側であって、且つ、結像レンズ35の前側に配置されている。また、ビームスプリッタ13は、反射ミラー34の下側に配置されている。
【0037】
ビームスプリッタ13は、上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。具体的には、
図4に示すように、ビームスプリッタ13は、左右方向から見たときに上下方向に対して所定の角度傾いた状態で配置されている。ビームスプリッタ13は、後ろ側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜している。ビームスプリッタ13の上下方向に対する傾斜角度は、略45°となっている。ビームスプリッタ13は、反射ミラー32で反射された光の半分を結像レンズ35に向かって透過させるとともに、反射ミラー34で反射された光の半分を結像レンズ35に向かって反射する。
【0038】
ガラス板3に載置された情報記録媒体2の下面で反射された光の、撮像素子8までの光路長と、ガラス板3に載置された情報記録媒体2の上面で反射された光の、撮像素子8までの光路長とは、略等しくなっている。
【0039】
(シャッタ機構の構成)
図5に示すように、シャッタ機構14は、光学系6の反射ミラー32とビームスプリッタ13との間の光路を遮る第1遮光位置37A(
図5(B)参照)と、光学系7の反射ミラー34とビームスプリッタ13との間の光路を遮る第2遮光位置37B(
図5(A)参照)との間で移動可能なシャッタ37を備えている。シャッタ37は、反射ミラー32、34とビームスプリッタ13との間の光路を遮る遮光部37aを備えている。
【0040】
また、シャッタ機構14は、第1遮光位置37Aと第2遮光位置37Bとの間でシャッタ37を移動させるシャッタ駆動機構を備えている。このシャッタ駆動機構は、シャッタ37が固定されるレバー部材39、および、レバー部材39を回動させるソレノイド(図示省略)等を備える。レバー部材39は、左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。
【0041】
シャッタ機構14のシャッタ37が駆動されることで、シャッタ37が第2遮光位置37B(
図5(A)参照)にある状態では、撮像素子8がガラス板3を下面側から撮像し、シャッタ37が第1遮光位置37A(
図5(B)参照)にある状態では、撮像素子8がガラス板3を上面側から撮像するようになっている。
【0042】
反射ミラー32、ビームスプリッタ13、シャッタ機構14、結像光学系9、および撮像素子8は、1つのユニット110として形成され、ユニット110は筐体10に収容された基台に固定される。
【0043】
(ユニットの詳細構成)
図6は、
図1に示す情報読取装置1の後側筐体10Bを取り外した状態を後ろ側から斜めに見た斜視図である。
図6に示すように、筐体10の内部には、矩形板状の基台101が設けられている。基台101の上面101aには、上述したユニット110がネジ止め又は接着等によって固定されている。基台101は、ユニット110が固定される被固定部材を構成する。基台101の形状は任意であり、矩形板状に限定されるものではない。
【0044】
基台101の後ろ側の端面101bには、ユニット110の結像レンズ35の光軸方向の位置を調整するための後述の調整用治具70(
図10参照)を装着するための被装着部102が設けられている。被装着部102は、
図6の例では、基台101の端面101bから方向Y2に延びる(方向Y2に突出する)円筒状の部材である。
【0045】
図7は、
図6に示すユニット110の構成を示す斜視図である。
図8は、
図7に示すユニット110におけるA-A線の断面模式図である。
図9は、
図7に示すユニット110の分解斜視図である。
【0046】
図7~
図9に示すように、情報読取装置1は、反射ミラー32およびビームスプリッタ13が固定される固定フレーム45と、結像レンズ35を保持するレンズバレル46と、レンズバレル46を保持するバレルホルダ47と、バレルホルダ47を保持する保持フレーム48と、バレルホルダ47に対してレンズバレル46を回転させるための調整リング49と、撮像素子8が実装された基板50と、調整リング49を回転させるための調整用歯車60と、を備えている。
【0047】
固定フレーム45は、基台101を介して筐体10に固定されている。固定フレーム45には、反射ミラー32およびビームスプリッタ13が接着で固定されている。また、固定フレーム45には、
図8に示すように、紫外線カットフィルター55が接着で固定されている。紫外線カットフィルター55は、ビームスプリッタ13の後ろ側に配置されている。固定フレーム45の後端側には、保持フレーム48を固定するための2個のネジ穴(図示省略)が形成されている。
【0048】
レンズバレル46は、円筒状に形成されている。レンズバレル46は、レンズバレル46の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。結像レンズ35は、レンズバレル46の内周面に固定されている。レンズバレル46の外周面には、オネジが形成されている。
【0049】
バレルホルダ47は、筒状に形成されている。バレルホルダ47は、レンズバレル46を保持するバレル保持部47aと、基板50が固定される基板固定部47bとから構成されている。バレル保持部47aは、円筒状に形成されている。バレル保持部47aは、バレル保持部47aの軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。バレル保持部47aの内周面には、レンズバレル46の外周面のオネジが螺合するメネジが形成されている。バレル保持部47aには、外周面から内周面まで達する貫通孔47dが形成されている。基板固定部47bには、基板50を固定するための2個のネジ穴47cが形成されている(
図9参照)。
【0050】
保持フレーム48は、筒状に形成されている。保持フレーム48は、保持フレーム48の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。
図8に示すように、保持フレーム48の後端部の内周側は、バレルホルダ47の基板固定部47bが収容される収容部48fとなっている。保持フレーム48の内周側の、収容部48fよりも前側の部分は、調整リング49の後端側部分およびバレル保持部47aが収容される収容部48bとなっている。収容部48bの内周面は、円筒面となっている。
【0051】
図9に示すように、保持フレーム48の後端側には、基板50を固定するための2個のネジ穴48cが形成されている。また、保持フレーム48の前端側には、上下方向を長手方向とする2個の長穴48dが形成されている。長穴48dは、前後方向で貫通するように形成されている。長穴48dには、固定フレーム45に保持フレーム48を固定するネジ56が挿通されている。
【0052】
図7から
図9に示すように、保持フレーム48には、外周面から内周面まで達する貫通孔48eが形成されている。貫通孔48eは、保持フレーム48の内周に配置されたバレルホルダ47の貫通孔47dと方向Yおよび方向Xにおける位置が同じとなっている。つまり、貫通孔48eと貫通孔47dは、それぞれの貫通孔の貫通方向にみたときに、互いに重なる位置に形成されている。
【0053】
図8および
図9に示すように、調整リング49は、段付きの円筒状に形成されており、大径部49aと、大径部49aよりも内径および外径の小さい小径部49bと、大径部49aの外周面に形成された歯車49cと、から構成されている。調整リング49は、調整リング49の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。小径部49bは、調整リング49の後端側部分を構成している。大径部49aの後端側部分および小径部49bは、保持フレーム48の収容部48bに収容されている。
【0054】
調整リング49は、圧縮コイルバネ57によって後ろ側へ付勢されている。小径部49bの後端部には、レンズバレル46の前端面に形成される係合凹部に係合する係合突起が形成されている。係合凹部と係合突起との係合状態は、圧縮コイルバネ57の付勢力によって維持されている。
【0055】
調整リング49が回転すると、レンズバレル46がバレルホルダ47に対して回転しながら前後方向(光軸方向)へ移動する。調整リング49に固定された歯車49cは、結像レンズ35を光軸周りに回転させることで結像レンズ35を光軸方向に移動させるための回転力を、レンズバレル46を介して結像レンズ35に伝達するための第一歯車として機能する。
【0056】
図9に示すように、基板50は、略正方形の平板状に形成されている。基板50は、基板50の厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。撮像素子8は、基板50の前面に実装されている。基板50には、前後方向に貫通する2個の長穴50aが形成されている。また、基板50には、前後方向に貫通する2個の貫通穴50bが形成されている。長穴50aは、前後方向から見たときに、撮像素子8の中心を曲率中心とする円弧状に形成されている。あるいは、長穴50aの長手方向は、前後方向から見たときに、撮像素子8の中心を曲率中心とする仮想円の接線方向となっている。また、基板50には、前後方向に貫通する2個の貫通穴50bが形成されている。
【0057】
長穴50aには、保持フレーム48に基板50を固定するネジ58が挿通されている。貫通穴50bには、バレルホルダ47に基板50を固定するネジ59が挿通されている。本形態では、撮像素子8が実装された基板50がネジ59によってバレルホルダ47に固定された後、バレルホルダ47付きの基板50がネジ58によって保持フレーム48に固定される。
【0058】
図7および
図9に示すように、保持フレーム48の前端側の側面には、方向Y1に向かって保持フレーム48の前端よりも前側まで延びる円柱状の軸部材48aが形成されている。この軸部材48aには、調整リング49の歯車49cと噛み合う調整用歯車60が回転自在に取り付けられている。
【0059】
調整用歯車60と歯車49cとの歯車比は1となっている。調整用歯車60が軸部材48aを中心にして回転することで、その回転力が調整リング49の歯車49cに伝達される。調整用歯車60は、第二歯車を構成する。ユニット110は、調整用歯車60が1歯分回転することにより、レンズバレル46が例えば光軸方向に0.012mm移動するよう構成されている。
【0060】
(調整用治具の構成)
図10は、
図6に示す情報読取装置1の被装着部102に装着される調整用治具70の構成を模式的に示す斜視図である。
図11は、
図10に示す調整用治具70におけるB-B線の断面模式図である。
図12は、
図6に示す状態の情報読取装置1に、
図10に示す調整用治具70が装着された状態を示す図である。
【0061】
図10に示すように、調整用治具70は、平板状の固定部72と、固定部72の上面にネジ止めによって固定された歯車減速機構71と、発音部材73と、を備える。
【0062】
固定部72の後端部には、下方向に延びる突起72aが形成されている。突起72aには、後端から前端まで達する孔部72bが形成されている。調整用治具70は、情報読取装置1の製造過程において、ユニット110に含まれる結像レンズ35の光軸方向の位置調整(焦点位置の調整)を行う際に、
図6に示した被装着部102に装着して用いられる。
【0063】
本形態においては、調整用治具70における固定部72の孔部72bに、
図6に示す情報読取装置1の被装着部102の先端を通した状態にて、被装着部102と調整用治具70の突起72aとをネジによって固定することで、調整用治具70が情報読取装置1に装着される。この装着状態においては、
図12に示すように、調整用治具70の固定部72の一部が、情報読取装置1の基台101の上面に配置された状態となる。
【0064】
歯車減速機構71は、減速ギアボックスである。歯車減速機構71は、
図12に示すように調整用治具70が情報読取装置1に装着された状態において、ユニット110の調整用歯車60と噛み合う出力側歯車71bと、出力側歯車71bに動力を伝達するための入力側歯車71aと、を少なくとも備える。出力側歯車71bと調整用歯車60の歯数は同じとなっているが、歯数は異なっていてもよい。調整用歯車60等の小型化のために、入力側歯車71aと出力側歯車71bの間には、少なくとも1つの減速用歯車が設けられていてもよい。
【0065】
歯車減速機構71は、入力側歯車71aと出力側歯車71bとの歯数比が十分に大きくなるよう構成されている。例えば、入力側歯車71aの1歯分の回転量に対し、出力側歯車71bの回転量は1歯分の33分の1となるよう構成されている。つまり、入力側歯車71aを1歯分回転させた場合には、出力側歯車71b、調整用歯車60、および調整リング49の歯車49cがそれぞれ33分の1歯分回転し、レンズバレル46が光軸方向に{0.012×(1/33)}mm移動することになる。
【0066】
図11に示すように、発音部材73は、入力側歯車71aに当接し、且つ、入力側歯車71aが1歯分回転する毎に発音するように構成された部材である。発音部材73は、
図11の例では、歯車減速機構71の下端に固定された方向Xに延びる平板状の平板部73aと、平板部73aの一端から上方向に延びる平板状の平板部73bと、平板部73bにおける平板部73a側と反対側の端部から入力側歯車71aに向かって方向Xに延びる平板状の平板部73cと、により構成されている。
【0067】
平板部73cの先端は、入力側歯車71aの歯71at同士の間の谷部に当接している。平板部73bは、平板部73a側の端部を支点にして方向Xに移動することのできる弾性体により構成されており、その弾性力によって、平板部73cを入力側歯車71aに対して付勢している。平板部73cは、入力側歯車71aの回転動作によって、歯71at同士の間の谷部から離間して、次の谷部に戻ったときに、この谷部との間で音を発することのできる材料によって構成されている。
【0068】
(情報読取装置の情報読取動作)
情報読取装置1でパスポート2Aに記録された情報が読み取られる場合、パスポート2Aは、個人情報が記録された表紙の裏面が下側を向くようにガラス板3に載置される。パスポート2Aがガラス板3に載置されると、照明4が光を照射して、パスポート2Aに記録された情報が光学的に読み取られる。このときには、シャッタ37は、第2遮光位置37Bに配置されている。また、照明5は光を照射しない。
【0069】
一方、情報読取装置1でIDカード2Bに記録された情報が読み取られる場合、IDカード2Bがガラス板3に載置されると、まず、照明4が光を照射して、IDカード2Bの下面に記録された情報が光学的に読み取られる。このときには、シャッタ37は第2遮光位置37Bに配置されており、また、照明5は光を照射しない。IDカード2Bの下面に記録された情報が読み取られると、シャッタ37は第1遮光位置37Aに移動するとともに、照明5が光を照射して、IDカード2Bの上面に記録された情報が光学的に読み取られる。このときには、照明4は光を照射しない。
【0070】
なお、IDカード2Bに記録された情報が読み取られる場合、IDカード2Bの上面に記録された情報が読み取られた後に、IDカード2Bの下面に記録された情報が読み取られても良い。また、IDカード2Bに記録された情報が読み取られる場合には、たとえば、IDカード2Bの下面に記録された情報と上面に記録された情報とが数10ミリ秒で読み取られる。
【0071】
(結像レンズの位置調整方法)
情報読取装置1における結像レンズ35の光軸方向の位置調整は、以下の手順で行われる。まず、調整者は、調整用治具70を情報読取装置1の被装着部102に装着する(
図12参照)。その後、調整者は、撮像素子8によってテストチャートを撮像し、撮像によって得られる撮像画像から解像度の評価値(MTF(Modulation Transfer Function)評価値)を求める作業を、調整用治具70の入力側歯車71aを所定数の歯分ずつ回転させながら繰り返し行う。このようにして入力側歯車71aの操作が繰り返された結果、所望のMTF評価値が得られる結像レンズ35の位置が分かると、調整者は、調整用治具70の入力側歯車71aを操作して、結像レンズ35をこの位置まで移動させる。
【0072】
結像レンズ35の位置調整が終了すると、レンズバレル46をバレルホルダ47に固定する工程が行われる。この工程では、
図8に示す保持フレーム48の貫通孔48eに接着剤を流し込み、この貫通孔48eの下方にあるバレルホルダ47の貫通孔47dまで接着剤を流し込む。その後、この接着剤が硬化されることで、レンズバレル46がバレルホルダ47に固定される。なお、この工程では、接着剤を用いずに、例えば、
図8に示す貫通孔48eと貫通孔47dにボルトを通し、このボルトをレンズバレル46に締めることで、レンズバレル46をバレルホルダ47に固定してもよい。レンズバレル46がバレルホルダ47に固定された後、調整者は、調整用治具70を被装着部102から取り外して、結像レンズ35の位置調整作業を終了する。
【0073】
(実施形態の情報読取装置の効果)
以上のように、情報読取装置1によれば、被装着部102に調整用治具70を装着した状態にて、歯車減速機構71により、歯車49cに対して細かな回転力を伝達させることができる。この結果、結像レンズ35の光軸方向の位置を細かく調整することができ、精度の高い焦点調節等が可能となる。
【0074】
また、情報読取装置1によれば、歯車49cに対し、調整用歯車60を介して、歯車減速機構71の動力が伝達される。調整用歯車60があることで、結像レンズ35の光軸からより遠い位置に被装着部102を設けることが可能となり、調整用治具70の装着容易性を高めることができる。
【0075】
また、情報読取装置1によれば、被装着部102が基台101から突出する突起形状となっているため、この被装着部102を調整用治具70の孔部72bに通して固定するといった簡単な作業により、調整用治具70の装着が可能となる。これにより、調整用治具70の装着容易性を高めることができる。
【0076】
また、情報読取装置1によれば、貫通孔48eと貫通孔47dを介してレンズバレル46をバレルホルダ47に固定することができる。上述した固定方法を採用することで、結像レンズ35の位置調整後の光軸方向への移動を防ぎながら、結像レンズ35の固定が可能となる。
【0077】
また、調整用治具70は、入力側歯車71aを1歯回転させる毎に、発音部材73によって音が鳴る構成である。このため、調整者は、入力側歯車71aをどの程度回転させたかを、この音によって容易に把握することができ、所望のMTF評価値が得られたときの結像レンズ35の位置まで入力側歯車71aを操作する作業を容易に行うことができる。
【0078】
また、発音部材73の平板部73cの先端は、入力側歯車71aに向かって付勢されている。このため、入力側歯車71aが操作されていない状態において、この平板部73cが入力側歯車71aの回転を防ぐ役割を果たす。これにより、結像レンズ35の位置調整作業を正確且つ効率的に実施することが可能となる。
【0079】
また、情報読取装置1によれば、調整用治具70を装着するための被装着部102を追加するだけで、上述してきた効果を得ることができる。このため、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0080】
(実施形態の情報読取装置の変形例)
情報読取装置1の被装着部102は、基台101から突出する突起としているが、基台101に形成された凹部であってもよい。この場合には、調整用治具70の突起72aに、基台101の凹部と係合する突出を設けておき、この突出と凹部とを係合させた状態にて、調整用治具70を基台101にネジ止めによって固定すれよい。
【0081】
情報読取装置1に設けられた調整用歯車60は、調整用治具70が有する構成であってもよい。この場合には、例えば、調整用治具70は、出力側歯車71bが調整用歯車60に置換された構成とすればよい。調整用治具70は使い回しが可能であることから、この構成によれば情報読取装置1の製造コストを低減することができる。
【0082】
上述した形態において、情報読取装置1は、ガラス板3に代えて、たとえば、アクリル板等の透明な樹脂板を備えていても良い。また、上述した形態において、情報記録媒体2にICチップが内蔵されていなくても良い。この場合には、ガラス板3の下側に配置されるアンテナおよびアンテナ17が不要になる。さらに、上述した形態において、情報記録媒体2は、パスポート2AおよびIDカード2B以外の媒体であっても良い。たとえば、情報記録媒体2は、運転免許証であっても良い。また、上述した形態では、情報読取装置1は、手動式の読取装置であるが、本発明の構成が適用される情報読取装置は、情報記録媒体の搬送機構を有する媒体搬送式の読取装置であっても良い。
【0083】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0084】
(1)
媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置であって、
撮像素子と、
媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、
前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、
前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着するための被装着部と、を備える情報読取装置。
【0085】
(1)によれば、被装着部に調整用治具を装着した状態にて、歯車減速機構により、第一歯車に対して細かな回転力を伝達することができる。この結果、結像レンズの光軸方向の位置を細かく調整することができ、精度の高い焦点調節等が可能となる。
【0086】
(2)
(1)記載の情報読取装置であって、
前記第一歯車と噛み合う第二歯車を備え、
前記被装着部に前記調整用治具が装着された状態において、前記第二歯車には前記歯車減速機構の出力側歯車が噛み合う情報読取装置。
【0087】
(2)によれば、第一歯車に対し、第二歯車を介して、歯車減速機構の出力が伝達される。第二歯車があることで、結像レンズの光軸からより遠い位置に被装着部を設けることが可能となり、調整用治具の装置への装着容易性を高めることができる。
【0088】
(3)
(1)又は(2)記載の情報読取装置であって、
前記被装着部は、前記撮像素子、前記結像レンズ、および前記第一歯車を含むユニットが固定される被固定部材から突出した突起であり、
前記調整用治具には、前記突起を通すための孔部が設けられる情報読取装置。
【0089】
(3)によれば、調整用治具の装置への装着容易性を高めることができる。
【0090】
(4)
(1)から(3)のいずれか1項記載の情報読取装置であって、
前記結像レンズを内部に保持するレンズバレルと、
前記レンズバレルを内部に保持するバレルホルダと、
前記バレルホルダを内部に保持する保持フレームと、を備え、
前記バレルホルダには外周面から内周面まで達する貫通孔が形成されており、
前記保持フレームには、前記バレルホルダの前記貫通孔と重なる位置に、外周面から内周面まで達する貫通孔が形成されている情報読取装置。
【0091】
(4)によれば、2つの孔部からレンズバレルが露出することになる。このため、この2つの孔部に接着剤を充填してレンズバレルをバレルホルダに固定したり、この2つの孔部にボルトを通してレンズバレルをバレルホルダに固定したりすることができる。このような固定方法によって、結像レンズの位置調整後の結像レンズの光軸方向への移動を防ぎながら、結像レンズの固定が可能となる。
【0092】
(5)
(1)から(4)のいずれか1項記載の情報読取装置であって、
前記調整用治具には、前記歯車減速機構の入力側歯車に当接し、且つ、前記入力側歯車の回転により発音するように構成された発音部材が含まれる情報読取装置。
【0093】
(5)によれば、発音部材の発音によって、入力側歯車の回転量を直感的に確認することができ、結像レンズの位置調整の助けとすることができる。
【0094】
(6)
撮像素子と、媒体の光学像を前記撮像素子に結像させるための結像レンズと、前記結像レンズを光軸周りに回転させることで前記結像レンズを光軸方向に移動させるための回転力を前記結像レンズに伝達するための第一歯車と、を備える前記媒体から光学的に情報を読み取る情報読取装置の調整方法であって、
前記情報読取装置に設けられている被装着部に、前記第一歯車に回転力を伝達するための歯車減速機構を含む調整用治具を装着し、前記歯車減速機構の入力側歯車を回転させることで前記第一歯車を回転させて、前記結像レンズの前記光軸方向の位置を調整する情報読取装置の調整方法。
【0095】
(6)によれば、歯車減速機構により、第一歯車に対して細かな回転力を伝達することができる。この結果、結像レンズの光軸方向の位置を細かく調整することができ、精度の高い焦点調節等が可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 情報読取装置
2 情報記録媒体
8 撮像素子
35 結像レンズ
46 レンズバレル
47 バレルホルダ
48 保持フレーム
49 歯車
60 調整用歯車
70 調整用治具
71a 入力側歯車
71b 出力側歯車
73 発音部材
102 被装着部