(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電池保持装置、電池モジュール、および電池の保持方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20230308BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20230308BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M50/20
H02J7/00 301B
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2020175169
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 弘雅
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145063(JP,A)
【文献】特開2020-020732(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H01M 50/20 - 50/298
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を保持する電池保持装置であって、
前記複数の電池のそれぞれの電圧値を検出するセンサと、
前記複数の電池を拘束する拘束装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の電池のうちの第1電池の電圧値の所定期間での変化量と、該第1電池と隣接する第2電池の電圧値の前記所定期間での変化量との差分値が所定値よりも大きい場合に、短絡を検出し、
前記短絡を検出したときに、前記拘束装置の拘束力を低下させる、電池保持装置。
【請求項2】
複数の電池を保持する電池保持装置であって、
前記複数の電池のそれぞれの電圧値を検出するセンサと、
前記複数の電池を拘束する拘束装置と、
制御装置とを備え、
前記複数の電池は、セパレータを有し、
前記拘束装置は、前記複数の電池の配列方向において前記複数の電池の両端を保持する一対のプレートを有し、
前記制御装置は、
前記複数の電池のそれぞれの電圧値に基づいて、短絡を検出し、
前記短絡を検出したときに、前記一対のプレートの間の距離を増大させることにより前記拘束装置の拘束力を低下させ、
増大させる距離は、前記セパレータの前記配列方向の厚みの10%以上50%以下の値である、電池保持装置。
【請求項3】
前記複数の電池と、請求項1
または請求項2に記載の電池保持装置とを備える電池モジュール。
【請求項4】
複数の電池のそれぞれの電圧値を検出するステップと、
前記複数の電池のうちの第1電池の電圧値の所定期間での変化量と、該第1電池と隣接する第2電池の電圧値の前記所定期間での変化量との差分値が所定値よりも大きい場合に、短絡を検出するステップと、
前記短絡が検出されたときに、前記複数の電池の拘束力を低下させるステップとを備える、電池の保持方法。
【請求項5】
セパレータを有する複数の電池のそれぞれの電圧値を検出するステップと、
前記複数の電池のそれぞれの電圧値に基づいて、短絡を検出するステップと、
前記短絡が検出されたときに、前記複数の電池の拘束力を低下させるステップとを備え、
前記複数の電池の拘束力を低下させるステップは、前記複数の電池の配列方向において前記複数の電池の両端を保持する一対のプレートの間の距離を増大させるステップを含み、
増大させる距離は、前記セパレータの前記配列方向の厚みの10%以上50%以下の値である、電池の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電池保持装置、電池モジュール、および電池の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配列された複数の電池と、該複数の電池の配列方向に沿って該複数の電池を押圧する押圧手段とを備える電池モジュールが開示されている。この電池モジュールは、複数の電池によって出力される電圧の変化を検出し、該電圧の変化が異常であると判断した場合に、該複数の電池で短絡が発生したことを判断する。電池モジュールは、短絡が発生したことを判断した場合には、押圧手段による押圧力を弱める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、電池の充放電が繰り返されることなどにより該電池が劣化すると、該電池は膨張する。したがって、特許文献1記載の発明では、電池が膨張している状態で短絡が発生していると、隣接する電池の押圧力が高まることから短絡電流が増大するという問題が生じ得る。
【0005】
本実施形態は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、短絡電流を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、電池保持装置は、複数の電池を保持する。電池保持装置は、センサと、拘束装置と、制御装置とを備える。センサは、複数の電池のそれぞれの電圧値を検出する。拘束装置は、複数の電池を拘束する。制御装置は、複数の電池のそれぞれの電圧値に基づいて、短絡を検出する。制御装置は、短絡を検出したときに、拘束装置の拘束力を低下させる。
【0007】
本開示によれば、早期に、複数の電池の短絡を早期に検出しかつ複数の電池の拘束力を低下させることから、複数の電池の短絡電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態の電池モジュールを説明するための図である。
【
図4】第1検出部による短絡の検出について示した図である。
【
図5】第2検出部による短絡の検出について示した図である。
【
図6】制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0010】
図1は、本実施の形態の電池モジュール400を説明するための図である。
図1では、電池モジュール400が車両1に搭載されている例を説明する。なお、電池モジュール400は、他の装置に搭載されてもよい。電池保持装置450は、複数の電池と、該複数の電池を収容する電池枠150と、油圧シリンダ1522と、複数の電圧センサと、制御装置200とを備える。
図1の例では、複数の電池は、6個の電池であり、電池101、電池102、電池103、電池104、電池105、および電池106である。複数の電池は、たとえば、リチウムイオン電池である。複数の電池の形状は、角型である。
【0011】
複数の電池の各々には、セパレータ、正極板、セパレータ、および負極板の4層の組合せが複数個含まれている。つまり、複数の電池の各々は、複数のセパレータを含む。たとえば、電池101は複数のセパレータ101Aを含み、電池102は複数のセパレータ102Aを含み、電池103は複数のセパレータ103Aを含み、電池104は複数のセパレータ104Aを含み、電池105は複数のセパレータ105Aを含み、電池106は複数のセパレータ106Aを含む。また、複数の電池において、正極の出力端子151および負極の出力端子152が設けられている。
【0012】
電圧センサの数は、電池の数と同数であり、
図1の例では、6個である。6個の電圧センサは、電圧センサ121、電圧センサ122、電圧センサ123、電圧センサ124、電圧センサ125、および電圧センサ126である。複数の電圧センサのそれぞれは、複数の電池の電圧値を検出する。
図1の例では、6個の電圧センサ121~126のそれぞれは、6個の電池101~106の電圧値を検出する。6個の電圧センサ121~126は、本開示の「センサ」に対応する。電圧センサ121~電圧センサ126のそれぞれで検出された電圧値(つまり、6個の電池のそれぞれの電圧値)は、制御装置200に入力される。後述するように、制御装置200は、短絡(微小短絡)を検出する。
【0013】
制御装置200は、微小短絡を検出すると、油圧シリンダ装置を制御する。また、制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)2002と、メモリ2004と、インターフェース(I/F)2006とを含む。制御装置200は、I/F2006を介して、6個の電圧センサ121~126などと接続されている。なお、便宜上、
図1の例では、制御装置200は、油圧シリンダ1522を制御するように記載されているが、実際は、油圧シリンダ装置を制御する。また、車両1には、油圧で制御される油圧制御系300が搭載されている。制御装置200は、油圧制御系300も制御する。油圧制御系300は、たとえば、油圧式のブレーキなどを含む。
【0014】
図2は、拘束装置160を説明するための図である。拘束装置160は、複数の電池101~106を、該複数の電池の配列方向(
図2の矢印α、βの方向)において拘束する。換言すれば、拘束装置160は、複数の電池101~106を、該複数の電池の配列方向に沿って押圧する。拘束力(押圧力)は、たとえば、10kNとされる。拘束装置160の拘束により、正極板と負極板との間隔を縮めることができ、その結果、複数の電池101~106の充放電効率を向上させることができる。
【0015】
拘束装置160は、第1プレート1501と、第2プレート1502と、第3プレート1503と、油圧シリンダ装置155とを備える。第1プレート1501と第2プレート1502とが、本開示の「一対のプレート」に対応する。なお、
図2では、油圧シリンダ1522を明確にするために、第3プレート1503は透過して記載されている。
図2に示すように、第1プレート1501は、複数の電池101~106の配列方向の一端を保持するように第1プレート1501が配置される。第1プレート1501は固定されている。また、第2プレート複数の電池101~106の配列方向の他端を保持するように第2プレート1502が配置される。第2プレート1502は油圧シリンダ1522により、配列方向に移動可能である。さらに、第3プレート1503が固定して配置される。なお、
図2の例では、複数の電池101~106の側部をバンド1504により保持する。
【0016】
油圧シリンダ装置155は、油圧シリンダ1522と、配管1524と、油圧ポンプ1526などを含む。油圧シリンダ装置155は、他の部材(たとえば、油タンクなど)も有するが、
図2では、この他の部材は記載されていない。
【0017】
油圧シリンダ1522は、第2プレート1502と第3プレート1503との間に配置される。ここで、油圧シリンダ1522のキャップ側が、固定されている第3プレート1503に接している。また、油圧シリンダ1522のロッド(図示せず)が、可動である第2プレート1502に接している。油タンク(図示せず)に収容されている油が、制御装置200の油圧ポンプ1526への制御に基づいて、配管1524を通じて、油圧シリンダ1522に供給される。この供給により、ロッドの突出量を制御できる。たとえば、ロッドの突出量が増加することにより(ロッドの先端がα方向に移動することにより)、第2プレート1502もα方向に移動する。したがって、拘束装置160の拘束力は増加する。一方、ロッドの突出量が減少することにより(ロッドの先端がβ方向に移動することにより)、第2プレート1502もβ方向に移動する。したがって、拘束装置160の拘束力は低下する。このように、油圧シリンダ1522への油圧に応じて、油圧シリンダ1522は、第2プレート1502を配列方向に移動させる。
【0018】
図3は、電池保持装置450の機能ブロック図である。電位保持装置は、複数のセンサ(6個の電圧センサ121~126)と、制御装置200と、拘束装置160とを備える。制御装置200は、検出部240と、制御部250とを含む。検出部240は、第1検出部241と、第2検出部242と、第3検出部243と、第4検出部244とを含む。
【0019】
検出部240は、電池101~106のそれぞれの電圧値に基づいて短絡が発生したことを検出する。検出部240は、第1検出部241~第4検出部244の少なくとも1つを有する。なお、本実施の形態では、検出部240は、第1検出部241~第4検出部244の全てを有する。
図4は、第1検出部241による短絡の検出について示した図である。
図4および後述の
図5において、縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。また、
図4および
図5においては、電池101~106のうちのいずれか1つの電池の電圧値を示す図である。
【0020】
図4の例では、タイミングT1およびタイミングT2において、電圧値が、瞬間的に低下している。瞬間的とは、極めて短い時間(たとえば、1秒間)である。このように、第1検出部241は、電池101~106のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が瞬間的に低下した場合に、電圧値が該瞬間的に低下した電池の短絡を検出する。なお、第1検出部241は、複数の電池101~106の全ての電圧値を監視することにより、複数の電池101~106のそれぞれの電圧値の瞬間的な低下の有無を検出する。
【0021】
図5は、第2検出部242による短絡の検出について示した図である。
図5の例では、第1所定期間(たとえば、長期間であり、1日)において、電圧値が、経時的に低下している。第1所定期間は、たとえば、ユーザが変更可能としてもよい。このように、第2検出部242は、電池101~106のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が、第1所定期間において経時的に低下した場合に、短絡を検出する。なお、電池の電圧値が瞬間的に増加したとしても、「電圧値が経時的に低下する」と判断される。また、第2検出部242は、複数の電池101~106の全ての電圧値を監視することにより、複数の電池101~106の全ての電圧値の経時的な低下の有無を検出する。また、第2検出部242は、期間を検出可能なタイマを有している。第2検出部242は、該タイマにより検出された期間が第1所定期間に到達したときにおいて、電圧値の経時的な低下の有無を検出する。
【0022】
次に、第3検出部243による短絡の検出の手法を説明する。複数の電池101~106のうちのいずれか1つ電池を「第1電池」と称し、該第1電池に隣接する電池を「第2電池」と称する。たとえば、電池102が、第1電池とされた場合には、第2電池は、電池101および電池103となる。
【0023】
第3検出部243は、複数の電池101~106をいずれか1つを第1電池とし、第1電池の電圧値と、該第1電池に隣接する第2電池の電圧値との差分を算出する。たとえば、電池102が第1電池とされた場合には、第3検出部243は、電池102と電池101(第2電池)との差分値を算出するとともに、電池102と電池103(第2電池)との差分値を算出する。そして、第3検出部243は、これらの差分値のそれぞれが、第1所定値より大きい場合には、短絡を検出する。つまり、1の電池の電圧値が、該1の電池と隣接する電池の電圧値よりも極端に異なる場合には、第3検出部243は短絡を検出する。
【0024】
なお、第3検出部243は、複数の電池101~106のいずれか1つの電池を所定の順序で第1電池としつつ、上記差分値を算出する。たとえば、第3検出部243は、電池101、電池102、電池103、電池104、電池105、および電池106の順序で、電池を第1電池とする。
【0025】
また、第3検出部243は、第1電池の電圧値の第2所定期間(たとえば、1日)での変化量(たとえば、低下量)と、第2電池の電圧値の該第2所定期間での変化量(たとえば、低下量)との差分値を算出するようにしてもよい。そして、第3検出部243は、この差分値が第2所定値より大きい場合に短絡を検出するようにしてもよい。なお、第2所定値および第2所定期間についてはユーザが変更可能としてもよい。
【0026】
次に、第4検出部244による短絡の検出の手法を説明する。第4検出部244は、複数の電池101~106をいずれか1つを第1電池とし、該第1電池の電圧値を取得する。また、第4検出部244は、複数の電池101~106の電圧値の平均値を算出する。そして、第4検出部244は、第1電池の電圧値と平均値との差分値を算出する。第4検出部244は、該差分値が第3所定値より大きい場合には、短絡を検出する。つまり、1の電池の電圧値が、複数の電池の平均値と極端に異なる場合には、第4検出部244は短絡を検出する。
【0027】
なお、第4検出部244は、複数の電池101~106のいずれか1つの電池を所定の順序で第1電池としつつ、上記差分値を算出する。たとえば、第4検出部244は、電池101、電池102、電池103、電池104、電池105、および電池106の順序で、電池を第1電池とする。
【0028】
また、第4検出部244は、第1電池の電圧値の第3所定期間(たとえば、1日)での変化量(たとえば、低下量)と、複数の電池101~106の平均値の該第3所定期間での変化量(たとえば、低下量)との差分値を算出するようにしてもよい。そして、第4検出部244は、この差分値が第4所定値より大きい場合に短絡を検出するようにしてもよい。なお、第4所定値および第3所定期間についてはユーザが変更可能としてもよい。また、この第1電池は、本開示の「1の電池」に対応する。
【0029】
第1検出部241~第4検出部244のうちの少なくとも1つが短絡を検出した場合には、検出信号を制御部250に出力する。検出信号は、短絡が検出されたことを示す信号である。制御部250は、検出信号を受信すると、油圧シリンダ装置155を制御することにより、拘束力を低下させる。なお、上述のように、油圧シリンダ装置155は、拘束装置160に含まれている。たとえば、制御部250は、油圧ポンプ1526を制御することにより、第2プレート1502を矢印β方向(
図2参照)に移動させる。これにより、第1プレート1501と第2プレート1502との間の距離が増加され、その結果、拘束装置160の拘束力を低下させることができる。なお、制御装置200は、拘束装置160の拘束力を低下させたときには、微小短絡が発生したことなどをユーザに報知するようにしてもよい。
【0030】
一般的に、電池は劣化すると該電池は膨張する。したがって、従来では、短絡が発生した状態で電池が膨張すると、押圧力が高まることから短絡電流が増大するという問題が生じ得る。
【0031】
そこで、本実施の形態の検出部240は、複数の電池のそれぞれの電圧値に基づいて、該複数の電池の短絡を検出する。したがって、電池保持装置450は従来と比較して、早期に短絡を検出できる。換言すれば、電池保持装置450は、微小短絡を検出できる。さらに、電池保持装置450は、微小短絡を検出した場合には、拘束装置160の複数の電池101~106に対する拘束力を低下させる。したがって、電池101~106のうちの少なくとも1つの電池が劣化して膨張したとしても拘束力が低下されていることから、短絡電流を抑制することができる。
【0032】
以下に、本実施の形態の電池保持装置450が、早期に短絡を検出できる理由を説明する。従来の短絡を検出する手法では、複数の電池の電圧値の合計値を検出し、該合計値が、正常範囲に属さなくなった場合(たとえば、正常範囲の下限値を下回った場合)、複数の電池の短絡を検出していた。しかしながら、この手法では、複数の電池のそれぞれの電圧値の正常範囲の上限値の合計値および下限値の合計値をそれぞれ、電圧値の合計値の正常範囲の上限値および下限値としていた。したがって、正常範囲の幅が大きくなってしまう。よって、たとえば、複数の電池のうちの1個の電池の電圧値が低下したとしても、幅が広い正常範囲の下限値を下回らないことから、該1個の電池の電圧値の低下に基づく短絡を検出することができなかった。
【0033】
これに対し、本実施の形態の電池保持装置450は、複数の電池のそれぞれの電池の電圧値を検出し、該電圧値の低下に基づいて短絡を検出する。したがって、短絡を検出するための正常範囲の幅を従来と比較して、小さくすることができる。よって、本実施の形態の電池保持装置450では、従来と比較して、早期に短絡を検出することができる。
【0034】
また、検出部240のうちの第1検出部241は、複数の電池101~106のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が瞬間的に低下した場合に、短絡を検出する(
図4参照)。したがって、検出部240は、早期に短絡を検出することができる。
【0035】
また、検出部240のうちの第2検出部242は、複数の電池101~106のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が第1所定期間において経時的に低下した場合に、短絡を検出する(
図5参照)。したがって、検出部240は、早期に短絡を検出することができる。
【0036】
また、検出部240のうちの第3検出部243は、複数の電池101~106のうちの第1電池の電圧値と、該第1電池と隣接する第2電池の電圧値との差分値が第1所定値よりも大きい場合に、短絡を検出する。したがって、検出部240は、早期に短絡を検出することができる。
【0037】
また、検出部240のうちの第4検出部244は、複数の電池101~106のうちの第1電池の電圧値と、複数の電池101~106の平均電圧値との差分値が第2所定値よりも大きい場合に、短絡を検出する。したがって、検出部240は、早期に短絡を検出することができる。
【0038】
また、本実施の形態の電池保持装置450は、油圧シリンダ装置155を用いて拘束力を低下する。
図1および
図2で示したように、電池保持装置450は、油圧制御系(たとえば、油圧ブレーキなど)を備える車両1に搭載される。したがって、制御装置200は、拘束装置160の制御および油圧制御系300の制御を、油圧の制御という観点で共通化できる。したがって、拘束装置160の制御および油圧制御系300の制御が別の制御である電池保持装置と比較して、制御負担を軽減できる。
【0039】
図6は、制御装置200の処理を示すフローチャートである。
図6の処理は、予め定められた期間が経過する毎に実行される。ステップS2において、制御装置200は、複数の電池101~106のそれぞれの電圧値を検出する。次に、ステップS4において、制御装置200は、複数の電池のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が瞬間的に低下したか否かを判断する。該電圧値が瞬間的に低下したと判断された場合には(ステップS4でYES)、微小短絡が検出されたということなので、ステップS12に処理は進む。ステップS12において、制御装置200は、油圧シリンダ装置155を制御することにより、拘束装置160の拘束力を低下させる。
【0040】
一方、ステップS4において、該電圧値が瞬間的に低下していないと判断された場合には(ステップS4でNO)、ステップS6に処理は進む。
【0041】
ステップS6において、複数の電池101~106のそれぞれの電圧値のうち少なくとも1つの電圧値が第1所定期間において経時的に低下した否かを判断する。該電圧値が経時的に低下したと判断された場合には(ステップS6でYES)、ステップS12に処理は進む。また、ステップS6において、該電圧値が経時的に低下していないと判断された場合には(ステップS6でNO)、ステップS8に処理は進む。
【0042】
ステップS8において、制御装置200は、第1電池の電圧値と、該第1電池に隣接する第2電池の電圧値との差分値が第1所定値以上であるか否かを判断する。該差分値が第1所定値以上であると判断された場合には(ステップS8でYES)、ステップS12に処理は進む。また、ステップS8において、該差分値が第1所定値未満であると判断された場合には(ステップS8でNO)、ステップS10に処理は進む。
【0043】
ステップS10において、第1電池の電圧値と、複数の電池101~106の電圧平均値との差分値が第2所定値以上であるか否かを判断する。該差分値が第2所定値以上であると判断された場合には(ステップS10でYES)、ステップS12に処理は進む。また、ステップS10において、該差分値が第2所定値未満であると判断された場合には(ステップS10でNO)、
図6の処理は終了する。
【0044】
次に、拘束装置160による拘束力を低下させるための第2プレート1502の最適な移動距離を説明する。第2プレート1502の移動距離(一対のプレートの間の増大距離)は、複数の電池の各々が有する複数のセパレータの合計厚みの10%以上50%以下の範囲(以下、「最適範囲」とも称する)に属することが好ましい。たとえば、電池モジュールが10個の電池で構成されており、1個の電池に200枚のセパレータが含まれており、1枚のセパレータの厚みが0.015mmである場合には、複数の電池の各々が有する複数のセパレータの合計厚みは、30mmとなる。したがって、最適範囲は、3mm以上、15mm以下の範囲となる。たとえば、第2プレート1502の最適な移動距離は、5mmとすればよい。
【0045】
次に、拘束装置160による拘束力を低下させるための第2プレート1502の最適な移動距離についての実験結果を説明する。まず、第1の実験結果を説明する。この第1の実験では、比較例の1つの電池モジュールA1と、
図2の構成が採用された5つの電池モジュールB1~B5とが用いられる。6個の電池モジュールA1、B1~B5の各々は、10個の容量50Ahの角形リチウムイオン電池(W148×H91×D26.5)により構成されている。また、該10個の電池は、直列接続されている。
【0046】
電池モジュールA1において、該10個の電池の配列方向の両端にそれぞれ1対の固定プレートが配置されており、配列方向において10kNの拘束力が加わるように該10個の電池は固定される。また、6個の電池モジュールA1、B1~B5においては、1つのプレートと1つの電池との間にフィルム状の面圧センサを配置させて、拘束力を測定できるようにした。6個の電池モジュールA1、B1~B5のそれぞれの内部のセパレータ上の1か所に粒径25μmの銅球が配置された。この銅球により電池の正負極間で短絡が発生しやすいようにした。
【0047】
6個の電池モジュールA1、B1~B5において、供給される電流が50Aであり、1つの電池の充電カットオフ電圧が4.2Vであり、1つの電池の放電カットオフ電圧が2.5Vであり、充電終了から放電開始まで、および放電終了から充電開始までの休止時間が1時間であり、周辺温度が-10度であるという条件で充放電が行われた。6個の電池モジュールA1、B1~B5において、500回(500サイクル)の充放電が実行されたときに、電池の膨張により拘束力は約30kNとなった。また、銅球が配置された電池に
図4で示した電圧値の異常が検出された。具体的には、電圧値が、0.05~0.2Vの範囲で約50m秒間で低下した。これは、低温で電池の内部抵抗が高いために負極表面にリチウム金属が析出し、セパレータ内を導通する回路が生成された状態(つまり、短絡が生じている状態)になっていることを示している。
【0048】
図7は、第1の実験結果を示す図である。
図7においては、電池モジュールA1、B1~B5の各々において、500サイクルの充放電後の充電時の調整後の拘束力(kN)と、拘束力が調整されたことによる第2プレート1502(
図2参照)の移動距離と、1つの電池モジュール(つまり10個の電池)に含まれる全てのセパレータの厚みに対する移動距離の割合(%)とが示されている。さらに、
図7においては、実行された充放電の回数を示す。
【0049】
上述の短絡が生じた状態で、電池モジュールB2~B5においては、油圧シリンダ装置155を制御することにより、電池モジュールB2~B5のそれぞれの拘束力を、
図7に示す拘束力に変更した。なお、電池モジュールB1については、拘束力を変更していない(30kNの拘束力が維持された)。また、電池モジュールAについては、拘束力を低下させる機構を有していないため、30kNの拘束力が維持されている。
【0050】
また、6個の電池モジュールA1、B1~B5において、500サイクルの充放電以降、さらに、充放電を繰り返した。その結果、電池の膨張に起因して充放電時の拘束力が増加し、電池モジュールA、B1、B2においては、電圧値の異常(
図4参照)が高頻度で検出され、電池モジュールの温度が30度以上となった。このため、電池モジュールA、B1、B2の充放電を停止した(
図7の「実行したサイクル数」参照)。また、電池モジュールB5においては、拘束力を低下させた後、充放電容量が不安定になったため、充放電を停止した。充放電容量が不安定になった理由は、電池モジュールB5における第2プレート移動距離が長い、つまり、拘束力の低下度合いが過度に大きくなったことである。一方、電池モジュールB3、B4については、2000回以上、充放電が行われたが、電圧および温度に異常が発見されなかった。電池モジュールB3、B4については、第2プレート1502の移動距離が、上述の最適範囲に属する。この第1の実験結果に示されるように、第2プレート1502の移動距離は、上述の最適範囲に属することが好ましい。
【0051】
次に、第2の実験結果を説明する。この第2の実験では、比較例の1つの電池モジュールA2と、
図2の構成が適用された5つの電池モジュールB6~B10とが用いられる。また、この実験における周辺温度は25度とされる。それ以外の実験の条件については第1の実験と同一である。
【0052】
図8は、第2の実験結果を示す図である。6個の電池モジュールA2、B6~B10において、1000回(1000サイクル)の充放電が実行されたときに、電池の膨張により拘束力は約25kNとなった。この状態で、電池モジュールB7~B10においては、油圧シリンダ装置155を制御することにより、電池モジュールB7~B10のそれぞれの拘束力を、
図8に示す拘束力に変更した。その後、充電状態を維持したまま、1週間、電圧測定を継続した。その結果、電池モジュールA1、B6、B7の銅球が配置された電池については、1日当たりの電圧低下量が多くなった(
図5参照)。また、電圧低下量が小さい電池モジュールB8~B10について、充放電を再開したところ、第2プレート1502の移動距離が長い電池モジュールB10については充放電容量が不安定になった。一方、電池モジュールB8、B9については、充放電において特段の支障は生じなかった。この第2の実験結果に示されるように、第2プレート1502の移動距離は、上述の最適範囲に属することが好ましい。
【0053】
次に変形例を説明する。拘束装置160は、複数の電池の拘束力を弱めることができるのであれば、他の構成としてもよい。たとえば、拘束装置160は、油圧シリンダ装置ではなく、たとえば、第3プレート1503を省略し、第1プレート1501、第2プレート1502、およびバンド1504の少なくとも1つに拘束ワイヤなどを設けるようにしてもよい。そして、制御装置200が、拘束ワイヤを制御する(たとえば、拘束ワイヤにより引っ張られる力を弱める)ことにより、第1プレート1501と第2プレート1502との間の距離を長くすることができる。これにより、複数の電池の拘束力を低下させることができる。また、この拘束ワイヤが接続されたトグルクランプが第1プレート1501、第2プレート1502、およびバンド1504の少なくとも1つに設けられるようにしてもよい。そして、制御装置200は、このトグルクランプを制御することにより、複数の電池の拘束力を低下させるようにしてもよい。
【0054】
また、
図2において、第2プレート1502および第3プレート1503の間に油圧シリンダ1522ではなく、特定の素子を設けるようにしてもよい。この特定の素子は、付与するパラメータにより第2プレート1502を移動させることができる素子である。この素子は、たとえば、付与する電圧に応じて第2プレート1502を移動させるピエゾ(圧電)素子であってもよい。また、この素子は、付与する温度に応じて第2プレート1502を移動させるバイメタル素子としてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施形態の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 車両、101,102,103,104,105,106 電池、200 制御装置、160 拘束装置。450 電池保持装置。