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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20230308BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20230308BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230308BHJP
   B25J 15/04 20060101ALI20230308BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20230308BHJP
   B23B 3/06 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B23Q3/155 A
B23Q3/157 W
B23Q11/00 N
B25J15/04 A
B23Q3/12 Z
B23B3/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019012469
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020116721
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森村 章一
(72)【発明者】
【氏名】田附 雄一
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6321309(JP,B1)
【文献】特開2018-020402(JP,A)
【文献】特開2007-075922(JP,A)
【文献】特開平04-283003(JP,A)
【文献】特開平07-001207(JP,A)
【文献】特開2016-215343(JP,A)
【文献】特開2013-141727(JP,A)
【文献】特開昭64-51246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155- 3/157
B23Q 3/12
B23Q 7/04
B23Q 11/00
B23B 3/00 - 3/36
B23B 19/00 - 23/04
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具でワークを加工する工作機械であって、
加工室内に設けられ、ツールを保持する第一保持装置と、
前記加工室内に設けられ、ツールを保持する第二保持装置と、
ールを1以上収容可能な収容部と、
前記第二保持装置と前記収容部との間で、ツールを付け替えるように構成される一方で、前記第一保持装置に直接アクセスできない交換機構と、
前記第一保持装置と前記第二保持装置との間でツールを付け替えるように構成されるロボットと、
前記第一保持装置、前記第二保持装置、前記交換機構、および、前記ロボットの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ロボット、前記第二保持装置、前記交換機構を経由して、前記第一保持装置と前記収容部との間でツールを付け替えさせ
前記第一保持装置は、刃物台またはワーク主軸または心押し台であり、
前記第二保持装置は、工具主軸または刃物台である、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械であって、
記交換機構は、交換アームまたはロボットアームの少なくとも一つを有したオートツールチェンジャである、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械であって、
前記第一保持装置は、ツールとして切削工具を保持する前記刃物台である、ことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記第一保持装置は、ツールとしてチャック爪を保持する前記ワーク主軸である、ことを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記第一保持装置は、ツールとして心押し台ツールを保持する前記心押し台である、ことを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記第二保持装置は、前記第一保持装置のツール装着部と同様の形状を有したツール連結部と、前記第二保持装置のツール装着部に装着可能な機械連結部と、を有したツールホルダを介して、前記第一保持装置で保持されるツールを保持する、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の工作機械であって、さらに、
前記第一保持装置で保持されているツール周辺を清掃する清掃機構を備え、
前記制御部は、前記第一保持装置と前記収容部との間でツールを付け替えるのに先立って、前記清掃機構によるツール周辺の清掃を実行させる、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記ロボットは、
本体部と、
前記本体部に交換可能に取り付けられた1以上のエンドエフェクタと、を有している、ことを特徴とする工作機械。
【請求項9】
請求項8に記載の工作機械であって、
前記ロボットに装着される前記エンドエフェクタは、対象物を把持するエンドエフェクタおよび前記第一保持装置で保持されているツール周辺を清掃するエンドエフェクタを含む群の中から選択される、ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、切削工具でワークを加工する工作機械を開示する。
【背景技術】
【0002】
切削工具でワークを加工する工作機械には、切削工具を保持する刃物台または工具主軸や、心押し台ツールを保持する心押し台等のように様々なツール(切削工具や心押し台ツール)を保持する保持装置が搭載されている。
【0003】
こうした保持装置では、実行する加工の種類や、ワークの種類等に応じて保持するツールを交換する。かかるツールの交換をオペレータに代わって、ロボットで行うことが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、工作機械の下刃物台に装着された工具を自動交換するために、ロボットアームと、ロボットアームを移動させる移動機構部と、を備えた自動工具交換装置が開示されている。この特許文献1において、移動機構部は、ロボットアームを工具ストッカと主軸との間で移動させるためのリニアガイドやサーボモータ等を有している。また、ロボットアームは、工具を着脱可能に把持する把持部を有する。
【0005】
また、特許文献2には、6軸関節ロボットと、ロボットの手首部に装着される工具交換ハンドと、を有した工具搬送装置が開示されている。この特許文献2において、ロボットは、工具交換ハンドを刃物台と工具貯蔵部との間で移動させ、刃物台に取り付けられる工具を自動的に交換する。また、特許文献2では、工具搬送装置を用いて、工具の他に、チャックも交換することが開示されている。
【0006】
こうしたロボットを用いたツール交換技術によれば、オペレータの負担を大幅に軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-55370号公報
【文献】特開平5-285766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、ロボットを用いてツールを交換する場合、当該ロボットの可動範囲内に、ツール保持装置(刃物台や心押し台等)とツールの収容部を配置しなければならず、これらのレイアウトが制限されやすかった。もちろん、ロボットの可動範囲を広げれば、ツール保持装置及び収容部のレイアウトの自由度を向上できる。しかしながら、ロボットの可動範囲を広げた場合、その分、ロボットと他部材との干渉を避ける等、別途考慮すべき事項が増える。
【0009】
そこで、本明細書では、ロボットの可動範囲を過度に広げることなく、様々なツール保持装置に対して自動的にツール交換できる工作機械を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示する工作機械は、切削工具でワークを加工する工作機械であって、加工室内に設けられ、ツールを保持する第一保持装置と、前記加工室内に設けられ、ツールを保持する第二保持装置と、ールを1以上収容可能な収容部と、前記第二保持装置と前記収容部との間で、ツールを付け替えるように構成される一方で、前記第一保持装置に直接アクセスできない交換機構と、前記第一保持装置と前記第二保持装置との間でツールを付け替えるように構成されるロボットと、前記第一保持装置、前記第二保持装置、前記交換機構、および、前記ロボットの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ロボット、前記第二保持装置、前記交換機構を経由して、前記第一保持装置と前記収容部との間でツールを付け替えさせ、前記第一保持装置は、刃物台またはワーク主軸または心押し台であり、前記第二保持装置は、工具主軸または刃物台である、ことを特徴とする。
【0011】
この場合、前記交換機構は、交換アームまたはロボットアームの少なくとも一つを有したオートツールチェンジャであってもよい。
【0012】
また、前記第一保持装置は、ツールとして切削工具を保持する前記刃物台であってもよい。また、前記第一保持装置は、ツールとしてチャック爪を保持する前記ワーク主軸であってもよい。また、前記第一保持装置は、ツールとして心押し台ツールを保持する前記心押し台であってもよい。
【0013】
また、前記第二保持装置は、前記第一保持装置のツール装着部と同様の形状を有したツール連結部と、前記第二保持装置のツール装着部に装着可能な機械連結部と、を有したツールホルダを介して、前記第一保持装置で保持されるツールを保持してもよい。
【0014】
さらに、前記第一保持装置で保持されているツール周辺を清掃する清掃機構を備え、前記制御部は、前記第一保持装置と前記収容部との間でツールを付け替えるのに先立って、前記清掃機構によるツール周辺の清掃を実行させてもよい。
【0015】
また、前記ロボットは、本体部と、前記本体部に交換可能に取り付けられた1以上のエンドエフェクタと、を有していてもよい。この場合、前記ロボットに装着される前記エンドエフェクタは、対象物を把持するエンドエフェクタおよび前記第一保持装置で保持されているツール周辺を清掃するエンドエフェクタを含む群の中から選択されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で開示する工作機械によれば、ロボットの可動範囲を過度に広げることなく、第一保持装置についても、自動的にツール交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】工作機械の斜視図である。
図2】工作機械の斜視図である。
図3】工作機械の斜視図である。
図4】ツールホルダの一例を示す図である。
図5】交換機構の一例を示す図である。
図6】ツールホルダの他の一例を示す図である。
図7】工作機械の斜視図である。
図8】工作機械の斜視図である。
図9】工作機械の斜視図である。
図10】主軸端近傍の斜視図である。
図11】ツールホルダの他の一例を示す図である。
図12】他の工作機械の斜視図である。
図13】他の工作機械の斜視図である。
図14】他の工作機械の斜視図である。
図15】他の工作機械の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、工作機械10の構成について図面を参照して説明する。図1から図3は、工作機械10の斜視図であり、ツール32の一種である切削工具32aの交換の様子を示している。また、図4図6は、ツールホルダ42の一例を示す図であり、図5は、交換機構28の一例を示す図である。
【0019】
この工作機械10は、切削工具32aでワーク(図示せず)を切削加工する切削加工機である。より具体的には、本例の工作機械10は、主に転削加工に用いられる工具主軸18と、主に旋削加工に用いられる下刃物台20と、を備えた複合加工機である。ただし、ここで例示する工作機械10は、一例であり、本明細書で開示する技術は、他の種類の工作機械10に適用されてもよい。
【0020】
工作機械10の加工室12の周囲は、カバーで覆われている。加工室12の前面には、大きな開口が形成されており、この開口は、前面ドア14により開閉される。オペレータは、この開口を介して、加工室12内の各部にアクセスする。加工中、開口に設けられた前面ドア14は、閉鎖される。これは、安全性や環境性などを担保するためである。
【0021】
工作機械10には、ワークの一端を自転可能に保持するワーク主軸16が設けられている。ワーク主軸16は、図示しないモーターにより回転可能となっており、ワーク主軸16の端面、すなわち、主軸端34には、ワークを着脱自在に保持するために、複数のチャック爪32bが設けられている。複数のチャック爪32bは、周方向に間隔をあけて均等に配置されており、径方向に進退可能となっている。
【0022】
また、上述した通り、工作機械10には、下刃物台20及び工具主軸18も設けられている。下刃物台20は、ツール32の一種である切削工具32aを保持する一方で、後述する交換機構28(図1図3では図示せず)に直接、アクセスできない第一保持装置として機能する。この刃物台は、Z軸、すなわち、ワークの軸と平行な方向に移動可能となっている。また、刃物台は、X軸と平行な方向を、すなわち、ワークの径方向にも進退できるようになっている。なお、本例において、X軸は、加工室12の開口からみて、奥側に進むにつれ上方に進むように、水平方向に対して傾いている。
【0023】
下刃物台20のZ方向端面には、複数の切削工具32aを保持可能なタレット22が設けられている。タレット22は、Z軸方向視で多角形となっており、Z軸に平行な軸を中心として回転可能となっている。このタレット22の周面には、切削工具32aが装着されるツール装着部が複数設けられている。そして、タレット22回転させることで、加工に使用する切削工具32aを変更できるようになっている。
【0024】
なお、この下刃物台20(タレット22を含む)で保持される切削工具32aは、旋削加工に用いられる旋削工具でもよいし、転削加工に用いられる転削工具でもよい。いずれにしても、下刃物台20で保持される切削工具32aは、機内ロボット24、工具主軸18、および、交換機構28を介して付け替えられる。
【0025】
工具主軸18は、ツールの一種である切削工具32aを自転可能に保持するもので、交換機構28が直接アクセス可能な第二保持装置として機能する。この工具主軸18は、三軸方向に移動可能となっており、少なくとも、後述する機内ロボット24、交換機構28、及びワーク主軸16に保持されたワークにアクセス可能な可動範囲を有している。また、工具主軸の端面には、切削工具32aが装着されるツール装着部が設けられている。
【0026】
この工具主軸18で保持される切削工具32aも、旋削加工に用いられる旋削工具でもよいし、転削加工に用いられる転削工具でもよい。いずれにしても、工具主軸18で保持される切削工具32aは、機内ロボット24を介することなく、交換機構28により交換される。
【0027】
ここで、下刃物台20および工具主軸18は、いずれも、切削工具32aを、直接保持してもよいし、ツールホルダ42を介して保持してもよい。ただし、以下では、説明を簡単にするために、下刃物台20のツール装着部と工具主軸18のツール装着部は、互いに同じ形状を有しており、下刃物台20および工具主軸18は、いずれも、図4に示すツールホルダ42を介して切削工具32aを保持するものとする。
【0028】
このツールホルダ42は、下刃物台20または工具主軸18である機械側と連結される機械連結部42mと、切削工具32a(ツール32)が連結されるツール連結部42tと、後述する交換機構28の交換アーム50が係合される係合部42eと、を備えている。機械連結部42mは、工具主軸18および下刃物台20のツール装着部に対応した形状をしている。この機械連結部42mは、一般的な規格に沿った形状、例えば、テーパーシャンク形状等を有していることが望ましい。ツール連結部42tは、切削工具32aが連結される部分であり、使用したい切削工具32aの形状に応じて適宜変更可能である。係合部42eは、交換アーム50が係合可能であれば、その形状は、特に限定されないが、例えば、係合部42eは、図4に示すような周方向に延びる溝でもよい。また、係合部42eは、溝に加えて、または、替えて、穴、突起、切欠等を含んでもよい。
【0029】
工作機械10には、さらに、機内ロボット24、収容部26、および交換機構28(図5参照)が設けられている。機内ロボット24は、加工室12内に設置されたロボットである。本例において、機内ロボット24は、複数のロボットアーム38が関節を介して一列に繋がったシリアル型の多関節アームロボットである。複数のロボットアーム38で構成される機内ロボット24の本体部には、エンドエフェクタ40が交換可能に取り付けられている。エンドエフェクタ40は、ロボットに取り付けられ、特定の機能を有するものである。かかるエンドエフェクタ40としては、例えば、ツール32を把持する把持部材(グリッパ、ハンド機構等)や、温度や振動などの物理量を検知するセンサ、加工中のワークを支えるローラ、対象物を清掃する清掃機構等が含まれる。さらに、清掃機構としては、切削油やエア等の流体を噴出する流体噴出ノズル、異物を除去するためのブラシやスクレーパー、異物を吸引する吸引ノズル等が含まれる。機内ロボット24に取り付けられるエンドエフェクタ40は、少なくとも、把持部材および清掃機構を含む群の中から、工作機械10における各種処理の進行状況に応じて適宜、選択される。
【0030】
機内ロボット24は、Z軸方向に移動可能であるとともに、各ロボットアーム38の角度が自由に変更できる。そして、機内ロボット24が、Z軸方向に移動したり、ロボットアーム38の角度が変わったりすることで、エンドエフェクタ40の位置が変更される。本例において、機内ロボット24は、そのエンドエフェクタ40が、工具主軸18(第二保持装置)および下刃物台20(第一保持装置)にアクセスできる可動範囲を有している。なお、交換機構28には、アクセスできない程度の可動範囲であってもよい。
【0031】
収容部26は、各種ツール32を収容する部位である。本例では、この収容部26を、工作機械10の機内に設けている。より具体的には、図1から図3に示す通り、収容部26は、ワーク主軸16が突出する壁面の内側に設けられている。この収容部26は、ツール32を外部との間でやりとりしない場合には、シャッター27により閉鎖されている。
【0032】
収容部26の近傍には、当該収容部26と工具主軸18(第二保持装置)との間でツール32を付け替えるように構成された交換機構28が設けられている。この交換機構28としては、従来から工作機械10に設けられていたオートツールチェンジャ(以下「ATC」という)の機構を用いることができる。
【0033】
ATCは、工作機械10において、工具主軸等で保持された切削工具を自動で付け替える装置である。本例の交換機構28は、このATCの構成を用いることができ、例えば、図5に示すように、ツールホルダ42の係合部42eに係合して、これを掴む交換アーム50を有していてもよい。
【0034】
この図5に示す交換アーム50を用いて工具主軸18で保持する切削工具32aを付け替える手順について簡単に説明する。この場合、交換アーム50の両端には、ツールホルダ42の係合部42eに係合可能な係合鉤52が形成されている。また、交換アーム50は、垂直な軸周りに回転可能であるとともに垂直方向に交換昇降となっている。また、この場合、収容部26には、複数の切削工具32aを、ツールホルダ42を介して保持するツールマガジン48が設けられている。このツールマガジン48は、垂直な軸周りに回転可能となっている。
【0035】
切削工具32aを交換したい時には、工具主軸18に取り付けられたツールホルダ42(切削工具32a含む)および新たに工具主軸18に取り付けたいツールホルダ42(切削工具32a含む)を、それぞれ係合鉤52の回転軌跡上に位置させる。この状態で、交換アーム50を一方向に回転させ、係合鉤52をツールホルダ42の係合部42eに係合させる。交換アーム50が二つのツールホルダ42に係合できれば、交換アーム50を下降させ、二つのツールホルダ42をツールマガジン48および工具主軸18から引き抜く。その状態でさらに交換アーム50を一方向に180°回転させ、二つのツールホルダ42の位置を入れ替える。そして、交換アーム50を上昇させ、二つのツールホルダ42をツールマガジン48および工具主軸18に差し込めば、切削工具32aの付け替えが完了となる。なお、ここで説明した交換機構28の構成は、一例であり、他の機構を用いてもよい。
【0036】
制御部39は、上述したワーク主軸16、下刃物台20、工具主軸18、機内ロボット24、および交換機構28の駆動を制御するもので、例えば、各種演算を実行するCPUと、各種プログラムやデータを記憶するメモリとを有したコンピューターで構成される。この制御部39は、例えば数値制御装置を含んでいてもよい。この制御部39は、オペレータから入力された加工プログラム(NCプログラム)に基づいて、ワーク主軸16、下刃物台20、工具主軸18の駆動を制御し、ワークを切削加工させる。また、制御部39は、機内ロボット24、工具主軸18、交換機構28を介して、下刃物台20と収容部26との間で切削工具32aを取り替えさせる。以下、これについて詳説する。
【0037】
既述した通り、本例の工作機械10は、工具主軸18に取り付けられる切削工具32aを取り替えるための交換機構28を有している。かかる交換機構28を設けることで、工具主軸18に取り付けられる切削工具32aを自動的に交換できる。一方、下刃物台20は、交換機構28から離れた位置に設けられており、下刃物台20に取り付けられる切削工具32aは、当該交換機構28で直接、交換することはできない。
【0038】
かかる問題を解決するために、例えば、下刃物台20の近傍にも交換機構28や収容部26を追加で設置することも考えられるが、この場合、コスト増加や工作機械10のサイズアップを招く。同様に、機内ロボット24の可動範囲を広げて、当該機内ロボット24で、収容部26から下刃物台20に、または、下刃物台20から収容部26に、切削工具32aを搬送することも考えられる。しかし、機内ロボット24の可動範囲を広げた場合でも、コストアップの問題を避けられない。また、加工室内での干渉のため、機内ロボット24のサイズアップ等の可動範囲の拡大が不可な場合も考えられる。
【0039】
そこで、本例では、下刃物台20(第一保持装置)と収容部26との間で切削工具32aを付け替える場合には、機内ロボット24、工具主軸18(第二保持装置)、交換機構28を介在させるようにしている。以下、下刃物台20に装着されている切削工具32aを、収容部26へ収容、交換する動きについて具体的に説明する。
【0040】
制御部39は、機内ロボット24を駆動して、交換対象となる下刃物台20の切削工具32a周辺の清掃を実行させる。このとき、機内ロボット24には、エンドエフェクタ40として、清掃機構(流体噴出ノズルやブラシ等)を取り付けておく。続いて、制御部39は、機内ロボット24を駆動して、下刃物台20から切削工具32aをツールホルダ42ごと分離させる。このとき、機内ロボット24には、エンドエフェクタ40として、把持機構を取り付けておく。
【0041】
制御部39は、さらに機内ロボット24を駆動して、下刃物台20から取り外した切削工具32aを、工具主軸18に装着する。このとき、必要であれば、制御部39は、工具主軸18を機内ロボット24の可動範囲内に移動させておく。続いて、制御部39は、工具主軸18を、所定の主軸側交換位置まで移動させる。この状態になれば、制御部39は、収容部26のシャッター27を開き、交換機構28の交換アーム50を用いて、工具主軸18に取り付けられている切削工具32a(すなわち下刃物台20から取り外した切削工具32a)を収容部26に収容する。また、これと同時に、新たに下刃物台20に取り付ける切削工具32aが、交換アーム50により工具主軸18に取り付けられる。
【0042】
工具主軸18に新たな切削工具32aが取り付けられれば、制御部39は、工具主軸18を機内ロボット24の可動範囲内に移動させるとともに、機内ロボット24を駆動して、工具主軸18に取り付けられた切削工具32aを下刃物台20に取り付けさせる。これにより、下刃物台20と収容部26との間での切削工具32aの交換が完了となる。
【0043】
以上の説明から明らかな通り、本例では、互いに離れた収容部26と下刃物台20との間で切削工具32aを付け替えるために、工具主軸18を中継させている。工作機械10には、この工具主軸18に取り付けられる切削工具32aを交換するための交換機構28が設けられているため、工具主軸18を中継させることで、新たな交換機構28を別途設けることなく、下刃物台20と収容部26との間で工具交換が可能となる。結果として、コストアップやサイズアップを抑えつつ、収容部26から遠く離れた第一保持装置(下刃物台20)についても自動での工具交換が可能となる。
【0044】
なお、上述の説明では、工具主軸18のツール装着部および下刃物台20のツール装着部が互いに同一形状の場合を例に挙げて説明した。しかし、工具主軸18および下刃物台20のツール装着部は、互いに異なる形状を有していてもよい。この場合、工具主軸18は、下刃物台20に取り付けられる切削工具32aを、図6に示すツールホルダ42を用いて保持する。このツールホルダ42のツール連結部42tは、下刃物台20(第一保持装置)のツール装着部と同じ形状を有しており、機械連結部42mは、工具主軸18(第二保持装置)のツール装着部に装着可能な形状となっている。かかるツールホルダ42を介在させることで、工具主軸18および下刃物台20のツール装着部の形状の違いを吸収でき、下刃物台20用の切削工具32aも、工具主軸18で保持することができる。
【0045】
次に、他の実施形態について図7図11を参照して説明する。図7から図9は、工作機械10の斜視図であり、ツール32の一種であるチャック爪32bを交換する様子を示す図である。また、図10は、主軸端34の概略的な斜視図であり、図11は、このチャック爪32bの交換に用いられるツールホルダ42の斜視図である。
【0046】
既述した通り、工作機械10には、ワーク主軸16が設けられており、このワーク主軸16の端部、すなわち主軸端34には、複数(図示例では三つ)のチャック爪32bが設けられている。このチャック爪32bは、加工するワークの形状などに応じて適宜交換する必要がある。本例では、このチャック爪32bを、交換アーム50、工具主軸18、機内ロボット24を介して交換する。すなわち、この場合、チャック爪32bがツール32として機能し、ワーク主軸16がツール32を保持する一方で交換機構28がアクセスできない第一保持装置として機能する。
【0047】
図10に示す通り、主軸端34には、チャック爪32bがスライド挿入され、径方向に延びる溝34aが形成されている。この溝34aは、ワーク主軸16(第一保持装置)に設けられ、チャック爪32b(ツール)が装着されるツール装着部である。この溝34a(ツール装着部)に装着されたチャック爪32bは、バネや電磁シリンダを利用したロック機構(図示せず)によりロックされ、主軸端34からの離脱が阻害される。主軸端34の周面には、このロックを解除するためのロック孔56が設けられている。このロック孔56に解除ピン(図示せず)を差し込むことで、上記ロック機構が解除され、チャック爪32bが主軸端34から離脱可能となる。
【0048】
ここで、主軸端34に設けられたツール装着部(溝34a)は、当然ながら、工具主軸18に設けられるツール装着部と形状が異なる。この形状の違いを吸収するために、工具主軸18は、図11に示すツールホルダ42を介して、チャック爪32bを保持する。このチャック爪32bは、工具主軸18のツール装着部に装着可能な機械連結部42mと、交換アーム50に係合可能な係合部42eに加え、さらに、ワーク主軸16のツール装着部(溝34a)と同様の形状をした溝であるツール連結部42tをチャック爪32bの個数分(本例では三つ)有している。
【0049】
かかる工作機械10において、ワーク主軸16(第一保持装置)と収容部26との間で、チャック爪32bを付け替える場合の流れについて説明する。この場合、制御部39は、まず、機内ロボット24を駆動して、ワーク主軸16のチャック爪32b周辺の清掃を実行させる。
【0050】
続いて、制御部39は、機内ロボット24を駆動して、ワーク主軸16からチャック爪32bを分離させたうえで、当該チャック爪32bを工具主軸18に保持されたツールホルダ42に装着させる。具体的には、まず、機内ロボット24に、エンドエフェクタ40として、把持機構(クリッパやハンド機構等)を取り付ける。そして、この把持機構(エンドエフェクタ40)で、解除ピンを把持し、解除ピンをロック孔56に差し込んで、ロックを解除する(図8参照)。ロックが解除されれば、続いて、機内ロボット24を駆動して、把持機構で、チャック爪32bを把持し、ワーク主軸16から取り外すとともに、当該チャック爪32bをツールホルダ42に取り付ける(図9参照)。このとき、ツールホルダ42を保持する工具主軸18は、必要に応じて、その位置や姿勢を変更する。こうした手順を、チャック爪32bの個数分、繰り返す。したがって、図示例では、上記の手順を3回繰り返す。
【0051】
全てのチャック爪32bがツールホルダ42に装着されれば、制御部39は、当該ツールホルダ42ごと工具主軸18を所定の主軸側交換位置まで移動させる。この状態になれば、制御部39は、収容部26のシャッター27を開き、交換機構28の交換アーム50を用いて、工具主軸18に取り付けられているチャック爪32bをツールホルダ42ごと収容部26に収容する。また、これと同時に、新たにワーク主軸16に取り付けるチャック爪32bが、交換アーム50により工具主軸18に取り付けられる。
【0052】
工具主軸18に新たなチャック爪32bが取り付けられれば、制御部39は、工具主軸18を機内ロボット24の可動範囲内に移動させるとともに、機内ロボット24を駆動して、工具主軸18に取り付けられたチャック爪32bをワーク主軸16に取り付けさせる。これにより、ワーク主軸16と収容部26との間でのチャック爪32bの交換が完了となる。
【0053】
以上の説明から明らかな通り、本例でも、工具主軸18を介してツール(チャック爪32b)の付け替えを行っている。かかる構成とすることで、コストアップやサイズアップを抑えつつ、収容部26に対して移動できないワーク主軸16(第一保持装置)についても自動でのツール交換が可能となる。
【0054】
次に、他の実施形態について図12から図14を参照して説明する。図12から図14は、他の工作機械10の斜視図であり、ツール32の一種である心押し台ツール32cを交換する様子を示す図である。本例における工作機械10は、図12から図14から明らかな通り、下刃物台20に替えて、心押し台30を備えている。心押し台30は、ワーク主軸16とZ軸方向に対向しており、Z軸方向に移動可能となっている。心押し台30の一端には、心押し台ツール32cが着脱可能に取り付けられている。心押し台ツール32cは、ワーク主軸16で保持されたワークの先端に当接して、当該ワークを支える。本例では、この心押し台30が、ツール32(心押し台ツール32c)を保持する第一保持装置として機能する。
【0055】
また、本例において、工具主軸18は、ツール(心押し台ツール32c)の交換を中継する第二保持装置として機能する。この工具主軸18には、心押し台ツール32cが着脱できるツールホルダ42が取り付けられている。
【0056】
かかる工作機械10において、心押し台30(第一保持装置)と収容部26との間で、心押し台ツール32cを付け替える場合の流れについて説明する。この場合、制御部39は、まず、機内ロボット24を駆動して、心押し台30の心押し台ツール32c周辺の清掃を実行させる。
【0057】
続いて、制御部39は、機内ロボット24を駆動して、心押し台30から心押し台ツール32cを分離させたうえで、当該心押し台ツール32cを工具主軸18に保持されたツールホルダ42に装着させる(図13図14参照)。工具主軸18に心押し台ツール32cが装着されれば、制御部39は、当該ツールホルダ42ごと工具主軸18を所定の主軸側交換位置まで移動させる。この状態になれば、制御部39は、収容部26のシャッター27(図12から図14では見えず)を開き、交換機構28の交換アーム50(図5参照)を用いて、工具主軸18に取り付けられている心押し台ツール32cをツールホルダ42ごと収容部26に収容する。また、これと同時に、心押し台30に新たに取り付ける心押し台ツール32cが、交換アーム50により工具主軸18に取り付けられる。
【0058】
工具主軸18に新たな心押し台ツール32cが取り付けられれば、制御部39は、工具主軸18を機内ロボット24の可動範囲内に移動させるとともに、機内ロボット24を駆動して、工具主軸18に取り付けられた心押し台ツール32cを心押し台30に取り付けさせる。これにより、心押し台30と収容部26との間での心押し台ツール32cの交換が完了となる。
【0059】
以上の説明から明らかな通り、本例でも、工具主軸18を介してツール(心押し台ツール32c)の付け替えを行っている。かかる構成とすることで、コストアップやサイズアップを抑えつつ、収容部26から離れた心押し台30(第一保持装置)についても自動でのツール交換が可能となる。
【0060】
なお、これまでの説明では、交換機構28および収容部26を加工室12内に設けているが、これらは、加工室12の外部に設けられてもよい。図15は、こうした工作機械10の概略平面図である。図15の例では、収容部26は、加工室12の外側に設けられている。この収容部26において、複数のツール32は、環状のレール26aに沿って移動可能に保持されている。また、交換機構28は、加工室12の外部に設けられており、回転アーム62を有したロボット60を含んでいる。回転アーム62は、所定の軸周りに回転することで、収容部26および加工室12の双方にアクセスできる。ツール32を交換する際には、加工室12内に設けられた下刃物台20が回転アーム62の近傍まで移動する。
【0061】
また、これまで説明した構成は、いずれも一例であり、機内ロボット24と第二保持装置と交換機構28を経由して、第一保持装置と収容部26との間でツール32を付け替えるのであれば、その他の構成は変更されてもよい。例えば、第二保持装置は、ツール32を保持するものであれば、工具主軸18に限らず他の保持装置でもよい。ただし、既存のATCを交換機構28として利用するのであれば、第二保持装置は、ATCにより交換される切削工具32aを保持する切削工具保持装置であることが望ましい。また、これまでの説明では、機内ロボット24に取り付けられる清掃機構(エンドエフェクタ40)で、第一保持装置で保持されたツール32周辺を清掃している。しかし、こうした清掃機構は、機内ロボット24とは別に設けられてもよい。例えば、工作機械10では、通常、加工中の加工点周辺に切削油やエアを供給する機構が設けられている。かかる切削油やエアを供給する機構を、清掃機構として用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 工作機械、12 加工室、14 前面ドア、16 ワーク主軸、18 工具主軸、20 下刃物台、22 タレット、24 機内ロボット、26 収容部、27 シャッター、28 交換機構、30 心押し台、32 ツール、32a 切削工具、32b チャック爪、32c 心押し台ツール、34 主軸端、38 ロボットアーム、39 制御部、40 エンドエフェクタ、42 ツールホルダ、42e 係合部、42m 機械連結部、42t ツール連結部、48 ツールマガジン、50 交換アーム、52 係合鉤、56 ロック孔、60 ロボット、62 回転アーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図15