(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】新規ビフィドバクテリウム属細菌及び当該細菌を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230308BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230308BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20230308BHJP
A23L 33/22 20160101ALI20230308BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20230308BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230308BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230308BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230308BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230308BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230308BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230308BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230308BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A23L33/21
A23L33/22
A61K35/745
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61P1/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P31/00
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2019558306
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2018045166
(87)【国際公開番号】W WO2019112053
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017235884
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02564
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02565
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】小田巻 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久美子
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03181683(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/175702(WO,A1)
【文献】YU Zhuo-Teng et al.,Glycobiology,2013年,Vol.23, No.11,pp.1281-1292
【文献】LEE H. et al.,Electrophoresis,Vol.35,2014年,pp.1742-1750
【文献】RIVIERE A. et al.,Applied and Environmental Microbiology,Vol.80, No.1,2014年,pp.204-217
【文献】GAVLIGHI H. A. et al.,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2013年,Vol.61,pp.1272-1278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
A23L 33/00-33/29
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、
又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565。
【請求項2】
シアル酸の資化能
、及び、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンから選択される1種以上の糖質の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム
に分類される細菌。
【請求項3】
前記糖質の資化能が、アラビノキシラン、及びペクチックガラクタンの資化能である、請求項2に記載の細菌。
【請求項4】
前記糖質の資化能が、アラビノキシラン、ペクチックガラクタン、及びアラビナンの資化能である。請求項2又は3に記載の細菌。
【請求項5】
さらにラクト―N―テトラオースの資化能を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項6】
前記細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、
又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565である、請求項2
~5のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項7】
請求項2~
6のいずれか1項に記載の細菌を含む、組成物。
【請求項8】
前記組成物が、プロバイオティクス組成物である、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも、乳幼児用、成人用、高齢者用のいずれかに用いる、請求項
7又は
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、整腸用又は飲食品用に用いられる、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、シアル酸を含む、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群から選択される1種以上の糖質を含む、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、少なくともイネ科植物由来の糖質又はナス科植物由来の糖質を含む、請求項
11又は
12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項2~6のいずれか1項に記載の細菌、又は、請求項7~13のいずれか1項に記載の組成物を含む、アレルギー症状、免疫機能障害、感染症又は神経系疾患の予防、改善、又は治療用組成物。
【請求項15】
シアル酸の資化能、及び、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンから選択される1種以上の糖質の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖促進に使用するためのプレバイオティクス組成物であり、
前記組成物が、シアル酸
、及び、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンから選択される1種以上を含むプレバイオティクス組成物。
【請求項16】
前記組成物が、シアル酸、並びに、アラビノキシラン、及びペクチックガラクタンを含む、請求項15に記載のプレバイオティクス組成物。
【請求項17】
前記組成物が、さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、デキストリン
由来のオリゴ糖からなる群から選択される1種以上の糖質を含む、請求項1
6に記載のプレバイオティクス組成物。
【請求項18】
シアル酸の資化能
、及び、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンから選択される1種以上の糖質の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される
細菌を含む組成物の製造方法。
【請求項19】
前記細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、
又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565である、請求項1
8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ビフィドバクテリウム属細菌、当該細菌を含む組成物、当該細菌の増殖促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物に良い影響を与える微生物(善玉菌)を積極的に摂取して腸内環境を整えることで、病気の発生抑制、健康増進等を目的とするプロバイオティクス及び善玉菌の増殖を助ける成分等のプレバイオティクスの研究が盛んに行われるようになってきている。プロバイオティクスは、腸内で有益な働きをする細菌をいうのに対して、プレバイオティクスは、これらの有益な細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する物質をいう。プレバイオティクスにより、乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進作用、整腸作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等の人の健康に有益な効果があることが知られている。
例えば、特許文献1には、重量平均分子量が10000~300000であり、かつ還元糖量が0.12~2.0に調整された寒天を含有することを特徴とする乳酸菌増殖促進剤が開示されている。
斯様に、プロバイオティクスやプレバイオティクスについて鋭意研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳幼児の腸内細菌叢と大人の腸内細菌叢は異なり、これらの善玉菌の種類及び割合も異なることは一般的に知られている。このため、腸内の善玉菌を投与すること又は腸内の善玉菌の増殖を助ける成分を投与することで、乳幼児であっても大人であっても良好なプロバイオティクス効果が得られることが望ましい。
【0005】
しかしながら、乳幼児の腸内に多く存在する種類の善玉菌は、母乳の栄養素に適応しているケースが多く、大人の食事由来成分(食物繊維等)を利用できないので、このように減少する善玉菌を積極的に大人になって摂取しても腸内で増殖させることは難しい。また、大人の食環境で良好に増殖する善玉菌を乳幼児に積極的に摂取させても、乳幼児に対して期待する効果(腸内細菌叢の形成、母乳の消化吸収、感染防御等)があまり得られないことが多い。
このように、乳幼児でも大人でも幅広い年齢層の腸内で増殖が容易で有益に利用可能な善玉菌及びこれを含む組成物を提供するアプローチには、難しいものがある。
【0006】
そこで、本技術は、幅広い年齢層で有益に利用可能な善玉菌及びこれを含む組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、乳幼児でも大人でも幅広い年齢層で有益に利用可能な善玉菌を得ようとしたときに、まずは両者の食生活の違いに着目し検討を行った。
そして、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ヒト腸内細菌から採取されたビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(下記亜種ロンガムとも呼ぶ)において、従来知られている亜種ロンガムの性質とは異なる性質を有する新たな菌グループが存在することを発見した。
【0008】
具体的には、本発明者らは、全く偶然にも、シアル酸の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムの新たな菌グループが存在することを見出した。
参考文献1(Nature Communications, 7:11939, p1-12, (2016) 6, Volume 80 Number 14 (2014))には、フコシルラクトース利用のためのキー遺伝子因子が乳幼児の腸内細菌叢発展に影響を及ぼすことが記載されている。参考文献1の表1に記載されているように、ビフィドバクテリウム属ロンガム種の亜種ロンガムが、ヒトミルクオリゴ糖で増殖がほとんど認められないことが示されている。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、シアル酸資化能を有することは知られていない。
このヒト母乳オリゴ糖には体表的なシアル酸含有オリゴ糖(シアル酸結合オリゴ糖ともいう)があるが、当該菌グループは、シアル酸を資化することが可能である。一般的に成人に生息するビフィドバクテリウム属細菌やヒトに棲息していないビフィドバクテリウム属細菌はヒト母乳オリゴ糖を利用することが出来ない。このため、当該菌グループは、乳幼児が摂取するヒト母乳オリゴ糖(HMO)を利用できることから乳幼児の腸内で増殖が容易である。
【0009】
さらに、この菌グループのなかには、「アラビノキシラン、脱分岐化アラビナン、又はペクチックガラクタン」の少なくともいずれかの糖質を資化する資化能があることも見出した。このような菌グループは、大人で主食としているイネ科植物又はナス科植物を食したときに胃酸等によって一部消化した糖質を資化することで、これらを食したヒトの腸内でも増殖が容易である。
【0010】
このように、本発明者らが発見した新たな菌グループであれば、乳幼児の腸内で増殖が容易であり、さらに必要に応じて大人で食するような食品(例えば和食)でも増殖も容易であるため、幅広い年齢層で利用することができる。この菌グループであれば、幼児又は大人を問わずに幅広い年齢層で良好な腸内フローラ形成にも寄与することができる。
なお、本件明細書における「和食」とは、コメ(特に米飯、おかゆ)を主食とした食事のことである。さらに、主菜・副菜として、根菜料理(例えば、ジャガイモ等);豆類料理(例えば、豆腐、大豆発酵食品(例えば、味噌、納豆等)等)があることが望ましい。
【0011】
従って、本発明者らは、幼児でも大人でも幅広い年齢層で有益に利用可能な善玉菌であり、当該善玉菌がシアル酸の資化能を有するビフィドバクテリウム属ロンガム種の亜種ロンガムという新たな菌グループであることを見出し、当該善玉菌を含む組成物、及び当該善玉菌の増殖促進用組成物を新たに提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
〔1〕 ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564株、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565。
〔2〕 シアル酸の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌。
〔3〕 さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、からなる群より選択される1種以上の糖質の資化能を有する、前記〔2〕に記載の細菌。
〔4〕 前記細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の細菌。
〔5〕 前記〔2〕~〔4〕のいずれか1つに記載の細菌を含む、組成物。
〔6〕 前記組成物が、プロバイオティクス組成物である、前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕 前記組成物が、少なくとも、乳幼児用、成人用、高齢者用のいずれかに用いる、前記〔5〕又は〔6〕に記載の組成物。
〔8〕 前記組成物が、整腸用又は飲食品用に用いられる、前記〔5〕~〔7〕のいずれか1つ記載の組成物。
〔9〕 さらに、シアル酸を含む、前記〔5〕~〔8〕のいずれか1つ記載の組成物。
〔10〕 さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群より選択される1種以上の糖質を含む、前記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕 さらに、少なくともイネ科植物由来の糖質又はナス科植物由来の糖質を含む、前記〔9〕又は〔10〕記載の組成物。
〔12〕 ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖を促進するのに使用するためのプレバイオティクス組成物であり、
前記組成物が、シアル酸を含むプレバイオティクス組成物。
〔13〕 前記組成物が、さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群からなる群より選択される1種以上の糖質を含む、前記〔12〕に記載のプレバイオティクス組成物。
〔14〕 2’-フコシルラクトースの資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される微生物を含む組成物の製造方法。
〔15〕 前記細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム
NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565である、前記〔14〕に記載の製造方法。
〔16〕 組成物に用いる、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565。
〔17〕 組成物を製造のための、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565の使用。
〔18〕 ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565を投与するプロバイオティクスによる、アレルギー症状、免疫機能障害、感染症又は神経系疾患の、予防、改善又は治療方法。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、幅広い年齢層で有益に利用可能な善玉菌及びこれを含む組成物、当該善玉菌の増殖促進用組成物を提供することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0015】
<新規なビフィドバクテリウム属細菌>
本技術は、新規なビフィドバクテリウム属細菌であり、当該細菌は、ビフィドバクテリウム属ロンガム種の亜種ロンガム(ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム)に分類される微生物であり、上述のように従来にはない「シアル酸」の資化能を有するという極めてユニークな特徴を有する新たな菌グループ(以下、「本技術の亜種ロンガム」ともいう。)である。
当該資化能により、本技術の亜種ロンガムが、シアル酸を含む組成物(例えば、ヒト母乳、ヒト母乳オリゴ糖(HMO)、粉ミルク等)にて、容易に増殖することができる。本技術の亜種ロンガムは、シアル酸を使用することで、腸内において増殖も容易となる。
なお、前記「シアル酸」の成分の詳細は、後述の「成分(a)シアル酸」にて説明する。
【0016】
ビフィドバクテリウム属細菌は、様々な生理機能が報告されており、その機能は腸内での増殖や産生する物質(例えば、酢酸等)によるものであると報告されている。
従って、本技術の亜種ロンガムも、安全性が高く、かつ幅広い年齢層において、一般的に云われているビフィドバクテリウム属細菌による効能を期待することができる。このため、本技術の亜種ロンガムは、幅広い組成物(飲食品用、機能性食品用、医薬品用、飼料用等)に用いることが可能である。
【0017】
また、本技術の亜種ロンガムは、プロバイオティクス効果を期待することができるので、健康増進、食生活改善、腸内環境改善、腸内感染予防・治療等の目的に使用することも可能である。
また、プロバイオティクス効果として、便秘及び下痢症の改善作用、乳糖不耐症の改善作用、免疫機能改善作用、感染防御作用、アレルギー抑制作用、動脈硬化の予防作用、抗腫瘍作用等が知られている(参考文献2:https://bifidus-fund.jp/en/index.shtml)。また、ヒトミルクオリゴ糖により、例えば、アレルギーの予防作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等が知られている(参考文献3: Milk Science Vol.56, No.4( 2008)p155-176)。
本技術の亜種ロンガムは、プロバイオティクス効果が期待でき、またヒトミルクオリゴ糖も有効に利用することができるので、例えば、アレルギー症状(例えば、アレルギー炎症、アトピー性皮膚炎等)、免疫機能障害(例えば、免疫機能低下等)、感染症(例えば、ウイルス性胃腸炎、細菌感染症等)、神経系疾患(例えば、脳や骨髄等の神経疾患等)等の疾患、症状又は状態の予防、改善又は治療を期待できる。また、本技術の亜種ロンガムは、アレルギー症状の予防・改善作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等も期待することができる。
【0018】
本技術の亜種ロンガムは、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンからなる群より選択される1種以上の糖質の資化能を有するという特徴を有することが好ましい。当該アラビナンは脱分岐化アラビナンが好適である。
なお、前記「アラビノキシラン、アラビナン、及びペクチックガラクタン」の成分の詳細は、後述の「成分(b)」にて説明する。
本明細書において、「糖質」とは、特に言及しない場合、本技術の亜種ロンガムが資化可能な「多糖」及び「オリゴ糖」も含む意味である。オリゴ糖は、糖残基2~10程度から構成されるものを云う。
【0019】
本技術の亜種ロンガムは、「アラビノキシラン、アラビナン、及びペクチックガラクタン」からなる群より選択される1種以上の糖質の資化能を有することにより、少なくともこれらの糖質を含む組成物(例えば、主食(米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ等)の加工品等)にて増殖することが容易にできるので、腸内において増殖が容易となる。
本技術の亜種ロンガムを増殖させる場合、前記「アラビノキシラン、アラビナン」はイネ科植物に含まれる糖質と知られているので、イネ科植物由来の糖質(好適にはオリゴ糖)を使用することが好ましい。
また、本技術の亜種ロンガムを増殖させる場合、前記「ペクチックガラクタン」はナス科植物に含まれる糖質として知られているので、ナス科植物由来の糖質(好適にはオリゴ糖)を使用することが好ましい。
【0020】
また、大人で主食としているイネ科植物(例えば、米、小麦、トウモロコシ等)又はナス科植物(例えば、ジャガイモ等)を食し一部消化したものには、アラビノキシラン、アラビナン、又はペクチックガラクタンのいずれかの糖質が含まれる。このため、前記「シアル酸」に加えてさらに前記「アラビノキシラン、アラビナン、及びペクチックガラクタン」の糖質の何れか1種以上を資化できる本技術の亜種ロンガムは、米又はジャガイモ等を使用するような和食を食することで、腸内において増殖が容易であるので、さらにユニークな亜種ロンガムの菌グループと云える。
【0021】
さらに、本技術の亜種ロンガムは、前記資化能として、アラビノキシラン及び/又はペクチックガラクタンに高い資化能を有することが好ましい。より好ましくは、本技術の亜種ロンガムは、アラビノキシラン及びペクチックガラクタンに高い資化能を有することである。
【0022】
本技術の亜種ロンガムは、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564(受託番号:NITE BP-02564)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565(受託番号:NITE BP-02565)等が挙げられる。これら群から1種又は2種以上を選択することができる。
なお、以降、前記ロンガム NITE BP-02564(受託番号:NITE BP-02564)を、「亜種ロンガム NITE BP-02564」ともいい、前記ロンガム NITE BP-02565(受託番号:NITE BP-02565)を、「亜種ロンガム NITE BP-02565」ともいう。
本技術の亜種ロンガム NITE BP-02564及び亜種ロンガム NITE BP-02565は、シアル酸、アラビノキシラン及びペクチックガラクタンに高い資化能を有する細菌であるので、本技術の亜種ロンガムの菌グループのうちで、特に好ましい。
【0023】
前記亜種ロンガム NITE BP-02564は配列番号1を有するものであり、前記亜種ロンガム NITE BP-02565は配列番号2を有するものである。
これら2菌株は、Bifidobacterium longum MCLONSIAL1(受託番号:NITE BP-02564)株、Bifidobacterium longum MCLONSIAL2(受託番号:NITE BP-02565)株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託した、新規な亜種ロンガムの菌グループに分類されるものである。
【0024】
本技術の亜種ロンガム NITE BP-02564は、以下の菌学的性質及び特性から新規菌株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2017年11月10日(国内寄託日)に寄託し、2018年10月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求を行い、Bifidobacterium longum MCLONSIAL1(受託番号:NITE BP-02564)株として寄託されている。この菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0025】
本技術の亜種ロンガム NITE BP-02565は、以下の菌学的性質及び特性から新規菌株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2017年11月10日(国内寄託日)に寄託し、2018年10月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求を行い、Bifidobacterium longum MCLONSIAL2(受託番号:NITE BP-02565)株として寄託されている。この菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0026】
本技術の亜種ロンガム NITE BP-02564及び亜種ロンガム NITE BP-02565は、上記寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同質の菌株であってもよい。実質的に同質の菌株とは、ビフィドバクテリウム属ロンガム種の亜種ロンガムに分類される菌株であって、本件寄託菌株と同程度以上の前記「シアル酸」の資化能を少なくとも有する菌株を意味する。
さらに、前記「アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタンからなる群より選択される1種以上」の糖質の資化能を有するものが好適であり、より好適にはアラビノキシラン及びガラクタンの糖質の資化能を有するものである。
また、前記シアル酸の資化能に加え、さらにラクト-N-テトラオースの資化能を有するものが、さらに好適である。
また、実質的に同質の菌株とは、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、それぞれの株が有する配列番号1、又は配列番号2の配列(表2及び3参照)と100%一致し、かつ好ましくは上記寄託菌株と同一の菌学的性質を有する。さらに本技術の亜種ロンガムは、本発明の効果が損なわれない限り、本件寄託菌株又はそれと実質的に同質の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
【0027】
<糖源の資化性の判定方法>
糖源を含むMRS(de Man-Rogosa-Sharpe)液体培地1mLに、菌株1v/v%ずつ接種し、嫌気条件下で37℃にて培養する。培養24時間後に濁度(OD 600)を測定し、菌株を接種しなかった培地を同様に培養したコントロールの濁度を差し引いた値を以下の基準に照らし、資化性の有無及び資化能の程度を判定する。コントロールとの差でOD 600が、0.3以上を「良好な資化性あり」、0.5以上を「より良好な資化性あり」、0.6以上を「よりさらに良好な資化性あり」、0.8以上を「非常に良好な資化性あり」とする。
【0028】
本技術の亜種ロンガムは、例えば、同菌株を培養することにより増殖させることができる。
培養する方法は、本技術の亜種ロンガムが増殖できる限り特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は30~50℃でよく、35~45℃であることが好ましい。また培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0029】
本技術の亜種ロンガムを増殖させるために培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、炭素源としては、後述する成分(a)及び(b)以外で、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
【0030】
本技術の亜種ロンガムとして、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、培養後に加熱、及び凍結乾燥等の種々の追加操作を行うことができる。追加の操作は、生菌の生残性が高いものであることが好ましい。
なお、本技術の医薬組成物、飲食品、及び飼料で使用する、本技術の亜種ロンガムの菌体は、生菌であることが好ましい。
【0031】
本技術の亜種ロンガムの好ましい資化成分として、以下の成分(a)及び/又は成分(b)、さらに以下の成分(c)が挙げられる。
本技術に用いる「成分(a)シアル酸」は、本技術の亜種ロンガムの増殖促進作用を有する。さらに、当該「成分(a)」と、後述する「成分(b)」及び/又は「成分(c)」とを組み合わせることで、より安定的に本技術の亜種ロンガムの増殖促進作用を発揮させることができる。これにより、本技術の亜種ロンガムを幅広い年齢層の腸内でも増殖し易くなる。さらに、本技術の亜種ロンガムの増殖促進作用の点から、ラクト-N-テトラオース(LNT)も資化成分とすることが好ましい。
【0032】
本技術の資化成分として使用する「成分(a)シアル酸」は、ヒト母乳オリゴ糖(HMO)において、シアル酸含有オリゴ糖に含まれる代表的な成分として知られている。具体的にはシアル酸は、ヒトミルクオリゴ糖(特に酸性オリゴ糖)の糖鎖構造の一部として含まれていること(すなわち、シアル酸結合オリゴ糖)が知られている。例えば、シアル酸結合オリゴ糖としては、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、シアリルラクト-N-テトラオース等が利用できる。
また、本技術は、シアル酸結合オリゴ糖からシアル酸を生じさせる手段(例えば、シアル酸結合のオリゴ糖を分解する細菌又は分解酵素等)を用いることが好ましい。例えば、Bifidobacterium bifidum ATCC15696、Bifidobacterium bifidum PRL2010等のビフィドバクテリウム属細菌等の細菌を用いて菌体外でシアル酸と、ラクトース等のオリゴ糖や単糖とに分解することにより生じたシアル酸を用いることができる。その他、市販品のシアル酸を使用してもよいし、乳から調製してもよいし、公知の有機合成や酵素処理等にて得ても良い。また、シアル酸又はシアル酸含有オリゴ糖(好適にはシアル酸)を含む乳(例えば、母乳、粉ミルク、牛乳、乳製品)を使用してもよい。また、ヒトミルクオリゴ糖を使用してもよく、当該ヒトミルクオリゴ糖を乳(牛乳や粉ミルク等)に配合したもの(すなわち、ヒトミルクオリゴ糖を含む乳)を使用してもよい。
シアル酸とは、ノイラミン酸のアミノ基やヒドロキシ基が置換された物質を総称するファミリー名で一般的に使用されている。また、シアル酸は、例えば、乳(ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ等)、ツバメの巣、ハチミツ、タマゴ等に多く含まれていることが知られている。このうち、乳由来シアル酸が、入手容易であるので、好ましい。
【0033】
本技術の資化成分として使用できる「成分(c)ヒトミルクオリゴ糖(以下、「HMO」ともいう)」には、少なくともシアル酸結合オリゴ糖及び/又はラクト-N-テトラオース(LNT)が含まれるものが好適である。一般的にHMOとして、例えば、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、2’,3-ジフコシルラクトース、、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースII、並びに、ラクト-N-シアリルペンタオース、LSTa、LSTb及びLSTc等が挙げられる。当該HMOの各オリゴ糖は公知の製造方法で得ることができる。本技術では、これらからなる群から選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
本技術の資化成分として、「成分(b)キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、脱分岐化アラビナン、ペクチン、ガラクタン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖」からなる群から選択される1種以上の糖質を増殖促進のために使用することが、これを資化可能な亜種ロンガムが増殖促進できるため、好ましい。また、前記「成分(b)」は、水溶性のものが好適であり、易水溶性がより好適である。
【0035】
前記「成分(b)」の「キシラン、アラビノキシラン、及びアラビナン、脱分岐化アラビナン、及びこれら由来のオリゴ糖」(特に、アラビノキシラン及び当該由来のオリゴ糖)は、イネ科植物由来の糖質(多糖体、オリゴ糖)としてよく知られている。
前記「成分(b)」の「アラビノキシラン、アラビナン及び当該由来のオリゴ糖」は、イネ科植物を加工処理した市販品を使用することができ、また、当該植物から抽出加工することで得ることができる。また、例えばイネ科植物の可食部分を加工し、食物繊維等の糖質として得たものでもよい。当該「成分(b)」の「アラビノキシラン、アラビナン及び当該由来のオリゴ糖」は、外皮部分(例えば、米ぬか、麦ふすま等)にも含まれる。
イネ科植物として、例えば、イネ属植物(インディカ米、ジャポニカ米等の米等)、トウモロコシ属植物(好適にはトウモロコシ)、コムギ属植物(好適には小麦)、オオムギ属植物(好適には大麦)等が挙げられ、これらからなる群から1種又は2種以上を選択することができる。
本技術であれば、個々の通常の食生活に対応して、これらから適宜選択することが可能である。本技術であれば、特に和食の場合、イネ属植物由来の糖質(好適にはオリゴ糖)又はこれを含む食品(例えば、コメを使用した食品(具体的には、米飯、玄米、おかゆ、コメ粉入りのパンや麺類等))を資化成分として選択することが好ましい。
【0036】
前記「成分(b)」の「ペクチン、ガラクタン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖」(特に、ペクチックガラクタン及び当該由来のオリゴ糖)は、ナス科植物由来又はイネ科植物由来の糖質(多糖体、オリゴ糖)として知られている。
また、本技術の「成分(b)」の「ガラクタン及び当該由来のオリゴ糖」が含まれる植物として、ナス科ナス属植物、豆類等が挙げられ、これらからなる群から1種又は2種以上選択することができる。
このため、これらを加工処理した市販品を使用することができ、また、当該植物から抽出加工することで得ることができる。例えば、イネ属植物由来の糖質(好適にはアラビノキシラン由来のオリゴ糖)、ナス科ナス属植物(ジャガイモ等)由来の糖質(好適にはアラビナン由来又はペクチックガラクタン由来のオリゴ糖)、豆類由来の糖質(好適にはアラビノガラクタン由来のオリゴ糖)を選択することができる。
【0037】
なお、本明細書でいう「キシラン」は、特に言及しなければ、キシロースのポリマーを主鎖とすればよく、側鎖や主鎖に他の構成糖を有しても良いものを意味するものである。
また、本明細書でいう「アラビナン」は、特に言及しなければ、アラビノースのポリマーを主鎖とすればよく、側鎖や主鎖に他の構成糖を有しても良いものを意味するものである。
また、本明細書でいう「ガラクタン」は、特に言及しなければ、ガラクトースのポリマーを主鎖とすればよく、側鎖や主鎖に他の構成糖を有しても良いものを意味するものである。
また、本明細書でいう「ペクチン」は、特に言及しなければ、α1-4結合したガラクツロン酸のポリマーとすればよく、側鎖や主鎖に他の構成糖を有しても良いものを意味するものである。また、本明細書でいう「ペクチン」は、ガラクツロン酸のカルボキシル基のメチルエステル化の有無に関係なく、メチルエステル化されている「狭義のペクチン」と、「狭義のペクチン」を脱エステル化処理したペクチン酸、メチルエステル化されていない「ペクチン酸」を含む意味である。
【0038】
一般的に、アラビノキシランは、アラビノースとキシロースとを主な構成糖とする糖質であり、キシロースのポリマーを主鎖とする糖質として知られている。
本技術で使用するアラビノキシランとして、β1-4結合したキシロースのポリマーの主鎖に対し、α1-3結合又はα1-2結合で側鎖としてL-アラビノフラノース単糖又はこのアラビノオリゴ糖が結合しているものが好ましい。さらに好ましくは、側鎖にL-アラビノフラノース単糖が結合しているものである。また、本技術のアラビノキシランの構成糖比は、キシロース5糖残基:L-アラビノース1~4糖残基が好ましい。
アラビノキシランの資化能を有する亜種ロンガムの場合、アラビナン及び/又はキシランについても資化成分として使用できると考える。
【0039】
また、一般的に、アラビナンは、アラビノースを主な構成糖とする糖質であり、アラビノースのポリマーを主鎖とする糖質として知られている。アラビナンには、ペクチックアラビナン及び脱分岐化アラビナン等が挙げられる。
本技術で使用するアラビナンとして、α1-5結合したアラビノースのポリマーを主鎖とする糖質が好ましく、さらに、脱分岐化アラビナンが好ましい。脱分岐化アラビナンは、アラビナンに分岐部分がある場合に、脱分岐化処理したものである。脱分岐化アラビナンとして、例えば、ペクチックアラビナンを脱分岐化したもの(1,5-α-L-Arabinanで、Araの糖残基割合が80%以上であるのが好適)が挙げられる。
【0040】
また、一般的に、ペクチックアラビナンは、アラビナンの主鎖とペクチンとを構成とする糖質として知られている。ペクチックアラビナンとして、例えば、主鎖のアラビナンの還元末端のC-1にペクチンが結合したものが挙げられる。
脱分岐化アラビナンの資化能を有する亜種ロンガムの場合、ペクチックアラビナンについても資化成分として使用できると考える。
【0041】
一般的に、ペクチックガラクタンは、ガラクタンの主鎖とガラクツロン酸ポリマーを構成とする糖質であり、よく知られているペクチックガラクタンとして、主鎖のガラクタンの還元末端のC-1にペクチンが結合したものが挙げられる。
ペクチックガラクタンの資化能を有する亜種ロンガムの場合、ペクチン及び/又はガラクタンについても資化成分として使用できると考える。
【0042】
一般的に、ガラクタンは、ガラクトースを主な構成糖とし、ガラクトースのポリマーを主鎖とする糖質として知られている。
ペクチックガラクタンの場合、β1-4結合したガラクトースのポリマーを主鎖とする糖質として知られている。
また、ガラクタンは、大豆にはアラビノガラクタンとして含まれていることが知られている。ガラクタンを含むマメ科植物由来の糖質として、ルパン豆由来の糖質、大豆由来の糖質が挙げられる。大豆由来の糖質として、大豆加工製品(例えば、豆腐、豆乳等)、大豆発酵製品(例えば、味噌、醤油、納豆等)又はこれ由来の糖質であってもよい。
【0043】
<増殖促進するのに使用するための組成物>
斯様に、本技術の前記「成分(a)シアル酸」は、本技術の亜種ロンガムに対して増殖促進作用を有する。前記「成分(a)」に、さらに前記成分(b)の「キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、脱分岐化アラビナンペクチン、ガラクタン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖」、前記成分(c)の「HMO」からなる群より選択される1種以上の糖質を少なくとも組み合わせる(以下、「これら成分の組み合わせ」ともいう)ことで、より好適に本技術の亜種ロンガムに対して増殖促進作用を有する。これら成分は、本技術の亜種ロンガムに対して増殖促進作用の成分として使用できる。
このため、前記「成分(a)」又は前記「これら成分の組み合わせ」は、本技術の亜種ロンガムの増殖促進の成分として使用することも可能である。
【0044】
前記「成分(a)」又は前記「これら成分組み合わせ」は、有効成分として、本技術の亜種ロンガムの増殖を促進するのに使用するための組成物(以下、「増殖促進用組成物」ともいう。)に含有させることができ、また、医薬品、飲食品、飼料等の幅広く用途の製品に使用することができる。これらの製品は各種用途に適合した任意成分を適宜用い、各用途に適合した公知の製造方法によって、製造することができる。
また、前記「成分(a)」又は前記「これら成分の組み合わせ」は、これ自体をそのまま本技術の増殖促進目的で使用することが可能であり、又は生理的、医薬品的若しくは飲食品的に許容される通常の担体若しくは希釈剤等と共に混合して用いることもできる。
また、前記「成分(a)」又は前記「これら成分の組み合わせ」は、これら各種製剤又は各種組成物等の製造のために使用することができる。また、本技術の前記「成分(a)」又は前記「これら成分の組み合わせ」は、本技術の亜種ロンガムに対する増殖促進方法又は増殖を促進させるのに使用するための組成物(好適にはプレバイオティクス組成物)として使用することも可能である。
【0045】
また、本技術の増殖促進用組成物における、前記「成分(a)シアル酸」の使用量又は含有量は、菌100質量部に対して、1~1,000,000質量部が好ましく、10~10,000質量部がより好ましい。
また、本技術の増殖促進用組成物における、「前記成分(b)から選ばれる1種以上の糖質」の使用量又は含有量は、菌100質量部に対して、1~1,000,000質量部が好ましく、10~10,000質量部がより好ましい。
また、本技術の亜種ロンガムの増殖促進用組成物は、前記「成分(a)」と「前記成分(b)から選ばれる1種以上の糖質」との組み合わせの場合、これらを混合して又は別々の組成物キットとして使用することができる。
【0046】
上述した本技術の増殖促進用組成物によって本技術の亜種ロンガムが増殖促進するため、本技術の増殖促進用組成物は、プレバイオティクス組成物として使用することができる。当該増殖促進用組成物の使用により、本技術の亜種ロンガムによる、整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等の人の健康に有益なプロバイオティクス効果も期待できる。
【0047】
また、本技術の増殖促進用組成物の摂取により、本技術の亜種ロンガム以外の乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進作用も期待できるので、これら乳酸菌・ビフィズス菌のプレバイオティクス組成物として使用することが可能である。
本技術の亜種ロンガム以外の乳酸菌・ビフィズス菌の増殖促進成分を使用することができる。この乳酸菌・ビフィズス菌の増殖促進成分として、例えば、オリゴ糖(例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ミルクオリゴ糖(好適にはヒトミルクオリゴ糖(HMO))、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸等)、食物繊維(ポリデキストロース、イヌリン等)の糖質が知られており、これらから1種又は2種以上選択することができる。
このため、このような乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進成分を、本技術のプレバイオティクス組成物の任意成分として含有させることが好ましい。
【0048】
そして、本技術のプレバイオティクス組成物によって、本技術の亜種ロンガム及びこれ以外の乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進できる。このことにより、さらに良好に、整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等のプロバイオティクス効果も期待できる。
また、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)による各種作用、例えば、アレルギーの予防・改善作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等が知られている(参考文献3:Biological significance of human milk oligosaccharides; Milk Science Vol.56, No.4( 2008)p155-176)。このことより、本技術の増殖促進用組成物によって、アレルギー症状の予防・改善作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等のプロバイオティクス効果も期待できる。
【0049】
<組成物>
本技術はまた、本技術の亜種ロンガムを含む組成物を提供することができる。本技術の組成物は、飲食品組成物、医薬組成物、飼料組成物等を含む意味である。また、本技術の組成物は、プロバイオティクス組成物が好適である。
【0050】
本技術の亜種ロンガムは、上述のとおり、「シアル酸」の資化能を有する。本技術の亜種ロンガムは、さらに、「アラビノキシラン、アラビナン、及びペクチックガラクタンからなる群より選択される1種以上」の糖質(好適にはオリゴ糖)の資化能を有するという特徴を有することが好ましい。
従って、本技術の亜種ロンガムを含む組成物に、上述した本技術の亜種ロンガムが増殖促進できる資化成分をさらに使用することが好ましい。
本技術の亜種ロンガムは、上述した「(a)成分」(好適には前記「これら成分の組み合わせ」)の資化成分、又はこの資化成分を含む飲食品と、同時時期又は別々に摂取することで、より好適に腸内で増殖できる。このように資化成分(すなわち、増殖促進用成分)を含有させることにより、さらに好適に、プロバイオティクス効果も期待することができる。
【0051】
本技術の亜種ロンガムは、適用対象であるヒト又は非ヒト動物(好適には哺乳類)に使用してもよく、ヒト及びペットが好ましく、より好ましくはヒトである。
さらに、本技術の適用対象者は、プロバイオティクス効果を望む者であれば特に限定されず、例えば、乳幼児、小児、成人、健常者、中高年、高齢者、及び腸内環境の優れない者等が挙げられる。このうち、本技術は、乳児用、成人用、高齢者用に使用することが好ましい。
【0052】
本技術の亜種ロンガムを含む組成物は、乳幼児用から大人用の範囲の食生活においても腸内で本技術の亜種ロンガムの増殖が可能なので、幅広い年齢でプロバイオティクス効果を期待することができる。これにより、例えば、腸内環境の改善や整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等も期待できる。
本技術の亜種ロンガムを含む組成物は、プロバイオティクス効果が期待できるので、例えば、上述したアレルギー症状、免疫機能障害、感染症、神経系疾患等の疾患又は症状の予防、改善又は治療を期待できる。また、本技術の亜種ロンガムを含む組成物は、上述したアレルギー症状の予防作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等も期待できる(参考文献2及び参考文献3)。
【0053】
また、本技術は、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む育児用組成物(好適には乳児用ミルク)に使用すること又は利用することも可能である。本技術の育児用組成物は、アレルギー症状の予防作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、脳神経系活性化作用等も期待できる。
【0054】
また、本技術に用いられる亜種ロンガムは、ヒト由来であるため副作用が少なく安全性が高いので、継続して長期間摂取することも可能である。
そして、本技術は、プロバイオティクスによって予防、改善又は治療可能な症状又は疾患に有効に使用することもできる。
【0055】
本技術の亜種ロンガムは、そのまま用いることが可能であり、又は生理的、医薬品的若しくは飲食品的に許容される通常の担体若しくは希釈剤等と共に混合して用いることもできる。
従って、本技術の亜種ロンガムは、有効成分としてプロバイオティクス組成物に含有させることもでき、また、安全性が高いので、医薬品、飲食品、飼料等の幅広い用途の製品に使用できる。これらの製品は、各用途に適合した任意成分を適宜用い、各用途に適合した公知の製造方法によって、製造することができる。
また、本技術の亜種ロンガムは、これら各種製剤又は各種組成物等の製造のために使用することができる。また、本技術は、プロバイオティクス用の亜種ロンガムとして使用することも可能である。
【0056】
本技術の組成物は、少なくとも本技術の亜種ロンガムを含むものであり、さらに上述した増殖促進成分を含むものが好ましい。
本技術の組成物は、前記「成分(a)シアル酸」を含むことが好ましい。
さらに、「前記成分(a)」に加えて、さらに「前記成分(b)キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、脱分岐化アラビナン、ペクチン、ガラクタン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群より選択される1種以上の糖質」を含む、組成物が好ましい。このうち、アラビノキシラン及び/又はペクチックガラクタンを少なくとも含有させることが好ましい。
また、「前記成分(a)」に加えて、さらに「前記成分(b)」の「アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群より選択される1種以上の糖質」を含有させてもよい。
また、本技術の組成物は、「前記成分(a)」に加えて、さらに少なくともイネ科植物由来の糖質及び/又はナス科植物由来の糖質を含むことが好ましい。
また、本技術の亜種ロンガムを含む組成物と、本技術の亜種ロンガムの増殖促進用組成物とを、混合した組成物として又は別々の組成物キットとして使用することも可能である。また、上述した本技術の増殖促進用組成物を、プロバイオティクス組成物の成分として含有させて使用することも可能である。
【0057】
本技術の亜種ロンガムの投与又は摂取は、少なくとも1週間継続することが好ましく、少なくとも4週間継続することがより好ましく、毎日継続することが望ましい。
本技術の亜種ロンガムの使用量は、安全性が高いので特に制限されないが、例えば、1×106~1×1012CFU/kg体重/日が好ましく、1×107~1×1011CFU/kg体重/日がより好ましく、1×108~1×1010CFU/kg体重/日がさらに好ましい。又は、1個体(Body weight)あたりの使用量(投与量)としては、107~1014CFU/日が好ましく、108~1013CFU/日がより好ましく、109~1012CFU/日がさらに好ましい。
また、本技術の亜種ロンガムの使用量は、0.01~100mL/体重kg/日であることが好ましく、0.1~10mL/体重kg/日であることがより好ましい。
なお、本技術において、CFUとは、Colony forming unitの意味であり、コロニー形成単位を表す。前記細菌が死菌の場合、CFUは、個細胞(cells)と置き換えることができる。
【0058】
また、本技術は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、健康増進、美容行為等が挙げられる。
「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化防止、遅延;疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
【0059】
<医薬組成物>
さらに、本技術の組成物は、医薬組成物として用いることができる。これにより、プロバイオティクス効果を期待できる。
本技術の医薬組成物は、本技術の亜種ロンガムを含有する限り特に制限されない。当該医薬組成物は、本技術の亜種ロンガムを含有する、整腸用組成物等としても使用できる。
本技術の医薬組成物としては、本技術の亜種ロンガムをそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体又は固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。
【0060】
また、本技術の医薬組成物は、経口組成物成分としてヒト腸内より得ることができる本技術の亜種ロンガムを有効成分とするため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、動物の腸内にも存在するため、本技術は、長期間、連続的に投与しても副作用が生じにくいことが期待される。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、乳幼児や小児にも安全に投与することができる。したがって、本技術は、乳幼児や小児に対する疾患又はその症状の予防、改善及び/又は治療にも好適である。
【0061】
本技術の医薬組成物の剤形は特に制限されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、及び点鼻剤等を例示できる。また、製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、又は注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0062】
また、製剤化に際しては、本技術に係る医薬組成物には、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限り、本技術に係る医薬組成物には、公知の又は将来的に見出される筋疾患、筋萎縮関連疾患又はこれらの症状に対する予防、改善及び/又は治療の効果を有する成分を使用することもできる。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0063】
本技術の医薬組成物における本技術の亜種ロンガムの含有量は、剤形、用法、患者の年齢、性別、疾患の種類、疾患の程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、通常、1×106~1×1012cfu/g又は1×106~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×107~1×1011cfu/g又は1×107~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。本技術の亜種ロンガムが死菌の場合、cfu/g又はcfu/mLは、個細胞/g又は個細胞/mLと置き換えることができる。
【0064】
本技術の亜種ロンガムの使用量は、剤形、用法、患者の年齢、性別、疾患の種類、疾患の程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、通常、1×106~1×1012cfu/g又は1×106~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×107~1×1011cfu/g又は1×107~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。本技術の亜種ロンガムが死菌の場合、cfu/g又はcfu/mLは、個細胞/g又は個細胞/mLと置き換えることができる。
【0065】
本技術の医薬組成物の投与時期は特に限定されず、対象となる症状又は疾患の治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。また、予防的に投与してもよく、維持療法に用いてもよい。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。なお、本技術の医薬組成物は、いずれの場合も1日1回又は複数回に分けて投与することができ、また、数日又は数週間に1回の投与としてもよい。
【0066】
<飲食品組成物>
さらに、本技術の組成物は、飲食品組成物として用いることができる。これにより、プロバイオティクス効果を期待できる。
本技術の飲食品組成物は、本技術の亜種ロンガムを公知の飲食品に添加することによって製造してもよいし、本技術の亜種ロンガムを飲食品の原料中に混合して新たな飲食品組成物として製造することもできる。
【0067】
本技術の飲食品組成物は、本技術の亜種ロンガムを含有する限り特に制限されず、飲食品組成物としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、及び乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む);アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の氷菓;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、及び焼き菓子等の菓子類;加工乳、乳飲料、発酵乳、ドリンクヨーグルト、及びバター等の乳製品;パン;経腸栄養食、おかゆ等の流動食、離乳食、育児用ミルク(例えば、乳児用ミルク等)、スポーツ飲料;その他機能性食品等が例示される。また、飲食品は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。サプリメントである場合には、一日当りの食事量及び摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、本技術の亜種ロンガムを摂取できる。
【0068】
本技術のより好ましい実施形態の一例として、乳児用ミルク(例えば、乳児用調製粉乳等)が挙げられる。当該「乳児用ミルク」は、好ましくは、生後4~6ヶ月または生後4~12ヶ月の乳児の特定の栄養的使用に意図された、それだけで乳幼児の栄養的要求を満たす食品をいう。それは、例えば、1以上のプロバイオティクビフィドバクテリウム属細菌;ヒトミルクオリゴ糖、フルクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖などのプレバイオティクス;カゼイン、大豆、ホエー又はスキムミルク由来のタンパク質;ラクトース、サッカロース、マルトデキストリン、デンプンまたはそれらの混合物などの炭水化物;脂質(例えば、パームオレイン、ヒマワリ油、ヒマワリ油);及び、日常の食物に不可欠なビタミン類及びミネラル等を含有することができ、これらの群から1種又は2種以上を選択することができる。
【0069】
また、本技術における飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプロバイオティクス効果を有する成分又はプロバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本技術における飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;又はフィッシュオイル等の成分と、本技術の亜種ロンガムとを組合せて調製することができる。
【0070】
また、本技術で定義される飲食品組成物は、プロバイオティクス等の用途(保健用途を含む)が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。また、飲食品の摂取対象として、「和食を好む方」、「ビフィズス菌と暮らす生活を望む方」、「腸内環境を改善したい方」、「お腹の調子を整えたい方」、「良好な腸内環境を形成したい方」等と表示して提供・販売されることが可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
【0071】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0072】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0073】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
【0074】
本技術の飲食品組成物における本技術の亜種ロンガムの含有量は、飲食品組成物の態様によって適宜設定されるが、通常、飲食品中に、1×106~1×1012cfu/g又は1×106~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×107~1×1011cfu/g又は1×107~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。
本技術の亜種ロンガムの使用量は、飲食品組成物の態様によって適宜設定されるが、通常、飲食品中に、1×106~1×1012cfu/g又は1×106~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×107~1×1011cfu/g又は1×107~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
本技術の飲食品は、飲食品組成物の原料に、本技術の亜種ロンガムを添加することにより製造することができ、本技術の亜種ロンガムを添加すること以外は、通常の飲食品組成物と同様にして製造することができる。
さらに、上述した増殖促進用組成物を適宜添加してもよいし、前記増殖促進用組成物として、増殖促進用組成物の由来となる食品等を使用してもよい。
食品又は飲料の原料としては、通常の飲料や食品に用いられている原料を使用することができるが、本技術の亜種ロンガムに対する増殖促進成分を考慮すると、和食の原料が好ましい。
また、本技術の亜種ロンガムは、目的に応じて、飲食品に使用されるような他の「ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌」と併用して使用することも可能である。
本技術の飲食品組成物には、飲食品組成物製造のための原料、及び食品添加物等、飲食品組成物の製造工程又は製造後に飲食品に添加されるものも含まれる。
【0076】
本技術の飲食品の製造において、本技術の亜種ロンガムの添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。例えば、一例として、一般的にビフィドバクテリウム属細菌を添加する工程において添加してもよい。
製造された飲食品は、経口的に摂取することが可能である。
本技術の亜種ロンガムを含む飲食品としては、おかゆ等の和食、離乳食、流動食(好適には高齢者用等)、乳児用ミルク、乳酸菌飲料、及び発酵乳等が挙げられる。
本技術の飲食品が、おかゆ等のような流動性のある和食であれば、離乳食としても高齢者用の流動食としても使用することができる。高齢者において、和食を制限されるようなヒトでも、おかゆ等にて和食を食することも可能であり、食生活の改善に繋げることができる。このように、本技術であれば、食生活の質の改善をしつつ、プロバイオティクス効果を期待しつつ、家族団らんで同じものを食することが可能である。
また、大豆発酵由来の糖質でも資化の可能性があり、これは味噌汁、納豆等の和食でもよいことを示唆するものである。
【0077】
<他の実施形態>
本技術の別の実施態様を、以下に示すが、本技術がこれにより限定されるものではない。
シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)は、悪性腫瘍、炎症性疾患、ストレス、などで血中、尿中に増加してくることが知られている。悪性腫瘍、白血病(とくに骨髄性)、肺炎、腎炎、心筋梗塞、その他の感染症、各種膠原病、妊娠後期に、シアル酸の値が高くなる。
従って、本技術の亜種ロンガムは、シアル酸を資化して増殖できるため、採取した検体(血液、尿等)中のシアル酸量を指標とした検査又は診断補助等にも使用可能である。
よって、本技術の別の実施態様として、本技術の亜種ロンガムを使用して、シアル酸により高値になる症状又は疾患の検査キット又は診断を補助する方法を提供することが可能である。
このとき、シアル酸濃度を測定する方法としては、公知のシアル酸検査方法等に準じて行えばよい。一例として以下に示す。採取した検体を含めないもの又は健常者の正常値を、コントロールとすればよい。このコントロールと対比し、これよりも本技術の亜種ロンガムの増殖が高いものが、シアル酸値がコントロールよりも高いと判断すればよい。増殖確認は細菌増殖確認で一般的に使用される吸光度(可視光:OD)で行えばよい。
【0078】
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565。
〔2〕
シアル酸の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌。
〔3〕 さらに、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、からなる群より選択される1種以上の糖質の資化能を有する、細菌。
さらに好適な細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564、及び/又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565である。
【0079】
〔4〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌を含む組成物、又は、組成物への前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つの細菌の使用。前記組成物は、好適には、医薬品用組成物又は飲食品組成物である。
〔5〕 前記組成物が、プロバイオティクス組成物である、前記〔4〕記載の組成物、又は前記〔4〕記載の組成物への細菌の使用。
〔6〕 前記組成物が、少なくとも、乳幼児用、成人用、高齢者用のいずれかに用いる、前記〔4〕又は〔5〕記載の組成物、又は前記〔4〕又は〔5〕記載の組成物への細菌の使用。
〔7〕 前記組成物が、整腸用又は飲食品用に用いられる組成物である、前記〔4〕~〔6〕のいずれか1つ記載の組成物、又は前記〔4〕~〔6〕のいずれか1つ記載の組成物への細菌の使用。
〔8〕 前記組成物が、さらに、シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む、前記〔4〕~〔7〕のいずれか1つに記載の組成物、又は前記〔4〕~〔7〕のいずれか1つ記載の組成物への細菌の使用。
〔9〕 前記組成物が、さらに、アラビノキシラン、キシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、ペクチン、ガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群からなる群より選択される1種以上の糖質を含む、前記〔8〕記載の組成物、又は前記〔8〕記載の組成物への細菌の使用。
前記糖質として、前記組成物にさらに、ラクト-N-テトラオースを含むことが好適である。
このうち、より好適な糖質は、アラビノキシラン、アラビナン、ペクチックガラクタン、及びこれら由来のオリゴ糖からなる群からなる群より選択される1種以上の糖質を含むものである。前記アラビナンは、脱分岐化アラビナンが好適である。
〔10〕 前記組成物が、さらに、少なくとも、イネ科植物由来の糖質、ナス科植物由来の糖質、又は豆類由来の糖質を含む、前記〔8〕又は〔9〕記載の組成物、又は前記〔8〕又は〔9〕記載の組成物への細菌の使用。
このうち、より好適な糖質は、少なくともイネ科植物由来の糖質、又はナス科植物由来の糖質である。
【0080】
〔11〕
組成物の製造のための前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌の使用。好適には、前記〔4〕~〔10〕のいずれか1つ記載の組成物である。又は、好適には、医薬品用組成物又は飲食品組成物(より好適には、乳児用ミルク)である。
【0081】
〔12〕
組成物に用いるための前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌。好適には、前記〔4〕~〔10〕のいずれか1つ記載の組成物である。又は、好適には、医薬品用組成物又は飲食品組成物(より好適には、乳児用ミルク)である。
【0082】
〔13〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌を投与するプロバイオティクスによる疾患、症状又は状態の予防、改善又は治療方法。好適には、アレルギー症状、免疫機能障害、感染症又は神経系疾患の、予防、改善、又は治療方法である。好適には、健康増進方法、食生活の改善、腸内環境の改善、腸内の感染の予防若しくは治療、又は免疫力向上若しくは改善である。
【0083】
〔14〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖を促進するのに使用するためのプレバイオティクス組成物であり、
前記組成物が、シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含むプレバイオティクス組成物。
好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。
さらに好適には、前記シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
【0084】
〔15〕
シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖促進用のプレバイオティクス組成物へのシアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)の使用。
好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。
さらに好適には、前記シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
【0085】
〔16〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖促進用の、シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)。
好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。
さらに好適には、前記シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
【0086】
〔17〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖促進用プレバイオティクス組成物を製造するためのシアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)の使用。
好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。
さらに好適には、前記シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
【0087】
〔18〕
シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)を使用する、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌の増殖促進方法。
好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。さらに好適には、前記シアル酸、又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
【0088】
〔19〕
シアル酸又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)の資化能を有するビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌を含む、組成物の製造方法。
好適には、シアル酸又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む組成物の製造方法である。
また、好適には、医薬品用組成物又は飲食品用組成物である。また、好適には、プレバイオティクス組成物、流動食、離乳食、乳幼児用組成物(好適には乳児用ミルク)、成人用組成物、又は高齢者用組成物である。
また、好適には、発酵組成物、非発酵組成物、善玉菌含有組成物と飲食品の複数品から構成される組成物キットである。
さらに好適には、前記シアル酸又はヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、前記〔9〕又は前記〔10〕記載の糖質との併用である。
また、好適には、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つ記載の細菌である。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例及び比較例等を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
〔試験例1〕Bifidobacterium longum subsp. Longum菌株群の取得
日本国内にて様々な年齢層の糞便から採集したサンプルを滅菌した0.85%生理食塩水で希釈し、下記組成のDifcoTM Lactobacilli MRS Agar(Becton Deckinson and Company)に塗布し、30℃で嫌気培養した。
〔DifcoTMLactobacilli MRS Agar〕 プロテオースペプトンNo.3 10.0g;牛肉エキス 10.0g;酵母エキス 5.0g;デキストロース 20.0g;ポリソルベート80 1.0g;クエン酸アンモニウム 2.0g;酢酸ナトリウム 5.0g;硫酸マグネシウム 0.1g;硫酸マンガン 0.05g;リン酸二カリウム 2.0g;寒天 15.0g;精製水 1000mL;pH6.5±0.2を121℃で15分滅菌後、シャーレに分注して平板とした。
【0091】
そして得られたコロニーの中で、塗布標本の顕微鏡観察によりグラム陽性かつ桿菌もしくは不定桿菌である菌を釣菌した。これらの菌を、BL寒天培地(栄研化学社)に画線塗布し、前記と同様の方法で嫌気培養を反復し、純粋単離された菌株を得た。
〔BL寒天培地〕 肉エキス 3.0g;肝臓エキス 5.0g;酵母エキス 5.0 g;ペプトン 15.0g;ソイペプトン 3.0g;可溶性デンプン 0.5g;ブドウ糖 10.0g;リン酸二カリウム 1.0g;リン酸一カリウム 1.0g;硫酸マグネシウム 0.2g;塩化ナトリウム 0.01g;硫酸マンガン 0.00674g;L-システイン塩酸塩 0.5g;硫化第一鉄 0.01g;ポリソルベート80 1.0g;寒天 15.0g;精製水 1000mL;pH 7.2±0.2を、121℃で15分滅菌後、50℃に冷却し、5%(V/V)馬無菌脱繊血を加え、シャーレに分注して平板とした。
【0092】
さらに、純粋単離された菌株群(当該菌株のゲノムDNAの塩基配列)から、タカラバイオ社製Bacterial 16sRNA DNA PCR kitを用いて、そのプロトコールに従ってPCRに用いるサンプルDNA液を調製し、このサンプルDNA液を用いてPCRにて当該16SrRNA遺伝子を増幅し、DNA増幅産物を得、これよりこれら菌株の16SrRNA遺伝子配列を決定した。
この塩基配列情報に基づき、NCBI(National Center for Biotechnology Information、国立バイオテクノロジー情報センター)の国際塩基配列データベース(Genbank)上で、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)による16SリボソーマルRNA(SrRNA)遺伝子配列の全長についての相同性検索を行った結果、Bifidobacterium longum subsp. longum JCM 1217と最も高い相同性(98.6%以上)を示した菌を、Bifidobacterium longum subsp. Longum菌株とした。なお、これら菌株はグラム陽性であった。
【0093】
〔試験例2〕シアル酸の資化能を有する亜種ロンガムの取得
得られた複数のBifidobacterium longum subsp. Longum菌株について、糖源を表1に記載の糖のみに変更したMRS(de Man-Rogosa-Sharpe)液体培地1mLに、1v/v%ずつ接種し、嫌気条件下で37℃にて培養した。培養24時間後に濁度(OD 600)を測定し、菌株を接種しなかった培地を同様に培養したコントロールの濁度を差し引いた値を以下の基準に照らし、資化性の有無及び資化能の程度を判定した。コントロールとの差でOD 600が、0.3以上を「良好な資化性あり」、0.5以上を「より良好な資化性あり」、0.8以上を「非常に良好な資化性あり」、と判断した。参考対象として、Bifidobacterium longum subsp.longumに分類されるビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02497(受託番号:NITE BP-02497)を用いた。
【0094】
(1)LNT(ラクト-N-テトラオース):フナコシ株式会社
(2)シアル酸:京化成工業株式会社
(3)アラビノキシラン(AX)(易水溶性):小麦由来:主鎖 -4)Xyl β(1-:構成糖 Ara: Xyl = 38:62. Glucose, galactose and mannose < 1%:Megazyme社 (https://secure.megazyme.com/Arabinoxylan-Wheat-Flour-Low-Viscosity)
(4)脱分岐化アラビナン(DA)(易水溶性):テンサイ由来:主鎖 -5)Ara α(1-:構成糖1,5-α-L-Arabinan. Ara: Gal: Rha: GalUA = 88: 4: 2: 6:Megazyme社 (https://secure.megazyme.com/Debranched-Arabinan-Sugar-Beet)
(5)ペクチックガラクタン(PG)(易水溶性):ジャガイモ由来:主鎖 -4)Gal β(1-:構成糖 Gal: Ara: Rha: Xyl: GalUA = 77: 14: 3: 0.6: 5.4:Megazyme社 (https://secure.megazyme.com/Pectic-Galactan-Lupin)
なお、Galはガラクトース、Glcはグルコース、Araはアラビノース、 Xylはキシロース、Rhaはラムノース(6-デオキシマンノースとも云う)、 GalUAはガラクツロン酸の略である。
【0095】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02497株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2017年6月22日に、Bifidobacterium longum MCC0300(受託番号:NITE BP-02497)株として国際寄託した。この菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0096】
上記資化能の結果、上記シアル酸の資化能を有する菌株を表1に示し、2菌株を見出した。 具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565に、シアル酸に対して特に高い資化能を有することが認められた。
これら2菌株は、上述のとおりBifidobacterium longum subsp. Longumと同定され、同じ菌群であった。このときの相同性は、前記ロンガム NITE BP-02564では99.6%であり、前記ロンガム NITE BP-02565では99.8%であった。
【0097】
これら2菌株は、一般的に知られているBifidobacterium longum subsp. Longum(例えば参考文献1参照)とは異なり、シアル酸を資化するため、この結果から、これら2菌株から新たな菌グループ(シアル酸資化能を有する菌グループ)が存在することを見出した。
さらに、これら2菌株には、アラビノキシラン(AX)若しくは脱分岐化アラビナン(DA)、又はPG(ペクチックガラクタン)のいずれかに対して高い資化性を有することが認められた。
また、これら2菌株は、LNT(ラクト-N-テトラオース)に対して高い資化能を有する。しかし、これら2菌株は、2’-FL(フクシルラクトース)、及び、デキストリン(DE3.5)に対して資化能が認められなかった。
特に、これら2菌株は、シアル酸、アラビノキシラン(AX)、PG(ペクチックガラクタン)、の3つに対して高い資化性を有することが認められた。この結果、これら菌株は、母乳オリゴ糖成分でも、イネ科植物由来又はナス科植物由来の糖質でも、増殖可能であることが認められた。そして、これら菌グループであれば、乳幼児や高齢者といった幅広い年齢層に対して、有益に利用可能であり、特にプロバイオティクス効果が期待できると考えた。さらに、これら菌グループを利用した組成物及び、これら菌グループの増殖促進組成物も提供できると考えた。
【0098】
【0099】
なお、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565の16SrDNA遺伝子配列は、それぞれ、表2に配列番号1、表3に配列番号2として示す。
【0100】
【0101】
【0102】
[製造例1]
前記亜種ロンガム NITE BP-02564及び前記亜種ロンガム NITE BP-02565から少なくとも1種又は2種をMRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養し、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、該細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。該菌末と、おかゆとを均一に混合して組成物を得る。当該組成物を、高齢者用流動食として高齢者に提供する。菌の摂取量が1×108~1×1010CFU/kg体重/日になるようにし、1週間毎日朝食で提供する。
おかゆの原料は、米であり、米にアラビノキシランが含まれているため、本技術の高齢者用流動食を、高齢者が継続摂取することで、高齢者の腸内環境の改善効果が期待できる。また、製造例1の組成物をおかゆ製品として、同様にして、成人に継続摂取させて腸内環境の改善効果が期待できる。さらに、製造例1の組成物を乳幼児用の離乳食としても使用することができ、同様にして乳幼児に継続摂取させて乳幼児の良好な腸内フローラ形成効果が期待できる。
また、おかゆ製品の原料として、精白米に代えて玄米を使用してもよく、玄米のおかゆ製品は、玄米には外皮成分が多く含まれるため、より良好に内環境の改善効果が期待できる。
【0103】
[製造例2]
前記亜種ロンガム NITE BP-02564及び前記亜種ロンガム NITE BP-02565の両方をMRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養し、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、該細菌の顆粒状(菌末)を得る。当該顆粒状の菌末を、菌の摂取量が1×108~1×1010CFU/kg体重/日になるようにし、1週間毎日提供する。
製造例2の顆粒状の菌末を、和食を食する際に、食前、食中又は食後に摂取する。和食では、米を主食とし、ジャガイモ及び豆腐入りの味噌汁を副食として食する。本技術の乾燥菌末製品を、和食と一緒に摂取することで、大人の腸内環境の改善効果が期待できる。
また、製造例2の顆粒状の菌末を、粉ミルクを摂取するときに、配合する。シアル酸の資化能を有するため、乳幼児の場合でも良好に腸内での増殖が可能であり、乳幼児の腸内環境を改善することができる。
また、シアル酸の資化能及び米等の和食に含まれる上述の成分の資化能を有するため、大人又は高齢者の場合でも良好に腸内での増殖が可能であり、大人又は高齢者の腸内環境を改善することができる。
【0104】
[製造例3~5]
脱脂乳(森永乳業製)1160g、脱塩ホエイ粉(ドモ社製)500g、乳糖(ミライ社製)59g、及びデキストリン(東洋精糖製)52gを、水5471gに溶解し、予め苛性ソーダで溶解して脱臭した10%カゼイン溶液143gに混合する。これに、更に、魚油配合調製油脂(日油製の魚油を油脂100g当たり1.5g含有)240g、及び無塩バター(森永乳業製)33gを混合し、15MPaの圧力条件で均質化処理し、乾燥して粉ミルクを得る。この粉ミルクに、前記亜種ロンガム NITE BP-02564及び/又は前記亜種ロンガム NITE BP-02565を配合し、乾燥して、当該亜種ロンガムを含む育児用粉ミルクを製造する(製造例3)。
また、均質化処理前に、想定される菌100質量部に対して、シアル酸又はシアル酸結合オリゴ糖が10~10,000質量部になるように配合して、シアル酸又はシアル酸結合オリゴ糖を含む育児用粉ミルク(本技術の菌含まず)(製造例4)を得てもよいし、さらに前記亜種ロンガムを配合した育児用粉ミルク(本技術の菌含む)(製造例5)にしてもよい。また、これらを乳児用液体ミルクとして製造することも可能である。
適宜、シアル酸結合オリゴ糖からシアル酸を生じさせる手段(例えば、Bifidobacterium bifidum ATCC15696、Bifidobacterium bifidum PRL2010等)を用いてもよい。
本技術の菌はシアル酸の資化能を有するため、乳幼児の場合でも良好に腸内での増殖が可能であり、乳幼児の腸内環境を改善することができる。また、資化成分のHMOを含むことで、シアル酸の資化能を有する本技術の菌が良好に増殖でき、またHMOの利点も得ることができる。また、本技術は、アレルギー症状の予防・改善作用、乳糖不耐症改善作用、免疫能向上作用、感染防御作用、脳神経系形成作用、又は脳神経系活性化作用も期待することができる。
【0105】
以上のことから、シアル酸の資化能を有する亜種ロンガム、及び当該亜種ロンガムを含む組成物、当該亜種ロンガム増殖促進用組成物は、腸内でのビフィドバクテリウム属細菌の増殖を手助けすることができ、また、良好な腸内フローラ形成、腸内環境の改善等に有効に使用することができる。
【受託番号】
【0106】
(1)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02564(受託番号:NITE BP-02564)(受託日:2017年11月10日(国内寄託日)、ブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求日:2018年10月9日)、受託先:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)。
(2)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02565(受託番号:NITE BP-02565)(受託日:2017年11月10日(国内寄託日)、ブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求日:2018年10月9日)、受託先:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)。
(3)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02497(受託番号:NITE BP-02497)(受託日:2017年6月22日)、受託先:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)。
【配列表】