(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】容態変化判別方法、容態変化判別装置、当該装置又は方法に用いられるプログラム及びコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230308BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20230308BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
G16H10/40
(21)【出願番号】P 2018229053
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】東 和理
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0358926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G16H 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つを取得する機能と、
無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報を取得する機能と、
無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて、患者の容態変化を判別する判別方法により、患者
が敗血症か否かを判別する機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項2】
少なくとも、無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つに基づいて患者の容態を示すスコアを算出し、算出された前記スコアに基づいて、患者
が敗血症か否かを判別する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報には、呼吸数が含まれる、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
第一時間間隔で測定された無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つに基づき、前記第一時間間隔より長い時間間隔である第二時間間隔あたりの前記無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つの推定値を算出する機能をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第一時間間隔は、無呼吸数、低呼吸数、並びに前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報の少なくとも一つに基づいて設定される、請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第一時間間隔は、患者の異常を示す異常生体情報が取得されると、前記異常生体情報が取得された以前に設定された時間間隔よりも短く設定される、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
患者の異常を示す異常生体情報が所定の時間取得されない場合、前記第一時間間隔は、前記第二時間間隔に近づくように設定される、請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記呼吸数は、心電図を用いたインピーダンス方式による測定または二酸化炭素濃度(EtCo2)の測定により取得される、請求項3に記載のプログラム。
【請求項9】
前記判別された患者の
敗血症か否かに関する判別結果を、所定の規格化条件で規格化された表示態様で表示させる機能をさらに有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記患者
が敗血症か否かを判別する機能は複数の判別方法を有し、
前記複数の判別方法によって判別された各判別結果は、所定の規格化条件で規格化される、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つを取得するステップと、
無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報を取得するステップと、
無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて患者の容態変化を判別する判別方法により、患者
が敗血症か否かを判別するステップと、を
コンピュータが実行する容態変化判別方法。
【請求項12】
前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報には、呼吸数が含まれる、請求項11に記載の容態変化判別方法。
【請求項13】
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報と、を含む生体情報に基づいて患者の容態変化を判別する判別方法により、患者の容態変化を判別する判別部、を備え、
前記判別部は、前記無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて、患者
が敗血症か否かを判別する、容態変化判別装置。
【請求項14】
前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報には、呼吸数が含まれる、請求項13に記載の容態変化判別装置。
【請求項15】
請求項1から10のうちいずれか一項に記載のプログラムを含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容態変化判別方法、容態変化判別装置、当該装置又は方法に用いられるプログラム及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の容態変化を判別する方法として、例えば、NEWS(National Early Warning Score)やqSOFA(quick SOFA)等の手法が知られている。NEWSやqSOFAで用いられる評価項目(パラメータ)の一つとして、呼吸数がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
呼吸数の測定方法としては、例えば心電図によるインピーダンス方式がある。しかし、当該方法は、体動等のノイズに弱いため、精度高く呼吸数を測定することが難しい。このため、患者の呼吸数を測定する際、医療従事者は、目視で患者の呼吸数を測定している。
【0005】
本発明は、医療従事者がNEWS等の患者の容態変化を判別する方法を用いる際に、患者の容態を精度よく判別することが可能な容態変化判別方法及び容態変化判別装置、並びに当該装置又は方法に用いられるプログラム及びコンピュータ可読媒体を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るプログラムは、
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つを取得する機能と、
無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報を取得する機能と、
無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて、患者の容態変化を判別する判別方法により、患者の容態変化を判別する機能と、をコンピュータに実現させる。
【0007】
上記構成に係るプログラムによれば、無呼吸数と低呼吸数の少なくとも一つに基づいて、患者の容態変化を判別する。このため、呼吸の質を考慮して患者の容態変化を判別することができる。
このように、上記構成によれば、呼吸の質を考慮して患者の容態変化を精度よく判別することが可能なプログラムを提供することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る容態変化判別方法は、
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つを取得するステップと、
無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報を取得するステップと、
無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて患者の容態変化を判別する判別方法により、患者の容態変化を判別するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係る容態変化判別装置は、
患者の無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、無呼吸数及び低呼吸数以外の患者の生体情報と、を含む生体情報に基づいて患者の容態変化を判別する判別方法により、患者の容態変化を判別する判別部を備え、
前記判別部は、前記無呼吸数及び低呼吸数の少なくとも一つと、前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報と、に基づいて、患者の容態変化を判別する。
【0010】
本発明の一態様に係る非一時的コンピュータ可読媒体は、
上記本発明に係るプログラムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医療従事者がNEWS等の患者の容態変化を判別する方法を用いる際に、患者の容態を精度よく判別することが可能な容態変化判別方法及び容態変化判別装置、並びに当該装置又は方法に用いられるプログラム及びコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る容態変化判別装置及びベッドサイドモニタの機能ブロック図である。
【
図2】判別方法の一つであるNEWSを基にした判別方法の基準値を示す図である。
【
図3】判別方法の一つであるSOFAを基にした判別方法の基準値を示す図である。
【
図4】判別方法の一つであるqSOFAを基にした判別方法の基準値を示す図である。
【
図5】各判別方法における規格化テーブルを示す図である。
【
図6】各判別方法を構成するパラメータを規格化するための規格化テーブルを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る容態変化判別方法に関するフローチャートを示す図である。
【
図8】第一時間間隔の設定に関するフローチャートを示す図である。
【
図9】患者の容態変化を表示する画面に関する図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る容態変化判別装置及び表示装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る容態変化判別装置1及びベッドサイドモニタ(外部装置の一例)10の機能ブロック図を示している。
図1に示すように、容態変化判別装置1は、制御部2と、記憶部5と、通信インターフェース(通信IF)7と、を備える。これらはバス9を介して互いに通信可能に接続されている。ベッドサイドモニタ10は、入力操作部11と、取得部12と、表示部13と、通信インターフェース(通信IF)14と、モニタ制御部15と、を備える。これらはバス16を介して互いに通信可能に接続されている。容態変化判別装置1とベッドサイドモニタ10は、有線又は無線により通信可能である。
【0015】
容態変化判別装置1について説明する。制御部2は、判別部6と、表示制御部8と、を含む。また、制御部2は、ハードウェア構成として、メモリと、プロセッサと、を備えている。メモリは、例えば、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、ROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。例えば、制御部2は、RAMとの協働でプログラムを実行することで、判別部6又は表示制御部8の処理を実現するよう制御する。また、制御部2は、ベッドサイドモニタ10の取得部4が取得した生体情報に基づき、判別部6が所定の処理を行うように制御する。
【0016】
本実施形態においては、コンピュータ可読媒体が利用されてもよい。コンピュータ可読媒体は、プロセッサが読み取ることのできる情報やデータを記憶し得る、あらゆるタイプの物理メモリ(RAM、ROM等)を指す。コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサによる実行処理に関する命令を記憶し得る。尚、「コンピュータ可読媒体」という用語は、有形の品目を包含し、且つ搬送波や一時的な信号は除外する(即ち、非一時的なものを指す)ことを理解されたい。
【0017】
記憶部5は、患者の容態変化を判別する判別方法、容態変化判別方法に関する医療ガイドライン等で定められた基準値や許容範囲、各判別結果を規格化するための規格化テーブル(規格化条件の一例)等を記憶するためのメモリを有している。容態変化判別方法としては、例えば、NEWS、SOFA、qSOFA、APACHE2(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation 2)、BSAS(Bedside Shivering Assessment Scale)、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)等である。また、記憶部5に記憶されている容態変化判別方法には、これらの判別方法の他、例えば、NEWS等を基に設定された判別方法も含まれる。
【0018】
通信インターフェース7は、ベッドサイドモニタ10との通信を可能にするインターフェースである。容態変化判別装置1は、通信インターフェース7を介して、ベッドサイドモニタ10と適宜、通信することができる。
【0019】
表示制御部8は、判別部6による判別結果が、記憶部5に記憶された規格化テーブルP又は規格化テーブルQに基づき規格化された表示態様でベッドサイドモニタ10の表示部13に表示されるための画像データを生成する。本実施形態における規格化の方法は、所定の箇所に色を付す方法である。当該画像データはベッドサイドモニタ10に送信される。このようにして、表示制御部8は、ベッドサイドモニタ10の表示部13を制御することができる。
【0020】
ベッドサイドモニタ10について説明する。入力操作部11は、ベッドサイドモニタ10を操作する医療従事者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成するように構成されている。入力操作部11は、例えば、表示部13上に重ねて配置されたタッチパネル、筐体に取り付けられた操作ボタン、イベントスイッチ等である。入力操作部11は、生体情報の取得を開始するための入力操作や、表示部13の画面を切り換えるための入力操作等を受け付けて、当該入力操作に対応する操作信号を生成する。生成された指示信号は、バス16を介してモニタ制御部15に送信される。モニタ制御部15は、指示信号に基づいて、ベッドサイドモニタ10の動作を制御するように構成されている。また、生成された指示信号は、バス16及び通信インターフェース14並びに通信インターフェース7及びバス9を介して容態変化判別装置1の制御部2に送信される。制御部2は、指示信号に基づいて、容態変化判別装置1の動作を制御するように構成されている。尚、入力操作部11は、容態変化判別装置1に設けられていてもよい。
【0021】
取得部12は、患者の生体情報を取得可能に構成されている。取得部12は、例えば、患者に装着される複数の電極やカフ等が接続されるインターフェースである。生体情報としては、例えば、呼吸数、血圧、体温、心拍数等である。取得部12が取得した患者の生体情報は、容態変化判別装置1の記憶部5に送信される。本明細書では、数値化可能な生体情報を、測定値と呼ぶことがある。尚、取得部12は、容態変化判別装置1に設けられていてもよい。
【0022】
また、ベッドサイドモニタ10は、入力操作部11を介して生体情報を取得することもできる。例えば、医療従事者は、患者の意識がないことを確認したとき、患者の意識がないことを示す情報を入力操作部11に入力する。入力操作部11は、入力された情報をモニタ制御部15に送信する。
【0023】
取得部12は、第一取得部12Aと第二取得部12Bを含む。第一取得部12Aは、患者の無呼吸数及び低呼吸数を取得するように構成されている。第二取得部12Bは、患者の無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報を取得するように構成されている。無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報としては、例えば、呼吸数、血圧、体温、心拍数等である。本明細書において、「取得部」という語句は、第一取得部と第二取得部を含む表現である。
【0024】
呼吸数の測定方法としては、例えば、目視で医療従事者が測定する方法又は心電図によるインピーダンス方式若しくは二酸化炭素濃度(EtCO2)による測定方法である。心電図によるインピーダンス方式又は二酸化炭素濃度(EtCO2)による測定方法によって呼吸数を測定した場合の測定時間は、医療従事者が目視で呼吸数を測定した場合の測定時間よりも短い。
【0025】
表示部13は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイであって、判別部6による判別結果が表示されるように構成されている。尚、表示部13は、容態変化判別装置1に設けられていてもよい。また、表示部13は、容態変化判別装置1及びベッドサイドモニタ10とは異なる別の表示装置に設けられていてもよい。表示装置としては、例えばディスプレイ装置や移動端末等である。
【0026】
モニタ制御部15は、制御部2と同様の構成で構成され得る。モニタ制御部15は、例えば、RAMとの協働でプログラムを実行することで、取得部12の処理を実現するよう制御する。
【0027】
通信インターフェース14は、容態変化判別装置1との通信を可能にするインターフェースである。ベッドサイドモニタ10は、通信インターフェース14を介して、容態変化判別装置1と適宜、通信することができる。
【0028】
図2は、判別方法の一つであるNEWSを基にした判別方法(NEWS(改))の基準値を示す図である。当該判別方法は、敗血症の判別に用いられるNEWSを基に設定された判別方法である。当該判別方法は、NEWSに用いられる評価項目(パラメータ)に加えて、無呼吸低呼吸指数が追加されている点で従来のNEWSとは異なる。つまり、当該判別方法で用いられる評価項目(パラメータ)は、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)、酸素補助、体温、収縮期血圧、心拍数、意識レベル、呼吸数、無呼吸低呼吸指数である。尚、無呼吸低呼吸指数とは、睡眠時における無呼吸数と低呼吸数の合計回数を一時間当たりの平均回数に換算することによって算出される値である。当該判別方法を用いて敗血症の判別を行う場合、例えば、第一取得部12Aにより取得された一時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数が5回未満のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは0である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が5回以上14回以下のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは1である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が15回以上29回以下のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは2である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が30回以上のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは3である。また、第二取得部12Bにより取得された一分間当たりの呼吸数が8回以下又は25回以上のとき、呼吸数に関するスコアは3である。当該呼吸数が21回以上24回以下の場合、呼吸数に関するスコアは2である。当該呼吸数が9回以上11回以下の場合、呼吸数に関するスコアは1である。当該呼吸数が12回以上20回以下の場合、呼吸数に関するスコアは0である。残りのパラメータについても、医療ガイドライン等で定められた基準値等に基づいてスコアが算出される。算出されたスコアは合算される。本明細書では、この合計スコアを総合スコアAと呼ぶ。
【0029】
図3は、判別方法の一つであるSOFAを基にした判別方法(SOFA(改))の基準値を示す図である。SOFAは、敗血症の判別方法である。SOFAは、特に臓器障害があるか否かを判別する際に用いられる。当該判別方法は、SOFAに用いられる評価項目(パラメータ)に加えて、無呼吸低呼吸指数が追加されている点で従来のSOFAとは異なる。つまり、当該判別方法で用いられる評価項目(パラメータ)は、意識、循環、血漿ビリルビン値、血漿クレアチニン値、凝固血小板数、呼吸、無呼吸低呼吸指数である。当該判別方法を用いて敗血症の判別を行う場合、例えば、第一取得部12Aにより取得された一時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数が5回未満のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは0である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が5回以上12回以下のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは1である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が13回以上20回以下のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは2である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が21回以上29回以下のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは3である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が30回以上のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは4である。また、第二取得部12Bにより取得された凝固血小板数が20未満のとき、凝固血小板数に関するスコアは4である。当該凝固血小板数が20以上50未満の場合、凝固血小板数に関するスコアは3である。当該凝固血小板数が50以上100未満の場合、凝固血小板数に関するスコアは2である。当該凝固血小板数が100以上150未満の場合、凝固血小板数に関するスコアは1である。当該凝固血小板数が150以上の場合、凝固血小板数に関するスコアは0である。残りの項目についても、医療ガイドライン等で定められた基準値等に基づいてスコアが算出される。算出されたスコアは合算される。本明細書では、この合計スコアを総合スコアBと呼ぶ。
【0030】
図4は、判別方法の一つであるqSOFAを基にした判別方法(qSOFA(改))の基準値を示す図である。qSOFAは、敗血症の判別方法である。qSOFAは、特に感染症に罹患しているか否かを判別する際に用いられる。当該判別方法は、qSOFAに用いられる評価項目(パラメータ)に加えて、無呼吸低呼吸指数が追加されている点で従来のqSOFAとは異なる。つまり、当該判別方法で用いられる評価項目(パラメータ)は、収縮期血圧、意識、呼吸数、無呼吸低呼吸指数である。例えば、第一取得部12Aにより取得された一時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数が5回未満のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは0である。当該無呼吸と低呼吸の合計回数が5回以上のとき、無呼吸低呼吸指数に関するスコアは1である。また、第二取得部12Bにより取得された一分間当たりの呼吸数が22回以上のとき、呼吸数に関するスコアは1である。これに該当しない場合のスコアは0である。また、第二取得部12Bにより取得された収取期血圧が100mmHg以下のとき、収縮期血圧に関するスコアは1である。これに該当しない場合のスコアは0である。さらに、患者の意識がない場合、意識に関するスコアは1である。一方、患者の意識がある場合、意識に関するスコアは0である。算出されたスコアは合算される。本明細書では、この合計スコアを総合スコアCと呼ぶ。
【0031】
尚、本明細書中では、総合スコアA、総合スコアB、総合スコアCのように、取得部12により取得された生体情報と記憶部5に記憶された各判別方法に基づいて、判別部6が算出する値やパーセント等を、総合スコアと呼ぶ。
【0032】
このように、例えば、敗血症に関する判別方法であっても、判別方法ごとに、基準値や総合スコアの値の医学的意味が異なっている。
【0033】
図5は、各判別方法における規格化テーブルPを示す図である。規格化テーブルPは、判別方法ごとに、患者の容態レベルを四つの色グループに分類して表示させるためのテーブルである。本実施形態における四つの色グループは、白色グループ、緑色グループ、オレンジ色グループ、赤色グループである。白色グループは、患者が正常状態であるという容態レベルに対応している。赤色グループは、患者が異常状態であり、危険な状態であるという容態レベルに対応している。オレンジ色グループは、赤色グループの患者ほどではないものの、患者が正常状態ではないという容態レベルに対応している。緑色グループは、オレンジ色グループの患者ほどではないものの、患者が正常状態ではないという容態レベルに対応している。つまり、白色グループ以外の患者の容態レベルは、緑色グループ、オレンジ色グループ、赤色グループの順で悪い。尚、ここで示した色グループの分類は一例に過ぎない。色グループの分類は、この例に限られないことは勿論である。
【0034】
例えば、早期警戒スコア(NEWS(改))については、総合スコアAが0のとき、色グループは白色グループに分類される。総合スコアAが1以上4以下のとき、色グループは緑色グループに分類される。総合スコアAが5以上6以下、又はNEWSにおける評価項目の少なくとも一つがスコア3であるとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。総合スコアAが7以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0035】
臓器障害スコア(SOFA(改))については、総合スコアBが0のとき、色グループは白色グループに分類される。総合スコアBが1のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。総合スコアBが2以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0036】
感染症疑いスコア(qSOFA(改))については、総合スコアCが0のとき、色グループは白色グループに分類される。総合スコアCが1のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。総合スコアCが2以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0037】
図6は、各判別方法を構成するパラメータを規格化するための規格化テーブルQを示す図である。
図6に示すように、例えば、一分間当たりの呼吸数が12回以上20回以下のとき、色グループは白色グループに分類される。当該呼吸数が9回以上11回以下のとき、色グループは緑色グループに分類される。当該呼吸数が21回以上24回以下のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。当該呼吸数が8回以下又は25回以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。また、無呼吸低呼吸指数については、無呼吸低呼吸指数が5未満のとき、色グループは白色グループに分類される。無呼吸低呼吸指数が5以上14以下のとき、色グループは緑色グループに分類される。無呼吸低呼吸指数が15以上29以下のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。無呼吸低呼吸指数が30以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0038】
図6に示すように、酸素補助については、酸素補助が必要な場合、色グループはオレンジ色グループに分類され、必要がない場合には、白色グループに分類される。また、尿量については、一日あたりの尿量が500mL以上のとき、色グループは白色グループに分類される。一日あたりの尿量が200mL以上500mL未満のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。一日あたりの尿量が200mL未満のとき、色グループは赤色グループに分類される。尚、その他のパラメータについては、四つの段階に分類され、各段階に一つずつ色グループが紐付いている。
【0039】
図1に戻って容態変化判別装置1の判別部6について説明する。判別部6は推定部60と算出部61とを含む。推定部60は、医療従事者等によって設定された時間間隔(第一時間間隔)でベッドサイドモニタ10の取得部12によって取得された生体情報を基に、各判別方法における標準的な時間間隔(第二時間間隔)あたりの推定値を算出する。第二時間間隔は、第一時間間隔よりも長い。第一時間間隔は一分以上であるのが好ましい。尚、本明細書では、時間間隔が一分のときの第一時間間隔を最低時間間隔と呼ぶ。算出部61は、第一時間間隔でベッドサイドモニタ10の取得部12によって取得された生体情報又は推定部60によって推定された推定値に基づき、各パラメータのスコアを算出することができる。また、算出部61は、各パラメータのスコアから総合スコアを算出する。判別部6は、算出部61が算出した総合スコアと、記憶部5に記憶された判別方法とに基づいて、患者の容態変化を判別するように構成されている。例えば、ある患者が敗血病であるか否かを判別するために、NEWSを基にした判別方法とSOFAを基にした判別方法が用いられる場合、判別部6は、算出部61が算出した総合スコアAと総合スコアBを、記憶部5に記憶された規格化テーブルPに基づき、上述した四つの色グループのいずれに該当するのかを判別し、分類する。
【0040】
図7は、本発明の一実施形態に係る容態変化判別方法に関するフローチャートを示す図である。医療従事者等は、入力操作部11を介して、第一取得部12Aが患者の無呼吸数及び低呼吸数を取得する時間間隔(第一時間間隔)を設定する(ステップS1)。ところで、例えば、無呼吸数及び低呼吸数等の生体情報を用いて患者の睡眠時無呼吸症候群を判別する場合、無呼吸数及び低呼吸数の生体情報は、少なくとも1時間程度かけて取得される。そして、患者の睡眠時無呼吸症候群は、当該取得された生体情報に基づいて判別される。このため、患者の睡眠時無呼吸症候群を判別するには、少なくとも1時間程度かかることがある。つまり、無呼吸数及び低呼吸数の生体情報を、睡眠時無呼吸症候群の判別方法以外の患者の容態変化の判別方法にも利用しようとすると、患者の容態変化を判別するのに少なくとも1時間程度の時間を要する。しかし、例えば、qSOFAを用いて、患者が敗血症か否かの判別を行う場合、患者の意識、収縮期血圧、及び呼吸数のパラメータを用いて患者が敗血症か否か判別する。敗血症は早期に治療が開始できると治癒しやすいので、qSOFAで用いられているパラメータの測定時間は、数分程度である。このように、qSOFA等の患者が敗血症か否かを判別する方法に用いられるパラメータの測定時間と、患者が睡眠時無呼吸症候群か否かを判別する方法に用いられるパラメータ(無呼吸数及び低呼吸数)の測定時間には大きな差がある。しかし、本実施形態によれば、通常の無呼吸数及び低呼吸数の測定時間よりも短い測定時間(第一時間間隔)で測定された無呼吸数及び低呼吸数から無呼吸数及び低呼吸数の推定値を算出することができるので、無呼吸数及び低呼吸数と他の生体情報を用いて患者の容態変化を判別することができる。第一時間間隔は、例えば、1~60分の範囲で設定される。ただし、第一時間間隔の範囲は、この範囲に限られないのは勿論である。尚、本実施形態においては、第一時間間隔は15分間隔であり、第二時間間隔は60分間隔であるという仮定の下で説明する。第一時間間隔が15分間隔のとき、第一取得部12Aは、15分間隔で、患者の無呼吸数及び低呼吸数を取得する。また、第二取得部12Bは、常時又は所定の時間間隔で、患者の無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報を取得する(ステップS2)。
【0041】
これらの生体情報が取得されると、制御部2は、無呼吸数及び低呼吸数が第二時間間隔(60分)以上の間隔で測定されたかどうかを判断する(ステップS3)。ステップS3においてYESの場合、算出部61は、第一時間間隔で、第一取得部12Aによって取得された無呼吸数及び低呼吸数から無呼吸低呼吸指数を算出する(ステップS4)。一方、ステップS3においてNOの場合、推定部60は、第一時間間隔で第一取得部12Aによって取得された無呼吸数及び低呼吸数から、無呼吸低呼吸指数の推定値を算出する(ステップS5)。本実施形態において、第一時間間隔は15分間隔である。そのため、ステップS5が実行される。
【0042】
例えば、当該第一時間間隔において無呼吸数が0回のとき、無呼吸指数の推定値は0である。低呼吸数が1回の場合、低呼吸数指数の推定値は4である。無呼吸低呼吸指数は、無呼吸指数と低呼吸指数との合計値である。このため、無呼吸低呼吸指数は4である。また、当該第一時間間隔において、無呼吸数が1回、低呼吸数が1回の場合、無呼吸指数の推定値は4であり、低呼吸指数の推定値は4である。このため、無呼吸低呼吸指数は8である。このようにして、本実施形態では、第一時間間隔で測定された無呼吸数及び低呼吸数を用いて、第二時間間隔あたりの無呼吸低呼吸指数の推定値が算出される。尚、本実施形態では、無呼吸数及び低呼吸数から無呼吸低呼吸指数又は無呼吸低呼吸指数の推定値を算出する例を用いて説明しているが、この例に限られない。例えば、無呼吸低呼吸指数の代わりに、無呼吸数から算出される無呼吸指数又は無呼吸指数の推定値を用いてもよい。また、例えば、無呼吸低呼吸指数の代わりに、低呼吸数から算出される低呼吸指数又は低呼吸指数の推定値を用いてもよい。
【0043】
無呼吸低呼吸指数又はその推定値が算出されると、判別部6の算出部61は、各パラメータのスコア及び総合スコアを算出する(ステップS6)。尚、判別部6の算出部61は、無呼吸低呼吸指数の代わりに、無呼吸指数若しくは無呼吸指数の推定値、又は低呼吸指数若しくは低呼吸指数の推定値に基づいて、各パラメータのスコア及び総合スコアを算出してもよい。判別部6は、各パラメータのスコア及び規格化テーブルQに基づき、又は総合スコア及び規格化テーブルPに基づき、患者の容態変化を判別する(ステップS7)。尚、算出された各パラメータのスコア、総合スコア及び判別結果は、記憶部5に記憶される。
【0044】
判別部6による判別結果が記憶部5に記憶されると、表示制御部8は、ベッドサイドモニタ10の表示部13上に、判別部6による判別結果を、規格化テーブルP又は規格化テーブルQに基づき規格化された表示態様で表示するための画像データを生成する。当該画像データはベッドサイドモニタ10に送信される。その結果、表示部13には、当該画像データに基づく画像が表示される。つまり、判別結果が規格化された表示態様で表示部13に表示される(ステップS8)。このようにして、表示制御部8は、表示部13に対し、判別部6による判別結果を、規格化された表示態様で表示するように制御する。
【0045】
図8は、第一時間間隔の設定に関するフローチャートを示す図である。本実施形態においては、第一時間間隔は15分間隔であり、第二時間間隔は60分間隔であるという仮定の下で説明する。ステップS11~S12は、
図7に示すステップS1~S2と同様なので説明を割愛する。ステップS13において、制御部2は、15分間隔(第一時間間隔)で、取得部12が取得した生体情報に患者の異常を示す異常生体情報が含まれているかどうか判断する。ステップS13においてYESの場合、制御部2は、第一時間間隔が最低時間間隔を超えているかどうか判断する(ステップS14)。尚、本実施形態においては、最低時間間隔は5分間隔であるとする。ステップS14においてYESの場合、制御部2は、第一時間間隔を短くなるように設定する(ステップS15)。一方、ステップS14においてNOの場合、ステップS12に戻る。本実施形態において、第一時間間隔は15分間隔であるため、最低時間間隔(5分間隔)を超えている。このため、制御部2は、第一時間間隔が短くなるように制御する。
【0046】
例えば、第一時間間隔は、色グループに基づいて設定され得る。例えば、白色グループの場合、第一時間間隔は20分である。緑色グループの場合、第一時間間隔は15分である。オレンジ色グループの場合、第一時間間隔は10分である。赤色グループの場合、第一時間間隔は5分である。例えば、無呼吸低呼吸指数が白色グループに分類されており、第一時間間隔が20分に設定されている場合において、第一時間間隔(20分)で測定された無呼吸数が1回、低呼吸数が2回であるとする。この場合、第二時間間隔(60分)あたりの無呼吸低呼吸指数の推定値は9である。無呼吸低呼吸指数が9のとき、色グループは緑色グループに分類される(
図6参照)。そのため、第一時間間隔は15分に設定される。
【0047】
ステップS13においてNOの場合、制御部2は、患者の異常を示す異常生体情報を取得していない時間が所定時間経過したかどうか判断する(ステップS16)。ステップS16においてYESの場合、ステップS17に進む。一方、ステップS16においてNOの場合、ステップS12に戻る。ステップS17において、制御部2は、第一時間間隔が第二時間間隔未満であるかどうか判断する。ステップS17においてYESの場合、制御部2は、第一時間間隔が長くなるように設定する(ステップS18)。尚、第一時間間隔のうち、最も長い時間間隔は、第二時間間隔と同じ時間間隔である。このため、ステップS17においてYESの場合、第一時間間隔は、第二時間間隔に近づくように設定される。一方、ステップS17においてNOの場合、ステップS12に戻る。本実施形態では、第一時間間隔は15分間隔であるため、第一時間間隔は第二時間間隔(60分間隔)未満である。このため、本実施形態においては、患者の異常を示す異常生体情報を取得していない時間が所定時間経過した場合、制御部2は、第一時間間隔が長くなるように制御する。
【0048】
例えば、無呼吸低呼吸指数が緑色グループに分類されており、第一時間間隔が15分に設定されている場合において、第一時間間隔(15分)で測定された無呼吸数が0回、低呼吸数が1回であるとする。この場合、第二時間間隔(60分)あたりの無呼吸低呼吸指数の推定値は4である。無呼吸低呼吸指数が4のとき、色グループは白色グループに分類される(
図6参照)。そのため、第一時間間隔は20分に設定される。
【0049】
図9は、患者の容態変化を表示する画面に関する図である。
図9に示すように、ベッドサイドモニタ10の表示部13には、患者の容態変化が、規格化、すなわち色付けされた表示態様で表示される。尚、
図9に示された実施態様では、色の代わりにハッチングが付されている。白色グループに対応するハッチングは、無地である。緑色グループに対応するハッチングは、左上から右下に傾斜する斜線である。オレンジ色グループに対応するハッチングは、横線である。赤色グループに対応するハッチングは、縦線である。
図9に示す画面は、四つの区画に区切られている。各区画には、各患者に関する情報が表示される。
図9に示す画面例では、四名の患者の容態変化が一覧的に確認できる。
【0050】
各区画の上部中央には、患者名が表示されている。患者名の左側には、患者に対応した識別番号が表示されている。識別番号の左側には、患者に対応した部屋番号が表示されている。尚、本明細書では、患者名、識別番号、部屋番号を含む情報を患者特定情報と呼ぶことがある。部屋番号には、最新の時点(2017年7月10日10:00)における総合スコア又は数値に基づいて分類される色グループに対応する色が付される。部屋番号の下方には、医療従事者によって任意に選択された各判別方法名又はパラメータ名が表示されている。各判別方法名又はパラメータ名の右側には、各判別方法又はパラメータに対応する判別結果が表示されている。当該判別結果は時系列で表示されている。当該判別結果は、縦棒グラフ又は横棒グラフで表示されている。当該判別結果は、判別方法又はパラメータに対応する総合スコア又は測定値に基づき、規格化、すなわち色付けされる。このため、判別結果は視覚的に区別される。
【0051】
光電太郎に着目して、
図9に示す画面について詳細に説明する。光電太郎に関する情報は、左上の区画に表示されている。当該区画には、NEWSを基にした判別方法(NEWS(改))に関する情報、SOFAを基にした判別方法(SOFA(改))に関する情報、ラクテートに関する情報が、横棒グラフで表示されている。NEWSを基にした判別方法に関する横棒グラフに着目する。例えば、2017年7月10日4:00から同日5:40までの光電太郎のNEWSを基にした判別方法の総合スコアが0のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎の当該判別方法の総合スコアを、白色グループに分類する。したがって、当該時間帯における横棒グラフには白色が付される。同日5:40から7:20までの光電太郎の当該判別方法の総合スコアが1~4のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎の当該判別方法の総合スコアを、緑色グループに分類する。したがって、当該時間帯における横棒グラフには緑色が付される。同日7:20以降の光電太郎の当該判別方法の総合スコアが5~6のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎の当該判別方法の総合スコアを、オレンジ色グループに分類する。したがって、当該時間帯における横棒グラフにはオレンジ色が付される。
【0052】
SOFAを基にした判別方法に関する横棒グラフに着目する。例えば、2017年7月10日4:00から同日6:40までの光電太郎の当該判別方法の総合スコアが0のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎の当該判別方法の総合スコアを、白色グループに分類する。同日6:40以降の光電太郎の当該判別方法の総合スコアが1のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎の当該判別方法の総合スコアを、オレンジ色グループに分類する。
【0053】
ラクテートに関する横棒グラフに着目する。例えば、2017年7月10日4:00から同日4:40までの光電太郎のラクテートの数値が1mmol/l未満のとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎のラクテートの数値を、白色グループに分類する。同日4:40から7:00までの光電太郎のラクテートの数値が1mmol/lのとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎のラクテートの数値を、緑色グループに分類する。同日7:00以降の光電太郎のラクテートの数値が2mmol/l~4mmol/lのとき、判別部6は、当該時間帯での光電太郎のラクテートの数値を、オレンジ色グループに分類する。
【0054】
次に、光電三郎に着目して、
図9に示す画面について詳細に説明する。光電三郎に関する情報は、左下の区画に表示されている。当該区画には、NEWSを基にした判別方法(NEWS(改))に関する情報が、縦棒グラフと横棒グラフで表示されている。横棒グラフは縦棒グラフの上に位置する。縦棒グラフに示すように、2017年7月10日4:00から同日5:20までの光電三郎の当該判別方法の総合スコアは1~4で推移している。このため、判別部6は、当該時間帯での光電三郎の当該判別方法の総合スコアを、緑色グループに分類する。したがって、当該時間帯における縦棒グラフと横棒グラフには、緑色が付される。同日5:20から8:40までの光電三郎の当該判別方法の総合スコアは5~6で推移している。このため、判別部6は、当該時間帯での光電三郎の当該判別方法の総合スコアを、オレンジ色グループに分類する。したがって、当該時間帯における縦棒グラフと横棒グラフには、オレンジ色が付される。同日8:40から9:00までの光電三郎の当該判別方法の総合スコアは7である。このため、判別部6は、当該時間帯での光電三郎の当該判別方法の総合スコアを、赤色グループに分類する。したがって、当該時間帯における縦棒グラフと横棒グラフには、赤色が付される。同日9:00から9:20までの光電三郎の当該判別方法の総合スコアは6である。このため、判別部6は、当該時間帯での光電三郎の当該判別方法の総合スコアを、オレンジ色グループに分類する。同日9:20以降の光電三郎の当該判別方法の総合スコアは7である。このため、判別部6は、当該時間帯での光電三郎の当該判別方法の総合スコアを、赤色グループに分類する。
【0055】
また、表示制御部8は、ベッドサイドモニタ10の表示部13に対し、最新の時点(2017年7月10日10:00)における総合スコア又は測定値に係る色グループのうち、最も患者の容態レベルが悪いことを示す色グループに対応する色が付された部屋番号を表示するよう制御する。光電久美子を例にとって説明すると、最新の時点における、光電久美子の総合スコア又は測定値が属する色グループは、緑色グループと赤色グループである。赤色グループの方が緑色グループよりも患者の容態レベルが悪いので、光電久美子の部屋番号は、赤色グループに対応する色、すなわち赤色が付された状態で表示部13に表示される。
【0056】
光電太郎の区画には、各判別方法と、パラメータ(ラクテート)に関する情報が表示されているが、光電四郎の区画における表示態様のように、判別方法のみが表示されてもよい。
【0057】
図9に示す画面には、四人の患者に関する情報が一つの画面に表示されているが、この例に限られない。例えば、一人の患者に関する情報のみ、一つの画面に表示されてもよい。
【0058】
図9に示す画面は、横2列、縦2行に区分されているがこの例に限られない。例えば、横1列、縦4行に区分されてもよい。また、表示部13の表示態様は、表示制御部8によって、表示部分の大きさ等に基づき、適宜変更されるように構成されてもよい。
【0059】
ところで、患者の容態を判別する方法のいくつかは、呼吸数を評価項目に含んでいる。呼吸数の測定方法としては、例えば目視で医療従事者が測定する方法又は心電図によるインピーダンス方式若しくは二酸化炭素濃度(EtCo2)による測定方法がある。医療従事者が目視で患者の呼吸数を測定する場合、医療従事者は、呼吸数を測定している間、患者の側にいなければならない。このため、医療従事者の業務効率が低下してしまう虞がある。一方、インピーダンス方式又は二酸化炭素濃度(EtCo2)による測定方法を採用した場合、これらの方法は体動等のノイズに弱いため、精度よく呼吸数を測定することが難しい。
【0060】
また、呼吸の状態(質)を示す指標として、無呼吸低呼吸指数がある。上述したように、無呼吸低呼吸指数とは、睡眠時における無呼吸数と低呼吸数の合計回数を一時間当たりの平均回数に換算することによって算出される値である。無呼吸低呼吸指数は、主に、睡眠時無呼吸症候群の重症度を判定する際に用いられるパラメータである。このため、特に、呼吸数がパラメータとして用いられている判別方法のパラメータに無呼吸低呼吸指数を追加すれば、患者の容態変化を判別する際に、患者の呼吸の質も考慮して患者の容態変化を判別することができるので、患者の容態変化を精度よく判別することができる。
【0061】
上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、無呼吸数と低呼吸数の少なくとも一つに基づいて、患者の容態変化を判別する。このため、呼吸の質を考慮して患者の容態変化を判別することができる。その結果、患者の容態変化を精度よく判別することができる。
【0062】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、無呼吸数や低呼吸数のみならず、呼吸数にも基づいて患者の容態変化を判別することができる。このため、より精度よく患者の容態変化を判別することができる。
【0063】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、無呼吸数と低呼吸数の少なくとも一つは、第一時間間隔で測定される。無呼吸数と低呼吸数の少なくとも一つが測定されると、第一時間間隔より長い時間間隔である第二時間間隔あたりの無呼吸数と低呼吸数の少なくとも一つの推定値が算出される。このため、例えば、当該時間間隔を短くした場合、患者の容態を迅速に判別することができる。
【0064】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、第一時間間隔は、無呼吸数、低呼吸数、並びに前記無呼吸数及び低呼吸数以外の生体情報の少なくとも一つに基づいて設定される。このため、例えば、異常な生体情報が取得された場合、第一時間間隔が自動的に短く設定され、患者の容態が迅速に判別される。その結果、医療従事者は患者の容態変化をすばやく把握し、迅速な対応をとることができる。
【0065】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、患者の異常を示す生体情報が取得されると、第一時間間隔は、患者の異常を示す生体情報が取得された以前に設定された時間間隔よりも短く設定される。このため、異常な生体情報が取得された場合、第一時間間隔が自動的に短く設定され、患者の容態が迅速に判別される。その結果、医療従事者は患者の容態変化をすばやく把握し、迅速な対応をとることができる。
【0066】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、患者の異常を示す異常生体情報が所定の時間取得されない場合、第一時間間隔は、第一時間間隔よりも時間間隔が長い第二時間間隔に近づくように設定される。その結果、適切な時間間隔で患者の容態変化が判別される。
【0067】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、心電図を用いたインピーダンス方式による測定または二酸化炭素濃度(EtCo2)の測定により取得された呼吸数と無呼吸数や低呼吸数とに基づいて患者の容態が判別される。このため、呼吸数の測定時間を短くしつつ、精度よく患者の容態を判別することができる。
【0068】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、患者の容態変化に関する判別結果が、所定の規格化条件で規格化された表示態様で表示される。このため、医療従事者は、規格された表示態様で表示部に表示された判別結果を確認することで、判別結果を一定の基準で評価することができる。
このように、上記構成によれば、医療従事者は一定の基準で判別結果を確認できるので、医療従事者にかかる負荷を軽減することができる。
【0069】
また、上記構成に係るプログラム、容態変化判別方法、容態変化判別装置1によれば、患者の容態変化に関する複数の判別結果は、所定の規格化条件で規格化された表示態様で表示される。このため、医療従事者は、規格された表示態様で表示部に表示された各判別結果を確認することできるので、判別結果を一律に評価することができる。
このように、上記構成によれば、医療従事者が複数の判別方法を用いて患者の容態変化を総合的に判断したい場合に医療従事者にかかる負荷を軽減することができる。
【0070】
(第二実施形態)
図10に示すように、第二実施形態に係る容態変化判別装置1Aは、入力操作部3と、取得部4と、表示部17と、を備える点で第一実施形態に係る容態変化判別装置1と異なる。取得部4は、取得部12と同様に、第一取得部4Aと第二取得部4Bとを含む。第二実施形態においては、容態変化判別装置1Aが、第一実施形態に係る容態変化判別装置1とベッドサイドモニタ10と同様の処理を実行することで、表示部17上に
図9に示す画面が表示される。
【0071】
上述した実施形態では、スコアや総合スコアを、数字によって表現されるものを用いて説明したがこの例に限られない。例えば、A評価等、数字によって表現されないものを用いてスコアや総合スコアを表現してもよい。
【0072】
上述した実施形態では、視覚的に区別するための方法としては、色を付す方法を用いて説明したが、この例に限られない。例えば、任意のハッチングを付すことによって、視覚的に区別する方法を用いてもよい。
【0073】
上述した第一実施形態では、制御部2の表示制御部8が表示部13を制御する例を用いて説明したがこの例に限られない。例えば、モニタ制御部15が、制御部2から取得した情報に基づいて、表示部13に表示させるための画像データを生成してもよい。また、モニタ制御部15が、表示制御部8が生成した画像データを表示部13に表示させるように制御してもよい。さらに、モニタ制御部15は、取得部12により取得された生体情報に基づいて、波形データ等を表示部13に表示させてもよい。
【0074】
上述した実施形態に係る容態変化判別装置1、1Aは、他の生体情報測定機器や医療従事者用コンピュータ等とも通信可能であってもよい。
【0075】
上述した実施形態では、ステップS3と、ステップS4又はステップS5と、が実行される例を用いて説明したがこれに限られない。例えば、ステップS3及びステップS4は実行されず、ステップS5のみ実行されてもよい。つまり、ステップS2が実行されると、次にステップS5が実行されてもよい。この場合、無呼吸数及び低呼吸数が第二時間間隔以上の間隔で測定されたとしても、無呼吸低呼吸指数の推定値が推定部60によって算出される。その結果、無呼吸数及び低呼吸数が第二時間間隔以上の間隔で測定されたとしても、無呼吸低呼吸指数の推定値に基づいて、患者の容態が判別される。
【0076】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0077】
1:容態変化判別装置、1A:容態変化判別装置、2:制御部、3:入力操作部、4:取得部、4A:第一取得部、4B:第二取得部、5:記憶部、6:判別部、7:通信インターフェース、8:表示制御部、9:バス、10:ベッドサイドモニタ、11:入力操作部、12:取得部、12A:第一取得部、12B:第二取得部、13:表示部、14:通信インターフェース、15:モニタ制御部、16:バス、17:表示部、60:推定部、61:算出部