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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】窒化ガリウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/06 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
C01B21/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019049928
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020152586
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 美育
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将治
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/019098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属ガリウムを900℃以上1100℃以下の温度で焼成する工程を含む窒化ガリウムの製造方法であって、
アンモニガスの供給量が、室温で測定したときに、金属ガリウム1mL当たり0.5~1.2mL/secであり、
混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)が1.0~5である、
窒化ガリウムの製造方法。
【請求項2】
焼成後、焼成物を粉砕する工程を含む、請求項記載の窒化ガリウムの製造方法。
【請求項3】
窒化ガリウムは、初期かさ密度が1.6g/cm3以上であり、かつタップかさ密度が2.5g/cm3以上である、請求項1又は2記載の窒化ガリウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウムはパワー半導体としての用途が期待されている。パワー半導体向けの窒化ガリウム薄膜の製造方法の一つに、スパッタ法が挙げられる。スパッタ法は、例えば、窒化ガリウムターゲットにArイオンを衝突させ、その衝突エネルギーによって放出されたターゲット材成分を対面にある基板上に薄膜を形成させる方法である。この方法に使用する窒化ガリウムターゲットは、緻密で十分に強度の高いものが望まれており、その要望に応えるためには、かさ密度の高い窒化ガリウム粉末を焼結させて製造する必要がある。
【0003】
一方、半導体向け窒化ガリウムの単結晶の製造方法として、溶液成長法がある。溶液成長法は、窒化ガリウムを容器に充填し溶解させて単結晶を成長させる方法であるが、生産効率を上げるために、かさ密度を高くして充填率を向上させることが求められている。更に、ペレット成形体やブロック成形体に成形する際にも、充填率を向上させるために、かさ密度を高くすることが求められている。
【0004】
従来、密度の高い窒化ガリウムの製造方法として、例えば、酸化ガリウム粉末をアンモニア雰囲気下、1000~1100℃で窒化処理を行って窒化ガリウムを得、BET、軽装かさ密度及び安息角が制御された窒化ガリウムを900℃以上1050℃以下の温度で焼結して焼結体を得、そして焼結体をアンモニアを含む雰囲気下、800℃以上1200℃以下の温度で加熱処理する方法が提案されている(特許文献1)。また、金属ガリウムの表面に、700℃以上1200℃以下の温度にてアンモニアガス等の窒素源ガスを一定以上の供給量と速度で接触させることで、結晶性が高く不純物の少ない窒化ガリウムを製造できるとの報告がある(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-144424号公報
【文献】特開2006-83055号公報
【文献】特開2011-251910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、軽装かさ密度が1.5g/cm3以上である窒化ガリウムについて報告はない。また、軽装かさ密度が1g/cm3の窒化ガリウムを製造するためには、焼成温度を1120℃以上にする必要があり、これでは窒化ガリウムが分解して金属ガリウムが生成してしまう。また、特許文献2、3では、窒化ガリウムのかさ密度については何ら検討されていない。
本発明の課題は、かさ密度の高い窒化ガリウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属ガリウムを所定温度にて、単位金属ガリウム量当たりのアンモニウムガスの供給量を特定範囲内に制御し焼成することで、かさ密度の高い窒化ガリウムが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属ガリウムを900℃以上1100℃以下の温度で焼成する工程を含む窒化ガリウムの製造方法であって、
アンモニウムガスの供給量が金属ガリウム1mL当たり0.5~1.2mL/secである、窒化ガリウムの製造方法。
〔2〕混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)が0.25~5である、前記〔1〕記載の窒化ガリウムの粉砕方法。
〔3〕焼成後、焼成物を粉砕する工程を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の窒化ガリウムの粉砕方法。
〔4〕窒化ガリウムは、初期かさ密度が1.5g/cm3以上であり、かつタップかさ密度が2.3g/cm3以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の窒化ガリウムの粉砕方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窒化ガリウムの分解を抑制しつつ、かさ密度の高い窒化ガリウムを簡便な操作で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の窒化ガリウムの製造方法は、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属ガリウムを900℃以上1100℃未満の温度で焼成する工程を含み、アンモニウムガスの供給量が金属ガリウム1mL当たり0.5~1.2mL/secであることを特徴とするものである。
【0011】
(金属ガリウム)
金属ガリウムは、市販品を使用することができるが、高純度であるものが好ましい。例えば、金属ガリウムとして、純度99.99%以上のものを使用することができる。
また、金属ガリウムの形態は、バルクでも、粉末でも構わないが、通常バルクが使用される。
【0012】
(混合ガス)
混合ガスは、窒素ガスとアンモニアガスとからなるものである。
窒素ガスとしては、例えば、純度99.9容積%以上の窒素ボンベガス、液化窒素を使用することができる。また、アンモニアガスとしては、例えば、純度99.8質量%以上の液化アンモニアを使用することができる。
混合ガスの供給方法としては、所定量の窒素ガスと所定量のアンモニアガスを混合して反応装置に供給しても、両者を別個の配管から反応装置に供給してもよい。
【0013】
アンモニウムガスの供給量は、金属ガリウム1mL当たり0.5~1.2mL/secであるが、かさ密度向上の観点から、金属ガリウム1mL当たり、0.6~1.15mL/secが好ましく、0.8~1.1mL/secがより好ましく、0.9~1.1mL/secが更に好ましい。
また、混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)は、かさ密度向上の観点から、0.25~5が好ましく、0.3~4がより好ましく、0.35~3.5が更に好ましく、0.4~3.5がより更に好ましい。
【0014】
(焼成)
焼成に使用する装置は、装置内に混合ガスを流通でき、かつ1000℃程度の熱に耐えられる装置であれば特に限定されないが、例えば、管状炉、電気炉、バッチ式キルン、ロータリーキルンを挙げることができる。
焼成は、常圧で行えばよく、加圧又は真空とすることを要しない。
【0015】
焼成温度は、900℃以上1100℃以下である。900℃未満では窒化反応が進行せず、1100℃を超えると、生成した窒化ガリウムが分解し、金属ガリウムが生成しやすくなる。かかる観点から、焼成温度は、950~1100℃が好ましく、1000~1100℃がより好ましく、1050~1100℃が更に好ましい。
焼成時間は、反応スケールにより一様ではないが、例えば、金属ガリウム100gを使用する場合、通常0.5~60時間、好ましくは1~20時間、更に好ましくは3~10時間である。
【0016】
金属ガリウムの焼成後、冷却することができる。また、窒化ガリウムの粉砕、分析、計量等を行うため、常温(20±15℃)まで冷却してもよい。
【0017】
(粉砕)
焼成後、焼成物を粉砕してもよい。
粉砕は、粉砕装置を使用することができる。粉砕装置としては、窒化ガリウムを粉砕可能であり、且つ密閉状態とすることができれば特に限定されないが、例えば、媒体粉砕機を挙げることができる。媒体粉砕機としては、例えば、ミルが挙げられ、具体的には、遊星ボールミル、ボールミル、ディスクミル等の容器駆動媒体ミルを挙げることができる。なお、粉砕媒体及び粉砕容器の材質としては、窒化ガリウムを粉砕可能であり、かつ不純物の混入を防止できれば特に限定されない。
【0018】
粉砕条件は、粉砕装置の種類、製造スケールにより適宜設定可能であるが、例えば、通常回転数50~400rpmで、1~60分である。また、粉砕する際の温度は、例えば、常温(20℃±15℃)である。
【0019】
粉砕時の雰囲気は、酸素非含有雰囲気下が好ましい。酸素非含有雰囲気としては、例えば、不活性ガス雰囲気が挙げられ、具体的には、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、窒素水素混合ガス雰囲気、アルゴン水素混合ガス雰囲気等を挙げることができる。なお、窒素水素混合ガス又はアルゴン水素混合ガスを用いる場合は、水素を3~5体積%とすることが好ましい。
粉砕時の雰囲気を酸素非含有雰囲気とするには、例えば、ミルを使用する場合、酸素非含有雰囲気のグローブボックス内で、粉砕容器内の気相を置換した後、該粉砕容器に粉砕媒体、窒化物及び酸素吸収剤を収容し、粉砕媒体の開口部を密閉すればよい。
【0020】
このようにして得られた窒化ガリウムは、かさ密度が高められている。具体的には、初期かさ密度を、好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは1.6g/cm3以上、更に好ましくは1.7g/cm3以上とすることができる。また、タップかさ密度を、好ましくは2.3g/cm3以上、より好ましくは2.4g/cm3以上、更に好ましくは2.5g/cm3以上とすることができる。ここで、本明細書において「初期かさ密度」とは、試料を分散させて容器に入れたときのかさ密度をいい、また「タップかさ密度」とは、試料を分散させて容器に入れた後、容器にタップによる衝撃を与え、試料の体積変化がなくなったときのかさ密度をいう。なお、初期かさ密度及びタップかさ密度は、いずれもJIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に準拠して測定するものとする。
【0021】
また、窒化ガリウム中の窒素量は、通常16質量%以上、好ましくは16.2質量%以上、更に好ましくは16.5質量%以上とすることができる。なお、窒化ガリウム中の窒素量は、酸素窒素同時分析装置を用いて測定することが可能であり、例えば、LECO社製のTCH-600を使用することができる。
【0022】
また、窒化ガリウムの平均粒子径は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下が更に好ましい。なお、かかる平均粒子径の下限値は特に限定されないが、平均粒子径が小さいと酸素量が多くなりやすいため、1μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましい。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠して試料の粒度分布を体積基準で作成したときに積算分布曲線の50%に相当する粒子径(d50)を意味する。なお、レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を使用することができる。
【実施例
【0023】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0024】
1.窒素量の測定
酸素窒素同時分析装置(TCH-600、LECO社製)により、窒化ガリウム粉末中の窒素量を測定した。
【0025】
2.かさ密度(初期かさ密度及びタップかさ密度)の測定
窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度を、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に準拠して測定した。
【0026】
3.平均粒子径の測定
窒化ガリウム粉末の粒度分布を、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠して体積基準で作成した。そして、積算分布曲線の50%に相当する粒子径(d50)を求めた。なお、レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を使用した。
【0027】
4.窒化ガリウムの評価
(1)窒化ガリウムの窒素量
窒素濃度が16質量%未満である場合、金属ガリウムが十分に窒化されていないか、あるいは窒化ガリウムの一部が分解し、金属ガリウムが混在していると推定されることから、品質が不十分と判断した。
(2)初期かさ密度
初期かさ密度が1.5g/cm3未満であるから、品質が不十分と判断した。
(3)タップかさ密度
タップかさ密度が2.3g/cm3未満であるから、品質が不十分と判断した。
(4)評価基準
上記(1)~(3)のいずれにも該当しないものを「〇」、上記(1)~(3)のいずれか1以上に該当するものを「×」と評価した。
【0028】
実施例1
アルミナ製ボートに金属ガリウム(DOWA、エレクトロニクス社製)を100g量り取り、炉心管の中央部に仕込み、管状炉に設置した。次いで、窒素ガス0.5L/minとアンモニアガス1L/minをそれぞれ炉心管内に流通させ、1050℃の温度まで5℃/minで昇温し、10時間保持して焼成を行った。焼成後、室温まで徐冷し、生成物をボールミルにて200rpm、10分間の条件で粉砕し、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、X線回折(XRD)測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置(TCH-600、LECO社製、以下、同様である)により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
窒素ガスの流通量を1L/min、焼成温度を1000℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
焼成温度を950℃に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0031】
実施例4
窒素ガスの流通量を3L/minに変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0032】
実施例5
金属ガリウム1mLあたりのアンモニアガス供給量を1.1mL/secに変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、窒化ガリウムを得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
窒素ガスを流通せず、焼成温度を900℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
焼成温度を1000℃に変更したこと以外は、比較例1と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
比較例3
焼成温度を1050℃に変更したこと以外は、比較例1と同様の操作により、窒化ガリウム粉末を得た。窒化ガリウム粉末の鉱物の同定として、XRD測定を行い、GaN単相であることを確認した。また、窒化ガリウム粉末の窒素量を酸素窒素同時分析装置により測定し、更に窒化ガリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
比較例4
アンモニアガスの流通量を0.2L/min、窒素ガスの流通量を1L/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったが、金属ガリウムが窒化せず、窒化ガリウム粉末を得られなかった。金属ガリウムは窒素ガスのみでは窒化しないため、窒素ガスの割合を大きくすると窒化が進まなかった。
【0037】
比較例5
アンモニアガスの流通量を1.25L/min、窒素ガスの流通量を2.5L/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったが、金属ガリウムがボートから吹き出し、ボートの外部や炉心管の内側に付着しており、生成物の回収ができなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2と比較例2は、窒化ガリウムの平均粒子径が同一であるが、窒素ガスを使用しない比較例2は、初期かさ密度が1.5g/cm3未満であり、タップかさ密度が2.3g/cm3未満であり、いずれもかさ密度が低く、品質が不十分となることがわかる。窒素ガスを使用しない場合には焼成温度を高くすることで、窒化ガリウムのかさ密度を高めることができるが、窒化ガリウム中の窒素量が16質量%未満であることから、窒化ガリウムの一部が分解し、金属ガリウムが混在していることが推定された(比較例3)。
また、金属ガリウム1mL当たりのアンモニウムガスの供給量が0.5mL/secよりも低いと、金属ガリウムが窒化せず(比較例4)、また金属ガリウム1mL当たりのアンモニアガスの流通量が1.2mL/secよりも高いと、ボートからの吹き出しにより窒化ガリウムの回収が不能となることから(比較例5)、窒化ガリウムを製造するうえで、金属ガリウム1mL当たりのアンモニウムガスの供給量を制御することが重要であることがわかる。
以上のことから、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属ガリウムを900℃以上1100℃以下の温度にて、金属ガリウム1mL当たりのアンモニウムガスの供給量を一定に制御することで、窒化ガリウムの分解を抑制しつつ、かさ密度の高い窒化ガリウムが得られることがわかる。