(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20230308BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20230308BHJP
H04N 13/305 20180101ALI20230308BHJP
【FI】
G02B30/56
H04N13/302
H04N13/305
(21)【出願番号】P 2019086016
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】益村 和敬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲史
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-158114(JP,A)
【文献】特開2016-142802(JP,A)
【文献】特開2009-223232(JP,A)
【文献】特開2016-140056(JP,A)
【文献】特開2014-178652(JP,A)
【文献】特開2010-224292(JP,A)
【文献】特開2013-257529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0017089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/00 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に実像を結像するように入射光を反射する空間結像素子及び光を反射する鏡面を有する反射部材を有する光学系を備える表示装置であって、
前記反射部材は、前記空間結像素子によって反射された、被投影物から入射された第一入射光を反射し、第二入射光として前記空間結像素子に入射するように設置され、
前記空間結像素子は、
前記空間結像素子が形成する面に対して、前記被投影物と面対称となる位置に第一実像を結像するように前記第一入射光を反射し、
前記空間結像素子が形成する面に対して、前記反射部材によって生じる前記第一実像の虚像と面対称となる位置に第二実像を結像するように前記第二入射光を反射することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記光学系は前記被投影物の画像を表示する画像表示装置を有し、
前記画像表示装置の表示面は、前記空間結像素子が形成する面に対して
、当該面と平行となる角度より大きく、かつ、当該面に対して直角となる角度より小さい範囲の傾斜角度をなすように設置され、
前記画像表示装置に表示される前記被投影物の画像は、前記第二実像を180度だけ回転させた画像であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記被投影物の画像を前記画像表示装置に出力する画像処理装置を備え、
前記画像処理装置は、
前記反射部材による前記第一実像の反転を解消する画像処理を行った画像データを生成し、
前記画像データを前記画像表示装置に出力することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記空間結像素子及び前記反射部材の間の距離、並びに、前記空間結像素子及び前記画像表示装置の間の距離は、前記光学系において生じる虚像が前記第二実像に重ならないように調整されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記画像表示装置は、立体画像を表示するディスプレイであることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
空間に実像を結像するように入射光を反射する空間結像素子と、光を反射する鏡面を有する第一反射部材及び第二反射部材と、を有する光学系を備える表示装置であって、
前記第一反射部材は、被投影物から入射された第一入射光を反射し、第二入射光として前記空間結像素子に入射するように設置され、
前記第二反射部材は、前記空間結像素子によって反射された前記第二入射光を反射し、第三入射光として前記空間結像素子に入射するように設置され、
前記空間結像素子は、
前記空間結像素子が形成する面に対して、前記第一反射部材によって生じる前記被投影物の虚像と面対称となる位置に第一実像を結像するように前記第二入射光を反射し、
前記空間結像素子が形成する面に対して、前記第二反射部材によって生じる前記第一実像の虚像と面対称となる位置に第二実像を結像するように前記第三入射光を反射することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記被投影物は、前記第二実像を180だけ回転させた向きとなるように前記第一反射部材に投影されることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空中に結像する光学系を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空中に像を結像する光学系として特許文献1及び特許文献2に記載の光学系が知られている。
【0003】
特許文献1には、光学系は、被投影物の像を当該対称面の反対側に実像として結像可能な鏡面反射を利用した結像光学系を、複数並べ相互に離間させて配置すること、結像光学系のうち少なくとも一つを、ハーフミラーと、該ハーフミラーからの透過光若しくは反射光を再帰反射させる位置に配置される再帰反射素子とを具備することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された平板状の構造体からなる第1及び第2の反射型面対称結像素子を備えること、第1の反射型面対称結像素子及び第2の反射型面対称結像素子の各々は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、第1集合体の光反射面が微小ミラーユニットの第1光反射面を構成しかつ前記第2集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの前記第2光反射面を構成することが記載されている。
【0005】
結像光学系(反射型面対称結像素子)は、一方面側に配置される被投影物から発せられた光を、二回以上、鏡面反射させて、被投影物とは反対側の位置に実像を結像する。一枚又は奇数枚の結像光学系を介して結像した立体構造物の実像は、凹凸が反転してしまうという問題がある。
【0006】
前述のような凹凸の反転は、3次元画像を空中に結像する場合に大きな問題となる。具体的には、凹凸の反転が発生していない像と凹凸の反転が発生している像とが混在するため、3次元効果が得られない画像又は不自然な3次元画像として視認される。
【0007】
上記問題を解決するために、特許文献1では、結像光学系を偶数枚用いること記載され、特許文献2では、反射型面対称結像素子を二枚用いることが記載されている。結像光学系(反射型面対称結像素子)を偶数枚用いることによって、立体構造物の実像の凹凸の反転を解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/123473号
【文献】特開2011-81309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、結像光学系(反射型面対称結像素子)は高価であるため、光学系の製造コストが高くとなるという問題がある。
【0010】
本開示は、製造コストを低く抑え、かつ、像の凹凸の反転を解消する光学系を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、空間に実像を結像するように入射光を反射する空間結像素子及び光を反射する鏡面を有する反射部材を有する光学系を備える表示装置であって、前記反射部材は、前記空間結像素子によって反射された、被投影物から入射された第一入射光を反射し、第二入射光として前記空間結像素子に入射するように設置され、前記空間結像素子は、前記空間結像素子が形成する面に対して、前記被投影物と面対称となる位置に第一実像を結像するように前記第一入射光を反射し、前記空間結像素子が形成する面に対して、前記反射部材によって生じる前記第一実像の虚像と面対称となる位置に第二実像を結像するように前記第二入射光を反射する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、製造コストを低く抑え、かつ、像の凹凸の反転を解消する光学系を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態の表示装置の主要な構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の空間結像素子の構造の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態の空間結像素子の結像様式の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の空間結像素子の結像様式の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の光学系の結像様式の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の光学系の光学モデルの一例を示す図である。
【
図7】第3の実施形態の光学系の構造の一例を示す図である。
【
図8A】第4の実施形態の光学系を収容する筐体の一例を示す図である。
【
図8B】第4の実施形態の光学系を収容する筐体の一例を示す図である。
【
図9A】第4の実施形態の光学系を収容する筐体の一例を示す図である。
【
図9B】第4の実施形態の光学系を収容する筐体の一例を示す図である。
【
図10】第5の実施形態の光学系の構成の位置及び大きさの関係を示す図である。
【
図11A】第5の実施形態の光学系によって表示される像の一例を示す図である
【
図11B】第5の実施形態の光学系によって表示される像の一例を示す図である
【
図12】従来の光学系の構成の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を、添付図面を用いて説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の表示装置1の主要な構成の一例を示す図である。
図2は、第1の実施形態の空間結像素子100の構造の一例を示す図である。
図3及び
図4は、第1の実施形態の空間結像素子100の結像様式の一例を示す図である。
図5は、第1の実施形態の光学系10の結像様式の一例を示す図である。
【0016】
表示装置1は、光学系10及び画像処理装置20から構成される。
【0017】
画像処理装置20は、立体的な被投影物の画像データ30の入力を受け付け、ディスプレイ120に出力する。画像データ30は、右眼画像及び左眼画像を含む。画像処理装置20は、例えば、プロセッサ、メモリ、及び外部インタフェースを有する汎用計算機、マイコン等の小型コンピュータ、又は論理回路及びメモリで構成されたハードウェアが考えられる。
【0018】
なお、画像処理装置20には、平面的な被投影物の画像データ30が入力されてもよい。
【0019】
光学系10は、空間結像素子100、平面鏡110、及びディスプレイ120から構成される。
【0020】
第1の実施形態のディスプレイ120は3次元画像を表示する。なお、3次元画像の表示方式としては、レンチキュラレンズ方式及びパララックスバリア方式等が知られている。本開示は、3次元画像の表示方式に限定されない。
【0021】
空間結像素子100は、略平面状の基盤200に任意のパターンで配置された複数のコーナーリフレクタ210から構成される素子である。
【0022】
以下の説明では、任意のパターンで配置された複数のコーナーリフレクタ210をコーナーリフレクタアレイとも記載する。コーナーリフレクタアレイに含まれる各コーナーリフレクタ210は、基盤200に対して同じ向きとなるように形成されている。
【0023】
コーナーリフレクタ210は、基盤200を切削することによって形成された直方体形状の穴の内壁に、鏡面要素211、212を有する。鏡面要素211、212は、例えば、内壁に対して平滑鏡面処理を実行することによって形成される。
図2では、説明のため、コーナーリフレクタ210の鏡面要素211、212を形成する内壁を強調表示している。鏡面要素211、212が形成する平面の角度は略直角である。
【0024】
なお、穴の四つの内壁の内、鏡面要素211、212を形成しない内壁については、多重反射光を抑制することが望ましい。例えば、当該内壁には、平滑鏡面処理を行わないように制御し、又は、内壁がなす角度を制御する。
【0025】
コーナーリフレクタ210は、二つの鏡面要素211、212を用いて、入射光を特定の方向に反射する。
図3では、空間結像素子100に入射された光のZX平面の光路を示す。また、
図4では、空間結像素子100に入射された光のYZ平面の光路を示す。
図3では、空間結像素子100に入射される光の光路を実線で表し、空間結像素子100か
ら出射される光の光路を点線で表す。
【0026】
被投影物Oからランダムに発せられた光の一部は、コーナーリフレクタ210に入射した場合、一つの鏡面要素211に入射し、当該鏡面要素211によって反射されて他の鏡面要素212に入射する。さらに、光は、他の鏡面要素212にて反射され、入射方向とは逆方向に出射される。鏡面要素212に光が入射した場合、鏡面要素212にて反射された光は、鏡面要素211に入射し、さらに、他の鏡面要素211にて反射され、入射方向とは逆方向に出射される。
【0027】
図3は、説明の簡略化のため、模試的に図示している。しかし、実際のコーナーリフレクタ210は非常に微細なものであるため、入射される光と出射される光はほとんど重なる。このため、
図4に示したように、前述の光の光路をYZ平面から見た場合、空間結像素子100の一方の面側に被投影物Oを配置すると、被投影物Oから発せられた光の一部は、空間結像素子100によって内部で2回反射する。被投影物Oからの光で2回反射した光が、空間結像素子100が形成する面に対して被投影物Oと面対称となる位置Pを通過する光となる。したがって、被投影物Oが、空間結像素子100が形成する面に対して被投影物Oと面対称となる位置に実像Pとして結像する。
【0028】
図3及び
図4に示すように、コーナーリフレクタ210から出射される光のX成分及びZ成分の方向は、入射光のX成分及びZ成分の方向と逆になる。また、実像Pは被投影物Oの凹凸が反転した像となる。
【0029】
平面鏡110は、略平面状の鏡である。光学系10において、平面鏡110は入射された光を反射して虚像を映す反射部材として機能する。
【0030】
ここで、光学系10の各構成(空間結像素子100、平面鏡110、及びディスプレイ120)の配置について説明する。
【0031】
ディスプレイ120は、ディスプレイ120の表示面が、空間結像素子100が形成する面(YZ平面)に対して傾斜するように設置する。本開示では、空間結像素子100が形成する面(YZ平面)を0度とする。ディスプレイ120の表示面の傾斜角度を0度とすると、ディスプレイ120から発せられる光線が空間結像素子100に入射しても、空間結像素子100の平面に形成された略直角の鏡面要素211、212でほとんど反射しない。また、ディスプレイ120の表示面の傾斜角度を90度とすると、ディスプレイから発せされる光線が空間結像素子100にほとんど入射しない。空間結像素子100において、光線の反射又は入射がほとんど行われない場合、ディスプレイ120に表示された画像は、空間結像素子100に対して面対称な位置に結像しない。このため、ディスプレイ120の表示面の傾斜角度は、0度より大きくかつ90度より小さい範囲となる。
図1では、空間結像素子100が形成する面に対して45度傾けてディスプレイ120を設定している。
【0032】
平面鏡110は、空間結像素子100が形成する面に対して平行となるように設置する。なお、空間結像素子100から出射された光が空間結像素子100に、再度、入射するように反射できるならば、平面鏡110は、空間結像素子100が形成する面に対して傾けて設置されてもよい。
【0033】
次に、
図5を用いて光学系10によって表示される像について説明する。
【0034】
ディスプレイ120に表示された被投影物P0を表す光は、空間結像素子100に入射される。空間結像素子100に入射された光は、コーナーリフレクタアレイの作用によって、空間結像素子100が形成する面に対して被投影物P0と面対称となる位置に実像P1(第一実像)を結像する。
【0035】
実像P1を結像する光は平面鏡110にて反射され、当該反射光が再び空間結像素子100に入射される。これは、虚像V1の光が空間結像素子100に入射されるのと等価である。
【0036】
平面鏡110から入射された光は、コーナーリフレクタアレイの作用によって、空間結像素子100が形成する面に対して虚像V1と面対称となる位置に実像P2(第二実像)を結像する。
【0037】
このように、被投影物P0から照射された光は、空間結像素子100に二回入射されることから、実像P2の凹凸は被投影物P0の凹凸と一致する。
【0038】
図6は、第1の実施形態の光学系10の光学モデルの一例を示す図である。
【0039】
ディスプレイ120は、レンチキュラレンズ600、複数の右眼用画素611、及び複数の左眼用画素612から構成される。
【0040】
レンチキュラレンズ600は、かまぼこ形状の凹レンズがシート状に並べられたレンズである。凹レンズは、例えば、シリンドリカルレンズである。右眼用画素611及び左眼用画素612から構成される画素のペアに対して一つの凹レンズが対応づけられるように、右眼用画素611、左眼用画素612、及び凹レンズが配置される。なお、右眼用画素611及び左眼用画素612の間には、画像の混色の防止及び画素に表示する信号の伝送を実現するための遮光部を設けてもよい。
【0041】
図1に示すように、ディスプレイ120はY軸に対して45度に傾けて配置されているが、説明のためにディスプレイ120のX軸方向の画素列に着目した光学モデルを示す。
【0042】
右眼用画素611及び左眼用画素612から照射された各光は、レンチキュラレンズ600に入射される。
図6では、右眼用画素611から照射された光の光路を実線で表し、光路の名称には「R」を付す。また、左眼用画素612から照射された光の光路を一点鎖線で表し、光路の名称には「L」を付す。
【0043】
レンチキュラレンズ600によって屈折した光は、空間結像素子100に入射し、コーナーリフレクタアレイの作用によって反射し、入射側の反対へ出射する。空間結像素子100から出射された光は、空間結像素子100が形成する面に対して被投影物P0と面対称となる位置に実像P1を結像する。当該光は、平面鏡110の鏡面にて反射し、再び、空間結像素子100に入射する。
【0044】
空間結像素子100に入射した光は、コーナーリフレクタアレイの作用によって反射し、入射側の反対へ出射する。空間結像素子100から出射された光は、空間結像素子100が形成する面に対して虚像V1と面対称となる位置に実像P2を結像する。
【0045】
図6に示すように、複数の右眼用画素611の各々から照射された光は、右眼用画像が観察可能な領域ER651を形成し、複数の左眼用画素612の各々から照射された光は、左眼用画像が観察可能な領域EL652を形成する。
【0046】
観察者は、右眼が領域ER651に位置し、左眼が領域EL652に位置するように実像P2を観察することによって、空中に結像した立体画像を視認することができる。
【0047】
第1の実施形態によれば、光学系10は、一つの空間結像素子100を用いて、凹凸が被投影物P0と一致する実像P2を結像することができる。したがって、製造コストを低く抑えることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、所望の向きの画像として視認できる実像P2を結像する光学系10について説明する。
【0049】
裸眼にて観測した画像が所望の向きの画像として視認できる画像をディスプレイ120に表示した場合、実像P2は、空間結像素子100の反射によって被投影物P0の上下が逆となり、かつ、平面鏡110の反射によって被投影物P0の左右が反転した像として視認される。すなわち、実像P2は、ディスプレイ120に表示される被投影物P0を180度回転し、また、水平反転した像として視認される。なお、水平反転した像は、垂直方向の軸に対して像を反転させた像を表す。
【0050】
そこで、第2の実施形態では、実像P2が所望の向きの画像として視認できるように、ディスプレイ120の配置及び画像データ30を出力するための画像処理を制御する。
【0051】
具体的には、ディスプレイ120の上方向が空間結像素子100側に向くようにディスプレイ120を設置する。また、画像処理装置20は、所望の向きの画像を水平反転させた画像データ30を生成するための画像処理を実行し、当該画像データ30をディスプレイ120に出力する。
【0052】
なお、ディスプレイ120の向きを変えずに、画像処理のみによって同様の表示を実現してもよい。この場合、画像処理装置20は、実像P2を180度回転させ、かつ、水平反転させた画像データ30を生成するための画像処理を実行する。
【0053】
第2の実施形態によれば、観察者に対して所望の向きの実像P2を提示できる光学系10を実現できる。
【0054】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、画像データ30を出力するための画像処理を制御することなく、所望の向きの画像として視認できる実像P2を結像する光学系10について説明する。
【0055】
図7は、第3の実施形態の光学系10の構造の一例を示す図である。
【0056】
第3の実施形態の光学系10は、新たな構成として、平面鏡700を含む。平面鏡700は、反射した被投影物P0の光が空間結像素子100に入射されるように設置される。具体的には、平面鏡700は、空間結像素子100が形成する面に対して傾きが45度となるように設定する。
【0057】
また、第3の実施形態では、ディスプレイ120の上方向が空間結像素子100側に向くようにディスプレイ120が設置される。平面鏡700には、被投影物P0の上下が逆になっている光が入射される。
【0058】
第3の実施形態の光学系10では、鏡面反射が二回となるため、水平反転の画像処理が必要ない。
【0059】
第3の実施形態によれば、画像処理を行うことなく、観察者に対して所望の向きの実像P2を提示できる光学系10を実現できる。また、第3の実施形態の光学系10は、立体物の実像P2を投影する装置にも適用できる。具体的には、ディスプレイ120の代わりに立体物に置き換えればよい。
【0060】
なお、立体物が自ら光を発しない場合、光学系10に立体物を照らす照明器具を適宜設置できる。
【0061】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、鮮明な実像P2を結像するための表示装置1の構成について説明する。
【0062】
【0063】
図8A及び
図8Bは、開口部810を有する筐体800に収容された光学系10を示す。なお、画像処理装置20が筐体800に収容されてもよい。
【0064】
空間結像素子100、平面鏡110、及びディスプレイ120は、筐体800の内部に収容される。開口部810から出射される光は、空中において実像P2として結像する。
【0065】
図9A及び
図9Bは、カバーで覆われた開口部910を有する筐体900に収容された光学系10を示す。なお、画像処理装置20が筐体900に収容されてもよい。
【0066】
筐体900は、開口部910を有する筐体部分911と、開口部910を覆うカバーを形成する筐体部分912とから構成される。また、ディスプレイ120は、実像P2より上部、すなわち、筐体部分912の上端に設置される。観察者は、筐体部分912の開口部910から出射される光(実像P2)を視認する。
【0067】
図8A及び
図9Aに示すような筐体に光学系10を収容することによって、空間結像素子100の表面の反射光、迷光の影響による虚像、及び平面鏡110に映り込んだ虚像等を観察者から隠すことができる。すなわち、実像P2に視認に影響する光及び像による影響を最小限にすることができる。
【0068】
これによって、実像P2のコントラストの向上し、また、観察者が実像P2の視認に集中することができる。すなわち、実像P2の見やすさが改善する。
【0069】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、観察者が鮮明な実像P2を視認するために光学系10の各構成の位置関係を調整する。
【0070】
図10は、第5の実施形態の光学系10の構成の位置及び大きさの関係を示す図である。
図11A及び
図11Bは、第5の実施形態の光学系10によって表示される像の一例を示す図である。
【0071】
空間結像素子100及びディスプレイ120の間の距離、並びに、空間結像素子100及び平面鏡110の間の距離が適切に調整されていない場合、
図11Aに示すように、実像P2には、被投影物P0及び虚像V2、V3が重なって見える。なお、矩形1101は、光学系10を観察するユーザの見え方を形式的に示す領域である。
【0072】
第5の実施形態では、
図11Bに示すように、被投影物P0及び虚像V2、V3が重ならないように実像P2を表示するための光学系10の各構成の位置関係を説明する。
【0073】
ここで、YZ平面におけるディスプレイ120の大きさ(高さ)をH、ディスプレイ120の中心から照射された光が空間結像素子100に至るまでの距離をD1、平面鏡110において反射された光が空間結像素子100に至るまでの距離をD2とする。また、空間結像素子100及び平面鏡110のZ軸方向の距離をa、空間結像素子100及びディスプレイ120のZ軸方向の距離の最大値をbとする。
【0074】
ここで、観察者が、空間結像素子100が形成する面に対して45度の角度から実像P2を見た場合における虚像の重なりについて実験を行った。なお、実像P2と観察者の目との間の距離は500mmから750mmの間で調整した。
【0075】
実験の結果、D2がD1の4倍以上になるように光学系10の各構成の配置を調整することによって、被投影物P0及び虚像V2、V3が重なっていない実像P2を表示することができることが分かった。また、D1はHの2倍以上であることが好ましいことが分かった。以上のことから、H、D1、及びD2を調整することによって、被投影物P0及び虚像V2、V3が重ならないように実像P2を表示することができることが分かった。
【0076】
なお、H、D1、及びD2の具体的かつ最適な値は、実像P2と観察者の目との間の距離及び実像P2を見る角度等によって定まる。
【0077】
図12は、従来の光学系1200の構成の配置例を示す図である。本開示の光学系10と比較のために、特許文献1に記載の光学系1200の各構成の配置例を示す。
【0078】
ここで、空間結像素子1201、1202間のZ軸方向の距離をa’、空間結像素子1201及びディスプレイ1220のZ軸方向の距離の最大値をb’とする。
【0079】
b’をbと同一とした場合、
図11Bに示すような実像P2を表示するためには、a’はaの約2倍となることが分かった。
【0080】
したがって、本開示の光学系10は、従来の光学系より小型化が可能である。そのため、光学系10を収容する筐体も小型化が可能となる。
【0081】
以上、本願の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 光学系
20 画像処理装置
30 画像データ
100 空間結像素子
110 平面鏡
120 ディスプレイ
200 基盤
210 コーナーリフレクタ
211、212 鏡面要素
600 レンチキュラレンズ
611 右眼用画素
612 左眼用画素
651 領域ER
652 領域EL
700 平面鏡
710 開口部
800、900 筐体
810、910 開口部
911、912 筐体部分
1200 光学系
1201、1202 空間結像素子
1220 ディスプレイ