(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】偏光板の製造方法および偏光板用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230308BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230308BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230308BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230308BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230308BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/30
C09J5/00
C09J163/00
C09J11/06
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020536654
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2020001205
(87)【国際公開番号】W WO2020153803
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009943
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【氏名又は名称】長野 正
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユンキョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウク・キム
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/178239(WO,A1)
【文献】特開2014-215560(JP,A)
【文献】特開2015-210497(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129260(WO,A1)
【文献】特開2012-062471(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0082800(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を用意するステップと、
第1保護フィルムおよび第2保護フィルムそれぞれの一面に、5~40重量部の脂環式エポキシ化合物及び5~30重量部のグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合
物を含む接着剤組成物を備えるステップと、
前記偏光子の一面に前記第1保護フィルムを積層し、前記偏光子の他面に前記第2保護フィルムを積層するステップと、
前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化することにより、第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップとを含み、
前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および下記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板の製造方法:
【化1】
化学式1において、
RaおよびRbは、互いに同一
であり、水素;重水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
Rcは、置換もしくは非置換のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、
oは、2~4の整数であり、
mが2以上の場合、Raが互いに同一または異なり、
nが2以上の場合、Rbが互いに同一または異なり、
oが2以上の場合、Rcが互いに同一または異なり、
n+o≦4である。
【請求項2】
前記活性エネルギー線は、波長380nm~420nmの範囲で極大波長を有する、請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記第1保護フィルムの前記活性エネルギー線に対する光透過度が、前記第2保護フィルムの前記活性エネルギー線に対する光透過度より高い、請求項1又は2に記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記第1保護フィルムは、波長400nmの光透過度が70%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記第1保護フィルムまたは第2保護フィルムがトリアセチルセルロース系フィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記第2保護フィルムは、位相差フィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記第2保護フィルムおよび第1保護フィルムの厚さの比は、1:3~3:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項8】
前記第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップは、前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射した後に、前記第2保護フィルム側に活性エネルギー線を照射するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
前記光増感剤の主吸収波長帯域が360nm~420nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項10】
前記光増感剤の含有量が、前記接着剤組成物の全重量を基準として、5重量%以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項11】
前記接着剤組成物は、光増感剤および光開始剤を1:1~1:10の含有量比で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項12】
前記接着剤組成物は、オキセタン化合物をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項13】
前記接着剤組成物は、25℃で粘度が50cps以上200cps以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項14】
前記接着剤組成物は、25℃の等温条件で、380nm~420nmの波長および100W/cm
2の強度で光を照射し、光示差走査熱量計(Photo-DSC)を用いて硬化挙動を分析した時、
最大発熱ピークが現れる硬化時間(t1)が100秒以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項15】
5~40重量部の脂環式エポキシ化合物
、5~30重量部のグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合
物、光開始剤および下記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板用接着剤組成物:
【化2】
前記化学式1において、
RaおよびRbは、互いに同一
であり、水素;重水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
Rcは、置換もしくは非置換のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、
oは、2~4の整数であり、
mが2以上の場合、Raが互いに同一または異なり、
nが2以上の場合、Rbが互いに同一または異なり、
oが2以上の場合、Rcが互いに同一または異なり、
n+o≦4である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年1月25日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0009943号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、偏光板の製造方法および偏光板用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、液晶表示装置のような画像表示装置で用いられる偏光板は、一般的にポリビニルアルコール偏光子を保護するための保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルム)を主に使用している。しかし、TACフィルムは耐湿熱性が十分でなく、高温または高湿下で使用されると、フィルムの変形によって偏光度や色相などの偏光板の特性が低下するという問題点を抱えている。したがって、最近は、偏光子保護フィルムの材料として、TACフィルムの代わりに、耐湿熱性に優れた透明なアクリル系樹脂フィルムを使用する方策が提案された。
【0004】
この時、前記偏光子と保護フィルムとを付着させるのに用いられる接着剤としては、主にポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる水系接着剤が使用されている。しかし、前記水系接着剤の場合、保護フィルムとしてTACではないアクリル系フィルムやCOPフィルムなどを用いる場合には、接着力が弱いため、フィルムの素材によってその使用が限られるという問題点があった。また、前記水系接着剤の場合、素材による接着力不良問題のほかにも、PVA素子の両面に適用される保護フィルムの素材が異なる場合、水系接着剤の乾燥工程による偏光板のカール(curl)発生の問題および初期光学物性の低下などの問題が発生する。さらに、前記水系接着剤を用いる場合、乾燥工程が必ず必要になり、この乾燥工程で透湿率、熱膨張などの差が発生して不良率が高くなる問題点がある。
【0005】
前記の問題点を解決するための代案として、水系接着剤の代わりに非水系接着剤を用いる方策が提案された。
【0006】
そのため、水系接着剤の代わりに陽イオン重合性紫外線硬化型接着剤を用いて偏光板の信頼性と収率を向上させる方策が提案されている。
【0007】
接着剤を硬化させるために積層体の一面にエネルギー線を照射する場合、照射されたエネルギー線が偏光子によって吸収されるため、照射される方向の反対面に備えられた接着剤組成物に到達するエネルギー線の量が減少し、それによって接着層の硬化速度に差が生じる。これによって偏光板にカールが発生しうる。
【0008】
これを解決するために、長波長領域の光に対する感応性が高い光開始剤を用いることにより、光が照射される面側のみならず、反対側に備えられた接着剤の硬化速度を改善して偏光板にカールが発生するのを防止しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書は、偏光板の製造方法および偏光板用接着剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書は、偏光子を用意するステップと、第1保護フィルムおよび第2保護フィルムそれぞれの一面に接着剤組成物を備えるステップと、前記偏光子の一面に前記第1保護フィルムを積層し、前記偏光子の他面に前記第2保護フィルムを積層するステップと、前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化することにより、第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップとを含み、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および下記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板の製造方法を提供する。
【0012】
【化1】
前記化学式1において、
RaおよびRbは、互いに同一または異なり、水素;重水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
Rcは、置換もしくは非置換のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、
oは、2~4の整数であり、
mが2以上の場合、Raが互いに同一または異なり、
nが2以上の場合、Rbが互いに同一または異なり、
oが2以上の場合、Rcが互いに同一または異なり、
n+o≦4である。
【0013】
本明細書は、光開始剤および前記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板用接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法によれば、接着剤層の硬化に用いられる活性エネルギー線の照射方向を調節し、これに適した接着剤層の組成を用いることにより、光効率性が改善された利点を有する。具体的には、活性エネルギー線が照射される保護フィルムの反対面に備えられた接着剤層の硬化速度を改善することができる。
【0015】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法によれば、長波長硬化システムにおいても硬化効率が向上でき、硬化信頼性が高く、硬化時、偏光板にカール(curl)が発生する問題を最小化できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法を示す図である。
【
図2】実験例2の硬化時間の定量分析のためのDSC分析を行う方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書についてより詳しく説明する。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0019】
本明細書において、「または」とは、他に定義しない限り、挙げられたものを選択的にまたはすべて含む場合、すなわち「および/または」の意味を表す。
【0020】
本明細書において、「層」とは、当該層が存在する面積を70%以上覆っているものを意味する。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上覆っているものを意味する。
【0021】
本明細書において、ある層の「厚さ」とは、当該層の下面から上面までの最短距離を意味する。
【0022】
本明細書において、空間的に相対的な用語である「一面」、「他面」は、図示のように、1つの構成要素と他の構成要素との相関関係を容易に記述するために使われる。空間的に相対的な用語は、図示の方向に加えて、使用時または動作時に構成要素の互いに異なる方向を含む用語として理解されなければならない。例えば、図示の構成要素をひっくり返す場合、他の構成要素の「一面」と記述された構成要素は、他の構成要素の「他面」に置き換えられてもよい。したがって、例示的な用語である「一面」は、下と上の方向をすべて含むことができる。構成要素は他の方向にも配向可能であり、これによって空間的に相対的な用語は配向によって解釈される。
【0023】
本明細書において、「光増感剤」とは、偏光板用接着剤の硬化性を改善させる成分を意味することができる。具体的には、本明細書において、光増感剤は触媒の一種であって、適切な波長を有するUVを吸収すると、分解されてラジカル(radical)を生成し、この時生成されたラジカルが前記光開始剤と反応して重合に至るようになる。
【0024】
本明細書において、「吸収」とは、ある材料が光を吸収するという意味であり、「開始」とは、材料が光を吸収してラジカルや陽イオンを生成してモノマーと重合を開始することを意味することができる。例えば、本発明の短波長開始剤は、好適な波長を吸収してモノマー重合を開始することができる。
【0025】
UV露光をすれば、光増感剤が一重項(Singlet)または三重項(Triplet)に励起し活性化された光増感剤の電子輸送(Electron transfer)による陽イオン開始剤が活性化されて硬化反応が始まる。
【0026】
この時、短波長UVB領域の光を照射する場合、偏光板が損傷する恐れがあるので、長波長UVA領域の光を照射することが必要である。また、一般的な液晶素材がコーティングされた光学フィルムの場合、短波長領域帯の光透過度が低下するので、液晶素材がコーティングされない光透過度に優れた光学フィルム側に光を照射することが必要である。しかし、この場合、光が照射される側の反対面に備えられた保護フィルム側の接着剤層の硬化が不十分であるという問題があるため、光が照射される側の反対面に備えられた保護フィルム側の接着剤層に含まれる光増感剤の長波長帯領域での反応性が高くなければならない。
【0027】
本明細書において、用語「組成物の硬化」は、前記組成物の成分の物理的作用または化学的反応などによって組成物が接着または粘着特性を発現できるように変化する過程を意味する。また、本明細書において、用語「活性エネルギー線」は、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびγ線はもちろん、α粒子線(α particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、中性子ビーム(neutron beam)、および電子線(electron beam)のような粒子ビームなどを意味することができ、通常は紫外線または電子線などであってもよい。
【0028】
また、前記「活性エネルギー線硬化型」とは、前記の硬化が活性エネルギー線の照射によって誘導できることを意味することができる。本発明の一つの例において、前記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化は、活性エネルギー線の照射による自由ラジカル重合または陽イオン反応により行われ、好ましくは、自由ラジカル重合および陽イオン反応が同時または順次に併せて進行して行われる。
【0029】
一般的に、偏光板は、予め接着剤層を介して積層された偏光板積層体を製造した後、前記偏光板積層体に紫外線を照射することにより、接着剤層を硬化させる工程で製造される。
【0030】
しかし、前記偏光板積層体が液晶素材のような紫外線に対する透過度に劣る基材を含む場合、紫外線が基材を通過しにくいため、反対面に備えられた接着剤層にうまく到達できない問題がある。前記反対面に備えられた接着剤層が十分に硬化されない場合、偏光板の製造工程中に積層体の各構成にカール(curl)現象が現れることがある。
【0031】
これを解決するために、紫外線の光量を高める場合、偏光板積層体に含まれた偏光子の偏光特性が阻害される問題がある。
【0032】
逆に、活性エネルギー線を放射する光源の波長(wavelength)が長い場合、活性エネルギー線が光源と接着剤層との間に備えられた部材を通過しやすいため、接着剤層によく到達するという利点がある。この時、接着剤層に到達した活性エネルギー線と接着剤層の感応性を改善することが必要である。
【0033】
本明細書は、偏光子を用意するステップと、第1保護フィルムおよび第2保護フィルムそれぞれの一面に接着剤組成物を備えるステップと、前記偏光子の一面に前記第1保護フィルムを積層し、前記偏光子の他面に前記第2保護フィルムを積層するステップと、前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化することにより、第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップとを含み、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および下記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板の製造方法を提供する。
【0034】
【化2】
前記化学式1において、
RaおよびRbは、互いに同一または異なり、水素;重水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
Rcは、置換もしくは非置換のアルキル基であり、
mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、
oは、2~4の整数であり、
mが2以上の場合、Raが互いに同一または異なり、
nが2以上の場合、Rbが互いに同一または異なり、
oが2以上の場合、Rcが互いに同一または異なり、
n+o≦4である。
【0035】
このように接着剤組成物を用いて偏光子の両面に保護フィルムを付着させた構造の偏光板を製造する工程は、
図1に示している通りに行われる。すなわち、偏光子の両面に保護フィルムが硬化前の接着剤組成物で付着した構造の積層体の一面または両面に活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化させる。この場合、偏光子の両面にそれぞれ備えられた接着剤層の硬化速度に差が生じると、偏光板にカール(curl)が発生しうる。特に、このような問題は、
図1のように積層体の一面にのみエネルギー線を照射する場合にさらに大きく現れる。また、照射されたエネルギー線が偏光子によって吸収されるため、照射される方向の反対面に備えられた接着剤組成物に到達するエネルギー線の量が減少し、それによるカール発生の問題がさらに深刻になりうる。
【0036】
また、接着剤層の硬化が遅い場合、偏光板がロールを通して移動する時、ロールに存在する異物によって接着剤層に押し転写される問題が発生しうる。したがって、接着剤層の硬化速度を改善する必要がある。
【0037】
このような問題を解決するために、偏光子をよく透過できる長波長領域の光を照射して光の照射方向の反対面に備えられた接着剤層を硬化させることができるが、一般的に接着剤組成物は長波長領域の光に対する感応性が低いため、接着剤層の硬化速度が遅い問題がある。
【0038】
しかし、本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物が光開始剤および前記化学式1で表される光増感剤を含むことで、上述した問題を改善した。この場合、接着剤組成物の長波長領域の光に対する感応性が改善できるため、偏光子の両面に備えられた接着剤組成物の硬化速度を制御して、上述した偏光板にカール(curl)が発生する問題を解決できるという利点がある。
【0039】
本明細書において、前記「第1保護フィルム」は、活性エネルギー線が照射される側の保護フィルムであり、前記「第2保護フィルム」は、活性エネルギー線が照射される反対側の保護フィルムである。
【0040】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムおよび第2保護フィルムそれぞれの一面に接着剤組成物を備えることは、前記第1保護フィルムおよび前記偏光子の間;および前記第2保護フィルムおよび前記偏光子の間それぞれに接着剤組成物を備えるものであってもよい。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムおよび第2保護フィルムそれぞれの一面に接着剤組成物を備える方法としては特に制限はなく、接着剤組成物を直接滴下する方法、ロールコート法、噴霧法、浸漬法などの各種手段を採用することができる。塗布時には、保護フィルム、偏光子のいずれか1つに塗布してもよく、両方に塗布してもよい。乾燥後の接着剤層の厚さが0超過20μm以下となるように塗布することが好ましい。接着剤層の厚さは、均一な面内厚さを得ることと、十分な接着力を得ることから、より好ましくは500nm以上3μm以下である。接着剤層の厚さは、接着剤の溶液中の固形分濃度や接着剤の塗布装置によって調整可能である。また、接着剤層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって断面を観察することによって確認することができる。
【0042】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプなどにより発生させることができる。例えば、V-bulbを用いることができ、前記V-bulbは10インチの大きさを有し、300W/inchまたは375W/inchの強度を有することができる。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線は、長波長の光であってもよい。この時、前記活性エネルギー線は、波長380nm~420nmの波長、390nm~420nmの波長、または390nm~410nmの極大波長範囲を有することができる。波長が前記範囲の時、活性エネルギー線が偏光子を透過して反対面に備えられた接着剤層によく到達することができる。前記極大波長範囲は、前記活性エネルギー線の波長帯別強度グラフにおいて強度が最も高い波長帯域を意味する。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムの前記活性エネルギー線に対する光透過度が、前記第2保護フィルムの前記活性エネルギー線に対する光透過度より高い。すなわち、活性エネルギー線の照射される側は保護フィルムの透過率が高く、活性エネルギー線の照射されない側の保護フィルムの透過率が低く調節されることにより、偏光子の両面に備えられた接着剤組成物の硬化が均一に起こる。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムは、波長400nmの透過率が70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であってもよい。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記第2保護フィルムは、波長400nmの透過率が30%以下、好ましくは28%以下、さらに好ましくは25%以下であってもよい。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記保護フィルムは、偏光子を支持および保護するためのもので、当該技術分野で一般的に知られている多様な材質の保護フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP、cycloolefin polymer)フィルム、アクリル系フィルムなどが使用できる。なかでも、光学特性、耐久性、経済性などを考慮する時、ポリエチレンテレフタレートまたはトリアセチルセルロース系フィルムを使用することが特に好ましい。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムまたは第2保護フィルムがトリアセチルセルロース系フィルムであってもよい。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記第2保護フィルムは、位相差フィルムであってもよい。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記第2保護フィルムおよび第1保護フィルムの厚さの比は、1:3~3:1、好ましくは1:1~3:1、さらに好ましくは2:1~3:1であってもよい。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子の波長400nmの透過率が30%以上、好ましくは33%以上、さらに好ましくは36%以上であってもよい。第1保護フィルムに照射された光は、第1保護フィルムを透過して偏光子に到達する。この時、偏光子に到達した光もよく透過してこそ、第2保護フィルム側に備えられた接着剤組成物までよく到達することができる。したがって、偏光子の透過率が前記範囲の時、第2保護フィルムまで光がよく到達して、第2保護フィルム側の接着剤がよく硬化できるという利点がある。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップは、前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射した後に、前記第2保護フィルム側に活性エネルギー線を照射するステップをさらに含む。この場合、第2保護フィルム側の硬化されずに残りうる接着剤を硬化させることができる。
【0053】
本明細書において、前記「光増感剤」は、使用する活性エネルギー線の波長に適切な感度を有し、光開始剤より迅速な光開始反応により光開始剤にエネルギーを転移させて光開始剤の光開始反応速度を高める役割を果たす。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記光増感剤は、前記化学式1で表されるものであってもよい。前記化学式1で表される光増感剤は、Rcで表されるアルキル基を2つ以上含む。これによって、アルキル基を1つのみ含む場合に比べて、吸収波長帯域が長波長シフト(Red shift)して光硬化効率を高められるという利点がある。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1は、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【化3】
化学式2において、Ra~Rc、mおよびnに関する説明は化学式1の通りである。この場合、チオキサントン(Thioxanthone)構造内のベンゼン環の2番および4番の位置にRbで表されるアルキル基が置換されており、前記アルキル基は電子ドナー(Electron donor)として作用して長波長シフト(Red shift)して長波長吸光に有利であるという利点がある。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記光増感剤は、2,4-ジエチルチオキサントン(2,4-Diethylthioxanthone、商品名:DETX、ラムソン社)であってもよい。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記光増感剤の主吸収波長帯域が360nm~420nm、好ましくは370nm~410nm、さらに好ましくは380nm~400nmであってもよく、特に368nmであってもよい。前記数値範囲を満たす時、光増感剤の反応性が増大可能であり、前記接着剤組成物が偏光子の両面に同時に適用される場合にも硬化速度が同等に維持可能である。また、長波長領域でも接着剤を十分に硬化させることができるため、接着剤が十分に硬化されず、偏光板の製造過程で用いられるロール面の異物によって接着剤が押される現象、すなわち「押され現象」を抑制することができる。したがって、長波長領域の光の照射だけでも接着剤層が硬化できるため、紫外線領域の光の照射によって発生しうる偏光子の損傷などの問題を効果的に解決することができる。また、長波長領域に対する感応性に優れ、硬化速度に優れるという利点を有する。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記光増感剤の含有量が前記接着剤組成物の全重量を基準として、5重量%以下、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.7重量%以下であってもよい。前記数値範囲を満たす時、組成物の硬化速度が優れたものに維持され、接着剤層が過度に硬化されるのを防止して接着剤層のクラックを防止することができる。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物は、光増感剤および光開始剤を1:1~1:10の含有量比、好ましくは1:2~1:9、さらに好ましくは1:3~1:8の含有量比で含むことができる。前記数値範囲を満たす時、光開始剤にエネルギーを転移させて光開始剤の光開始反応速度を高める現象が効果的に発生できる。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記第2保護フィルム側に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および前記化学式1で表される光増感剤を含む。
【0061】
本明細書の一実施態様において、前記Rcは、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基である。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記Rcは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記Rcは、置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、置換もしくは非置換のプロピル基、または置換もしくは非置換のブチル基である。
【0064】
本明細書の一実施態様において、前記Rcは、置換もしくは非置換のエチル基である。
【0065】
本明細書の一実施態様において、前記Rcは、エチル基である。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物は、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物と同一または異なっていてもよい。
【0067】
前記第1保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および光増感剤を含むことができる。
【0068】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物に含まれる光増感剤は、下記化学式3で表されてもよい。
【化4】
前記化学式3において、
Xは、CRR’またはCOであり、
RおよびR’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;アミノ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;置換もしくは非置換のアリールアルキル基;置換もしくは非置換のアリールアルケニル基;または置換もしくは非置換のアルキルアリール基であり、
Reは、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;アミノ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロアリール基;置換もしくは非置換のアリールアルキル基;置換もしくは非置換のアリールアルケニル基;または置換もしくは非置換のアルキルアリール基であり、
pは、1~8の整数であり、
pが2以上の場合、複数のReは、互いに同一または異なる。
【0069】
本明細書の一実施態様において、前記Xは、COである。
【0070】
本明細書の一実施態様において、Reは、水素;重水素;または置換もしくは非置換のアルキル基である。
【0071】
本明細書の一実施態様において、Reは、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC1-20のアルキル基である。
【0072】
本明細書の一実施態様において、Reは、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC1-6のアルキル基である。
【0073】
本明細書の一実施態様によれば、Reは、置換もしくは非置換のエチル基;または置換もしくは非置換のイソプロピル基である。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物に含まれる光開始剤と、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物に含まれる光開始剤は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0075】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物に含まれる光増感剤と、前記第2保護フィルムの一面に備えられる接着剤組成物に含まれる光増感剤は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルム側に備えられる接着剤組成物は、本明細書の「接着剤組成物」に関する説明が適用可能である。
【0077】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルム側に備えられる接着剤組成物および前記第2保護フィルム側に備えられる接着剤組成物は、光開始剤および前記化学式1で表される光増感剤を含む。
【0078】
本明細書の一実施態様において、前記光開始剤は、陽イオン開始剤またはラジカル開始剤であってもよい。
【0079】
前記陽イオン開始剤としては、光の適用や照射によって陽イオン反応を開始させることができるものであれば、特別な制限なく使用可能であり、例えば、エネルギー線の照射によって陽イオン反応を開始させる陽イオン光開始剤を使用することができる。
【0080】
一つの例において、陽イオン光開始剤としては、オニウム塩(onium salt)または有機金属塩(organometallic salt)系のイオン化陽イオン開始剤または有機シラン、または潜在性硫酸(latent sulfonic acid)系やその他の非イオン化化合物などの非イオン化陽イオン光開始剤を使用することができる。オニウム塩系の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)、またはアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)などが例示され、有機金属塩系の開始剤としては、鉄アレーン(iron arene)などが例示され、有機シラン系の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)、またはアシルシラン(acyl silane)などが例示され、潜在性硫酸系の開始剤としては、アルファ-スルホニルオキシケトンまたはアルファ-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。また、前記陽イオン開始剤としては、ヨウ素系の開始剤と光増感剤との混合物を使用することもできる。
【0081】
陽イオン開始剤としては、イオン化陽イオン光開始剤を使用することができ、例えば、オニウム塩系のイオン化陽イオン光開始剤を使用するか、トリアリールスルホニウム塩系のイオン化陽イオン光開始剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
接着剤組成物は、前記陽イオン開始剤0.01重量部~10重量部を含むか、0.1重量部~5重量部を含むことができる。前記比率において、硬化効率および硬化された後の物性に優れた接着剤組成物を提供することができる。
【0083】
前記接着剤組成物はさらに、アクリル化合物などの重合または架橋反応を開始させることができるラジカル開始剤として、光開始剤を追加的に含むことができる。光開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン化合物、アミノケトン化合物、またはホスフィンオキシド化合物などの開始剤を使用することができ、例えば、ホスフィンオキシド化合物などを使用することができる。光開始剤としては、より具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物の全重量を基準として、0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~5重量部含まれる。前記基準として光開始剤が0.1重量部未満の場合には、硬化度不足による密着力の低下で剥離不良が起こることがあり、10重量部を超える場合には、開始剤の分解物または未反応開始剤の接着界面への移動によって接着力を低下させる問題を発生することがある。
【0085】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物は、エポキシ化合物およびオキセタン化合物のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0086】
本明細書において、用語「エポキシ化合物」は、1つ以上、好ましくは2つ以上のエポキシ基を含む単量体性、オリゴマー性、またはポリマー性化合物を意味することができる。
【0087】
エポキシ化合物は、保護層の耐水性や接着力などの物性を向上させることができる。前記エポキシ化合物としては、例えば、陽イオン反応によって架橋または重合可能なものを使用することができる。
【0088】
一つの例において、エポキシ化合物としては、重量平均分子量(Mw;Weight Average Molecular Weight)が1,000~5,000、好ましくは2,000~4,000であるエポキシ樹脂を使用することができる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定された標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し、特に他に定めない限り、用語「分子量」は、「重量平均分子量」を意味する。分子量を1,000以上として、保護層の耐久性を適切に維持することができ、5,000以下として組成物のコーティング性などの作業性も効果的に維持することができる。
【0089】
本明細書の一実施態様において、前記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、または芳香族エポキシ化合物を含むことができる。
【0090】
本明細書において、前記脂環式エポキシ化合物は、下記化学式4で表すように、分子内に脂環式の環に結合したエポキシ基を少なくとも1つ有する化合物であってもよい。
【化5】
前記化学式4において、mは、2~5の整数であり、前記化学式4において、(CH
2)m内の1つまたは複数の水素原子を除去することで得られる基が、芳香環がない他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物である。すなわち、エポキシ化脂肪族環基を1つ以上含む化合物を意味することができる。
【0091】
前記エポキシ化合物に脂環式エポキシ化合物が含まれることにより、接着剤層を形成する接着剤組成物のガラス転移温度が高くなって前記接着剤層が十分な耐久性を確保するようにして、耐熱または熱衝撃の条件でも偏光子の亀裂の発生を防止することができる。
【0092】
前記エポキシ化脂肪族環基を含む前記脂環式エポキシ化合物において、前記エポキシ化脂肪族環基は、例えば、脂環式の環に形成されたエポキシ基を有する化合物を意味することができる。前記脂環式の環を構成する水素原子は、任意にアルキル基などの置換基によって置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、以下に具体的に例示される化合物を使用することができるが、使用可能なエポキシ化合物が下記の種類に限定されるものではない。
【0093】
前記脂環式エポキシ化合物としては、下記化学式5で表されるエポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート系化合物が例示される。
【化6】
前記化学式5において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0094】
本明細書において、用語「アルキル基」は、特に他に定めない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4の直鎖状、分枝鎖状または環状アルキル基を意味することができ、前記アルキル基は、任意に1つ以上の置換基によって置換されているか、非置換の状態であってもよい。
【0095】
脂環式エポキシ化合物の他の例としては、下記化学式6で表されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート系化合物が挙げられる。
【化7】
前記化学式6において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、nは、2~20の整数を示す。
【0096】
また、脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式7で表されるジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル系化合物が挙げられる。
【化8】
前記化学式7において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、pは、2~20の整数を示す。
【0097】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式8で表されるポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル系化合物が挙げられる。
【化9】
前記化学式8において、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、qは、2~20の整数を示す。
【0098】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式9で表されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル系化合物が挙げられる。
【化10】
前記化学式9において、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、rは、2~20の整数を示す。
【0099】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式10で表されるジエポキシトリスピロ系化合物が挙げられる。
【化11】
前記化学式10において、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0100】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式11で表されるジエポキシモノスピロ系化合物が挙げられる。
【化12】
前記化学式11において、R
13およびR
14は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0101】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式12で表されるビニルシクロヘキセンジエポキシド化合物が挙げられる。
【化13】
前記化学式12において、R
15は、水素またはアルキル基を示す。
【0102】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式13で表されるエポキシシクロペンチルエーテル化合物が挙げられる。
【化14】
前記化学式13において、R
16およびR
17は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0103】
脂環式エポキシ化合物の他の例としては、下記化学式14で表されるジエポキシトリシクロデカン化合物が挙げられる。
【化15】
前記化学式14において、R
18は、水素またはアルキル基を示す。
【0104】
脂環式エポキシ化合物としては、より具体的には、エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート化合物、アルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート化合物、ジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル化合物、またはアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル化合物を使用することが好ましく、7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と(7-オキサ-ビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとのエステル化物(前記化学式5において、R1およびR2が水素である化合物);4-メチル-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と(4-メチル-7-オキサ-ビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとのエステル化物(前記化学式5において、R1が4-CH3であり、R2が4-CH3である化合物);7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と1,2-エタンジオールとのエステル化物(前記化学式6において、R3およびR4が水素であり、nが1である化合物);(7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物(前記化学式7において、R5およびR6が水素であり、pが2である化合物);(4-メチル-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物(前記化学式7において、R5およびR6が4-CH3であり、pが2である化合物);および(7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールと1,2-エタンジオールとのエーテル化物(前記化学式9において、R9およびR10が水素であり、rが1である化合物)からなる群より選択された1つ以上が好ましく使用できるが、これに限定されるものではない。
【0105】
エポキシ化合物内における前記脂環式エポキシ化合物の含有量は、硬化速度を考慮して制御できる。例えば、接着剤組成物内の全体エポキシ化合物の全重量を基準として、前記脂環式エポキシ化合物の含有量は、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、または45重量%以上であってもよい。前記比率は、一例において、60重量%以下または55重量%以下であってもよい。
【0106】
他の基準として前記脂環式エポキシ化合物の前記接着剤組成物における重量比率は、前記接着剤組成物の全重量を基準として、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、または20重量%以上であってもよい。前記比率は、一例において、30重量%以下または25重量%以下であってもよい。
【0107】
本明細書において、接着剤組成物内の各成分の比率を記載する場合に、前記比率は、接着剤組成物の固形分を基準とする。前記固形分は、溶媒成分を含まない接着剤組成物を意味し、接着剤組成物内における溶媒の比率が5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、または0.5重量%以下の場合を意味する。
【0108】
本明細書において、「グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物」は、グリシジルエーテル基を少なくとも1つ以上含む化合物を意味することができる。また、前記エポキシ化合物に前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物が含まれることにより、グリシジルエーテル反応基が硬化反応後に保護層内でソフトで極性を有するチェーンを形成して保護層の偏光子に対する接着力を向上させることができる。
【0109】
グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物には、例えば、脂肪族の多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテルが含まれる。具体的なグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物としては、ノボラックエポキシ、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、臭素化ビスフェノールエポキシ、n-ブチルグリシジルエーテル、アリファティックグリシジルエーテル(炭素数12~14)、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシル(cresyl)グリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはグリセリントリグリシジルエーテルなどが例示され、また、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルまたは芳香族エポキシ化合物の水素添加化合物などが例示され、環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテル、例えば、炭素数3~20、炭素数3~16、または炭素数3~12の環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルが使用できるが、これに限定されるものではない。
【0110】
前記エポキシ化合物が前記脂環式エポキシ化合物と前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物を同時に含む場合には、前記脂環式エポキシ化合物5~40重量部および前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物5~30重量部を含むことができる。他の例において、脂環式エポキシ化合物15~40重量部およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物15~30重量部を含むか、前記脂環式エポキシ化合物20~30重量部および前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物20~30重量部を含むことができる。前記脂環式エポキシ化合物が5重量部以上で含まれる場合、接着剤層の耐久性を十分に確保することができ、40重量部以下で含まれる場合、PVA偏光子に対する接着力が減少する問題がなく、前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物が5重量部以上で含まれる場合、接着力向上の効果があり、30重量部以下で含まれる場合、接着剤層の耐久性が弱くなる問題が発生しない。
【0111】
前記脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物は、3:1~1:3の重量部で含まれ、前記範囲内において、接着剤層の耐久性およびPVA偏光子に対する接着剤層の接着力向上の効果を極大化できる。
【0112】
また、接着剤組成物の全重量を100重量%とした時に、前記エポキシ化合物の前記接着剤組成物内における比率は、30重量%以上または35重量%以上であってもよく、前記比率は、50重量%以下または45重量%以下であってもよい。
【0113】
本明細書において、前記オキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタニル基を有する化合物であり、このような化合物は、接着剤組成物の粘度の調節や硬化速度の調節のために添加可能である。
【0114】
オキセタン化合物としては、特別な制限なく多様な種類の化合物を使用することができ、例えば、3-エチル-3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2-ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の3-クロロメチル-3-エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1-トリス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕プロパン、1-ブトキシ-2,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2-ビス〔{2-(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4-(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、または1,6-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサンなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、具体的には、アロンオキセタンOXT-101(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-121(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-211(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-221(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-212(東亜合成(株)製)などが挙げられる。
【0115】
前記のオキセタン化合物は、前記エポキシ化合物100重量部に対して、40重量部以上または45重量部以上の比率で含まれる。このような比率下で好適な硬化速度を確保しながら、目的とする粘度あるいは接着力などの物性も確保することができる。前記オキセタン化合物の比率は、前記エポキシ化合物100重量部に対して、100重量部以下、90重量部以下、80重量部以下、または75重量部以下であってもよい。
【0116】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物は、アクリル化合物を含むことができ、前記化合物は、ラジカル重合性化合物であってもよい。用語「ラジカル重合性化合物」は、自由ラジカル重合反応に参加できる重合性官能基を1つ以上含む化合物を意味することができる。前記重合性官能基としては、アリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
アクリル化合物としては、前記の重合性官能基を1つ有する単官能性アクリル化合物または前記重合性官能基を2個以上、例えば、2個~10個、2個~9個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、または3個~6個有する多官能性アクリル化合物を使用することができ、前記両者の混合物も使用可能である。
【0118】
前記単官能アクリル化合物の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
このような単官能アクリル化合物が含まれる場合、前記エポキシ化合物100重量部に対して、50重量部以下、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、または25重量部以下の比率で含まれる。前記比率は、前記エポキシ化合物100重量部に対して、5重量部以上または10重量部以上であってもよい。
【0120】
多官能アクリル化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-メタアクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリルロオキシプロピルメタアクリレート、またはジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどの2個の重合性官能基を有するアクリル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、またはプロポキシレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの3個の重合性官能基を有するアクリル化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エポキシレートペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、またはペンタアクリレートエステルなどの4個~5個の重合性官能基を有するアクリル化合物;またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6個の重合性官能基を有するアクリル化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
このような多官能アクリル化合物が含まれる場合、前記エポキシ化合物100重量部に対して、50重量部以下、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、または25重量部以下の比率で含まれる。前記比率は、前記エポキシ化合物100重量部に対して、5重量部以上または10重量部以上であってもよい。
【0122】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物は、25℃で粘度が50cps以上200cps以下であることが好ましく、例えば、25℃で100cps~180cps以下であってもよい。組成物の粘度が前記数値範囲を満たす場合、接着剤層の厚さを薄く形成することができ、コーティング表面に屈曲が生じるのを防止することができる。前記粘度は、ブルックフィールド粘度計(Brook Field社製)を用いて、18番スピンドル(spindle)を用いて25℃で測定する。この時、組成物の量は6.5~10mLが適切であり、光に長時間露出することを避けるために5分以内で安定化された数値を測定する。
【0123】
前記接着剤組成物は、25℃の等温条件で、380nm~420nmの波長および100W/cm2の強度で光を照射し、光示差走査熱量計(Photo-DSC)を用いて硬化挙動を分析した時、最大発熱ピークが現れる硬化時間(t1)が100秒以下であってもよい。
【0124】
前記硬化時間は、接着剤組成物の硬化が完了する時点を意味する。前記硬化時間が小さければ、硬化速度が速く、硬化時間が大きければ、硬化速度が遅いと区別することができる。前記硬化時間は、x軸が時間(time)であり、y軸がHeat flow(W/g)で構成されたグラフで表現されるPhoto-DSCカーブの極大値が現れる時のx軸の値(time)を意味する。この時のx軸の値を「硬化時間」とし、y軸の値を「最大発熱ピーク」と定義する。
【0125】
前記硬化時間は、それぞれ100秒以下、50秒以下、最も好ましくは45秒以下であってもよい。前記硬化時間が小さいというのは、硬化速度が速いことを意味する。
【0126】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤組成物は、必要に応じて、染料、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤、助色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、および可塑剤からなる群より選択された1つ以上の添加剤を追加的に含むことができる。
【0127】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子は、当該技術分野でよく知られた偏光子、例えば、ヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。前記偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素または二色性染料を染着させて製造できるが、その製造方法は特に限定されない。本明細書において、偏光子は、保護層(または保護フィルム)を含まない状態を意味し、偏光板は、偏光子と保護層(または保護フィルム)とを含む状態を意味する。
【0128】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子は、厚さが5μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上25μm以下であってもよい。偏光子の厚さが前記範囲より薄ければ、光学特性に劣ることがあり、前記範囲より厚ければ、低温(-30℃程度)での偏光子の収縮量が大きくなって全体的な偏光板の耐熱性に問題が生じることがある。
【0129】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子がポリビニルアルコール系フィルムの場合、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば、特別な制限なく使用可能である。この時、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるものではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。あるいは、前記ポリビニルアルコール系フィルムは、当該技術分野において偏光子の製造に一般的に使用される市販のポリビニルアルコール系フィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM2000、M3000、M6000などを使用することもできる。
【0130】
本明細書の一実施態様において、前記ポリビニルアルコール系フィルムは、これに限定されるものではないが、重合度が1,000以上10,000以下、好ましくは1,500以上5,000以下であることが好ましい。重合度が前記範囲を満たす時、分子の動きが自由で、ヨウ素または二色性染料などと柔軟に混合できるからである。
【0131】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子を用意するステップは、市販の偏光子を使用することもでき、偏光子を製造して使用可能である。
【0132】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムおよび第2保護フィルムの一面に接着剤組成物を備えるステップの、接着剤組成物の具備方法は特に限定されず、例えば、偏光子の一面に、前記活性エネルギー線硬化型組成物を、当該技術分野でよく知られたコーティング法、例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法で塗布することができる。
【0133】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルムおよび第2保護フィルムの一面に接着剤組成物を備えるステップで備えられた接着剤組成物の厚さは、0.1μm~30μm、好ましくは0.1μm~10μm、さらに好ましくは0.1μm~5μmであってもよい。
【0134】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子の一面に前記第1保護フィルムを接合し、前記偏光子の他面に前記第2保護フィルムを積層するステップにおいて、前記接合する方法は特に限定されず、例えば、第1保護フィルム/偏光子/第2保護フィルムの積層体を加圧手段を用いて各構成を互いに接合するものであってもよい。
【0135】
本明細書の一実施態様において、前記第1保護フィルム側に活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化することにより、第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着させるステップにおいて、前記接着剤組成物が硬化されながら偏光板の各構成が互いに接着される。この時、前記接着剤組成物の硬化条件などを調節して硬化速度または硬化された後の接着剤層の品質を向上させることができる。
【0136】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線を照射して前記接着剤組成物を硬化することは、活性エネルギー線照射装置を用いて照射光を照射する方法で行われる。
【0137】
前記活性エネルギー線照射装置は特に限定されず、例えば、フュージョンランプ(Fusion lamp)、アークランプ(Arc lamp)、LED、および低圧ランプが挙げられる。
【0138】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線の波長範囲は、200nm~500nm、または320nm~500nmであってもよく、好ましくは320nm~420nm、さらに好ましくは365nm~400nmであってもよい。前記数値範囲を満たす時、偏光板にカール(curl)が生じるのを防止することができ、長波長領域で反応性が良い前記化学式1で表される光増感剤の反応性に優れて硬化が円滑に行われるという利点を有する。
【0139】
前記活性エネルギー線の光量は、100mJ/cm2~1,000mJ/cm2、好ましくは500mJ/cm2~1,000mJ/cm2であってもよく、前記照射光の照射時間は、1秒~10分、好ましくは2秒~30秒であってもよい。
【0140】
前記活性エネルギー線の光量および照射時間の範囲を満たす場合、接着剤層の硬化速度が速く、フィルムの外観特性および光学特性を低下させることなく光源から過度に熱が伝達されるのを防止して、偏光子に走行シワが発生することを最小化して生産性に優れるという利点がある。
【0141】
本明細書は、光開始剤および前記化学式1で表される光増感剤を含む偏光板用接着剤組成物を提供する。前記偏光板用接着剤組成物は、偏光板接着剤層を形成するために使用されるものである。前記化学式1および光増感剤に関する説明は上述した通りである。
【実施例】
【0142】
以下、実施例を通じて本明細書をより詳しく説明する。しかし、以下の実施例は本明細書を例示するためのものであり、これによって本明細書の範囲が限定されるものではない。
【0143】
<実施例および比較例>
<製造例>
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名CEL 2021P)30重量部、ビスフェノールFエポキシ樹脂(Kukdo化学製)22重量部、3-3’(オキシビス(メチレン))ビス(3-エチルオキセタン)(東亜合成製、商品名OXT-221)5重量部、3-エチル-3-ヒドロメチル-オキセタン(東亜合成製、商品名OXT101)5重量部、エチルヘキシルオキセタン(東亜合成製、商品名OXT212)30重量部、ジプロピレングリコールジアクリレート(Hannong化学製)8重量部を混合して接着剤組成物を製造した。
【0144】
前記接着剤組成物100重量部に対して、下記表1の各物質の含有量どおり、光増感剤および光開始剤を混合した。
【0145】
【0146】
<実施例および比較例>
<比較例1>
延伸された厚さ17μmの偏光子(400nmの波長での光透過度39%)を用意(製造会社:日本合成社)し、第1保護フィルム(材料:TAC400nmの波長で光透過度81%)および第2保護フィルム(TAC、400nmの波長で25%)それぞれの一面に前記組成物A1の接着剤組成物を塗布した。
【0147】
以後、前記偏光子の一面に前記第1保護フィルムを積層し、前記偏光子の他面に前記第2保護フィルムを積層し、前記第1保護フィルム側にV-bulbランプを用いて活性エネルギー線を照射(320nm~500nmの波長範囲、540mJ/cm2以上の照度)して前記接着剤組成物を硬化することにより、第1保護フィルム、偏光子、および第2保護フィルムを接着して偏光板を製造した。
【0148】
この時、以下の実験例1の方法および基準により、第2保護フィルム側の接着剤組成物が硬化される時間を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0149】
第1保護フィルム側に光を照射する方法を
図1に示した。
【0150】
<比較例2~4および実施例1~5>
組成物A1の代わりに組成物A2~A5およびB1~B5の組成物をそれぞれ用いた以外は、前記比較例1と同様の方法で偏光板を製造し、以下の方法および基準により、第2保護フィルム側の接着剤組成物(すなわち、偏光子および第2保護フィルムの間に備えられた接着剤組成物)が硬化される時間を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0151】
<実験例1:硬化時間の定性分析>
以下の硬化時間は組成物が硬化される時間は、活性エネルギー線を照射し始めた時点から、偏光板の第2保護フィルムを偏光子から手で剥離して接着(Stick)性が無くなる時間を測定したものである。この時、接着(stick)性が無くなるか否かは、前記第2保護フィルムと偏光子を剥離しながら接着剤層部分を手で擦った時、塗膜が形成されながら接着剤が剥離される場合は未硬化の状態であり、塗膜が形成もされず接着剤が剥離されない場合を硬化されたものと評価した。
【0152】
<実験例2:硬化時間の定量分析>
図2のような実験用サンプルを用意してDSC分析を実施した。前記実験用サンプルは、第1保護フィルム(材料:TAC400nmの波長で光透過度81%)およびPVA偏光子(23μm)を透過した活性エネルギー線がDSC PANの内部に位置した接着剤に到達するように設計されたものである。前記DSC PANの内部に位置した接着剤は、第2保護フィルム側に使用される接着剤組成物に相当する。
【0153】
前記実験用サンプルを用いて、DSC PAN内部の組成物の硬化時間を測定した。具体的には、25℃の等温条件で、390nmの波長および100W/cm2の強度で露光する条件下、DSC分析(PHOTO DSC、DSC Q-200装置使用、20%Level水準および100mWの強度で光を照射した)を行った時、最大発熱ピーク(P)が現れる時間を硬化時間(t1)とし、この時のピーク面積(J/g)を計算した。
【0154】
【0155】
実施例の場合、第2保護フィルム側の接着剤層が十分に硬化されることを確認することができた。これに対し、比較例の場合、第2保護フィルム側の接着剤層が硬化されていないことを確認することができた。
【0156】
実施例の場合、光が直接照射される側の反対面に備えられた保護フィルム(第2保護フィルム)の接着剤層の長波長帯の光に対する感応性に優れて硬化が行われるが、比較例の場合、光が直接照射される側の反対面に備えられた保護フィルム(第2保護フィルム)の接着剤層の長波長帯の光に対する感応性が低下するので、硬化が行われないことを確認することができる。
【0157】
すなわち、実施例で使用された接着剤組成物は、365nm以上の長波長に対する感応性に優れた光増感剤を使用したので、長波長帯の領域でも光が直接照射される側の反対面に備えられた接着剤層の硬化が容易であることを確認した。