(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】包装体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230308BHJP
B65D 85/07 20170101ALI20230308BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230308BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230308BHJP
B32B 7/05 20190101ALI20230308BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D85/07
A61F13/15 200
A61F13/15 358
A61F13/15 355B
A61F13/15 352
B32B5/26
B32B7/05
B32B5/02 A
(21)【出願番号】P 2021182159
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2020209221
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高桑 穂貴
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171649(JP,A)
【文献】特開2012-143543(JP,A)
【文献】特開2004-166849(JP,A)
【文献】特開2020-032605(JP,A)
【文献】特開平09-076388(JP,A)
【文献】特開平10-234768(JP,A)
【文献】特開平11-350322(JP,A)
【文献】特開2006-334906(JP,A)
【文献】特開2007-307729(JP,A)
【文献】特開2015-165061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0077248(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0223388(US,A1)
【文献】米国特許第06372068(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16
15/18
15/20
15/22
15/24
15/26
15/28
15/30
15/32
15/34
15/36
15/38
15/40
15/42
15/44
15/46
15/48
15/50
15/52
15/54
15/56
15/58
15/60
15/62
15/64
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋と、該包装袋内に包装されたシート積層体とを有する包装体であって、
前記シート積層体は、融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを有し、
前記シート積層体は、第1繊維シートと第2シートとが隣接して接合された接合部を有し、
前記接合部においては、第2シートを構成する熱可塑性樹脂が、繊維形状を維持した状態にある第1繊維シートの構成繊維どうしの間隙を埋めており、
前記接合部の形成部位以外の部位に、第1繊維シートと第2シートと被酸化性金属を含む発熱体とが積層されている、包装体。
【請求項2】
包装袋と、該包装袋内に包装されたシート積層体とを有する包装体であって、
前記シート積層体は、融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂のみの繊維である第1繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを有し、
前記シート積層体は、第1繊維シートと第2シートとが隣接して接合された接合部を有し、
前記接合部においては、第2シートを構成する熱可塑性樹脂が、繊維形状を維持した状態にある第1繊維シートの構成繊維どうしの間隙を埋めている、包装体。
【請求項3】
第2シートが繊維シートであり、
前記接合部においては、第2シートの構成繊維の繊維形状が維持されていない、請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記シート積層体においては、第1繊維シートが該シート積層体の外面をなすように配されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
第1繊維シートの構成繊維として、第2繊維を更に含み、
第2繊維は融点が230℃以下である熱可塑性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記シート積層体は、500Pa以上5000Pa以下の圧力が付与された状態で収容されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項7】
前記シート積層体は衛生用品である、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の包装体の製造方法であって、
融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを、両シートが隣接する隣接部位を有するように重ね合わせ、その状態で、
前記隣接部位を加熱しながら加圧して、両シートを接合する、包装体の製造方法。
【請求項9】
一対のロール間に前記両シートを導入して、前記両シートを接合し、
前記ロールのうち少なくとも一方の周面に凹凸形状を有し、
前記凹凸形状を有する前記ロールの線圧の最小値P1(ただしP1は0超の値である)に対する、該線圧の最大値P2の比(P2/P1)が4以下である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
一方の前記ロールが超音波ホーンを備え、他方の前記ロールがアンビルロールである、請求項
9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のシート材を積層したシート積層体は、様々な用途で用いられている。特許文献1には、溶融開始温度の異なる合成繊維シートが間欠的に融着して一体化された積層シートが開示されている。また特許文献2には、樹脂浸透率が40%以下である不織布層と熱可塑性樹脂層とが積層され、接着強度が10g/25mm以上である積層シートが開示されている。
【0003】
特許文献3には、透湿防水シートの両面にポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布が積層されたシート本体と、低融点物質を含む熱融着フィルムとを備える積層シートが開示されている。また特許文献4には、異種素材から形成された複数の溶着対象物を超音波振動によって接合して床材を製造するための超音波溶着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-287682号公報
【文献】特開平11-151785号公報
【文献】特開2016-203580号公報
【文献】特表2019-509921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3に記載の積層シートは、構成材料として特定の樹脂を使用した場合に接合強度が不十分となる。また各特許文献に記載の積層シートは、これを包装した包装物とした場合において、開封後の積層シートの嵩高さに関して何ら検討されていない。
特許文献4に記載の技術は床材に関するものであり、繊維を含む積層シートに関して何ら検討されていない。
【0006】
本発明は、十分な接合強度を有し、開封後に嵩高さが回復しやすいシート積層体を有する包装体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、包装袋と、該包装袋内に包装されたシート積層体とを有する包装体に関する。
一実施形態では、前記シート積層体は、融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを有する。
一実施形態では、前記シート積層体は、前記第1繊維シートと前記第2シートとが隣接して接合された接合部を有する。
一実施形態では、前記接合部においては、第1繊維シートの構成樹脂が第2シートを構成する熱可塑性樹脂内に包埋されている。
【0008】
また本発明は、シート積層体が包装袋に包装された包装体の製造方法に関する。
一実施形態では、融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを、両シートが隣接する隣接部位を有するように重ね合わせる。
一実施形態では、両シートを重ね合わせた状態で、前記隣接部位を加熱しながら加圧して、両シートを接合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な接合強度を有し、開封後に嵩高さが回復しやすいシート積層体を有する包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の包装体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の包装体に含まれるシート積層体の断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、シート積層体の一実施形態における接合部断面の走査型電子顕微鏡の観察像である。
【
図4】
図4は、シート積層体の別の実施形態における接合部と、接合部以外の領域とを含む断面の走査型電子顕微鏡の観察像である。
【
図5】
図5は、包装体を製造する製造装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す製造装置における接合部形成部の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す製造装置における接合部形成部の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(a)~(e)はそれぞれ、接合部形成部の一実施形態におけるロール凸部の平面視形状を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の包装体は、包装袋と、該包装袋内に包装されたシート積層体とを有する。
【0012】
包装体の一実施形態が
図1に示されている。
図1に示す包装体1は、シート積層体10と、シート積層体10を包装する包装袋20とを有する。
シート積層体10は、後述するように、第1繊維シートと、第2シートとを少なくとも含むシート材の積層体である。
包装袋20の詳細は後述する。
【0013】
シート積層体10の構成の一実施形態を以下に説明する。
シート積層体10は、第1繊維シートと、第2シートとを少なくとも含んで構成されることが好ましい。
シート積層体10は、第1繊維シートと第2シートとが隣接して接合された接合部を有することが好ましい。
シート積層体10は、その外面を構成する第1面と、第1面の反対側に位置する外面を構成する第2面とを備えることが好ましい。
【0014】
シート積層体10の厚み方向断面視における一実施形態が
図2に示されている。
図2に示すシート積層体10は、第1繊維シート11と、第1繊維シート11の一方の面側に設けられた第2シート12とが一体化された複層構造のシートである。
図2に示す実施形態では、各シート11,12が互いに隣接して配された二層構造のシート積層体となっている。
本実施形態では、第1繊維シート11が第1面Fを含んで構成され、第2シート12が第2面Rを含んで構成される。
第2シート12は、第1繊維シート11の一方の面側全域に配されていてもよく、該面の一部にのみ配されていてもよい。
本実施形態におけるシート積層体10は、第1繊維シート11と第2シート12とが隣接して接合された接合部30が形成されている。
本実施形態においては両シート11,12の間や、各シート11,12の各外面に他の構成部材は存在していないが、両シート11,12の間や、各シート11,12の各外面に他の構成部材が配置されることは妨げられない。
シート積層体10を構成し得る他の構成部材については後述する。
【0015】
第1繊維シート11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を含む第1繊維を含んで構成されることが好ましい。つまり、第1繊維シート11は、第1繊維を含む繊維集合体である。
PET樹脂を含む繊維は典型的には剛性が高いので、PET樹脂を含む第1繊維シート11をシート積層体10の一構成部材として用いることによって、シート積層体10が包装や流通の過程でシート厚み方向に圧縮されてしまった場合でも、包装袋を開封して圧縮状態を解除したときに、シート積層体10の嵩高さが容易に回復し、肌触りが良好なものとなる。
シート積層体10を構成する他の構成部材による圧縮を防いで、シート積層体10の嵩高さを容易に回復させて、肌触りを更に良好にする観点から、シート積層体10においては、第1繊維シート11がシート積層体10の外面を構成するように配されていることが更に好ましい。つまり、第1繊維シート11は、シート積層体10の第1面F又は第2面Rを含んで構成することが更に好ましい。
【0016】
シート積層体の嵩高さを回復しやすくする観点から、第1繊維シート11に含まれるPET樹脂は、その融点が好ましくは230℃超である。
シートの取り扱い性の観点から、第1繊維シート11に含まれるPET樹脂は、その融点が好ましくは300℃以下である。
PET樹脂の融点を230℃超とするためには、その重合形態として、化学構造中にエチレンとテレフタル酸とが共重合していない部位を有するものを用いればよい。
【0017】
第2シート12は、所定の融点を有する熱可塑性樹脂を含んで構成されることが好ましい。所定の融点を有する熱可塑性樹脂含む第2シート12をシート積層体10の一構成部材として用いることによって、第1繊維シート11の構成繊維としてPET樹脂を含んだ場合であっても、該繊維の形状を維持しながら、両シート11,12を強く接合することができる。その結果、シート間の接合強度を向上させることができる。
【0018】
第2シート12に含まれる熱可塑性樹脂は、第2シートの構成樹脂中に第1繊維の構成樹脂を首尾よく包埋させる観点から、その融点が好ましくは230℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
シートの取り扱い性の観点から、第2シート12に含まれる熱可塑性樹脂は、その融点が好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
【0019】
各シート11,12を構成する樹脂の融点は、測定対象となる樹脂を加熱していったときに、該樹脂が熱分解する前に、固体から液体へ相変化することに起因する吸熱ピークを指す。
具体的には、樹脂の融点とは、示差走査熱量測定(DSC)で融解ピークが観察される温度のことであり、複数のピークが観察される場合は吸熱ピークが最も大きい温度のことを意味する。
融点が上述した方法で明確に測定できない場合、軟化点を融点の代わりに用いる。
【0020】
第2シート12に含まれ得る熱可塑性樹脂としては、該樹脂の融点が230℃以下であることを条件として、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂としては、ポリ乳酸、乳酸-ヒドロキシカルボン酸コポリマー等が挙げられる。
ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリパーフルオロエチレン等が挙げられる。
これらの樹脂は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、ポリオレフィン樹脂を用いることで、不織布やフィルムなどのシート状の加工がしやすく、肌にも優しいシート積層体を作ることができる。
なお、第2シート12においては、融点が230℃以下である熱可塑性樹脂が少なくとも含まれていれば良く、例えば融点が230℃超のPET樹脂が更に含まれることは妨げられない。
【0021】
シート積層体10は、
図1及び
図2に示すように、第1繊維シート11と第2シート12とが隣接して接合された接合部30を有することが好ましい。
接合部30は、シートどうしを圧着、接着又は融着することによって形成されている。シートの柔軟性と強度とを両立して使用感を更に高める観点から、接合部30は好ましくは熱融着によって形成されている。
接合部30においては、各シート11,12の境界面が存在しないか、又は境界面が不明瞭となっている。
シート積層体10における接合部30の形成部位は、厚み方向に凹陥していてもよく、平坦であってもよい。
【0022】
接合部30の平面視形状や形成数等の形成態様はシート積層体の用途に応じて適宜変更可能であるが、典型的には、シート積層体10の平面視において、線状若しくは散点状、又はこれらの組み合わせによって、一個又は二個以上形成されている。
接合部30が線状に形成されている場合、連続線又は不連続線であってもよく、また直線又は曲線であってもよい。また線幅は同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの形状は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
接合部30が散点状に形成されている場合、接合部30の平面視形状は、真円形及び楕円形等の円形状、矩形状及び六角形状等の多角形状、X形及びY形等のアルファベット様形状、格子形状、若しくはこれらの組み合わせとなっていてもよい。
図1に示す実施形態では、説明の便宜上、シート積層体10の平面視において、接合部30が散点状に形成された態様としているが、上述のとおり、接合部30の形成態様は散点状に限られず、任意の形態及びその組み合わせを採用することができる。
【0023】
第2シートの構成樹脂中に第1繊維の構成樹脂を首尾よく包埋させる観点から、接合部30は、第1繊維シート11と第2シート12とが隣接して接合されていることが好ましい。つまり、接合部30の形成位置において、第1繊維シート11と第2シート12との間に他の構成部材は存在しないことが好ましい。
接合部30の形成部位以外の部位においては、シート積層体に所望の機能を持たせるために、第1繊維シート11と第2シート12との間に他の構成部材を存在させてもよい。この形態における他の構成部材は、接合部30以外の部位において、第1繊維シート11及び第2シート12のうち少なくとも一方に接合されていることも好ましい。
【0024】
また、第2シート12における第1繊維シート11が配されていない側の面においては、接合部30の形成位置であるか否かを問わず、他の構成部材が存在してもよく、他の構成部材が存在していなくてもよい。この形態における他の構成部材は、接合部30の形成部位において、第1繊維シート11及び第2シート12とともに接合されていてもよく、接合部30以外の部位において、第1繊維シート11及び第2シート12のうち少なくとも一方に接合されていてもよい。
第1繊維シート11における第2シート12が配されていない側の面は、接合部30の形成位置であるか否かを問わず、他の構成部材が存在していてもよく、他の構成部材が存在していなくてもよい。第1繊維シート11における第2シート12が配されていない側の面に他の構成部材が存在している場合、他の構成部材は、第1繊維シート11の少なくとも一部がシート積層体10の最表面に露出するように配されていることが好ましい。
【0025】
シート積層体10に形成された接合部30は、第1繊維シート11の構成樹脂が第2シート12を構成する熱可塑性樹脂内に包埋された状態で形成されていることが好ましく、第1繊維シート11の構成繊維がその繊維形状を維持した状態で、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂内に包埋されている状態で形成されていることがより好ましい。
このような構成になっていることで、繊維シートの構成繊維として、例えば上述したPET樹脂等のような高融点樹脂を含む繊維を用いた場合であっても、両シート11,12を接合部30において十分に接合させて、シート間の接合強度が高いシート積層体10を得ることができる。
このような接合部30は、例えば後述する製造方法によって製造することができる。製造方法の一例として、第1繊維シートの融点と第2シートの融点の差を利用して、融点が低い第2シートのみが溶融するように加熱し、加圧する方法が挙げられる。この方法を採用することで、第1繊維シートに含まれる繊維は、繊維形状を保ったまま包埋される。第1繊維シートが繊維形状を保ったまま包埋されることで、層状の界面剥離が起こりにくくなり、アンカー効果によってシート間の接合強度が高くなる。これに対して、第1繊維シートと第2シートとの両方を溶融させた場合、2枚のシートが接合部30において層状となり、界面剥離が起こりやすい。
【0026】
「包埋されている」とは、第2シートを構成する熱可塑性樹脂が第1繊維シートの構成樹脂どうしの間隙に存在している状態のことであり、好ましくは第2シートを構成する熱可塑性樹脂が第1繊維シートの構成繊維どうしの間隙を埋めた状態をいう。
接合部30が包埋されている状態となっているか否かは、所定のサイズに切り出したシート積層体10の切断面において、接合部30が形成されている部位を走査型電子顕微鏡(日本電子製走査電子顕微鏡JCM-6000)を用いて倍率50~500倍で観察して、確認できる。
上述の方法で観察したときの接合部30の断面形状の一例が
図3に示されている。本実施形態の接合部30は、各シート11,12の境界が存在せず、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂が第1繊維シートの構成繊維11aどうしの間隙に存在することによって、両シート11,12を接合している。第1繊維シートの構成繊維11aと、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂との境界は明瞭である。この状態を
図3中、符号「11(12)」として例示している。
【0027】
第2シート12は、所定の融点を有する熱可塑性樹脂を含んで構成されるものであるところ、その形態は例えば繊維シートや樹脂フィルムであり、繊維シートであることが好ましい。
具体的には、第2シート12は、融点が好ましくは230℃以下の熱可塑性樹脂を含む繊維を含んで構成された繊維シートであることが好ましい。
第2シート12として、230℃以下の熱可塑性樹脂を含み、且つ繊維シートであることを組み合わせて採用することによって、第1繊維シート11の構成繊維が第2シート12を構成する熱可塑性樹脂内に包埋されやすくなる。
【0028】
第2シート12が繊維シートである場合、接合部30においては、第2シートの構成繊維の繊維形状が維持されていないことも好ましい。
つまり、接合部30における第2シート12は、その構成繊維が溶融する等して繊維間の境界が不明瞭となっているか、該境界が消失していることが好ましい。
このような構成となっていることによって、第1シートと第2シートとの剥離強度を更に高めることができる。
【0029】
第2シート12が繊維シートである場合における、シート積層体10の断面形状の一例が
図4に示されている。
本実施形態の接合部30は、各シート11,12の境界が存在せず、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂が第1繊維シートの構成繊維どうしの間に存在することによって、両シート11,12を接合している。また接合部30における第2シート12は、その構成繊維どうしの境界が消失している。
一方、接合部30が形成されていない部位である非接合部Nでは、各シート11,12の構成繊維の繊維形状はそれぞれ維持されており、両シート11,12間の境界S、並びに各シート11,12の構成繊維どうしの境界が維持されており、これらの境界が判別可能である。
このような接合部30は、例えば第2シート12として繊維シートを用い、後述する製造方法によって製造することができる。
【0030】
各シート11,12の構成樹脂の割合について以下に説明する。
第1繊維シート11を構成する第1繊維は、上述のとおり、融点が230℃超のPET樹脂を含む。
第1繊維に含まれる樹脂における前記PET樹脂の含有割合は、シート嵩高さの回復性を更に良好にする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
つまり、シート嵩高さの回復性を更に良好にする観点から、第1繊維は、融点が230℃超のPET樹脂のみからなる繊維であることが更に好ましい。
【0031】
融点が230℃超のPET樹脂の繊維中の含有割合は、赤外分光分析(JIS K0117:2017)、高速液体クロマトグラフィー(JIS K0124:2011)、及び核磁気共鳴分光法(JIS K0138:2018)のうち一種または二種以上の方法に基づいて定量分析を行う。測定に供するシート試料として、接合部が形成されておらず、また接着剤が付着していない部位を用いる。測定精度を担保する観点から、上述した2種以上の方法で測定することが好適である。
【0032】
第1繊維シート11は、第1繊維のみから構成されていてもよく、第1繊維に加えて、第1繊維以外の他の繊維である第2繊維を更に含んで構成されていてもよい。
第1繊維シート11に第2繊維を含む場合、第2繊維は融点が230℃以下である熱可塑性樹脂を含んで構成されていることが好ましく、第2繊維は融点が230℃以下である熱可塑性樹脂のみから構成されていることが更に好ましい。
融点が230℃以下である熱可塑性樹脂を含む第2繊維を第1繊維シート11に更に含むことによって、第1繊維に起因するシート嵩高さの回復性を維持しながら、接合部30におけるシートどうしの接合強度を第2繊維の熱可塑性樹脂によって更に高めることができる。これに加えて、第1繊維よりも比較的剛性が低い第2繊維によって、第1繊維シート11の構成繊維の毛羽立ちを低減することができるので、シート積層体の肌触りや、ハンドリング性、使用感が更に向上するという利点もある。
第2繊維に含まれる樹脂の融点がすべて230℃以下である場合、接合強度の向上及び繊維の毛羽立ちの低減を高いレベルで両立して達成できる点で更に有利となる。
【0033】
第1繊維シート11に第2繊維を含む場合、第2繊維を構成する熱可塑性樹脂は、上述した第2シート12に用いられる熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。
熱可塑性樹脂の溶融に伴う相溶性を良好にして、接合部30におけるシートどうしの接合強度を更に高める観点から、第1繊維シート11を構成する第2繊維に含まれる熱可塑性樹脂と、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂とは、互いに同種の樹脂を用いることが好ましく、具体的には、モノマーの繰り返し単位が互いに共通する部分を有する樹脂を含むことが更に好ましい。
【0034】
第1繊維シート11における第1繊維の含有割合は、シートの嵩高さの回復性の観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは45質量%以上ある。
また第1繊維シート11における第1繊維の含有割合は、100質量%以下である。
【0035】
第1繊維シート11における第2繊維の含有割合は、シートどうしの接合強度を更に高める観点から好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
また第1繊維シート11における第2繊維の含有割合は、シートの嵩高さの回復性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
【0036】
第1繊維シート11における繊維の含有割合は、以下の方法で測定することができる。詳細には、赤外分光法、核磁気共鳴法、熱分解ガスクロマトグラフ-質量分析法、溶媒への樹脂の溶解性の違いを利用した成分分離を行う方法、成分分離と元素分析とを組み合わせた方法、並びに成分分離と赤外分光法を組み合わせた方法のうち、一種又は二種以上の分析方法によって測定することができる。
【0037】
第2シート12が繊維シートである場合、第2シート12の構成繊維は、一種の繊維であってもよく、複数種の繊維であってもよい。一種の繊維は一種の樹脂又は複数の樹脂から構成されている。複数種の繊維は二種以上の繊維から構成されている。いずれの場合であっても、接合部における十分な接合強度を発現する観点から、第2シート12の構成繊維はいずれも、融点が230℃以下である熱可塑性樹脂を含んで構成されていることが好ましく、融点が230℃以下である熱可塑性樹脂のみから構成されていることが更に好ましい。
【0038】
第1繊維シート11を構成する繊維集合体としては、織布、不織布等の各種の繊維シートを用いることができる。
第2シート12の形態としては、上述した熱可塑性樹脂を含む樹脂フィルムや、織布、不織布等の各種の繊維シートなどが挙げられる。
これらのうち、第1繊維シート及び第2シートのうち少なくとも一方は不織布であることが好ましい。
【0039】
各シート11,12に不織布を用いる場合、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エレクトロスピニング不織布等の各種不織布を用いることができる。
シートの成形性及び嵩高さの回復性の両立の観点から、第1繊維シート11は、エアスルー不織布又はニードルパンチ不織布を用いることが好ましい。
【0040】
包装袋20は、典型的には、シート材によって構成されている。
包装袋20に用いられるシート材は、シート積層体10の構成部材やその物性などに応じて適宜変更することができるが、典型的には樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、単層又は多層のものや、該樹脂フィルムに無機物薄膜を積層したもの(以下、無機物含有フィルムともいう。)を用いることができる。
樹脂フィルムとしては、上述した熱可塑性樹脂を原料として含む樹脂フィルムが挙げられる。
無機物含有フィルムとしては、上述した樹脂フィルムにアルミニウム等の金属薄膜を積層したシートや、該樹脂フィルムに酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着したシート等が挙げられる。
無機物含有シートを包装袋20として用いることによって、シート積層体10を包装したときの遮光性や気密性を向上させることができる。
【0041】
シート積層体10は、所定の圧力が付与された状態で包装袋20内に収容されていることが好ましい。
詳細には、包装体1においてシート積層体10に付与された圧力は、保管時及び流通時における包装体1の省スペース化の観点から、好ましくは500Pa以上、より好ましくは1000Pa以上、更に好ましくは2000Pa以上である。
包装袋の開封後に、シート積層体の嵩高さを容易に回復させる観点から、好ましくは5000Pa以下、より好ましくは4000Pa以下、更に好ましくは3000Pa以下である。
【0042】
包装体1においてシート積層体10に付与された圧力は、以下の方法で測定することができる。詳細には、包装されたシート積層体に圧力センサを用いて加わる圧力を測定する。もしくは包装体の厚みや外形からシート積層体の厚みや大きさを算出し、その大きさに圧縮した際の反力からシート積層体に加わる圧力を測定することができる。
【0043】
シート積層体10は、上述した構成を有する限りにおいて、その形態や用途は特に限定されない。シート積層体10の形態としては、例えば、床や壁などの硬質表面を清掃するための清掃用シートや、衛生用品などが挙げられる。
【0044】
これらのうち、包装袋20に収容されるシート積層体10は、衛生用品であることが好ましい。衛生用品としてのシート積層体10が包装袋20に収容されていることによって、衛生用品の清潔さを維持することができ、また衛生用品の変質を防止できる。
衛生用品とは、その使用時において、使用者の肌に当接して用いられるものである。より具体的には、衛生用品は、使用者の眼や鼻、口、あるいは尿道や肛門などの排泄部、並びにその近傍に覆うように人体に直接着用して用いられる物品や、着用者の衣類に取り付けた状態で着用状態を維持する物品が挙げられる。
このような衛生用品の具体例としては、手指等の使用者の肌を清拭するための清拭用シート、吸収性物品、フェイスマスク、アイマスク、温熱具等が挙げられるが、これに限られない。
吸収性物品としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパッドなどが挙げられる。
衛生用品が、吸収性物品、フェイスマスク、アイマスク、又は温熱具などの着用物品である場合、シート積層体10における第1繊維シート11は、該衛生用品の肌当接面を構成することが好ましい。
【0045】
シート積層体10を構成しうる他の構成部材は、目的とする物品に応じて適宜変更可能である。他の構成部材としては、単層又は複層のシート材、吸水性材料を含む吸収体、被酸化性金属を含む発熱体等が挙げられる。これらの他の構成部材は、単独で又は複数種組み合わせて用いることができる。
【0046】
シート積層体10が吸収性物品である場合、他の構成部材としては、排泄された体液を保持可能な、吸水性材料を含む吸収体が挙げられる。吸収体は、典型的には吸水性材料を含む積層体又は積繊体で構成されている。吸水性材料は、典型的には、吸水性ポリマーや吸水性繊維である。吸収体は、第1繊維シート11若しくは第2シート12の外面に位置するか、又は接合部30の形成部位以外の部位において、第1繊維シート11と第2シート12との間に保持される。
【0047】
シート積層体10が温熱具である場合、他の構成部材としては、被酸化性金属を含む発熱体が挙げられる。発熱体は、典型的には、鉄粉等の被酸化性金属や、炭素材料、電解質及び水を含む混合組成物で構成されている。発熱体は、典型的には、接合部30の形成部位以外の部位において、第1繊維シート11と第2シート12との間に保持される。
【0048】
以下に、シート積層体10及び包装体1の製造方法を、
図2に示す二層構造のシート積層体10の形態を例にとり説明する。
シート積層体10の製造に好適に用いられる製造装置100は、典型的には、原反ロール110,120、接合部形成部130、及び包装体形成部140を備えている。
このような製造装置100の一例が
図5に示されている。
【0049】
まず、第1原反ロール110から、第1繊維シート11を構成する繊維シート原反を繰り出して、搬送方向MDに搬送する。
これとともに、第1原反ロール110とは別個に配された第2原反ロール120から、第2シート12を構成する繊維シート原反を繰り出して、搬送方向MDに搬送する。
そして、第1繊維シート11と第2シート12とを重ね合わせ、中間積層体1Sを形成する。本実施形態では、第2シート12の上面に第1繊維シート11を積層して重ね合わせた形態となっている。
このとき、第1繊維シート11と第2シート12との重ね合わせにおいては、両シート11,12が隣接する隣接部位を有するように行うことが好ましい。当該隣接部位は、接合部30の形成予定位置の一部又は全部を構成する。
この形態における中間積層体1Sは、搬送方向MDに延びる帯状のものであり、各シート11,12は互いに接合されていない。
【0050】
第1繊維シート11は、融点が230℃超のPET樹脂を含む繊維を含んで構成されることが好ましい。
第2シート12は、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含んで構成されることが好ましい。
第1繊維シート11及び第2シート12に関する説明は、上述の説明が適宜適用される。
【0051】
シート積層体10を製造するにあたり、第1繊維シート11及び第2シート12に加えて、例えば他の構成部材として第3シート(図示せず)を更に用いることができる。この場合、第1繊維シート11が第2シート12の原反上に積層して重ね合わせたるとともに、第3シートを構成する第3シート原反を第3原反ロール(図示せず)から繰り出して搬送方向MDに沿って搬送し、第1繊維シート11の上面又は第2シート12の下面に第3シートを積層して重ね合わせる。これによって、三層以上の複層構造を有する中間積層体1Sとすることができる。
この場合、第3原反ロールは、第1原反ロール110と第2原反ロール120とは別体である。
この形態における中間積層体1Sは、搬送方向MDに延びる帯状のものであり、各シートは互いに接合されていない。
この形態における中間積層体1Sは、少なくとも第1繊維シート11と第2シート12とが互いに隣接して構成されている。
【0052】
シート積層体10を製造するにあたり、第1繊維シート11及び第2シート12に加えて、例えば他の構成部材として吸収体又は発熱体(図示せず)を更に用いる場合ことができる。この場合、繰り出された第1繊維シート11の原反と繰り出された第2シート12の原反との間に他の構成部材を所定の間隔で配して、その状態で、第1繊維シート11と第2シート12とを隣接部位を有するように重ね合わせる。
このようにして、第1繊維シート11と第2シート12との間に他の構成部材が配された状態の中間積層体1Sを得ることができる。
【0053】
続いて、中間積層体1Sを接合部形成部130に導入して、第1繊維シート11と第2シート12とを隣接部位において加熱しながらシート厚み方向に加圧して、各シートを接合して一体化する。これによって、接合部30が隣接部位に形成される。
本実施形態における接合部30は散点状に形成されているが、接合部30の平面視形状は、目的とするシート積層体10に応じて適宜変更できる。
接合部30の形成は、第1繊維シート11と第2シート12との隣接部位の平面視全域に行ってもよく、当該隣接部位の平面視領域の一部にのみで行ってもよい。
【0054】
接合部30の形成においては、一対のロール間に中間積層体1Sを導入して、第1繊維シート11と第2シート12との隣接部位を接合することが好ましい。このような方法を採用することによって、シートどうしの接合時に発生するシート厚み方向への押荷重が少ない面積に付与されるので、第2シート12の原料樹脂がより溶融しやすくなり、第1繊維シートの構成繊維を効率的に包埋させることができるので、接合部30における第1繊維シート11との接合強度を更に高めることができる。
【0055】
接合部形成部130として、一対のロール131,132を備えた態様が
図5に例示されている。本実施形態は、回転体としてのロールによって、中間積層体1Sに対して熱及び圧力を付与して、加熱と加圧を同時に行う形態である。
同図に示す各ロール131,132は、その軸方向と搬送方向MDとが直交するように配されている。
同図に示す各ロール131,132は、その軸方向が互いに一致した状態で対向するように配されている。
一対のロール131,132のうち少なくとも一方は駆動源によって回転可能となっていることが好ましい。この場合、他方のロールは連れ回りであってもよく、駆動源によって回転可能となっていてもよい。
同図に示す各ロール131,132は、その回転方向と、搬送方向MDとが互いに一致した状態で配されている。
【0056】
接合部形成部130は、第1繊維シート11と第2シート12との隣接部位を加熱しながらシート厚み方向に加圧して、接合部30を形成可能な装置を採用することが好ましい。
このような装置としては、例えばヒートシール装置、インパルスシール装置、超音波シール装置等を用いることができる。
【0057】
第1繊維が包埋された接合部30を効率的に形成して、シートどうしの接合強度を更に高める観点から、隣接部位の加熱及び加圧においては、第2シート12に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度となるように加熱しながら加圧することが好ましい。このような態様とするためには、例えばヒートシールの温度を適宜変更したり、超音波の出力を適宜変更したりすることによって、調整することができる。
【0058】
接合部形成部130として、一対のロール131,132を備えた態様を採用する場合、両ロール131,132のうち、少なくとも一方のロールの周面に凹凸形状を有していることが好ましい。ロールの周面が凹凸形状となっていることによって、隣接部位の所望の位置に接合部30を形成することができ、得られるシート積層体10の品質が向上する。
一方のロールの周面にのみ凹凸形状が形成されている場合、凹凸形状を有していない他方のロールの周面は平坦である。
ロールの周面に凹凸形状を有する場合、該ロールの凸部は、典型的には、接合部30の形成位置と対応する。
【0059】
接合部形成部130として、一対のロール131,132を備えた態様を採用する場合、一方のロールが超音波ホーンを備え、他方のロールがアンビルロールであるものを用いることが好ましい。つまり、接合部形成部130として、一対のロールを備える超音波シール装置を用いることが好ましい。
超音波を付与することによって、融点が低い構成樹脂で構成された第2シートの構成樹脂を積層体の内部から加熱して効率的に溶融することができる。また超音波の付与を両ロール間で加圧しながら行うことによって、シートどうしの接合時に発生するシート厚み方向への押圧力を少ない面積に付与して、接合部30の形成にあたり、第1繊維シートの構成繊維を第2シートの樹脂に効率的に包埋させることができる。その結果、接合部30における両シート11,12の接合強度を更に高めることができる。
【0060】
接合部形成部130として、一対のロール131,132を備え且つ一方のロールが超音波ホーンを備える態様を採用する場合、超音波ホーンを備えた一方のロールの周面と、中間積層体1Sにおける第2シート12とが当接するように、中間積層体1Sを導入して接合することが好ましい。
つまり、本実施形態では、接合部形成部130としての第2ロール132に超音波ホーンを備えた状態で、中間積層体1Sに対して超音波を付与できるようになっていることが好ましい。
このような配置で接合を行うことによって、融点が低い第2シート12が超音波の発生源に近い側に配された状態となるので、第2シート12が更に効果的に溶融しやすくなり、形成された接合部30における第1繊維シートの構成繊維の包埋性が更に向上する。その結果、両シート11,12の接合強度を更に高めることができる。
【0061】
接合部形成部130として、超音波ホーンを備える態様を採用した場合における、両シート11,12の接合態様が
図6及び
図7に模式的に示されている。
図6に示す実施形態では、接合部形成部130として、周面に凹凸形状を有するアンビルロール131と、アンビルロール131に対向するように固定配置された平板状の超音波ホーン139とを備える。すなわち、本実施形態は固定式の超音波シール装置である。
【0062】
図6に示す実施形態では、中間積層体1Sが接合部形成部130内に導入されると、アンビルロール131における凸部135によって中間積層体1Sがシート厚み方向に加圧される。このように形成された接合部30は、実使用に耐えうるシートの接合強度を達成することができる。
【0063】
図7に示す実施形態では、一対のロール131,132を備え且つ一方のロールが超音波ホーンを備える態様となっている。詳細には、一方のロール131は、その周面に凹凸形状を有するアンビルロールであり、他方のロール132は、その周面が平坦であり、超音波ホーンを備えるロールである。すなわち、本実施形態は回転式の超音波シール装置である。
また他の実施形態として、他方のロール132として、その周面が平坦な熱エンボスロール、すなわち回転式のヒートシール装置を採用してもよい。
回転式の超音波シール又はヒートシールの形態である場合、両シート11,12におけるロールとの接触部位にのみ熱及び圧力が付与される。
これらのうち、接合部の形成効率の向上に起因するシート積層体10の製造効率の向上の観点から、超音波ホーンを備えるロールであることが好ましい。
【0064】
図7に示す実施形態のように、回転式のシール装置を採用することによって、外部からの加熱によって溶融した構成樹脂がシートの平面方向に拡散しやすくなったり、シート厚み方向への押荷重以外の摩擦力やせん断力が発生することに起因する熱等の伝達が不良となったりすることを防いで、繊維が包埋されるような構造を有する接合部を効率的に形成することができる。その結果、接合強度を高めることができる。本実施形態は、特に接合部30が形成される中間積層体の搬送速度を高くした場合でも、繊維が包埋されるような構造を有する接合部を効率的に形成できる点で有利である。また、例えば長尺帯状等の形状を有するシート積層体の連続生産性の点でも効率が高く有利である。
【0065】
図7に示す本発明の好適な一実施形態では、中間積層体1Sが接合部形成部130内に導入されると、アンビルロール131における凸部135によって中間積層体1Sがシート厚み方向に加圧される。これとともに、中間積層体1Sの搬送速度に対応するように、各ロール131,132が回転する。これにより、
図6に示す実施形態に比べて、中間積層体1Sと他方のロール132との接触面積を小さくすることができる。その結果、製造効率の向上の観点から、中間積層体1Sの搬送速度を増加させた場合でも、中間積層体1Sと超音波ホーンを備えたロール132との間において、アンビルロール131の加圧方向と交差する方向に生じる摩擦力を低減できる。そして、アンビルロール131における凸部135に対応する位置である接合部30の形成位置において、第1繊維シート11と第2シート12との搬送方向のずれを抑制できる。また、アンビルロール131における凸部135と他方のロール132の周面との間に生じる加圧力を高くすることができる。
この状態で形成された接合部30は、両シート11,12におけるロールとの接触部位にのみ熱及び圧力が付与されるので、接合の際に両シート11,12に付与される圧力が高くなる。それに起因して、第2シートの構成樹脂の溶融が効率的に進行し、シートの接合強度をより高く発現させることができる。これに加えて、中間積層体1Sの搬送速度に対応するように各ロール131,132が回転するので、接合部30の寸法にブレが生じにくくなり、接合部30を所望の形状で形成することができる。
したがって、シートどうしを接合する際に、一対のロール131,132を備え且つ一方のロールが超音波ホーンを備える態様を採用することは、シート接合強度のさらなる向上に加えて、接合部30の寸法精度を高めて、品質の高い製品が得られる点で有利である。
【0066】
接合部形成部130として、少なくとも一方のロールの周面に凹凸形状を有している態様を用いる場合、凹凸形状を周面に有するロールの線圧の最小値P1(ただしP1は0超の値である)に対する、線圧の最大値P2の比(P2/P1)が所定の値以下となるように、接合部30を形成することが好ましい。
周面に凹凸形状を有するロールの線圧は、典型的には、凹凸形状を周面に有するロールの凸部の位置において発生することになる。したがって、ロールの線圧は、凹凸形状を周面に有するロールの凸部における、搬送方向MDに直交する方向に沿う寸法に基づく。
【0067】
各接合部の強度を一定にして、良好な外観を有するシート積層体を得る観点から、P2/P1比は、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。
P2/P1比は、1以上が現実的である。すなわち本形態は、最小値P1と最大値P2とが同一である場合も包含する。
特に、シート積層体が吸収性物品、フェイスマスク、アイマスク、又は温熱具などの着用物品である場合には、着用者の動きに応じて外力がシート積層体に付与されるので、強度の発現は実使用において重要である。
【0068】
最小値P1は、好ましくは30N/m以上、更に好ましくは50N/m以上であり、好ましくは150N/m以下、更に好ましくは120N/m以下である。
最大値P2は、好ましくは50N/m以上、更に好ましくは100N/m以上であり、好ましくは200N/m以下、更に好ましくは150N/m以下である。
最小値P1及び最大値P2は、ロール間の間隔や、凹凸形状を有するロールの凸部の寸法を適宜調整することによって、変更することができる。
【0069】
図8(a)~(e)には、凹凸形状を周面に有するロールの凸部135の平面視形状が例示されている。同図では、搬送方向MDに直交する方向を符号CDとして示している。
図8(a)は、凸部135の形状が、長辺の延びる方向とCD方向とが一致した矩形状の形態となっている。この場合、最小値P1と最大値P2とは互いに同一である。
図8(b)は、凸部135の形状が、真円形状の形態となっている。この場合、最小値P1と最大値P2とは互いに同一である。
図8(c)は、凸部135の形状が、波形形状の形態となっている。この場合、最小値P1と最大値P2とは互いに異なっている。
図8(d)は、凸部135の形状が、内部に空洞を有しない台形形状の形態となっている。この場合、最小値P1と最大値P2とは互いに異なっている。
図8(e)は、凸部135の形状が、内部に空洞を有する台形形状の形態となっている。この場合、最小値P1は図示された位置において判断され、最大値P2は図示された位置の合計において判断される。
【0070】
接合部形成部130を通過して得られた本実施形態の中間積層体1Sは、接合部30が形成された長尺帯状のシート1Tとなる。この長尺帯状のシート1Tを所定の寸法となるように切断等の加工(図示せず)を施すことによって、接合部30が形成された枚葉の形態のシート積層体10を得ることができる。
また、目的とする製品に応じて、前記長尺帯状シート1Tを切断する前に、又は切断した後で、他の構成部材を接合などによって取り付けて、シート積層体10としてもよい(図示せず)。
【0071】
続いて、得られたシート積層体10を、別工程で作成した包装袋20内に収容して、シート積層体10が包装袋20に包装された包装体1を得る(
図5参照)。
詳細には、枚葉の形態のシート積層体10をベルトコンベア等の搬送装置150を用いて搬送方向MDに搬送し、該シート積層体10を包装袋20内に収容する。このとき、包装袋20は、シート積層体10の収容が可能なように、開口部が設けられていることが好ましい。
そして、シート積層体10を収容した包装袋20の開口部を、ヒートシールなどの公知の接合方法にて接合し、シート積層体10を包装する。
【0072】
シート積層体10を包装袋20で包装する際に、所定の圧力を包装袋20の外部から付与した状態で包装することが好ましい。
詳細には、包装時に付与される圧力は、得られる包装体1の保管時及び流通時における省スペース化の観点から、好ましくは500Pa以上、より好ましくは1000Pa以上、更に好ましくは2500Pa以上である。
シート積層体の一実施形態として、例えば酸化反応を利用する発熱体を含む温熱具とする場合、包装時に包装袋内の空気の混入を防ぎ、得られる包装物の密封性を高める観点から、包装時に付与される圧力は、好ましくは500Pa以上、より好ましくは1000Pa以上、更に好ましくは2500Pa以上である。
【0073】
包装袋の開封後に、シート積層体の嵩高さを容易に回復させる観点から、包装時に付与される圧力は、好ましくは5000Pa以下、より好ましくは4000Pa以下、更に好ましくは3000Pa以下である。
上述した圧力の付与は、
図5に例示されているように、搬送装置150に対向配置されるニップロール160を設けて、搬送装置150とニップロール160との間隔を適宜調整して、シート積層体10を収容した包装袋20を搬送装置150とニップロール160との間に導入して行うことができる。
【0074】
以上の工程を経て、包装体1を得ることができる。この包装体1は、これをこのままで、又は包装体1を別体の梱包資材に複数収容した状態で、保管及び流通させることができる。
【0075】
上述した各実施形態では、包装体1は、シート積層体10が包装袋20に個別包装された形態を例にとり説明したが、この形態に限られない。例えば、包装体1は、1つの包装袋20内に複数のシート積層体10を収容して包装されていてもよい。この場合であっても、シート積層体10は、上述の好適な圧力が付与された状態で収容されていることが好ましい。
包装されるシート積層体10は折り曲げられた状態で包装されていてもよい。
【0076】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0077】
上述した実施形態に関し、本発明は、更に以下の包装体及びその製造方法を開示する。<1>
包装袋と、該包装袋内に包装されたシート積層体とを有する包装体であって、
前記シート積層体は、融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む第1繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを有し、
前記シート積層体は、前記第1繊維シートと前記第2シートとが隣接して接合された接合部を有し、
前記接合部においては、第1繊維シートの構成樹脂が第2シートを構成する熱可塑性樹脂内に包埋されている、包装体。
【0078】
<2>
前記接合部においては、第1繊維シートの構成繊維がその繊維形状を維持した状態で、第2シートを構成する熱可塑性樹脂内に包埋されている、前記<1>に記載の包装体。
<3>
第2シート12に含まれる熱可塑性樹脂は、その融点が230℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である、前記<1>又は<2>に記載の包装体。
<4>
第2シート12に含まれる熱可塑性樹脂は、その融点が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である、前記<1>~<3>のいずれか一に記載の包装体。
<5>
第2シート12に含まれ得る熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上である、前記<1>~<4>のいずれか一に記載の包装体。
<6>
前記第2シートが繊維シートであり、
前記接合部においては、前記第2シートの構成繊維の繊維形状が維持されていない、前記<1>~<5>のいずれか一に記載の包装体。
【0079】
<7>
前記第2シートが繊維シートであり、
前記接合部が配されていない非接合部においては、前記第2シートの構成繊維の繊維形状が維持されている、前記<1>~<6>のいずれか一に記載の包装体。
<8>
前記シート積層体においては、前記第1繊維シートが該シート積層体の外面をなすように配されている、前記<1>~<7>のいずれか一に記載の包装体。
<9>
第1繊維に含まれる樹脂における前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合は、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは100質量%である、前記<1>~<8>のいずれか一に記載の包装体。
<10>
前記第1繊維は融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂のみの繊維である、前記<1>~<9>のいずれか一に記載の包装体。
<11>
前記第1繊維シートの構成繊維として、第2繊維を更に含み、
前記第2繊維は融点が230℃以下である熱可塑性樹脂を含む、前記<1>~<10>のいずれか一に記載の包装体。
【0080】
<12>
前記第2繊維を構成する熱可塑性樹脂は融点が230℃以下のもののみである、前記<11>に記載の包装体。
<13>
第1繊維シート11を構成する第2繊維に含まれる熱可塑性樹脂と、第2シート12を構成する熱可塑性樹脂とは、互いに同種の樹脂を含む、前記<11>又は<12>に記載の包装体。
<14>
前記シート積層体は、500Pa以上5000Pa以下、好ましくは1000Pa以上、より好ましくは2000Pa以上の圧力が付与された状態で収容されている、前記<1>~<13>のいずれか一に記載の包装体。
<15>
前記シート積層体は、4000Pa以下、好ましくは3000Pa以下の圧力が付与された状態で収容されている、前記<1>~<14>のいずれか一に記載の包装体。
【0081】
<16>
前記第1繊維シート及び/又は第2シートは不織布である、前記<1>~<15>のいずれか一に記載の包装体。
<17>
前記包装袋は樹脂フィルムである、前記<1>~<16>のいずれか一に記載の包装体。
<18>
前記接合部の形成部位以外の部位において、前記第1繊維シートと前記第2シートとの間に他の構成部材が配されている、前記<1>~<17>のいずれか一に記載の包装体。<19>
前記構成部材は、吸水性材料を含む吸収体、又は被酸化性金属を含む発熱体である、前記<18>に記載の包装体。
<20>
前記シート積層体は衛生用品である、前記<1>~<19>のいずれか一に記載の包装体。
【0082】
<21>
前記衛生用品が着用物品である、前記<20>に記載の包装体。
<22>
前記シート積層体における第1繊維シートが、該衛生用品の肌当接面を構成する、前記<20>又は<21>に記載の包装体。
【0083】
<23>
シート積層体が包装袋に包装された包装体の製造方法であって、
融点が230℃超のポリエチレンテレフタレート樹脂を含む繊維を含んで構成される第1繊維シートと、融点が230℃以下の熱可塑性樹脂を含む第2シートとを、両シートが隣接する隣接部位を有するように重ね合わせ、その状態で、
前記隣接部位を加熱しながら加圧して、両シートを接合する、包装体の製造方法。
<24>
前記隣接部位を、前記第2シートに含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度となるように加熱しながら加圧する、前記<23>に記載の製造方法。
<25>
一対のロール間に前記両シートを導入して、前記両シートを接合する、前記<23>又は<24>に記載の製造方法。
【0084】
<26>
前記ロールによって、前記両シートに熱及び圧力を付与する、前記<25>に記載の製造方法。
<27>
前記両シートにおける前記ロールとの接触部位にのみ熱及び圧力を付与する、前記<25>又は<26>に記載の製造方法。
<28>
前記ロールのうち少なくとも一方の周面に凹凸形状を有する、前記<25>~<27>のいずれか一項に記載の製造方法。
<29>
前記凹凸形状を有する前記ロールの線圧の最小値P1(ただしP1は0超の値である)に対する、該線圧の最大値P2の比(P2/P1)が4以下である、前記<28>に記載の製造方法。
【0085】
<30>
一方の前記ロールが超音波ホーンを備え、他方の前記ロールがアンビルロールである、前記<25>~<29>のいずれか一項に記載の製造方法。
<31>
前記超音波ホーンを備えた前記ロールの周面と、前記第2シートとが当接するように前記両シートを導入して、前記両シートを接合する、前記<30>に記載の製造方法。
<32>
500Pa以上5000Pa以下、好ましくは1000Pa以上、より好ましくは2500Pa以上の圧力を付与した状態で、接合された前記両シートを前記包装袋で包装する、前記<23>~<31>のいずれか一項に記載の製造方法。
<33>
4000Pa以下、好ましくは3000Pa以下の圧力を付与した状態で、接合された前記両シートを前記包装袋で包装する、前記<23>~<32>のいずれか一項に記載の製造方法。
【0086】
<34>
前記シート積層体を連続生産する、前記<23>~<33>のいずれか一項に記載の製造方法。
<35>
前記シート積層体として着用物品である衛生用品を製造する、前記<23>~<34>のいずれか一項に記載の製造方法。
<36>
前記シート積層体が衛生用品であり、
前記シート積層体における第1繊維シートが、該衛生用品の肌当接面を構成するように製造する、前記<23>~<35>のいずれか一項に記載の製造方法。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
以下の説明では、表中を含め、融点が230℃超のPET樹脂を「高PET」ともいい、融点が230℃以下のPET樹脂を「低PET」ともいう。
表1中、低PETの融点は80℃、PPの融点は160℃、エチレン-プロピレン共重合体の融点は160℃であった。二種の繊維が含まれているものは、全て50質量%ずつであった。
また表1中、「-」で示す欄は、非含有又は評価を実施していないことを表す。
また表1中、繊維の説明における「質量%」は、シート中の繊維の質量割合を示す。
【0088】
〔実施例1〕
以下の表1に示す樹脂組成及び坪量を有する、第1繊維シート11及び繊維シートである第2シート12を用いた。本実施例の第1繊維シート11は、融点が230℃超のPET樹脂繊維のみからなる繊維集合体であり、第2シートは融点が170℃のPP繊維のみからなる繊維集合体であった。
第1繊維シート11と第2シートとを隣接部位を有するように重ね合わせて、インパルスシール装置(富士インパルス株式会社製、FAシリーズ)を用いて、該隣接部位を接合して、接合部30を形成した。接合部30の形成パターンは、連続的なパターンである複数条の連続線状(ストライプ状)とした。
その後、他の構成部材として、以下の表1に示す樹脂を含む繊維シートを、第1繊維シート11における第2シートが存在しない側の面に配して接合し、三層構造のシート積層体10を得た。
そして、シート積層体10をアルミ及びポリエチレン製の包装袋20に収容し、シート積層体10を収容した包装袋20の外面から1500Paの圧力を付与しながら、包装袋の四方をシール加工して密封した。
これによって、シート積層体10が包装袋20に包装された包装体1を得た。
【0089】
〔実施例2~3〕
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11を用いて接合部30を形成した以外は、実施例1と同様の方法にて包装体1を得た。
【0090】
〔実施例4~5〕
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11及び繊維シートである第2シート12を用い、且つ
図5に示すような構成を有する回転式の超音波シール装置を用いて、
図8(c)に示す形状の接合部30を形成した以外は、実施例1と同様の方法にて包装体1を得た。
【0091】
〔比較例1〕
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11及び繊維シートである第2シート12を用い、ヒートシール装置を用いて、
図8(d)に示す形状の接合部30を形成した。
そして、他の構成部材として、以下の表1に示す樹脂を含む繊維シートを、第1繊維シート11における第2シートが存在しない側の面に配して接合し、三層構造のシート積層体10を得た。
これ以外は、実施例1と同様の方法にて包装体1を得た。
【0092】
〔参考例1~13〕
本参考例は、シート接合強度の評価を主な目的として、シート積層体10そのものを製造した例である。本参考例は、シート積層体10が包装袋20内に包装されていない。
【0093】
(1)参考例1
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11及び繊維シートである第2シートを用い、且つ
図4に示すような構成を有する固定式の超音波シール装置を用いて、
図8(d)に示す形状の接合部30を形成した。
本参考例は、接合部30の形成の際に、超音波ホーンと第2シート12とが当接するように、超音波シール装置に導入した。
そして、他の構成部材として、以下の表1に示す樹脂を含む繊維シートを、第1繊維シート11における第2シートが存在しない側の面に配して接合し、三層構造のシート積層体10を得た。
【0094】
(2)参考例2
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11及び繊維シートである第2シートを用い、且つ
図5に示すような構成を有する回転式の超音波シール装置を用いて、
図8(c)形状の接合部30を形成した。
本参考例は、接合部30の形成の際に、超音波ホーンを備えたロール周面と第2シート12とが当接するように、超音波シール装置に導入した。
そして、他の構成部材として、以下の表1に示す樹脂を含む繊維シートを、第1繊維シート11における第2シートが存在しない側の面に配して接合し、三層構造のシート積層体10を得た。
【0095】
(3)参考例3~11
実施例1の内容に代えて、以下の表1に示す第1繊維シート11及び繊維シートである第2シートを用い、且つ
図5に示すような構成を有する回転式の超音波シール装置を用いて、
図8(c)に示す形状の接合部30を形成した。
参考例4、6、8、9及び11においては、接合部30の形成の際に、超音波ホーンを備えたロール周面と第1繊維シート11とが当接するように、超音波シール装置に導入した。
参考例3、5、7及び10においては、接合部30の形成の際に、超音波ホーンを備えたロール周面と第2シート12とが当接するように、超音波シール装置に導入した。
そして、他の構成部材として、以下の表1に示す樹脂を含む繊維シートを、第1繊維シート11における第2シートが存在しない側の面に配して接合し、三層構造のシート積層体10を得た。
【0096】
〔第1繊維シートの構成樹脂の包埋の有無〕
接合部30の形成部位において、第1繊維シートの構成樹脂が樹脂内に包埋されているか否かを、上述の方法で観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
A:第1繊維シートの構成繊維の繊維形状が維持された状態で、熱可塑性樹脂内に包埋された状態で接合部30が形成されている。
B:第1繊維シートの構成繊維の繊維形状が不明瞭となっているか、消失している状態で接合部30が形成されている。
C:接合部が形成されていないか、または後述の方法で測定される第1繊維シートと第2シートとのシール強度が2N/50mmに満たない。
【0097】
〔嵩高さ回復率の評価〕
実施例及び比較例の包装体1につき、開封後のシート積層体10の嵩高さの回復率を以下の方法によって評価した。詳細には、包装前のシート積層体の厚みW1と、包装後24時間以上保存し包装袋から開封直後のシート積層体の厚みW2とをそれぞれ、定圧厚さ測定装置(株式会社テクロック製、J-Type PG-11)を用いて、3.7gf/cm2の圧力を付与して測定し、(W2/W1)×100(%)とした値を回復率として算出した。回復率の数値が高いほど、包装袋から開封したときにすぐに嵩高さが回復して、柔軟性及び使用感に優れることを示す。結果を以下の表1に示す。
【0098】
〔シール強度の評価〕
実施例、比較例及び参考例のシート積層体10につき、第1繊維シートと第2シートとの接合強度を以下の方法によって評価した。シール強度の値が高いほど、接合強度が高いものである。結果を以下の表1に示す。
詳細には、シート積層体10から、接合部30の形成位置を含むように、長さ50mm×幅50mmの寸法の測定サンプルを、該サンプルの周縁と接合部のエッジとが一致するように切り出した。
次いで、測定サンプルの長手方向の一端において、各シートを引張試験機の各チャックに固定する。引張試験機として、株式会社島津製作所のオートグラフAGS-Xシリーズを用いる。チャック間距離は48mmとした。
そして、引張速度500mm/minで第1繊維シートと第2シートとの剥離を行い、最大強度(N)を測定した。測定は3回行い、最大強度の算術平均値をシール強度(N)とした。
【0099】
〔肌触りの評価(1):接触時の肌触り〕
実施例及び比較例の包装体1につき、開封後のシート積層体10を目元に押し当てた瞬間の感触について官能評価を行った。評価者は、シート積層体の目元に対する感触を評価する業務に3年以上従事する5人又は6人の女性とし、比較例1を対照例として実施例について相対評価を行った。実施例のほうが良いと答えた場合には+10点、比較例1のほうが良いと答えた場合には-10点とし、その合計点数を評価者の人数で除した算術平均点を算出した。点数が高いほど、シート積層体と肌との接触時における感触が良好で、使用感に優れることを示す。結果を以下の表1に示す。
【0100】
〔肌触りの評価(2):装着状態での肌触り〕
実施例及び比較例の包装体1につき、開封後のシート積層体10を目元に押し当てた状態を維持し、そのときの感触について官能評価を行った。評価者は、シート積層体の目元に対する感触を評価する業務に3年以上従事する5人又は6人の女性とし、比較例1を対照例として実施例について相対評価を行った。実施例のほうが良いと答えた場合には+10点、比較例1のほうが良いと答えた場合には-10点とし、その合計点数を評価者の人数で除した算術平均点を算出した。点数が高いほど、シート積層体の使用時における感触が良好で、使用感に優れることを示す。結果を以下の表1に示す。
【0101】
【0102】
表1に示すように、本実施例の包装体1は、シート積層体10に圧力が付与された状態で包装された場合であっても、シート積層体10の嵩高さが包装袋の開封後に容易に回復し、柔軟性に富むものとなる。
また、実施例及び参考例に示すように、シート積層体10にPET繊維を使用した場合であっても、シートの接合強度をより強く発現させることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 包装体
10 シート積層体
11 第1繊維シート
12 第2シート
20 包装袋
30 接合部
100 製造装置