(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】粘着テープ貼付け方法および粘着テープ貼付け装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230308BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2021077589
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2017088259の分割
【原出願日】2017-04-27
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017032151
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】長谷 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】森 伸一郎
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153597(JP,A)
【文献】特開2011-109008(JP,A)
【文献】特開2014-031270(JP,A)
【文献】特開2012-038880(JP,A)
【文献】特開2014-049626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記第2の粘着テープを保持テーブルで保持するテープ保持過程と、
前記半導体ウエハをウエハ保持部で保持するウエハ保持過程と、
一対のハウジングを接合することによって、前記保持テーブルおよび前記ウエハ保持部を収納するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する第1抑止部材を前記半導体ウエハに近接させ、前記半導体ウエハと前記第1抑止部材との距離を予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する第2抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程と、
第2近接過程の後、前記チャンバが形成された状態で、前記チャンバ内部の気圧を低くしながら前記第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け過程における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記第1抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着テープ貼付け方法において、
フレーム保持部でリングフレームを保持するフレーム保持過程を備え、
前記チャンバは前記フレーム保持部を収納する
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粘着テープ貼付け方法において、
前記第1抑止部材は前記保持テーブルであり、前記第1近接過程において前記保持テーブルとともに前記第2の粘着テープが前記半導体ウエハに近接される
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着テープ貼付け方法において、
前記第2抑止部材は前記ウエハ保持部である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項5】
一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記半導体ウエハを保持テーブルで保持するウエハ保持過程と、
チャンバを構成する一対のハウジングの一方の接合部に前記第2の粘着テープを貼り付ける第1貼付け過程と、
前記保持テーブルを前記第2の粘着テープに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離を予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
扁平面を有する抑止部材を前記第2の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第2の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程と、
前記第2の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んで接合することによって前記チャンバを形成した状態で、前記チャンバ内における前記半導体ウエハ側の空間を他方の空間よりも気圧を低くしながら前記第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける第2貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記第2貼付け過程における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記保持テーブルおよび前記抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項6】
請求項5に記載の粘着テープ貼付け方法において、
フレーム保持部でリングフレームを保持するフレーム保持過程を備え、
前記第1貼付け過程では、チャンバを構成する一対のハウジングの一方の接合部と前記フレーム保持過程によって保持されている前記リングフレームとにわたって前記第2の粘着テープを貼り付ける
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の粘着テープ貼付け方法において、
前記第2所定値は0.5mm以下である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の粘着テープ貼付け方法において、
前記第1所定値は0.1mm以上0.5mm以下である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項9】
半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記粘着テープを保持テーブルで保持するテープ保持過程と、
前記半導体ウエハをウエハ保持部で保持するウエハ保持過程と、
一対のハウジングを接合することによって、前記保持テーブルおよび前記ウエハ保持部を収納するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記半導体ウエハを保持しているウエハ保持部を前記粘着テープに近接させ、前記粘着テープの粘着面と前記半導体ウエハとの距離を予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する抑止部材を前記粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程と、
第2近接過程の後、前記チャンバが形成された状態で、前記チャンバ内部の気圧を低くしながら前記粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け過程における気圧の低下によって前記保持テーブルと前記粘着テープとの間の気泡が膨張することを、前記ウエハ保持部によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項10】
一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記第2の粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記第2の粘着テープを保持する保持テーブルと、
前記半導体ウエハを保持するウエハ保持部と、
扁平面を有する第1抑止部材と、
扁平面を有する第2抑止部材と、
前記保持テーブル、前記ウエハ保持部、前記第1抑止部材、および前記第2抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記第1抑止部材を前記半導体ウエハの他方の面に近接させ、前記半導体ウエハと前記第1抑止部材との距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記第2抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記チャンバの内部を減圧させる減圧機構と、
前記チャンバの内部が減圧した状態で前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハの他方の面に貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け機構における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記第1抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着テープ貼付け装置において、
リングフレームを保持するフレーム保持部を備え、
前記チャンバは、前記フレーム保持部を収納する
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の粘着テープ貼付け装置において、
前記第1抑止部材は前記保持テーブルであり、前記第1近接機構は前記保持テーブルとともに前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハに近接させる
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の粘着テープ貼付け装置において、
前記第2抑止部材は前記ウエハ保持部である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項14】
一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記第2の粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記半導体ウエハを保持する
保持テーブルと、
扁平面を有する抑止部材と、
前記保持テーブルおよび前記抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記ハウジングの一方の接合部に前記第2の粘着テープを貼り付ける第1貼付け機構と、
前記保持テーブルを前記第2の粘着テープに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記抑止部材を前記第2の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第2の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記第2の粘着テープにより仕切られた前記チャンバ内の2つの空間に差圧を生じさせ、前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハの他方の面に貼り付ける第2貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記第2貼付け機構における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記保持テーブルおよび前記抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項15】
請求項14に記載の粘着テープ貼付け装置において、
リングフレームを保持するフレーム保持部を備え、
前記第1貼付け機構は、前記ハウジングの一方の接合部と前記フレーム保持部によって保持されている前記リングフレームとにわたって前記第2の粘着テープを貼り付ける
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項16】
請求項10ないし請求項15のいずれかに記載の粘着テープ貼付け装置において、
前記第2所定値は0.5mm以下である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項17】
請求項10ないし請求項16のいずれかに記載の粘着テープ貼付け装置において、
前記第1所定値は0.1mm以上0.5mm以下である
ことを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項18】
請求項10ないし請求項17のいずれかに記載の粘着テープ貼付け装置において、
前記半導体ウエハの外形に沿って前記第2の粘着テープを切断する切断機構と、
前記半導体ウエハの形状に切り抜いた前記第2の粘着テープを剥離する剥離機構と、
剥離後の前記第2の粘着テープを回収するテープ回収部と、
を備えることを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【請求項19】
半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記粘着テープを保持する保持テーブルと、
前記半導体ウエハを保持するウエハ保持部と、
扁平面を有する抑止部材と、
前記保持テーブル、前記ウエハ保持部、および前記抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記半導体ウエハを保持しているウエハ保持部を前記粘着テープの粘着面に近接させ、前記粘着テープと前記半導体ウエハとの距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記抑止部材を前記粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記チャンバの内部を減圧させる減圧機構と、
前記チャンバの内部が減圧した状態で前記粘着テープを前記半導体ウエハに貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け機構における気圧の低下によって前記保持テーブルと前記粘着テープとの間の気泡が膨張することを、前記ウエハ保持部によって抑止できるように設定されることを特徴とする粘着テープ貼付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハに形成された回路パターンを保護する保護テープや、リングフレームと当該リングフレームの中央に載置された半導体ウエハの裏面とに亘って貼り付けるダイシングテープを含む粘着テープの貼付け方法および粘着テープ貼付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)からチップ部品を製造する場合、ウエハの表面に回路パターンが形成処理された後、ウエハ表面に保護用の粘着テープ(保護テープ)が貼り付けられ、裏面研削加工が施されて薄型化される。薄型加工されたウエハは、保護テープが剥離された後、当該ウエハの裏面とリングフレームに亘って支持用の粘着テープが貼り付けられる。支持用の粘着テープ、すなわちダイシングテープの貼り付けにより、ウエハはダイシングテープを介してリングフレームと一体化(マウント)される。
【0003】
各種粘着テープをウエハに貼り付ける場合、貼付けローラを転動させて粘着テープをウエハに押圧して貼り付ける構成の他に、装置の小型化を図るため、ウエハを収納するチャンバの内部を減圧させて粘着テープを貼り付ける構成が用いられている。すなわち、上下一対のハウジングからなるチャンバを粘着テープで仕切って2つの空間を形成し、一方の空間の気圧を他方の空間の気圧より低くしながら当該粘着テープをウエハに貼り付ける(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。
【0006】
近年ではウエハの加工工程の多様化により、一方の面に粘着テープが貼り付けられているウエハの他方の面に、新たな粘着テープを貼り付ける場合がある。その一例としては、リングフレームにマウントされたウエハの表面に、再度粘着テープを貼り付ける場合が挙げられる。このとき、特許文献1に係る従来の構成を用いてウエハ表面に粘着テープを貼り付ける操作を行うと、ウエハの破損や回路の損傷といった問題が発生する。
【0007】
このような問題の発生について鋭意検討した結果、以下の知見を得るに至った。すなわち、ウエハの裏面に貼り付けられているダイシングテープとウエハとの間に微小な気泡が巻き込まれている場合、ウエハの表面に粘着テープを貼り付けるべくチャンバの内部を減圧させる際に、当該気泡が膨張する。
【0008】
気泡は膨張の際にウエハを押圧するので、結果として回路の損傷やウエハの破損などといった問題が発生すると考えられる。このような問題は、大気圧下でウエハにダイシングテープを貼り付けていた場合において、より顕著に発生する。また、近年ではウエハの薄型化が進んでいるため、気泡の押圧によるウエハの破損がより発生し易くなる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ウエハの破損や回路の損傷を回避しつつ、一方の面に粘着テープが貼り付けられているウエハの他方の面に、新たな粘着テープを精度よく貼り付けることができる粘着テープ貼付け方法および粘着テープ貼付け装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記第2の粘着テープを保持テーブルで保持するテープ保持過程と、
前記半導体ウエハの外縁からはみ出ている前記第1の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んで接合することによってチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記保持テーブルを前記半導体ウエハに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離が予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
前記第1の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んだ状態で、前記チャンバ内における前記半導体ウエハ側の空間を他方の空間よりも気圧を低くしながら前記第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける貼付け過程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
(作用・効果)この方法によれば、第1近接過程において保持テーブルは半導体ウエハに近接し、半導体ウエハと第2の粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている保持テーブルによって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0012】
また、上述した発明において、前記半導体ウエハは前記第1の粘着テープを介してリングフレームと接着保持されており、前記チャンバ形成過程では、フレーム保持部で前記リングフレームを保持しつつ、前記リングフレームと前記半導体ウエハとの間の前記第1の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んでチャンバを形成させることが好ましい。この場合、第1の粘着テープが一方の面に貼り付けられているマウントフレームにおいて、半導体ウエハの他方の面に対して第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。
【0013】
また、上述した発明において、扁平面を有する抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程を備えることが好ましい。
【0014】
(作用・効果)この構成によれば、第2近接過程において抑止部材は第1の粘着テープに近接し、抑止部材と第1の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第1の粘着テープの伸張を抑制できるので、第1の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。
【0015】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記半導体ウエハを保持テーブルで保持するウエハ保持過程と、
チャンバを構成する一対のハウジングの一方の接合部に前記第2の粘着テープを貼り付ける第1貼付け過程と、
前記保持テーブルを前記第2の粘着テープに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離が予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
扁平面を有する抑止部材を前記第2の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第2の粘着テープとの距離を第2所定値に維持させる第2近接過程と、
前記第2の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んで接合することによって前記チャンバを形成した状態で、前記チャンバ内における前記半導体ウエハ側の空間を他方の空間よりも気圧を低くしながら前記第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける第2貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記第2貼付け過程における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記保持テーブルおよび前記抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とするものである。
【0016】
(作用・効果)この構成によれば、第1近接過程において保持テーブルは第2の粘着テープに近接し、半導体ウエハと第2の粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている保持テーブルによって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0017】
また、第2近接過程において抑止部材は第2の粘着テープに近接し、抑止部材と第2の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第2の粘着テープの伸張を抑制できるので、第2の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。
【0018】
また、上述した発明において、フレーム保持部でリングフレームを保持するフレーム保持過程を備え、前記第1貼付け過程では、チャンバを構成する一対のハウジングの一方の接合部と前記フレーム保持過程によって保持されている前記リングフレームとにわたって前記第2の粘着テープを貼り付けることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、第1の粘着テープが一方の面に貼り付けられている半導体ウエハにおいて、チャンバを用いて半導体ウエハの他方の面とリングフレームにわたって第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。そのため、半導体ウエハの一方の面を保護しつつ、より好適なマウントフレームの作成工程を実行できる。
【0020】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記第2の粘着テープを保持テーブルで保持するテープ保持過程と、
前記半導体ウエハをウエハ保持部で保持するウエハ保持過程と、
一対のハウジングを接合することによって、前記保持テーブルおよび前記ウエハ保持部を収納するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する第1抑止部材を前記半導体ウエハに近接させ、前記半導体ウエハと前記第1抑止部材との距離を予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する第2抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程と、
第2近接過程の後、前記チャンバが形成された状態で、前記チャンバ内部の気圧を低くしながら前記第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け過程における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記第1抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とするものである。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、第1近接過程において第1抑止部材は半導体ウエハに近接し、半導体ウエハと第1抑止部材の粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている第1抑止部材によって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0022】
また、第2近接過程において第2抑止部材は第1の粘着テープに近接または接触し、第2抑止部材と第1の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、貼付け過程において、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は第2抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第1の粘着テープの伸張を抑制できるので、第1の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。本構成は、チャンバを用いて減圧した後に第2の粘着テープを貼り付ける構成であれば、差圧を用いて貼り付ける構成に限られないので、より多様なチャンバの構成に本発明の特徴を適用できる。
【0023】
また、上述した発明において、フレーム保持部でリングフレームを保持するフレーム保持過程を備え、前記チャンバは前記フレーム保持部を収納することが好ましい。この場合、リングフレームおよびフレーム保持部がチャンバに収納される構成についても、半導体ウエハに第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。
【0024】
また、上述した発明において、前記第1抑止部材は前記保持テーブルであり、前記第1近接過程において前記保持テーブルとともに前記第2の粘着テープが前記半導体ウエハに近接されることが好ましい。この場合、保持テーブルが第1抑止部材としての機能を兼ねるので、装置の複雑化を回避できる。
【0025】
さらに第1近接過程において第2の粘着テープが半導体ウエハに近接するので、第2の粘着テープと保持テーブルとの間に気泡が巻き込まれていた場合であっても、粘着テープの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は、半導体ウエハによって速やかに抑止される。そのため、第2の粘着テープの一部が伸張して凹凸やシワが発生することをより確実に防止できる。その結果、第2の粘着テープが半導体ウエハへ不均一に貼り付けられる事態や、第2の粘着テープと半導体ウエハとの密着性が低下する事態を確実に回避できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記第2抑止部材は前記ウエハ保持部であることが好ましい。この場合、ウエハ保持部が第2抑止部材としての機能を兼ねるので、装置の複雑化を回避できる。さらにウエハ保持部は、半導体ウエハに貼り付けられている第1の粘着テープに接触またはより近接しているので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷や第1の粘着テープの伸張をより確実に防止できる。
【0027】
また、上述した発明において、前記第1所定値は0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。この場合、保持テーブルを十分に近接させているので、半導体ウエハと第1の粘着テープとの間に巻き込まれている気泡の膨張によって半導体ウエハに作用する押圧力をより低減できる。従って、押圧による半導体ウエハの変形および破損をより確実に回避できる。
【0028】
また、上述した発明において、前記第2所定値は0.5mm以下であることが好ましい。この場合、抑止部材を十分に近接させているので半導体ウエハの面に垂直な方向に対する気泡の膨張をより確実に抑止できる。そのため、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷をより確実に回避できる。
【0029】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
前記粘着テープを保持テーブルで保持するテープ保持過程と、
前記半導体ウエハをウエハ保持部で保持するウエハ保持過程と、
一対のハウジングを接合することによって、前記保持テーブルおよび前記ウエハ保持部を収納するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記半導体ウエハを保持しているウエハ保持部を前記粘着テープに近接させ、前記粘着テープの粘着面と前記半導体ウエハとの距離を予め設定された第1所定値に維持させる第1近接過程と、
前記チャンバに収納されており扁平面を有する抑止部材を前記粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接過程と、
第2近接過程の後、前記チャンバが形成された状態で、前記チャンバ内部の気圧を低くしながら前記粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け過程における気圧の低下によって前記保持テーブルと前記粘着テープとの間の気泡が膨張することを、前記ウエハ保持部によって抑止できるように設定されることを特徴とするものである。
【0030】
(作用・効果)この構成によれば、半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける際に、半導体ウエハを保持しているウエハ保持部は第1近接過程において粘着テープに近接し、半導体ウエハと粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そして第2近接過程において抑止部材は粘着テープの非粘着面に近接または接触し、抑止部材と粘着テープの非粘着面との距離は予め設定された第2所定値に維持される。
【0031】
そのため、貼付け過程において、保持テーブルと粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して粘着テープを押圧した場合であっても、押圧された粘着テープは近接位置に維持されている半導体ウエハによって受け止められる。また、粘着テープの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。
【0032】
従って、気泡の膨張によって粘着テープの一部が粘着テープの面に垂直な方向へ押圧されて伸張し、凹凸やシワが発生することをより確実に防止できる。その結果、粘着テープが半導体ウエハへ不均一に貼り付けられる事態や、粘着テープと半導体ウエハとの密着性が低下する事態を確実に回避できる。また、粘着テープの伸張を抑制に起因する粘着テープの基材や粘着材の劣化も回避できる。また、本構成はチャンバ内を減圧させて半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける構成であれば、半導体ウエハの一方の面に予めテープが貼り付けられている構成に限られないので、より多様な構成に本発明の特徴を適用できる。
【0033】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記第2の粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記第2の粘着テープを保持する保持テーブルと、
前記半導体ウエハの外縁からはみ出ている前記第1の粘着テープを一対のハウジングで挟み込むことによって形成される、前記保持テーブルを収納するチャンバと、
前記保持テーブルを前記半導体ウエハに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記第1近接機構が作動している状態で、前記第1の粘着テープにより仕切られた前記チャンバ内の2つの空間に差圧を生じさせ、前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハの他方の面に貼り付ける貼付け機構と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0034】
(作用・効果)この構成によれば、第1近接機構によって保持テーブルは半導体ウエハに近接し、半導体ウエハと第2の粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、貼付け機構によって第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている保持テーブルによって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0035】
また、上述した発明において、前記半導体ウエハは前記第1の粘着テープを介してリングフレームと接着保持されており、前記リングフレームを保持するフレーム保持部を備え、前記チャンバは、前記フレーム保持部で保持された前記リングフレームと、前記半導体ウエハとの間の前記第1の粘着テープを一対のハウジングで挟み込んで形成されることが好ましい。この場合、第1の粘着テープが一方の面に貼り付けられているマウントフレームにおいて、半導体ウエハの他方の面に対して第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。
【0036】
また、上述した発明において、扁平面を有する抑止部材と、前記抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる制御を行う第2近接機構と、を備えることが好ましい。
【0037】
(作用・効果)この構成によれば、第2近接機構によって抑止部材は第1の粘着テープに近接し、抑止部材と第1の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、貼付け機構によって第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第1の粘着テープの伸張を抑制できるので、第1の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。
【0038】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記第2の粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記半導体ウエハを保持する保持テーブルと、
扁平面を有する抑止部材と、
前記保持テーブルおよび前記抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記ハウジングの一方の接合部に前記第2の粘着テープを貼り付ける第1貼付け機構と、
前記保持テーブルを前記第2の粘着テープに近接させ、前記半導体ウエハと前記第2の粘着テープの粘着面との距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記抑止部材を前記第2の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第2の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記第2の粘着テープにより仕切られた前記チャンバ内の2つの空間に差圧を生じさせ、前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハの他方の面に貼り付ける第2貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記第2貼付け機構における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記保持テーブルおよび前記抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とするものである。
【0039】
(作用・効果)この構成によれば、第1近接機構によって保持テーブルは第2の粘着テープに近接し、半導体ウエハと第2の粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張して半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている保持テーブルによって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0040】
また、第2近接機構によって抑止部材は第2の粘着テープに近接し、抑止部材と第2の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、第2の粘着テープを半導体ウエハに貼り付ける際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第2の粘着テープの伸張を抑制できるので、第2の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。
【0041】
また、上述した発明において、リングフレームを保持するフレーム保持部を備え、前記第1貼付け機構は、前記ハウジングの一方の接合部と前記フレーム保持部によって保持されている前記リングフレームとにわたって前記第2の粘着テープを貼り付けることが好ましい。
【0042】
(作用・効果)この構成によれば、第1の粘着テープが一方の面に貼り付けられている半導体ウエハにおいて、チャンバを用いて半導体ウエハの他方の面とリングフレームにわたって第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。そのため、半導体ウエハの一方の面を保護しつつ、より好適なマウントフレームの作成工程を実行できる。
【0043】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、一方の面に第1の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハの他方の面に第2の粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記第2の粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記第2の粘着テープを保持する保持テーブルと、
前記半導体ウエハを保持するウエハ保持部と、
扁平面を有する第1抑止部材と、
扁平面を有する第2抑止部材と、
前記保持テーブル、前記ウエハ保持部、前記第1抑止部材、および前記第2抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記第1抑止部材を前記半導体ウエハの他方の面に近接させ、前記半導体ウエハと前記第1抑止部材との距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記第2抑止部材を前記第1の粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記第1の粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記チャンバの内部を減圧させる減圧機構と、
前記チャンバの内部が減圧した状態で前記第2の粘着テープを前記半導体ウエハの他方の面に貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記貼付け機構における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記第1抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とするものである。
【0044】
(作用・効果)この構成によれば、第1近接機構によって第1抑止部材は半導体ウエハに近接し、半導体ウエハと第1抑止部材の粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そのため、貼付け機構による貼付けを行う際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が減圧によって膨張し半導体ウエハを押圧した場合であっても、押圧された半導体ウエハは近接位置に維持されている第1抑止部材によって受け止められる。すなわち、押圧による半導体ウエハの反りが保持テーブルによって速やかに抑止されるので、当該反りに起因する半導体ウエハの変形および破損を好適に回避できる。
【0045】
また、第2近接機構によって第2抑止部材は第1の粘着テープに近接または接触し、第2抑止部材と第1の粘着テープとの距離は予め設定された第2所定値に維持される。そのため、貼付け機構による貼付けを行う際に、半導体ウエハと第1の粘着テープの間に巻き込まれている気泡が減圧によって膨張した場合であっても、半導体ウエハの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は第2抑止部材の扁平面によって抑止される。従って、気泡の膨張によって半導体ウエハの面に対して作用する押圧力を大きく低減できるので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、気泡の膨張に起因する第1の粘着テープの伸張を抑制できるので、第1の粘着テープの基材や粘着材が劣化することを回避できる。本構成は、チャンバを用いて減圧した後に第2の粘着テープを貼り付ける構成であれば、差圧を用いて貼り付ける構成に限られないので、より多様なチャンバの構成に本発明の特徴を適用できる。
【0046】
また、上述した発明において、フレーム保持部でリングフレームを保持するフレーム保持過程を備え、前記チャンバは前記フレーム保持部を収納することが好ましい。この場合、リングフレームおよびフレーム保持部がチャンバに収納される構成についても、半導体ウエハに第2の粘着テープを貼り付ける工程を、当該半導体ウエハの変形や破損を回避しつつ実行できる。
【0047】
また、上述した発明において、前記第1抑止部材は前記保持テーブルであり、前記第1近接機構によって前記保持テーブルとともに前記第2の粘着テープが前記半導体ウエハに近接されることが好ましい。この場合、保持テーブルが第1抑止部材としての機能を兼ねるので、装置の複雑化を回避できる。
【0048】
さらに第1近接過程において第2の粘着テープが半導体ウエハに近接するので、第2の粘着テープと保持テーブルとの間に気泡が巻き込まれていた場合であっても、粘着テープの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は、半導体ウエハによって速やかに抑止される。そのため、第2の粘着テープの一部が伸張して凹凸やシワが発生することをより確実に防止できる。その結果、第2の粘着テープが半導体ウエハへ不均一に貼り付けられる事態や、第2の粘着テープと半導体ウエハとの密着性が低下する事態を確実に回避できる。
【0049】
また、上述した発明において、前記第2抑止部材は前記ウエハ保持部であることが好ましい。この場合、ウエハ保持部が第2抑止部材としての機能を兼ねるので、装置の複雑化を回避できる。さらにウエハ保持部は、半導体ウエハに貼り付けられている第1の粘着テープに接触またはより近接しているので、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷や第1の粘着テープの伸張をより確実に防止できる
【0050】
また、上述した発明において、前記第1所定値は0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。この場合、保持テーブルを十分に近接させているので、半導体ウエハと第1の粘着テープとの間に巻き込まれている気泡の膨張によって半導体ウエハに作用する押圧力をより低減できる。従って、押圧による半導体ウエハの変形および破損をより確実に回避できる。
【0051】
また、上述した発明において、前記第2所定値は0.5mm以下であることが好ましい。この場合、抑止部材を十分に近接させているので半導体ウエハの面に垂直な方向に対する気泡の膨張をより確実に抑止できる。そのため、気泡の膨張に起因するウエハWの損傷をより確実に回避できる。
【0052】
また、上述した発明において、前記半導体ウエハの外形に沿って前記第2の粘着テープを切断する切断機構と、前記半導体ウエハの形状に切り抜いた前記第2の粘着テープを剥離する剥離機構と、剥離後の前記第2の粘着テープを回収するテープ回収部と、を備えることが好ましい。この場合、半導体ウエハに貼り付けられた第2の粘着テープは半導体ウエハの外形に沿って切断されているので、半導体ウエハの外縁から第2の粘着テープがはみ出さない。そのため、第2の粘着テープが他の構成に接着する事態を好適に回避できる。
【0053】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
前記粘着テープを供給するテープ供給部と、
前記粘着テープを保持する保持テーブルと、
前記半導体ウエハを保持するウエハ保持部と、
扁平面を有する抑止部材と、
前記保持テーブル、前記ウエハ保持部、および前記抑止部材を収納する一対のハウジングからなるチャンバと、
前記半導体ウエハを保持しているウエハ保持部を前記粘着テープの粘着面に近接させ、前記粘着テープと前記半導体ウエハとの距離を予め設定された第1所定値に維持させる制御を行う第1近接機構と、
前記抑止部材を前記粘着テープの非粘着面に近接または接触させ、前記扁平面と前記粘着テープとの距離を予め設定された第2所定値に維持させる第2近接機構と、
前記第1近接機構および前記第2近接機構が作動している状態で、前記チャンバの内部を減圧させる減圧機構と、
前記チャンバの内部が減圧した状態で前記粘着テープを前記半導体ウエハに貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第1所定値は、前記第2貼付け過程における気圧の低下によって前記半導体ウエハと前記第1の粘着テープとの間の気泡が膨張して前記半導体ウエハが損傷することを、前記保持テーブルおよび前記抑止部材によって抑止できるように設定されることを特徴とする
【0054】
(作用・効果)この構成によれば、半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける際に、半導体ウエハを保持しているウエハ保持部は第1近接機構によって粘着テープに近接し、半導体ウエハと粘着テープの粘着面との距離は予め設定された第1所定値に維持される。そして第2近接機構によって抑止部材は粘着テープの非粘着面に近接または接触し、抑止部材と粘着テープの非粘着面との距離は予め設定された第2所定値に維持される。
【0055】
そのため、貼付け機構による貼付けの際に、保持テーブルと粘着テープの間に巻き込まれている気泡が減圧によって膨張し粘着テープを押圧した場合であっても、押圧された粘着テープは近接位置に維持されている半導体ウエハによって受け止められる。また、粘着テープの面に垂直な方向に対する当該気泡の膨張は抑止部材の扁平面によって抑止される。
【0056】
従って、気泡の膨張によって粘着テープの一部が粘着テープの面に垂直な方向へ押圧されて伸張し、凹凸やシワが発生することをより確実に防止できる。その結果、粘着テープが半導体ウエハへ不均一に貼り付けられる事態や、粘着テープと半導体ウエハとの密着性が低下する事態を確実に回避できる。また、粘着テープの伸張を抑制に起因する粘着テープの基材や粘着材の劣化も回避できる。また、本構成はチャンバ内を減圧させて半導体ウエハに粘着テープを貼り付ける構成であれば、半導体ウエハの一方の面に予めテープが貼り付けられている構成に限られないので、より多様な構成に本発明の特徴を適用できる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の粘着テープ貼付け方法および粘着テープ貼付け装置によれば、ウエハの破損や回路の損傷を回避しつつ、一方の面に粘着テープが貼り付けられているウエハの他方の面に、新たな粘着テープを精度よく貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】マウントフレームの構成を説明する図である。(a)は貼付け工程前後におけるマウントフレームの構成を示す断面図であり、(b)はマウントフレームの斜視図である。
【
図2】実施例1に係る粘着テープ貼付け装置の全体を示す正面図である。
【
図3】実施例1に係る粘着テープ貼付け装置の全体を示す平面図である。
【
図4】実施例1に係る回転駆動機構に備わった構成を示す縦断面図である。
【
図5】実施例1に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図6】実施例1に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図7】各実施例に係る粘着テープ貼付け装置の動作を説明するフローチャートである。(a)は実施例1に係る動作を説明するフローチャートであり、(b)は実施例2に係る動作を説明するフローチャートである。
【
図8】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図9】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図10】実施例1に係るステップS1の動作を示す平面図である。
【
図11】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図12】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図13】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図14】実施例1に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図15】実施例1に係るステップS2の動作を示す縦断面図である。
【
図16】実施例1に係るステップS3の動作を示す縦断面図である。
【
図17】実施例1に係るステップS3の動作を示す縦断面図である。
【
図18】実施例1に係るステップS4の動作を示す縦断面図である。
【
図19】実施例1に係るステップS5の動作を示す縦断面図である。
【
図20】実施例1に係るステップS6の動作を示す縦断面図である。
【
図21】実施例1による効果を説明する図である。(a)は従来例の構成を示す図であり、(b)は従来例の構成において発生する問題点を示す図であり、(c)は実施例1において、近接位置を維持する保持テーブルと半導体ウエハとの位置関係を示す図であり、(d)は実施例1において、近接位置を維持する保持テーブルの効果を説明する図であり、(e)は実施例1において、近接位置を維持する抑止部材と第1の粘着テープとの位置関係を示す図であり、(f)は実施例1において、近接位置を維持する抑止部材の効果を説明する図である。
【
図22】実施例2に係る粘着テープ貼付け装置の全体を示す縦断面図である。
【
図23】実施例2に係る粘着テープ貼付け装置の全体を示す平面図である。
【
図24】実施例2に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図25】実施例2に係るステップS1の動作を示す縦断面図である。
【
図26】実施例2に係るステップS3の動作を示す縦断面図である。(a)は支持テープを貼り付ける前の状態を示す図であり、(b)は支持テープを貼り付けた後の状態を示す図である。
【
図27】実施例2に係るステップS5の動作を示す縦断面図である。
【
図28】実施例2に係るステップS6の動作を示す縦断面図である。
【
図29】実施例2に係るステップS7の動作を示す縦断面図である。
【
図30】変形例に係る貼付け工程の動作を示す縦断面図である。
【
図31】実施例3に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図32】実施例3に係るステップS4の動作を示す縦断面図である。
【
図33】実施例3に係るステップS5の動作を示す縦断面図である。
【
図34】変形例(5)に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図35】変形例(5)において、貼付けローラによって粘着テープを貼り付ける構成を示す縦断面図である。
【
図36】変形例(7)に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図37】変形例(7)に係るステップS4の動作を示す縦断面図である。
【
図38】変形例(8)に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。(a)はステップS3が完了した状態の構成を示す図であり、(b)はステップS4に係る構成を示す図である。
【
図39】変形例(8)に係る構成の効果を説明する図である。(a)はウエハ保持部を粘着テープに近接させる制御を行わない従来の構成について、減圧前における構成を示す図であり、(b)は従来構成における、減圧後の気泡および粘着テープの状態を示す図であり、(c)は従来構成においてウエハに粘着テープを貼り付けた構成を示す図であり、(d)は変形例(8)における、減圧後の気泡および粘着テープの状態を示す図である。
【
図40】変形例に係るチャンバの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0059】
<全体構成の説明>
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。なお、本実施例では、リングフレームにマウントされた半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)の回路形成面に表面保護用の粘着テープを貼り付ける場合を例にとって説明する。
【0060】
すなわち、
図1(a)に示すように、半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という)の裏面に支持用の粘着テープDTが貼付けられたマウントフレームMFにおいて、当該ウエハWの表面(回路形成面)に保護用の保護テープPTを貼り付けるものである。以下、支持用の粘着テープについては「支持テープDT」とし、保護用の粘着テープについては「保護テープPT」とする。マウントフレームMFは
図1(b)に示すように、ウエハWの裏面とリングフレームfとに支持テープDTを貼付けて製作される。実施例1において、支持テープDTは本発明における第1の粘着テープに相当し、保護テープPTは本発明における第2の粘着テープに相当する。
【0061】
図2は、この発明の実施例1に係る粘着テープ貼付け装置の全体構成を示した正面図、
図3は、実施例1に係る粘着テープ貼付け装置の平面図である。
【0062】
実施例1に係る粘着テープ貼付け装置は、ウエハ供給/回収部1、ウエハ搬送機構2、アライメントステージ3、テープ供給部4、載置ユニット5、テープ切断機構6、チャンバ7、抑止ユニット8、剥離ユニット9およびテープ回収部10などが備えられている。以下、上記各構造部および機構などについての具体的な構成を説明する。
【0063】
ウエハ供給/回収部1には2台のカセットC1、C2が並列して載置される。各カセットCには、多数枚のマウントフレームMFが、ウエハWの回路形成面(表面)を下向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。
【0064】
ウエハ搬送機構2は、2台のロボットアーム2A、2Bを備えている。両ロボットアーム2A、2Bは、水平に進退移動可能に構成されるとともに、全体が旋回および昇降可能になっている。そして、ロボットアーム2A、2Bの先端には、馬蹄形をした真空吸着式のウエハ保持部が備えられている。ウエハ保持部は、カセットCに多段に収納されたマウントフレームMF同士の間隙に差し入れられ、マウントフレームMFの上面を吸着保持する。吸着保持されたマウントフレームMFは、カセットCから引き出されて、アライメントステージ3、保持テーブル37およびウエハ供給/回収部1の順に搬送される。
【0065】
アライメントステージ3は、ウエハ搬送機構2によって搬入載置されたマウントフレームMFを、ウエハWの外周に形成されたノッチやフレームfの外周に形成されたフラット部などに基づいて位置合わせを行うように構成される。
【0066】
テープ供給部4、載置ユニット5、セパレータ回収部12および切断ユニット23が、
図2に示すように、同一の縦プレート14に装着されている。当該縦プレート14は、可動台15を介して上部のフレーム16に沿って水平移動する。
【0067】
テープ供給部4には、ロール巻きした幅広の保護テープPTが供給ボビン17に装填されている、当該供給ボビン17からら繰り出されたセパレータS付きの保護テープPTをガイドローラ18群に巻回案内し、セパレータSを剥離した保護テープPTを載置ユニット5に導くように構成されている。また、供給ボビン17に適度の回転抵抗を与えて過剰なテープ繰り出しが行われないように構成されている。
【0068】
セパレータ回収部12は、保護テープPTから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビン19が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。
【0069】
載置ユニット5は、セパレータSが剥離された保護テープPTを、粘着面が上向きとなっている状態で保持テーブル37に載置させるものであり、
図4に示すように剥離部材20、昇降ローラ21および押圧ローラ22を備えている。
【0070】
剥離部材20は、先端が先鋭なエッジを有する。当該エッジを斜め下向きにした当該剥離部材20により、セパレータSを折り返して保護テープPTを剥離する。すなわち、保護テープPTを剥離部材20から前方に突き出す。昇降ローラ21は、剥離部材20と協働して保護テープPTを適時に把持する。押圧ローラ22は非粘着処理が施されており、剥離部材20の先端から突き出される保護テープPTの先端を押圧して後述する保持テーブル37に載置させてゆく。
【0071】
切断ユニット23は、剥離部材20の前側に設けられたフレーム24に沿って移動する可動台25と、当該可動台25の下部にカッタホルダを介してカッタ26を備えている。すなわち、切断ユニット23は、保護テープPTを幅方向に切断する。
【0072】
テープ切断機構6は、
図2および
図3に示すように、フレーム27に沿って昇降可能な可動台28から片持ち支持されたアームの先端下部で径方向に伸びる支持アーム29を介してカッタユニット30を備えている。カッタユニット30には、刃先を下向きにしたカッタ31がカッタホルダを介して装着されている。なお、カッタユニット30は、支持アーム29を介して旋回半径を調整可能になっている。テープ切断機構6は、保持テーブル37に載置された保護テープPTを、ウエハWと略同じ形状および大きさとなるように切断する。
【0073】
チャンバ7は、粘着テープTの幅よりも小さい外形を有する上下一対のハウジングによって構成される。本実施例では、1個の上ハウジング33Aと2個の下ハウジング33B、33Cを備えている。
【0074】
下ハウジング33B、33Cは、モータなどの回転駆動機構34の回転軸35に連結固定され旋回アーム36の両端にそれぞれ備えられている。すなわち、例えば、一方の下ハウジング33Bが上ハウジング33Aとチャンバ7を形成するとき、他方の下ハウジング33Cが載置ユニット5側のテープ載置位置に位置するようこうに構成されている。また、下ハウジング33B、33Cの上面および下面は、フッ素加工などの離型処理が施されている。
【0075】
両下ハウジング33B、33C内には、昇降可能な保持テーブル37が備えられている。保持テーブル37は、下ハウジング33B、33Cを貫通するロッド38と連結されている。ロッド38の他端は、モータなどから成るアクチュエータ39に駆動連結されている。したがって、保持テーブル37は、下ハウジング33B、33C内で昇降する。保持テーブル37の位置は、後述する制御部60によって任意の高さに制御される。
【0076】
保持テーブル37は、セパレータSが剥離されて粘着面が上向きとなっている保護テープPTを載置して保持する。
図5に示すように、保持テーブル37の上面には、カッタユニット30に備えたカッタ刃31を旋回移動させて保護テープPTを切断するために、カッタ走行溝37aが形成されている。保持テーブル37の平面視において、カッタ走行溝37aはウエハWと略同じ形状および大きさとなる位置に形成されている。
【0077】
上ハウジング33Aは、
図5に示すように、昇降駆動機構40に備えてられている。この昇降駆動機構40は、縦壁41の背部に縦向きに配置されたレール42に沿って昇降可能な可動台43この可動台43に高さ調節可能に支持された可動枠44、この可動枠44から前方に向けて延出されたアーム45を備えている。このアーム45の先端部から下方に延出する支軸46に上ハウジング33Aが装着されている。
【0078】
可動台43は、ネジ軸47をモータ48によって正逆転することでねじ送り昇降されるようになっている。
【0079】
上下ハウジング33A-33Cには、
図6に示すように、流路50を介して真空装置51と連通接続されている。なお、上ハウジング33A側の流路50には、電磁バルブ52を備えている。また、各ハウジング33A-33Cには、大気開放用の電磁バルブ53、54を備えた流路55がそれぞれ連通接続されている。さらに、上ハウジング33Aには、一旦減圧した内圧をリークにより調整する電磁バルブ56を備えた流路57が連通接続されている。なお、これら電磁バルブ52、53、54、56の開閉操作および真空装置51の作動は、制御部60によって行われている。
【0080】
抑止ユニット8は
図5に示すように、上ハウジング33A内に抑止部材61を備えている。抑止部材61は、扁平な底面を有するプレートである。当該抑止部材の上部にシリンダ62が連結されており、上ハウジング33A内で昇降する。また、抑止部材61の位置は制御部60によって任意の高さに制御される。なお、制御部60は、本発明の第1近接機構および第2近接機構に相当する。
【0081】
剥離ユニット9は、
図2、
図3および
図17に示すように、案内レール64に沿って左右水平に移動する可動台65、当該可動台65上で昇降する固定受け片66、当該固定受け片66とシリンダ67で開閉される可動片68を備えている。すなわち、剥離ユニット9は、テープ切断機構6によってウエハWの形状に切り抜かれた不要な保護テープPTの一端側を固定受け片66と可動片68によって把持して剥離してゆく。
【0082】
テープ回収部10には、剥離ユニット9の剥離終了端側に位置し、当該剥離ユニット9によって剥離された保護テープPTを回収する回収容器69が配置されている。
【0083】
粘着テープ貼付け装置は、フレーム保持テーブル77を備えている。フレーム保持テーブル77は
図3、
図4および
図15などに示すように、下ハウジング33B、33Cの外周を囲う環状であり、旋回アーム36上に設けられている。したがって、下ハウジング33B、33Cと一体となって旋回する。当該フレーム保持テーブル77にリングフレームfを載置したとき、下ハウジング33B、33Cの接合部70の上面とリングフレームfの上面とが面一になるように高さが設定されている。フレーム保持テーブル77は本発明におけるフレーム保持部に相当する。
【0084】
<動作の説明>
次に、上述の実施例装置により、マウントフレームMFのウエハWに保護テープPTを貼り付ける一巡の動作を説明する。
図7(a)は、第1実施例に係るマウントフレームMFのウエハWに保護テープPTを貼付ける工程を説明するフローチャートである。
【0085】
ステップS1(保護テープの載置)
保護テープPTの貼付け開始の指示に従って、まずテープ供給部4はセパレータS付きの保護テープPTを載置ユニット5へ繰り出させる。そして、保持テーブル37は
図8に示すように、その上面の高さが下ハウジング33Bの頂部(接合部)70と同じ高さとなるように上昇して実線で示すテープ受け取り位置へと移動する。
【0086】
さらに
図8に示すように、載置ユニット5を点線で示す初期位置から実線で示す押圧処理開始位置へ移動させる。保護テープPTの供給と巻き取りの同期をとりながら、剥離部材20から所定長だけ保護テープPTが突き出される。その後、押圧ローラ22を下降させて保護テープPTの先端を下ハウジング33Bの接合部70に押圧させる。
【0087】
その後、
図9に示すように、載置ユニット5を図の左方向へと移動させながら保護テープPTを下方に押圧させることにより、当該接合部70および保持テーブル37の全面に保護テープPTが載置されていく。このとき、載置された保護テープPTは保持テーブル37によって吸着保持される。そして
図9において実線で示されるように、押圧処理終端側の接合部70から所定距離を超えた位置で載置ユニット5は停止する。
【0088】
切断ユニット23が作動し、
図10に示すように、カッタ26が保護テープPTの後端側を幅方向(図ではy方向)に切断する。保護テープPTを枚葉に切断した後、載置ユニット5および切断ユニット23は初期位置へと復帰する。
【0089】
載置ユニット5および切断ユニット23は初期位置へと復帰した後、テープ切断機構6を作動させる。すなわち
図11に示すように、カッタユニット30を所定高さまで下降させ、保持テーブル37のカッタ走行溝37aにおいてカッタ31が保護テープPTに突き刺される。
【0090】
カッタ31が保護テープPTに突き刺されると、支持アーム29が縦軸心Pを旋回中心として旋回する。これに伴ってカッタ31がカッタ走行溝37aに沿って旋回移動し、保持テーブル37に吸着保持されている保護テープPTはウエハWと略同じ形状および大きさに切断される。このとき、保護テープPTの表面は、水平に保たれている。保護テープPTの切断が完了すると、カッタユニット30は上昇して待機位置に戻る。
【0091】
保護テープPTが切断された後、剥離ユニット9を剥離開始位置に移動させる。
図12に示すように、下ハウジング33Bからはみ出ている保護テープPTの両端側を固定受け片66と可動片68によって挟み込む。そして剥離ユニット9は
図13に示すように、その状態で斜め上方に所定距離移動させた後に、ウエハと同形状に切り抜かれた後の不要な保護テープPTを、水平移動させながら剥離してゆく。
【0092】
不要な保護テープPTが剥離されることにより、ウエハWと同形状に切り抜かれた保護テープPTが、粘着面を上向きに露出させた状態で保持テーブル37に載置されることとなる。剥離ユニット9がテープ回収部10に到達すると、保護テープPTの把持を解除して回収容器69に保護テープPTを落下させる。
【0093】
不要な保護テープPTが剥離された後、
図14に示すように保持テーブル37は保護テープPTを吸着保持しつつ下降して初期位置へ復帰する。このとき、保持テーブル37に保持されている保護テープPTの表面は、接合部70よりも低い位置にある。保護テープを載置させた保持テーブル37が初期位置へ復帰することにより、ステップS1の工程は完了する。
【0094】
ステップS2(マウントフレームの載置)
保護テープPTを保持テーブル37に載置させた後、マウントフレームの載置を開始する。すなわち、ロボットアーム2AはカセットC1からマウントフレームMFを搬出し、アライメントステージ3に載置する。アライメントステージ3で位置合わせを行った後に、ロボットアーム2Aによって、マウントフレームMFは保持テーブル37の上方へと搬送される。
【0095】
そして
図15に示すように、ロボットアーム2AはマウントフレームMFを下降させ、マウントフレームMFは下ハウジング33Bに載置される。このとき、リングフレームfからウエハWの外周までの間に位置する支持テープDTが下ハウジング33Bの頂部(接合部)70と接しており、リングフレームfはフレーム保持テーブル77に載置される。そのため、支持テープDTは接合部70と同じ高さにおいて平坦な状態となっている。
【0096】
またこのとき、保持テーブル37に保持されている保護テープPTの粘着面からウエハWの表面までの距離D1は、保護テープPTとウエハWが大気圧下で接触することを確実に回避できる程度に十分な距離となっている。一例として距離D1は3~5cm程度となっている。マウントフレームMFを下ハウジング33Bに載置させることにより、ステップS2の工程は完了する。
【0097】
ステップS3(チャンバの形成)
マウントフレームの載置が完了した後、チャンバの形成を開始する、すなわち
図16に示すように、回転駆動機34を作動させて下ハウジング33Bを上ハウジング33Aの下方に旋回移動させる。このとき、旋回アーム36の他端側に装着された下ハウジング33Cが、テープ載置位置に移動する。下ハウジング33Bを旋回移動させた後、
図17に示すように、上ハウジング33Aを下降させ、下ハウジング33Bとで支持テープDTを挟み込んでチャンバ7を形成する。
【0098】
ステップS4(テーブルの近接移動)
チャンバが形成された後、テーブルの近接移動を行う。すなわち
図18に示すように制御部60の制御に従って保持テーブル37を点線で示す初期位置から実線で示す貼付け位置へと上昇させ、保護テープPTをウエハWに近接させる。その結果、保護テープPTからウエハWの表面までの距離はD1からD2となる。制御部60は、保持テーブル37の位置が貼付け位置に維持されるよう、各種制御を行う。
【0099】
距離D2は、後述する保護テープPTの貼付け工程においてウエハWの損傷を回避できるよう、所定値Lt1以下となるように予め設定される。所定値Lt1は、ウエハWの厚みや保護テープPTの材料など諸条件によって変化する。実施例1において、所定値Lt1は0.5mm~1mm程度である。
【0100】
なお、このとき保護テープPTとウエハWの表面とは非接触の状態である。すなわち距離D2は所定の正の値Lt2以上であり、一例として0.1mm以上である。距離D2が所定値Lt2以上であることにより、大気圧下であるにも関わらず保護テープPTがウエハWの表面に接触するという事態を回避できる。所定値Lt1は本発明における第1所定値に相当する。
【0101】
ここで、保持テーブル37の近接移動に加え、さらに抑止部材61の近接移動を行うことが好ましい。抑止部材61の近接移動を行う場合、制御部60の制御に従ってシリンダ62が駆動する。当該駆動によって、抑止部材61は
図18に示すように点線で示す初期位置から実線で示す抑止位置へと下降し、支持テープDTに近接する。その結果、抑止部材61の扁平面61aから支持テープDTまでの距離はE1からE2となる。制御部60は、抑止部材61の位置が抑止位置に維持されるよう、各種制御を行う。
【0102】
距離E2は、ウエハの面に垂直な方向(図面ではz方向)における気泡の膨張の発生を回避できるよう、所定値Lt3以下となるように予め設定される。所定値Lt3は、ウエハWの厚みや保護テープPTの材料など諸条件によって変化する。実施例1において、所定値Lt3は0.5mm~1mm程度である。なお、気泡の膨張を防止するという観点から、支持テープDTの非粘着面と扁平面61aとは接触状態を維持することがより好ましい。すなわち距離D2と異なり、距離E2はゼロでもよい。所定値Lt3は本発明における第2所定値に相当する。
【0103】
ステップS5(保護テープの貼付け)
保持テーブルおよび抑止部材の近接移動が完了した後、保護テープの貼付けを開始する。すなわち制御部60は、電磁バルブ53、54、56を閉じた状態で、真空装置51を作動させて上ハウジング33A内と下ハウジング33B内を減圧する。このとき、両ハウジング33A、33B内が同じ速度で減圧してゆくように、電磁バルブ52の開度を調整する。
【0104】
両ハウジング33A、33B内が所定の気圧まで減圧されると、制御部60は、電磁バルブ52を閉じるとともに、真空装置51の作動を停止する。
【0105】
制御部60は、電磁バルブ56の開度を調整してリークさせながら下ハウジング33B内を所定の気圧まで徐々に高める。このとき
図19に示すように、上ハウジング33A内の気圧が下ハウジング33B内の気圧よりも低くなりその差圧によって、保護テープPTがその中心から上ハウジング33A内に引き込まれていく。そのため、近接配備されたウエハWの中心から外周に向けて、保護テープPTが徐々に貼り付けられてゆく。
【0106】
このとき、支持テープDTの非粘着面と抑止部材61の扁平面61aとはステップS4において近づけられている。そのため、支持テープDTとウエハWの裏面との間に気泡が含まれている場合であっても、当該気泡がウエハWの面に垂直な方向(z方向)へ膨張することは、抑止部材61によって抑止される。従って、z方向に対する気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。
【0107】
また、保護テープPTの粘着面とウエハの表面とは距離D2に近接した位置を維持している。そのため、支持テープDTとウエハWの裏面との間に気泡がz方向へ膨張してウエハWが下方へ押圧されたとしても、押圧されたウエハWは速やかに保護テープPTを介して保持テーブル37に受け止められる。すなわち下方への押圧力によるウエハWの変形は保持テーブル37によって抑止されるので、気泡の膨張によってウエハWの反りや破損が発生することを好適に回避できる。
【0108】
予め設定された気圧に上ハウジング33A内が達すると、制御部60は、電磁バルブ54の開度を調整して上ハウジング33A内の気圧を下ハウジング33B内の気圧と同じにする。この気圧調整に応じて保持テーブル37を上昇させて保持テーブル37の載置面(上面)とウエハWの表面とを同じ高さにする。
【0109】
保護テープPTがウエハWの表面全体に貼り付けられると、制御部60は、上ハウジング33Aを上昇させて上ハウジング33A内を大気開放するとともに、電磁バルブ54を全開にして下ハウジング33B側も大気開放する。当該大気開放により、ステップS5に係る保護テープの貼付け工程は完了する。
【0110】
なお、チャンバ7内で保護テープPTをウエハWに貼り付けている間に、テープ載置位置へ移動していた下ハウジング33Cにおいて、ステップS1~S2の工程を行うことができる。すなわち、セパレータSを剥離された保護テープPTを、粘着面を上向きにした状態で下ハウジング33C内の保持テーブル37に載置させる。そして保護テープPTをウエハWと同形状に切り抜いて不要な保護テープPTを剥離除去する。その後、ロボットアーム2BによってカセットC2から搬出されたマウントフレームMFを、下ハウジング33Cに載置させる。このように下ハウジングを複数設けて交互にステップS1~S2の工程を行うことにより、マウントフレームMFに対する保護テープPTの貼付け効率を向上できる。
【0111】
ステップS6(マウントフレームの回収)
チャンバ7内において保護テープPTの貼付け工程が完了すると、マウントフレームの回収を開始する。すなわち
図20に示すように、保持テーブル37を初期位置へ下降させるとともに、旋回アーム36を反転させる。またこのとき、抑止部材61も初期位置へと上昇させる。
【0112】
旋回アーム36の反転によって、一方の下ハウジング33Bを載置ユニット5側のテープ載置位置に移動させ、他方の下ハウジング33Cを上ハウジング33Aの下方の接合位置に移動させる。保護テープPTが貼り付けられたマウントフレームMFは、ロボットアーム2Aによって下ハウジング33Bから搬送され、カセットC1の元位置に回収される。
【0113】
なお、下ハウジング33B側においてマウントフレームMFの回収を行っている間に、下ハウジング33C側のマウントフレームMFに対してチャンバの形成および保護テープPTの貼付け処理などが行われる。以上でマウントフレームMFへの保護テープPTの一巡の貼付け動作が終了し、以後、同じ処理が繰り返し行われる。
【0114】
<実施例1の構成による効果>
上記実施例1に係る構成によれば、一方の面に粘着テープが貼り付けられているウエハの他方の面に、チャンバの差圧を利用して新たな粘着テープを貼り付ける場合において、ウエハの損傷などの発生を確実に回避しつつ、新たな粘着テープを精度よく貼り付けることができる。
【0115】
図21(a)に示すように、予めウエハWの一方の面に貼り付けられている粘着テープT1とウエハWとの間に気泡Arが混入している場合がある。従来の粘着テープ貼付け装置では、チャンバ内で差圧を用いて当該ウエハWに新たな粘着テープT2を貼り付ける際に、
図21(b)に示すように気泡Arは全方向へ膨張する。
【0116】
その結果、膨張する気泡ArによってウエハWに対して比較的大きな押圧力Psが加わる。また、保持テーブルなどの構成がウエハWに近接していないので、ウエハWの他方の面には広い空間が形成されている。そのため、押圧力PsによってウエハWが反るように歪んでいき、ひいてはウエハWの破損や回路の損傷といった問題が発生する。また、気泡Arがz方向に膨張した場合、当該膨張によって粘着テープT1が伸張する長さが大きくなるので、粘着テープT1の基材や粘着材の弾力性が失われて劣化する。
【0117】
実施例1に係る装置では
図21(c)に示すように、チャンバ7において差圧を発生させる前に粘着テープT2(保護テープPT)を載置させた保持テーブル37をウエハWに近接対向させ、当該近接対向状態を維持させる。すなわち、差圧による粘着テープT2の貼付けを行う間、保持テーブル37とウエハWとの距離が常に所定の小さい値D2となるように各々の位置が制御される。
【0118】
この場合、気泡などによってウエハWが押圧された場合であっても、
図21(d)に示すように、ウエハWとの距離がD2に維持されている保持テーブル37によって、ウエハWは速やかに支持される。このとき、制御部60が各構成を制御することによって保持テーブル37は半導体ウエハに近接する位置に保たれて(固定されて)いる。そのため、気泡の押圧によって保持テーブル37が下方へ移動することがない。従って、ウエハWの変形を抑止できるとともに、ウエハWの破損や回路の損傷といった問題の発生をより確実に回避できる。
【0119】
また、粘着テープT2とウエハWとは非接触となるように距離D2が設定されるので、大気圧下で粘着テープT2とウエハWとが接触して気泡が混入することを回避できる。膨張した気泡Arに起因する押圧力PsによってウエハWが押圧され、粘着テープT2と接触した場合であっても、この場合は既に真空吸引の開始後であるので、粘着テープT2とウエハとの間に気泡が混入することがない。従って、ウエハWの破損を回避しつつ、新たな粘着テープT2をウエハWへ精度よく貼り付けることができる。
【0120】
さらに、実施例1に係る装置では
図21(e)に示すように、差圧を発生させる前に粘着テープT1(支持テープDT)に対して抑止部材61を近接対向させ、当該近接対向を維持させる。すなわち、差圧による保護テープPTの貼付けを行う間、抑止部材61と粘着テープT1との距離が常に所定の小さい値E2となるように各々の位置が制御される。
【0121】
この場合、支持テープDTとウエハWとの間に気泡Arが混入しており、当該気泡Arが減圧によって膨張した場合であっても、
図21(f)に示すように、ウエハWの面に垂直な方向(z方向)に対する気泡Arの膨張は、近接対向している抑止部材61の扁平面61aによって速やかに抑止される。
【0122】
すなわち、z方向へ膨張しようとする気泡Arは、位置が固定されている抑止部材61の扁平面61aによって反発力を受けるので、z方向への膨張が制限される。このとき、制御部60が各構成を制御することによって抑止部材61は扁平面61aが粘着テープT1に近接する所定の位置に保たれて(固定されて)いる。そのため、気泡の押圧によって抑止部材61が上方へ移動することがない。
【0123】
その結果、気泡ArはウエハWの面(xy平面)に沿って広がるように膨張するので、z方向に対する押圧力Psは従来の構成と比べて低減される。従って、過剰な押圧力PsによるウエハWの変形を抑止できるとともに、ウエハWの破損や回路の損傷といった問題の発生をより確実に回避できる。また、z方向への気泡の膨張によって粘着テープT1が伸びる事態を抑止できるので、当該伸張に起因する粘着テープT1の劣化を回避できる。
【0124】
さらに、所定の短い距離E2を維持することにより、抑止部材61はウエハWに対して近接対向状態または接触状態を保つように構成される。そのため、抑止部材61がウエハWに対して無用に押圧力を加えることがないので、ウエハWが損傷する事態や大気圧下でウエハWが粘着テープT2と接触する事態などの発生を確実に回避できる。
【0125】
実施例1では抑止部材61および保持テーブル37の両方を近接移動させ、粘着テープT2との近接対向状態を維持させた後に差圧を発生させる。そのため、差圧によってウエハWに粘着テープT2を貼り付ける際に、押圧力Psの低減およびウエハWの変形の抑止といった効果をそれぞれ得られる。その結果、チャンバ7内を減圧させて差圧による粘着テープT2の貼付けを行う場合に、ウエハWの破損防止や回路の損傷防止といった効果を相乗的に向上できる。
【実施例2】
【0126】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例1ではマウントフレームMFのウエハWに保護テープPTを貼り付ける構成を例にとって説明した。実施例2では、表面に保護テープPTが予め貼り付けられているウエハWの裏面とリングフレームとにわたって支持テープDTを新たに貼り付けてマウントフレームMFを作成する、マウント処理の構成を例にとって説明する。なお、実施例1に係る粘着テープ貼付け装置と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。実施例2において、保護テープPTが本発明における第1の粘着テープに相当し、支持テープDTが本発明における第2の粘着テープに相当する。
【0127】
実施例2に係る粘着テープ貼付け装置は、
図22および
図23に示すように、フレーム供給部75、ロボットアーム76、および切断ユニット78を新たに備えている。また、テープ回収部4の位置とセパレータ回収部12の位置が逆になっている。そしてテープ切断機構6を省略できる構成となっている。
【0128】
フレーム供給部75は、カセットC1の横に設けられている。当該スペースにリングフレームfを積層収納したワゴンタイプの搬送車79が連結される。当該搬送車78は、その内部に昇降台が備えられている。当該昇降台にリングフレームfが積層されており、所定ピッチで昇降しつつ、上方の開口から1枚ずつリングフレームfをロボットアーム76に受け渡すように構成されている。
【0129】
ロボットアーム76は、馬蹄形をした保持部でリングフレームfの上面を吸着保持して搬送する。
【0130】
切断ユニット78は、ウエハWとリングフレームfとにわたって貼り付けられた支持テープDTをリングフレームfに沿って切断するものである。切断ユニット78は
図24に示すように、上ハウジング33Aを昇降させる昇降駆動機構40に配備されている。切断ユニット78は、ベアリング79を介して支軸46周りに回転するボス部80を備えている。このボス部80に、中心に径方向に延伸する4本の支持アーム81から84を備えている。
【0131】
一方の支持アーム81の先端に、円板形のカッタ85を水平軸支したカッタブラケットが上下移動可能に装着されるとともに、他の支持アーム82から84の先端に押圧ローラ87が揺動アーム88を介して上下移動可能に装着されている。
【0132】
ボス部80の上部には連結部89を有し、この連結部89にアーム45に備わったモータ90の回転軸と駆動連結されている。
【0133】
次に、実施例2に係る粘着テープ貼付け装置において、実施例1に係る装置と機能が異なる構成について説明する。
【0134】
ウエハ供給/回収部1のカセットC1およびC2には、多数枚のウエハWが、表面を下向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。各ウエハWの表面には予め保護テープPTが貼り付けられている。
【0135】
ウエハ搬送機構2のウエハ保持部は、カセットCに多段に収納されたウエハW同士の間隙に差し入れられ、ウエハWを裏面から吸着保持する。吸着保持されたウエハWは、カセットCから引き出されて、アライメントステージ3、保持テーブル37およびウエハ供給/回収部1の順に搬送される
【0136】
アライメントステージ3は、ウエハ搬送機構2によって搬入載置されたウエハWを、ウエハWの外周に形成されたノッチやオリエンテーションフラットなどに基づいて位置合わせを行うように構成される。
【0137】
テープ供給部4には、ロール巻きした幅広の支持テープDTが供給ボビン17に装填されている、当該供給ボビン17から繰り出されたセパレータS付きの支持テープDTをガイドローラ18群に巻回案内し、セパレータSを剥離した支持テープDTを貼付けユニット2Aに導くように構成されている。
【0138】
セパレータ回収部12は、支持テープDTから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビン19が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。
【0139】
載置ユニット5は、セパレータSが剥離された支持テープDTを、粘着面が下向きとなっている状態で下ハウジング33B、33Cの接合部70に貼り付けるものであり、剥離部材20、昇降ローラ21および押圧ローラ22を備えている。
【0140】
剥離部材20は、先端が先鋭なエッジを有する。当該エッジを斜め下向きにした当該剥離部材20により、セパレータSを折り返して支持テープDTを剥離する。すなわち、支持テープDTを剥離部材20から前方に突き出す。昇降ローラ21は、剥離部材20と協働して支持テープDTを適時に把持する。押圧ローラ22は、剥離部材20の先端から突き出される保護テープPTの先端を押圧して下ハウジング33B、33Cの接合部70に貼り付ける。切断ユニット23は、支持テープDTを幅方向に切断する。
【0141】
保持テーブル37は、保護テープPTが貼り付けられているウエハWを、ウエハWの表面が下向きの状態で吸着保持する。保持テーブル37は
図22および
図24に示すように、複数本の支持ピン71が内蔵されている。支持ピン71は上下移動可能となるように構成されており、その先端を保持テーブル37の保持面より高く突き上げることができる。
【0142】
剥離ユニット9は、切断ユニット78によって切り抜かれた後の不要な支持テープDTの一端側を、固定受け片66と可動片68によって把持して剥離してゆく。テープ回収部10には、剥離ユニット9によって剥離された不要な支持テープDTを回収する回収容器69が配置されている。
<動作の説明>
ここで、実施例2に係る粘着テープ貼付け装置によって、保護テープPT付きのウエハWとリングフレームfとにわたって支持テープDTを貼り付けてマウントフレームMFを作成する一巡の動作について説明する。
図7(b)は実施例2に係るマウント処理の動作の工程を説明するフローチャートである。
【0143】
ステップS1(ウエハの載置)
支持テープDTの貼付け開始の指示に従って、まずロボットアーム2AはカセットC1からウエハWを搬出し、アライメントステージ3に載置する。アライメントステージ3で位置合わせを行った後に、ロボットアーム2Aは、テープ貼付け位置にある保持テープ37に搬送する。
【0144】
保持テーブル37は
図25に示すように、下ハウジング33Bの頂部(接合部)70よりも高く複数本の支持ピン71を突き上げてウエハWを受け取る。ウエハWを受け取った支持ピン71は下降し、当該ウエハWは保持テーブル37の保持面で吸着保持される。このとき、ウエハWの表面は接合部70よりも低い位置にある。保持テーブル37が保護テープPTを介してウエハWを吸着保持することにより、ステップS1の工程は完了する。
【0145】
ステップS2(リングフレームの載置)
ウエハの載置が完了した後、リングフレームの載置を開始する。すなわちロボットアーム76は、リングフレームfをフレーム供給部75から搬出してテープ貼付け位置にあるフレーム保持テーブル77に載置する。ステップS2の工程はステップS1の前に行ってもよいし、ステップS1を実行する間に行ってもよい。
【0146】
ステップS3(支持テープをリングフレームに貼付け)
ウエハの載置およびリングフレームの載置が完了すると、ステップS3の工程を開始する。すなわち
図26(a)に示すように、載置ユニット5を点線で示す初期位置から実線で示す貼付け処理開始位置へ移動させる。支持テープDTの供給と巻き取りの同期をとりながら、剥離部材20から所定長だけ支持テープDTが突き出される。その後、押圧ローラ22を下降させて支持テープDTの先端をリングフレームfの上面に押圧させる
【0147】
載置ユニット5は
図26(b)に示すように、点線で示す押圧処理開始位置から実線で示す終端位置へと移動しつつ、リングフレームfと下ハウジング33Bの接合部70とにわたって支持テープDTを貼り付ける。このとき、ウエハWの裏面と支持テープDTの粘着面は、予め定められた距離D1をおいて対向されている。載置ユニット5が終端位置に到達すると、切断ユニット23によって支持テープDTを幅方向に切断する。実施例2に係るステップS3は、本発明における第1貼付け過程に相当する。
【0148】
ステップS4(チャンバの形成)
支持テープDTがリングフレームfに貼り付けられると、実施例1と同様にチャンバの形成を行う。すなわち、回転駆動機34を作動させて下ハウジング33Bを上ハウジング33Aの下方に旋回移動させた後、上ハウジング33Aを下降させる。そして下ハウジング33Bと上ハウジング33Aとで支持テープDTを挟み込んでチャンバ7を形成する。このとき、支持テープDTの非粘着面から抑止部材61の扁平面61aまでの距離はE1である。
【0149】
ステップS5(テーブルの近接移動)
チャンバが形成された後、テーブルの近接移動を行う。すなわち
図27に示すように制御部60の制御に従って保持テーブル37を点線で示す初期位置から実線で示す貼付け位置へと上昇させ、ウエハWを支持テープDTに近接させる。その結果、支持テープDTからウエハWの表面までの距離はD1からD2となる。制御部60は、保持テーブル37の位置が貼付け位置に維持されるよう、各種制御を行う。なお、このとき支持テープDTとウエハWの表面とは非接触の状態である。
【0150】
距離D2は、後述する保護テープPTの貼付け工程においてウエハWの損傷を回避できるよう、所定値Lt1以下となるように予め設定される。所定値Lt1は、ウエハWの厚みや保護テープPTの材料など諸条件によって変化する。実施例1において、所定値Lt1は0.5mm~1mm程度である。距離D2の値については実施例1と同様である。
【0151】
ここで、保持テーブル37の近接移動に加え、さらに抑止部材61の近接移動を行うことが好ましい。抑止部材61の近接移動を行う場合、制御部60の制御に従ってシリンダ62が駆動する。当該駆動によって、抑止部材61は
図27に示すように点線で示す初期位置から実線で示す抑止位置へと下降し、支持テープDTの非粘着面に近接する。
【0152】
その結果、抑止部材61の扁平面61aから支持テープDTまでの距離はE1からE2となる。制御部60は、抑止部材61の位置が抑止位置に維持されるよう、各種制御を行う。すなわち、扁平面61aから支持テープDTまでの距離は常にE2となるように制御される。なお、ウエハWの変形をより速やかに抑止すべく、距離E2はより小さいことが好ましい。特に、扁平面61aは支持テープDTに接触している状態を保つように抑止部材61の高さを制御することが好ましい。
【0153】
ステップS6(支持テープをウエハに貼付け)
保持テーブルおよび抑止部材の近接移動が完了した後、支持テープの貼付けを開始する。すなわち制御部60は実施例1と同様に、電磁バルブ53、54、56を閉じた状態で、真空装置51を作動させて上ハウジング33A内と下ハウジング33B内を同じ速度で減圧する。両ハウジング33A、33B内が所定の気圧まで減圧されると、制御部60は、電磁バルブ52を閉じるとともに、真空装置51の作動を停止する。
【0154】
制御部60は、電磁バルブ56の開度を調整してリークさせながら上ハウジング33A内を所定の気圧まで徐々に高める。このとき
図28に示すように、下ハウジング33B内の気圧が下ハウジング33B内の気圧よりも低くなりその差圧によって、支持テープDTがその中心から下ハウジング33B内に引き込まれていく。そのため、近接配備されたウエハWの中心から外周に向けて、支持テープDTが徐々に貼り付けられてゆく。
【0155】
このとき、保持テーブル37は保護テープPTを吸着保持しているので、保持テーブル37と保護テープPTとの距離はゼロとなるように制御される。そのため、保護テープPTとウエハWの間に気泡が巻き込まれている場合であっても、減圧の際に当該気泡がz方向に膨張することを回避できる。従って、ウエハWに対して上方へ過剰な押圧力が作用することによってウエハWが破損するという事態を回避できる。
【0156】
さらに、ウエハWから抑止部材61までの距離は、非常に小さい値(D2+E2)となるように維持される。そのため、保護テープPTとウエハWの間に巻き込まれた気泡が膨張することに起因してウエハWが上方へ押圧された場合であっても、ウエハWは速やかに抑止部材61の扁平面61aによって受け止められる。すなわち、ウエハWの反りや変形は抑止部材61によって好適に抑止される。その結果、ウエハWの変形や破損といった事態の発生をより確実に防止できる。
【0157】
予め設定された気圧に上ハウジング33A内が達すると、制御部60は、電磁バルブ54の開度を調整して下ハウジング33B内の気圧を上ハウジング33A内の気圧と同じにする。この気圧調整に応じて保持テーブル37を上昇させウエハWの上面(ここではウエハの裏面)とリングフレームfの上面とを同じ高さにする。
【0158】
なお、チャンバ7内で支持テープDTの貼付け処理を行っている間に、切断ユニット78が作動する。このとき、切断ユニット78は
図28に示すように、縦軸心Pを旋回中心として旋回する。当該旋回によって、カッタ85がリングフレームfに貼り付けられた支持テープDTをリングフレームfの形状に切断する。そして、押圧ローラ87がカッタ85に追従してリングフレームf上のテープ切断部位を転動しながら押圧してゆく。
【0159】
つまり、下降した上ハウジング33Aと下ハウジング33Bとによってチャンバ7を構成したとき、切断ユニット78のカッタ85と押圧ローラ87も切断作用位置に到達している。このように、支持テープDTはウエハWの裏面全体に貼り付けられるとともに、リングフレームfに沿って切断される。
【0160】
支持テープDTの貼付けおよび切断が完了すると、制御部60は上ハウジング33Aを上昇させて上ハウジング33A内を大気開放するとともに、電磁バルブ54を全開にして下ハウジング33B側も大気開放する。当該大気開放により、ステップS6に係る支持テープの貼付け工程は完了する。実施例2に係るステップS6は、本発明における第2貼付け過程に相当する。
【0161】
なお、チャンバ7内で保護テープPTをウエハWに貼り付けている間に、ロボットアーム2Aおよびロボットアーム76によって、テープ載置位置にある下ハウジング33Cとフレーム保持テーブル77にウエハWとリングフレームfを載置し、粘着テープDTの貼り付け処理が行われる。
【0162】
ステップS7(マウントフレームの回収)
チャンバ7内において支持テープDTの貼付け工程が完了すると、マウントフレームの回収を開始する。すなわち、保持テーブル37を初期位置へ下降させるとともに、旋回アーム36を反転させる。またこのとき、抑止部材61も初期位置へと上昇させる(
図20を参照)。
【0163】
旋回アーム36の反転によって、一方の下ハウジング33Bを載置ユニット5側のテープ載置位置に移動させ、他方の下ハウジング33Cを上ハウジング33Aの下方の接合位置に移動させる。
【0164】
旋回アーム36を反転させた後、剥離ユニット9を剥離開始位置に移動させる。
図29に示すように、リングフレームfからはみ出ている支持テープDTの両端側を固定受け片66と可動片68によって挟み込む。その状態で斜め上方に所定距離移動させた後に、水平移動させながらリングフレームfに沿って切り抜かれた後の不要な支持テープDTを剥離してゆく。
【0165】
剥離ユニット9がテープ回収部10に到達すると、支持テープDTの把持を解除して回収容器69に不要な支持テープDTを落下させる。支持テープDTがウエハWに貼り付けられて作成されたマウントフレームMFは、ロボットアーム2Aによって下ハウジング33Bから搬送され、カセットC1の元位置に回収される。
【0166】
なお、下ハウジング33B側において粘着テープDTの剥離処理および剥離処理が完了し、ウエハWとリングフレームfとが一体的に作成されたマウントフレームの搬出を行っている間に、下ハウジング33C側において、ウエハWへの支持テープDTの貼付け処理および切断処理が行われている。以上でウエハWへ支持テープDTを貼り付ける一巡の動作が終了し、以後、同じ処理が繰り返し行われる。
【0167】
このように、実施例2に係る粘着テープ貼付け装置においても、一方の面に保護テープPTが貼り付けられているウエハWの他方の面に対して、支持テープDTをチャンバの差圧によって貼り付ける工程において、ウエハWの変形や破損をより確実に回避できる。すなわち、チャンバ7の内部を減圧させる際に保持テーブル37は支持テープDTの粘着面に近接させるとともに、抑止部材61を支持テープDTの非粘着面に近接または接触させる。
【0168】
そのため、予め貼り付けられている保護テープPTとウエハWとの間に気泡が巻き込まれていた場合であっても、減圧の際に当該気泡がz方向に膨張することによってウエハWへ作用する押圧力を大きく低減できる。また、ウエハWが上方押圧されても、抑止部材61の扁平面61aによって当該ウエハWの変形が速やかに抑止される。その結果、支持テープDTの貼付け工程において、ウエハWの変形や破損をより確実に防止できる。
【0169】
また、保持テーブル37はウエハWを吸着しているので、保護テープPTとウエハWとの間に巻き込まれている気泡はz方向に膨張することを防止できる。そのため、ウエハWの回路面に作用する押圧力を低減できるとともに、保護テープPTの伸張に起因する保護テープPTの劣化を好適に回避できる。
【実施例3】
【0170】
次に、本発明の実施例3を説明する。実施例3では実施例1と同様に、ウエハWの裏面に支持テープDTが貼付けられたマウントフレームMFにおいて、ウエハWの表面に保護テープPTを貼り付ける構成となっている。但し、チャンバ7の内部における構成が実施例1および実施例3とで相違する。
【0171】
実施例1では
図17に示すように、フレーム保持テーブル77がチャンバ7の外側に配置されている構成を例にとって説明した。すなわち実施例1では、リングフレームfとウエハWとの間における支持テープDTを、一対のハウジング33Aおよび33Bで挟み込んでチャンバ7を形成させる構成となっている。一方、実施例3では
図31に示すように、リングフレームfを保持するフレーム保持部77がチャンバ7の内部に配置されている。すなわち、マウントフレームMFの全体がチャンバ7の内部に収納された状態でチャンバ7が形成される。
【0172】
また、実施例3では保護テープPTを保持する保持テーブル37が上ハウジング33Aに設けられており、抑止部材61が下ハウジング33Bに設けられている。扁平面61aを有する抑止部材61は昇降移動可能であり、ウエハWを載置させて保持する機能を備えている。保持テーブル37は昇降移動可能に構成されている。なお実施例1と同様に、保持テーブル37が下ハウジング33Bに設けられ、抑止部材61が上ハウジング33Aに設けられる構成でもよい。実施例3において、保持テーブル37は本発明におけるテープ保持部および第1抑止部材に相当し、抑止部材61は本発明におけるウエハ保持部および第2抑止部材に相当する。
【0173】
実施例3に係る粘着テープ貼付け装置により、マウントフレームMFのウエハWに保護テープPTを貼り付ける一巡の動作を説明する。実施例3における動作のフローチャートは実施例1に準じている。実施例1と同様に、実施例3では支持テープDTが本発明における第1の粘着テープに相当し、保護テープPTが本発明における第2の粘着テープに相当する。
【0174】
ステップS1(保護テープの保持)
保護テープPTの貼付け開始の指示に従って、まずセパレータS付きの保護テープPTが繰り出され、載置ユニット5はセパレータSを保護テープPTから剥離しつつ、押圧ローラ22が保護テープPTを保持テーブル37へ上方に押圧させる。当該押圧によって保護テープPTは保持テーブル37に載置され、保持テーブル37は保護テープPTを吸着保持する。そして実施例1と同様に、切断ユニット23およびテープ切断機構6によって保護テープPTはウエハWと同形状に切り抜かれる。切り抜かれた後の不要な保護テープPTは剥離ユニット9によって剥離され、回収容器69へ回収される。
【0175】
ステップS2(マウントフレームの載置)
保護テープPTが保持テーブル37に保持された後、実施例1と同様にマウントフレームMFが搬出され、アライメントステージ3で位置合わせを行った後に、マウントフレームMFは下ハウジング33Bに載置される。このとき、ウエハWは抑止部材61に載置され、リングフレームfはフレーム保持テーブル77に載置される。
【0176】
ステップS3(チャンバの形成)
マウントフレームの載置が完了した後、下ハウジング33Bを上ハウジング33Aの下方に旋回移動させる。そして上ハウジング33Aを下降させ、上ハウジング33Aと下ハウジング33Bとを密着させてチャンバ7を形成する。
図31は、実施例3においてチャンバ7が形成された状態を示している。このとき、保持テーブル37に保持されている保護テープPTの粘着面からウエハWの表面までの距離D1は、保護テープPTとウエハWが大気圧下で接触することを確実に回避できる程度に十分な距離となっている。
【0177】
ステップS4(テーブルの近接移動)
チャンバが形成された後、テーブルの近接移動を行う。すなわち
図32に示すように制御部60の制御に従って保持テーブル37を点線で示す初期位置から実線で示す貼付け位置へと下降させ、保持テーブル37および保護テープPTをウエハWに近接させる。その結果、保護テープPTからウエハWの表面までの距離はD1からD2となる。制御部60は、保持テーブル37の位置が貼付け位置に維持されるよう、各種制御を行う。実施例3において、保持テーブル37は本発明における第1抑止部材に相当し、抑止部材61は本発明における第2抑止部材に相当する。
【0178】
距離D2は、後述する保護テープPTの貼付け工程においてウエハWの損傷を回避できるよう、所定値Lt1以下となるように予め設定される。実施例3において、所定値Lt1は0.5mm~1mm程度とする。また、保護テープPTとウエハWの表面とは非接触の状態である。すなわち距離D2は所定の正の値Lt2以上であり、一例として0.1mm以上である。
【0179】
ステップS5(保護テープの貼付け)
保持テーブルの近接移動が完了した後、保護テープの貼付けを開始する。すなわち制御部60は、電磁バルブ53、54、56を閉じた状態で、真空装置51を作動させてチャンバ7の内部を減圧する。
【0180】
このとき、支持テープDTの非粘着面と抑止部材61の扁平面61aとは接触している。そのため、支持テープDTとウエハWの裏面との間に気泡が含まれている場合であっても、減圧の際に当該気泡がウエハWの面に垂直な方向(z方向)へ膨張することは、抑止部材61によって抑止される。従って、z方向に対する気泡の膨張に起因するウエハWの損傷を好適に回避できる。また、距離D2は所定値Lt2以上であることにより、大気圧下であるにも関わらず保護テープPTがウエハWの表面に接触するという事態を回避できる。
【0181】
また、保護テープPTの粘着面とウエハの表面とは距離D2に近接した位置を維持している。そのため、支持テープDTとウエハWの裏面との間に気泡がz方向へ膨張してウエハWが上方へ押圧されたとしても、押圧されたウエハWは速やかに保護テープPTを介して保持テーブル37に受け止められる。すなわち上方への押圧力によるウエハWの変形は保持テーブル37によって抑止されるので、減圧時における気泡の膨張に起因してウエハWの反りや破損が発生することを好適に回避できる。
【0182】
チャンバ7の内部における気圧が所定の値に減圧されると、制御部60は、電磁バルブ52を閉じるとともに、真空装置51の作動を停止する。そして
図33に示すように、制御部60は保持テーブル37をさらに下方へ移動させるとともに、保持テーブル37による保護テープPTの吸着保持を解除させる。このとき減圧下において、保護テープPTは保持テーブル37によってウエハWの表面に押圧される。そのため、気泡が巻き込まれることなく保護テープPTをウエハWに貼り付けることができる。
【0183】
保護テープPTがウエハWの表面全体に貼り付けられると、制御部60は、電磁バルブ53、54、56を全開にしてチャンバ7を大気開放する。当該大気開放により、ステップS5に係る保護テープの貼付け工程は完了する。
【0184】
ステップS6(マウントフレームの回収)
チャンバ7内において保護テープPTの貼付け工程が完了すると、マウントフレームの回収を開始する。ステップS6の工程は実施例1と同様である。すなわち旋回アーム36を反転させて下ハウジング33Bを載置ユニット5側のテープ載置位置に移動させる。保護テープPTが貼り付けられたマウントフレームMFは、ロボットアーム2Aによって下ハウジング33Bから搬送され、カセットC1の元位置に回収される。
【0185】
実施例3において示したように、マウントフレームMFをチャンバ7の内部に収納した状態でチャンバ7内を減圧させ、保護テープPTをマウントフレームMFに貼り付ける構成においても、本発明に係る構成を適用できる。マウントフレームMFを大気圧下で作成した場合、ウエハWと支持テープDTとの間に微細な気泡Arが巻き込まれている場合がある。この状態でマウントフレームMFの周囲を減圧させると、気泡Arが膨張してウエハの変形や破損、または支持テープDTの変形や劣化が発生しうる。
【0186】
本発明に係る装置では、チャンバ7の内部を減圧させる前に、扁平面を有しており保護テープPTを保持する保持テーブル37をウエハWに近接させる。そのため、気泡Arの膨張によってウエハWが押圧されたとしても、ウエハWは速やかに保持テーブル37の扁平面に受け止められる。すなわち膨張した気泡の押圧力によるウエハWの変形は保持テーブル37によって抑止されるので、減圧時における気泡Arの膨張に起因してウエハWの反りや破損が発生することを好適に回避できる。
【0187】
なおこのとき、保持テーブル37をウエハWに近接させることにより、保持テーブル37が保持している保護テープPTも平坦なウエハWに近接する。すなわち、保持テーブル37と保護テープPTとの間に巻き込まれている気泡が減圧によって膨張して保護テープPTがz方向へ押圧された場合であっても、保護テープPTは速やかにウエハWおよび抑止部材61によって抑止される。従って、気泡の膨張に起因して保護テープPTに凹凸やシワが発生し、保護テープPTがウエハWへ不均一に貼り付けられる等の不都合な事態をより確実に回避できる。
【0188】
さらに本発明に係る装置ではチャンバ7の内部を減圧させる前に、抑止部材61を支持テープDTに接触させる。そのため、気泡Arの膨張による支持テープDTの伸張は抑止部材61によって速やかに抑止される。従って、支持テープDTの伸張による支持テープDTの変形や劣化をより確実に防止できる。
【0189】
このように、保護テープPTまたは支持テープDTの両面に、扁平面を有する部材を近接または接触させた状態で減圧する構成とすることにより、粘着テープが面方向に押圧または変形されることは扁平面を有する部材によって抑止される。その結果、大気圧下において粘着テープに巻き込まれていた気泡の膨張に起因する、粘着テープまたはウエハWに対する悪影響を防止できる。
【0190】
なお実施例3のような、リングフレームfおよびウエハWの全体をチャンバ7の内部に収納する構成は、実施例2の構成にも適用できる。すなわち、表面に保護テープPTが予め貼り付けられているウエハWと、リングフレームfとをチャンバ7の内部に収納し、ウエハWの裏面とリングフレームfとにわたって支持テープDTを新たに貼り付けてマウントフレームMFを作成してもよい。
【0191】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0192】
(1)上記実施例の各々において、いずれもリングフレームfを用いる構成を例にとって説明したがこれに限られない。すなわち
図30に示すように、予め一方の面に第1の粘着テープT1が貼り付けられているウエハWの他方の面に対して、第2の粘着テープT2をチャンバ7の差圧によって貼り付ける工程であれば、本発明の構成を適用可能である。
【0193】
(2)上記実施例および変形例の各々において、2台の下ハウジング33B、33Cを備えた構成であったが、1台であってもよい。この場合、下ハウジングは、上記実施例と同様に旋回アーム36によって旋回移動させてもよし、直線レールに沿ってスライド移動させるよう構成してもよい。
【0194】
(3)上記実施例および変形例の各々において、保持テーブル37および抑止部材61の各々は、さらに加熱器を内蔵する構成であってもよい。一例として、
図24において抑止部材61にヒータ63が内蔵されている構成を示している。この場合、チャンバ7の内部で貼付け工程を実行する際に、保護テープPTおよび支持テープDTの各々を構成する粘着剤および基材は、加熱器によって加熱されて軟化する。その結果、各々の粘着テープをより変形させやすくなる。なお、保持テーブル37と抑止部材61のいずれか一方に加熱器を備える構成であってもよい。
【0195】
(4)上記実施例1に係るステップS1において、セパレータSが剥離された帯状の保護テープPTを保持テーブル37に載置させ、ウエハWの形状に切り抜く構成を例にとって説明した。しかし、粘着面を上向きに露出させた保護テープPTを保持テーブル37に載置させる構成であれば、ステップS1の工程はこれに限ることはない。
【0196】
実施例1の変形例の一例として、予めウエハWの形状に応じてプリカットされた保護テープPTを保持テーブル37に載置させる構成などが挙げられる。また、保持テーブル37に載置させた保護テープPTを枚葉に切断した状態でステップS1を完了させ、ステップS5の貼付け工程を行った後に保護テープPTをウエハWの外形に沿って切断してもよい。
【0197】
(5)本発明に係る構成は、
図34に示すように、予め一方の面に第1の粘着テープT1が貼り付けられているウエハWの他方の面に対して、第2の粘着テープT2を減圧下で貼り付ける構成に対して広く適用可能である。すなわち、ウエハWの少なくとも一方の面(好ましくは両方の面)に扁平面を有する部材を近接させた状態でウエハWの周囲を減圧させ、減圧状態で第2の粘着テープT2を貼り付ける構成であれば、減圧する構成はチャンバ7に限ることはない。
【0198】
また第2の粘着テープT2をウエハWに貼り付ける方法は、差圧を用いる構成に限ることはない。当該方法の他の例としては、
図33で示すような、第2の粘着テープT2(保護テープPT)を保持した扁平な部材(実施例3では保持テーブル37)をウエハWに押圧させるプレス操作によって貼り付ける構成や、
図35に示すような、チャンバ7の内部に収納された貼付けローラ91の転動によって貼り付ける構成などが挙げられる。
【0199】
貼付けローラ91を用いる構成の動作の例としては以下のようなものが挙げられる。すなわち保護テープPTを保持した保持テーブル37をウエハWに近接させた状態で、チャンバ7内部の減圧を行う。減圧完了後、保持テーブル37をさらに下降させつつ吸着保持を解除することにより、保護テープPTをウエハWに載置させる。そして貼付けローラ91を
図35において点線で示す位置から実線で示す位置へ転動させることにより、保護テープPTが押圧されてウエハWに貼り付けられる。
【0200】
(6)実施例3において、マウントフレームMFを抑止部材61に載置させることによって支持テープDTを抑止部材61に接触させる構成を例示したが、抑止部材61を接触させた状態で減圧する構成に限られない。すなわち扁平面61aを有する抑止部材61をマウントフレームMFに近接させた状態で減圧してもよい。この場合、扁平面61aから支持テープDTまでの距離を、所定値Lt3以下であるE2となるように制御した状態で減圧を開始し、減圧状態でテープの貼付けを行う。
【0201】
(7)実施例3において、保持テーブル37が第1抑止部材としての機能と保護テープPTを保持する機能とを兼ね備えた構成を例にとって説明したが、
図36に示すように、保持テーブル37とは別の部材として、扁平面を有する抑止部材93を備えてもよい。また実施例3において、抑止部材61は第2抑止部材としての機能と、ウエハWを保持するウエハ保持部としての機能とを兼ね備えているが、扁平面を有する抑止部材61と別の部材として、一例としてリング状のウエハ保持部95を備える構成であってもよい。変形例(7)において、抑止部材93は本発明における第1抑止部材に相当し、抑止部材61は本発明における第2抑止部材に相当する。
【0202】
変形例(7)に係る粘着テープ貼付け装置において第2粘着テープT2をウエハWの他方の面に貼り付ける場合、動作のフローチャートは実施例1に準ずる。まずは第2粘着テープT2を保持テーブル37に保持させる(ステップS1に相当)。次に、第1粘着テープT1が貼り付けられているウエハWをウエハ保持部95に保持させる(ステップS2に相当)。そして上ハウジング33Aと下ハウジングを接合させてチャンバ7を形成させる(ステップS3に相当)。
図36は、変形例(7)においてステップS3が完了した状態を示している。このとき、抑止部材61および抑止部材93はウエハWから離れている。
【0203】
そしてステップS4において、
図37に示すように、抑止部材61および抑止部材93をウエハWに近接させる。すなわち、ウエハWに貼り付けられている第1粘着テープT1の非粘着面に抑止部材61を近接(または接触)させるとともに、ウエハWの他方の面に抑止部材93を近接させる。その結果、抑止部材93とウエハWとの距離はD1から微小距離であるD2へとなる。また抑止部材61と第1粘着テープT1との距離は、E1から微小距離であるE2となる。
【0204】
ステップS5において、チャンバ7の内部を減圧させる。第1粘着テープT1とウエハWとの間に巻き込まれている気泡が減圧によって膨張し、第1粘着テープT1の一部がz方向へ押圧された場合であっても、第1粘着テープT1は速やかに抑止部材61によって抑止される。そのため、第1粘着テープT1の一部がz方向に伸張することによって、第1粘着テープT1が劣化する事態や第1粘着テープT1とウエハWとの密着性の低下する事態などを防止できる。またウエハWはz方向へ押圧されても抑止部材93によって抑止されるので、ウエハWの破損や変形などを防止できる。
【0205】
減圧が完了すると、保持テーブル37によるプレスや貼付けローラの転動などによって、第2粘着テープT2をウエハWに貼り付ける。このとき、必要に応じて抑止部材61および第1抑止部材93をウエハWから離間・退避させてから第2粘着テープT2の貼付けを行う。第2粘着テープT2の貼付けが完了した後にステップS6へ進み、両面に粘着テープが貼り付けられたウエハWを回収する。
【0206】
(8)本発明に係る、扁平面を有する部材を粘着テープTに近接させた状態で減圧を行う構成は、減圧下においてウエハWに粘着テープTを貼り付ける構成についても広く適用可能である。このような、ウエハWの一方の面に減圧下で粘着テープTを貼り付ける構成の例を
図38(a)に示している。
【0207】
変形例(8)に係る粘着テープ貼付け装置において、粘着テープTを保持する保持テーブル37は下ハウジング33Bに設けられており、吸着などによってウエハWを保持するウエハ保持部95は上ハウジング33Aに設けられている。本構成において、保持テーブル37は、z方向へ粘着テープTが押圧されて伸張することを抑止する抑止部材としての機能を兼ね備えている。
【0208】
ウエハ保持部95は、制御部60によって昇降移動が可能となる構成を備えている。粘着テープTは、平坦なサポートプレートGに貼り付けられている状態で保持テーブル37に保持される。サポートプレートGに対する粘着テープTの貼付けは、一般的に大気圧下で行われている。但しサポートプレートGを省略して粘着テープTを直に保持テーブル37に載置保持させてもよい。
【0209】
変形例(8)においてウエハWに粘着テープTを貼り付ける場合、粘着テープTが貼り付けられたサポートプレートGを保持テーブル37に保持させ、ウエハWをウエハ保持部95に保持させた後にチャンバ7を形成させる(ステップS1~S3)。そしてチャンバ7の内部を減圧する前に、
図38(b)に示すようにウエハ保持部95を下降させて粘着テープTの粘着面へ近接させる。当該近接制御により、ウエハ保持部95が保持しているウエハWと粘着テープTとの距離を微小距離D2となるように維持させる(ステップS4)。
【0210】
当該近接状態において、粘着テープTの粘着面とウエハWとは微小距離を空けて対向するように構成される。その後、粘着テープTにウエハ保持部95を近接させた状態でチャンバ7の内部を減圧し、減圧下において保持テーブル37およびサポートプレートGをウエハWに押圧させて粘着テープTをウエハWに貼り付ける(ステップS5)。
【0211】
減圧下においてウエハWに粘着テープTを貼り付ける構成において、ウエハ保持部95を近接させずに減圧した場合、z方向に広い空間が粘着テープTと接している状態で減圧が行われる。サポートプレートGに対する粘着テープTの貼付けは一般的に大気圧下で予め行われるので、粘着テープTとサポートプレートGとの間に微小な気泡Arが巻き込まれる場合がある(
図39(a))。
【0212】
従って、チャンバ7の内部を減圧すると、巻き込まれている気泡Arが膨張してz方向へ強い押圧力Psが発生する。その結果、ウエハ保持部95を粘着テープTへ近接させずに減圧した場合、粘着テープTの一部がz方向(粘着テープTの面に垂直な方向)に押圧されて大きく伸張し、粘着テープTに凹凸やシワが発生する(
図39(b))。その結果、凹凸やシワが発生している粘着テープTをウエハWに貼り付けることとなるので、ウエハWと粘着テープTとの密着性が低下する(
図39(c))。
【0213】
変形例(8)の構成において、粘着テープTの非粘着面は扁平な保持テーブル37が接触しており、粘着テープTの粘着面には扁平なウエハ保持部95(およびウエハW)が近接する状態が維持される。そのため、サポートプレートGと粘着テープTとの間に巻き込まれている気泡Arが減圧処理によって膨張した場合であっても、z方向へ押圧されようとする粘着テープTは速やかに保持テーブル37、またはウエハ保持部95(およびウエハW)によって抑止される(
図39(d))。また、z方向において粘着テープTに近接しているウエハ保持部95および保持テーブル37によって、z方向への気泡Arの膨張が抑止される。
【0214】
従って、減圧下で粘着テープTをウエハWに貼り付ける構成において、減圧処理時における気泡Arの膨張に起因して、ウエハWに貼り付ける前に粘着テープTに凹凸やシワが形成されることを回避できる。その結果、凹凸やシワの形成に起因する、粘着テープTの劣化、ウエハWに粘着テープTが不均一に貼り付けられる事態、サポートプレートGと粘着テープTとの位置ズレが発生する事態などをより確実に回避できる。
【0215】
なお、各実施例および各変形例に係る構成は、変形例(8)においても適用できる。例えば、保持テーブル37は粘着テープTに接触ではなく近接する構成であってもよい。また
図40に示すように、保持テーブル37と別に扁平面61aを有する抑止部材61を設けてもよい。この場合は抑止部材61を粘着テープTの非粘着面に近接または接触させ、抑止部材61の扁平面61aが粘着テープTの非粘着面を抑止している状態を維持しつつチャンバ7の減圧を行う。
【符号の説明】
【0216】
4 … テープ供給部
5 … 載置ユニット
6 … テープ切断機構
7 … チャンバ
8 … 抑止ユニット
9 … 剥離ユニット
10 … テープ回収部
20 … 剥離部材
22 … 貼付けローラ
23 … 切断ユニット
33A… 上ハウジング
33B、33C…下ハウジング
37 … 保持テーブル
60 … 制御部
61 … 抑止部材
77 … フレーム保持テーブル
91 … 貼付けローラ
93 … 抑止部材
95 … ウエハ保持部
PT … 保護テープ
W … 半導体ウエハ
f … リングフレーム
DT … 支持テープ