(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】多色成形レンズ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20230308BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2019113234
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】片山 征史
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107322876(CN,A)
【文献】特開2009-051183(JP,A)
【文献】特開2000-182409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに色の異なる1次および2次成形品を備えた多色成形レンズであって、内表面に防曇塗装膜が形成された多色成形レンズにおいて、
上記1次および2次成形品は、1次成形品が2次成形品を囲むように配置されており、
上記防曇塗装膜は、上記1次成形品
の内周端面と上記2次成形品
の外周端面とが面接触することによって構成される接合面の位置を跨ぐようにして形成されており、
上記1次成形品に、上記接合面から上記2次成形品の内表面に沿って該2次成形品に被さるようにして延びる被せ部が延長形成されている、ことを特徴とする多色成形レンズ。
【請求項2】
上記1次成形品は、上記被せ部の近傍に位置する被せ部近傍領域よりも該被せ部近傍領域の周囲に位置する一般領域の方が薄肉で形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の多色成形レンズ。
【請求項3】
上記被せ部は、該被せ部の先端面が上記2次成形品の内表面へ向けて傾斜して延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の多色成形レンズ。
【請求項4】
上記被せ部の先端面の傾斜角度が30~60°の値に設定されている、ことを特徴とする請求項3記載の多色成形レンズ。
【請求項5】
上記2次成形品において該2次成形品の内表面と上記接合面との角部に形成されるコーナーRが、R0.1~0.5mmの値に設定されている、ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の多色成形レンズ。
【請求項6】
上記接合面と上記2次成形品の内表面との挟角が95°以上の値に設定されている、ことを特徴とする請求項1~5いずれか記載の多色成形レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内表面に防曇塗装膜が形成された多色成形レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リアコンビネーションランプ等の車両用灯具においては、互いに色の異なる1次および2次成形品を備えた多色成形レンズが多く用いられている。
【0003】
「特許文献1」には、このような多色成形レンズの構成として、2次成形品としての赤色レンズが1次成形品としての白色レンズを囲むように配置されたものが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された多色成形レンズにおいては、1次成形品の外周縁部および2次成形品の内周縁部にそれぞれ立ち上げリブが形成されており、1次成形品の立ち上げリブの外周面と2次成形品の立ち上げリブの内周面とが接合された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多色成形レンズにおいて、これを外部から観察したときの見映え向上を図るためには、1次および2次成形品に形成された立ち上げリブを廃止して、その端面同士が接合された構成することが好ましい。
【0007】
これを実現するため、多色成形レンズの構成として、上記「特許文献1」に記載された構成とは逆に、1次成形品が2次成形品を囲むように配置された構成を採用することにより、2次成形用の金型に対して1次成形品が容易に支持され得る構成とすることが考えられる。
【0008】
しかしながら、多色成形レンズの構成として、その内表面に防曇塗装膜が形成されており、かつ、この防曇塗装膜が1次成形品と2次成形品との接合面の位置を跨ぐようにして形成されている場合には、次のような問題が生じてしまう。
【0009】
すなわち、1次成形品には、その内表面と上記接合面となるべき端面との角部にコーナーRが不可避的に形成され、これをピン角(すなわちR0)で形成することはできない。このため多色成形レンズには、その内表面における1次成形品と2次成形品との接合面の位置に、略楔形の断面形状を有する溝状の口開き部が形成されてしまう。
【0010】
その後、多色成形レンズの内表面に防曇塗装膜が形成されると、口開き部に溜まった防曇塗料の溶剤が1次成形品や2次成形品の内部に含浸してしまい、これにより1次成形品や2次成形品における口開き部の周辺領域にクラックが発生しやすくなる。
【0011】
このようにして発生したクラックは多色成形レンズの外部から見えてしまうので、外観不良が発生する原因となってしまう。
【0012】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、内表面に防曇塗装膜が形成された多色成形レンズにおいて、外観不良の発生を効果的に抑制することができる多色成形レンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、1次成形品の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0014】
すなわち、本願発明に係る多色成形レンズは、
互いに色の異なる1次および2次成形品を備えた多色成形レンズであって、内表面に防曇塗装膜が形成された多色成形レンズにおいて、
上記1次および2次成形品は、1次成形品が2次成形品を囲むように配置されており、
上記防曇塗装膜は、上記1次成形品の内周端面と上記2次成形品の外周端面とが面接触することによって構成される接合面の位置を跨ぐようにして形成されており、
上記1次成形品に、上記接合面から上記2次成形品の内表面に沿って該2次成形品に被さるようにして延びる被せ部が延長形成されている、ことを特徴とするものである。
【0015】
上記「多色成形レンズ」は、互いに色の異なる1次および2次成形品を備えていれば、1次および2次成形品の各々の具体的な色は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「多色成形レンズ」は、1次および2次成形品の各々が素通しレンズ状に形成された構成となっていてもよいし、1次および2次成形品のいずれか一方または両方に光制御機能が付与された構成となっていてもよい。
【0017】
上記「1次および2次成形品」は、1次成形品が2次成形品を囲むように配置されていれば、1次および2次成形品の各々の具体的な形状は特に限定されるものではなく、また、1次成形品は2次成形品を全周にわたって囲むように配置されていてもよいし2次成形品を部分的に囲むように配置されていてもよい。
【0018】
上記「防曇塗装膜」は、1次成形品と2次成形品との接合面の位置を跨ぐようにして形成されていれば、その具体的な形成範囲は特に限定されるものではない。
【0019】
上記「被せ部」は、1次成形品と2次成形品との接合面から2次成形品の内表面に沿って2次成形品に被さるようにして延びていれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る多色成形レンズは、2次成形品を囲むように配置された1次成形品に、2次成形品との接合面から該2次成形品の内表面に沿って該2次成形品に被さるようにして延びる被せ部が延長形成された構成となっているので、多色成形レンズの内表面における1次成形品と2次成形品との接合面の位置に溝状の口開き部が形成されてしまうのを未然に防止することができる。
【0021】
したがって、この口開き部に溜まった防曇塗料の溶剤が1次成形品や2次成形品の内部に含浸することによってその口開き部の周辺領域にクラックが発生してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、このようなクラックが多色成形レンズの外部から見えてしまうことによる外観不良の発生を未然に防止することができる。
【0022】
このように本願発明によれば、内表面に防曇塗装膜が形成された多色成形レンズにおいて、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0023】
上記構成において、さらに、1次成形品の構成として、被せ部の近傍に位置する被せ部近傍領域よりも該被せ部近傍領域の周囲に位置する一般領域の方が薄肉で形成された構成とすれば、多色成形レンズの大半の領域を略一定の肉厚で形成することが容易に可能となり、これにより多色成形レンズの軽量化を図ることができる。
【0024】
上記構成において、さらに、1次成形品の被せ部の構成として、その先端面が2次成形品の内表面へ向けて傾斜して延びるように形成された構成とすれば、1次成形品の被せ部の先端面と2次成形品の内表面との接続部分に防曇塗料が溜まりにくい構成とすることができる。したがって、この接続部分に溜まった防曇塗料の溶剤が2次成形品の内部に含浸して2次成形品にクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0025】
その際、この被せ部の先端面の傾斜角度が30~60°の値に設定された構成とすれば、1次成形品を成形する際、その被せ部用の空間への溶融樹脂の充填性を十分に確保した上で、1次成形品の被せ部の先端面と2次成形品の内表面との接続部分に防曇塗料が溜まりにくくする効果を高めることができる。
【0026】
上記構成において、さらに、2次成形品においてその内表面と1次成形品との接合面との角部に形成されるコーナーRが、R0.1~0.5mmの値に設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0027】
すなわち、1次成形用の金型も、このようなコーナーRを有する2次成形品の表面形状に沿った表面形状を有するものとなるので、1次成形品を成形する際、その被せ部用の空間への溶融樹脂の充填性を十分に確保した上で、被せ部の被せ幅を小さく抑えることができる。そしてこれにより多色成形レンズの見映え向上を図ることができる。
【0028】
上記構成において、さらに、1次成形品と2次成形品との接合面と2次成形品の内表面との挟角が95°以上の値に設定された構成とすれば、1次成形品を成形する際、その被せ部用の空間への溶融樹脂の充填性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る多色成形レンズを示す正面図
【
図3】(a)は
図2のIII 部詳細図、(b)は上記実施形態の比較例を示す(a)と同様の図
【
図4】上記多色成形レンズの製造工程を、
図3(a)と同じ断面位置で示す図
【
図5】上記実施形態の第1~第3変形例を示す、
図2と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本願発明の一実施形態に係る多色成形レンズ10を示す正面図であり、
図2は、
図1のII-II線断面図である。
【0032】
本実施形態に係る多色成形レンズ10は、車両の右後端部に装着されるリアコンビネーションランプの透光カバーであって、車両装着時には、その外表面10aが車体の表面形状に沿って延びる意匠面を構成するようになっている。
【0033】
図1および2において、Xで示す方向が多色成形レンズ10としての「前方」(車両としては「後方」)であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「右方向」(車両としても「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0034】
図1および2に示すように、本実施形態に係る多色成形レンズ10は、互いに色の異なる1次および2次成形品10P、10Sを備えた構成となっている。その際、この多色成形レンズ10においては、1次成形品10Pが2次成形品10Sを囲むように配置された構成となっている。
【0035】
1次成形品10Pは、テール&ストップランプ用レンズであって、赤色透明の樹脂製(例えばPMMA製)の素通しレンズとして構成されている。この1次成形品10Pの内表面10Pbの外周縁部には環状のシール用脚部10Pdが形成されており、このシール用脚部10Pdにおいて多色成形レンズ10がランプボディ(図示せず)に対して固定されるようになっている。この1次成形品10Pは、灯具正面視においてやや横長の略台形状の外形形状を有している。
【0036】
2次成形品10Sは、バックアップランプ用レンズであって、無色透明の樹脂製(例えばPMMA製)の素通しレンズとして構成されている。この2次成形品10Sは、1次成形品10Pの中央下部領域に位置しており、灯具正面視において横長の略台形状の外形形状を有している。
【0037】
多色成形レンズ10には、その内表面10bに防曇塗装膜12が形成されている。この防曇塗装膜12は、2次成形品10Sの内表面10Sbの全領域および1次成形品10Pの内表面10Pbにおけるシール用脚部10Pdよりも内周側に位置する領域を覆うように形成されている。
【0038】
多色成形レンズ10における1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10cは、1次成形品10Pの内周端面と2次成形品10Sの外周端面とが面接触することによって構成されている。その際、この接合面10cは、多色成形レンズ10の外表面10aから内表面10bへ向けて内周側(すなわち2次成形品10S側)に傾斜した方向に延びる傾斜面として構成されている。
【0039】
1次成形品10Pには、接合面10cから2次成形品10Sの内表面10Sbに沿って該2次成形品10Sに被さるようにして延びる被せ部10Peが延長形成されている。この被せ部10Peは接合面10cの全周にわたって形成されており、その先端面10Pe1は2次成形品10Sの内表面10Sbへ向けて傾斜して延びる傾斜面として構成されている。
【0040】
1次成形品10Pは、その被せ部10Peの近傍に位置する被せ部近傍領域10P1よりも該被せ部近傍領域10P1の周囲に位置する一般領域10P0の方が薄肉で形成されている。具体的には、1次成形品10Pは、その内表面10Pbが被せ部近傍領域10P1の外周部分において一般領域10P0へ向けて外表面10a側に僅かに傾斜するように形成されており、これにより一般領域10P0の肉厚が2次成形品10Sの肉厚と略同じ値に設定されている。
【0041】
【0042】
図3(a)に示すように、1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10cは、該接合面10cと2次成形品10Sの内表面10Sbとの挟角θ1がθ1=95°以上の値(例えばθ1=100°程度の値)に設定されている。
【0043】
また、被せ部10Peの先端面10Pe1の傾斜角度θ2は、θ2=30~60°の値(例えばθ2=45°程度の値)に設定されている。
【0044】
2次成形品10Sには、その内表面10Sbと接合面10cとの角部10Sfに、RA=R0.1~0.5mmの値(例えばRA=R0.3mm程度の値)のコーナーRが形成されている。
【0045】
また、被せ部10Peの被せ幅(すなわち角部10Sfにおける接合面10c側のR止まりの位置から先端面10Pe1の先端位置までの幅)Wは、W=0.5~1mm程度の値(例えばW=0.8mm程度の値)に設定されている。
【0046】
そして、被せ部10Peの被せ厚(すなわち前後方向の厚み)Tは、T=0.4~1mm程度の値(例えばT=0.5mm程度の値)に設定されている。
【0047】
一方、
図3(b)は、本実施形態に係る多色成形レンズ10の比較例としての多色成形レンズ50を示す、
図3(a)と同様の図である。なお、この多色成形レンズ50の構成については後述する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る多色成形レンズ10の製造工程を、
図3(a)と同じ断面位置で示す図である。
【0049】
まず、
図4(a)に示すように、1次成形用の金型を構成するコア型102とキャビティ型104とを型締めして、その金型内空間C1に溶融樹脂Rs1を射出して充填することにより、
図4(b)に示すような1次成形品10Pを成形する。
【0050】
次に、
図4(b)に示すように、成形された1次成形品10Pを支持したままの状態にあるコア型102と図示しないキャビティ型とを型締めして、その金型内空間C2に溶融樹脂Rs2を射出して充填することにより、
図4(c)に示すような2次成形品10Sを成形し、これにより多色成形レンズ10の成形を完了する。
【0051】
次に、
図4(d)に示すように、成形された多色成形レンズ10に対して、その内表面10bに防曇塗装膜12を形成する。この防曇塗装膜12の形成は、例えば、多色成形レンズ10の内表面10bに沿ってスプレーガンのノズルを移動させながら、このノズルから防曇塗料を内表面10bに吹き付けることにより行う。その際、防曇塗料としては、例えば、アクリル樹脂、界面活性剤、硬化剤(触媒)等からなるアクリル系防曇塗料等が採用可能である。
【0052】
その後、多色成形レンズ10を加熱することにより、その内表面10bに塗布された防曇塗装膜12を硬化させる。この加熱硬化は、例えば、多色成形レンズ10を加熱炉に入れてその内表面10bを120℃程度の温風で熱することによって行う。
【0053】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態に係る多色成形レンズ10は、2次成形品10Sを囲むように配置された1次成形品10Pに、2次成形品10Sとの接合面10cから該2次成形品10Sの内表面10Sbに沿って該2次成形品10Sに被さるようにして延びる被せ部10Peが延長形成された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0055】
すなわち、本実施形態の比較例として
図3(b)に示す多色成形レンズ50においては、本実施形態に係る多色成形レンズ10と同様、1次成形品50Pと2次成形品50Sとの接合面50cが1次および2次成形品50P、50Sの端面同士が面接触することによって構成されているが、1次成形品50Pには本実施形態の被せ部10Peのような被せ部が延長形成されていない。
【0056】
このような多色成形レンズ50の1次成形品50Pにおいては、その内表面50Pbと接合面50cとなるべき端面との角部にコーナーRが不可避的に形成され、これをピン角で形成することはできない。このため、多色成形レンズ50の内表面50bにおける接合面50cの位置には、略楔形の断面形状を有する溝状の口開き部50hが形成されてしまう。
【0057】
このような多色成形レンズ50に対して、その内表面50bに防曇塗装膜52が形成されると、口開き部50hに溜まった防曇塗料の溶剤が1次成形品50Pや2次成形品50Sの内部に含浸してしまい、これにより1次成形品50Pや2次成形品50Sにおける口開き部50hの周辺領域にクラックCR1、CR2が発生しやすくなる。
【0058】
このようにして発生したクラックCR1、CR2は多色成形レンズ50の外部から見えてしまうので、外観不良が発生する原因となってしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態に係る多色成形レンズ10には、その1次成形品10Pに被せ部10Peが延長形成されているので、多色成形レンズ10の内表面10bにおける1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10cの位置に、上記比較例としての多色成形レンズ50において形成される口開き部50hのような口開き部が形成されてしまうことはない。
【0060】
したがって、本実施形態に係る多色成形レンズ10においても、接合面10cの部分が多色成形レンズ10の外部から(すなわち外表面10a側の空間から)見えてしまうが、接合面10cの周辺領域に防曇塗装膜12の形成に起因するクラックが発生することはないので、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0061】
このように本実施形態によれば、内表面10bに防曇塗装膜12が形成された多色成形レンズ10において、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
しかも、本実施形態の1次成形品10Pは、その被せ部10Peの近傍に位置する被せ部近傍領域10P1よりも該被せ部近傍領域10P1の周囲に位置する一般領域10P0の方が薄肉で形成されているので、多色成形レンズ10の大半の領域を略一定の肉厚で形成することが容易に可能となり、これにより多色成形レンズ10の軽量化を図ることができる。
【0063】
また、1次成形品10Pの被せ部10Peは、その先端面10Pe1が2次成形品10Sの内表面10Sbへ向けて傾斜して延びるように形成されているので、この先端面10Pe1と2次成形品10Sの内表面10Sbとの接続部分に防曇塗料が溜まりにくい構成とすることができる。したがって、この接続部分に溜まった防曇塗料の溶剤が2次成形品10Sの内部に含浸して2次成形品10Sにクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0064】
その際、この被せ部10Peの先端面10Pe1は、その傾斜角度θ2がθ2=30~60°の値に設定されているので、1次成形品10Pを成形する際、その被せ部10Pe用の空間C1a(
図4(a)参照)への溶融樹脂Rs1の充填性を十分に確保した上で、1次成形品10Pの被せ部10Peの先端面10Pe1と2次成形品10Sの内表面10Sbとの接続部分に防曇塗料が溜まりにくくする効果を高めることができる。
【0065】
本実施形態においては、2次成形品10Sにおいてその内表面10Sbと1次成形品10Pとの接合面10cとの角部10Sfに形成されるコーナーRが、RA=R0.1~0.5mmの値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0066】
すなわち、1次成形用の金型を構成するキャビティ型104も、このようなコーナーRを有する2次成形品10Sの表面形状に沿った表面形状を有するものとなるので、1次成形品10Pを成形する際、その被せ部10Pe用の空間C1aへの溶融樹脂Rs1の充填性を十分に確保した上で、被せ部10Peの被せ幅Wを小さく抑えることができる。そしてこれにより多色成形レンズ10の見映え向上を図ることができる。
【0067】
本実施形態においては、1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10cと2次成形品10Sの内表面10Sbとの挟角θ1がθ1=95°以上の値に設定されているので、1次成形品10Pを成形する際、その被せ部10Pe用の空間C1aへの溶融樹脂Rs1の充填性を向上させることができる。
【0068】
上記実施形態においては、多色成形レンズ10が車両用リアコンビネーションランプの透光カバーであるものとして説明したが、これ以外の用途に用いられる場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
上記実施形態においては、1次および2次成形品10P、10Sがいずれも素通しレンズとして構成されているものとして説明したが、その内表面10Pb、10Sbの所要領域にレンズ素子が形成された構成とすることも可能である。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0072】
図5(a)は、本変形例に係る多色成形レンズ110の要部を示す、
図2と同様の図である。
【0073】
図5(a)に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、1次および2次成形品110P、110Sの色が上記実施形態の場合と異なっている。
【0074】
すなわち、本変形例に係る多色成形レンズ110は、1次成形品110Pが無色透明の樹脂製レンズとして構成されており、2次成形品110Sがアンバー色透明の樹脂製レンズとして構成されている。
【0075】
本変形例に係る多色成形レンズ110においても、1次および2次成形品110P、110Sの各々の形状に関しては上記実施形態の場合である。
【0076】
すなわち、1次成形品110Pには、2次成形品110Sとの接合面110cから2次成形品110Sの内表面110Sbに沿って2次成形品110Sに被さるようにして延びる被せ部110Peが延長形成されている。
【0077】
また、多色成形レンズ110の内表面110bには、防曇塗装膜12が接合面110cの位置を跨ぐようにして形成されている。
【0078】
本変形例に係る多色成形レンズ110においても、接合面110cの部分が多色成形レンズ110の外部から(すなわち外表面110a側の空間から)見えてしまうが、接合面110cの周辺領域に防曇塗装膜12の形成に起因するクラックが発生することはないので、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0079】
したがって、本変形例の構成を採用した場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
なお、1次および2次成形品110P、110Sの代わりに、同系色ではあるが濃度が異なる色(例えば1次成形品110Pが桃色透明で2次成形品110Sが赤色透明)の樹脂製レンズでこれらを構成することも可能である。
【0081】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0082】
図5(b)は、本変形例に係る多色成形レンズ210の要部を示す、
図2と同様の図である。
【0083】
図5(b)に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、1次成形品210Pの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0084】
すなわち、本変形例に係る多色成形レンズ210においては、1次成形品210Pが黒色不透明の樹脂製部材として構成されている。
【0085】
一方、本変形例に係る多色成形レンズ210においても、2次成形品210Sは、上記実施形態の場合と同様、無色透明の樹脂製レンズとして構成されている。
【0086】
また、本変形例に係る多色成形レンズ210においても、1次および2次成形品210P、210Sの各々の形状に関しては上記実施形態の場合である。
【0087】
すなわち、1次成形品210Pには、2次成形品210Sとの接合面210cから該2次成形品210Sの内表面210Sbに沿って該2次成形品210Sに被さるようにして延びる被せ部210Peが延長形成されている。
【0088】
また、多色成形レンズ210の内表面210bには、防曇塗装膜12が接合面210cの位置を跨ぐようにして形成されている。
【0089】
本変形例に係る多色成形レンズ210においても、接合面210cの部分が多色成形レンズ210の外部から(すなわち外表面210a側の空間から)見えてしまうが、接合面210cの周辺領域に防曇塗装膜12の形成に起因するクラックが発生することはないので、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0090】
したがって、本変形例の構成を採用した場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0092】
図5(c)は、本変形例に係る多色成形レンズ310の要部を示す、
図2と同様の図である。
【0093】
図5(c)に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、1次成形品310Pの形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0094】
すなわち、本変形例においても、1次成形品310Pには、2次成形品310Sとの接合面310cから該2次成形品310Sの内表面310Sbに沿って該2次成形品310Sに被さるようにして延びる被せ部310Peが延長形成されている。
【0095】
ただし、本変形例の1次成形品310Pは、その被せ部310Peの近傍に位置する被せ部近傍領域310P1とこの被せ部近傍領域310P1の周囲に位置する一般領域310P0とが同じ肉厚で形成されている。
【0096】
なお、本変形例に係る多色成形レンズ310も、1次および2次成形品310P、310Sの材質に関しては上記実施形態の場合と同様であり、その内表面310bには、防曇塗装膜12が接合面310cの位置を跨ぐようにして形成されている。
【0097】
本変形例に係る多色成形レンズ310においても、接合面310cの部分が多色成形レンズ310の外部から(すなわち外表面310a側の空間から)見えてしまうが、接合面310cの周辺領域に防曇塗装膜12の形成に起因するクラックが発生することはないので、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0098】
したがって、本変形例の構成を採用した場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0100】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0101】
10、110、210、310 多色成形レンズ
10a、110a、210a、310a 外表面
10b、10Pb、10Sb、110b、110Sb、210b、210Sb、310b、310Sb 内表面
10c、110c、210c、310c 接合面
10P、110P、210P、310P 1次成形品
10P0、310P0 一般領域
10P1、310P1 被せ部近傍領域
10Pd シール用脚部
10Pe、110Pe、210Pe、310Pe 被せ部
10Pe1 先端面
10S、110S、210S、310S 2次成形品
10Sf 角部
12 防曇塗装膜
102 コア型
104 キャビティ型
C1、C2 金型内空間
C1a 被せ部用の空間
RA コーナーR
Rs1、Rs2 溶融樹脂
T 被せ厚
W 被せ幅
θ1 挟角
θ2 傾斜角度