(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】乳酸ベースのホットメルト接着剤の為のタッキファイヤー
(51)【国際特許分類】
C09J 167/04 20060101AFI20230308BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C09J167/04
C08G63/06
(21)【出願番号】P 2021534992
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2019086006
(87)【国際公開番号】W WO2020127521
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】521262909
【氏名又は名称】ヘンケル エージー アンド シーオー.ケージーエーエー
(73)【特許権者】
【識別番号】521262910
【氏名又は名称】インジェビティ ユーケー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ブラーム,ケヴィン ベルナルデュス
(72)【発明者】
【氏名】シェーケンス,クリス フランソワ フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ファン ストリエン,リック ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ステーフェン,レムコ ヨハネス アントニウス
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532844(JP,A)
【文献】特表2018-532845(JP,A)
【文献】特開2009-024058(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082639(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤(HMA)であって、
乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂、
示差走査熱量測定(DSC)によって決定される少なくとも5J/グラムの融解エンタルピーを有する結晶性乳酸オリゴマーワックス、及び
非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー
を含み、
該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーが、
DSCによって決定される最大2.5J/gの融解エンタルピーによって定義される結晶化度を有し、且つa)乳酸モノマーとb)3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含み、該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの該非晶質重合生成物が、
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される1000~10000g/モルの数平均分子量(M
n)を有することを特徴とする、上記ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの前記多官能性重合開始剤が、3以上のヒドロキシ基
を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの前記非晶質重合生成物が、
GPCによって決定される2000~4000g/モル
の数平均分子量(M
n)を有する、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの前記多官能性重合開始剤が、D-ソルビトール、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールから選択され
る、請求項2又は3に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの前記乳酸モノマーが、L-乳酸、D-乳酸、L-ラクチド、D-ラクチド及びメソ-ラクチドの1以上から誘導され
る、請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記非晶質重合生成物において、前記多官能性重合開始剤のヒドロキシ又はアミノ基当たりの乳酸モノマーの比が、ヒドロキシ又はアミノ基1モル当たり2~25モル
の乳酸である、請求項1~5のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
ホットメルト接着剤の全重量に対して、30~80重量%の前記コポリマー樹脂、0.5~30重量%の前記オリゴマーワックス、及び5~45重量%の前記非晶質タッキファイヤー
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
核剤、抗酸化剤及び安定化剤から選択される1以上の追加の成分を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
前記コポリマー樹脂が第1のブロックと第2のブロックとを含むブロックコポリマーであり、
該第1のブロックは、乳酸とカプロラクトンとの非晶質コポリマーであり、及び
該第2のブロックは、乳酸の結晶性ポリマーである、
請求項1~8のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤(HMA)における使用の為の非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーであって、a)乳酸モノマーとb)4以上のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含み、ここで、前記非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーは、
DSCによって決定される最大2.5J/gの融解エンタルピー、及び
DSCによって決定される少なくとも30℃のガラス転移温度によって定義される結晶化度を有し、
ここで、
i)前記非晶質重合生成物が、GPCによって決定される1000~4000g/モルの数平均分子量(M
n
)を有し、又は
ii)前記非晶質重合生成物
が、GPCによって決定される1000~10000g/モルの数平均分子量(M
n)を有し
、及び、該非晶質重合生成物のL-乳酸モノマーとD-乳酸モノマーとの比が、50:50~99.9:0.1である、
前記非晶質ポリ乳酸タッキファイヤー。
【請求項11】
請求項10に記載の非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーを調製する方法であって、a)乳酸及び/又はラクチドと、b)4以上のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤とを、
i)GPCによって決定される1000~4000g/モルの数平均分子量(M
n
)を有する重合生成物が得られるまで、又は
ii)GPCによって決定される1000~10000g/モルの数平均分子量(M
n)を有する重合生成物が得られるまで
、ここで、該非晶質重合生成物のL-乳酸モノマーとD-乳酸モノマーとの比が、50:50~99.9:0.1である、
反応させることによって非晶質重合生成物を形成することを含む、前記方法。
【請求項12】
乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂及び結晶性乳酸オリゴマーワックスを含むホットメルト接着剤における非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーの使用であって、前記タッキファイヤー及び前記ホットメルト接着剤が、請求項1~10のいずれか1項に定義された通りである、前記使用。
【請求項13】
互いに対して固定された位置に基体を配置する方法であって、液体形態の請求項1~9のいずれか1項に記載の、所定量のホットメルト接着剤を、第1の基体の表面上に施与すること、該量の該ホットメルト接着剤組成物の上に第2の基体の表面をあてがうこと、そして、上記基体及びホットメルト接着剤組成物の上記集合体を、該ホットメルト接着剤組成物の融点未満の温度に冷却することの工程を含む、前記方法。
【請求項14】
請求項13に記載の互いに対して固定された位置に基体を配置する方法であって、前記基体がボール紙箱の要素である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーを含む乳酸ベースのホットメルト接着剤に関する。本発明はまた、乳酸ベースのホットメルト接着剤における非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの使用、及び上記非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーを含むホットメルト接着剤を使用して複数の基体を一緒に接着する為の方法に関する。本発明は更に、特定の非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用される場合に、「ホットメルト接着剤」は、流動性粘度の流体を得る為に加熱され、そして基体への施与後に、固体を得る為に冷やされる熱可塑性ポリマー組成物を云う。上記ホットメルト接着剤がその溶融温度よりも低い又はその固化遷移温度よりも低い温度に冷やされることに応じて固化される後に、接着性結合が上記基体と上記接着剤材料との間に形成される。
【0003】
ホットメルト接着剤はしばしば、互いに固定関係で2つの基体を維持するように該2つの基体を一緒に結合する為に使用される。ホットメルト接着剤はまた、不織層とポリマーフィルム層とを一緒に結合する為に、該不織層を含む物品において使用される。ホットメルト接着剤はさらに、パッケージング構成物、例えば袋、箱、カートン、ケース及びトレー、を一緒に接着して、当該パッケージを構築する為に、当該パッケージを閉鎖する為に、又はその両方の為に使用される。該ホットメルト接着剤はまた、テープ及びラベルの為の感圧接着剤として使用される。
【0004】
商業的施与の為のホットメルト接着剤において一般的に求められうる特性は、下記の通りにまとめられることができる。
【0005】
まず第1に、該ホットメルト接着剤の接着特性は、使用時に良好でなければならない。接着の喪失は、例えば、パッケージの開封を引き起こすことができるが、これは生成の間及び生成後の両方で許容されない。好ましくは、接着は、経時的に且つ広範な条件にわたって良好であるべきである。
【0006】
更に、ホットメルト接着剤は慣用的に、顆粒又はペレットの形態で用意され、それらは使用前に溶融される。これらの顆粒は好ましくは、保存中に安定でなければならない。すなわち、該顆粒は、互いに過度に付着し過ぎると、該顆粒の適切な取扱いを妨害する恐れがあるので、そのように付着すべきではない。この特色を得る為に、ホットメルト接着剤は、室温で流れを示すべきではない。他方では、ホットメルト接着剤は、溶融形態で施与される場合に、望ましい粘度特性を示すべきであり、すなわち、施与される為には十分に流れるべきであるが、その場にとどまるのに十分に粘性であるべきである。
【0007】
ホットメルト接着剤の更なる特性は、セットタイム(set time)、すなわち基体との結合を形成する為に接着剤によって必要とされる時間である。該セットタイムは、該接着剤を挟む2つの基体を一緒に圧縮するのに必要な時間を左右するので、商業的操作において重要でありうる。セットタイムは、秒のオーダーでありうる。
【0008】
他方では、セットタイムは好ましくは、非常に短い時間でありうるが、ホットメルト接着剤は、幾らかのオープンタイム(open time)も示すべきである。該オープンタイムは、該接着剤を高温で施与した後、該接着剤がまだ流れ特性を有している時間である。これは、該接着剤を担持基体上に施与した後、被覆基体が施与されると同時に良好な接着を得ることができる時間枠である。
【0009】
ホットメルト接着剤にとって望ましくありうる更なる特性は、ある度合いの生分解性又は堆肥化可能性である。該ホットメルト接着剤が、堆肥化されるべき対象物の製造において使用される場合、該接着剤は、該対象物の残部と同じ時間枠内で分解されることができることが重要である。この特色は、該ホットメルト接着剤がパッケージング材料の製造において使用される場合に特に関連性がありうる。
【0010】
更に、ホットメルト接着剤にとって、再生可能な資源から少なくとも部分的に誘導可能であることが好まれうる。
【0011】
バイオベースのホットメルト接着剤とも呼ばれている、少なくとも部分的に生分解性であり及び/又は再生可能な資源から誘導される幾つかのホットメルト接着剤が記載されている。
【0012】
例えば、国際公開第95/10577号パンフレットは、乳酸から誘導されるポリエステルを使用して作製されたホットメルト接着剤組成物を記載している。この刊行物に従うと、熱可塑性樹脂グレードのポリエステルは、接着成分を使用して機能性接着剤に配合されることができ、及びより低い分子量の材料が、配合されたホットメルト接着において生分解性/堆肥化可能な樹脂を含む粘着付与樹脂(tackifying resin)として使用されることができる。
【0013】
国際公開第2015/150580号パンフレットは、ラクチドとカプロラクトンとの反応生成物から実質的に構成されているコポリマーを含有する非反応性ホットメルト接着剤を記載している。該ホットメルト接着剤は、他の添加剤の中でも、タッキファイヤー及びワックスを含有しうる。
【0014】
しかしながら、バイオベースのホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤の望ましい特性の幾つかに後れを取りうる。
【0015】
例えば、幾つかのバイオベースのホットメルト接着剤は、脆弱になり、経時的に接着喪失を引き起こし、又は所定の温度範囲の下で低い接着特性を示しうる。更に、バイオベースのホットメルトの粘度は、所定の用途にとって不十分でありうる。
【0016】
その上、ホットメルト接着剤の特性を変更する為に典型的に使用される一般的な添加剤、例えばタッキファイヤー(例えば、一般的に使用される炭化水素樹脂、ロジン樹脂及びテルペン樹脂)は、バイオベースのホットメルト接着剤、例えば乳酸ベースのホットメルト接着剤、とは適合性があり得ない。
【0017】
従って、そのような欠点に煩わされないバイオベースのホットメルト接着剤の必要性がある。
【0018】
本発明者等は、バイオベースのホットメルト接着剤、特に乳酸ベースのホットメルト接着剤、と適合性があり且つ望ましい特性を提供するタッキファイヤーを今見出した。
【0019】
より特には、本発明は、ホットメルト接着剤(HMA:hot-melt adhesive)であって、
乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂、
結晶性乳酸オリゴマーワックス、及び
非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー
を含み、
該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーが、a)乳酸モノマーとb)3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含む、上記ホットメルト接着剤(HMA)に関する。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、ホットメルト接着剤(HMA)であって
乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂、
結晶性乳酸オリゴマーワックス、及び
非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー
を含み、
該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーが、最大2.5J/gの融解エンタルピーによって定義される結晶化度を有し、且つa)乳酸モノマーとb)3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含み、該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの該非晶質重合生成物が、1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する、上記ホットメルト接着剤(HMA)に関する。
【0021】
本明細書に記載されているタッキファイヤーは、例えば、タッキファイヤーを含有していない同じ配合物と比較して、優れた特性を有するバイオベースのホットメルト接着剤を提供することができる。特に、本明細書に記載されているホットメルト組成物は、より短いセットタイムを有し且つ経時的により良好な接着性を有しうる。また、接着が一般的に、室温(例えば、20~25℃)且つ冷凍庫温度(例えば、-25~-18℃)の両方で改善されうることが見出された。
【0022】
更に、本明細書に記載されているタッキファイヤーは、最終ホットメルト配合物の粘度を、特定の用途の要件に合わせて調整する為の粘度調整剤(viscosity modifier)として使用されうる。
【0023】
その上、本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、再生可能な資源から誘導されることができる乳酸に基づく。更に、乳酸のポリマー生成物は、生分解性であり、及び該組成物中の全ての成分の性質に依存して、完全に生分解性のホットメルト接着剤が得られうる。
【0024】
Arvanitoyannis, I. et al., Synthesis and degradability of a novel aliphatic polyester based on lactide and sorbitol, Polymer 37, 651-660 (1996)が、一連のポリエステルの合成及び分析を記載していることに留意されたい。
【0025】
その上、Hao, Q. et al., Preparation and crystallization kinetics of new structurally well-defined star-shaped biodegradable poly(L-lactide)s initiated with diverse natural sugar alcohols, Biomacromolecules 6, 2236-2247 (2005)が、星型(star-shaped)ポリ(L-ラクチド)の合成、構造的特徴付け、及び結晶化速度論的調査(crystallization kinetic investigation)に関することに留意されたい。
【0026】
しかしながら、これらの2つの参考文献は、ホットメルト接着剤には向けられていない。
【0027】
本発明及びその特定の実施態様の更なる利点は、更なる詳述から明らかになるであろう。
【0028】
先に示されている通り、本明細書に記載されているタッキファイヤーは非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーであり、該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、a)乳酸モノマーとb)3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含むことを特徴とする。
【0029】
本明細書で使用される多官能性重合開始剤は、乳酸の複数の乳酸ポリマー鎖を成長させる為の出発点として役に立ち且つモノマーとしては作用しない分子を云う。言い換えれば、該開始剤が重合生成物の一部であるとしても、該開始剤は、成長する乳酸鎖において共重合しない。
【0030】
該多官能性重合開始剤は、3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する。3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有するということは、3以上の乳酸鎖を近接して成長させる。如何なる理論にも拘束されることなしに、本発明者等は、近接して成長する乳酸鎖の数が、乳酸オリゴマータッキファイヤーの非晶質に寄与しうると考えている。
【0031】
該多官能性重合開始剤は好ましくは、4以上、特に5以上、より特には6以上、のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有しうる。本発明者等は、非晶質度(the degree of amorphicity)が、該多官能性重合開始剤のヒドロキシ及び/又はアミノ基の数に伴い増大する傾向があり、それは、乳酸オリゴマーのタッキファイヤー特性にとって望ましいものとなりうることを見出した。
【0032】
少なくとも3のアミノ基を有する多官能性重合開始剤は、第一級及び/又は第二級アミノ基を有し得、ここで、第一級アミノ基はより高い反応性でありうる故に該第一級アミノ基が好まれうる。
【0033】
少なくとも3のアミノ基を有する開始剤はあまり豊富に存在せず及び少なくとも3のヒドロキシ基を有するものよりも高価であり且つ危険でありうるので、該少なくとも3のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤が好ましくは使用されうる。特定の実施態様において、該多官能性重合開始剤は、4以上、より特には5以上、さらにより特には6以上、のヒドロキシ基を有しうる。
【0034】
少なくとも3のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤の好適な例は例えば、D-ソルビトール、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールを包含する。D-ソルビトールはバイオベースの開始剤であり、それ故に再生可能な資源から誘導可能な成分の含量に寄与するので、該D-ソルビトールは好まれうる。そのようなバイオベースの開始剤を本明細書に記載されている乳酸又はラクチドと反応させることは有利には、バイオベースのタッキファイヤーを提供しうる。他方で、ジペンタエリスリトールは熱的に安定であり且つ幅広い温度が使用されることを可能にしうるので、ジペンタエリスリトールは該タッキファイヤーを生成する方法に関して好まれうる。他の多官能性重合開始剤は、トリメチロール(trimetylol)プロパン、グリセロール、1,3,5-ヘキサントリオールを包含しうる。如何なる理論にも拘束されることなしに、本発明者等は、本明細書に記載されている乳酸オリゴマータッキファイヤーの末端基の数(幾つかの乳酸鎖は、該多官能性重合開始剤によって1個の分子中に一緒にある)が、その寿命末期においてタッキファイヤーを生分解する能力に寄与しうると考える。
【0035】
該非晶質重合生成物の乳酸モノマーは、L-乳酸、D-乳酸、L-ラクチド、D-ラクチド及びメソ(meso)-ラクチドの1以上から誘導されうる。
【0036】
当業者が該非晶質重合生成物において理解する通り、同じ立体化学の乳酸又はラクチドから誘導される乳酸モノマー残基が同じであろう。従って、L-乳酸又はL-ラクチドから乳酸モノマーを誘導することは、L-乳酸の1個の分子が1個のL-モノマー残基をもたらし、L-ラクチドの1個の分子が2個のL-モノマー残基をもたらすにも関わらず、同じL-乳酸モノマー残基を有する重合生成物を結果として生じる。同様に、D-乳酸又はD-ラクチドから乳酸モノマーを誘導することは、同じ立体化学のモノマー残基を有する重合生成物を結果として生じる。メソ-ラクチドから乳酸モノマーを誘導することは、L-及びD-乳酸モノマー残基の両方を有する重合生成物を結果として生じる。
【0037】
乳酸又はラクチドから乳酸モノマーを誘導することは、重合機序に関して異なっており、ここで、乳酸の重合は縮合重合であり、及びラクチド重合は開環重合である。本願において記載されている乳酸鎖、乳酸オリゴマー及び乳酸ポリマーは、(乳酸をモノマー材料として使用する)縮合重合及び(ラクチドをモノマー材料として使用する)開環重合の両方によって、全ての好適な重合条件の施与下で製造されることができることが強調される。
【0038】
該非晶質重合生成物のL-乳酸モノマーとD-乳酸モノマーとの比は、例えば50:50~99.9:0.1、特に60:40~95:5、より特には80:20~90:10、又は代替的には50:50~0.1:99.9、特に40:60~5:95、より特には20:80~90:10、で変わりうる。
【0039】
該非晶質重合生成物の乳酸モノマーは好ましくは、乳酸のL-異性体がより容易に入手可能であるため、L-乳酸及び/又はL-ラクチドから誘導されうる。特定の実施態様において、該非晶質重合生成物は、100%のL-乳酸モノマー含量を有しうる。
【0040】
該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの非晶質重合生成物は、1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの非晶質重合生成物は特に、2000~4000g/モル、より特には2500~3500g/モル、更により特には約3000g/モル、の数平均分子量(Mn)を有しうる。そのような分子量の重合生成物は一般的に、相対的に短鎖の乳酸モノマーを有し得、且つ該タッキファイヤーの非晶質に寄与しうる。
【0041】
本明細書の文脈において、数平均分子量Mnは、試料中の全てのポリマー鎖の統計的平均分子量であり、下記式によって定義される:
Mn=ΣNiMi/ΣNi、
ここで、Miは鎖の分子量であり、及びNiはその分子量の鎖の数である。Mnが分子量分布について引用されている場合には、該分布におけるMnのいずれの側にも等しい数の分子が存在する。Mnは、重合機序によって予測されることができ、当技術分野で知られている方法、例えば所与の重量の試料中の分子の数を決定する方法、によって測定され、例えば、束一的方法(colligative methods)、例えば末端基アッセイ(end-group assay)、が使用されうる。特に該Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、より特には、溶媒及び移動(running)相としてクロロホルム、参照としてのポリスチレン、及び屈折率を介した検出を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されうる。
【0042】
一般的に、該非晶質重合生成物において、該多官能性重合開始剤のヒドロキシ又はアミノ基当たりの乳酸モノマーの比は、ヒドロキシ又はアミノ基1モル当たり2~25モル、特に4~15モル、より特には6~10モル、の乳酸でありうる。これら比では、乳酸モノマーの量は、多官能性重合開始剤の量よりも多く、及び乳酸モノマー鎖は、相対的に短く維持される。乳酸モノマーの量の比が高いほど、低い非晶質を有する生成物を結果として生じうる。このことは、幾つかの用途についてタッキファイヤーとしての最適性が低下された生成物を結果として生じうる。
【0043】
本明細書に記載されている非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、a)乳酸及び/又はラクチドと、b)3以上のヒドロキシ及び/又はアミノ基を有する多官能性重合開始剤とを、所望のMnの生成物が得られるまで反応させることによって非晶質重合生成物を形成することを含む方法によって得られうる。特定の実施態様において、該方法は、a)乳酸及び/又はラクチドと、b)4以上のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤とを、1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する重合生成物が得られるまで、又は言い換えれば、該非晶質重合生成物が1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するまで反応させることを含みうる。
【0044】
特に、該多官能性重合開始剤は、該非晶質重合生成物について先に定義されている通り、4以上のヒドロキシル基又は任意の数のヒドロキシル基を有しうる。出発乳酸及び/又はラクチドは、非晶質重合生成物について先に定義される通りであり得、且つ商業的に入手可能である。市販の乳酸の好適な例は、例えばCorbion Purac製のPurac(商標)HS 100、Purac(商標)HS 88、Purac(商標)HS 90、Purac(商標)Ultrapure 90、Purac(商標)HiPure 90、Purac(商標)HS 101を包含し、市販のラクチドの好適な例は、例えばPuralact(商標)L、Puralact(商標)B3及びPuralact(商標)Dを包含する。乳酸の重合は、縮合重合であり、一般的に、好適な触媒、例えばチタン(IV)ブトキシド及びチタン(IV)イソプロポキシド、の存在下で行われうる。ラクチドの重合は、開環重合であり、及び一般的に、好適な触媒、例えばエチルヘキサン酸スズ(II)、の存在下で行われうる。
【0045】
一例の様式として、該多官能性重合開始剤は、触媒と混合され得、該ラクチドは、120~210℃の反応温度に加熱された該混合物に添加されうるが、160~190℃の温度が、より少ない副反応及び副生成物を結果として生じうるので、160~190℃の温度が好まれうる。任意的に、抗酸化剤が反応混合物に添加されうる。該重合は、1時間(例えば、210℃で)~2日まで(例えば、120℃で)、特に1~3時間(例えば、160~190℃で)かかりうる。
【0046】
3以上のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤は、重合生成物について先に記載されている通り、ヒドロキシ基1モル当たり2~25モル、好ましくは4~15モル、より好ましくは6~10モル、の乳酸と反応させられうる。
【0047】
該重合は、所望の数平均分子量に到達されるときに停止されうる。一般的に、該重合は、非晶質重合生成物が1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)に達する場合に停止されうる。該Mnは、先に記載されている通り、重合中にGPCによって決定されうる。
【0048】
本明細書に記載されている乳酸オリゴマータッキファイヤーは、非晶質である。特に、そのような非晶質タッキファイヤーは、最大2.5J/グラムの融解エンタルピーによって定義される結晶化度を有する。該非晶質タッキファイヤーは特に、最大2J/グラム、より特には1.5J/グラム、の融解エンタルピーによって定義される結晶化度を有しうる。該融解エンタルピーは、当技術分野で知られている方法によって、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)により、特に加熱-冷却-加熱サイクルを使用して、-50℃で出発して10℃/分で220℃に加熱し、次に同じ速度で冷却し、そして第1の加熱工程を反復して測定される。ホットメルト接着剤における非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの使用は、該接着剤の硬化中に該接着剤の収縮を低減するので有利である。その上、非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーが使用される場合、該接着剤は、硬化するときに幾らかの可撓性を保持する。
【0049】
本明細書に記載されている非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、少なくとも30℃、特に少なくとも35℃、より特には少なくとも40℃、のガラス転移温度(Tg)を有しうる。ホットメルト接着剤におけるそのようなガラス転移温度を有するタッキファイヤーの使用は、次に、該タッキファイヤーが生成物の施与温度で(すなわち、生成物が使用されるときに)固体状態になるので有利である。
【0050】
本明細書に記載されている非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、ホットメルト接着剤、特にバイオベースのホットメルト接着剤、より特には乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂及び結晶性乳酸オリゴマーワックスを含むホットメルト接着剤、における使用に好適である。従って、本発明は更に、また本明細書において更に記載されている通り、乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂及び結晶性乳酸オリゴマーワックスを含むホットメルト接着剤における、本明細書に記載されている非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーの使用に関する。
【0051】
如何なる理論にも拘束されることなしに、乳酸ベースのオリゴマータッキファイヤーの性質は、乳酸ベースのホットメルト接着剤との適合性に寄与しうると考えられる。
【0052】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤における使用の為の特定の非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、a)乳酸モノマーとb)4以上のヒドロキシ基を有する多官能性重合開始剤との非晶質重合生成物を含み、ここで、該非晶質重合生成物は、1000~10000g/モルの数平均分子量(Mn)を有し、該非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーは、最大2.5J/gの融解エンタルピー及び少なくとも30℃のガラス転移温度によって定義される結晶化度を有する。4以上のヒドロキシ基及びこの範囲内のMn値を有する多官能性開始剤は更に、オリゴマーの非晶質及び適合性に寄与し、そのオリゴマーを、本明細書に記載されているホットメルト接着剤の為のタッキファイヤーとして特に好適にしうる。
【0053】
本明細書の文脈において、語「適合性」(compatible)は、非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー及びホットメルト接着剤の他の成分の混合物が、溶融条件下且つ室温での両方で安定であることを意味する。「安定である」(Stable)は、室温で30日間、及び溶融条件下で72時間保存することに応じて、相分離が生じず且つ溶融物が均質なままであることを意味する。簡単な試験によって、例えばガラス瓶内の所定量の、例えば50mlの配合されたホットメルト接着剤組成物を、溶融温度を超える温度のオーブンに入れ(撹拌なしに)、そして生成物の特性を視覚的に評価することによって、適合性を決定することは、当業者の範囲内である。該試験において使用される温度は、該接着剤が、商業的操作において使用されうる温度に対応すべきである。
【0054】
一般的に、非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーは、本明細書に記載されているホットメルト接着剤中に、該ホットメルト接着剤の全量に対して5~45重量%の量で、特に10~35重量%、より特には15~25重量%、の量で存在しうる。
【0055】
ホットメルト接着剤配合物における本明細書に記載されている非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの存在は、該ホットメルト接着剤に良好な接着特性を、経時的に且つ異なる温度範囲にわたって提供することが見出された。非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤーの過剰量の存在は、該ホットメルト接着剤の接着特性に有害な影響を及ぼしうる。
【0056】
本明細書に記載されているホットメルト組成物は、乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂を更に含有する。
【0057】
該乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂は一般的に、該ホットメルト接着剤に強度及び粘着力を提供しうる。如何なる理論にも拘束されることなしに、本発明者等は、高分子量コポリマーが、冷却に応じて粘度の増大及び粘度の所望の強化に寄与し、該ホットメルト接着剤に所望のセットタイムをもたらしうると考える。更に、本明細書に記載されているカプロラクトンと乳酸との組み合わせを有するコポリマーは、ホットメルト接着剤に所望のオープンタイムを提供することに寄与しうる。
【0058】
該コポリマー樹脂は、乳酸モノマーとカプロラクトン(当技術分野ではε-カプロラクトンとしてまた知られている)との重合生成物を含む。ε-カプロラクトンは、7員環を有する環式エステル分子である。該乳酸モノマーは、L-乳酸、D-乳酸、L-ラクチド、D-ラクチド及びメソ-ラクチドの1以上から誘導され得、好ましくはL-ラクチドから誘導されうる。乳酸モノマーとカプロラクトンとのモル比は、少なくとも1.5、特に少なくとも2.0、でありうる。
【0059】
該コポリマー樹脂の重合生成物は、40~80重量%の乳酸モノマー、特にL-乳酸モノマー、及び20~60重量%のカプロラクトンを含み得、特に50~70重量%の乳酸モノマー、特にL-乳酸モノマー、及び30~50重量%のカプロラクトン、を含みうる。非常に良好な結果が、乳酸モノマー及びカプロラクトンモノマーだけの重合生成物に基づくコポリマー樹脂で得られるが、原理上、このコポリマー生成物との重合に、少量の他のモノマー(例えば、最大5重量%)を含むことが可能である。当業者は、或る特性を最適化する為にそうすることを求めうる。
【0060】
該コポリマー樹脂の重合生成物のMn分子量は一般的に、2000~100000g/モルでありうる。特に、該ブロックコポリマーのMn分子量は、5000~90000g/モル、特に5000~80000g/モル、より特には10000~50000g/モル、の範囲でありうる。上記Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いることによって、特に、溶媒及び移動相としてのクロロホルム、参照としてのポリスチレン、及び屈折率を介した検出を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されることができる。
【0061】
該重合生成物は一般的に、ランダムコポリマー又はブロックコポリマー(例えば、乳酸モノマーのブロック、及びカプロラクトンと乳酸モノマーとのブロックを含む)でありうる。特定の実施態様において、該コポリマー樹脂は、ブロックコポリマーでありうる。
【0062】
特に、本明細書に記載されているカプロラクトンと乳酸とのブロックコポリマーは好ましくは、第1のブロックと第2のブロックとを含むブロックコポリマーであり得、ここで、
該第1のブロックは、乳酸とカプロラクトンとの非晶質コポリマーであり、及び
該第2のブロックは、乳酸の結晶性ポリマーである。
【0063】
該第1のブロックは一般的に、ランダムブロックでありうる。
【0064】
そのようなブロックコポリマーは、例えば国際公開第2017/149019号パンフレットに記載されている。そのようなブロックコポリマーは、室温で固体であり得、そのことは、保存及びホットメルト接着剤の配合物にとって有利であり得、及び同時に前述された望ましい特性を有する最終的なホットメルト接着剤配合物を提供する。
【0065】
カプロラクトンと乳酸とのブロックコポリマーは、幾つかの利点を有しうるが、幾つかの用途においては、該コポリマー樹脂は、ランダムカプロラクトン及び乳酸コポリマーであることが好まれうる。そのようなランダムコポリマーは、例えば、国際公開第2017/055044号パンフレットに記載されている。そのようなランダムコポリマーは、ホットメルト接着剤の調節において、より高い柔軟性を可能にして、特定の必要性を満たしうる。
【0066】
該コポリマー樹脂の製造は、当技術分野で知られている方法によってラクチド及びカプロラクトンの(開環)重合によって行われうる。例えば、国際公開第2015/150580号パンフレット及び国際公開第2017/149019号パンフレットが参照される。重合は、この目的の為に周知の触媒、好ましくは広く使用されているオクチル酸Sn又は他の金属触媒、例えばZr-配位化合物、によって触媒されうる。金属種が回避されるべき用途については、非金属触媒が使用されうる。重合は、120~210℃、特に160~190℃、の温度で行われうる。更に、重合は、設計されたポリマー構造に依存して、開始剤としての線状モノアルコール、好ましくは線状ジアルコール、の存在下で行われうる。そのような開始剤の使用は、形成されたコポリマーの平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI:polydispersity index)のモニタリング及び制御を可能にしうる。
【0067】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤におけるコポリマー樹脂は、ホットメルト接着剤の全重量に対して、30~80重量%、特に40~70重量%、より特には50~65重量%、の量で存在しうる。
【0068】
本明細書に記載されているホットメルト組成物は、結晶性乳酸オリゴマーワックスを更に含む。
【0069】
結晶性乳酸オリゴマーワックスは、ホットメルト接着剤に、望ましいセットタイム及び粘度低下を提供することに寄与しうる。
【0070】
該結晶性乳酸オリゴマーワックスは、L-乳酸及び/又はL-ラクチドから或いはD-乳酸及び/又はD-ラクチドから選択された乳酸モノマー、好ましくはL-乳酸若しくはL-ラクチドである乳酸モノマー、の重合生成物を含む。該結晶性オリゴマーの調製の為に使用される乳酸又はラクチドは、高いエナンチオマー純度を有しうる。特に、該乳酸又はラクチドのエナンチオマー純度は、少なくとも95%、特に少なくとも98%、より特には少なくとも99%、更により特には少なくとも99.5%、でありうる。該オリゴマーワックスのエナンチオマー純度が高いほど、その結晶化度が高くなりうる。
【0071】
該結晶性オリゴマーワックスは、先に説明されているDSCを介して決定される通り、少なくとも5J/グラム、特に少なくとも10J/グラム、より特には少なくとも25J/グラム、の融解エンタルピーを有しうる。
【0072】
本明細書に記載されている結晶性オリゴマーワックスは、750~10000g/モル、特に1500~7500g/モル、より特には2000~3000g/モル、の範囲、最も特には約2500g/モル、のMnを有しうる。定義された範囲内のMnを有するワックスは、該組成物のセットタイムを低減することに寄与しうる。該ワックスの該Mnが高過ぎるときには、或る用途の為に、許容される粘度を有する組成物を配合することが困難になりうる。該Mnが低過ぎるときには、短い乳酸鎖の故に、該オリゴマーの結晶化度に負の影響を及ぼし得、そして該得られる生成物は、相対的に脆弱でありうる。
【0073】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤中の結晶性オリゴマーワックスは、ホットメルト接着剤の全重量に対して0.5~30重量%の量で、特に5~25重量%の量で、存在しうる。該オリゴマーワックスの量が0.5重量%未満である場合、該ホットメルト接着剤は、セットタイムの増大を示しうるが、それは、一部の用途に適切であり得ない。一方、オリゴマーワックスの量が30重量%超である場合、該ホットメルト接着剤の特性は或る用途について有害な影響を及ぼし得、例えば、全体的な結晶化度が高いことに起因して、時間の経過とともに不良な接着を結果として生じうる。
【0074】
該ホットメルト接着剤配合物中の他の成分に対する結晶性オリゴマーワックスの相対量は、該ホットメルト接着剤中の他の成分の量及び性質に応じて調整されうる。例えば、該カプロラクトン乳酸コポリマー樹脂がランダムコポリマーを含む場合、一部の実施態様において、コポリマー樹脂に対するオリゴマーワックスの相対量は、特に40:60~60:40で変わり得、より特には50:50であり得、該カプロラクトン乳酸コポリマー樹脂がブロックコポリマーを含む場合、幾つかの実施態様において、コポリマー樹脂に対するオリゴマーワックスの相対量は、特に30:70~10:90で変わり得、より特には20:80でありうる。
【0075】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤の全重量に対して、30~80重量%のコポリマー樹脂、0.5~30重量%のオリゴマーワックス、及び5~45重量%の非晶質タッキファイヤーを含みうる。該成分の量は、成分ごとに、先に詳述されている通り変わりうる。
【0076】
本明細書に記載されているタッキファイヤー及びワックスに加えて、該ホットメルト組成物は、該組成物の接着特性を更に改善する為に更なるタッキファイヤーを含むことができ、又はセットタイム及び粘度を更に改善する為に更なるワックスを含むことができる。追加のタッキファイヤー及びワックスは、存在する場合には、該ホットメルト接着剤の他の成分と適合性があるべきであり、そのことは困難である場合ができる。それに限定されるものではないが、有用なタッキファイヤーは、水素化ロジンエステルタイプ(例えば、Foralyn 5020-F(商標)、ロジンエステル、Sylvatac RE 12(商標)、Sylvatac RE 5S(商標)及びSylvatac RE 85S(商標)等)、テルペンフェノールタイプ(例えば、Sylvares TP 115P(商標)及びSylvares TP 2040HM(商標)等)及びスチレン化フェノール樹脂タイプ(例えば、Zonatac NG 98(商標)等)でありうる。しかしながら、本明細書に記載されているホットメルト組成物の優れた特性を考慮すれば、そのような追加のタッキファイヤー及びワックスは省略されうる。
【0077】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤組成物への添加について当技術分野で知られている1以上の追加の成分を更に含みうる。そのような成分は好ましくは、例えば、核剤(nucleator)、抗酸化剤及び安定化剤から選択されうる。着色剤、レオロジー剤(例えば、流れ挙動を調整する為)、フィラー(例えば、該組成物に嵩を提供する為)、及び可塑剤(例えば、該組成物のTgを低減する為)がまた存在しうる。追加の成分は好ましくは、ホットメルト接着剤の全重量に対して5重量%未満、特に3重量%未満、の全量で存在しうる。
【0078】
特定の実施態様において、該ホットメルト接着剤は、結晶性乳酸オリゴマー核剤を含みうる。該核剤は、一般的に、該オリゴマーワックスとは反対のエナンチオ化学性質(enantiochemistry)でありうる。特に、該結晶性乳酸オリゴマーワックスがL-乳酸モノマーのオリゴマーである場合、該核剤は好ましくは、D-乳酸のオリゴマーであり得、逆もまた同じであり得、該結晶性乳酸オリゴマーワックスがD-乳酸モノマーのオリゴマーである場合、該核剤は好ましくは、L-乳酸モノマーのオリゴマーでありうる。立体化学的純度及び分子量(Mn)に関して、該結晶性乳酸オリゴマーワックスについて先に論じられていることが、該結晶性乳酸オリゴマー核剤に当てはまる。
【0079】
特定の実施態様において、該ホットメルト接着剤は、カルボジイミド安定化剤、例えば脂肪族カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド及びイソプロピルカルボジイミド)、好ましくは芳香族カルボジイミド(例えば、ビス-3-イソシアネート-4-メチルフェニルカルボジイミド)、及びカルボジイミド化合物のポリマー形態を含みうる。カルボジイミド化合物は、該ホットメルト接着剤の接着特性の安定性を増大しうる。
【0080】
特定の実施態様において、該ホットメルト接着剤は、抗酸化剤、例えば非限定的な例としてIrgafos(商標)126(3,9-ビス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)又はIrganox 1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、を含みうる。そのような抗酸化剤は、本明細書に記載されているホットメルト接着剤の望ましくない着色(白色から黄色又は褐色)を防止する際に役立ちうる。
【0081】
有用なフィラー及び/又はレオロジー変性剤は、チョーク、重晶石、石英、石膏、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカである。
【0082】
有用な可塑剤は、クエン酸トリエチル(例えばCitrofol Al Regular(商標)における)、O-アセチルクエン酸トリス(2-エチルヘキシル)(例えばCitrofol AHII(商標)における)、クエン酸トリブチル(例えばCitrofol BIにおける)、及びO-セチルクエン酸トリブチルATBC(例えばCitrofol BII(商標)における)である。
【0083】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、一般的に、80~240℃、90~240℃、100~240℃、110~240℃、120~240℃、130~240℃、140~240℃、150~240℃、160~240℃、170~240℃、180~240℃、190~240℃、200~240℃、210~240℃、220~240℃の範囲、より特には120~220℃、120~210℃、120~200℃、120~190℃、120~180℃、120~170℃、120~160℃の範囲、の溶融温度を有しうる。該溶融温度が低過ぎる場合、該接着剤は、使用条件下で溶融しうる。高い溶融温度は、必要とされるエネルギー消費量、安全性及び施与安定性を考慮すれば魅力的でなくなりうる。
【0084】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は一般的に、15秒未満、特に10秒未満のセットタイムを有しうる。セットタイムは、更に短く、例えば8秒未満でありうる。セットタイムは、高度接着性能試験によって、例えばSmithers Pira接着性能試験機を使用して決定されることができる。セットタイムは、ボール紙において溶融接着剤の2mmビーズを168℃で施与して測定される。第2の基体をあてがう秒数を小さくし、続いて再び結合を制御しながら引き裂き、そして繊維引裂きの量を検討して、当業者は該セットタイムを決定することができる。
【0085】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は一般的に、8000mPa.s未満、特に4000mPa.s未満、より特には2000mPa.s未満、の粘度を有しうる。該粘度は一般的に、500mPa.s超でありうる。500mPa.s未満では、該組成物は、施与温度で液体度が高過ぎになり得、それによって該接着剤が「流れやすく」なる恐れがある。8000mPa.s超の粘度は、ホットメルト接着剤を容易に施与するには高過ぎになり得、例えばボール紙の場合には、繊維の間に逆に(adversely)流れ得、それが或る用途について望ましくなくなりうる。粘度は、ASTM-D3236-15に従って、175℃の温度でスピンドル21を使用して決定されることができる。
【0086】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、液相中で様々な成分を一緒にすることによって製造されることができる。
【0087】
一つの実施態様において、第1の工程では、該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー及び該結晶性乳酸オリゴマーワックスは、液相又は固相で提供され、均質に溶融ブレンドされうる。核剤、特に結晶性乳酸オリゴマー核剤、が使用される場合には、該核剤は、均質な溶融タッキファイヤー/ワックスブレンドに添加され、均質に溶融ブレンドされうる。代替的には、核剤が使用される場合、該タッキファイヤーは、該ワックスの代わりに該核剤と溶融ブレンドされ得、そして次に、該ワックスが、該タッキファイヤー/核剤ブレンドに添加され、そして均質に溶融ブレンドされうる。いずれの方法にしても、該非晶質乳酸オリゴマータッキファイヤー、該結晶性乳酸オリゴマーワックス、及び任意的に該核剤、特に結晶性乳酸オリゴマー核剤、を含む均質な溶融混合物が得られる。第2の工程において、該カプロラクトンと乳酸とのコポリマー樹脂は、該均質な溶融混合物に添加される。
【0088】
各成分は、相対的に高温(例えば、160~170℃、特に163~167℃)で、有利には成分の迅速混合に寄与しうる混合条件下で、液相中に添加されうる。
【0089】
前述の順序で該成分を添加することは、該混合物における塊の形成の防止に寄与しうる。如何なる理論にも拘束されることなしに、本発明者等は、本明細書に記載されている方法が、該ホットメルト組成物における小さいサイズのステレオコンプレックス結晶(stereocomplex crystals)を生成することに寄与し、最終配合物の均質性に寄与しうると考える。
【0090】
本発明はまた、基体を一緒に結合する為の、本明細書に記載されているホットメルト接着剤の使用に関する。特に、本発明は、互いに固定された位置に基体を配置する方法であって、液体形態の本明細書に記載されている所定量のホットメルト接着剤を、第1の基体の表面上に施与すること、該量の該ホットメルト接着剤組成物の上に第2の基体の表面をあてがうこと、そして該基体及びホットメルト接着剤組成物の上記集合体(assembly)を、該ホットメルト接着剤組成物の融点未満の温度に冷却することの工程とを含む方法に関する。
【0091】
本明細書に記載されている方法に好適な基体は例えば、ボール紙箱、紙から作製された要素、任意的にポリマーコーティング材料、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリラクチド、の層を提供された、ボール紙箱、紙から作製された要素、を包含する。特に好ましくは、該基体が、ボール紙箱の要素である方法でありうる。好適な基体はまた、プラスチック、特に物体、例えばポリオレフィン又はポリ乳酸の物体、織物、パッケージングに使用されるホイル、例えば花又は植物のパッケージングに使用されるホイル、を包含し、しかしまたカーペットの裏張りを包含する。好適な基体は更に、金属ホイル及び木材を包含する。
【0092】
本明細書に記載されているホットメルト接着剤は、他の用途、例えば感圧接着剤(PSA:pressure sensitive adhesive)、不織布用途(例えば、衛生吸収性製品、例えばベビー用おむつ、成人失禁用製品、女性用衛生用品)及び先の段落に記載されている他の用途、において使用されうる。
【0093】
より一般的には、本明細書に記載されているホットメルト接着剤に典型的な市場は、パッケージング、不織布、テープ及びラベルでありうる。本明細書に記載されているホットメルト接着剤はまた、製本(book binding)、発泡体接着(foam bonding)、ヒートシール用途、カーペットシーリング、バッグ端部シーリング(bag end sealing)、ボンディング濾材(bonding filter media)、断熱材ボンディング(insulation bonding)、耐久性商品の製造(例えば、靴及び他の競技用道具)、木材加工、建築、自動車用途、電化製品施与及びアセンブリ用途(例えば、濾材、断熱材、及びボンディング)において有用でありうる。
【0094】
別の実施態様において、ホットメルト接着剤において非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーを使用する方法であって、
i)乳酸とカプロラクトンとのコポリマー樹脂、結晶性乳酸オリゴマーワックス、及び非晶質ポリ乳酸タッキファイヤーを一緒にすること、
ii)(i)からの、一緒にした物を加熱する工程と、
iii)該ホットメルト接着剤を基体に施与する工程と
を含む上記方法が提供される。
【0095】
当業者には明らかになる通り、本発明の様々な観点の好ましい実施態様は、それらが互いに排他的でない限り、組み合わせられることができる。本発明に従うホットメルト接着剤又はタッキファイヤーについて表されている優先事項はまた、本発明に従うホットメルト接着剤又はタッキファイヤーの方法及び使用に当てはまる。
【0096】
本発明は、下記の実施例によって例示されているが、それに限定されることもなく又はそれらによって限定されることもない。
【実施例】
【0097】
タッキファイヤーの調製
全てのオリゴマー又はポリマーのタッキファイヤーは、下記の実施例のそれぞれに示されているモノマーから、オーバーヘッド撹拌装置による撹拌を伴う1L尺度の四つ口ガラス製セットアップ反応器、触媒としてのエチルヘキサン酸スズ(II)、抗酸化剤としてのIrgafos(商標)126及び安定化剤としてのモノマーカルボジイミド(Stabaxol(商標)1)を使用して調製された。重合は180℃で実施され、そして、目標分子量(Mn)に達した最大3時間の反応時間後に停止された。
【0098】
数平均分子量(Mn)は、分子量で識別するC18カラムを備えた液体クロマトグラフ、溶媒及び移動相としてのクロロホルム、参照としてのポリスチレン、及び屈折率を介した検出を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された。
【0099】
実施例1:100重量%のL-ラクチドから誘導された、3000g/モルのMnを有する、ソルビトールと乳酸とのオリゴマー
L-ラクチド(Corbion製のPuralact(商標)B3)751.4gが、上記の一般手順に従って、エチルヘキサン酸スズ(II)の存在下でD-ソルビトール(Sigma-Aldrich製)48.6gと重合化された。結果として生じた乳酸オリゴマーは、3000g/モルのMn、0.5J/g未満の結晶化度、及び40.3℃のTgを有していた。
【0100】
実施例2:88重量%のL-ラクチド及び12重量%のD-ラクチドから誘導された、5000g/モルのMnを有する、ソルビトールと乳酸とのオリゴマー
L-ラクチド(Corbion製のPURALACT(商標)B3)678.4g及びD-ラクチド(Corbion製のPURALACT(商標)D)92.5gが、上記の一般手順に従って、エチルヘキサン酸スズ(II)の存在下でソルビトール(Sigma-Aldrich製)29.2gと重合化された。結果として生じた乳酸オリゴマーは、5000g/モルのMn、0.5J/g未満の結晶化度、及び38.2℃のTgを有していた。
【0101】
実施例3:L-ラクチドから誘導された、3000g/モルのMnを有する、メラミンと乳酸とのオリゴマー
L-ラクチド(Corbion製のPURALACT(商標)B3)719.1gが、上記の一般手順に従って、エチルヘキサン酸スズ(II)の存在下でメラミン(Alfa Aesar製)31.8gと重合化された。結果として生じた乳酸オリゴマーは、3000g/モルのMn、0.5J/g未満の結晶化度、及び45.4℃のTgを有していた。
【0102】
比較例1:88重量%L-ラクチド及び12重量%D-ラクチドから誘導された、5000g/モルのMnを有する、ネオペンチルグリコールと乳酸とのオリゴマー
L-ラクチド(Corbion製のPURALACT(商標)B3)646.3g及びD-ラクチド(Corbion製のPURALACT(商標)D)88.1gが、上記の一般手順に従って、エチルヘキサン酸スズ(II)の存在下でネオペンチルグリコール(Perstorp AB製)15.6gと重合化された。結果として生じた乳酸オリゴマーは、5000g/モルのMn、0.5J/g未満の結晶化度、及び36.0℃のTgを有していた。
【0103】
ホットメルト接着剤配合物の調製
ホットメルト接着剤(HMA)は、表1に詳述されている通り、実施例1~3及び比較例1で調製された種々のタッキファイヤーを使用して調製された。更に、タッキファイヤーを含有しない参照配合物が好ましく、HMA配合物は、商業的に入手可能なタッキファイヤー、例えばロジン樹脂(例えば、Eastman製のPermalyn(商標)5110及びLawter製のPineclear(商標)2498E)及び炭化水素樹脂(Eastman製のEastotac(商標)H-130W、Picco(商標)A-100、Kristalex(商標)F-100及びRegalite(商標)R1100CG)を包含する商業的に入手可能なタッキファイヤー、を使用して調製された。しかしながら、これらは、該タッキファイヤーと、該コポリマー樹脂及びオリゴマーワックスとの不適合性を考慮して上手く調製されず、それ故にそれ以上評価されなかった。
【0104】
該ホットメルト接着剤配合物は全て、48.5重量%のコポリマー樹脂、18.5重量%のオリゴマーワックス、3重量%の核剤及び30重量%のタッキファイヤーを含有していた。タッキファイヤーを含有しない参照配合物は、48.5重量%のオリゴマーワックス(18.5重量%のオリゴマーワックス及び30重量%のタッキファイヤーの代わり)を含有していた。
【0105】
該コポリマー樹脂は、国際公開第2017/149019号パンフレットの実施例1に従って調製された乳酸カプロラクトンブロックコポリマーであり、15000g/モルのMn及び乳酸とカプロラクトンとの78/22の比を有していた。
【0106】
該オリゴマーワックスは、タッキファイヤーについて先に記載されている通り、L-ラクチドの重合から得られた結晶性乳酸オリゴマー(99%を上回るエナンチオマー純度を有するPuralact(商標)B3)であり、2250g/モルのMn及び25J/g超の結晶化度を有していた。
【0107】
該核剤は、タッキファイヤーについて先に記載されている通り、D-ラクチドの重合から得られた結晶性乳酸オリゴマー(99%を上回るエナンチオマー純度を有するPuralact(商標)D)であり、3500g/モルのMn及び25J/g超の結晶化度を有していた。
【0108】
HMA配合物は、オーバーヘッド撹拌装置を備えているガラスフラスコ内で調製され、ここで、タッキファイヤーが、撹拌下、163℃の温度において溶融され、核剤が、該溶融タッキファイヤーに添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。オリゴマーワックスが添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。最後に、コポリマー樹脂が少量ずつ添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。該混合物は、施与されるまで撹拌下、163℃で維持された。
【0109】
HMA配合物の物理的特徴付け
該HMA配合物は、DSC及びレオメータ測定によって評価された。
【0110】
DSCは、すなわち-50℃で出発し、10℃/分で220℃に加熱し、次に同じ速度で冷却する加熱-冷却-加熱サイクルを用い、そして第1の加熱工程を反復して決定された。
【0111】
該HMA配合物の複素粘度を決定する為に、TAインストラメント・ダイナミック(Instrument Dynamic)ハイブリッドレオメータ2が、角周波数10ラジアン/秒及び歪み10%を使用して163℃で使用された。
【0112】
結果が、下記の表1に示されている。
【0113】
【0114】
タッキファイヤーを含むことは、該HMA配合物の熱特性に対して有意な効果を有することが見出された。
【0115】
該配合物のガラス転移温度(Tg)は、参照HMA配合物と比較して有意に高かった。
【0116】
全ての4つの場合において、Tcエンタルピーは低減するように見えた。このことは、結晶性成分の量の低減及び結晶化速度に対する該タッキファイヤーの影響によって生じると思われる。
【0117】
タッキファイヤーを含むことは、粘度を有意に低減し、又は有意に同じままにすることが見出された。
【0118】
HMA配合物の接着特性
接着試験の為に、3つのタイプのボール紙が評価された。一般的な単一の波状ボール紙(WP20/20)が、Smurfit Kappaによって得られ、及び2つのタイプの薄ボール紙(Frovi)が、BillerudKorsnasから得られた。HMAビーズ(163℃で溶融)が、ガラス棒を用いてボール紙基体に手作業で施与され、1.5~2.5mmのビーズを用意した。第2のボール紙基体が、上記ビーズ上にあてがわれて、結合を形成した。該結合を作製して1日後及び4日後に、該結合を破壊する為に、該結合がほぼ180°の角度で引き離された。繊維引裂きパーセンテージ(percentage fiber tear)は、繊維によって被覆された接着剤のパーセンテージを記録することによって、試料ごとに評価された。
【0119】
該接着試験の結果が、下記の表2に示されている。
【0120】
【0121】
表2の結果は、ソルビトール及びメラミンの両方で開始された乳酸オリゴマータッキファイヤー樹脂を含むHMA配合物(HMA1、HMA2及びHMA3)が、参照及び比較例と比較して、ほぼ全ての基体に対して改善された接着を有することを示す。該参照及び比較用HMA1配合物は、4日後に有意に悪化した性能を示し、このことは、HMA1、HMA2及びHMA3におけるソルビトール乳酸オリゴマータッキファイヤーの添加が、長期的な接着を改善したことを示す。
【0122】
引き剥がし接着不良温度
引き剥がし接着不良温度(PAFT:peel adhesion failure temperature)が、先のHMA配合物の殆どについて決定された。
【0123】
該PAFT試験は、下記の通りに行われた。
【0124】
HMAビーズ(163℃で溶融)が、ガラス棒を用いてボール紙基体に手作業で施与され、1.5~2.5mmのビーズを用意した。第2のボール紙基体が、該ビーズ上にあてがわれて、結合を形成した。
【0125】
結合を作製して24時間後に、それらに、該基体に付着した100グラムの重りを吊るした。該基体又は該接着剤のいずれかがその温度下で不良である場合、該重りが落下し、及び該温度が記録された。
【0126】
参照HMAは、90℃を超えるPAFTを示した。
【0127】
HMA1のPAFTは90℃を超え、HMA2のPAFTは52℃であり、及び比較用HMA1のPAFTは90℃を超えた。
【0128】
該HMA配合物のDSC及びレオメトリー特性、並びに接着及びPAFT試験の結果の観点において、HMA1は、HMA2よりも良好な全体的性能を有していることが見出されたが、両方のHMA配合物は、殆どの場合において参照及び比較用配合物よりも優れていることが見出された。
【0129】
オリゴマータッキファイヤーの特性に対する多官能性重合開始剤の影響
同じMn及び乳酸含量を用いて、但し、様々な官能性の開始剤を用いて、幾つかのタッキファイヤーが調製され、タッキファイヤーの特性に対する多官能性重合開始剤の影響を調査した。
【0130】
該タッキファイヤーの調製は、100%L-ラクチドから誘導された乳酸モノマーを用いて、表3に示されている通り異なる開始剤を使用して、実施例1について先に記載されている通りに行われた。
【0131】
数平均分子量(Mn)は、前述の通りGPCによって決定された。融解エンタルピー(J/g)、ガラス転移温度(Tg)及び溶融温度(Tm)は、前述の通り示差走査熱量測定(DSC)によって決定された。
【0132】
結果が、下記の表3に提供されている。
【0133】
【0134】
様々な量のタッキファイヤーを含むHMAの接着特性
HMA配合物が、表4に詳述されている実施例1の様々な量のタッキファイヤーを用いて調製され、HMA配合物の接着特性に対するタッキファイヤーの量の影響を評価した。
【0135】
【0136】
HMA配合物は、上記HMA1及びHMA2配合物について先に記載されている通り、同じコポリマー樹脂、オリゴマーワックス及び核剤を更に含み、且つ下記の通りに調製された。オーバーヘッド撹拌装置を備えたガラスフラスコ内で、タッキファイヤーが、163℃の温度で、撹拌下で溶融され、核剤が、該溶融タッキファイヤーに添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。オリゴマーワックスが添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。最後に、コポリマー樹脂が少量ずつ添加され、そして溶融するまで混合され、そして均一な混合物が得られた。該混合物は、施与されるまで撹拌下、163℃で維持された。異なるHMA配合物の接着が、Frovi 250ボール紙上で試験された。HMAビーズ(163℃で溶融)が、ガラス棒を用いてボール紙基体に手作業で施与され、1.5~2.5mmのビーズを用意した。第2のボール紙基体が、該ビーズ上にあてがわれて、結合を形成した。引き続き、全ての試験基体が、-20℃、20℃及び52℃で2回分保存され、接着時に試験された。結合は、該結合を破壊する為にほぼ180°の角度で引き離された。
【0137】
繊維引裂きパーセンテージは、繊維によって被覆された接着剤のパーセンテージを記録することによって、試料ごとに評価された。接着値は、ボール紙ストリップを引っ張った後に、施与された接着剤上に移った繊維の知覚量で表される(繊維引裂き%)。
【0138】
結果が、下記の表5、6及び7に提示されている。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
該データは、様々な温度で、接着の保持が、タッキファイヤー樹脂の使用によって有意に増大されることを示している。タッキファイヤーの最適な量は、最終施与の温度に依存しうる。
【0143】
幅広い温度(例えば、-20℃~52℃)にわたって、開始時と経時的の両方で良好な接着性能を提供しうるタッキファイヤーの最適な量は、例えば15~35重量%であることが見出された。