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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】角度検出器
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230308BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/244 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020518258
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017642
(87)【国際公開番号】W WO2019216235
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018092021
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 一久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直幸
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519296(JP,A)
【文献】特開昭60-170710(JP,A)
【文献】特開2012-132714(JP,A)
【文献】特開2016-118491(JP,A)
【文献】特開2005-214920(JP,A)
【文献】米国特許第6433536(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転方向に対する一周に沿って複数の目盛を有する目盛スケールと、前記一周に沿って配置された少なくとも2つのセンサとを備え、前記回転体の回転による角度変化量を検出する角度検出器であって、
前記少なくとも2つのセンサの各々は、前記複数の目盛に基づいて前記角度変化量に応じた出力信号を出力し、
前記出力信号は、前記複数の目盛のうちの1目盛分を1周期1次とする基本波成分と、前記基本波成分の2以上の整数倍を次数とする高調波成分とを含み、前記出力信号から算出された前記角度変化量は、前記高調波成分に起因して、1目盛分を1周期1次としてその整数倍の次数成分を有する少なくとも1つの角度誤差成分を含み、
前記少なくとも2つのセンサの個数は、前記目盛スケールの目盛数前記少なくとも1つの角度誤差成分の次数成分である1以上の整数との積を割り切ることができない整数に基づいて決定され、更に、前記積を前記割り切ることができない整数で除算した場合の余りに基づいて決定されている、角度検出器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの角度誤差成分は、複数の角度誤差成分であって、前記少なくとも2つのセンサの個数は、前記目盛スケールの目盛数及び前記複数の角度誤差成分の各々の次数成分に基づいて決定されている、請求項1に記載の角度検出器。
【請求項3】
前記少なくとも2つのセンサの個数は更に、前記余りの大きさに応じた重み付けに基づいて決定されている、請求項1又は2に記載の角度検出器。
【請求項4】
前記一周に沿って略等間隔に、前記割り切ることができない整数に一致する数のセンサ配置予定箇所が設定され、前記センサ配置予定箇所の何れかに、前記少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている、請求項の何れか一項に記載の角度検出器。
【請求項5】
前記センサ配置予定箇所の隣接する2つに、前記少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている、請求項に記載の角度検出器。
【請求項6】
前記センサ配置予定箇所の各々に、前記少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている、請求項に記載の角度検出器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの角度誤差成分は、前記少なくとも2つのセンサの種類によって相違する、請求項1~の何れか一項に記載の角度検出器。
【請求項8】
前記少なくとも2つのセンサのうちの1つのセンサからの出力信号とそれ以外のセンサからの出力信号との間の出力信号差を求めることによって自己校正されている、請求項1~の何れか一項に記載の角度検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転運動による角度変化量を検出するための角度検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転運動による角度変化量を検出するために、エンコーダ、レゾルバ、インダクトシン、等の角度検出器が使用される。角度検出器は、複数の目盛が配置された目盛スケールと、その複数の目盛を読み取るセンサと、センサからの読み取り情報を回転体の角度変化量に変換する制御部とを備える。目盛スケール又はセンサの何れか一方が回転体に取り付けられている。回転体の角度変化量をより高分解能に読み取るためには、目盛スケールの1目盛の角度間隔を狭めればよいが、目盛は、例えば加工により刻まれるために、無限に細かくすることはできない。より詳細に回転体の角度変化量を測定するために、センサからの読み取り情報に基づく出力信号を制御部で数値演算し、1目盛を細かく分割する方法がある。角度検出器に使用されるセンサからの出力信号は、通常、矩形波若しくは正弦波の形であって、1目盛を1周期360°とし、位相が90°異なる2相の信号である場合が多い。センサからの出力信号が正弦波信号の場合には、2相信号は1目盛を1周期としたcosθ、sinθの形状となる。1目盛を分割する方法として、例えば2相信号を逆正接演算する手法が上げられる(すなわち、θ=tan-1(sinθ/cosθ))。この手法ではセンサからの出力信号の振幅の検出分解能に応じ、角度分解能を向上させることができる。しかし、センサからの出力信号には、理想的な1目盛1周期の正弦波信号とは別に、高調波成分の歪が含まれているために、回転体の真の角度変化量だけでなく、高調波成分の歪に応じて、真の角度変化量とは無関係な量も含まれて測定される。すなわち、指令に基づく回転体の回転による真の角度変化量とセンサからの出力信号を制御部によって変換して得られた測定による角度変化量との間には、高調波成分の影響による真の角度変化量とは無関係な誤差(角度誤差)が生じる。真の角度変化量及び角度誤差を測定するためには、センサからの出力信号に含まれる高調波成分の歪を除去する必要がある。
【0003】
更に、角度検出器において、回転体の回転軸線と目盛スケールの中心軸線とは、同軸線上に配置されていることが望ましい。しかし、一般的には、これらの軸線は完全には一致しておらず、これらの軸線間のオフセット(軸線偏心)によって、指令に基づく回転体の回転による真の角度変化量とセンサからの出力信号を制御部によって変換して得られた測定による角度変化量との間には角度誤差が生じる。また、目盛スケールの目盛は、例えば加工により刻まれるため、目盛パターン中心と目盛スケールの回転中心自体がオフセットしていること、1目盛の間隔が理想値に対して誤差を持ち複数の目盛において不均等となっていること、等の品質の問題がある。加えて、角度検出器そのものの検出精度も構成部品の劣化に伴い経年変化すること、等から、これらによっても回転体の回転による真の角度変化量とセンサからの出力信号を制御部によって変換して得られた測定による角度変化量との間には角度誤差が生じる。
【0004】
このような問題により、特許文献1には、位相が90°異なる2相正弦波状信号に含まれる3次の高調波成分の歪を検出して除去する方法が開示され、特許文献2には、位相が90°異なる2相正弦波状信号に含まれる3次及び5次の高調波成分の歪を検出して除去する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3~5には、回転軸線に固定された目盛り盤の周囲に、複数の第1目盛り読み取りヘッドと、1個の第2目盛り読み取りヘッドとを備え、下記のように、第2目盛り読み取りヘッドの角度信号Ai,1と各第1目盛り読み取りヘッドの角度信号Ai,jとの差SAi,jを求めて平均値SAVを得ることにより自己校正を行う角度検出器が開示されている。ここで、iは目盛番号(1~Nの整数、Nは目盛の総数)、jは目盛り読み取りヘッド番号(1~Nの整数、Nは目盛り読み取りヘッドの総数)である。
【数1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-112862号公報
【文献】特開2008-304249号公報
【文献】特開2006-98392号公報
【文献】特開2011-99802号公報
【文献】特開2011-99804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2においては、センサに起因する特定の高調波成分の歪による電気的角度誤差を検出して除去することができる。しかし、センサからの出力信号には、目盛の精度、センサの特性や方式、等によって様々な高調波成分の歪が含まれ、特定の高調波成分の歪を検出することができるだけでは、様々なセンサに対して統一的に高調波成分の歪を除去することはできない。例えば、センサの読み取り方式が光学式と磁気式とでは歪の特性が全く異なり、磁気式でも読み取る目盛が着磁リングと歯車とでは歪の特性が全く異なる。また、センサからの出力信号を増幅するアンプ等の機器を用いる場合、それらの特性による高調波成分の歪も発生する。よって、ある場合では高調波成分の歪を除去することができたとしも、別の場合では高調波成分の歪を除去することができないこともある。
【0008】
特許文献3~5においては、角度検出器は、回転体の回転軸線と目盛スケールの中心軸線との軸線偏心、目盛スケールの品質、角度検出器の経年変化、等によって生じる機械的角度誤差を検出して除去することができる。この手法を用いて更に高精度に回転体の角度変化量を得るためには、1目盛の角度間隔を狭くすることや、高精度の目盛り読み取りヘッドを使用すること等が有効であるが、角度検出器の高コスト化に繋がりやすい。しかし、低コスト化のため目盛の間隔が広い目盛スケールや精度の低い目盛り読み取りヘッドを使用すると、目盛り読み取りヘッドが出力する信号に含まれる高調波成分が電気的角度誤差に影響する量が大きくなり、機械的角度誤差よりも支配的な誤差として現れるため、高精度に回転体の角度変化量を得ることができない。
【0009】
従って、本発明の目的は、センサに起因する電気的角度誤差だけでなく、回転体の取り付け精度、目盛スケールの品質、角度検出器の経時変化、等に起因する機械的角度誤差を同時に除去して、高精度に回転体の角度変化量が得られ、低コスト化が可能な角度検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの観点によれば、角度検出器が、回転軸線を中心に回転する回転体と、回転体の回転方向に対する一周に沿って複数の目盛を有する目盛スケールと、回転体の回転方向に対する一周に沿って配置された少なくとも2つのセンサとを備えて、回転体の回転による角度変化量を検出し、少なくとも2つのセンサの各々は、複数の目盛に基づいて角度変化量に応じた信号を出力し、出力信号は、複数の目盛のうちの1目盛分を1周期1次とする基本波成分と、基本波成分の2以上の整数倍を次数とする高調波成分とを含み、出力信号から算出された角度変位量は、高調波成分に起因して、1目盛分を1周期1次としてその整数倍の次数成分を有する少なくも1つの角度誤差成分を含み、少なくとも2つのセンサの個数は、目盛スケールの目盛数及び少なくとも1つの角度誤差成分の次数に基づいて決定されている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、少なくとも1つの角度誤差成分は、複数の角度誤差成分であって、少なくとも2つのセンサの個数は、目盛スケールの目盛数及び複数の角度誤差成分の各々の次数に基づいて決定されている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、少なくとも2つのセンサの個数は、目盛スケールの目盛数と少なくとも1つの角度誤差成分の次数である1以上の整数との積を割り切ることができない整数に基づいて決定されている。
【0013】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、少なくとも2つのセンサの個数は更に、目盛スケールの目盛数と角度誤差成分の次数との積を割り切ることができない整数で除算した場合の余りに基づいて決定されている。
【0014】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、少なくとも2つのセンサの個数は更に、目盛スケールの目盛数と角度誤差成分の次数との積を割り切ることができない整数で除算した場合の余りの大きさに応じた重み付けに基づいて決定されている。
【0015】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、回転体の回転方向に対する一周に略等間隔に、割り切ることができない整数に一致する数のセンサ配置予定箇所が設定され、センサ配置予定箇所の何れかに、少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている。
【0016】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、センサ配置予定箇所の隣接する2つに、少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている。
【0017】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、センサ配置予定箇所の各々に、少なくとも2つのセンサが1つずつ配置されている。
【0018】
本発明の一具体例によれば、角度検出器において、少なくとも1つの角度誤差成分は、少なくとも2つのセンサの種類によって相違する。
【0019】
本発明の一具体例によれば、角度検出器は、少なくとも2つのセンサのうちの1つのセンサからの出力信号とそれ以外のセンサからの出力信号との間の出力信号差を求めることによって自己校正されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、角度検出器は、センサからの出力信号に含まれる歪に起因する電気的角度誤差と、回転体の取り付け精度、目盛スケールの品質、角度検出器の経時変化、等に起因する機械的角度誤差とを同時に除去して、高精度に回転体の角度変化量が得られ、また、角度検出器は、センサに起因することなく、統一的に高精度に回転体の角度変化量が得られることができる。更に、本発明によれば、安価で精度の低いセンサを使用して回転体の角度変化量の精度を大幅に向上でき、従来の高価で精度の高いセンサを使用する必要はなく、角度検出器の低コスト化を達成することができる。
【0021】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の一実施形態としての、目盛スケールが取り付けられた回転体の角度変化量を検出する角度検出器を示す概略図である。
図1B】本発明の別の実施形態としての、目盛スケールが取り付けられた回転体の角度変化量を検出する角度検出器を示す概略図である。
図2A】本発明の別の実施形態としての、少なくとも2つのセンサが取り付けられた回転体の角度変化量を検出する角度検出器を示す概略図である。
図2B】本発明の別の実施形態としての、少なくとも2つのセンサが取り付けられた回転体の角度変化量を検出する角度検出器を示す概略図である。
図3図1A図2Bの角度検出器の制御部の概略図である。
図4A】センサが1目盛中の位置を検出した際に出力する疑似正弦波信号を示す。
図4B図4Aの擬似正弦波信号により算出した、1目盛中の位置に対する測定角度と理想角度とを示す。
図4C図4Aの擬似正弦波信号により算出した、1目盛中の位置に対する測定角度と理想角度との間の角度誤差を示す。
図5A】目盛数を一定にして、目盛スケール一周の角度誤差次数をセンサ配置予定箇所数で除算して割り切れる/割り切れないに基づいて判定した結果を示す表である。
図5B】目盛数を一定にして、目盛スケール一周の角度誤差次数をセンサ配置予定箇所数で除算した場合の余りの大きさに応じた重み付けに基づいて判定した結果を示す表である。
図5C】センサ配置予定箇所数を一定にして、目盛スケール一周の角度誤差次数をセンサ配置予定箇所数で除算した場合の余りの大きさに応じた重み付けに基づいて判定した結果を示す表である。
図6A】センサによる電気的角度誤差と回転体の取り付け精度等による機械的角度誤差が除去される前の回転体の指令角度に対する角度誤差を示す。
図6B】回転体の指令角度を目盛に換算した場合の図6Aの一部の拡大図である。
図6C】センサによる電気的角度誤差と回転体の取り付け精度等による機械的角度誤差が除去される前の回転体の一周を1周期1次とした角度誤差に対してフーリエ変換を実行することによって得られたスペクトル強度を示す。
図7A】センサによる電気的角度誤差と回転体の取り付け精度等による機械的角度誤差が除去された後の回転体の指令角度に対する角度誤差を示す。
図7B】回転体の指令角度を目盛に換算した場合の図7Aの一部の拡大図である。
図7C】センサによる電気的角度誤差と回転体の取り付け精度等による機械的角度誤差が除去された後の回転体の一周を1周期1次とした角度誤差に対してフーリエ変換を実行することによって得られたスペクトル強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
図1A図2Bに、回転軸線108を中心に回転する回転体105と、回転体105の回転方向106に対する一周に沿って複数の目盛103を有する目盛スケール102と、回転体105の回転方向106に沿って、センサ配置予定箇所202a~202iに配置された少なくとも2つのセンサ201a~201iとを備える角度検出器101を示す。ここで、目盛スケール102が有する目盛103とは、例えば加工により目盛スケール102に実際に刻まれたような視覚的に認識できるものだけではなく、目盛スケール102における所定の位置間隔を1目盛分の間隔としてセンサ201a~201iに対して読み取らせることができるものであればよく、目盛スケール102は、そのような目盛103が複数配置された部材である。角度検出器101の代表例としては、エンコーダ、レゾルバ、インダクトシン、等があるが、本発明を適用することができれば特に原理は問われない。また、センサ201a~201iは、目盛スケール102の目盛103を読み取ることができれば特に原理は問われない。センサ201a~201iとしては、例えば、光学式センサ、磁気式センサ、コイル、等がある。また、目盛スケール102は、センサ201a~201iが目盛103を読み取ることができるものであればよく、材質、目盛103の配置の方法、等は問われない。センサ201a~201iは、回転体105の回転方向106に対する一周107、すなわち全周に沿ってセンサ配置予定箇所202a~202iに配置されている。角度検出器101は、回転体105の回転による角度変化量Xを、回転方向106に沿って配置された複数の目盛103を使用することによってセンサ201a~201iからの出力信号に基づいて検出する。センサ201a~201iの各々は、複数の目盛103に基づいて、回転体105の回転による角度変化量に応じた信号204を出力する。ここで、隣接する2つの目盛103間の幅、すなわち1目盛の角度間隔104はXで示される。
【0025】
図1Aには、回転体105の一周107に沿って2つのセンサ201a、201bが配置され、目盛スケール102が取り付けられた回転方向106に沿って回転する回転体105の角度変化量Xを検出する角度検出器101が示され、図1Bには、回転体105の一周107に沿って、9つのセンサ201a~201iが配置され、目盛スケール102が取り付けられた回転方向106に沿って回転する回転体105の角度変化量Xを検出する角度検出器101が示され、図2Aには、回転体105の一周107に沿って、3つのセンサ201a、201b、201dが配置され、3つのセンサ201a、201b、201dが取り付けられた回転方向106に沿って回転する回転体105の角度変化量Xを検出する角度検出器101が示され、図2Bには、回転体105の一周107に沿って、9つのセンサ201a~201iが配置され、9つのセンサ201a~201iが取り付けられた回転方向106に沿って回転する回転体105の角度変化量Xを検出する角度検出器101が示される。
【0026】
図3に示すように、角度検出器101は更に、センサ201a~201iに接続され、センサ201a~201iの読み取り情報を回転体105の角度変化量Xに変換する制御部203を備える。変換された角度変化量Xは、表示装置211、等に出力され、又は、回転体105を駆動するモータ、回転体105の制御装置、等にフィードバックされてもよい。
【0027】
センサ201a~201iは、一般的に、目盛スケール102との相対運動が生じたとき、読み取られた目盛103と1目盛の角度間隔104に基づいて、複数の目盛103のうちの1目盛を1周期1次とし角度変化量に応じて振幅が変化する出力信号204を出力することができる。また、制御部203は、センサ201a~201iからの出力信号204と、ある時間までに数えた目盛検出数Mとから、回転体105の角度変化量Xに変換することができる。図1A図2Bに示すように、目盛スケール102とセンサ201a~201iとの間の相対運動によって、例えば、センサ201a~201iからそれぞれ図5Aに示すような位相が90°異なる2つの擬似正弦波信号(A相信号(A(0))及びB相信号(B(0)))が出力信号204として出力される場合、制御部203は、センサ201a~201iのそれぞれによって出力された擬似正弦波信号を取得し、各センサ201a~201iからの2つの擬似正弦波信号のうちの位相が90°遅れた一方の擬似正弦波信号(B相信号(B(0))を他方の擬似正弦波信号(A相信号(A(0))で除算したものを逆正接演算することによって1目盛を分割して、以下のように回転体105の仮の角度変化量X (0)を算出する。
【数2】

ここで、θ(0)=tan-1(B(0)/A(0))は0~2πの範囲となるように数値処理されている。また目盛検出数Mは、θ(0)=tan-1(B(0)/A(0))が0と2πの境界を超えるタイミングで、そのカウント値を増減させる等の処理で検出可能であって、その方法については問われない。図1A図2Bのように、目盛スケール102又はセンサ201a~201iを回転体105に取り付けて回転させる場合には、制御部203は、回転体105の回転による角度変位量Xとして算出できる。
【0028】
しかし、この算出された仮の角度変化量X (0)と理想とされる角度検出器101より得られるべき回転体105の角度変化量Xpidealとの間には誤差が生じる(理想的には、X=Xpidealになるのがよい)。図1A図2Bの回転体105が等速に回転運動して、回転体105の角度が変化するように回転指令した場合、図4Bに示すように、理想的には、回転体105が指令値に対して誤差なく回転運動が可能であると仮定すると、回転体105の回転運動によって回転体105の角度が増加するに従って、センサ201a~201iからの出力信号204から算出された角度変化量Xは線形的に増加し、回転体105の角度と理想的な角度変化量Xpidealとの間に角度誤差は無い。しかし、実際には、センサ201a~201iからの出力信号204から算出された角度変化量Xと理想的な角度変化量Xpidealとの間には角度誤差が生じる。この角度誤差の一因として、算出された角度変化量Xには、回転体105の回転に伴い複数の目盛103を検出する過程において、回転体105の回転軸線108と目盛スケール102の中心軸線との軸線偏心、目盛スケール102の品質、角度検出器101の経年変化、等によって生じる余分な量(機械的角度誤差と呼称する)が含まれ、また、出力信号204にはセンサ201a~201iの特性に起因する余分な歪が含まれていることにある(センサ201a~201iの特性に起因する角度誤差を電気的角度誤差と呼称する)。より具体的には、このセンサ201a~201iによる電気的角度誤差の原因は、センサ201a~201iからの出力信号が、複数の目盛103のうちの1目盛分を1周期1次とする基本波成分と、基本波成分の2以上の整数倍を次数とする高調波成分とを含んでいることにある。例えば、センサ201a~201iからそれぞれ図4Aに示すような位相が90°異なる2つの擬似正弦波信号(A相信号(A(0))及びB相信号(B(0)))が出力信号204として出力される場合、センサ201a~201iから出力された2つの擬似正弦波信号が、複数の目盛103のうちの1目盛分を1周期1次とする理想波となる基本波成分cos(θ)、sin(θ)と、次のように、基本波成分の2以上の整数倍を次数とする高調波成分(次数kが2以上の整数の場合の成分)を含んでいることにあって、このセンサ201a~201iの高調波成分が、上記[数2]のように逆正接演算する際に角度変化量Xに影響を及ぼし、図4Cに示すように、電気的角度誤差が生じている。
【数3】

ここで、a及びbは、1目盛を1周期とする1次の基本波成分の振幅を1とした場合の次数kの高調波成分のゲインであって、φa及びφbは、次数kの高調波成分の基本波成分に対する位相差である。なお、a、b、φa、φbは、一般的には、異なる目盛103であっても変化しないか、又は変化したとしても小さい相違である。なお、a、b、φa、φbは、センサ201a~201iや目盛スケール102の特性、検出原理により決定付けられ、例えば、センサ201a~201iが光検出型センサであれば目盛スケール102の目盛パターンの反射・透過特性や受光部の感度特性により決定付けられ、センサ201a~201iが半導体磁気抵抗型センサであれば半導体の磁気抵抗特性により決定付けられ、また、半導体磁気抵抗型センサを使用する場合において、磁気検出に平歯車を使用すると、歯の形状特性により決定付けられる。このように、出力信号204に含まれる高調波成分は、センサ201a~201i等の種類によって相違する。なお、センサ201a~201iは、実質的に同一の基本波成分及び高調波成分を含む出力信号204を出力するセンサであることが好ましい。例えば、センサ201a~201iは同一の種類であってもよい。
【0029】
また、上記のように、角度誤差には、センサ201a~201iの特性に起因する電気的角度誤差だけでなく、回転体105の取り付け精度、目盛スケール102の品質、角度検出器101の経時変化、等に起因する機械的角度誤差も含まれている。
【0030】
そこで、センサ201a~201iの特性に起因する電気的角度誤差、及び回転体105の取り付け精度、目盛スケール102の品質、角度検出器101の経時変化、等に起因する機械的角度誤差を除去するために、上記のように、角度検出器101は、回転体105の回転方向106に対する一周に沿って複数の目盛103を有する目盛スケール102と、回転体105の回転方向106に対する一周に沿って、センサ配置予定箇所202a~202iに配置された少なくとも2つのセンサ201a~201iとを備え、更に、図3に示すように、制御部203は、これらのセンサ201a~201iからの出力信号204を演算処理する信号処理部209を備える。
【0031】
なお、制御部203は、信号処理部209による出力信号204の演算処理に先立って、出力信号204を取得するための入力部205、出力信号204のノイズを除去するノイズフィルタ206、出力信号204を増幅する増幅器207、及び出力信号204をアナログ値からデジタル値に変換するA/D変換器208を備えていてもよい。デジタル値に変換された出力信号204が、信号処理部209に出力される。また、制御部203は、信号処理部209によるデータの書き込み/読み出しを行う記憶部210を備えていてもよい。信号処理部209は、出力信号204が位相の異なる2相の信号である場合には、2相間の振幅、オフセット、位相差を調整できてもよい。なお、調整しない場合でも各センサの信号特性が同レベルであれば、これらの値はほぼ同じになると考えられ、本発明によって電気的角度誤差を除去することができる。
【0032】
センサ201a~201iからの出力信号204のうちの1つを基準センサ(例えば、センサ201a)として、基準センサからの出力信号204と、それ以外の各センサ(例えば、センサ201b~201i)の出力信号204との間の出力信号差を求め、求められたそれ以外のセンサとの出力信号差についての平均値を得ることによって、機械的角度誤差を除去するための校正値を得ることができる。この校正値を、算出された回転体105の仮の角度変化量X (0)に対して足し引きすることで、真の角度変化量Xを検出することができ、角度検出器101は、機械的角度誤差について自己校正される。しかし、センサ201a~201iを単に回転体105の回転方向106に沿って配置しただけでは、電気的角度誤差を除去することはできない。これは上記のように、センサ201a~201iの各々の出力信号204は、複数の目盛103のうちの1目盛分を1周期1次とする基本波成分と、基本波成分の2以上の整数倍を次数とする高調波成分とを含み、出力信号204から算出された仮の角度変位量X (0)は、出力信号204の1つ以上の高調波成分に起因して、目盛103の1目盛分を1周期1次としてその整数倍の次数成分を有する少なくとも1つの角度誤差成分を含んでいるからである。
【0033】
センサ201a~201iの特性に起因する電気的角度誤差を除去するためには、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿った目盛スケール102の目盛数N、及びセンサ201a~201iからの出力信号204に含まれる高調波成分に起因する1目盛における角度誤差成分の次数pに基づいて、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って配置されるセンサ201a~201iの個数を適切に選択する必要がある。ここで、角度誤差成分の次数とは、角度誤差成分が有する次数のことであって、角度誤差成分の次数は、目盛103の1目盛分を1周期1次とするとその整数倍である。例えば、図1A図2Bのように、目盛スケール102の目盛数が32であって、出力信号204に含まれる高調波成分に起因する1目盛における角度誤差成分の次数がpである場合には、目盛スケール102の目盛数32、及び角度誤差成分の次数pに基づいて、一周107に沿って配置されるセンサ201a~201iの個数を選択する。なお、角度誤差成分の次数pは、推定で見積ってもよいし、目盛スケール102の一周における角度誤差成分を算出した結果から決定してもよい。参考として、電気的角度誤差が顕著に現れる角度誤差成分の次数pは5以下であることが多い。或いは、事前にセンサ201a~201iからの出力信号204から高調波成分を抽出し、除去が必要となる角度誤差成分の次数pを決定してもよい。また、センサ201a~201iからの出力信号204が、図3のように、入力部205、ノイズフィルタ206、増幅器207、A/D変換器208、等を介して信号処理部209に入力される場合には、信号処理部209に入力される信号に含まれる高調波成分を抽出し、除去が必要となる角度誤差成分の次数pに基づいてセンサ201a~201iの個数を適切に選択してもよい。
【0034】
また、出力信号204から算出された仮の角度変化量X (0)は、出力信号204に含まれる1つ以上の高調波成分に起因して、目盛103の1目盛分を1周期1次として、それぞれがその整数倍の次数成分を有する複数の角度誤差成分を含んでいて、角度誤差成分が複数の角度誤差成分であってもよい。センサ201a~201iの個数は、目盛スケール102の目盛数N、及びその複数の角度誤差成分の各々の次数に基づいて、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って配置されるセンサ201a~201iの個数を適切に選択する必要がある。例えば、出力信号204の1つ以上の高調波成分に起因して、出力信号204から算出された仮の角度変化量X (0)は、次数p=1、p=2の2つの角度誤差成分が含まれ、図1A図2Bのような場合には、目盛スケール102の目盛数32、及び2つの角度誤差成分の次数p=1とp=2に基づいて、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って配置されるセンサ201a~201iの個数を選択する。
【0035】
センサ201a~201iの個数は、目盛スケール102の目盛数Nと1目盛における角度誤差成分の次数pとの積を割り切ることができない整数に基づいて決定されてもよい。すなわち、角度誤差成分の具体的な大きさ等は、回転体105の一周に対しては目盛数だけ目盛の各々の個体差をもって現れるが、1目盛に発生する角度誤差成分の次数pは何れの目盛でも同じであるために、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差は、次数N=N(目盛スケール102の目盛数)×p(1目盛における角度誤差成分の次数)として現れ、次数Nを割り切ることができない整数に基づいて、センサ201a~201iの個数は決定されてもよい。これによって、センサ201a~201iはそれぞれ、位相の異なる出力信号204を出力することができる。すなわち、センサ201a~201iのそれぞれによって出力される出力信号204に含まれる基本波成分及び高調波成分の位相は、各センサ201a~201iで相違する。
【0036】
具体的には、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数Nである256に対して、仮に出力信号204の高調波成分に起因して、仮の角度変化量X (0)には1目盛において次数p(1~10)の成分を有する角度誤差成分が含まれると想定して次数pを乗算することによって、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nを求め、その次数Nを、センサ配置予定箇所数としての整数(5~9)で割り切れる場合を×で、割り切れない場合を○で判定した結果を図5Aに示す。○の数が多いセンサ配置予定箇所数の方が、より多くの次数pの成分による電気的角度誤差を除去することができる。図5Aの場合においては、整数が7又は9の場合、すなわちセンサ配置予定箇所数が7又は9の場合に○の数が9であって、多くの次数pの成分による電気的角度誤差を除去することができ、7つ又は9つのセンサ配置予定箇所202a~202iの何れかに、センサ201a~201iを配置する。一方で、整数が8の場合、すなわちセンサ配置予定箇所数が8の場合には○の数が0であって、全く電気的角度誤差を除去することができない。なお、図5Aは一例であって、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数、センサ配置予定箇所数には特に上下限はない。
【0037】
図1A図2Aのように、センサ配置予定箇所202a~202iは、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って略等間隔に、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nを割り切ることができない整数に一致する数によって設定されている。図5Aのように、目盛スケール102の目盛数Nが256である場合には、センサ配置予定箇所202a~202iの個数を7又は9として、7つ又は9つのセンサ配置予定箇所202a~202iを回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って略等間隔に設定することができる。図1A図2Aでは、回転体105の回転方向106に対する一周107に沿って、9つのセンサ配置予定箇所202a~202iが設定されている。そして、センサ201a~201iは、センサ配置予定箇所202a~202iの何れかに配置されている。図1Aでは、9つのセンサ配置予定箇所202a~202iのうちの2箇所(202a、202b)にセンサ201a、201bが配置され、図2Aでは、9つのセンサ配置予定箇所202a~202iのうちの3箇所(202a、202b、202d)にセンサ201a、201b、201dが配置されているが、センサ配置予定箇所202a~202iの何れにセンサ202a~202iが配置されているかは問われない。例えば、図1Aのように、センサ配置予定箇所202a~202iのうちの隣接する2つのセンサ配置予定箇所202a、202bに、センサ201a、201bがそれぞれ1つずつ配置されてもよいし、図1B図2Bのように、センサ配置予定箇所202a~202iの各々に、センサ201a~201iがそれぞれ1つずつ配置されてもよい。
【0038】
電気的角度誤差は、次数N=N(目盛スケール102の目盛数)×p(1目盛における角度誤差成分の次数)として現れ、一般的にはNとpは整数であるためNも整数となる。しかし、実際には目盛スケール102の1目盛の間隔が複数の目盛103において不均一である点等に起因し、角度誤差に対して回転体105の一周を1周期1次としてフーリエ変換して実行すると、スペクトル強度は整数の次数の近辺において山形で生じている(例えば、次数が3のスペクトル強度の近辺において、2.9次、3.1次、等の少数点を有する次数のスペクトル強度が含まれている)。よって、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nをセンサ配置予定箇所数としての整数で除算した場合に、その場合における余り(端数)の数が大きいほど除去できる電気的角度誤差の次数Nの数が多くなるために、その余りに基づいて、センサ201a~201iの個数は決定されてもよい。
【0039】
具体的には、図5Aと同様に、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数Nである256に対して、仮に出力信号204の高調波成分に起因して、仮の角度変化量X (0)には1目盛において次数p(1~10)の成分を有する角度誤差成分が含まれると想定して次数pを乗算することによって、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nを求め、その次数Nを、センサ配置予定箇所数としての整数(5~9)によって除算した場合に、例えば、余りが0.3未満の場合を×、余りが0.3以上0.7未満の場合を○、余りが0.7以上の場合を◎とし、余りの大きさに応じて重み付けをし(例えば、×は0点、○は1点、◎は2点)、総得点の多いセンサ配置予定箇所数を判定した結果を図5Bに示す。総得点が高い方が、より多くの次数pの成分による電気的角度誤差を除去することができる。図5Bの場合においては、整数が7又は9の場合、すなわちセンサ配置予定箇所数が7又は9の場合に総得点が9点であって、多くの次数pの成分による電気的角度誤差を除去することができ、図1A図2Bのように、9つのセンサ配置予定箇所202a~202iの何れかに、センサ201a~201iを配置する。このように、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nをセンサ配置予定箇所数としての整数で除算した場合の余りの大きさに応じて重み付けをし、各次数の重み付けに基づいてセンサ201a~201iの個数は決定されてもよい。また、出力信号204の高調波成分に起因する1目盛における角度誤差成分が2次及び4次の次数成分を含む場合には、p=2、p=4で◎と判定されているので、センサ配置予定箇所数を9として選定すれば、2次及び4次の電気的角度誤差を除去することができ、図1A図2Bのように、9つのセンサ配置予定箇所202a~202iの何れかに、センサ201a~201iを配置する。このように、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nをセンサ配置予定箇所数としての整数で除算した場合の余りの大きさに応じた重み付けに基づいて、センサ201a~201iの個数は決定されてもよい。
【0040】
また、センサ配置予定箇所数を先に決定して、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数Nを選定してもよい。具体的には、センサ配置予定箇所数を5とし、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数Nである254~259に対して、仮に出力信号204の高調波成分に起因して、仮の角度変化量X (0)には1目盛において次数p(1~10)の成分を有する角度誤差成分が含まれると想定して次数pを乗算することによって、目盛スケール102の一周における電気的角度誤差の次数Nを求め、その次数Nを、センサ配置予定箇所数の5によって除算した場合に、例えば、余りが0.3未満の場合を×、余りが0.3以上0.7未満の場合を○、余りが0.7以上の場合を◎とし、余りの大きさに応じて重み付けをし(例えば、×は0点、○は1点、◎は2点)、目盛スケール102の一周における目盛数Nを判定した結果を図5Cに示す。総得点が高い方が、より多くの次数pの電気的角度誤差を除去することができる。図5Cの場合においては、目盛スケール102の一周における目盛数Nが255である場合を除いて、ほぼ同等数の次数pの電気的角度誤差を除去することができ、5つのセンサ配置予定箇所202a~202eの何れかに、センサ201a~201eを配置する。なお、目盛スケール102の一周における目盛数Nについての判定した結果は、センサ配置予定箇所数による繰り返し性を有する。例えば、センサ配置予定箇所数を5とした場合の判定した結果は、目盛スケール102の一周における目盛数Nが254±(5×整数倍)の場合において同じである(図5Cにおいては、254と259の場合では同じ判定結果となる)。このように、目盛スケール102の一周における目盛数Nの大小に寄らず、センサ配置予定箇所数による繰り返し性を有する判定結果を得ることができる。
【0041】
上記のようにして、目盛スケール102が有する目盛103の目盛数N、出力信号204が含む高調波成分から推定される、或いは事前に確認した角度誤差成分の次数p、センサ配置予定箇所数を得、図1A図2Bのように、センサ配置予定箇所202a~202iにセンサ201a~201iを配置し、センサ201a~201iからの出力信号204のうちの1つを基準センサ(例えば、センサ201a)として、基準センサからの出力信号204と、それ以外の各センサ(例えば、センサ201b~201i)の出力信号204との間の出力信号差を求め、求められたそれ以外のセンサとの出力信号差についての平均値を得ることによって、機械的角度誤差だけでなく電気的角度誤差をも除去するための校正値を得ることができる。この校正値を、算出された回転体105の仮の角度変化量X (0)に対して足し引きすることで、真の角度変化量Xを検出することができ、角度検出器101は、機械的角度誤差及び電気的角度誤差を含む角度誤差について自己校正される。校正後の角度変化量Xは、角度検出器101の検出値としてもよいし、回転体105を駆動するモータ、回転体105の制御装置、等にフィードバックされ、参照角度として使用されてもよい。この校正値は、回転体105が回転してセンサ201a~201iからの出力信号204が信号処理部209に入力される都度に演算されてもよいし、事前に回転体105の1周分についてこの校正値を信号処理部209にて演算し、補正テーブルとして記憶部210に保存しておき、回転体105が回転する際に、この校正値が記憶部210から読み出されてもよい。
【0042】
図6A図6Cにそれぞれ、図1Bの角度検出器101のセンサ201aのみからの出力信号204に基づいて信号処理部209によって算出された、機械的角度誤差及び電気的角度誤差を含む角度誤差が除去される前における、回転体105の指令角度に対する角度誤差、その一部を拡大した回転体105の1目盛中の指令角度に対する角度誤差、回転体105の一周を1周期1次とした角度誤差に対してフーリエ変換を実行することによって得られたスペクトル強度を示す。指令角度に対して、周期が長い(次数が小さい)成分による角度誤差が、機械的角度誤差によるものであって、図6Aによれば、この角度検出器101においては、機械的角度誤差は、回転体105の一周を1周期1次とする角度誤差を主成分として約180arcsecの幅である。なお図6Aは、測定された0~360degの範囲のうちの0~180degの範囲だけを抜き出した測定結果である。指令角度に対して、周期が短い(次数が大きい)成分による角度誤差が、電気的角度誤差によるものであって、図6Bによれば、電気的角度誤差の次数は、1024次(1目盛における次数p=4次)による角度誤差を主成分として約20arcsecの幅であって、目盛スケール102の全目盛数が256であることから1目盛の角度間隔104は1.406degであるので、電気的角度誤差である約20arcsecはその約0.4%に相当する。図6Cによれば、角度誤差の次数成分が256次(1目盛1次)、768次(1目盛3次)、1024次(1目盛4次)のスペクトル強度が大きく、角度誤差の次数成分が1024次(1目盛4次)のスペクトル強度が、特に顕著であることが分かる。
【0043】
次に、図7A図7Cにそれぞれ、図1Bの角度検出器101のセンサ201a~201iからの出力信号204に基づいて信号処理部209によって算出された、機械的角度誤差及び電気的角度誤差を含む角度誤差が除去された後における、回転体105の指令角度に対する角度誤差、その一部を拡大した回転体105の1目盛中の指令角度に対する角度誤差、回転体105の一周を1周期1次とした角度誤差に対してフーリエ変換を実行することによって得られたスペクトル強度を示す。センサ配置予定箇所数(センサ配置数)が9であるので、9で割り切ることができない次数Nの機械的角度誤差及び電気的角度誤差を含む角度誤差を除去することができ、図7Aによれば、9で割り切ることができない1次を主成分とする機械的角度誤差を、約45arcsecの幅まで減少することができる。なお図7Aは、測定された0~360degの範囲のうちの0~180degの範囲だけを抜き出した測定結果である。図7Bによれば、9で割り切ることができない1024次を主成分とする電気的角度誤差を、約5arcsec(1目盛の角度間隔104である1.406degに対して約0.1%)の幅まで減少することができる。このように、機械的角度誤差及び電気的角度誤差を含む角度誤差を約1/4まで減少することができる。図7Cによれば、角度誤差の次数成分が256次(1目盛における次数p=1次)、768次(1目盛3次)、1024次(1目盛4次)のスペクトル強度を大幅に減少させることができる。また図7Aにおいて、回転体105の指令角度180deg中に発生している10山成分(回転体105の一周を1周期1次として20次成分)は、使用した回転体105の機構特性に起因する角度誤差であることが分かっており、本発明を使用することで、出力信号204から算出された仮の角度変化量X (0)から機械的角度誤差及び電気的角度誤差を除去し、回転体105の真の回転角度量Xと角度誤差をより高精度に検出可能であることを図7A図7Cは示している。
【0044】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0045】
101 角度検出器
102 目盛スケール
103 目盛
104 1目盛の角度間隔
105 回転体
106 回転方向
107 一周
108 回転軸線
201a~201i センサ
202a~202i センサ配置予定箇所
203 制御部
204 出力信号
205 入力部
206 ノイズフィルタ
207 増幅器
208 A/D変換器
209 信号処理部
210 記憶部
211 表示装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C