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特許7240254木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/04 20060101AFI20230308BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20230308BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20230308BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20230308BHJP
   F23G 5/32 20060101ALI20230308BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20230308BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20230308BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F23G7/04 601D
F23G7/04 603D
F23G7/04 603H
F23G7/04 603K
F23G5/46 A
F23L7/00 C
F23L15/00 A
F23G5/32
C02F1/58 B ZAB
C02F11/06 A
C02F11/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019099891
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193764
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】北野 裕樹
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-025876(JP,A)
【文献】特開2009-229333(JP,A)
【文献】特開2010-229206(JP,A)
【文献】特開昭62-265391(JP,A)
【文献】特開昭57-010017(JP,A)
【文献】特開2004-270642(JP,A)
【文献】特開2005-146185(JP,A)
【文献】特開2015-209459(JP,A)
【文献】特開2004-277647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/04
F23G 5/46
F23L 7/00
F23L 15/00
F23G 5/32
C02F 1/58
C02F 11/06
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法であって、前記タール含有廃水をタンクに貯蔵する廃水貯蔵工程と、貯蔵したタール含有廃水を比重差によって重質タールと含水軽質タールとに分離する比重分離工程と、該比重分離した重質タールと含水軽質タールとを個別のタンクに貯蔵するタール貯蔵工程と、前記含水軽質タールを加熱して水分を蒸発させて軽質タールとタール揮発成分を含んだ水蒸気とに分離する加熱分離工程と、前記重質タールを燃焼させるバーナを備えた燃焼処理炉の炉本体内に前記軽質タールと水蒸気とを個別に導入して燃焼処理するタール燃焼処理工程と、前記バーナに供給する燃焼用空気を所定温度に予熱する燃焼用空気予熱工程とを有し、タール含有廃水から分離した重質タールを所定温度まで加熱し、予熱した燃焼用空気を前記燃焼処理炉のバーナに供給しながら重質タールをバーナの燃料として燃焼しつつ、含水軽質タールから分離した軽質タールと水蒸気とを前記炉本体内に導入して燃焼処理することを特徴とする木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法。
【請求項2】
前記燃焼処理炉の予熱運転時には、前記木質バイオマス発電施設にて生成した発電用の熱分解ガスを前記燃焼処理炉の炉本体内に吹き込んで補助燃料として燃焼させることを特徴とする請求項1記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法。
【請求項3】
前記バーナの燃焼用空気を燃焼処理炉から導出される排ガスと熱交換させて予熱することを特徴とする請求項1または2記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法。
【請求項4】
含水軽質タールから加熱分離した水蒸気を前記燃焼処理炉の炉本体の接線方向から導入することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス発電施設にて木質系バイオマスを熱分解して生成した可燃性の熱分解ガスを精製処理するにあたり、副産物として発生する木質系のタール含有廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効利用として、廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスをガス化炉にて無酸素あるいは低酸素下で熱分解して水素やメタンなどを含んだ可燃性の熱分解ガスを生成し、該可燃性の熱分解ガスを精製処理した上でガスエンジン等にて燃焼させて発電に利用する木質バイオマス発電が知られている。
【0003】
なお、熱分解ガスの精製処理時には副産物として多量のタール含有廃水が発生するため、従来、回収した前記タール含有廃水を産業廃棄物として廃棄処理したり、高温に加熱維持した燃焼処理炉に投入して焼却処理するなどしている(特許文献1参照)。
【0004】
また、木質系のタールを単に産廃として廃棄処理したり、焼却処理するのではなく、有価物として利用する一例として、本出願人は、前記タールを予熱することでバーナ燃料として燃焼可能とし、ボイラーやドライヤ等の加熱や乾燥に利用可能なバーナ装置を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-25876号公報
【文献】特開2010-91198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状、重油やプロパンガス等の化石燃料に代えて木質系のタールをバーナ燃料等として有効利用しようとするケースは少なく、多量に余ってしまっている。したがって、前記のように廃棄処理するか、燃焼処理炉等に持ち込んで焼却処理するしかないものの、産廃として廃棄処理するには多額の処理費用が掛かり、また燃焼処理炉での焼却時にも多量の化石燃料を要してそれなりに費用が掛かるため、化石燃料の使用量をできるだけ抑えられて効率よく処理できる処理方法が望まれる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水を効率よく処理可能な処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは、本出願人が以前提案した木質系のタールを燃料とするバーナ装置に着目し、該バーナ装置を燃焼処理炉のバーナに採用すれば、バイオマス発電施設にて発生するタール含有廃水に含まれるタール成分を燃焼処理炉のバーナ燃料として有効利用でき、化石燃料の使用量を低減しながらもタール含有廃水を効率よく処理できるのではないかと考え、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明に係る請求項1記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法では、タール含有廃水をタンクに貯蔵する廃水貯蔵工程と、貯蔵したタール含有廃水を比重差によって重質タールと含水軽質タールとに分離する比重分離工程と、該比重分離した重質タールと含水軽質タールとを個別のタンクに貯蔵するタール貯蔵工程と、前記含水軽質タールを加熱して水分を蒸発させて軽質タールとタール揮発成分を含んだ水蒸気とに分離する加熱分離工程と、前記重質タールを燃焼させるバーナを備えた燃焼処理炉の炉本体内に前記軽質タールと水蒸気とを個別に導入して燃焼処理するタール燃焼処理工程と、前記バーナに供給する燃焼用空気を所定温度に予熱する燃焼用空気予熱工程とを有し、タール含有廃水から分離した重質タールを所定温度まで加熱し、予熱した燃焼用空気を前記燃焼処理炉のバーナに供給しながら重質タールをバーナの燃料として燃焼しつつ、含水軽質タールから分離した軽質タールと水蒸気とを前記炉本体内に導入して燃焼処理することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る請求項2記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法では、前記燃焼処理炉の予熱運転時には、前記木質バイオマス発電施設にて生成した発電用の熱分解ガスを前記燃焼処理炉の炉本体内に吹き込んで補助燃料として燃焼させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る請求項3記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法では、前記バーナの燃焼用空気を燃焼処理炉から導出される排ガスと熱交換させて予熱することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る請求項4記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法では、含水軽質タールから加熱分離した水蒸気を前記燃焼処理炉の炉本体の接線方向から導入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法によれば、タール含有廃水をタンクに貯蔵する廃水貯蔵工程と、貯蔵したタール含有廃水を比重差によって重質タールと含水軽質タールとに分離する比重分離工程と、該比重分離した重質タールと含水軽質タールとを個別のタンクに貯蔵するタール貯蔵工程と、前記含水軽質タールを加熱して水分を蒸発させて軽質タールとタール揮発成分を含んだ水蒸気とに分離する加熱分離工程と、前記重質タールを燃焼させるバーナを備えた燃焼処理炉の炉本体内に前記軽質タールと水蒸気とを個別に導入して燃焼処理するタール燃焼処理工程と、前記バーナに供給する燃焼用空気を所定温度に予熱する燃焼用空気予熱工程とを有し、タール含有廃水から分離した重質タールを所定温度まで加熱し、予熱した燃焼用空気を前記燃焼処理炉のバーナに供給しながら重質タールをバーナの燃料として燃焼しつつ、含水軽質タールから分離した軽質タールと水蒸気とを前記炉本体内に導入して燃焼処理するので、タール含有廃水から分離回収した可燃性の重質タールを燃焼処理炉のバーナ用の燃料として有効利用できる一方、残りの難燃性の含水軽質タールも前記燃焼処理炉の炉本体内に導入することで燃焼処理でき、木質バイオマス発電施設にて発生するタール含有廃水を重油等の化石燃料をできるだけ使用することなく効率よく処理できる。
【0014】
また、本発明に係る請求項2記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法によれば、前記燃焼処理炉の予熱運転時には、前記木質バイオマス発電施設にて生成した発電用の熱分解ガスを前記燃焼処理炉の炉本体内に吹き込んで補助燃料として燃焼させるので、燃焼処理炉の予熱運転時における化石燃料の使用量も低減できる上、早期に予熱運転を完了できてタール含有廃水を効率よく処理できる。また、補助燃料として利用する熱分解ガスは、近傍の木質バイオマス発電施設にて発電用に生成したものを流用するので、比較的簡単にかつ安価に供給できる上、環境負荷の軽減効果も期待できる。
【0015】
また、本発明に係る請求項3記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法によれば、前記バーナの燃焼用空気を燃焼処理炉から導出される排ガスと熱交換させて予熱するので、燃焼処理炉にて発生した排ガスが保有する熱エネルギーを無駄なく有効利用でき、環境負荷を一層軽減することが期待できる。
【0016】
また、本発明に係る請求項4記載の木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法によれば、含水軽質タールから加熱分離した水蒸気を前記燃焼処理炉の炉本体の接線方向から導入するので、水蒸気を炉本体の内壁に沿って旋回させながらバーナからの燃焼ガスと密に接触させることができ、水蒸気に含まれるタール揮発成分を効率よく燃焼処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水の処理方法のフロー図である。
図2】同上の一実施例を示す概略説明図である。
図3図2の燃焼処理炉の一部切り欠き詳細図である。
図4図3の一部を省略したA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る木質系のタール含有廃水の処理方法にあっては、木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水を一時的にタンクに貯蔵する廃水貯蔵工程と、貯蔵したタール含有廃水を適宜の比重分離器にて比較的比重が大きく可燃性の重質タールと比較的比重が小さく水分を多く含んで難燃性の含水軽質タールとに分離する比重分離工程と、該比重分離した重質タールと含水軽質タールとを個別のタンクに貯蔵するタール貯蔵工程とを有する。
【0019】
また、貯蔵した含水軽質タールを加熱して含有水分を蒸発させてタール揮発成分を若干含む水蒸気と軽質タールとに分離する加熱分離工程と、前記重質タールを燃焼させるバーナを備えた燃焼処理炉の炉本体内に前記水蒸気と軽質タールとを個別に導入して燃焼処理するタール燃焼処理工程と、前記バーナに供給する燃焼用空気(外気)を、重質タールの霧化を促進してバーナ燃料として燃焼させ得る所定温度、例えば略200~300℃程度の高温に予熱する燃焼用空気予熱工程とを有する。
【0020】
また、タール含有廃水から分離した高粘度の重質タールをバーナ燃料として円滑に供給可能でかつ微粒化しやすい程度の粘度に調整し得る所定温度、例えば略70~90℃程度に加熱し、予熱した前記燃焼用空気(予熱空気)を前記燃焼処理炉のバーナに供給しながら重質タールをバーナの燃料として燃焼しつつ、含水軽質タールから分離した軽質タールと水蒸気とを高温雰囲気下の前記炉本体内に個別に導入して燃焼処理する。
【0021】
前記燃焼処理炉としては、例えば、内壁面に蓄熱性を有するキャスターを周設した略円筒状の炉本体を備え、該炉本体の基端部には重質タールを圧縮空気と共に噴射する二流体方式の噴射ノズルを具備したバーナと、重油やプロパンガス等の化石燃料を使用する予熱バーナとを並設する。
【0022】
重質タールは常温下では重油等の化石燃料と比較すると高粘度で難燃性であるため、そのままではバーナ燃料として利用することは難しいものの、重質タールを略70~90℃程度に加熱維持して粘度を下げた上で、二流体方式の噴射ノズルを採用して圧縮空気と共に噴射することで微粒化しつつ、燃焼用空気を適宜の加熱手段にて略200~300℃程度の高温に予熱することで重質タールの霧化を促進し、難燃性の重質タールをバーナ燃料として安定して燃焼可能とする。
【0023】
また、好ましくは、前記燃焼処理炉を木質バイオマス発電施設の近傍に併設し、前記燃焼処理炉の予熱運転時に、前記木質バイオマス発電施設にて発電用に生成した熱分解ガスの一部を前記燃焼処理炉の炉本体内に吹き込んで補助燃料として燃焼させるようにしてもよく、これにより予熱運転時における化石燃料の使用量も低減できる上、早期に予熱運転を完了できてタール含有廃水を効率よく処理できる。
【0024】
さらに、好ましくは、前記バーナ用の燃焼用空気(外気)を予熱するにあたり、前記燃焼処理炉から導出される排ガスと熱交換させて予熱するようにしてもよく、これにより燃焼処理炉にて発生した高温の排ガスが保有する熱エネルギーを無駄なく有効利用できる。
【0025】
またさらに、好ましくは、含水軽質タールから加熱分離した水蒸気を前記燃焼処理炉の炉本体の接線方向から導入するようにしてもよく、これにより水蒸気を炉本体の内壁に沿って旋回させながらバーナからの燃焼ガスと密に接触させることができ、水蒸気に含まれるタール揮発成分を効率よく燃焼処理できる。
【0026】
そして、木質バイオマス発電施設にて発生する木質系のタール含有廃水を処理するにあたっては、発生した前記タール含有廃水を廃水貯蔵タンクに随時投入して貯蔵しておく。タール含有廃水は、比較的燃えやすくてバーナ燃料として利用可能な重質タールと、水分を多く含んで比較的燃えにくくバーナ燃料としては不適な含水軽質タールとからなり、前記重質タールは比重が大きい一方、含水軽質タールは比重が小さい特徴を有する。
【0027】
前記特徴(比重差)を利用し、前記廃水貯蔵タンクに貯蔵したタール含有廃水を、例えば重力沈降式や遠心分離式等の適宜の比重分離機にて重質タールと含水軽質タールとに分離し、この比重分離した重質タールと含水軽質タールとをそれぞれ個別の貯蔵タンクに貯蔵する。次いで、比重分離した前記含水軽質タールを加熱して含有水分を蒸発させ、軽質タールとタール揮発成分を含んだ水蒸気とに更に分離する。
【0028】
そして、燃焼処理炉の予熱バーナを点火し、重油やプロパンガス等の化石燃料を燃焼させ、必要に応じて近傍の木質バイオマス発電施設にて発電用に生成した熱分解ガスの一部を前記燃焼処理炉の炉本体内に吹き込んで補助燃料として燃焼させて燃焼処理炉の炉本体内を予熱していき、炉本体内がある程度予熱されれば前記予熱バーナを消火してバーナの燃焼に切り替える。
【0029】
このとき、前記バーナでは重油等の化石燃料と比較すれば高粘度で難燃性の重質タールを燃料とするため、前記重質タールを加熱して粘度を低下させた上で圧縮空気と共に噴射して微粒化しつつ、燃焼用空気も予熱することで噴射した前記重質タールを霧化しながら安定燃焼させる。
【0030】
そして、炉本体内の温度がタール揮発成分や軽質タールを完全燃焼可能な略850℃程度になれば、含水軽質タールから加熱分離した若干のタール揮発成分を含む水蒸気と軽質タールとを前記炉本体内へと個別に導入して燃焼処理する。
【0031】
このように、木質バイオマス発電施設にて発生するタール含有廃水を可燃性の重質タールと難燃性の含水軽質タールとにその比重差を利用して比重分離し、重質タールは加熱昇温した上で微粒化すると共に、燃焼用空気も予熱することによって霧化を促進し、燃焼処理炉のバーナの燃料として有効に利用可能とする一方、含水率が高くてバーナ燃料としては不適な含水軽質タールは加熱してタール揮発成分を含んだ水蒸気と軽質タールとに更に加熱分離した上で、前記バーナからの燃焼ガスが供給される高温雰囲気下の燃焼処理炉の炉本体内に個別に導入することで効率よく燃焼処理でき、重油等の化石燃料の使用量を低減しながらも多くのタール含有廃水を好適に処理できる。
【実施例
【0032】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は木質バイオマス発電施設にて副産物として発生する木質系のタール含有廃水の処理方法を示したフロー図であって、図1中の一点鎖線で囲んだ木質バイオマス発電1に含まれる、ガス化工程2、ガス精製工程3、発電工程4と、前記ガス精製工程3にて発生するタール含有廃水を燃焼処理する、廃水貯蔵工程5、比重分離工程6、タール貯蔵工程7(含水軽質タール貯蔵工程8、重質タール貯蔵工程9)、加熱分離工程10、タール燃焼処理工程11、燃焼用空気予熱工程12とからなる。
【0034】
前記ガス化工程2では、廃木材や間伐材等の木質系のバイオマスを木質バイオマス発電施設のガス化炉にて無酸素下または低酸素下で熱分解して可燃性の熱分解ガスを生成する。また、前記ガス精製工程3では、生成した可燃性の熱分解ガスからガスエンジンでの燃焼時に悪影響を及ぼすタール成分をガス精製機にて除去して精製する。また、前記発電工程4では、精製した熱分解ガスを発電機であるガスエンジンに供給・燃焼させて発電する。
【0035】
また、前記廃水貯蔵工程5では、前記ガス精製工程3にて副産物として発生するタール含有廃水を廃水貯蔵タンクに随時投入して貯蔵する。また、前記比重分離工程6では、前記廃水貯蔵タンクに貯蔵したタール含有廃水を適宜のタイミングで(例えば、廃水貯蔵タンクが略一杯になれば)、水分を多く含んで比較的燃えにくくかつ比重の小さい含水軽質タールと、比較的燃えやすくかつ比重の大きい重質タールとに適宜の比重分離機にて比重分離する。また、前記タール貯蔵工程7のうち、含水軽質タール貯蔵工程8では、タール含有廃水から比重分離した含水軽質タールを含水軽質タール貯蔵タンクに貯蔵し、重質タール貯蔵工程9では、タール含有廃水から比重分離した重質タールを重質タール貯蔵タンクに貯蔵する。
【0036】
また、前記加熱分離工程10では、含水軽質タール貯蔵タンクに貯蔵した難燃性の含水軽質タールをヒータ等の含水軽質タール加熱手段にて略70~90℃程度に加熱し、含有水分を蒸発させてタール揮発成分を若干含む水蒸気と軽質タールとに更に分離する。また、前記タール燃焼処理工程11では、前記重質タールを燃焼させるバーナを備えた燃焼処理炉の炉本体内に前記軽質タールと水蒸気とを個別に導入して燃焼処理する。また、前記燃焼用空気予熱工程12では、前記燃焼処理炉のバーナに供給する燃焼用空気(外気)を、燃焼処理炉から導出される高温の排ガスと熱交換器にて熱交換させて略200~300℃程度に予熱する。
【0037】
そして、前記重質タール貯蔵工程9にて重質タール貯蔵タンクに貯蔵した重質タールをヒータ等の重質タール加熱手段にて、バーナ燃料として円滑に供給可能でかつ微粒化しやすい程度の粘度に調整し得る、略70~90℃程度に加熱した上で、略200~300℃程度に予熱した前記燃焼用空気(予熱空気)を前記燃焼処理炉のバーナに供給しながら重質タールを前記バーナの燃料として燃焼しつつ、前記加熱分離工程10にて含水軽質タールから加熱分離した軽質タールと水蒸気とを高温雰囲気下にある前記燃焼処理炉の炉本体内に個別に導入して燃焼処理するようにしている。
【0038】
図2は、木質バイオマス発電施設、並びに前記タール燃焼処理工程11で使用する燃焼処理炉及びその付帯装置等の一実施例を示す概略説明図である。図2中の13は木質バイオマス発電施設であって、該木質バイオマス発電施設13内には廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを無酸素あるいは低酸素下で熱分解して可燃性の熱分解ガスを生成するガス化炉14、該ガス化炉14にて生成した熱分解ガスを冷却して不純物であるタール成分を凝縮・除去して精製処理するガス精製機15、精製処理した熱分解ガスを貯蔵する熱分解ガス貯蔵タンク16、貯蔵した熱分解ガスを所定量ずつ供給・燃焼させて発電するガスエンジン17等を備えている。18は前記熱分解ガス貯蔵タンク16から前記ガスエンジン17に熱分解ガスを供給する熱分解ガス供給配管である。
【0039】
前記木質バイオマス発電施設13の近傍には、前記ガス精製機15にて熱分解ガスから除去したタール成分を含んだ廃水(タール含有廃水)を貯蔵する廃水貯蔵タンク19を備えていると共に、該廃水貯蔵タンク19に貯蔵したタール含有廃水をバーナ燃料として利用可能な可燃性の重質タールと、含水率が高くてバーナ燃料としては不適な難燃性の含水軽質タールとにそれぞれの比重差を利用して比重分離する、例えば重力沈降式や遠心分離式等の比重分離機20を備えている。
【0040】
また、前記木質バイオマス発電施設13の近傍には、前記廃水貯蔵タンク19及び比重分離機20と併せて、該比重分離機20にてタール含有廃水から分離回収した重質タールを貯蔵する重質タール貯蔵タンク21と、含水軽質タールを貯蔵する含水軽質タール貯蔵タンク22と、前記各貯蔵タンク21、22に貯蔵する重質タール及び含水軽質タールを燃焼処理する燃焼処理炉23とを併設している。
【0041】
前記燃焼処理炉23は、図2、3に示すように、内壁面に蓄熱性・耐熱性のキャスター24を周設した横置き型で略円筒状の炉本体25を備え、該炉本体25の基端部側には重質タールをコンプレッサ26から供給される圧縮空気と共に微粒化しながら噴射する二流体方式の噴射ノズル27を具備したバーナ28と、化石燃料であるプロバンガスを使用する予熱バーナ29とを備えている。
【0042】
また、前記バーナ28や予熱バーナ29の火炎が形成されて特に高温となる前記炉本体25の基端部側には、含水軽質タールから加熱分離したタール揮発成分を含んだ水蒸気を炉本体25の接線方向より導入する水蒸気導入管30を接続し、炉本体25内に導入した水蒸気が、図4中の矢印にて示すように、炉本体25の内壁に周設した蓄熱性のキャスター24表面に沿って旋回しながら下流方向へと流下する構成としている。これにより、前記水蒸気を高温下でバーナ28からの燃焼ガスと密に接触させることができ、水蒸気中に少量しか含まれていないことで燃焼させることの困難なタール揮発成分を効率よく燃焼処理できる。
【0043】
なお、本実施例では、図4に示すように、水蒸気導入管30を二本接続しているが、何らこれに限定されず、例えば一本だけにすることもできる。ただし、本実施例のように、炉本体25の円周方向に沿って接続位置を若干ずらして複数接続することにより、図4中の矢印にて示すように、各水蒸気導入管30から導入される水蒸気同士を合流時に撹拌でき、含有するタール揮発成分の燃焼効率の向上が期待できるものとなる。
【0044】
また、前記水蒸気導入管30の接続位置よりも下流側の前記炉本体25の中間部には、含水軽質タールから加熱分離した軽質タールをコンプレッサ31から供給される圧縮空気と共に微粒化しながら噴射する二流体方式の噴射ノズル32を具備した軽質タール導入管33を接続しており、該軽質タール導入管33から噴射・導入した軽質タールの微粒分が高温下の炉本体25内で霧化し、その状態で前記バーナ28からの燃焼ガスと接触することで効率よく燃焼処理可能な構成としている。
【0045】
なお、前記炉本体25の炉長としては、水蒸気中に含まれるタール揮発成分や軽質タールが略850℃程度の高温雰囲気下で完全燃焼可能な程度、例えば炉本体25基端部の水蒸気導入管30から導入される水蒸気や、炉本体25中間部の軽質タール導入管33から導入される軽質タール微粒分が炉本体25内を通過するのに略2秒以上かかる炉長とすると好ましい。
【0046】
また、前記軽質タール導入管33の接続位置よりも更に下流側の炉本体25の終端部側の内壁面には縮径部(絞り部)34を形成しており、図3中の矢印にて示すように、炉本体25の内壁である蓄熱性のキャスター24表面に沿って旋回しながら下流方向へと流下する水蒸気及び軽質タールの混合気の一部が前記縮径部34にぶつかって上流方向へと押し返されることで炉本体25内に不規則な乱流が生じ、これにより前記バーナ28からの燃焼ガスとの接触機会を増やして水蒸気中に含まれるタール揮発成分や軽質タールの燃焼効率の向上を図っている。
【0047】
図中の35は前記燃焼処理炉23の炉本体25から排ガスを導出する排気ダクトであって、該排気ダクト35の途中には排ガス温度検出用の排ガス温度センサ36と、熱交換器37とを備えている。図中の38は前記バーナ28へ予熱した燃焼用空気を供給する予熱空気供給ダクトであって、該予熱空気供給ダクト38の基端部には送風機39を備えていると共に、予熱空気供給ダクト38の途中を前記熱交換器37と連結しており、前記送風機39から供給される常温の燃焼用空気(外気)を前記炉本体25から導出される高温の排ガスと前記熱交換器37にて熱交換させて予熱する構成としている。
【0048】
なお、本実施例では、前記バーナ28へ供給する燃焼用空気を予熱するにあたり、前記燃焼処理炉23の炉本体25から導出される排ガスと熱交換させて予熱するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ヒータ等で予熱したり、近傍の前記木質バイオマス発電施設13での発電時に発生する高温の排ガスと熱交換させて予熱するようにしてもよい。
【0049】
また、前記予熱空気供給ダクト38には、前記熱交換器37にて予熱した予熱空気の温度を検出する予熱空気温度センサ40と、予熱空気の風量を検出する風量センサ41と、前記バーナ28に供給する予熱空気量を調整する予熱空気量調整ダンパー42とを備えている。
【0050】
予熱空気は予熱温度が高くなるにつれて熱膨張により酸素濃度が低下するため、前記予熱空気温度センサ40、風量センサ41の検出値、及びバーナ28の燃焼量に基づいて前記予熱空気量調整ダンパー42の開度を調整制御し、バーナ28に十分な空気量(酸素量)を供給して安定燃焼可能とする構成としている。なお、前記予熱空気量調整ダンパー42に代えて、前記送風機39をインバータ式として送風機39の送風量を直接調整する構成としても良い。
【0051】
また、前記重質タール貯蔵タンク21からバーナ28の噴射ノズル27へと重質タールを供給する重質タール供給配管43の途中には、供給ポンプ44と、バーナ燃焼量に応じて重質タールの供給量を調整する重質タール供給量調整バルブ45とを備えている。
【0052】
前記重質タール貯蔵タンク21には温水ヒータ46を備えており、該温水ヒータ46にて重質タール温度を略70~90℃程度に加熱維持し、常温付近では高粘度の重質タールの粘度を下げて、前記バーナ28の噴射ノズル27へと円滑に流動でき、かつ噴射時に微粒化しやすいように図っている。
【0053】
また、図中の47は予熱バーナ29に燃料として供給するプロパンガスを貯蔵するガスボンベであって、該ガスボンベ47と前記予熱バーナ29とはガス供給配管48にて連結していると共に、該ガス供給配管48の途中には開閉バルブ49を備えている。なお、前記予熱バーナ29の燃料としては、前記プロパンガスに代えてLNGや重油、灯油等も採用できる。
【0054】
また、前記含水軽質タール貯蔵タンク22にも温水ヒータ50を備えており、該温水ヒータ50にて含水軽質タール貯蔵タンク22内の含水軽質タールを加熱して含有水分を蒸発させ、若干のタール揮発成分を含む水蒸気と軽質タールとに分離する構成としている。水分を多く含む含水軽質タールは重質タール以上に難燃性でバーナ燃料としては不適であり、またそのままでは燃焼させることも容易ではないものの、加熱してタール揮発成分を含む水蒸気と軽質タールとに分離した上で、高温雰囲気下の炉本体25内のバーナ火炎付近に(火炎に直接晒すように)個別に導入させることで前記タール分を十分に燃焼処理可能となる。
【0055】
図中の51は前記含水軽質タール貯蔵タンク22内で加熱分離した軽質タールを、炉本体25中間部の軽質タール導入管33の噴射ノズル32へと供給する軽質タール供給配管であって、該軽質タール供給配管51の途中には供給ポンプ52と、軽質タールの温度を検出する軽質タール温度センサ53とを備えている。
【0056】
なお、軽質タールの温度が100℃以上になると、軽質タール内に若干残留している水分が前記軽質タール供給配管51内で蒸発し、タール成分が濃縮して配管内で閉塞する可能性があるため、前記温水ヒータ50へ供給する温水量調整用の流量調整バルブ54を前記軽質タール供給配管51の軽質タール温度センサ53の検出温度に基づき、例えば検出温度が略70~90℃を維持するように開閉制御する構成としている。
【0057】
図中の55は含水軽質タール貯蔵タンク22内で加熱分離した若干の揮発タール成分を含む水蒸気を、炉本体25基端部の水蒸気導入管30へと供給する水蒸気供給配管であって、該水蒸気供給配管55の途中には送風機56と、三方弁等の流路切替弁57とを備えている。また、図中の58は前記木質バイオマス発電施設13にて生成した熱分解ガスを貯蔵する熱分解ガス貯蔵タンク16と、前記水蒸気供給配管55途中の前記流路切替弁57とを連結する熱分解ガス供給配管である。
【0058】
前記流路切替弁57は、前記燃焼処理炉23の定常運転時には前記含水軽質タール貯蔵タンク22上端部側と連通させるように流路を切り替え、タール揮発成分を含む水蒸気を高温雰囲気下の炉本体25内へと供給して水蒸気中のタール揮発成分を燃焼処理可能とする。一方、燃焼処理炉23の起動時(予熱運転時)には近傍の前記木質バイオマス発電施設13の熱分解ガス貯蔵タンク16と、前記熱分解ガス供給配管58を介して連通させるように流路を切り替え、木質バイオマス発電施設13にて生成した発電用の熱分解ガスの一部を炉本体25内へと供給して予熱バーナ29の火炎に吹き込んで混焼させ、予熱運転時の補助燃料として利用することにより、前記予熱バーナ29の燃料であるプロパンガスの使用量を抑えながらも、早期に予熱運転を完了して定常運転へと切り替え可能としている。
【0059】
なお、図2に示すように、前記熱分解ガス貯蔵タンク16には、貯蔵する熱分解ガスを発電用にガスエンジン17へと供給するメインの熱分解ガス供給配管18と、予熱運転用に燃焼処理炉23へと供給するサブの熱分解ガス供給配管58とを併設しており、前記熱分解ガス貯蔵タンク16にある程度余裕を持って熱分解ガスを貯蔵しておけば、ガスエンジン17と燃焼処理炉23の両方に同時に熱分解ガスを供給可能としており、例えば、発電を行いながら燃焼処理炉23の予熱運転にも利用できる構成としている。
【0060】
また、本実施例では、前記熱分解ガス供給配管58を水蒸気供給配管55途中の流路切替弁57に連結し、熱分解ガス貯蔵タンク16から供給される熱分解ガスを一旦水蒸気供給配管55を経由させて燃焼処理炉23の炉本体25内に供給する構成としたが、例えば、前記熱分解ガス供給配管58を前記炉本体25に直結し、熱分解ガス貯蔵タンク16から供給される熱分解ガスを炉本体25内に直接供給する構成とすることもできる。
【0061】
図中の59は前記燃焼処理炉23やその付帯装置の運転制御用のタール燃焼制御器であって、前記各種センサ類からの検出値及び各機器への制御信号等を入出力する入出力部や、各種設定値を登録する設定記憶部、及びこれら各種の検出値や設定値等を基に各種制御を実行する制御部等を具備している。
【0062】
そして、木質バイオマス発電施設13にて発生する木質系のタール含有廃水を処理するにあたっては、発生したタール含有廃水を木質バイオマス発電施設13近傍の廃水貯蔵タンク19に随時投入して貯蔵しておく。そして、前記廃水貯蔵タンク19がタール含有廃水で略一杯になれば、隣接する比重分離機20にて比較的軽量な含水軽質タールと比較的重量な重質タールとに比重分離し、分離した含水軽質タールは含水軽質タール貯蔵タンク22に、重質タールは重質タール貯蔵タンク21にそれぞれ投入して個別に貯蔵する。
【0063】
そして、前記含水軽質タール貯蔵タンク22、重質タール貯蔵タンク21に貯蔵した含水軽質タール、重質タールを前記燃焼処理炉23にて処理するときには、先ず、前記含水軽質タール貯蔵タンク22の温水ヒータ50に温水を供給し、貯蔵した含水軽質タールを略70~90℃に加熱して含有水分を蒸発させ、若干のタール揮発成分を含む水蒸気と軽質タールとに加熱分離する。また、前記重質タール貯蔵タンク21の温水ヒータ46にも温水を供給し、重質タールを略70~90℃に加熱維持し、常温では高粘度で難燃性の重質タールを円滑に供給可能でかつ微粒化しやすい程度まで粘度を低下させる。
【0064】
次いで、前記予熱バーナ29にプロパンガスを供給して着火燃焼して予熱運転を開始すると共に、前記水蒸気供給配管55途中の流路切替弁57を前記木質バイオマス発電施設13の熱分解ガス貯蔵タンク16と連通させるように流路を切り替え、木質バイオマス由来の熱分解ガスを炉本体25内へと供給して予熱バーナ29のバーナ火炎中に吹き込んで混焼させ、予熱運転時の補助燃料として利用することにより、前記予熱バーナ29のプロパンガスの使用量を抑えながらも、早期に予熱運転を完了可能とする。
【0065】
そして、前記炉本体25内がある程度予熱され、例えば排気ダクト35から導出される排ガス温度が略500℃以上となれば、前記送風機39を駆動させて燃焼用空気(外気)を供給し、途中の熱交換器37にて前記高温の排ガスと熱交換させて重質タールを霧化しやすい略200~300℃程度に予熱した上で、前記予熱空気供給ダクト38を介してバーナ28へと供給する。なお、本発明者らが実施した実験データによれば、排ガス温度が略500℃以上となれば、常温の燃焼用空気を熱交換後に略200~300℃程度に予熱できることを確認している。
【0066】
次いで、前記重質タール供給配管43の供給ポンプ44、及びコンプレッサ26を駆動し、二流体方式の噴射ノズル27から圧縮空気と共に重質タールを微粒化しながら噴射すると共に、前記予熱空気供給ダクト38の予熱空気温度センサ40、風量センサ41の検出値、及びバーナ28の燃焼量に基づき、予熱空気の予熱温度に応じた熱膨張の影響を加味した上で前記予熱空気量調整ダンパー42の開度を調整制御しながらバーナ28を着火燃焼させ、前記予熱バーナ29は消火する。
【0067】
なお、前記木質バイオマス発電施設13の熱分解ガス貯蔵タンク16からの熱分解ガスの供給は、予熱バーナ29の消火のタイミングに合わせて停止しても良いが、炉本体25内をより迅速に昇温させて予熱運転を早期に完了しようとするのであれば、予熱バーナ29の消火後も前記熱分解ガスを継続して炉本体25内に供給し、前記予熱バーナ29の近傍に位置するバーナ28の火炎中に吹き込んで混焼させると良い。
【0068】
そして、前記排ガス温度センサ36にて検出される排ガス温度が、タール揮発成分や軽質タール微粒分を完全燃焼可能な略850℃となれば予熱運転を終了して定常運転に移行する。
【0069】
定常運転に移行すると、前記流路切替弁57の流路を含水軽質タール貯蔵タンク22上端部と連通する側に切り替え、該含水軽質タール貯蔵タンク22にて加熱分離した若干のタール揮発成分を含む水蒸気を水蒸気供給配管55、水蒸気導入管30を介して燃焼処理炉23の炉本体25の基端部よりその接線方向から炉本体25内へと導入すると共に、前記含水軽質タール貯蔵タンク22底部側と連結した軽質タール供給配管51の供給ポンプ52、及びコンプレッサ31を駆動し、二流体方式の噴射ノズル32から圧縮空気と共に軽質タールを微粒化しながら炉本体25の中間部より炉本体25内へと導入する。
【0070】
そして、略850℃以上の高温雰囲気下の炉本体25基端部より導入した水蒸気は炉本体25の内壁である蓄熱性のキャスター24表面に沿って旋回しながら下流方向へと流下していき、その間に前記バーナ28からの燃焼ガスと密に接触し、これにより水蒸気中に少量しか含まれていないことで燃焼させることの困難なタール揮発成分は効率よく燃焼処理される。また、炉本体25の中間部から噴射・導入される軽質タール微粒分は高温の炉本体25内で容易に霧化し、その状態で、前記同様にバーナ28からの燃焼ガスと接触することで効率よく燃焼処理される。
【0071】
このように、本発明は、従来、木質バイオマス発電施設で副産物として発生し、あまり有効な用途もなくて多量に余っており、そのまま燃焼処理しようとしても多くの化石燃料を要していたタール含有廃水が、バーナ燃料として有効利用可能な重質タールを含んでいる点に着目したものであり、タール含有廃水を重質タールと含水軽質タールとに比重分離した上で、前記重質タールは化石燃料に代えて燃焼処理炉23のバーナ28用の燃料として有効利用する一方、残りの難燃性でバーナ燃料としては不適な含水軽質タールはタール揮発成分を含む水蒸気と軽質タールとに更に加熱分離した上で前記燃焼処理炉23の炉本体25内に個別に導入することで前記タール分を効率よく燃焼処理可能としている。これにより、木質バイオマス発電施設を操業する上でネックとなっていたタール含有廃水を化石燃料の使用量を抑えながら好適に処理でき、環境負荷低減施設である木質バイオマス発電施設の普及にも寄与できるものとなる。
【0072】
また、前記燃焼処理炉23を木質バイオマス発電施設13の近傍に設置し、該木質バイオマス発電施設13にて生成される発電用の熱分解ガスの一部を前記燃焼処理炉23に供給してその予熱運転用の補助燃料として活用するようにすれば、予熱運転時の化石燃料の使用量を抑えながらも予熱運転を早期に完了できて定常運転に切り替えられるといった効果も期待できてより好適なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、木質バイオマス発電施設にて副産物として発生する木質系のタール含有廃水の処理方法として広く利用できる。
【符号の説明】
【0074】
2…ガス化工程 3…ガス精製工程
4…発電工程 5…廃水貯蔵工程
6…比重分離工程 7…タール貯蔵工程
8…重質タール貯蔵工程(タール貯蔵工程)
9…含水軽質タール貯蔵工程(タール貯蔵工程)
10…加熱分離工程 11…タール燃焼処理工程
12…燃焼用空気予熱工程
13…木質バイオマス発電施設
14…ガス化炉(木質バイオマス発電施設)
15…ガス精製機(木質バイオマス発電施設)
16…熱分解ガス貯蔵タンク(木質バイオマス発電施設)
17…ガスエンジン(木質バイオマス発電施設)
18、58…熱分解ガス供給配管 19…廃水貯蔵タンク
20…比重分離機 21…重質タール貯蔵タンク
22…軽質タール貯蔵タンク 23…燃焼処理炉
24…キャスター 25…炉本体
26、31…コンプレッサ 27、32…噴射ノズル
28…バーナ 29…予熱バーナ
30…水蒸気導入管 33…軽質タール導入管
34…縮径部 35…排気ダクト
37…熱交換器 38…予熱空気供給ダクト
39…送風機 40…予熱空気温度センサ
41…風量センサ 42…予熱空気量調整ダンパー
43…重質タール供給配管 46、50…温水ヒータ
51…軽質タール供給配管 55…水蒸気供給配管
57…流路切替弁 59…タール燃焼制御器
図1
図2
図3
図4