(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20230308BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20230308BHJP
B41F 13/00 20060101ALI20230308BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B41F27/12 D
B41F33/00 210
B41F13/00 514
G01B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2019079281
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】宗近 敏也
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208249(JP,A)
【文献】特開2000-318133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255429(US,A1)
【文献】特開平8-108525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-13/70
B41F 21/00-35/06
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版が巻き付けられる版胴と、該版胴に向けて版を移動させるための駆動可能な給版装置と、を備えた印刷機であっ
て、
前記版胴は、前記給版装置の駆動により移動した版の移動方向先端部を咥える咥え側万力及び巻き付けられた版の移動方向後端部を咥える咥え尻側万力を備え、
前記版胴から離間して配置され、
前記咥え側万力の部分で版の移動方向先端部が位置する部分までの距離を検出し、かつ、前記咥え尻側万力の部分で版の移動方向後端部が位置する部分までの距離を検出するセンサを設けたことを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記版胴を覆うように配置される開閉自在な安全カバーを備え、該安全カバーに前記センサを取り付けていることを特徴とする請求項
1に記載の印刷機。
【請求項3】
版が巻き付けられる版胴と、該版胴に向けて版を移動させるための駆動可能な給版装置と、を備えた印刷機であって、
前記版胴は、前記給版装置の駆動により移動した版の移動方向先端部を咥える咥え側万力を備え、
前記咥え側万力は、咥え板と万力台を備え、前記咥え板と前記万力台との間で前記版の移動方向先端部を挟持する構成であって、前記咥え板には切欠き部が形成されており、
前記版胴から離間して配置され、前記切欠き部の位置に光を照射して反射してきた反射光の光量によって前記咥え板と前記万力台との間に位置している前記版の移動方向先端部までの距離を検出するセンサを備えており、
前記版の移動方向先端部が前記咥え板と前記万力台との間に位置していない場合は、照射する前記光は前記万力台の前記版の移動方向先端部を挟持する面に対して前記センサからの距離がより離れた前記切欠き部の奥にある部品に当たって反射することを特徴とする印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる印刷機では、版が巻き付けられる版胴と、該版胴に向けて版を移動させるための駆動可能な給版装置と、を備え、前記版胴には、給版装置を駆動して版を版胴側へ移動させたときに、版の移動方向先端部が係合して版胴に対して位置決めされる見当合わせピン(位置決めピンともいう)を備えている。
【0003】
そして、給版装置の駆動により版胴に向けて版を移動させた時に、版胴に対して正しく位置しているか否かを検出する検出手段を設けている。この検出手段は、見当合わせピンを利用した構成である。具体的には、見当合わせピンにソレノイドコイルと該ソレノイドコイル内を移動可能な可動子とを配置し、給版装置により移動する版の移動方向先端部に押されて可動子がソレノイドコイル内を移動することにより、版の移動方向先端部の位置を検出して、版の移動方向先端部が版胴に対して正しく位置しているか否かを検出するようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、見当合わせピンにインキローラからのインキが付着することがあり、これに伴い可動子の動きが悪くなり、版の移動方向先端部が版胴に対して正しく位置しているか否かを検出する検出精度が悪化してしまうことがあった。
【0006】
また、回転する版胴に配置される前記検出手段からの信号を版胴の外部に配置されている制御部に伝達するために版胴の回転軸部にスリップリング等の特殊な信号伝達手段が必要となり、製造面において不利であり、早期改善が要望されている。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、検出精度が悪化することを防止し、製造面においても有利な印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、版が巻き付けられる版胴と、該版胴に向けて版を移動させるための駆動可能な給版装置と、を備えた印刷機であって、前記版胴から離間して配置され、前記給版装置の駆動により前記版胴における版の移動方向先端部が位置する部分までの距離を検出するセンサを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、給版装置の駆動により移動する版の移動方向先端部が位置する部分までの距離をセンサで検出する。そして、センサで検出した距離と版の移動方向先端部が版胴に対して正規の位置に位置している場合の、版の正規位置の予め設定(測定)された距離との差を求め、その差が許容範囲であるか否かを判断すれば、版の移動方向先端部が版胴に対して正しく位置しているか否かを判断できる。しかも、センサを版胴から離間して備えているので、版胴自体に検出手段を設けた場合に発生する不都合、つまりインキ付着による検出精度の悪化や版胴の回転軸部にスリップリング等の特殊な信号伝達手段を設けることによるコスト面での不利を解消できる。
【0010】
また、本発明に係る印刷機は、前記版胴が、前記給版装置の駆動により移動した版の移動方向先端部を咥える咥え側万力を備え、前記給版装置の駆動により前記版胴における版の移動方向先端部が位置する部分が、前記咥え側万力の部分であってもよい。
【0011】
上記のように、版の移動方向先端部が位置する部分が咥え側万力の部分であれば、版の検出に必要となる特別な部材等を設ける必要がなく、設計がし易い。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、前記版胴を覆うように配置される開閉自在な安全カバーを備え、該安全カバーに前記センサを取り付けていてもよい。
【0013】
上記のように、センサを開閉自在な安全カバーに取り付けているので、版胴の点検保守時に安全カバーを開放すると、安全カバーと一緒にセンサが移動するので、点検保守時にセンサが邪魔になることがない。
【0014】
また、本発明に係る印刷機は、前記版胴が、巻き付けられた版の移動方向後端部を咥える咥え尻側万力を備え、前記センサは、前記咥え側万力の部分で版の移動方向先端部が位置する部分までの距離を検出し、かつ、前記咥え尻側万力の部分で版の移動方向後端部が位置する部分までの距離を検出する構成であってもよい。
【0015】
咥え側万力の部分で版の移動方向先端部が位置する部分までの距離をセンサにより検出し、かつ、咥え尻側万力の部分で版の移動方向後端部が位置する部分までの距離をセンサにより検出することによって、版が版胴に確実に装着されているか判断することができる。この場合、センサで検出した距離と、版の端部(移動方向先端部及び移動方向後端部)が版胴に対して正規の位置に位置している場合の、版の正規位置の予め設定(測定)された距離との差を求め、その差が許容範囲であるか否かを判断すれば、版の端部(移動方向先端部及び移動方向後端部)が版胴に対して正しく位置しているか否かを判断できる。また、センサが咥え尻側万力の部分で版の移動方向後端部を検出する構成であれば、検出に必要となる特別な部材等を設ける必要がなく、設計がし易い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、版胴の外部に備えたセンサで版の移動方向先端部が位置する部分における版までの距離を検出することによって、検出精度が悪化することを防止し、製造面においても有利な印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】印刷機に備える印刷部の要部を示す側面図である。
【
図2】同印刷部に備える咥え側保持部に版が正常に咥えられた状態を示す要部の側面図である。
【
図3】同印刷部に備える咥え側保持部の手前で版が止まった状態を示す要部の側面図である。
【
図4】同印刷部に備える咥え側保持部の第1咥え板に版が乗り上げた状態を示す要部の側面図である。
【
図5】版胴に巻き付けられた版の咥え尻側端部が咥え尻側保持部に正常に咥えられた状態を示す要部の側面図である。
【
図6】版胴に巻き付けられた版の咥え尻側端部が咥え尻側保持部に咥えられなかった状態を示す要部の側面図である。
【
図7】版胴に巻き付けられた版の咥え尻側端部が咥え尻側保持部に咥えられる直前の状態を示す要部の側面図である。
【
図10】安全カバーが上方の開放位置に位置している状態を示す印刷部の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の印刷機を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
印刷機は、上流側に給紙部(図示せず)を備え、下流側に排紙部(図示せず)を備え、それら中間に図示していない印刷部(印刷ユニットとも呼ばれる)を配設している。印刷部は、印刷に使用するインキの色の数だけ設けられるが、ここでは、1個の印刷部のみを説明する。
【0020】
印刷部は、
図1に示すように、左右の側壁1,1(
図1では一方の側壁1のみ図示している)を備える本体2と、本体2に内装され版3を巻き付けるための版胴4と、版胴4にインキを供給する複数のインキローラ5と、版3を版胴4に供給するための給版装置6と、を備えている。版胴4は、本体2の左右の側壁1,1に回転自在に軸支されている。また、ゴム胴(ブランケット胴とも呼ばれる)7が、版胴4に転接可能に配置されている。ゴム胴7には、図示していない圧胴が転接可能に配置されて、圧胴で搬送される印刷用紙にゴム胴7のインキが転写される。尚、給版装置6は、版胴4から版3を排出するための排版装置としての機能も有している。
【0021】
本体2は、両側壁1,1間の下流側、つまり版胴4の印刷用紙の搬送方向下流側(図では左側)を覆う安全カバー8を備えている。この安全カバー8は、両側壁1,1間に上下動(昇降)可能に取り付けられている。したがって、安全カバー8を上方に手動力又は電動力等を用いて移動させることにより、両側壁1,1間の下流側の下方を開放して(
図10参照)、本体2の内部を点検できるようにしている。尚、給版装置6は、安全カバー8に支持されている。
【0022】
版胴4には、凹状の溝9が幅方向略全域に形成され、その溝9内に版3を周面に巻き付けるために該版3の移動方向先端部(咥え側端部)を保持する咥え側保持部10及び版胴4に巻き付けられた版3の移動方向後端部(咥え尻側端部)を保持する咥え尻側保持部11を周方向に対となるように配置している。
【0023】
咥え側保持部10は、版3の咥え側端部を咥える咥え側万力から構成されている。この咥え側万力は、溝9内のうちの版胴4の回転方向上流側に固定される第1万力台10Aと、第1万力台10Aに対向して配置され第1万力台10Aとで版3の一端部を挟み込んだ状態で保持する閉じ位置と該版3の咥え側端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な咥え側の5枚の第1咥え板10B(
図8参照)と、を備えている。咥え側保持部10で版3の咥え側端部を咥えた状態で版胴4を所定角度駆動回転させることにより、版3が版胴4に巻き付けられる。
【0024】
咥え尻側保持部11は、前述したように、版胴4に巻き付けられた版3の咥え尻側端部を咥える咥え尻側万力から構成されている。この咥え尻側万力は、溝9内のうちの版胴4の回転方向下流側に固定される第2万力台11Aと、第2万力台11Aに対向して配置され第2万力台11Aとで版3の咥え尻側端部を挟み込んだ状態で保持する閉じ位置と該版3の咥え尻側端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な咥え尻側の2枚の第2咥え板11B(
図8参照)と、を備えている。また、咥え尻側保持部11は、図示していない移動機構により移動可能に構成されている。この移動により版3の咥え側端部が咥え側保持部10に、版3の咥え尻側端部が咥え尻側保持部11にそれぞれ挟み込まれて版胴4に巻き付けられた版3に張力を与えることができる。
【0025】
版胴4を反時計回りに所定角度駆動回転させて、版3を版胴4に巻き付ける際には、押えローラ12が移動して版3を版胴4に押し付けながら、版3を版胴4に巻き付ける。版3の巻き付けが終了すると、ブレード13(
図7参照)が移動して版3の咥え尻側端部3Bを第2万力台11Aに押し付けてから、開放位置の第2咥え板11B,11Bが閉じ側に位置変更して版3の咥え尻側端部3Bが、咥え尻側保持部11で挟持される。版3の咥え尻側端部3Bが咥え尻側保持部11で挟持されると、押えローラ12及びブレード13が版胴4から離間する側に移動する。これら押えローラ12及びブレード13が移動した後に所定角度だけ版胴4を回転させてから、後述するレーザ変位センサ19で版3の咥え尻側端部3Bが咥え尻側保持部11で良好に挟持されているか否かを検出する。この実施形態では、後述するレーザ変位センサ19で版3の咥え尻側端部3Bを検出し易い位置になるように、版胴4を所定角度回転させるようにしているが、押えローラ12及びブレード13が版胴4から離間する側に移動した後、直ちに後述するレーザ変位センサ19で版3の咥え尻側端部3Bを検出する構成であってもよい。
【0026】
給版装置6は、版3の裏面側を案内する版案内板14と、版案内板14に対向して版3の表面側をスムーズに案内するための回転自在な複数のゴムローラ15と、給版装置6にセットされた版3を幅方向両端部でそれぞれ挟持する挟持部材(図示せず)と、挟持部材で挟持した版3を版胴4側へ移動させるためのエアシリンダ(図示せず)と、を備えている。この実施形態では、版3を挟持部材で挟持する給版装置6を示しているが、版3を幅方向の複数個所で吸引して保持するための複数の吸引パッドを移動可能に備える給版装置であってもよい。
【0027】
給版装置6は、上側の左右軸芯回りで揺動自在に構成され、下流側前板16の両側部にそれぞれ備えた伸縮自在なエアシリンダ17(
図1参照)により揺動される。つまり、給版装置6は、エアシリンダ17の作動により、下端部が版胴4から遠ざかって版3をセットする垂直セット姿勢(
図2に示す下流側前板16と外面が略面一となる姿勢)と、下端部が版胴4に近づく傾斜姿勢となって版3を版胴4に移動(給版)させるための給版姿勢(
図1の姿勢参照)と、に姿勢変更可能に構成されている。
【0028】
第1万力台10Aは、版3を位置決めする位置決め部として、版胴4の軸芯方向(以下において幅方向という)に互いに所定距離だけ離間した柱状で一対の突起18,18(
図1参照、
図1では一方のみ図示している)を備えている。また、図示していないが、版3の咥え側端部に、位置決め用凹部として、前記突起18,18に係止する被位置決め部としての略半円状の切欠が形成されている。したがって、給版装置6の駆動により版3を版胴4へ移動させて版3の咥え側端部の一対の切欠きが突起18,18に係止することで版3の咥え側端部が正規の位置に位置決めされる。
【0029】
本実施形態の印刷機には、版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)の正規の位置に位置決めされた版3の咥え側端部が位置する部分までの距離を検出し、版胴4の咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)の正しく巻き付けられた版3の咥え側端部が位置する部分までの距離を検出するセンサとしての非接触式のレーザ変位センサ19を設けている。レーザ変位センサ19は、版胴4の回転軸芯方向(幅方向)で離間した2箇所に設けられており、それら一対のレーザ変位センサ19,19で、版3の咥え側端部3Aの幅方向で離間した2箇所、あるいは版3の咥え尻側端部3Bの幅方向で離間した2箇所において、版3が正規の位置に位置しているか否かを検出する。
図8及び
図9に、レーザ変位センサ19,19のレーザ光の照射位置を示している。つまり、レーザ変位センサ19,19は、レーザ光を
図8の幅方向両端側に位置する第1咥え板10B,10Bの上側にそれぞれ形成している切欠き部20A,20Bの位置に照射する。そして、反射してきた反射光の光量に基づいて、版3の咥え側端部3Aが正規の位置に位置しているか否かを検出する。また、レーザ変位センサ19,19は、レーザ光を第2咥え板11B,11Bの下側にそれぞれ形成している切欠き部21A,21Bの位置に照射する。そして、反射してきた反射光の光量に基づいて、版3の咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置しているか否かを検出する。このように、咥え側万力(咥え側保持部10)に、切欠き部20A,20Bを備え、咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)に、切欠き部21A,21Bを備えるだけなので、特別な部材を用いることなく版3の端部の検出を行うことができる。
【0030】
一対のレーザ変位センサ19,19は、版胴4から離間して(版胴4の外部に)配置されている。具体的には、前記安全カバー8にブラケット22を介して取り付けられている。このように、レーザ変位センサ19,19を開閉自在な安全カバー8に取り付けているので、例えば版胴4の点検保守時に安全カバー8を、
図10に示すように、開放することによって、安全カバー8と一緒にレーザ変位センサ19,19が移動することで点検保守時にレーザ変位センサ19,19が邪魔になることがない。この実施形態では、上方に安全カバー8が上昇するので、メンテナンス時に版胴4やゴム胴7に使用する溶剤や洗剤などがセンサにかかることがない利点がある。
【0031】
また、各レーザ変位センサ19は、斜め上方にレーザ光を照射するように取り付けられ、
図2に示すように、レーザ光が版胴4に挿入される版3の咥え側端部3Aに対して略直交するように照射される。これに対して、
図6に示すように、版胴4に巻き付けられた版3の咥え尻側端部3Bには、レーザ光が斜めに照射されているが、検出精度に関しては問題がなく、版3の咥え側端部3Aを検出する場合の検出精度と同等である。各レーザ変位センサ19,19は、反射して戻ってきたレーザ光を受光することで反射位置までの距離を検出(演算)する。そして、版3の移動方向先端部(咥え側端部3A)が版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正規の位置に位置している場合の正規位置の距離(予め測定している距離又は演算によって設定された距離)との差分である変位量を検出する。その変位量に基づいて、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置しているか否かを判断する。具体的には、前記変位量が予め設定されている許容範囲内にあるか否かを判断し、許容範囲内であれば、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置していると判断し、許容範囲外であれば、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置していないと判断する。なお、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置していないと判断された場合には、版3の挿入不良と判断され、オペレータにブザーやランプ等の報知手段を用いて報知してもよい。
【0032】
図2~
図4は、版3の咥え側端部の位置をレーザ変位センサ19で検出している場合を示している。まず、
図2では、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置している場合を示している。この場合、給版装置6の駆動により第1万力台10Aと第1咥え板10Bとの間に版3の咥え側端部3Aが挿入され、前述のように突起18,18に版3の咥え側端部3Aの切欠き(図示せず)が係止して版3の咥え側端部が位置決めされた状態においてレーザ変位センサ19で検出された変位量が許容範囲内となるので、版3の挿入OKと判断され、版3の巻き付け動作に移行することができる。
【0033】
図3では、版3の咥え側端部3Aが版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置していない場合を示している。この場合、給版装置6の駆動により第1万力台10Aと第1咥え板10Bとの間に版3の咥え側端部3Aが挿入されず、咥え側万力(咥え側保持部10)よりも手前で版3の移動が停止した状態である。この状態では、レーザ変位センサ19から照射されたレーザ光が版3の咥え側端部3Aに当たらず、レーザ変位センサ19からより離れた切欠き部20Aの奥にある部品23に当たって反射しており、検出される距離が遠くなるため、上述した変位量が許容範囲外となり、版3の挿入不良と判断され、例えば、給版工程を停止すると共に前記報知手段を作動させる。
【0034】
図4も
図3と同様に、版3の咥え側端部が版胴4の咥え側万力(咥え側保持部10)に対して正しく位置していない場合を示している。この場合、給版装置6の駆動により第1万力台10Aと第1咥え板10Bとの間に版3の咥え側端部3Aが挿入されず、版3の咥え側端部3Aが第1咥え板10Bを乗り越えて折り曲がった状態である。この状態では、レーザ変位センサ19から照射されたレーザ光が第1咥え板10Bの紙面左方に位置している版3の咥え側端部3Aに当たって反射しており、検出される距離が近くなるため、上述した変位量が許容範囲外となり、版3の挿入不良と判断され、例えば、給版工程を停止すると共に前記報知手段を作動させる。
【0035】
図5及び
図6は、版3の咥え尻側端部3Bの位置をレーザ変位センサ19で検出している場合を示している。
図5では、版3の咥え側端部3Bが版胴4の咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)で良好に挟持されているため、照射したレーザ光19Aが版3の咥え尻側端部3Bに当たって反射し、検出された変位量は許容範囲内となることから、咥え尻万力での版3の挟持がOKと判断され、次の版3に張力を付与する工程に移行することができる。
【0036】
図6では、版3に照射したレーザ光19Aが版3の咥え尻側端部3Bに当たらない場合を示している。この場合、レーザ光19Aは、レーザ変位センサ19からより離れた切欠き部21Aの奥にある部品24に当たって反射する。そのため、距離が長いと判断され、すなわち、上述した変位量が許容範囲外となり、版3の咥え尻側端部3Bが咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)で良好に保持されていないと判断される。また、図示していないが、咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)で保持されていない版3の咥え尻側端部3Bにレーザ光19Aが当たる場合には、距離が短いと検出され、すなわち、上述した変位量が許容範囲外となり、版3の咥え尻側端部3Bが咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)で良好に保持されていないと判断される。良好に保持されていないと判断された場合は、例えば、給版工程を停止すると共に前記報知手段を作動させる。
【0037】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、前記実施形態では、変位センサとしてレーザ式の変位センサ19を用いたが、渦電流式、超音波式、静電容量式のものであってもよい。また、非接触式の変位センサの他、接触式の変位センサであってもよい。この接触式の場合には、距離を検出する度に対象物(ここでは版3)に接触する位置まで伸長させ、その接触した位置から距離を検出し、正規の位置の版3の距離との変位量に基づいて版3が正しい正規の位置に位置していることを検出するようにしてもよい。なお、センサで版3までの距離を検出する他、センサで検出した検出情報を制御部に入力し、制御部で版3までの距離を検出する構成であってもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、変位センサで版3の咥え側端部3Aと咥え尻側端部3Bの両方を検出するように構成したが、版3の咥え側端部3Aのみを検出するように構成してもよい。また、版3の幅方向で離間した2箇所を検出するように複数(実施形態では2個であるが、3個以上でもよい)の変位センサを設けることによって、版3の両端部3A,3Bが咥え側万力(咥え側保持部10)又は咥え尻側万力(咥え尻側保持部11)に良好に挿入又は挟持されたか否かを検出することができるが、版3の幅方向1か所のみを検出すべく1個の変位センサを設けて実施してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、安全カバー8に変位センサ(レーザ変位センサ19)を取り付けたが、安全カバー8ではなく、例えば側壁1から延ばしたブラケットに変位センサを取り付けてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置していない場合に、咥え側保持部10の奥にある部品23又は咥え尻側保持部11の奥にある部品24までの距離をセンサで検出することにより、版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置している場合の距離との差が大きくなり、版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置しているか否かの判断を的確に行える利点があるが、版3の厚みに相当する距離の差で版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置しているか否かの判断をするように構成してもよい。つまり、版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置していない場合には、照射した光が第1万力台10A又は第2万力台11Aの版3を挟持する面と面一の面に当たり、その反射光量から距離を求めることになるが、その距離は、正規の位置にある版3までの距離に対して版3の厚み分だけ長くなるだけであるため、版3の咥え側端部3A又は咥え尻側端部3Bが正規の位置に位置しているか否かの判断に誤りが生じる可能性がある。そのため、この構成の場合は、検出精度の高いセンサであるレーザ変位センサを用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0042】
1…側壁、2…本体、3…版、3A…咥え側端部、3B…咥え尻側端部、4…版胴、5…インキローラ、6…給版装置、7…ゴム胴、8…安全カバー、9…溝、10…咥え側保持部、10A…第1万力台、10B…第1咥え板、11…咥え尻側保持部、11A…第2万力台、11B…第2咥え板、12…押えローラ、13…ブレード、14…版案内板、15…ゴムローラ、16…下流側前板、17…エアシリンダ、18…突起、19…レーザ変位センサ、19A…レーザ光、20A,20B…切欠き部、21A,21B…切欠き部、22…ブラケット、23,24…部品