(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】表面活性高分子の構造化
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20230308BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230308BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B05D7/24 302C
C12N1/00 Z
C07K14/435
(21)【出願番号】P 2020537872
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2018076066
(87)【国際公開番号】W WO2019063590
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-24
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517451836
【氏名又は名称】スピベル テクノロジーズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ミュー ヘドハンマル
(72)【発明者】
【氏名】リネーア グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ヤンソン
(72)【発明者】
【氏名】ワウテル ファン デル ワインガールト
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506409(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131196(WO,A1)
【文献】特表2012-531889(JP,A)
【文献】特開2003-254969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C02N 1/00-7/08、15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルクタンパク質の成形ポリマー(shaped polymers)を製造するための方法であって、以下のステップ:
a)表面上にシルクタンパク質の水溶液を堆積させること、ここで、前記シルクタンパク質の水溶液は、液滴の形態で堆積され、かつ、前記表面は、疎水性のマイクロパターン化表面であって、水溶液がパターンに浸透することを防ぎ、かつシルクタンパク質の水溶液の液滴を受けて、その液滴状態を保持するように適合されている疎水性のマイクロパターン化表面であり、ここで、前記疎水性のマイクロパターン化表面は、90°以上の水の接触角を有する超疎水性のマイクロパターン化表面である;並びに
b)表面上でシルクタンパク質の成形ポリマーを形成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記シルクタンパク質が、スパイダーシルクタンパク質である;及び/又は
前記シルクタンパク質がさらに、機能性部分を含んでいる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)の堆積が、表面の平面と交差する方向に沿った表面に向かう液滴の運動によって達成され
る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)の形成が、表面の平面と交差する方向に沿った表面から離れる液滴の運動によって、表面から堆積した液滴を除去することを含
む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)の形成が、表面上でインタクトな状態の堆積した液滴を蒸発させること、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、以下のステップ:
c)前記表面から前記シルクタンパク質の成形ポリマーを除去すること、
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
シルクタンパク質から成る成形ポリマーの製造のための、シルクタンパク質の水溶液の液滴を受けるのに適した表面を有する構造の使用であって、前記表面は、疎水性
でありかつマイクロパターン化され、かつ微細構造のパターンを含み;ここで、前記疎水性表面は、90°以上の水の接触角を有する超疎水性の
マイクロパターン化された表面である、使用。
【請求項8】
前記超疎水性のマイクロパターン化表面が、100°以
上の水の接触角を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記疎水性のマイクロパターン化表面が、1~100μmの距離iで間隔をあけた突出要素を含み、かつ前記突出要素が、1~100μmの最大側方延長dを有
し、
前記突出要素が、ピラー状(pillar-shaped)であり、かつ前記最大側方延長dが、ピラーの最大直径である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記疎水性のマイクロパターン化表面が、シリコンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記疎水性のマイクロパターン化表面が、疎水性コーティング材料の外層を含
む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
以下:
(i)1~100μmの長さ及び10~372.5nmの厚さを有する自立シルクナノワイヤ;及び
(ii)
2~
8μmの厚さを有する自立シルクシート、
からなる群から選択される、
水不溶性スパイダーシルク構造。
【請求項13】
請求項12に記載のスパイダーシルク構造であって、(i)5~30μ
mの長さ、及び/又は10~372.5nmの厚
さを有する自立シルクナノワイヤである、
水不溶性スパイダーシルク構造。
【請求項14】
請求項12に記載のスパイダーシルク構造であって、(ii
)3~5μ
mの厚さを有する自立シルクシートである、
水不溶性スパイダーシルク構造。
【請求項15】
前記
水不溶性スパイダーシルク構造が、機能性部分を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の
水不溶性スパイダーシルク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、表面化学の分野、より具体的には表面活性高分子の成形ポリマーの製造に関する。本発明は、表面活性高分子、例えばシルクタンパク質の成形ポリマーを製造するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
人間は、何世紀にもわたって、広い用途のためにカイコにより生産されたシルクを使用してきた。近年、スパイダーシルクが、主としてその優れた機械的強度(ケブラー(Kevlar)に匹敵)、高い弾性、及びカイコシルクと同様の生体適合性のために、注目が高まっている。クモの捕食性の性質のために、クモを飼育することは現実的ではないことから、スパイダーシルク生産は、シルク模倣タンパク質を生産する組換えシステムが利用可能になった後にのみ実行可能となった。自然収穫よりも組換えシステムを使用することは、収量と再現性の点において有利であるだけでなく、シルクの機能化、すなわちシルク部分に生理活性ドメインを共有結合することも可能である。
【0003】
シルクタンパク質が、組換えシステムを用いて生産されるか、又はカイコから直接収穫されるかに関わらず、それらは可溶性タンパク質から固体シルクへと変換されなければならない。クモによって使用される天然のプロセスは複雑であり、多くのステップを含み、斯かるステップでは、スピドロインが、イオン交換、再水和、及びpHの低下との組み合わせで、せん断力を増加させる細いダクトを通る伸長流を使用して、絹糸へと変換される。例えば、マイクロ流体システム、湿式紡糸、及び電界紡糸を用いて、紡糸プロセスを模倣する試みがなされてきた。これらプロセスの多くは、設計が非常に複雑であり、形成後に糸を水に不溶性にするためにメタノールのような過酷な化学物質を必要とし、これは機能化されたシルクの場合、生物活性を殺すことになる。
【0004】
クモ及びカイコは典型的には、糸(1D)の形状でシルクを生成するのに対し、カイコから採取されるか又は組換え生産されるスピドロインは、他の形状、例えばフィルム(2D)、粒子/マイクロスフェア(3D)、フォーム(foams)(3D)、及びゲル(3D)の生成を可能にする。これらの形状を製造するための方法の多くは、過酷な化学物質の適用を必要とする。
【0005】
Tsiorisら、Mater. Res. Soc. Proc. 1052: 1-7(2007)は、親水性と疎水性が制御される成形PDMS表面を用いてシルク構造を形成するための方法を記載している。シルク溶液は、表面上に均一に堆積し、それが成形されるパターンの親水性チャネルに浸透する。形成されたシルク構造の形状及びサイズは、PDMSの鋳型に依存する。この手法の課題は、例えばPDMS鋳型からの形成した構造の脱型における制限のために、任意の所望のサイズを有するシルク構造を製造することである。Tsiorisらは、成功に重要な部分は、PDMS型の上面に液体を有することなくチャネル機能を充填することであると結論付けている。
【0006】
国際公開第2017/025964号公報は、合成ドラグライン(dragline)スパイダーシルクの製造について記載している。繊維は、より合わせた2つ以上のフィラメントからなる繊維材料の細いコードとして記載されている。従って、この構造は、複雑な方法で配置されたいくつかのフィラメントを含むので、かなり複雑である。国際公開第2017/025964号公報はさらに、線維を構成するこれらフィラメントの異なるサイズを推測しているが、このサイズを制御する方法については全く触れていない。
【0007】
Xuら、Polymer 55(7):1845-1853(2014)は、ダブルエアインターフェイス(double 空気界面)を用いてガラススライドに鋳造されたスパイダーシルクフィルムを示している。Xuらによって生成されたフィルムのサイズは、スライド上に取り付けられたワッシャー(washer)のサイズによって制御することができるのみであり、斯かるサイズは限定されている。
【0008】
Gomesら、Biomaterials 32: 4255-4266(2011)は、抗菌ペプチドに融合させることによってスパイダーシルクタンパク質の機能を拡張するための方法について記載している。
【0009】
技術分野の進歩にも関わらず、定義された再現可能な微細構造の表面活性高分子、例えばシルクタンパク質を製造するための方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明の目的は、定義された再現可能な微細構造の表面活性高分子、例えばシルクタンパク質を製造するための方法を提供することである。
【0011】
以下の開示から明らかになるであろうこれら及び他の目的のために、本発明は、第1の態様に従って、添付の特許請求の範囲及び項目別の実施形態に記載された、並びに本明細書に提示された、表面活性高分子の成形ポリマーを製造するための方法を提供する。
【0012】
本製造方法は、先行技術の方法では不可能であった例えばシルクタンパク質の微細構造の明確に定義された形状及びサイズの製造を可能にするので、有利である。
【0013】
本製造方法は、微細構造の形状及びサイズに対する再現性及び制御を提供するのに特に有利である。
【0014】
本発明はさらに、第2の態様に従って、添付の特許請求の範囲及び項目別の実施形態に記載された、並びに本明細書に提示された、スパイダーシルク構造を提供する。
【0015】
本発明はさらに、第3の態様に従って、添付の特許請求の範囲及び項目別の実施形態に記載された、並びに本明細書に提示された、表面活性高分子の水溶液の液滴を受けるように適合された表面を有する構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、代表的な調製方法及び結果のスキームである。
【
図2】
図2は、タッチ・アンド・リリース(touch-and-release)方式を用いて生成された局在Z-シルクコーティングの特性評価を示す。
【
図3】
図3は、側方液滴移動法を用いたZ-シルクナノワイヤ形成の結果を示す。
【
図4】
図4は、ドロップ・キャスティング(drop casting)シルクシート形成プロトコルの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の配列のリスト
【0018】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、様々なシルク形成が、可溶性シルクタンパク質と疎水性のマイクロパターン化表面との間の相互作用によって生成され得るという洞察に基づいている。疎水性のマイクロパターン化表面は、幾何学的にパターン化されている疎水性表面である。機能化シルクタンパク質の構造化は、機能化シルクの生物活性を保持する条件下でマイクロパターン化された疎水性表面を用いることによって達成される。生物活性の保持は、多くの用途において有利であり、過酷な化学物質及び/又は条件が方法に含まれないために可能である。微細構造を用いてパターン化シルクシートを生成する本明細書に提示される方法において、液体はパターンに浸透しない。
【0020】
疎水性のパターン表面特性とシルク溶液取り扱いパラメータとを組み合わせることによって、本発明は、コーティング、ナノワイヤ及びシートを含む様々な形状の制御された再現可能な生成を可能にする。明確に定義されたコーティングは、表面の突出要素上へのシルクタンパク質溶液の液滴の一次的な垂直堆積、並びに液滴の除去によって得られる。ナノワイヤは、表面上でのシルクタンパク質の液滴の側方回転(lateral rolling)によって得られる。コヒーレントシート(Coherent sheets)は、表面上へのシルク溶液の液滴の垂直堆積、次いで蒸発によって得られる。制御された界面での表面活性シルクタンパク質の規則化に起因して、構造化は得られる。本発明者らの研究で形成されたシルクは、疎水性界面(空気を含む)と全ての面で接触している。したがって、本方法は、マルチマー又はポリマーへの集合を可能にする任意の表面活性高分子に適用可能であるべきである。
【0021】
表面活性高分子は、親水性領域を極性環境に、そして疎水性セグメントを無極性相に露出するようにそれ自身を配向することができる高分子である。そうすることによって、界面張力が減少することになる。天然と合成の両方の表面活性ポリマーが存在する。骨格は親水性又は疎水性のいずれかであり、他の特性の側鎖が付加されている。あるいは、2つの特性(疎水性及び親水性)がセグメントにおいて交互であり得る。タンパク質は、交互の特性のアミノ酸を含むタンパク質鎖を有することによって、あるいは翻訳後修飾、例えば特定の機能を追加するリン酸基又は炭水化物残基を含むことによって、表面活性を獲得することができる。表面活性高分子の非限定的な例としては、シルクタンパク質(クモ又はカイコ由来の)、乳タンパク質、筋肉タンパク質(ミオシン)、ハイドロフォビン(hydrophobins)、ケツルアズキ(black gram)由来のグロブリン、ロドリン(rodlins)、チャップリン(chaplins)、ポリアニオン性リポ多糖、キトサン誘導体、及びデンプン誘導体が挙げられる。
【0022】
本発明の第1の態様によれば、表面活性高分子の成形ポリマーを製造するための方法は、以下のステップ:
a)表面上に表面活性高分子の水溶液を堆積させること;及び
b)表面上で表面活性高分子の成形ポリマーを形成すること;及び任意により
c)表面から表面活性高分子の成形ポリマーを除去すること、
を含んでいる。
【0023】
本方法において、表面活性高分子の水溶液は、液滴の形態で堆積される。さらに、表面は、疎水性のマイクロパターン化表面であって、水溶液がパターンに浸透することを防ぎ、かつ表面活性高分子の水溶液の液滴を受けて、その液滴状態を保持するように適合されている疎水性のマイクロパターン化表面である。好ましくは、疎水性のマイクロパターン化表面は、90°以上の水の接触角を有する超疎水性のマイクロパターン化表面である。
【0024】
好ましい実施形態では、表面活性高分子はタンパク質である。特に、表面活性高分子はシルクタンパク質であり得る。
【0025】
本発明の好ましい特定の実施形態では、シルクタンパク質は、フィブロイン(fibroin)である。フィブロインは、クモ、蛾、例えばカイコ、及び他の昆虫によって生成されるシルク中に存在する。好ましいフィブロインは、カイコガ属(Bombyx)由来であり、好ましくはボンビクス・モリ(Bombyx mori)のカイコ由来である。
【0026】
本発明の好ましい特定の実施形態では、シルクタンパク質は、スパイダーシルクタンパク質である。用語「スピドロイン」及び「スパイダーシルクタンパク質」は、説明全体にわたって互換可能に使用され、既知の全てのスパイダーシルクタンパク質を包含し、斯かるスパイダーシルクタンパク質は大瓶状腺スパイダーシルクタンパク質(これは典型的には「MaSp」、又はニワオニグモ(Araneus diadematus)の場合「ADF」と略記される)を含む。これら大瓶状腺スパイダーシルクタンパク質には一般に、1と2の2つのタイプがある。これら用語はさらに、既知のスパイダーシルクタンパク質と高度な同一性及び/又は類似性を有する非天然タンパク質を含む。
【0027】
本発明のこれら及び他の態様のいくつかの好ましい実施形態では、スパイダーシルクタンパク質は、タンパク質部分REP及びCTを含むか、又はこれらからなり、ここで、
REPは、70~300アミノ酸残基の反復フラグメントであって、L(AG)nL、L(AG)nAL、L(GA)nL、及びL(GA)nGLかからなる群から選択され、ここで、nは2~10の整数であり;個々のAセグメントはそれぞれ、8~18アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで、0~3のアミノ酸残基はAlaではなく、かつ残りのアミノ酸残基はAlaであり;個々のGセグメントはそれぞれ、12~30アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで、少なくとも40%のアミノ酸残基はGlyであり;個々のLセグメントの各々は、0~30アミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列であり;そして、CTは、配列番号4~5のいずれかと少なくとも70%の同一性を有する70~120アミノ酸残基のフラグメントである。任意により、機能性部分は、スパイダーシルクタンパク質の末端に、又は部分の間に、又は部分のいずれかの中に配置され、好ましくはスパイダーシルクタンパク質の末端に配置される。
【0028】
スパイダーシルクタンパク質は典型的には、140~2000アミノ酸残基、例えば140~1000アミノ酸残基、例えば140~600アミノ酸残基、好ましくは140~500アミノ酸残基、例えば140~400アミノ酸残基を含む。スパイダーシルクタンパク質フラグメントを含むより長いタンパク質は、不定形凝集物を形成し、これは可溶化及び重合のための過酷な溶媒の使用を必要とするため、サイズが小さいことは有利である。
【0029】
スパイダーシルクタンパク質は、1つ又は複数のリンカーペプチド、又はLセグメントを含み得る。リンカーペプチド(複数)は、スパイダーシルクタンパク質の任意の部分間、例えばREP及びCT部分の間、スパイダーシルクタンパク質の末端、又はスピドロインフラグメントと細胞結合モチーフとの間のいずれかに配置されてもよい。リンカー(複数)は、スパイダーシルクタンパク質の機能的ユニットの間のスペーサーを提供することができるが、スパイダーシルクタンパク質の同定及び精製のためのハンドル、例えばHisタグ及び/又はTrxタグを構成することもある。スパイダーシルクタンパク質が、スパイダーシルクタンパク質の同定及び精製のための2つ以上のリンカーペプチドを含む場合、スペーサー配列によって分離されることが好ましい(例えばHis6-スペーサー-His6-)。リンカーはまた、シグナルペプチド、例えばシグナル認識粒子を構成してもよく、斯かるシグナル認識粒子は、スパイダーシルクタンパク質を膜に導き、及び/又は宿主細胞から周囲の培地へのスパイダーシルクタンパク質の分泌を引き起こす。スパイダーシルクタンパク質はまた、そのアミノ酸配列における切断部位を含んでもよく、斯かる切断部位は、リンカー(複数)及び/又は他の関連部分の切断及び除去を可能にする。様々な切断部位が当業者に知られており、例えば化学剤のための切断部位、例えばMet残基の後のCNBr、及びAsn-Gly残基間のヒドロキシアミン、プロテアーゼのための切断部位、例えばトロンビン又はプロテアーゼ3C、並びに自己スプライシング配列、例えばインテイン自己スプライシング配列がある。
【0030】
タンパク質部分REPは、アラニンリッチストレッチとグリシンリッチストレッチとが交互に繰り返される反復特徴を有するフラグメントである。REPフラグメントは一般に、70超、例えば140超、及び300未満、好ましくは240未満、例えば200未満のアミノ酸残基を含み、以下に詳述されるように、それ自体がいくつかのL(リンカー)セグメント、A(アラニンリッチ)セグメント及びG(グリシンリッチ)セグメントに分割され得る。典型的には、任意である前記リンカーセグメントは、REPフラグメント末端に位置するが、残りのセグメントは順にアラニンリッチ及びグリシンリッチである。したがって、REPフラグメントは一般に、以下の構造のいずれか(nは整数である)を有することができる:
L(AG)nL、例えばLA1G1A2G2A3G3A4G4A5G5L;
L(AG)nAL、例えばLA1G1A2G2A3G3A4G4A5G5A6L;
L(GA)nL、例えばLG1A1G2A2G3A3G4A4G5A5L;又は
L(GA)nGL、例えばLG1A1G2A2G3A3G4A4G5A5G6L。
【0031】
従って、アラニンリッチセグメント又はグリシンリッチセグメントがN末端又はC末端リンカーセグメントに隣接しているかどうかは重要ではない。nは、2~10の整数、好ましくは2~8、また好ましくは4~8、より好ましくは4~6であることが好ましく、すなわちn=4、n=5又はn=6であることが好ましい。
【0032】
いくつかの実施形態では、REPフラグメントのアラニン含有量は、20%超、好ましくは25%超、より好ましくは30%超、及び50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満である。より高いアラニン含有量は、より堅く及び/又はより強く及び/又は伸長しにくい繊維を提供することが企図される。
【0033】
特定の実施形態では、REPフラグメントはプロリン残基を欠き、すなわち、REPフラグメントにはPro残基は存在しない。
【0034】
次にREPフラグメントを構成するセグメントに目を向けると、各セグメントは個別であることが強調され、すなわち特定のREPフラグメントの任意の2つのAセグメント、任意の2つのGセグメント、又は任意の2つのLセグメントは、同一であっても同一でなくてもよい。したがって、各タイプのセグメントが特定のREPフラグメント内で同一であることはスピドロインの一般的な特徴ではない。むしろ、以下の開示は、個々のセグメントを設計し、それをREPフラグメントへと集めるガイドラインを当業者に提供し、斯かるREPフラグメントは、細胞足場材料に有用な機能性スパイダーシルクタンパク質の一部である。
【0035】
個々のAセグメントの各々は、8~18アミノ酸残基を有するアミノ酸配列である。個々のAセグメントの各々は、13~15アミノ酸残基を含むことが好ましい。また、大多数、又は2つ以上のAセグメントが13~15アミノ酸残基を含むこと、並びに少数、例えば1つ又は2つのAセグメントが8~18アミノ酸残基、例えば8~12又は16~18アミノ酸残基を含むことが可能である。圧倒的多数のこれらアミノ酸残基はアラニン残基である。より具体的には、0~3個のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく、かつ残りのアミノ酸残基はアラニン残基である。したがって、個々のAセグメントの各々における全てのアミノ酸残基は、例外なく、あるいは1個、2個又は3個の任意のアミノ酸であり得るアミノ酸残基を除いて、アラニン残基である。アラニン置換アミノ酸(複数)は、天然アミノ酸であることが好ましく、好ましくは、セリン、グルタミン酸、システイン及びグリシンの群から個別に選択され、より好ましくはセリンである。もちろん、Aセグメントの1つ又は複数は、オールアラニンセグメントであり、一方で残りのAセグメントは、1~3個の非アラニン残基、例えばセリン、グルタミン酸、システイン又はグリシンを含むことが可能である。
【0036】
一実施形態では、各Aセグメントは、13~15アミノ酸残基を含み、これは、上述したように10~15個のアラニン残基及び0~3個の非アラニン残基を含む。より好ましい実施形態では、各Aセグメントは、13~15アミノ酸残基を含み、これは、上述したように12~15個のアラニン残基及び0~1個の非アラニン残基を含む。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に係るAセグメントは、らせん構造又はベータシートを形成することが想定される。
【0037】
さらに、個々のGセグメントの各々は、12~30アミノ酸残基のアミノ酸配列であることが実験データから結論付けられた。個々のGセグメントの各々は、14~23アミノ酸残基からなることが好ましい。各Gセグメントのアミノ酸残基の少なくとも40%は、グリシン残基である。典型的には、個々のGセグメントの各々のグリシン含有量は、40~60%の範囲である。
【0038】
特定の実施形態では、各Gセグメントの最初の2個のアミノ酸残基は、-Gln-Gln-ではない。
【0039】
個々のLセグメントの各々は、任意のリンカーアミノ酸配列を表し、これは、0~30アミノ酸残基、例えば0~20アミノ酸残基を含み得る。このセグメントは任意であり、スパイダーシルクタンパク質の機能には重要ではないが、その存在はさらに、完全な機能性スパイダーシルクタンパク質、並びに線維、フィルム、フォーム及び他の構造を形成する機能性スパイダーシルクタンパク質のポリマーを可能にする。特に、リンカーセグメントのアミノ酸配列は、記載されたA又はGセグメントのいずれかに類似していてもよいが、通常、本明細書に定義されたその基準を満たすには十分でない。
【0040】
REPフラグメントの一実施形態では、Lセグメントの1つは、0個のアミノ酸を含む、すなわち、Lセグメントの1つは欠けている。REPフラグメントの別の実施形態では、両方のLセグメントが0個のアミノ酸を含む、すなわち両方のLセグメントが欠けている。したがって、本発明に係るREPフラグメントのこれら実施形態は、以下のように概略的に表すことができる:(AG)nL、(AG)nAL、(GA)nL、(GA)nGL;L(AG)n、L(AG)nA、L(GA)n、L(GA)nG;及び(AG)n、(AG)nA、(GA)n、(GA)nG。これらREPフラグメントのいずれかは、以下に定義されるように任意のCTフラグメントとの使用に適している。
【0041】
細胞足場材料におけるスピドロインのCTフラグメントは、スパイダーシルクタンパク質のC末端アミノ酸配列と高度な類似性を有する。国際公開第2007/078239号公報に示されているように、このアミノ酸配列は、様々な種並びにMaSp1、MaSp2及びMiSp(小瓶状腺スピドロイン)を含むスパイダーシルクタンパク質の間でよく保存されている。
【0042】
特定のどのCTフラグメントが細胞足場材料中のスパイダーシルクタンパク質に存在するかは重要ではない。代表的なCTフラグメントは、ユープロステノプス・オーストラリス(Euprosthenops australis)に由来する配列番号1のアミノ酸残基166~263、すなわち配列番号4である。別の代表的なCTフラグメントは、MiSp配列番号5である。したがって、一実施形態では、CTフラグメントは、配列番号4又は配列番号5と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%の同一性を有する。CTフラグメントは、配列番号4又は配列番号5と同一であり得る。
【0043】
CTフラグメントは典型的には、70~120アミノ酸残基からなる。CTフラグメントは、少なくとも70、又は80超、好ましくは90超のアミノ酸残基を含むことが好ましい。また、CTフラグメントは、最大で120、又は110未満のアミノ酸残基を含むことが好ましい。典型的なCTフラグメントは、約100アミノ酸残基を含む。
【0044】
用語「%の同一性」は、本明細書で使用される場合、以下のように計算される。クエリ配列は、CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson et al、Nucleic Research、22:4673-4680(1994))を用いて、標的配列に対してアラインされる。アラインされた配列の最も短いものに対応するウィンドウで比較が行われる。各位置のアミノ酸残基が比較され、標的配列における同一の対応を有するクエリ配列の位置のパーセンテージが、%の同一性として報告される。
【0045】
用語「%の類似性」は、本明細書で使用される場合、疎水性残基Ala、Val、Phe、Pro、Leu、Ile、Trp、Met及びCysが類似であり;塩基性残基Lys、Arg及びHisが類似であり;酸性残基Glu及びAspが類似であり;そして親水性の非荷電残基Gln、Asn、Ser、Thr及びTyrが類似であるという点を除き、「%の同一性」について上述したように計算される。残りの天然アミノ酸Glyは本文脈において、他のいずれのアミノ酸とも類似でない。
【0046】
本説明を通して、本発明に係る代替実施形態は、特定のパーセンテージの同一性の代わりに、対応するパーセンテージの類似性を満たす。他の代替実施形態は、各配列について好ましいパーセンテージの同一性の群から選択される特定のパーセンテージの同一性並びに他のより高いパーセンテージの類似性を満たす。例えば、配列は、別の配列と70%類似であってもよく;又は当該配列は、別の配列と70%同一であってもよく;又は当該配列は、別の配列と70%同一かつ90%類似であってもよい。
【0047】
本発明に係る好ましいスパイダーシルクタンパク質では、REP-CTフラグメントは、配列番号1と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%、又はさらには100%の同一性を有する。
【0048】
シルクタンパク質は有利には、機能性部分をさらに含んでいる。この機能性部分は、本明細書に例示されたタンパク質部分、又は非タンパク質部分であり得る。機能性部分は、シルクタンパク質の末端に、又はシルクタンパク質内のいずれかに配置され、好ましくはシルクタンパク質のN末端又はC末端に配置される。
【0049】
所望の生物活性が、様々な生物活性タンパク質及びペプチド、例えばフィブロネクチンペプチドモチーフ(シルクコーティング上の細胞接着及び増殖を増強する)及び抗菌性ペプチドMagainin Iによって導入されてもよい。機能性部分を含む可能性は、体内での移植片の許容性を最適化し、感染の問題に取り組むために生体材料用途に重要であり、これは移植の成功にも挑戦している。さらに、折り畳み依存機能を有するタンパク質ドメインの形態で機能性部分に融合したシルクタンパク質を用いて、より高度な生物活性が導入され得る、例えば親和性ドメイン(例えばZドメイン結合IgG)、酵素(例えばキシラーゼ)又は成長因子(例えば繊維芽細胞成長因子、FGF)。
【0050】
スピドロインフラグメント及び機能性部分は直接的又は間接的に互いに連結される。直接連結は、介在する配列、例えばリンカーなしに部分間で直接共有結合することを意味する。間接連結はまた、部分は共有結合で連結されるが、介在する配列、例えばリンカー及び/又は1つ又は複数のさらなる部分、例えば1~2NT部分が存在することを意味する。
【0051】
機能性部分は、スパイダーシルクタンパク質の内部又はいずれかの末端に配置されてもよく、すなわちC末端に配置されるか又はN末端に配置されてもよい。機能性部分は、スパイダーシルクタンパク質のN末端に配置されることが好ましい。スパイダーシルクタンパク質が、スパイダーシルクタンパク質の同定及び精製のための1つ又は複数のリンカーペプチド(複数)、例えばHis又はTrxタグ(複数)を含む場合、それは、スパイダーシルクタンパク質のN末端に配置されることが好ましい。
【0052】
好ましいスパイダーシルクタンパク質は、N末端に配置された機能性部分の形態を有し、斯かる機能性部分は、0~30アミノ酸残基、例えば0~10アミノ酸残基のリンカーペプチドによってREP部分に結合している。任意により、スパイダーシルクタンパク質は、N末端又はC末端リンカーペプチドを有し、これは精製タグ、例えばHisタグ、及び切断部位を含み得る。
【0053】
シルクタンパク質は任意により、機能性部分として細胞結合モチーフ(CBM)を含む。任意の細胞結合モチーフは、シルクタンパク質のいずれかの末端、又はシルクタンパク質内に配置され、好ましくはシルクタンパク質のN末端又はC末端に配置される。
【0054】
本発明のこれら及び他の態様の特定の好ましい実施形態では、機能性部分は細胞結合モチーフであり、斯かる細胞結合モチーフは、RGD、IKVAV(配列番号6)、YIGSR(配列番号7)、EPDIM(配列番号8)、NKDIL(配列番号9)、GRKRK(配列番号10)、KYGAASIKVAVSADR(配列番号11)、NGEPRGDTYRAY(配列番号12)、PQVTRGDVFTM(配列番号13)、AVTGRGDSPASS(配列番号14)、TGRGDSPA(配列番号15)、CTGRGDSPAC(配列番号16)及びFNcc(配列番号17)から選択され;好ましくはFNcc、GRKRK、IKVAV、RGD及びCTGRGDSPAC、より好ましくはFNcc及びCTGRGDSPACから選択され;ここで、FNccは、C1X1X2RGDX3X4X5C2であり;ここで、X1、X2、X3、X4及びX5の各々は独立して、システイン以外の天然アミノ酸残基から選択され;並びに、C1及びC2は、ジスルフィド結合を介して接続されている。
【0055】
その最も一般的な形態において、FNccはC1X1X2RGDX3X4X5C2(配列番号17)であり;ここで、X1、X2、X3、X4及びX5の各々は独立して、システイン以外の天然アミノ酸残基から選択され;並びにC1及びC2は、ジスルフィド結合を介して接続されている。FNccは修飾された細胞結合モチーフであり、これは、RGD配列に隣接する正確な位置にシステインを配置して、ジスルフィド架橋を形成することを可能にし、鎖を同様のタイプのターンループへと拘束することによって、フィブロネクチンのα5β1-特異的RGDループモチーフを模倣する。この環状RGD細胞結合モチーフは、細胞結合モチーフを含むタンパク質、例えば組換え産生されたスパイダーシルクタンパク質から成るマトリックスへの細胞接着効果を高める。用語「環状」は、本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸残基がそれらの側鎖を介して、より具体的には2つのシステイン残基間のジスルフィド結合を介して共有結合しているペプチドを指す。環状RGD細胞結合モチーフFNccは、初代細胞の増殖及び遊走の両方を促進する。環状RGD細胞結合モチーフを含む細胞足場材料上で培養されたヒト初代細胞は、線状RGDペプチドを含む同じ材料と比較して、増大した付着、拡散、ストレスファイバー形成、及び焦点接着を示す。
【0056】
FNccの好ましい実施形態では、X1、X2、X3、X4及びX5の各々は独立して、G、A、V、S、T、D、E、M、P、N及びQからなるアミノ酸残基の群から選択される。FNccの他の好ましい実施形態では、X1及びX3の各々は独立して:G、S、T、M、N及びQからなるアミノ酸残基の群から選択され;かつX2、X4及びX5の各々は独立して:G、A、V、S、T、P、N及びQからなるアミノ酸残基の群から選択される。FNccの特定の好ましい実施形態では、X1は:G、S、T、N及びQからなるアミノ酸残基の群から選択され;X3は:S、T及びQからなるアミノ酸残基の群から選択され;かつ、X2、X4及びX5の各々は独立して:G、A、V、S、T、P及びNからなるアミノ酸残基の群から選択される。FNccのいくつかの好ましい実施形態では、X1は、S又はTであり;X2は、G、A又はVであり;好ましくはG又はAであり;より好ましくはGであり;X3は、S又はTであり;好ましくはSであり;X4は、G、A、V又はPであり;好ましくはG又はPであり;より好ましくはPであり;かつ、X5はG、A又はVであり;好ましくはG又はAであり;より好ましくはAである。
【0057】
FNccの特定の好ましい実施形態では、細胞結合モチーフは、アミノ酸配列CTGRGDSPAC(配列番号16)を含んでいる。さらに好ましい本発明に係る環状RGD細胞結合モチーフは、位置1及び10は常にCであり;位置4は常にRであり;位置5は常にGであり;位置6は常にDであり;;かつ位置2~3及び7~9はシステインでないことを条件として、CTGRGDSPAC(配列番号16)に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%の同一性を示す。位置2~3及び7~9間の非同一位置は上述したように自由に選択することができることが理解される。
【0058】
細胞結合モチーフの好ましい群は、FNcc、GRKRK、IKVAV、及びRGDであり、特にFNcc、例えばCTGRGDSPACである。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明は、疎水性表面上でシルクタンパク質の溶液を利用して、以下の3つの異なる形態のシルク:局所コーティング、局所指向性ワイヤのアレイ、及び自由シルクシート、すなわち自立シルクシートを生成する。一つの好ましい実施形態では、シルク形態は、自立ナノワイヤである。自立(Free-standing)とは、いかなる支持構造にも取り付けられることなく構造が生成されることを意味する。自立構造は、シルクタンパク質の二次構造を実質的に変化させる過酷な処置、例えば熱を用いることなく除去することができる。調製方法の概略図及び代表的な結果を
図1に示す:a)突出要素の頂部に局在したシルクコーティングをもたらす、表面の突出要素上のシルク溶液の液滴の垂直堆積及び即時除去;
b)シルクナノワイヤ形成をもたらす、突出要素上のシルク溶液の液滴の側方回転;及び
c)シルクシート形成をもたらす、突出要素へのシルク溶液の液滴の垂直付着、それに続く蒸発。
【0060】
本発明者らの簡単かつ迅速な方法を用いるこれら3つの形式の生成は、いずれも表面上におけるようにいくつかの潜在的な用途がある:表面の突出要素上の局在した微細構造コーティングは、小型化されたマイクロアレイとして使用することができ、ワイヤは、光導波路として使用することができ、そしてシートは、細胞培養用途に使用することができる;そして、表面から解放される場合:解放された(すなわち自立型)コーティング及びワイヤは、生物医学用途のための懸濁されたビヒクルとして使用することができ、そして、シートのための細胞増殖用途は、シート生成前に異なる抗体で事前パターン化することによって拡張することができ、それによって細胞増殖を誘導する。
【0061】
3つの例示的な技術及びこれらの対応するシルク形成を提示するだけでなく、本発明者らはまた、各形成のための成長パラメータを調査する。超疎水性表面上にCassie-Baxter状態でシルクタンパク質溶液の液滴を配置することによって、本発明者らは、液体:固体及び液体:空気界面におけるシルク-シルク相互作用を促進する。それによって、穏やかな条件下で機能化シルクの形成を生成し、生物活性が保持されたシルク構造をもたらすことができる。本明細書では、2つの異なる機能化シルクタンパク質についてこの原理を実証する;Z-シルク、これは抗体に選択親和性を有し、診断用途に適している、及びFNcc-シルク、これは細胞結合能力を有し、それによって細胞培養用途に有用である。
【0062】
好ましい実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面が、液滴形状分析によって測定されるように、90°以上、例えば100°以上、例えば120°以上、又はさらに150°以上の水の接触角を有する超疎水性のマイクロパターン化表面である。超疎水性のマイクロパターン化表面は、幾何学的にパターン化されている超疎水性表面である。超疎水性表面は、その表面構造のために、非湿潤性の表面である。水はそのような構造に浸透することができないので、シルクタンパク質は、疎水性表面、液体及び周囲の空気の間の三点界面に集まる。表面と接触する液体は、典型的には、90°超、例えば100°超の接触角を特徴とするであろう。自然界にはそのような表面のいくつかの例があり、最もよく知られているものは自己浄化(self-cleaning)する蓮の葉である。
【0063】
超疎水性パターンは有利には、制御されたサイズの個々のナノフィブリル及びナノワイヤを製造する。ナノフィブリル及びナノワイヤは、自立ナノフィブリル及びナノワイヤとして製造することができる。同様に、超疎水性表面、液体及び空気の間の三点界面は、シルクを除去可能な薄いシートへと集合させる。したがって、シートは自立シートとして製造され得る。
【0064】
一つの好ましい実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面は、1~100μmの距離iで間隔をあけた突出要素を含み、ここで、突出要素は、1~100μmの最大側方延長(lateral extension)dを有する。好ましくは、突出要素は、1~50μm、例えば5~30μmの最大側方延長dを有する。好ましくは、前記突出要素間の間隔距離iは、1~50μm、例えば5~30μmである。
【0065】
好ましい実施形態では、突出要素は、ピラー状(pillar-shaped)であり、かつ前記最大側方延長dが、ピラーの最大直径である。ピラーの表面は、多くの方法で、例えば交互積層法(layer-by-layer)及びコロイドアセンブリ、自己アセンブリ、自然な折り畳み、及びリソグラフィ及びエッチングを用いて調製することができる。プロセスの実行方法に応じて、異なるタイプのピラー構造、例えば:直線の棒状である「l」字型のピラー、シングルリエントラント(single reentrant)構造と呼ばれる「T」字型のピラー、及びダブルリエントラント構造と呼ばれるタイムズ・ニュー・ローマン(times new roman)の「T」型のピラーが達成され得る。これらの最初の2つは、超疎水性にするために疎水性材料(例えばC4F8)でコーティングされる必要があるが、最後のものは親水性材料(例えばSiO2)から作製され得る。
【0066】
幅広い範囲の材料を、疎水性材料の範囲にわたる超疎水性表面を製造するために使用することができ、例えば、これらに限定されるものではないが、フッ素化ポリマー(テフロン(登録商標)(Teflon))、シリコン(PDMS)、有機材料(ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート)、及び無機材料(ZnO、TiO2)が挙げられる。しかしながら、ピラーを正確に構造化することによって、SiO2のような親水性材料を用いて超疎水性表面を作製することも可能である。
【0067】
特定の実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面はシリコンを含む。一つの好ましい実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面は、シリコンから成る。
【0068】
いくつかの実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面は、疎水性コーティング材料、例えばパーフルオロカーボン化合物の外層を含む。
【0069】
特定の実施形態では、疎水性のマイクロパターン化表面は、超疎水性コーティング材料の外層を含む。
【0070】
第2の態様によれば、本発明は、新規なシルク構造、好ましくはスパイダーシルク構造を提供する:
(i)疎水性のマイクロパターン化表面の突出要素に付着した1~100μmの側方延長を有するコーティング。好ましくは、疎水性のマイクロパターン化表面は、90°以上の水の接触角を有する超疎水性のマイクロパターン化表面である。好ましくは、コーティングは、5~30μm、例えば5~20μmの側方延長を有する。
(ii)1~100μmの長さ及び10~372.5nmの厚さ、例えば10~300nm、10~200nm、好ましくは10~100nmの厚さを有するナノワイヤ。好ましくは、ナノワイヤは、5~30μmの長さ、例えば5~20μmの長さ、及び/又は36~88nmの厚さを有する。好ましくは、ナノワイヤは自立型である。疑いを避けるために、ナノワイヤは秩序だったタンパク質、例えばシルクタンパク質の単一フィラメントである。
(iii)1~10μmの厚さを有するシルクシート。好ましくは、シルクシートは、2~8μmの厚さ、例えば3~5μmの厚さを有する。好ましくは、シルクシートは自立型である。
【0071】
第3の態様によれば、本発明は、表面活性高分子の水溶液の液滴、例えばシルクタンパク質を受けるように適合された表面を有する構造を提供し、前記表面は、疎水性であり、かつ微細構造のパターンを含み;ここで、前記表面は、前記パターンに水溶液が浸透することを防ぎ、かつその液滴状態を保持するように適合され;かつここで、前記表面は、そこに表面活性高分子の成形ポリマーの形成を可能にするように適合される。好ましくは、疎水性表面は、90°以上の水の接触角を有する超疎水性表面である。
【0072】
本構造及びその表面の好ましい特徴は、本明細書の上記詳細な説明から明らかである。当該構造は、上述したように表面活性高分子から成る成形ポリマーの製造に有用である。
【0073】
実施形態の項目化されたリスト
1.表面活性高分子の成形ポリマーを製造するための方法であって、以下のステップ:
a)表面上に表面活性高分子の水溶液を堆積させること、ここで、前記表面活性高分子の水溶液は、液滴の形態で堆積され、かつ、前記表面は、疎水性のマイクロパターン化表面であって、水溶液がパターンに浸透することを防ぎ、かつ表面活性高分子の水溶液の液滴を受けて、その液滴状態を保持するように適合されている疎水性のマイクロパターン化表面である;並びに
b)表面上で表面活性高分子の成形ポリマーを形成すること、
を含む、方法。
【0074】
2.前記表面活性高分子がタンパク質である、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0075】
3.前記表面活性高分子が、シルクタンパク質、例えばスパイダーシルクタンパク質である、実施形態2に記載の方法。
【0076】
4.前記シルクタンパク質がさらに、機能性部分を含んでいる、実施形態3に記載の方法。
【0077】
5.ステップa)の堆積が、表面の平面と交差する方向に沿った表面に向かう液滴の運動によって達成される、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0078】
6.ステップa)の堆積が、表面の平面に対する液滴の本質的に垂直な運動によって達成される、実施形態5に記載の方法。
【0079】
7.ステップb)の形成が、表面の平面と交差する方向に沿った表面から離れる液滴の運動によって、表面から堆積した液滴を除去することを含む、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0080】
8.前記堆積した液滴が、表面の平面に対する液滴の本質的に垂直な運動によって表面から除去される、実施形態7に記載の方法。
【0081】
9.前記液滴が、ステップa)の堆積が完了した後、30~240秒以内、例えば約60秒以内に除去される、実施形態7~8のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
10.ステップb)の形成が、その除去前に表面上の堆積した液滴の横方向の移動を含まない、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
11.ステップb)の形成が、その除去前に表面上の堆積した液滴を横方向に移動させること、を含む、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
12.前記液滴移動速度(秒)が、0.1~10mm s-1の範囲内、例えば約5mm s-1である、実施形態11に記載の方法。
【0085】
13.ステップb)の形成が、表面上で堆積した液滴を蒸発させること、を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
14.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、90°以上の水の接触角を有する超疎水性のマイクロパターン化表面である、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0087】
15.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、1~100μmの距離iで間隔をあけた突出要素を含み、かつ前記突出要素が、1~100μmの最大側方延長dを有する、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0088】
16.前記突出要素が、1~50μm、例えば5~30μmの最大側方延長dを有する、実施形態15に記載の方法。
【0089】
17.前記前記突出要素間の間隔距離iが、1~50μm、例えば5~30μmである、実施形態15~16のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
18.前記突出要素が、ピラー状であり、かつ前記最大側方延長dが、ピラーの最大直径である、実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
19.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、シリコンを含む、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0092】
20.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、疎水性コーティング材料の外層を含む、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0093】
21.前記疎水性コーティング材料が、パーフルオロカーボン化合物である、実施形態20に記載の方法。
【0094】
22.さらに以下のステップ:
c)前記表面から前記表面活性高分子の成形ポリマーを除去すること、
を含む、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0095】
23.前記表面活性高分子の水溶液が、炭酸緩衝液を含んでいる、先の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0096】
24.スパイダーシルク構造であって、以下:
(i)疎水性のマイクロパターン化表面の突出要素に付着した1~100μmの側方延長を有するコーティング;
(ii)1~100μmの長さ及び10~100nmの厚さを有するナノワイヤ;及び
(iii)1~10μmの厚さを有するシルクシート、
からなる群から選択される、スパイダーシルク構造。
【0097】
25.(i)疎水性のマイクロパターン化表面の突出要素に付着した5~30μm、例えば5~20μmの側方延長を有するコーティングである、実施形態24に記載のスパイダーシルク構造。
【0098】
26.(ii)5~30μmの長さ、例えば5~20μm、及び/又は36~88nmの厚さを有するナノワイヤである、実施形態24に記載のスパイダーシルク構造。
【0099】
27.(iii)2~8μmの厚さ、例えば3~5μmを有するシルクシートである、実施形態24に記載のスパイダーシルク構造。
【0100】
28.表面活性高分子の水溶液の液滴を受けるように適合された表面を有する構造であって、前記表面は、疎水性であり、かつ微細構造のパターンを含み;ここで、前記表面は、前記パターンに水溶液が浸透することを防ぎ、かつその液滴状態を保持するように適合され;かつここで、前記表面は、そこに表面活性高分子の成形ポリマーの形成を可能にするように適合される、構造。
【0101】
29.前記疎水性表面が、90°以上、例えば120°以上、例えば150°以上の水の接触角を有する超疎水性表面である、実施形態28に記載の構造。
【0102】
30.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、1~100μmの距離iで間隔をあけた突出要素を含み、かつ前記突出要素が、1~100μmの最大側方延長dを有する、実施形態28~29のいずれか1つに記載の構造。
【0103】
31.前記突出要素が、1~50μm、例えば5~30μmの最大側方延長dを有する、実施形態30に記載の構造。
【0104】
32.前記突出要素間の間隔距離iが、1~50μm、例えば5~30μmである、実施形態30~31のいずれか1つに記載の構造。
【0105】
33.前記突出要素が、ピラー状であり、かつ前記最大側方延長dが、ピラーの最大直径である、実施形態30~32のいずれか1つに記載の構造。
【0106】
34.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、シリコンを含む、実施形態28~33のいずれか1つに記載の構造。
【0107】
35.前記疎水性のマイクロパターン化表面が、疎水性コーティング材料の外層を含む、実施形態28~34のいずれか1つに記載の構造。
【0108】
36.前記疎水性コーティング材料が、パーフルオロカーボン化合物である、実施形態35に記載の構造。
【0109】
37.前記表面上に表面活性高分子の成形ポリマーをさらに含む、実施形態28~36のいずれか1つに記載の構造。
【0110】
38.表面活性高分子から成る成形ポリマーの製造のための、実施形態28~37のいずれか1つに記載の構造の使用。
【実施例】
【0111】
実施例
直径(d)及び間隙(i)を変化させて円形のシリコンピラーとして成形した突出要素のマイクロアレイ(d、i=5、10、15、又は20μmを含む)を、標準的なマイクロ加工プロセスを用いて調製し、プラズマ堆積を用いて疎水性層でコーティングした。
【0112】
官能化した可溶性シルクタンパク質を例えばJanssonら、Biomacromolecules 15: 1696(2014)に記載されたように調製した。次に、シルク溶液の液滴を、
図1に示され、かつ実験セクションで詳述されたように、3つの方法:タッチ・アンド・リリース(touch-and-release)、側方液滴移動(lateral droplet movement)、又はドロップ・キャスティング(drop casting)のうちの一つを用いて表面上で操作した。表面の湿潤防止特性(anti-wetting property)は、液体がピラーに浸透することを防ぎ、すなわちCassie-Baxter状態を保持し、それぞれ、局在したコーティング、ナノワイヤ、及びシルクのシートを生成する3つの方法をもたらす。Z-シルクの生物活性は、標識された抗体を用いた染色の成功によって確認され、この標識抗体は、蛍光顕微鏡を用いたシルクコーティング及びナノワイヤ構造の可視化に利用された。どのように液滴が操作されたかに関わらず、シルク溶液と接触しているピラーの上面は常にシルクでコーティングされた。さらに、シルクタンパク質が、全ての疎水性表面、すなわち下部液体:突出要素界面、及び上部液体:空気界面の両方でシルクへと自己集合する点において、シルクの形成は驚くほど有利である。
【0113】
好ましい実施形態では、方法ステップa)の堆積が、表面の平面と交差する方向に沿った表面に向かう液滴の運動によって達成される。好ましくは、方法ステップa)の堆積は、表面の平面に対する液滴の本質的に垂直な運動によって達成される。
【0114】
一つの好ましい実施形態では、方法ステップb)の形状形成は、表面の平面と交差する方向に沿った表面から離れる液滴の運動によって、表面から堆積した液滴を除去することを含む。好ましくは、堆積した液滴は、表面の平面に対する液滴の本質的に垂直な運動によって表面から除去される。液滴は、堆積ステップa)が完了した後、30~240秒以内、例えば約60秒以内に除去されることが好ましい。
【0115】
特定の実施形態では、方法ステップb)の形成は、その除去前に表面上の堆積した液滴の横方向の移動を含まない。これは、任意の表面の突出要素上に局在した表面コーティングの製造を可能にする。
【0116】
図2は、タッチ・アンド・リリースを用いて生成された局在Z-シルクコーティングの特性評価を示す。
図2aは、Z-シルク被覆マイクロピラー(micropillar)アレイの蛍光顕微鏡画像を示す(d=15μm;i=15μm)。
図2b)は、異なったピラー直径及び間隙を有する表面について被覆されたピラーの量に対して生成されたシルクワイヤの量を示し、ここで、ゼロワイヤは典型的には、アレイコーティングの用途に望ましいであろう。ワイヤの無い均一な局在表面コーティングは、広いピラー間隙(i≧15μm)及び小さい直径(d≦10μm)を有する表面上にタッチ・アンド・リリース法を用いて形成された(
図2b)。シルク溶液が表面から垂直に除去された際に、微小液滴はピラーの頂部に残され、これは蒸発し、シルクコーティングをもたらした。したがって、シルクタンパク質は、全ての疎水性表面、すなわち液体:ピラー界面及び液体:空気界面の両方でシルクへと自己集合する。
【0117】
コーティングの安定性を研究するために、幅d=15μm及びi=20μmを有する表面をシルクでコーティングし、IgG-Alexa Fluor 488で染色し、次いで1、2、8、24又は48時間、水に浸した。次に、試料をIgG-Alexa Fluor 488で再染色した。浸水前後の両方で画像を取得した。最大8時間水に浸した場合に、シルクコーティングはピラーに付着したままであった。表面がインキュベートされた水は、ガラススライド上で乾燥され、乾燥した溶液の蛍光画像は、コーティングがミニシート(mini-sheets)の形状で溶液中に解放されたことを明らかにした。24時間後、コーティングの大部分は水中にミニシートの形態で解放された。
【0118】
図2c)は、
図2a)の平均蛍光強度を示す。
図2d)は、9%の標準偏差で正規ガウシアンフィット(normal Gaussian fit)を用いた
図2a)における各ピラーの平均強度のヒストグラムを示す。ワイヤ又はシートの無いシルクコートされたピラーアレイは、比較的均一なコーティングを特徴とした(
図2c~2d)。同じ形状を有するピラーアレイ上で処理された試料を比較すると、アレイ間の平均蛍光強度分布は、2.5%の平均標準偏差(最小0.3%;最大5.7%)を有する。アレイ内のピラー間の平均蛍光強度分布は、6.6%の平均標準偏差(最小2.1%;最大16.1%)を有する。本発明者らは典型的には、コーティングされたアレイにわたるわずかな強度勾配を観察し(
図2c)、これは、液滴の不均一な除去に起因するシルク溶液とピラーとの間の接触時間の違いによって引き起こされる可能性がある。個々のピラー上の蛍光強度分布は、9.8%の平均標準偏差(最小5.0%;最大20.3%)を有した。
図2e)は、1つのピラーの蛍光強度の表面プロファイルを示す。本発明者らは典型的には、中心と比較してピラーの縁でより高い強度を観察し(
図2e)、これは、コーヒーリング効果(coffee ring effect)に帰する可能性がある。ピラー表面のSEM及びAFM画像は、表面粗さを明らかにしていない。ピラーのオーバーハング形状は、ピラー上面に電気的に(galvanically)接触することを防ぎ、これはコーティングの帯電のためにSEM画像撮影の倍率を制限する。AFM画像の詳細の欠如は、コーティングの柔らかさによって引き起こされ得る。コーティングが解放され、真空下で乾燥された後に、それらは収縮した不均一な表面を現す。しかしながら、この形状は、必ずしもピラー又は他の突出要素に接着した際のコーティングの代表ではない。
【0119】
一実施形態では、方法ステップb)の形成は、その除去前に表面上の堆積した液滴を横方向に移動させること、を含む。液滴移動速度(秒)は、0.1~10mm s-1、例えば約5mm s-1の範囲内であることが好ましい。これは、伸長形状、例えばナノワイヤの製造を可能にする。
【0120】
図3は、10mm s
-1の液滴速度でピラー直径d=15μm及び間隙i=10μmを有するアレイ上の側方液滴移動を用いるZ-シルクナノワイヤ形成の結果を示す。
図3a~cは、側方液滴移動を用いて生成したZ-シルクナノワイヤの画像を示す:3a)ナノワイヤ形成後の上面蛍光画像;3b)3a)の拡大図;3c)ピラー、しわのあるシートの形状のそのコーティング、及びその間のナノワイヤのSEM画像。
【0121】
ワイヤの直径を、3つの異なる表面形状:(d、i)=(15μm、5μm)、(20μm、5μm)及び(20μm、10μm)、並びに液滴速度、s、0.1~10mm s
-1について研究した。さらに
図3において、3d)0.1mm s
-1;3e)10mm s
-1の速度での側方液滴移動について被覆ピラーの量に関連して生成したワイヤの平均量;3f)d=15μm及びi=5μmを有する表面について0.1~10mm s
-1の速度について;3g)(d、i、s)=(15μm、5μm、1mm s
-1)、すなわち最も低い相対ワイヤ直径変動をもたらすパラメータについての正規ガウシアンフィットを用いた平均ワイヤ直径のヒストグラム、並びに3h)(d、i、s)=(15μm、5μm、5mm s
-1)、すなわち最大ワイヤの収率をもたらすパラメータ。測定された最大平均ワイヤ直径は、(d、i、s)=(15μm、5μm、0.1mm s
-1)について372.5±85nmであり、最小は(d、i、s)=(20μm、5μm、0.1mm s
-1)について168.9±36nmであった。ワイヤ直径は、異なる液滴速度によって大きく変化しなかった。形状(d、i)=(15μm、5μm)及び(20μm、10μm)についても、ワイヤ直径に有意差は見られなかった。しかしながら、最大のd:i比である形状(d、i)=(20μm、5μm)について生成したワイヤ直径は、他の2つの形状についてのものよりも有意に小さかった。各試料に対するワイヤ直径の絶対変動は、36~88nmで変動し、この変動と表面形状パラメータd及びi、又は液滴速度sとの間に相関関係は見られなかった。直径の変動は液滴経路全体に均一に分布し、ワイヤの方向性は速度に依存しないことがわかった。このデータは、同じ方向のワイヤの生成における高い再現性を示している。
【0122】
超疎水性表面上でのスパイダーシルクナノワイヤの形成は、単一の液体、気体、及び固相間の界面の表面エネルギー最小化によってのみ制御されるわけではない。スパイダーシルクワイヤ形成は、驚くべきことに、液体:気体及び液体:固体界面における自己集合した第二固相、シルクの表面エネルギーによってさらに制御される。ワイヤ形成は、ピラー間での局所的なベールのようなものの形成とともに後退液滴界面で始まり、そのベールのワイヤ形状への収縮に続くことが観察された。本発明者らは、これら構造の形成が、その間に薄い液体層を有するベールの上面及び下面における自己集合しているが、まだ固化していないシルク層で始まると仮定する。液体は、環境への蒸発によって及び/又はベールから移動する液滴への対流輸送によって、このベールから除去される。このプロセス中に、ピラーの上部にあるベールの部分がシートへと収縮し、ピラー間の吊り下げられた部分がさらに収縮してワイヤを形成する。ピラー上で収縮したシートは、ピラーの中央に別個の暗い縦縞として蛍光画像に表示されており(
図3b)、そのしわはSEM画像で明らかに観察することができる(
図3c)。得られた平均ピラー間の蛍光強度標準偏差12.5%(最小3.8%;最大28.4%)は、ワイヤが形成されなかった表面のほぼ2倍であり、ピラーコーティング形成の違いを確認する。ワイヤとピラーコーティング強度との間には弱い相関関係が見られた。
【0123】
ここでは被覆ピラーの量を超えるワイヤの量の比として定義されるワイヤの収率は、3つのパラメータに依存することが見出された(
図3d~f参照):(1)ピラー間隙の減少はより多くのワイヤを生成し;(2)ピラー直径の増大はより多くのワイヤを生成し;そして(3)s=5mm s
-1の液滴移動速度は、より高速及び低速の液滴速度よりも一貫してより多くのワイヤを生成した。シルクの自己集合は、液体:空気界面で低流速条件下で優先的に発生することが予想され、ここでは、蒸発による水分の除去がシルクタンパク質濃度を局所的に増加させる。低流速は、低い液滴速度について予測され、これは、10mm s
-1と比較した0.1mm s
-1の液滴速度でd=5μmについての増大したワイヤ形成を説明するであろう。超疎水性表面上の見かけの壁面滑りは、ピラー間隙の減少とピラー直径の増大によって減少し、下部の液体:空気界面で低流速をもたらす。実際に、より多くのワイヤが、全ての流動条件下でそのような形状に形成する。ベールは液滴よりも小さな直径を有し、したがって速い液滴速度が、液滴における流動抵抗と比較してベールにおける比較的高い流動抵抗をもたらす、すなわちベール内の液体は、液滴に「従うことができない(cannot follow)」。蒸発による水の除去は、そのような条件下では対流を超えて増加することになり、これは0.1mm s
-1と比較して10mm s
-1の液滴速度について大きなピラー直径を有する表面上のワイヤ形成の増大を説明するであろう。ワイヤの収率に対する速度の影響は、(d、i)=(15μm、5μm)についてさらに研究され、最大収率は5mm s
-1の速度で観察された。このことを、同じ表面だが1mm s
-1の速度について最小であった直径における変動と比較すると、収率と均一性との間にはトレードオフがあるようである。
【0124】
ワイヤは、48時間水に浸漬された後に表面上に残ることが見出された。しかしながら、試料を10分間超音波処理することによって、基板からワイヤを解放することが可能であった。ワイヤはまた、コンタクトプリンティングによって超疎水性基板から平坦な化学量論外のチオール-エンポリマー(OSTE)表面に正常に転写された。
【0125】
好ましい実施形態では、ステップb)の形成が、表面上で堆積した液滴を蒸発させること、を含む。これは、ステップb)の形成が、表面上にそのインタクトな状態で堆積した液滴を蒸発させることを含むことを意味する。これはシート構造の製造を可能にする。
【0126】
図4は、ドロップ・キャスティングシルクシート形成プロトコルの結果を示す。
図4a)は、非機能化シルクシートの写真である(NH
4HCO
3緩衝液、周囲条件)。解放後のFN
cc-シルクシートの
図4b)上面及び
図4c)底面のSEM画像(NaHCO
3緩衝液、周囲条件)が示されている。
図4d)は、下層及び上層並びに内部構造を示す破壊された非機能化シルクシートのSEM側面図である(NH
4HCO
3緩衝液、周囲条件)。
図4e)は、下層及び上層並びに内部構造を示す非機能化シルクシートのSEM上面図である(NH
4HCO
3緩衝液、湿潤条件)。
【0127】
不溶性シルクシートは、穏やかな条件下でドロップ・キャスティング及び蒸発を用いて生成した(
図4a)。以前の報告とは対照的に、シートを水に不溶にするために過酷な後処理は必要とされなかった。本発明者らはこれを我々の表面の増大した疎水性によるものとみなし、これはランダム/らせんからベータシート形成へのシルクタンパク質の遷移を支持し、したがってシートをより安定にする。これはSEM画像によって支持されており、斯かるSEM画像は、1つはシートの上部、もう1つは下部にあるシルクの2つの層からなり、その間にシルクタンパク質の凝集体を有するシートを示している(
図4d~e)。シートの内部構造は、共焦点顕微鏡を用いて観察することもできる。上層及び下層は、疎水性空気及びピラー表面でのシルクの自己集合中に形成される。その間の無秩序なシルク構造は、タンパク質の自然な凝集から生じ、斯かる凝集は蒸発中にシルクシート間に閉じ込められる。SEM画像から、シートの表面プロファイルは、上部及び下部シルク層の間の凝集シルク構造から生成されたかのように見える(
図3e)。これはさらに、共焦点顕微鏡を用いて観察され、ここでは、数マイクロメートルを超える変化は観察できない。
【0128】
このタイプのシート形成は、いくつかの明確な違いはあるものの、試行された全ての表面、緩衝液、濃度、及びシルクのタイプの組み合わせで起こった。高シルクタンパク質濃度の溶液から生成されたシートは、低濃度のシルクタンパク質から作製されたシートよりも透明度が低い(すなわちシートを通して下部基板を見ることができない)。これはシートがより厚く、かつ上部及び下部シルク層の間に高密度のシルク凝集体を含むためである。0.3mg ml-1のスピドロイン濃度を用いて構造化基板上に生成されたシートは、約1μmの厚さを有したが、3mg ml-1のスピドロイン濃度を用いて生成したシートは、約10μmの厚さを有した。高湿度条件下でのシート生成は、低湿度で生成したシートと比較して、わずかに大きな平均シートサイズ、及び増大したシートサイズ変動をもたらした。構造化表面上で生成されたシートは、非構造化表面上のシートよりも小さく、これは濡れ性の低下から予測することができる。
【0129】
炭酸緩衝液(NH4HCO3又はNaHCO3)中の3mg mL-1のシルク溶液を用いて構造化表面上で生成したシートは、典型的には、乾燥後に表面から手動で取り除くことができた。他の全ての溶液は、乾燥形式で表面に張り付けられたシートを生成した。平坦な表面上で生成した際には張り付くが、構造化表面では張り付かないシートをもたらす緩衝液について、本発明者らは、これは構造化表面での表面相互作用の減少が原因であると仮定する。Tris緩衝液を使用した際のシートの接着性の増加は、乾燥時に塩結晶の形成に起因する可能性があり、これはシルクと表面との間の相互作用を増大する。後者の観察は、揮発性炭酸塩ベースの緩衝液が使用された先の研究によって支持されている。乾燥後に張り付いたシートは、平坦な表面上にキャストされたNH4HCO3緩衝液からの非機能化シルクシート(48時間後に張り付いたままであった)を除き、典型的には2時間水に浸漬した後に湿潤形式で解放することができた。注目すべきは、構造化表面及び平坦な表面上にTris緩衝液を用いて生成したシートは、浸漬時に2つの層に分かれる傾向があることであり、ここで、下層は表面に付着したままであり、そして上層は浮き上がる。シートの安定性は、シートを48時間水に、又は7日間を超えて細胞培養培地に浸漬することによって試験された。溶解の視覚的兆候はなくシートはインタクトなままであり、タンパク質が安定なシルク形態に変化したことが確認された。
【0130】
要約すると、本発明者らは、超疎水性表面上でのシルクコーティング、ナノワイヤ、及びシートの形成に関する特定のパラメータを同定した:
i)小さな直径及び広い間隙を有する突出要素のアレイ上にシルク溶液の液滴を接触させ、そして即時垂直除去することにより、ワイヤの無いコーティングをもたらす;
ii)大きな直径及び狭い間隙を有する突出要素のアレイに沿って適切な速度でシルク溶液の液滴を横方向に移動させることにより、大量の整列したワイヤを生成する;並びに
iii)突出要素のアレイの頂部に高濃度のシルクタンパク質の液滴を蒸発させることにより、表面から解放することができるシルクシートを生成する。
【0131】
実験セクション
表面の製造:
5、10、15、及び20μmの頂部直径d、及び間隙i、並びにパターン化されていない表面を有するリエントラントシリコンマイクロピラーのアレイを有するチップを、標準的なマイクロ加工技術を用いて作製した。二酸化シリコン(SiO2)の1μm層を、4インチのシリコン(Si)ウェハの表面上に熱成長させた。HDMSレジストSPR 700-1.2(Microfabrication Materials Technologies、USA)を4000RPMで回転させ、次いでウェハを、100℃で1分間、ホットプレート(Maximus 804、SSE、ドイツ)上でベーク(baked)した。真空接触、140mJ cm-2(Karl Suss mask aligner、Karl Suss、ドイツ)を用いてウェハを露光した。現像をCD46で40秒間行い、110℃で1分間のハードベーク(hard-bake)に続く(Maximus)。酸化物をRIE(Applied Materials Precision 5000 mark II、Applied Materials、USA)を用いてエッチングし、10秒間の等方性Siエッチング及び20サイクルの異方性Siエッチングに続く(Centura II(DPS & MxP)Applied Materials、USA)。ウェハは不動態化され、誘導結合プラズマ装置ICP(ICP、STS、UK)で30秒間C4F8からのプラズマ蒸着によって、疎水性コーティングを生成した。ウェハを、ダイシング前にダイシングテープ(SPS、ドイツ)で覆った。チップはテープからはがされ、使用時まで保存され、使用時にアセトン、イソプロパノール、水、及びエタノールを順次使用して洗浄された。全ての化学薬品はSigma-Aldrich、スウェーデンから購入した。
【0132】
スパイダーシルクタンパク質の調製:
20mMのTris(pH8)中の3mg mL-1の最終濃度で大腸菌(Escherichia coli)での組換え発現から精製した、可溶性シルクタンパク質、非機能化スパイダーシルク(「4RepCT」;配列番号1)、Z-機能化スパイダーシルク(配列番号2)及びFNcc-機能化スパイダーシルク(配列番号3)は、Spider Technologies ABによって提供され、-20℃でさらなる使用まで保存した。20mMのNH4HCO3(pH8)及び20mMのNaHCO3(pH8)中のシルクタンパク質での実験のために、シルクタンパク質緩衝液を透析によってTrisから交換した。
【0133】
コーティング及びワイヤの調製:
0.4mmの注射針から20mMのTris緩衝液中の0.1mg mL
-1のZ-シルクの5~10μLの懸垂液滴を放出し、次いでピラーアレイ表面に対して液滴を移動させることによって、コーティング及びワイヤを生成した。2つの液滴移動を
図1に示すように調査した:ピラーの頂部にのみシルクコーティングを形成することを目的としたタッチ・アンド・リリース、ここでは、液滴は、表面と接触して垂直に移動し、すぐに除去された;並びに、ナノワイヤを形成することを目的とした側方液滴移動、ここでは、液滴はピラーアレイ上を水平に回転した。横方向の液滴移動(
図1b)は、電動リニアステージ(NEMA 17 Stepper Motor MOX-02-30、Manufacturer、中国)上に水平に表面を配置し;表面の上に注射器を配置し;注射針から液滴を放出し;並びに0.1、0.5、1、5又は10mm s
-1の速度でステージを移動させることによって行われた。垂直タッチ・アンド・リリース液滴移動(
図1a)は手動で行った。
【0134】
液滴が表面から除去されたら、続いて20mMのTrisで2回、及びMilliQ水で1回洗浄し;0.05%のTween 20で補充されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した0.005mg mL-1のIgG-Alexa Fluor 488コンジュゲート(ウサギ由来、Thermo Fisher Scientific)中で30分間インキュベートし;そして、0.05%のTween 20を含むPBSで2回、並びにPBS及びMilliQ水で1回洗浄し、その後エアガンでブロー乾燥した。全ての実験は三連で行った。
【0135】
1、2、8、24、及び48時間水に浸漬する前後に蛍光画像を取得することによって、超疎水性基板へのコーティングの付着を調査した。試料を浸漬後にIgG-Alexa Fluor 488コンジュゲート中で再インキュベートし、上述したように洗浄した。被覆基板がインキュベートされた水を、顕微鏡のガラススライド上で蒸発した。48時間の水への浸漬、並びに10分間の超音波処理(EMAG Emmi-12 HC、EMAG、ドイツ)の前後に蛍光画像を取得することによって、超疎水性基板へのワイヤの付着を調査した。ワイヤを有する基板が超音波処理された水を、顕微鏡のガラススライド上で蒸発した。シルク液滴の横方向の移動の直後に、20mMのTris中で1回、超疎水性基板を洗浄し、次いで表面を一緒に圧縮することによって、ワイヤを超疎水性基板からフラットなOSTE220(Mercene Labs、スウェーデン)基板へと移した。次に、表面をIgG-Alexa Fluor 488コンジュゲート中でインキュベートし、上述したように洗浄した。
【0136】
シートの調製:
20mMのTris、NH4HCO3又はNaHCO3緩衝液のいずれか中の0.3mg mL-1及び3.0mg mL-1のFNcc-シルク又は非機能化シルクの溶液のドロップ・キャスティングを用いて、シルクのシートを生成した。周囲条件(22℃で35%の相対湿度)又は高湿度条件(22℃で90%の相対湿度)のいずれかの下で24時間、フラットな又は超疎水性の表面上で、20μLの液滴を蒸発させた。その後、表面を水で洗浄した。シートを、PBSで3回洗浄する前に30分間、水で希釈した0.1%のRhodamine B中でインキュベートした。
【0137】
乾燥条件でシートを除去する最初の試み、次いで1、2、8、24、及び48時間水に浸漬した後に、表面へのシートの付着を調査した。24時間水にシートを浸漬し、浸漬前後のシートの蛍光画像を取得することによって;並びに、7時間を超えて完全内皮細胞培地(PromoCell GmbH、ドイツ)に浸漬することによって、シートの水不溶性を調査した。
【0138】
特性評価:
表面の接触角及びロールオフ角(roll-off angle)を、ゴニオメーター(ThetaLite、Biolin Scientific、スウェーデン)を用いて測定した。コーティング及びワイヤを、蛍光顕微鏡(Nikon Microphot-FXA、Nikon、USA)を用いて評価した。横方向の移動実験では、画像は経路の中央で撮影された。ドロップ・アンド・リムーブ(drop-and-remove)実験では、画像は液滴アレイの接触領域を中心とした。異なる倍率が異なるピラーサイズについて使用された:ピラー直径d=15及び20μmについては10X;d=10μmについては20X;及びd=5μmについては40X。全ての画像をMATLAB(R2016a)で分析した。ワイヤが存在しない画像については、ピラーの間及びピラーを横切る強度分布を測定し比較した。ワイヤが存在する画像については、ワイヤは画像処理アルゴリズムを用いてカウントされた。
【0139】
さらに、走査電子顕微鏡(SEM)(Gemini Ultra 55、Zeiss、ドイツ)を用いてナノワイヤ構造を評価し、ここでは、頂部画像がワイヤの直径を測定するために液滴経路に沿って取得され、頂部コーティングに関する情報を明らかにするために傾斜画像が取得された。コーティングのSEM画像及びAFM(Dimension Icon、Bruker、USA)画像も取得された。コーティング及びシートがインキュベートされた水を、蛍光顕微鏡及びSEMを用いて、ガラススライド上で蒸発させた後に研究した。
【0140】
シートを、その外観、平均サイズ(最大横方向距離と最小横方向距離との平均として定義される)、及び水に浸漬した前又は後のいずれかに表面から除去される能力によって特徴づけた。表面粗さ、内部構造、及び厚さを、SEM及び共焦点顕微鏡(Olympus FV1000、Olympus、日本)を用いて研究した。
【0141】
ワイヤ生成プロセスをさらに研究するために、20mMのTris緩衝液(約2μL)中の0.1mg mL-1のZ-シルクの小さな液滴を表面上に配置し、蒸発プロセスを、カメラ(MU503-CK、AmScope、USA)を備えた光学顕微鏡(Nikon Optiphot、Nikon、USA)を用いて記録した。
【配列表】