IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソマール株式会社の特許一覧

特許7240436磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物
<>
  • 特許-磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物 図1
  • 特許-磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物 図2
  • 特許-磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物 図3
  • 特許-磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/44 20060101AFI20230308BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230308BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230308BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230308BHJP
   C10M 171/00 20060101ALI20230308BHJP
   C10M 129/26 20060101ALI20230308BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230308BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
H01F1/44 170
C08L101/00
C08K3/01
C08K9/04
C10M171/00
C10M129/26
C10N30:00 Z
C10N40:08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021065059
(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公開番号】P2021170636
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020072663
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕久
(72)【発明者】
【氏名】落合 明
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-091907(JP,A)
【文献】特開2016-149465(JP,A)
【文献】特開2012-094677(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/015982(JP,A1)
【文献】特開平04-198297(JP,A)
【文献】特開昭63-064308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/44
C08L 101/00
C08K 3/01
C08K 9/04
C10M 171/00
C10M 129/26
C10N 30/00
C10N 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水酸基が露出している非磁性無機材料で構成される核粒子としての第1粒子と、
該第1粒子表面の少なくとも一部に付着した、表面に水酸基が露出している磁性材料で構成される第2粒子と、を有し、
第1粒子の平均粒子径をD1、第2粒子の平均粒子径をD2としたとき、D1>D2の関係を満足し、
前記第2粒子の表面の少なくとも一部に親油化処理剤が付着していることを特徴とする磁気応答性複合材料。
【請求項2】
前記親油化処理剤が、カップリング剤及び界面活性剤から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の磁気応答性複合材料。
【請求項3】
前記界面活性剤が、飽和脂肪酸もしくはその塩または不飽和脂肪酸もしくはその塩である請求項2に記載の磁気応答性複合材料。
【請求項4】
D1は、D2の10倍以上1000倍以下である請求項1~3の何れか1項に記載の磁気応答性複合材料。
【請求項5】
第2粒子の、第1粒子と第2粒子の和に占める割合は、5質量%以上50質量%以下である請求項1~4の何れか1項に記載の磁気応答性複合材料。
【請求項6】
第2粒子の磁気応答性複合材料中における含有量が、磁気応答性複合材料の全質量に対して5~50質量%である場合に、組成物中に配合した状態で、下記(1)の特性を発現させる請求項1~5の何れか1項に記載の磁気応答性複合材料。
(1)組成物に、25℃の雰囲気下で、直流0.8Tの磁場を付与したときの励磁時粘度が、磁場付与前の未励磁粘度の2.5倍以上。
【請求項7】
第1粒子と、第2粒子とのドライブレンド物である請求項1~6の何れか1項に記載の磁気応答性複合材料。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の磁気応答性複合材料を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気応答性複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場に反応する磁気機能性流体として、磁性流体や磁気粘性流体が知られている。磁性流体は、液体(溶媒)中にナノ(nm)サイズの極めて小さな粒子径を持つ磁性粒子を界面活性剤などで極めて安定に分散させたコロイド溶液であって、通常の遠心力や磁界によっては磁性粒子の凝集や沈降が起こらず、見かけ上、液体自身が強い磁性を持つ流体である。磁気粘性流体は、ミクロン(μm)サイズの比較的大きな粒子径を持つ磁性粒子を液体(溶媒)中に懸濁させ、磁界強度に応じて流動性の高い状態から大きな降伏応力を有するゲル状態まで可逆的に変化する流体である。
【0003】
磁性流体と磁気粘性流体はともに、磁場の作用がないとき(無磁場)には液体(溶媒)中に磁性粒子がランダムに浮遊し流体として機能する。一方、磁場を付与すると(励磁時)、磁界の方向に沿って磁性粒子がクラスター(鎖状凝集物)を形成する。磁気機能性流体のこのような特性を利用し、ダンパー、ブレーキ、クラッチなどに対して近年、幾つかの検討がなされている。その一つとして、ミクロンサイズの非磁性粒子(ポリスチレン粒子)を液体(磁性流体)中に分散させた、磁性粒子を含む磁性流体と非磁性粒子との混合系である流体系組成物が提案された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-198297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の組成物によると、一様磁場下で非磁性粒子同士が反発するため、組成物中の抵抗が大きくなる。これによって、特許文献1の技術でも組成物の粘度の向上は見られる。
しかしながら、非磁性粒子自体は磁場の作用を直接受けることはないため、組成物の粘度を向上させる効果としては限定的でありいまだ不十分であった。
【0006】
本発明は、液体とともに組成物中に配合した際に、磁場を印加することで粘度を向上させることができる磁気応答性複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、無磁場時には液体中をランダムに浮遊するが、励磁時には磁界の方向に沿ってクラスターを形成する磁性粒子を、従前の非磁性粒子表面に付着させ、磁場を作用させた際に非磁性粒子同士が磁性粒子を介して結合しうる複合構造とすることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す構成の磁気応答性複合材料及びこれを含む組成物が提供される。
本発明に係る磁気応答性複合材料は、
表面に水酸基が露出している非磁性無機材料で構成される核粒子としての第1粒子と、
該第1粒子表面の少なくとも一部に付着した、表面に水酸基が露出している磁性材料で構成される第2粒子と、を有し、
第1粒子の平均粒子径をD1、第2粒子の平均粒子径をD2としたとき、D1>D2の
関係、すなわち第2粒子は第1粒子よりも平均粒子径が小さい関係を満足し、
前記第2粒子の表面の少なくとも一部に親油化処理剤が付着していることを特徴とする
【0009】
第2粒子に付着する親油化処理剤は、カップリング剤及び界面活性剤から選択される少なくとも1種であるとよい。親油化処理剤の一例としての界面活性剤は、炭素数6~22の、飽和脂肪酸もしくはその塩または不飽和脂肪酸もしくはその塩であるとよい。
【0010】
D1は、D2の10倍以上1000倍以下であるとよい。
第2粒子の、第1粒子と第2粒子の和に占める割合は、5質量%以上50質量%以下であるとよい。
【0011】
本発明の磁気応答性複合材料は、第2粒子の磁気応答性複合材料中における含有量が、磁気応答性複合材料の全質量に対して5~50質量%である場合に、組成物中に配合した状態で、(1)の特性を発現させることができる。
(1)組成物に、25℃の雰囲気下で、直流0.8Tの磁場を付与したときの励磁時粘度が、磁場付与前の未励磁粘度の2.5倍以上。
【0012】
上記組成物は、本発明の磁気応答性複合材料とともに、液状樹脂材料または磁気機能性流体を含むことができる。前者の場合、上記組成物は、樹脂系組成物となり、後者の場合、上記組成物は、流体系組成物となる。
【0013】
本発明の磁気応答性複合材料は、第1粒子と、第2粒子とのドライブレンド物であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気応答性複合材料は、表面に水酸基が露出している非磁性無機材料で構成される核粒子としての第1粒子表面の少なくとも一部に、親油化処理剤が付着し、表面に水酸基が露出している磁性材料で構成される第2粒子を付着させた複合構造を備える。このため、これを液体とともに組成物中に配合した場合、磁場下において、複数存在する磁気応答性複合材料同士がそれぞれの第2粒子を介して結合し、密に存在することとなる(図1参照)。存在状態が密となれば、組成物の粘度向上が期待できる。その結果、本発明の磁気応答性複合材料は、これまで以上に、組成物に粘度を発現させることが可能となる。
【0015】
これに対し、特許文献1の技術では、組成物中に、球状のポリスチレン粒子とともに磁性粒子が存在する。このため、組成物へ磁場を作用させた際に、ナノサイズの磁性粒子が複数集まり、それらが結合して磁性粒子のクラスターを形成する。ついで、磁気体積効果の作用により球状のポリスチレン粒子が押し出される。その結果、球状のポリスチレン粒子は、磁性粒子との関係において、あたかも反磁性のように振舞いながら組成物中を浮遊し、未励磁時はもとより励磁時にすら、球状のポリスチレン粒子が磁性粒子を介して結合することはない。励磁・未励磁を問わず、球状のポリスチレン粒子は他の球状のポリスチレン粒子とは鎖状に結合することはなく、単に整列した状態で存在しているものと推定する。(図2参照)。すなわち、特許文献1の技術では、ポリスチレン粒子を組成物中で密に存在させることはできず、粘度の向上効果としては十分ではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】流体系組成物の一例として磁性流体を挙げ、この磁性流体中に本発明の磁気応答性複合材料を分散させたものに対する磁場の作用前及び作用時の各状態を説明する模式図である。
図2】特許文献1の流体(ポリスチレン粒子含有磁性流体)に対する磁場の作用前及び作用時の各状態を説明する模式図である。
図3】実験例7で得られた樹脂系組成物を走査透過型電子顕微鏡(STEM)にて観察した明視野(BF)像(倍率100,000倍)である。
図4】実験例7で得られた樹脂系組成物をSTEMにて観察したBF像(倍率1,000,000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、以下において、磁気応答性複合材料、その製造方法、組成物、及び磁気特性について順に説明する。
【0018】
<1.磁気応答性複合材料>
本発明の磁気応答性複合材料は、核粒子としての第1粒子と、該第1粒子表面の少なくとも一部に付着した第2粒子と、を有する。
【0019】
(1-1)第1粒子
核粒子としての第1粒子は、非磁性無機材料(比透磁率が例えば1.5未満のもの)で構成される。非磁性無機材料として、金属(例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト)、セラミックス(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物、金属リン酸塩、金属硫酸化物)、金属被覆樹脂フィラー、カーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化スズ、二酸化ケイ素、非磁性の酸化クロム、酸化セリウム、非磁性の酸化鉄などが挙げられる。金属炭化物としては、炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタンなどが挙げられる。金属炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素などが挙げられる。金属ハロゲン化物としては、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウムなどが挙げられる。金属硫酸化物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。金属被覆樹脂フィラーは、樹脂(ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など)、ABS樹脂、AS樹脂などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を含む)の粒子の表面に金属(金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、コバルトなど)の層を被覆したものが挙げられる。
【0020】
一形態において、第1粒子は、大気中の酸素や水分と反応し、その結果、表面に水酸基を有しているものが好ましい。この観点から、第1粒子を構成する非磁性無機材料として、上記の中でも、特定の金属(すなわち銅、ニッケル、パラジウム、白金、及びコバルトから選択される1種類以上);金属酸化物(例えばアルミナ);特定の金属(前出)の層を樹脂(前出)の粒子の表面に被覆した、特定の金属被覆樹脂フィラー;を用いることが好ましい。上記特定の金属は、大気中の酸素と反応し、表面に酸化被膜が形成され、その後、その酸化被膜が大気中の水分と反応し、水酸基を形成しやすい。金属酸化物についても同様である。
これらの非磁性無機材料は、1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。第1粒子は、凝集体であってもよい。
【0021】
第1粒子の形状は、特に限定されず、鱗片状、球形状、異形状、その他であってもよい。第2粒子(後記)が第1粒子の表面に付着している場合に磁気応答性複合材料がクラスター化しやすい点で、第1粒子は、球形状であることが好ましい。
【0022】
第1粒子の平均粒子径(D1)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であって、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0023】
第1粒子表面への第2粒子の付着量(後記)にもよるが、D1が上記の上限値以下であると、沈降防止のメリットが得やすい。
【0024】
D1は、粒子径の累積分布における累積体積が50%となる粒径(メジアン径)を意味する。具体的には、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec社製、商品名「HELOS&RODOS」)を用いて測定される平均粒子径を指す。
【0025】
(1-2)第2粒子
第1粒子表面に付着する第2粒子は、磁性材料(比透磁率が例えば1.5以上のもの)で構成される。磁性材料としては、例えば、強磁性酸化物;強磁性金属;窒化金属;アモルファス金属などが挙げられる。
強磁性酸化物としては、例えば、マグネタイト、γ酸化鉄、マンガンフェライト、コバルトフェライト、もしくはこれらと亜鉛、ニッケルとの複合フェライトやバリウムフェライトなどが挙げられる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト、希土類などが挙げられる。アモルファス金属としては、例えば、Fe-Si-B系アモルファス金属粉末、Fe-Si-B-Cr系アモルファス金属粉末などが挙げられる。中でも、マグネタイトが量産性の点から好ましい。
【0026】
第2粒子の表面には、親油化処理剤による処理(親油化処理)が施されている。未親油化処理の第2粒子であると、第2粒子が第1粒子表面にしっかりと付着せず、第1粒子表面から遊離してしまうことが懸念される。
【0027】
第2粒子の形状は、特に限定されず、鱗片状、球形状、異形状、その他であってもよい。
【0028】
第2粒子の平均粒子径(D2)は、D1より小さければよい(D1>D2)。更に、使用するD1の粒子径を考慮し適宜選択すればよく、D2はD1の1/10以下とすることが好ましく、より好ましくは1/30以下である。一方、磁気応答性の観点から、好ましくは1/1000倍以上、より好ましくは1/800倍以上である。これらのことを考慮すると、D2の平均粒子径は10nm~5μmの範囲であることが好ましい。超常磁性を必要とする用途の場合において、マグネタイトやγ酸化鉄で第2粒子を形成する場合、D2は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは10nm~40nmである。なお、超常磁性とは、強磁性体の微粒子の集合体でヒステリシスを示さず残留磁化もないものを意味し、常磁性の原子磁気モーメントと比較して100~100,000倍の値を示す。
【0029】
D2は、例えば、ナノ粒子解析装置(Sympatec GmbH社製、Heros Partical Size Analysis windox5)を使用し、動的光散乱法で測定される平均一次粒子径である。
【0030】
本発明において、第2粒子は、第1粒子表面の少なくとも一部に付着していればよい。
第2粒子の、第1粒子と第2粒子の和に占める割合(すなわち第2粒子の付着割合)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0031】
第2粒子の上記割合は、磁気応答性複合材料を試料とした、エネルギー分散型X線分析(EDX)による試料表面の元素分析を行うことにより算出することができる。
【0032】
(1-3)作用
本発明の磁気応答性複合材料は、非磁性無機材料で構成される核粒子としての第1粒子表面の少なくとも一部に、親油化処理が施された磁性材料で構成される第2粒子が付着した複合構造を備える。これを、例えば、液体(後記)の一例である磁気機能性流体とともに組成物中に配合した状態で磁場を作用させると、組成物中で、磁気機能性流体に含まれる磁性粒子がクラスター(複数の磁性粒子同士が結合した集合体)を形成すると共に、磁気応答性複合材料もクラスター(複数の磁気応答性複合材料同士が第2粒子を介して結合した集合体)を形成する。
すなわち、本発明技術では、第1粒子に第2粒子が付着しているため、磁場下において、複数存在する磁気応答性複合材料同士がそれぞれの第2粒子を介して結合し、密に存在することとなる(図1参照)。存在状態が密となると、組成物の粘度の向上効果がより高まることになる。また、磁場をコントロールすることで、組成物中において、任意にクラスターの長さ、幅をコントロールすることも可能となる。
【0033】
これに対し、特許文献1の技術では、上述したとおり、ポリスチレン粒子を組成物中で密に存在させることはできず(図2参照)、粘度の向上効果としては十分ではない。
【0034】
<2.磁気応答性複合材料の製造方法>
本発明の磁気応答性複合材料は、例えば、ともに粉末状態の、第1粒子及び第2粒子を準備し、これらを所定割合で乾式混合(ドライブレンド)することにより製造することができる。すなわち一形態において、本発明の磁気応答性複合材料は、好ましくは、上記第1粒子と、上記第2粒子とのドライブレンド物である。以下、ドライブレンド法により本発明の磁気応答性複合材料を調製する場合を例示する。
【0035】
(2-1)準備
以下では、第1粒子を構成する非磁性無機材料として、アルミナ(金属酸化物の一例)を用いる場合を例示して説明する。
準備する第1粒子は、製造後の磁気応答性複合材料の利便性(例えば分散性など)を考慮し、カップリング剤(シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)で表面の少なくとも一部を被覆することができる。
第1粒子として、表面の少なくとも一部をカップリング剤で被覆したものを用いる場合、カップリング剤は、自身の親水基が第1粒子表面に存在する水酸基(-OH)の一部との間で反応し、化学結合を形成することで、第1粒子表面の少なくとも一部に自身の親油基(疎水基)を外側に向けた状態で吸着しており(化学吸着)、その一方で、第1粒子表面のカップリング剤が吸着していない部分には、水酸基が露出していると考えられる。
【0036】
本発明では、第2粒子として、表面に親油化処理剤が付着した磁性粒子からなる磁性粉体を用いる。親油化処理剤としては、例えば、カップリング剤(シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、界面活性剤などが挙げられる。親油化処理としては、例えば、(2)第2粒子をカップリング剤または界面活性剤で表面処理する方法、(3)界面活性剤を含む水性媒体中に磁性粒子を分散させて磁性流体とし、磁性粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法、などが挙げられる。
【0037】
シラン系カップリング剤としては、疎水性基、エポキシ基、アミノ基を有するものが挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。疎水性基を有するシラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ)シランなどが挙げられる。エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランなどが挙げられる。アミノ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネートなどが挙げられる。
【0039】
界面活性剤としては、特に制限はなく、公知の界面活性剤を使用することができる。例えば、磁性粒子及び該粒子表面に有する水酸基と結合可能な官能基を有するものが挙げられる。水酸基と結合可能な官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホン酸基などが挙げられる。
カルボキシル基を有するものとして、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、エルカ酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸などの炭素数6~22の、飽和脂肪酸もしくはその塩または不飽和脂肪酸もしくはその塩などが挙げられる。これらの中で、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸などの炭素数12~22の、飽和脂肪酸もしくはその塩または不飽和脂肪酸もしくはその塩などが挙げられる。
【0040】
スルホン酸基を有するものとして、石油スルホン酸、合成スルホン酸、エイコシルナフタレンスルホン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
界面活性剤の磁性流体中における含有量は、固形分換算で、例えば5質量%~25質量%とする。イオン性で言えば、カチオン性またはアニオン性のものが好ましい。これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0041】
親油化処理剤の付着量は、磁性粒子に対して10~40質量%が好ましい。10質量%未満の場合は、後述のドライブレンド後においても第2粒子が第1粒子表面にしっかりと付着しないことがある。一方、40質量%を超える場合は、生成した磁気応答性複合材料同士の凝集が生じ、磁気応答性複合材料の粒子サイズの制御が困難になる。
【0042】
親油化処理剤は、自身の親水基が磁性粒子表面に存在する水酸基の一部との間で反応し、化学結合を形成することで、磁性粒子表面の少なくとも一部に自身の親油基(疎水基)を外側に向けた状態で結合しており(化学吸着)、その一方で、磁性粒子表面の親油化処理剤が吸着していない部分には、水酸基が露出していると考えられる。
【0043】
第2粒子として用いる磁性粉体は、上記(2)の方法により直接得ることができる。また、上記(3)の場合において、水性媒体を除去することにより得ることもできる。
【0044】
上記(3)の場合における水性媒体を除去する方法には特に制限はない。例えば、(4)磁性流体に凝集成分を添加することで、磁性流体に含まれる磁性粒子を凝集沈降させ、上澄みである分散媒を除去する方法;(5)固体成分を適切な開口部を有するフィルターや濾紙を用いて濾別する方法;(6)分散媒の沸点以上の温度で加熱して分散媒を蒸発除去する方法;(7)磁性流体に対して遠心力をかけることにより、磁性流体に含まれる界面活性剤が被覆された磁性粒子を分離する遠心分離による方法;(8)マグネットにより分離する方法;などが挙げられる。
分離効率や安全性の観点から、(4)の方法が好ましい。(4)の方法としては、例えば、磁性流体の分散媒である有機溶剤としてイソパラフィンを用いた場合、凝集成分としては、アルコール(なかでも、エタノール)を含有する溶剤を用いることが好ましい。凝集成分を添加して撹拌することで、均一分散していた磁性粒子が互いに凝集して沈降する。エタノールは、原液でもよいが、濃度が80質量%以上の水溶液であれば使用しうる。
【0045】
上記(3)の場合における磁性流体は、適宜調製してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、EXPシリーズ、Pシリーズ、APGシリーズ、RENシリーズ(以上、商品名:フェローテック社製)などが挙げられる。
【0046】
(2-2)混合
次に、準備した第1粒子と、磁性粉体からなる第2粒子と、を乾式混合する(ドライブレンド)。両粒子の混合比(第1粒子:第2粒子)は、質量換算で、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは80:20~60:40である。
両粒子の混合は、撹拌機、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサーなど様々な混合手段を用いることができる。混合条件は、例えば、温度10~40℃(好ましくは20~30℃)、湿度40~60%RHの環境下とすればよい。
【0047】
第1粒子と第2粒子をドライブレンドすることによって、第1粒子表面の少なくとも一部に第2粒子が付着(被覆)された上記構造の、本発明の磁気応答性複合材料が製造される。
【0048】
ドライブレンドするだけで、上記構造が得られる機構は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、両者をドライブレンドすることで、下記の(a)、(b)、または(a)+(b)の結合を形成しやすく、これによって上記構造が得られるものと考えている。また、第1粒子と混合する第2粒子を得る(つまり磁性粒子の粉末化の)際、固体成分をアルコールで洗浄し、残余の分散剤を除去しておくようにすれば、(a)、(b)、または(a)+(b)の結合生成に有益ではないか、とも考えている。
【0049】
(a)第2粒子表面に露出する水酸基(前出)が、第1粒子表面に露出する水酸基(前出)と反応し、M-O-N(M:第2粒子、N:第1粒子)の結合(化学結合)が形成される
(M-OH + N-OH ⇒ M-O-N + H2O)。
(b)第2粒子表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤(親油化処理剤)の親油基(前出)が、第1粒子表面の少なくとも一部を被覆するカップリング剤の親油基(前出)と物理的に吸着する。この物理吸着による結合力は、(a)の化学吸着によるそれと比較して、弱いと考えられる。
【0050】
これに対し、特許文献1の技術では、ミクロンサイズの非磁性粒子(ポリスチレン粒子)を磁性流体中に分散させている(磁性粒子を含む磁性流体と非磁性粒子の混合)。
【0051】
特許文献1の、磁性流体と非磁性粒子の混合系における、親水基を有する物質としては、残余の分散剤(磁性粒子表面を被覆せずに系中を浮遊する分散剤。親水基と親油基を持つ)、分散媒(水などの極性溶媒の場合)、磁性粒子表面に露出する水酸基、が考えられる。
一方で、同混合系において、親油基を有する物質は、残余の分散剤(前出)、分散媒(パラフィン系炭化水素油などの無極性溶媒の場合)、磁性粒子表面の少なくとも一部を被覆する分散剤の親油基、が考えられる。
【0052】
このとき、本発明の磁気応答性複合材料の複合構造に相当する、磁性粒子表面に露出する水酸基と非磁性粒子の反応が起こることはない。
すなわち、特許文献1の技術において、表面に磁性粒子を被覆した状態でポリスチレン粒子が、混合系中に存在しうることはない。
【0053】
なお、懸濁液中で、砥粒(核)表面に、未処理表面を持つ磁性金属酸化物(表面未処理の磁性微粒子)を析出させる手法(湿式法)が知られている(特許文献2:特開2005-171214号)。しかしながら、特許文献2の技術を用い、実際に、懸濁液中での製造(第1粒子表面への第2粒子の析出)を試みた場合、上記の(a)及び(b)のいずれの結合も生じず、その結果、第1粒子表面の少なくとも一部に第2粒子が付着(被覆)された上記構造を得ることができなかった。
【0054】
<3.組成物>
本実施形態に係る組成物は、本発明の磁気応答性複合材料、液体を含んで構成される。
組成物に含める液体は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良い。例えば、溶媒(水、その他の無機溶剤、有機溶剤)、液状樹脂材料などが挙げられる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども液体に含まれる。このようなものとして磁気機能性流体が挙げられる。本実施形態の組成物が磁気応答性複合材料とともに液状樹脂材料を含む場合、その樹脂系組成物は、成形体の作製に有用である。液状樹脂材料に代え、磁気機能性流体を含む場合、その流体系組成物はダンパー、ブレーキ、クラッチへの利用に有用である。
【0055】
液状樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から適宜選択される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、使用目的に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いる。
【0056】
樹脂系組成物は、磁気応答性複合材料と、液状樹脂材料とを混合することで得られる。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、樹脂系組成物を得ることができる。
液状樹脂材料と磁気応答性複合材料の混合比率は、特に限定されないが、一般的には、磁気応答性複合材料100質量部に対して、液状樹脂材料を20~300質量部混合することが好ましい。
【0057】
樹脂系組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、磁気応答性複合材料及び液状樹脂材料に加え、目的に応じて種々の成分を併用してもよい。例えば、固形樹脂、架橋剤、硬化促進剤、離型剤などが挙げられる。
固形樹脂材料としては、液状樹脂材料として記載されているものと同種のものを適宜使用することができる。
架橋剤としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂と架橋しうるものであれば適宜使用することができる。例えばイミダゾール系架橋剤、尿素系架橋剤、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。架橋剤を用いる場合の含有量は、液状樹脂材料(固形樹脂材料が添加されている場合には液状樹脂材料と固形樹脂材料の双方)に対して、0.05~1質量%が好ましく、0.2~0.5質量%の範囲がより好ましい。架橋剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
離型剤としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、エステルワックスなどのワックス類などが挙げられる。
また、ワックス類を用いる場合の含有量は、固形分換算で、液状樹脂材料(固形樹脂材料が添加されている場合には液状樹脂材料と固形樹脂材料の双方)に対して0.05~1.0質量%であることが好ましく、0.2~0.5質量%であることがより好ましい。ワックス類は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
流体系組成物に含有される磁気機能性流体としては、磁性流体、磁気粘性流体から適宜選択される。上記のとおり、磁性流体は、液体中にナノ(nm)サイズの極めて小さな粒子径を持つ磁性粒子を界面活性剤などで極めて安定に分散させたコロイド溶液であって、通常の遠心力や磁界によっては磁性粒子の凝集や沈降が起こらず、見かけ上、液体自身が強い磁性を持つ流体である。磁気粘性流体は、ミクロン(μm)サイズの比較的大きな粒子径を持つ磁性粒子を液体中に懸濁させ、磁界強度に応じて流動性の高い状態から大きな降伏応力を有するゲル状態まで可逆的に変化する流体である。
【0060】
磁気応答性複合材料の流体系組成物中における含有量は、第1粒子の有する特性に基づき適宜選択すればよい。
【0061】
<4.磁気特性>
本発明の磁気応答性複合材料は、組成物中に配合した状態で、該組成物に対し、未励磁粘度(以下「初期値」ともいう)に対する励磁時粘度の比(以下「相対比」ともいう)が高いという特性を発現させる。これにより、磁力に応じて粘度を調整することが可能となるというメリットを享受しうる。
【0062】
この相対比は、第2粒子の磁気応答性複合材料中における含有量如何で変動しうるが、その値が、磁気応答性複合材料の全質量に対して、例えば、5~50質量%である場合に、組成物中に配合した状態で、下記(1)の特性を発現させることができる。
(1)本実施形態の組成物に、40℃の雰囲気下で、直流0.8テスラ(T)の磁場を付与したときの励磁時粘度(V0.8(Pa・S))が、磁場付与前の未励磁粘度(V0(Pa・S))の2.5倍以上(すなわち相対比が2.5以上)。
【0063】
本実施形態において、相対比は、より好ましくは3倍以上(つまりV0.8がV0の3倍以上)である。励磁時粘度は、レオメータを用いて後述する条件で測定した値である。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実験例(実施例及び比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の記載において、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0065】
1.粒子試料の作製
第1粒子として、以下のものを準備した。
・アルミナ(球状非磁性無機粒子、平均粒子径D1:3μm)
第2粒子として、以下のものを準備した。
・マグネタイト(球状磁性粒子、平均粒子径D2:25nm)
【0066】
第2粒子は、次の手順で、市販の磁性流体から分散媒を除去して得られた磁性粉体を用いた。
【0067】
(第2粒子の製造)
まず、磁性流体(磁性粒子の含有率60%、分散剤が被覆された磁性粒子(平均一次粒子径:25nm、磁性粒子:マグネタイト)、分散剤:オレイン酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)、分散媒:イソパラフィン)を50ml分取し、これにエタノール(85%水溶液)を50ml添加して、よく攪拌し、磁性粒子を凝集沈降させた。沈降時間は24時間とした。
【0068】
次に、エタノールを濾別し、磁性粒子の凝集沈降物を得た。
得られた凝集沈降物を平らにならし、115℃に昇温した対流式オーブンに投入した。対流式オーブン中で8時間加熱乾燥し、その後、2時間放置冷却した。乾燥後の磁性粉体(粉体凝集物)を示差熱分析したところ、無機成分82%及び有機成分18%を含むことが確認された。これにより、磁性粒子表面の少なくとも一部に磁性流体由来の有機成分(界面活性剤)が存在することが確認された(親油化処理あり)。
【0069】
その後、粉体凝集物を、ミキサーを使用して微粉になるまで粉砕し、磁性粉体を得た。粉砕後の磁性粉体の平均一次粒子径(D2)は、上記のとおり、25nmであった。
なお、D2の測定には、ナノ粒子解析装置(Sympatec GmbH社製、Heros Partical Size Analysis windox5)を用いた。
【0070】
[実験例1~4]
第1粒子と第2粒子を表1に示す質量割合で、温度20℃及び湿度50%の条件下、撹拌機を用いて乾式混合(ドライブレンド)し、粒子試料(磁気応答性複合材料)を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
2.樹脂系組成物の作製
[実験例5~8及び参考例1]
樹脂と、実験例1~4で得られた各粒子試料(または第1粒子のみで構成した第2粒子未付着粒子試料)とを、表2に記載の質量比となるように混合し、樹脂系組成物を得た。得られた樹脂系組成物について、磁気特性を評価した。結果を表2に示す。
なお、樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂と液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の質量比1:1混合物(エポキシ当量160~170g/eq、粘度2200mPa・s、25℃))を用いた。
【0073】
3.評価
(3-1)第2粒子の付着形態
得られた複数の樹脂系組成物のうちの一試料(実験例7で得られた樹脂系組成物。実験例3の粒子試料を含有)につき、STEM(商品名JEM-2200FS: 日本電子社製)にて観察し、BF像を取得した。倍率100,000倍での観察結果を図3に、倍率1,000,000倍での観察結果を図4に示す。加速電圧は200kVで行った。
図3及び図4に示すように、粒子試料において、第2粒子は、第1粒子表面に付着し、第1粒子の表面の一部を被覆していることが確認できた。
【0074】
(3-2)磁気特性
試験用プレートに実験例5~8及び参考例1で得られた各樹脂系組成物を注入し、それぞれの試験プレートを装着したTAインスルメント社製レオメータDHR-2マグネットレオロジー用オプション付を用いて、25℃の雰囲気下で、未励磁時粘度V0(Pa・S)と励磁時粘度V0.8(Pa・S)を測定し、相対比(励磁時粘度/未励磁時粘度)を算出した。評価条件は以下のとおりである。
【0075】
磁場の付与条件:測定開始後30秒後に直流0.8Tの磁場を印加し、測定開始後50秒後にその磁場の印加を解除(停止)する。ギャップ距離は100μmにて行った。
【0076】
【表2】
【0077】
4.考察
表2に示すように、実験例7及び参考例1における励磁時粘度V0.8の実測値は、それぞれ92(Pa・S)、5.5(Pa・S)であり、初期値V0はそれぞれ23(Pa・S)、5.5(Pa・S)であった。この結果、相対比はそれぞれ、4、1と算出された。
なお、実験例7において、初期値に対する励磁時粘度の比(相対比)の上昇は、第2粒子を介して粒子試料(磁気応答性複合材料)同士が結合したクラスター形成によるものであることを意味している。
実験例7では、その相対比が参考例1における場合の4倍になることが確認された。この結果より、本発明品(磁気応答性複合材料)は、既存品(第1粒子のみで構成した第2粒子未付着粒子)に比べ、初期値に対する励磁時粘度の比(相対比)が高い樹脂系組成物を実現可能であることが確認された。
図1
図2
図3
図4