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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20230308BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20230308BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230308BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20230308BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C08F290/12
C08F299/00
C08F2/44 C
C08G59/18
C08L33/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021542940
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020032052
(87)【国際公開番号】W WO2021039799
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019154623
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019210603
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020041298
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】福留 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋樹
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-298884(JP,A)
【文献】特開平06-256426(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240049(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/110503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08K
C08G59
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)と、重合性化合物(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む硬化性組成物であって、
該重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を有し、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であることを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。nは、2以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記重合体(A)の重量平均分子量は、5000~1000000であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化触媒(C)は、カチオン硬化触媒、及び、ラジカル硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物(B)は、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸化合物、マレイミド化合物、アルコール、及び、チオールからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物(B)は、メチレンマロン酸ジエステル化合物、及び、α-シアノアクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合性化合物(B)は、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
コーティング剤用、粘着剤用、接着剤用、レジスト用、塗料用、印刷用インク組成物用、電子部品用、及び、光学部品用からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
コーティング剤、粘着剤、接着剤、レジスト、塗料、印刷用インク組成物、電子部品、及び、光学部品からなる群より選択される少なくとも一種を製造するための、請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。より詳しくは、硬化反応性に優れた硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性官能基を側鎖に有する高分子化合物は、エネルギー線又は熱により架橋反応を起こし、良好な硬化物を与えることから、工業的に汎用性が高く有用であり、粘・接着剤、コーティング剤、塗料、インク、レジスト等、幅広い用途で用いられている。
例えば、エポキシ基のような環状エーテル基や(メタ)アクリロイル基を有する高分子化合物は、エネルギー線の照射又は加熱により、カチオン又はラジカルを発生する化合物の存在下において硬化が進行することが知られている。また、ヒドロキシル基とイソシアネート基やカルボキシル基とオキサゾリル基は加熱によって架橋反応が進行することが知られている。
【0003】
ところで、ビニルエーテル基を側鎖に有する高分子化合物も、エネルギー線の照射又は加熱により架橋反応を起こし硬化物を与えることが知られている。
例えば、特許文献1には、特定の構造を有するビニルエーテル基含有重合体と、エネルギー線の照射にてカチオン又はラジカルを発生する特定の化合物を含むことにより、エネルギー線の照射による硬化においても気泡が生成しない上、エネルギー線の照射による硬化性能が著しく高く、良質の硬化物が得られる、硬化性組成物が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、カチオン重合性化合物と、カチオン重合性官能基を有するアクリル樹脂と、光カチオン重合開始剤をそれぞれ所定範囲量で含むことにより、充分な光硬化性を有し、難接着であるポリカーボネート、PETを代表とする硬質プラスチックに対し十分な接着性を有する光硬化型樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-298884号公報
【文献】特開2006-57078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように種々の硬化性組成物がこれまでに提案されている。しかしながら、従来の硬化性組成物においては、硬化反応性について未だ改善の余地があった。また、上記硬化性組成物が、エネルギー線硬化と熱硬化のいずれにおいても充分に硬化して、所望の硬化物を与えることができると、上記硬化性組成物をより幅広い用途に適用することができる。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、エネルギー線硬化や熱硬化のいずれによっても優れた硬化反応性を発揮する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、硬化性組成物について種々検討したところ、特定の構造単位、及び、特定範囲の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有する重合体と、重合性化合物及び/又は硬化触媒とを含むことにより、硬化反応性に優れた硬化性組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、重合体(A)と、重合性化合物(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む硬化性組成物であって、上記重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を有し、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であることを特徴とする硬化性組成物である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。nは、2以上の整数を表す。)
【0012】
本発明はまた、重合体(A)と、重合性化合物(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む硬化性組成物であって、上記重合体(A)は、下記一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分のグループトランスファー重合物であることを特徴とする硬化性組成物である。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
【0015】
上記硬化性組成物において、上記重合体(A)の重量平均分子量は、5000~1000000であることが好ましい。
【0016】
上記硬化性組成物において、上記硬化触媒(C)は、カチオン硬化触媒、及び、ラジカル硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
上記硬化性組成物において、上記重合性化合物(B)は、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸化合物、マレイミド化合物、アルコール、及び、チオールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0018】
また、上記硬化性組成物において、上記重合性化合物(B)は、メチレンマロン酸ジエステル化合物、及び、α-シアノアクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0019】
また、上記硬化性組成物において、上記重合性化合物(B)は、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記硬化性組成物は、コーティング剤用、粘着剤用、接着剤用、レジスト用、塗料用、印刷用インク組成物用、電子部品用、及び、光学部品用からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、コーティング剤、粘着剤、接着剤、レジスト、塗料、印刷用インク組成物、電子部品、及び、光学部品からなる群より選択される少なくとも一種を製造するための、上述の硬化性組成物の使用である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の硬化性組成物は、上述の構成からなるため、硬化反応性に優れる。本発明の硬化性組成物は、粘着剤、接着剤、印刷用インク組成物、レジスト用組成物、コーティング剤、成形材料等の各種用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】GPC法により測定して得られる微分分子量分布曲線の概略図である。
図2】実施例における光カチオン硬化サンプルのDSC曲線を示す図である。
図3】実施例における光ラジカル硬化サンプルのDSC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0025】
硬化性組成物(1)
本発明の第一の硬化性組成物(以下、「硬化性組成物(1)」とも称する。)は、重合体(A)と、重合性化合物(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含み、上記重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を有し、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であることを特徴とする。
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。nは、2以上の整数を表す。)
【0028】
本発明の硬化性組成物(1)が、優れた硬化反応性を有するのは、反応性が非常に高いビニルエーテル基を有する重合体を含むことに加え、硬化反応が効率良く進むのに十分な量のビニルエーテル基が重合体中に存在するためと推測される。従来のビニルエーテル基を側鎖に有する重合体は、重合体を製造する際にビニルエーテル基の一部が反応し、それを起点に重合体どうしのカップリングが起こったり、主鎖から高分子鎖がグラフトしたりするため、分子量分布が大きくなる。この場合、重合体においてビニルエーテル基が消費されており、重合体中のビニルエーテル基の含有量が不十分となる。つまり、分子量分布が上述した所定の範囲に制御された重合体は、重合体中のビニルエーテル基の含有量が充分な重合体であり、そのような重合体を使用することで硬化性組成物が優れた硬化反応性を発揮しうると考えられる。
【0029】
また、上記重合体(A)は、例えばラジカル重合で合成した場合ではゲル成分が含まれるため、平坦な塗膜が得られない等の所望の形状の硬化物が得られなかったり、硬化物の強度が低下したりするおそれがあったが、上記重合体(A)の分子量分布が所定範囲に制御された重合体は、ゲル成分の発生が抑制されるため、良好な硬化物を得ることができる。
【0030】
以下に、本発明の硬化性組成物(1)に含まれる各成分について説明する。
<重合体(A)>
本発明の硬化性組成物(1)において使用する重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(a1)」とも称する。)を有し、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0である。
【0031】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(1)において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
又はRで表される有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状又は環状の1価の炭化水素基、及び、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部を、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換したもの等が挙げられる。
【0032】
上記鎖状の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基等の飽和炭化水素基、アルケニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられ、好ましくは飽和炭化水素基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、ノニル基、メチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、ジメチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、3,3-ジエチルペンチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;ビニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、1-オクテニル基、又は、2-オクテニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0033】
上記環状の炭化水素基としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、メトキシフェニル基、トリクロロフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、塩素、臭素、又はフッ素が好ましく、フッ素がより好ましい。
【0034】
なかでも、上記有機基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、又は炭素数6~11の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基、炭素数1~2のハロゲン化アルキル基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基が更に好ましい。
【0035】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又は有機基を表す。
で表される有機基としては、例えば、上述したR及びRで表される有機基と同じものを挙げることができる。なかでも、Rは、炭素数1~11の鎖状又は環状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
上記一般式(1)において、nは、2以上の整数である。
【0036】
上記構造単位(a1)を有する重合体は、例えば、下記一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を重合することにより得られる。
【0037】
【化4】
【0038】
上記一般式(2)中、R、R、R及びRは、上記一般式(1)中のR、R、R及びRとそれぞれ同じである。nは、2以上の整数を表す。
【0039】
上記一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等を好ましく挙げることができる。
【0040】
上記重合体(A)は、上記構造単位(a1)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0041】
上記重合体(A)における上記構造単位(a1)の含有割合は、全構造単位100モル%に対して1~100モル%であることが好ましい。上記構造単位(a1)の含有割合は、架橋密度を上げ、硬化物に耐溶剤性や硬度等を付与できる点で、4モル%以上であることがより好ましく、8モル%以上であることが更に好ましい。また、上記構造単位(a1)の含有割合は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。
なお、上記構造単位(a1)として2種以上含む場合は、上記含有割合は、その2種以上の合計含有割合である。
【0042】
上記重合体(A)は、更に、他の構造単位(a2)を有していてもよい。上記他の構造単位(a2)としては、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外の他の重合性単量体由来の構造単位が挙げられる。
上記他の重合性単量体としては、例えば、電子不足二重結合を有する重合性単量体が挙げられ、これらは製造する重合体の目的、用途に応じて適宜選択することができる。
【0043】
上記電子不足二重結合を有する重合性単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N’-ジメチルアミノエチル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の窒素原子含有重合性単量体類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能性重合性単量体類;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;
4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類;
メチレンブチロラクトン、メチルメチレンブチロラクトン等の重合性環状ラクトン単量体類;(メタ)アクリロニトリル;無水マレイン酸;
1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカ-2-イルメタアクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、アルコキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0044】
上記他の重合性単量体は、炭素数が1~22であることが好ましく、1~18であることがより好ましく、3~15であることが更に好ましい。
【0045】
上記重合体(A)は、上記他の構造単位(a2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0046】
上記重合体(A)における上記構造単位(a2)の含有割合は、全構造単位100モル%に対して0~99モル%であることが好ましい。上記構造単位(a2)の含有割合は、硬化物に柔軟性や密着性、安定性、耐熱性等の上記構造単位(a2)に由来する諸物性を付与することができる点で、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましく、96モル%以下であることがより好ましく、92モル%以下であることが更に好ましい。
なお、上記構造単位(a2)として2種以上含む場合は、上記含有割合は、その2種以上の合計含有割合である。
【0047】
上記構造単位(a1)及び(a2)の含有割合は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、H-HMR等を用いて、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルやそれ以外のモノマーの反応率の比やH-NMRの該当する積分値の比較の方法により求めることができる。
【0048】
上記重合体(A)は、主鎖末端に、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有することが好ましい。後述のように、上記重合体(A)が、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤として使用したグループトランスファー重合により製造される場合、上記重合体の主鎖の重合開始側末端には、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物に由来する基が形成される。
【0049】
グループトランスファー重合は、後述のように、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤としてモノマーを重合させるアニオン重合の一種であり、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリル基又は上記構造単位(a2)を与える電子不足二重結合を有する重合性単量体に付加することにより、後述するような炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の構造が末端に形成されると同時に、新たなシリルケテンアセタールが重合体の成長末端側に形成される。そして、形成されたシリルケテンアセタールに、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類又は上記構造単位(a2)を与える電子不足二重結合を有する重合性単量体が更に重合する。このように、単量体成分の重合において、成長末端のシリルケテンアセタールが次々と重合体分子の末端へと移ってゆくことにより重合体が得られると考えられている。
【0050】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基としては、例えば、下記一般式(3)、(4)又は(5)で示される構造が好ましく挙げられる。
【0051】
【化5】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、有機基を表す。)
【0052】
【化6】
(式中、R、R及びR7’は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。)
【0053】
【化7】
(式中、R、R及びR7’は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。)
【0054】
上記一般式(3)、(4)及び(5)において、R及びRで表される有機基としては、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
なかでも、R及びRで表される炭化水素基は、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることが更により好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0055】
及びR7’で表される有機基としては、例えば、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~22の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、アダマンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であることが特に好ましい。
及びR7’で表される上記炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
複数あるR7’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
また、RとR又はRとR若しくはR7’は、結合して環構造を形成していてもよい。上記環構造としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル等のシクロアルキル等の脂環式炭化水素構造;ジヒドロフラン環、テトラヒドロフラン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン環等の含酸素ヘテロ環構造;等が挙げられる。
【0057】
なお、上記グループトランスファー重合を用いて上記重合体(A)を製造する際に、重合開始剤として、後述する一般式(7)で表されるシリルケテンアセタール、一般式(8)で表されるビニルシラン化合物、一般式(9)で表されるアリルシラン化合物をそれぞれ用いると、得られる重合体は、それぞれ上記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)で表される構造の主鎖末端を有する。
なかでも、上記重合体(A)は、グループトランスファー重合で得られた場合に分子量分布が制御されやすい点で、主鎖に、上記一般式(3)で表されるシリルケテンアセタール由来の末端基を有することが好ましい。
【0058】
上記重合体(A)はまた、更に、下記一般式(6)で表される末端構造を有していてもよい。主鎖の片末端に、下記一般式(6)で表される末端構造を有すると、重合体に所望の機能を付与することができる。上記重合体(A)は、主鎖の一方の末端(第一の末端)に上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有し、もう一方の末端(第二の末端)に下記一般式(6)で表される末端構造を有することが好ましい。
【0059】
【化8】
【0060】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基又はプロパルギル基を表す。nは、2以上の整数を表す。)
【0061】
上記一般式(6)中、R、R、R及びRは、上記一般式(1)中のR、R、R及びRとそれぞれ同じである。
【0062】
上記一般式(6)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基又はプロパルギル基を表す。上記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。
上記Xは、なかでも、重合体の末端基を統一できる点では水素原子であることが好ましく、重合体に機能を付与しやすい点ではプロパルギル基であることが好ましく、重合体の安定性を高める点ではアルキル基であることが好ましい。
【0063】
上記重合体(A)は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0~4.0である。上記重合体(A)が、上記構造単位(a1)を有し、かつ、上述した分子量分布を有することにより、硬化反応性に優れ、かつ硬化物としての諸物性のばらつきを抑制することができる。
上記重合体(A)の分子量分布は、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。なお、上記分子量分布は、「分散度」とも称される。
【0064】
上記重合体(A)の重量平均分子量は、各種用途において適した範囲が存在するが、5000~1000000であることが好ましい。
上記重合体(A)の重量平均分子量は、耐久性の点で、10000以上であることがより好ましく、20000以上であることが更に好ましく、重合体の取り扱い性の点で、800000以下であることがより好ましく、600000以下であることが更に好ましい。
【0065】
上記重合体(A)の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。分子量分布は、重量平均分子量を数平均分子量で除することにより算出して求めることができる。
【0066】
上記重合体(A)は、不溶分の量が、上記重合体100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
不溶分の量が多くなると、平坦な塗膜が得られない等、硬化性組成物の硬化物の形状が悪くなったり、硬化物の強度が低下したりするおそれがある。
上記不溶分とは、重合体に含まれるゲル成分であり、好ましくは酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフランに対して不溶な成分であり、25℃での溶解度が、酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフラン100gに対して0.5g以下、好ましくは0.1g以下である。
上記不溶分の量は、上記重合体の濃度が約33質量%となるように、酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフランを加え、室温で充分に攪拌した後、孔径4μmのフィルターに通し、そのフィルター上に残った不溶分の乾燥後の質量を(b)とし、初期の重合体の質量を(a)とした場合に、(b)/(a)×100より求めることができる。
【0067】
上記重合体(A)は、上記重合体(A)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定して得られる微分分子量分布曲線において、上記微分分子量分布曲線の最大値の点をTとし、上記微分分子量分布曲線上Tの5%高さの点を低分子量側からL及びLとする場合に、T-L-Lで囲まれた三角形の面積(X)と、該微分分子量分布曲線とL-Lを結ぶ線で囲まれた部分の面積(Y)との比(X/Y)が、0.8~2.0であることが好ましい。上記重合体が上述の範囲の比を満たすことにより、重合体のゲル化が抑制されていると言える。上記比(X/Y)は、0.8~1.5であることがより好ましい。
なお、図1に、GPC法により測定して得られる微分分子量分布曲線の概略図と、上記T、L、Lを示す。
上記GPCの測定条件は、後述する実施例に記載の方法と同様である。
【0068】
上記重合体(A)の含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、5~100質量%であることが好ましく、架橋密度を上げ、硬化物に耐溶剤性や硬度等を付与することができる点で、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、上記重合体(A)の含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、99.9質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、「固形分総量」とは、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等や硬化触媒を除く成分)の総量を意味する。
【0069】
また、本発明の硬化性組成物がレジスト用硬化性組成物である場合、上記重合体(A)の含有量は、耐溶剤性が良好となりうる点で、硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。
【0070】
(重合体(A)の製造方法)
上記重合体(A)を製造する方法としては、上述した構成を有する重合体(A)を製造することができる方法であれば、特に限定されないが、上記重合体(A)を効率良く製造することができる点で、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分をグループトランスファー重合することにより製造する方法が好ましい。グループトランスファー重合を行うことにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリロイル基のみを重合反応させた重合体を効率良く製造することができる。また、この方法によれば、得られる重合体に含まれるゲル成分(不溶分)の量を低く抑えることができる。
【0071】
グループトランスファー重合は、シリルケテンアセタール等の炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤としてモノマーを重合させるアニオン重合の一種である。炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリロイル基に付加し、新たに形成された重合体の成長末端のシリルケテンアセタールが次々と重合体分子の末端へと移ってゆくことにより重合体が得られる。
このようなグループトランスファー重合を用いることにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合反応を、室温等の、制御が比較的容易な温度範囲で行うことができる。また、反応系内の水分量を厳密に制御する必要もなく、上記重合反応を行うことができる。更に、上記重合を用いれば、不純物の生成が少なく、高転化率でビニルエーテル基を残存させたままビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造することができる。
【0072】
上記重合体(A)の好ましい製造方法として、上記グループトランスファー重合を用いた製造方法を以下に説明する。
上記重合体(A)の製造方法は、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒の存在下でグループトランスファー重合する工程を含むことが好ましい。
【0073】
上記重合反応では、具体的には、反応前に、上記単量体成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちいずれか2つを反応容器内に仕込み、残り1つを添加することにより重合が開始する。これらを添加する順序については特に限定されず、任意の方法で添加して重合を開始することができる。
また、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、触媒、及び、単量体成分は、それぞれ、使用する全量を一度に添加してもよいし、少量ずつ連続的に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。
【0074】
上記単量体成分を重合して得られる重合体の分子量は、上記単量体成分の種類及び量や、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の種類及び量、上記触媒の種類及び量、使用する溶媒の種類や量により適宜制御することができる。
【0075】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に上記重合体を製造することができる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0076】
上記触媒の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に上記重合体を製造することができる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0077】
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行うこともできるが、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、原料、触媒、重合開始剤、重合体を溶解させることのできる溶媒であれば制限されないが、重合反応が効率良く進行し得る点で、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0078】
本発明において使用する溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペンタフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン等のフッ素系溶媒;DMSO、ニトロメタン等が挙げられる。
なかでも、重合反応がより一層効率良く進行し得る点で、上記溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、及びニトリル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒であることがより好ましい。
上記溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
上記溶媒の使用量としては、使用する単量体成分総量100質量%に対して、好ましくは10~10000質量%、より好ましくは50~5000質量%、更に好ましくは100~1000質量%が挙げられる。
【0080】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の酸素濃度が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物や触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記酸素濃度は、800ppm以下であることがより好ましく、0~500ppmであることが更に好ましい。
上記酸素濃度は、ポーラロ方式溶存酸素計により測定することができる。
【0081】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の水分量が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の水分量が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が分解を起こしにくく触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記水分量は、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。
上記水分量は、カールフィッシャー水分測定法により測定することができる。
【0082】
上記重合における反応温度は、特に制限されないが、分子量及び分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、-20~100℃が好ましく、-10~50℃がより好ましく、0~30℃が更に好ましい。また、製造コスト低減の観点から、室温±20℃で重合する工程を含むことも、本発明の製造方法の好ましい形態の一つである。
反応時間は、特に制限されないが、10分~48時間が好ましく、30分~36時間がより好ましく、1~24時間が更に好ましい。
【0083】
上記重合における反応雰囲気下は、大気下でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
また上記重合における雰囲気中の酸素濃度は、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。
【0084】
上記重合反応で得られる重合体は、主鎖末端に重合開始剤のシリル基を含むシリルケテンアセタール構造又はエノレートアニオン構造となっており、反応系内に水、アルコール、又は酸を添加して、重合体の片末端のシリルケテンアセタール又はエノレートアニオンをカルボン酸又はエステルに変換させることにより、重合反応を停止させてもよい。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。
上記酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。
水、アルコール又は酸の使用量としては特に制限されないが、使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物1molに対し、好ましくは1~1000mol、より好ましくは1~100mol、更に好ましくは1~10molである。
【0085】
また、上記水、アルコール、又は酸の代わりに、求電子剤を添加してもよい。求電子剤を添加することにより、目的の官能基を導入して、重合反応を停止させることができる。上記求電子剤としては、例えば、ヨウ素や臭素等のハロゲン、ハロゲン化コハク酸イミド化合物、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化プロパルギル、アルデヒド、酸クロライド等が挙げられる。
上記求電子剤の使用量としては、特に限定されないが、使用するシリルケテンアセタール1molに対し、好ましくは0.5~1.5mol、より好ましくは0.6~1.3mol、更に好ましくは0.8~1.2molである。
【0086】
上記製造方法において使用する単量体成分、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒について説明する。
【0087】
上記単量体成分としては、上記構造単位(a1)を導入し得る単量体と、上記構造単位(a2)を導入し得る単量体が挙げられる。上記構造単位(a1)を導入し得る単量体としては、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。上記構造単位(a2)を導入し得る単量体としては、上述した他の重合性単量体が挙げられる。
上記各単量体の含有量は、所望の含有割合範囲の構造単位を有する重合体が得られるよう、適宜設定するとよい。
【0088】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物としては、例えば、下記一般式(7):
【0089】
【化9】
【0090】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R、R、R及びR10は、同一又は異なって、有機基を表す。RとR又はRとRは、結合して環構造を形成していてもよい。R、R及びR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるシリルケテンアセタール、下記一般式(8):
【0091】
【化10】
【0092】
(式中、R、R及びR7’は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R、R及びR10は、同一又は異なって、有機基を表す。RとR又はRとR7’は、結合して環構造を形成していてもよい。R、R及びR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるビニルシラン化合物、及び、下記一般式(9):
【0093】
【化11】
【0094】
(式中、R、R及びR7’は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R、R及びR10は、同一又は異なって、有機基を表す。RとR又はRとR7’は、結合して環構造を形成していてもよい。R、R及びR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるアリルシラン化合物の1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0095】
なかでも、重合が効率良く進みやすい点で、シリルケテンアセタールがより好ましい。
【0096】
上記一般式(7)、(8)及び(9)において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
上記R及びRとしては、上述した一般式(3)、(4)、(5)中のR及びRとそれぞれ同じものが挙げられる。
上記R及びR7’としては、上述した一般式(3)、(4)、(5)中のR及びR7’とそれぞれ同じものが挙げられる。
【0097】
上記一般式(7)、(8)及び(9)において、R、R、及びR10は、同一又は異なって、有機基を表す。
、R及びR10で表される有機基としては、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~12の炭化水素基、アルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基、アルコキシ基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基であることが更に好ましい。
【0098】
また、上記R、R及びR10で表される炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
【0099】
上記一般式(7)、(8)及び(9)中の-SiR10で表される基としては、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。なかでも、入手容易であることや合成容易である点で、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェニルシリル基が好ましい。
【0100】
上記一般式(7)で表されるシリルケテンアセタールとしては、具体的には、例えば、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリメチルシリル)ジイソプロピルケテンアセタール、メチル(トリエチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(tert-ブチルジメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリメチルシリル)ジエチルケテンアセタール、メチル(トリフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(メチルジフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(ジメチルフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリエトキシシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、2-エチルヘキシル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、tert-ブチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、1-[(1-メトキシ-2-メチル-1-プロペニル)オキシ]-1-メチルシラシクロブタン等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易である点や合成容易な点、また安定性の点から、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタールが好ましい。
上記シリルケテンアセタールは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
上記一般式(8)で表されるビニルシラン化合物としては、具体的には、例えば、ビニルトリメチルシラン、1-トリメチルシリルヘキセン、1-トリメチルシリルオクテン、1-トリメチルシリル-1-フェニルエチレン、1-トリメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニル-tert-ブチルジメチルシラン、1-tert-ブチルジメチルシリルヘキセン、1-tert-ブチルジメチルシリルオクテン、1-tert-ブチルジメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニルトリス(トリメチルシリル)シラン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルヘキセン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルオクテン、1-トリス(トリメチルシリル)シリル-2-フェニルエチレン等が挙げられる。
【0102】
上記一般式(9)で表されるアリルシラン化合物としては、具体的には、例えば、3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリエチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルエチルシリル)-1-プロペン、3-(トリイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルフェニルシリル)-1-プロペン、2-メチル-3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリメチルシリル)-2-メチル-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-2-メチル-1-プロペン等が挙げられる。
【0103】
上記触媒としては、ブレンステッド塩基やルイス塩基等の塩基性触媒として作用するものが好ましく挙げられ、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基;トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基;等が挙げられる。
なかでも、上記触媒としては、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合をより一層効率良く行うことができる点で、有機リン化合物、N-ヘテロ環カルベン、フッ素イオン含有化合物、環状アミン化合物、及び、アンモニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。これらの特定の触媒を使用する場合、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類において、ビニルエーテル基のカチオン重合やビニルエーテルの分解が起こりにくく、(メタ)アクリロイル基のみをより一層効率良く重合させることができる。
【0104】
上記有機リン化合物としては、例えば、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-t-BuP)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-tOct)、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,-4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Et)、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(ホスファゼン塩基P1-t-Bu)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン等のホスファゼン塩基;トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(ジメチルアミノホスフィン)、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリイソプロピル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン;等が挙げられる。なかでも、塩基性が強く、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、ホスファゼン塩基P4-t-BuP、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカンが好ましい。
【0105】
上記N-ヘテロ環カルベンとしては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジエチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-シクロヘキシルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-メシチルイミダゾール-2-イリデン等が挙げられる。なかでも、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデンが好ましい。
【0106】
上記フッ素イオン含有化合物としては、例えば、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF)、フッ化水素-ピリジン、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、フッ化水素カリウム等が挙げられる。なかでも、入手容易である点やシリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF)が好ましい。
【0107】
上記環状アミン化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等が挙げられる。
【0108】
上記アンモニウム塩化合物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムビスアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムビスベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタクロロベンゾエート、テトラブチルアンモニウムシアネート、テトラブチルアンモニウムメトキシド、テトラブチルアンモニウムチオレート、テトラブチルアンモニウムビブロマイド、及び、これらのアンモニウム塩化合物のアンモニウムカチオンをテトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、N-メチル-N-ブチルピペリジニウム、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムカチオンに変えたものやピリジニウムカチオンに変えたもの等が挙げられる。
【0109】
また、上記の他に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンのような塩基性の強い含窒素複素環化合物も用いることができる。
【0110】
上記触媒は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
上記重合においては、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上述した成分以外に、更に他の成分を使用してもよい。上記他の成分としては、例えば、重合反応において通常使用される重合開始剤、連鎖移動剤、重合促進剤、重合禁止剤等の公知の添加剤等が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜選択することができる。
【0112】
上記製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。上記他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0113】
上記重合体(A)は、上述した製造方法により製造されることが好ましい。すなわち、上記重合体(A)は、上記一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分のグループトランスファー重合物であることが好ましい。
【0114】
上記製造方法で重合体(A)を製造した場合、重合に使用する単量体成分の転化率が非常に高く、残存モノマー量を非常に少なくすることができる。
一方、上記重合体(A)をラジカル重合で製造した場合、ゲル化させずに、重合体の分子量分布が上記の所定範囲に制御された重合体を得ることができたとしても、モノマーが残存し、またその量の制御が困難であるため、得られる硬化物の物性発現の再現性が低下するおそれがある。
上記重合体(A)の残存モノマーの含有量は、重合体100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0~3質量%であることが更に好ましい。
残存モノマーの含有量は、H-NMRやガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0115】
<重合性化合物(B)>
本発明において使用する重合性化合物としては、上記重合体(A)を架橋しうる化合物であれば、特に限定されないが、なかでも、ビニルエーテル基と効率的に反応することができる点で、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸化合物、マレイミド化合物、アルコール、及び、チオールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。なかでも、上記重合性化合物としては、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、チオールがより好ましく、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物が更に好ましい。
上記重合性化合物は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等の脂環式化合物含有ビニルエーテル;アリルビニルエーテル等のアリル基含有ビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能性ジビニルエーテル;等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物の分子量は10000以下であることが好ましい。
【0117】
上記環状エーテル化合物としては、例えば、エポキシ基を含有する化合物、オキセタン化合物、テトラヒドロフラン環を有する化合物、上述した重合性単量体と同様の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
上記環状エーテル化合物の具体例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,2-エポキシシクロヘキサン等の単官能エポキシ樹脂;ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸、グリシジルメタクリレート等の2官能エポキシ樹脂;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)ベンゼン、ノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の脂環式オキシラン環を有するエポキシ樹脂;3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3-シクロヘキシルオキシメチル-3-エチル-オキセタン等の単官能オキセタン樹脂;ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン等の2官能オキセタン樹脂;トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタン樹脂等が挙げられる。
上記環状エーテル化合物の分子量は10000以下であることが好ましい。
【0118】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングルコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、ジトリメチロルプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を有するマクロマー等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの分子量は10000以下であることが好ましい。
【0119】
上記カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、1,3,5-トリカルボン酸ベンゼン等の分子内に2個以上の官能基を有する化合物;ポリ(メタ)アクリル酸等の側鎖にカルボキシル基を含むような重合体等が挙げられる。
上記カルボン酸化合物の分子量は10000以下であることが好ましい。
【0120】
上記マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N,N’-テトラメチレンビスマレイミド、ビスフェノールAビス(4-マレイミドフェニルエーテル)、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン等のマレイミド化合物が挙げられる。
上記マレイミド化合物の分子量は10000以下であることが好ましい。
【0121】
上記アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ビフェニルジメタノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ジペンタエリトリトールなど、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物等が挙げられる。
上記アルコールの分子量は10000以下であることが好ましい。
【0122】
上記チオールとしては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,4,6-トリメルカプト-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-トリアジン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物等が挙げられる。また、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸など、分子内にカルボキシル基とチオール基を少なくとも1つずつ含有する化合物であってよい。
上記チオールの分子量は10000以下であることが好ましい。
【0123】
上記重合性化合物はまた、低温での硬化が可能である点で、メチレンマロン酸ジエステル化合物であることも好ましい。
上記メチレンマロン酸ジエステル化合物としては、例えば、下記一般式(10)で表されるジエステル化合物や、メチレンマロン酸ジエステルが複数結合した多官能メチレンマロン酸ジエステルが挙げられる。
【0124】
【化12】
【0125】
(式(10)中、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、もしくは炭素数1~15の炭化水素基を表すか、又は、R11及びR12が一緒になって炭素数3~15の2価の炭化水素基を形成している。R13及びR14は、同一又は異なって、炭素数1~30の1価の有機基を表す。)
【0126】
上記多官能メチレンマロン酸ジエステルとしては、上記一般式(10)で表されるジエステル化合物と多価アルコールとを両者の間でエステル交換反応が起こる条件下で反応させた反応生成物が挙げられ、例えば、下記一般式(11)又は(12)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
【化13】
【0128】
(式(11)中、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、もしくは炭素数1~15の炭化水素基を表すか、又は、R11及びR12が一緒になって炭素数3~15の2価の炭化水素基を形成している。R13は、炭素数1~30の1価の有機基を表す。R15は、n価の有機基を表す。nは、式(11)中に含まれる括弧内の構造単位の個数を表し、2以上の整数を表す。式(11)中、複数あるR11、R12、及びR13は、それぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【0129】
【化14】
【0130】
(式(12)中、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、もしくは炭素数1~15の炭化水素基を表すか、又は、R11及びR12が一緒になって炭素数3~15の2価の炭化水素基を形成している。R13は、炭素数1~30の1価の有機基を表す。R16は、2価の有機基を表す。R17は、水酸基、又は、1価の有機基を表す。mは、式(12)中に含まれる括弧内の構造単位の個数を表し、2以上の整数を表す。複数あるR11、R12及びR16は、それぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【0131】
上記一般式(10)、(11)及び(12)において、R11及びR12で表される炭化水素基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
11及びR12で表される炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソプロピル基、2-メチルブチル基、イソアミル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、ネオノニル基、2-エチルヘプチル基、2-プロピルヘキシル基、2-ブチルペンチル基、イソデシル基、ネオデシル基、2-エチルオクチル基、2-プロピルヘプチル基、2-ブチルヘキシル基、イソウンデシル基、ネオウンデシル基、2-エチルノニル基、2-プロピルオクチル基、2-ブチルヘプチル基、2-ペンチルヘキシル基、イソドデシル基、ネオドデシル基、2-エチルデシル基、2-プロピルノニル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルヘプチル基、イソトリデシル基、ネオトリデシル基、2-エチルウンデシル基、2-プロピルデシル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルオクチル基、2-ヘキシルヘプチル基、イソテトラデシル基、ネオテトラデシル基、2-エチルドデシル基、2-プロピルウンデシル基、2-ブチルデシル基、2-ペンチルノニル基、2-ヘキシルオクチル基、イソペンタデシル基、ネオペンタデシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0132】
上記一般式(10)、(11)及び(12)において、R11及びR12は、少なくとも一方が水素原子であってもよく、両方が水素原子であってもよいが、R11及びR12の両方が水素原子であることが好ましい。
【0133】
上記R11及びR12はまた、R11及びR12が一緒になって炭素数3~15の2価の炭化水素基を形成していてもよい。この場合の上記2価の炭化水素基の炭素数としては、4~12が好ましく、5~9がより好ましい。
上記2価の炭化水素基の具体例としては、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,5-ヘキシレン基等が挙げられる。
【0134】
上記一般式(10)、(11)及び(12)において、R13及びR14は、同一又は異なって、1価の有機基である。上記有機基としては、1価の炭化水素基、1価のヘテロ原子含有基等が挙げられ、これらは1又は2以上の置換基を有していてもよい。上記置換基としては、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アジド基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、複素環基、エステル基等が挙げられ、これらはさらに置換基で置換されていてもよい。
13及びR14の有する置換基の数に制限はないが、それぞれ5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましい。
【0135】
13及びR14の炭素数はそれぞれ1~30であり、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~6であることが特に好ましい。
13及びR14が1又は2以上の置換基を有する場合には、置換基を含めた炭素数がそれぞれ上記炭素数の範囲であることが好ましい。
【0136】
上記1価の炭化水素基は、1価の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐鎖状脂肪族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、上記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。
上記脂環式炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素部分を有する基であって、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素部分を有していてもよい。
上記芳香族炭化水素基は、芳香環を有する基であって、脂肪族部分を有していてもよい。
【0137】
上記脂肪族炭化水素基としては、上述した脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、上述した芳香族炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0138】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、ポリアルキレンオキシド基、ポリエステル基等が挙げられる。
【0139】
上記R13及びR14は、R13及びR14が一緒になって炭素数3~30の2価の有機基を形成していてもよい。この場合の2価の有機基の炭素数としては、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられ、上記2価の炭化水素基の具体例といては、2,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1、5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,5-ヘキシレン基等が挙げられる。
【0140】
上記2価の有機基は、炭素数3~15の2価の炭化水素基の一つ以上の水素原子が置換基に置換された基であってもよい。上記置換基としては、例えば、上述したR13及びR14における置換基と同じ基等が挙げられる。上記2価の有機基は、置換基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
上記2価の有機基は、2価のヘテロ原子含有基であってもよく、上記2価のヘテロ原子含有基としては、ポリアルキレンオキシド、ポリエステル基等が挙げられる。
【0141】
上記一般式(11)におけるR15は、n価の有機基であり、2価以上の有機基であり、例えば、ポリオールから2以上の水酸基を除いた残基であることが好ましい。
上記ポリオールとしては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、グリセリンにアルキレングリコールを付加した化合物、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
nの上限は特に限定されないが、100以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましい。
【0142】
15で表されるn価の有機基の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることが更に好ましく、1~10であることが特に好ましい。
【0143】
上記一般式(12)におけるR16は、2価の有機基である。
16で表される2価の有機基としては、例えば、上述した2価の有機基と同じ基等が挙げられるが、好ましくは、ジオールから2個の水酸基を除いた残基、ポリアルキレングリコールから2個の水酸基を除いた残基等が挙げられる。
上記ジオール又はポリアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0144】
16で表される2価の有機基は、炭素数が1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることが更に好ましく、1~10であることが特に好ましい。
【0145】
上記一般式(12)におけるR17は、水酸基、又は、1価の有機基を表す。
17で表される1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、上述したR13及びR14で表される1価の有機基と同じ基等を挙げることができる。
17は、水酸基、又は、下記一般式(13)で表される基であることが好ましい。
【0146】
【化15】
【0147】
(式(13)中、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、もしくは炭素数1~15の炭化水素基を表すか、又は、R11及びR12が一緒になって炭素数3~15の2価の炭化水素基を形成している。R14は、炭素数1~30の1価の有機基を表す。)
【0148】
上記一般式(13)における、R11、R12、及びR14としては、それぞれ上述したR11、R12、R14と同じものが挙げられる。
【0149】
上記一般式(10)で表されるジエステル化合物の具体例としては、例えば、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジヘキシル、メチレンマロン酸ジシクロヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルエチル、メチレンマロン酸ジペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸ジ-n-プロピル、メチレンマロン酸エチルヘキシル、メチレンマロン酸フェンキルメチル、メチレンマロン酸メンチルメチル、メチレンマロン酸2-フェニルプロピルエチル、メチレンマロン酸3-フェニルプロピル、メチレンマロン酸ジメトキシエチル等が挙げられる。
上記メチレンマロン酸ジエステル化合物の分子量は10000以下であることが好ましい。
【0150】
上記重合性化合物としてはまた、α-シアノアクリル酸エステルも好ましく使用できる。
上記α-シアノアクリル酸エステルとしては、従来公知のα-シアノアクリル酸エステルが使用可能であり、具体的には、メチル-α-シアノアクリル酸エステル、エチル-α-シアノアクリル酸エステル、プロピル-α-シアノアクリル酸エステル、ブチル-α-シアノアクリル酸エステル、シクロヘキシル-α-シアノアクリル酸エステル等のアルキル及びシクロアルキル-α-シアノアクリル酸エステル;アリル-α-シアノアクリル酸エステル、メタリル-α-シアノアクリル酸エステル、シクロヘキセニル-α-シアノアクリル酸エステル等のアルケニル及びシクロアルケニル-α-シアノアクリル酸エステル;プロパンギル-α-シアノアクリル酸エステル等のアルキニル-α-シアノアクリル酸エステル;フェニル-α-シアノアクリル酸エステル、トルイル-α-シアノアクリル酸エステル等のアリール-α-シアノアクリル酸エステル;ヘテロ原子を含有するメトキシエチル-α-シアノアクリル酸エステル、エトキシエチル-α-シアノアクリル酸エステル、フルフリル-α-シアノアクリル酸エステル;ケイ素を含有するトリメチルシリルメチル-α-シアノアクリル酸エステル、トリメチルシリルエチル-α-シアノアクリル酸エステル、トリメチルシリルプロピル-α-シアノアクリル酸エステル、ジメチルビニルシリルメチル-α-シアノアクリル酸エステル;等が挙げられる。なかでも、性能的、コスト的な観点から、アルキル及びシクロアルキル-α-シアノアクリル酸エステルが好ましく、エチル-α-シアノアクリル酸エステルがより好ましい。
上記α-シアノアクリル酸エステルの分子量は10000以下であることが好ましい。
【0151】
この他に、上記重合性化合物としては、ビニルエーテル基と反応し架橋構造を形成しうる化合物を用いることもできる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、グリセロール等の脂肪族アルコール;4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA等の芳香族アルコール;無水マレイン酸等の酸無水物;等が挙げられる。
【0152】
本発明の硬化性組成物が上記重合性化合物(B)を含む場合、上記重合性化合物(B)の含有量は、上記硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、1~95質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましい。
【0153】
上記重合性化合物(B)としてはまた、酸基含有アルカリ可溶性樹脂(b1)、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂(b2)も好ましく使用できる。これらの樹脂を含むことで、上記重合体(A)と樹脂に含まれる酸基が反応することができ、本発明の硬化性組成物は、200℃以下の比較的低温な硬化条件でも硬化反応を充分に進行させることができる。また、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができ、液晶・有機EL・量子ドット・マイクロLED液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等に用いられる各種の光学部材や電機・電子機器等の構成部材等の各種用途に好適に使用することができる。
【0154】
酸基含有アルカリ可溶性樹脂(b1)
酸基含有アルカリ可溶性樹脂(b1)(以下、「樹脂(b1)」とも称する。)は、酸基を有する重合体である。酸基を有することにより、アルカリ可溶性となる。
上記酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられ、これらの1種のみを有していてもよいし、2種以上有していてもよい。なかでも、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0155】
(b1-1)酸基を有する構造単位
上記樹脂(b1)は、上述した酸基を有する構造単位(b1-1)を有することが好ましい。
上記構造単位(b1-1)を有する重合体を得る方法としては、例えば、酸基含有単量体を含む単量体成分を重合する方法(1)や、エポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合して、エポキシ基を含む重合体を得た後、そのエポキシ基に酸基含有単量体の酸基を付加反応させることにより、エポキシ基を開環し、その際に発生した水酸基に多塩基酸又は多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を生じさせる方法(2)等が挙げられ、又は、これらを組み合わせた方法であってもよい。
上記方法(1)では、上記構造単位(b1-1)は、酸基含有単量体由来の構造単位である。上記方法(2)では、上記構造単位(b1-1)は、エポキシ基含有単量体由来の構造単位に酸基含有単量体を反応させ、更に多塩基酸又は多塩基酸無水物を反応させて生じたカルボキシル基を含む構造単位である。
なかでも、上記構造単位(b1-1)は、酸基含有単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0156】
上記酸基含有単量体としては、分子内に上述した酸基と重合性二重結合(炭素-炭素二重結合)を有する化合物が挙げられる。上記重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0157】
上記酸基含有単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基との間が鎖延長されている長鎖不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;ライトエステルP-1M(共栄社化学製)等のリン酸基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、入手性等の観点から、カルボン酸系単量体(不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、長鎖不飽和モノカルボン酸類、不飽和酸無水物類)が好ましい。反応性、アルカリ可溶性等の点で、上記酸基含有単量体は、より好ましくは不飽和モノカルボン酸類であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0158】
上記エポキシ基含有単量体としては、分子内にエポキシ基と上記重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記エポキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルが好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルがより好ましい。
【0159】
上記多塩基酸又は多塩基酸無水物としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸;無水コハク酸(別名:コハク酸無水物)、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等の二塩基酸無水物や、トリメリット酸無水物等の多塩基酸無水物が挙げられる。なかでも、多塩基酸無水物が好ましい。
【0160】
上記樹脂(b1)は、上記構造単位(b1-1)を1種のみ有していてもよし、2種以上有していてもよい。
【0161】
上記構造単位(b1-1)の含有割合は、適切な現像性を維持する点で、上記樹脂(b1)の全構造単位100質量%に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましく、また、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0162】
(b1-2)主鎖に環構造を有する構造単位
上記樹脂(b1)は、主鎖に環構造を有する重合体であることが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、上記樹脂(b1)の耐熱性を向上させることができる。上記環構造としては、イミド環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環等が挙げられる。これらの環構造を有するために、上記樹脂(b1)は、主鎖に環構造を有する構造単位(b1-2)を更に有することが好ましい。
【0163】
上記構造単位(b1-2)を導入しうる単量体としては、例えば、分子内に二重結合含有環構造を有する単量体や、環化重合して環構造を主鎖に有する重合体を形成する単量体、重合後に環構造を形成する単量体等が挙げられる。なかでも、良好な耐熱性や耐溶剤性、硬度、色材分散性等の観点から、N置換マレイミド系単量体、ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び、α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましく、耐熱着色性がより一層優れる点で、N置換マレイミド系単量体、及び、ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体がより好ましい。
【0164】
上記N置換マレイミド系単量体としては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、透明性の観点から、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミドが好ましく、特にN-ベンジルマレイミドが好適である。
【0165】
上記N-ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p-メチルベンジルマレイミド、p-ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p-ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o-クロロベンジルマレイミド、o-ジクロロベンジルマレイミド、p-ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド;等が挙げられる。
【0166】
上記ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体としては、例えば、2,2’-〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル-2,2’-〔オキシビス(メチレン)〕ビス-2-プロペノエート、ジアルキル-2,2’-〔オキシビス(メチレン)〕ビス-2-プロペノエート等の、エステル部位の少なくとも1つが3級炭素を含有している化合物等が挙げられる。これらの中でも、透明性や分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、例えば、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート等を用いることが好適である。
【0167】
上記α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体としては、例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル等が挙げられる。中でも、アルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体が好適である。アルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体としては、透明性や分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、例えば、メチル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート等を用いることが好適である。
【0168】
上記α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体は、例えば、国際公開第2010/114077号に開示されている製造方法により製造することができる。
【0169】
上記構造単位(b1-2)を与える単量体としてはまた、2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸と反応して、主鎖にラクトン環構造を形成することができる。
【0170】
上記2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルとしては、2-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステル、2-(2-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、具体的には、例えば、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。なかでも2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましい。
【0171】
上記樹脂(b1)は、上記構造単位(b1-2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0172】
上記構造単位(b1-2)の含有割合は、耐熱性と耐溶剤性が良好となりうる点で、上記樹脂(b1)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0173】
(b1-3)他の構造単位
上記樹脂(b1)は、上述した構造単位(b1-1)及び(b1-2)以外の、他の構造単位(b1-3)を有してもよい。
上記他の構造単位(b1-3)としては、例えば、下記の単量体由来の構造単位が挙げられる。
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカ-2-イルメタアクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ基含有単量体;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム等の重合体分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;
1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニル化合物類;
(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類;等。
【0174】
なかでも、上記構造単位(b1-3)は、上記水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、及び、エポキシ基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0175】
上記樹脂(b1)は、上記構造単位(b1-3)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0176】
上記構造単位(b1-3)の含有割合は、現像性が良好である点で、上記樹脂(b1)の全構造単位100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、92質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
上記樹脂(b1)が上記構造単位(b1-3)を2種以上含む場合、各構造単位の含有割合は、本発明の硬化性組成物の用途、目的に応じて適宜設定することができる。
【0177】
上記樹脂(b1)は、更に、エポキシ基を有することが好ましい。上記樹脂(b1)がエポキシ基を更に有することにより、本発明の硬化性組成物の硬化性を向上させることができ、耐溶剤性により一層優れた硬化物を与えることができる。
エポキシ基を有する上記樹脂(b1)は、上述したエポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。
【0178】
上記樹脂(b1)がエポキシ基を有する場合、上記樹脂(b1)のエポキシ当量は、耐溶剤性が良好である点で、100以上、20000以下であることが好ましく、200以上、8000以下であることがより好ましく、500以上、5000以下であることが更に好ましい。上記エポキシ当量は、樹脂量を樹脂中に含まれるエポキシ基のモル数で除すことで求めることができる。
【0179】
上記樹脂(b1)の酸価は、20~230mgKOH/gであることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、現像性が良好になり、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を与えることができる。30~200mgKOH/gであることがより好ましく、40~180mgKOH/gであることが更に好ましい。
上記酸価は、KOH溶液を用いた中和滴定法により測定して得られる値である。
【0180】
上記樹脂(b1)の重量平均分子量は、特に制限されず、硬化性組成物の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、1000~100000であることが好ましく、2000~50000であることがより好ましく、4000~30000であることが更に好ましい。
【0181】
上記樹脂(b1)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.0~4.0であることが好ましく、1.1~3.5であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定して得られる値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0182】
上記樹脂(b1)は、側鎖に重合性二重結合を有していてもよい。側鎖に重合性二重結合を有することにより、上記樹脂(b1)の硬化性を向上させることができる。上記重合性二重結合としては、上述した重合性二重結合を挙げることができる。なかでも、反応性の点で、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0183】
上記樹脂(b1)が側鎖に重合性二重結合を有する場合、その二重結合当量は、200~8000g/当量であることが好ましく、250~5000g/当量であることがより好ましく、300~1500g/当量であることが更に好ましい。
【0184】
上記二重結合当量とは、上記樹脂(b1)の二重結合1molあたりの樹脂溶液の固形分の質量である。上記樹脂溶液の固形分の質量とは、上記樹脂(b1)を構成する単量体成分の質量と重合禁止剤の質量とを合計したものである。上記二重結合当量は、樹脂溶液の樹脂固形分の質量(g)を樹脂の二重結合量(mol)で除することにより、求めることができる。上記樹脂の二重結合量は、重合の際に使用した酸基含有単量体と、当該酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物との量から求めることができる。上記酸基を結合しうる官能基としては、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。また、滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定することもできる。
【0185】
上記樹脂(b1)を製造する方法としては、少なくとも上記構造単位(b1-1)と、必要に応じて上記構造単位(b1-2)及び(b1-3)を有する重合体を得ることができる方法であれば、特に制限されず、上述した各構造単位(b1-1)~(b1-3)を導入しうる単量体を含む単量体成分を公知の方法で重合する方法が挙げられ、例えば、特開2015-42697号公報の段落[0039]~[0062]に記載の製造方法が挙げられる。
【0186】
上記樹脂(b1)の含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、30~45質量%であることが更に好ましい。
【0187】
熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂(b2)
熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂(b2)としては、熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基を有する樹脂が挙げられる。
熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基としては、例えば、3級炭素含有基、ビニルエーテル化合物により酸基がブロック化された基、t-ブチル基やアセチル基等の保護基によりフェノール性水酸基が保護された基、等が挙げられる。
【0188】
上記3級炭素含有基としては、好ましくは、-COO18(R18は、1価の有機基を表し、Oに結合する炭素原子は、第3級炭素原子である。)基で表される基が挙げられる。
【0189】
上記-COO18のR18は、1価の有機基を表し、Oに結合する炭素原子は、第3級炭素原子である。第3級炭素原子とは、当該炭素原子に結合している他の炭素原子が3個である、炭素原子を意味する。
【0190】
上記1価の有機基としては、好ましくは炭素数1~91の1価の鎖状、分岐状若しくは環状の飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられる。上記有機基は、置換基を有していてもよい。
18の炭素数は、より好ましくは炭素数1~50であり、更に好ましくは炭素数1~35であり、更により好ましくは炭素数1~20であり、特に好ましくは炭素数1~12であり、最も好ましくは炭素数1~9である。
【0191】
18は、好ましくは、-C(R19)(R20)(R21)で表すことができる。この場合、R19、R20、及びR21は、同一又は異なって、炭素数1~30の炭化水素基であることが好ましい。上記炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよいし、環状構造を有していてもよいし、置換基を有していてもよい。また、R19、R20、及びR21は互いに末端部位で連結して環状構造を形成していてもよい。
【0192】
ここで、上記3級炭素含有基において、上記第3級炭素原子は、隣接する炭素原子の少なくとも1つが水素原子と結合していることが好ましい。例えば、R18が、-C(R19)(R20)(R21)で表される基である場合、R19、R20及びR21のうち少なくとも1つが、水素原子を1個以上有する炭素原子を含み、かつ当該炭素原子が第3級炭素原子に結合することが好適である。
上記R19、R20及びR21は、同一又は異なって、炭素数1~15の飽和炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~10の飽和炭化水素基、更に好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、特に好ましくは炭素数1~3の飽和炭化水素基である。
上記R18は、好ましくはt-ブチル基、t-アミル基である。
【0193】
上記第3級炭素含有基を有する重合体を得るには、第3級炭素含有単量体を単量体成分として使用すればよい。上記第3級炭素含有単量体として、好ましくは、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸t-アミル等が挙げられる。
【0194】
上記ビニルエーテル化合物により酸基がブロック化された基としては、カルボキシル基等の上記酸基にビニルエーテル化合物が結合した基が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物や、ジヒドロピラン等の、開環してビニルエーテルを生じうる環状エーテル化合物等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物のなかでも、より低温で保護基が脱離しやすい点で、ジヒドロピランが好ましい。
【0195】
上記ジヒドロピランにより酸基がブロック化された基としては、好ましくは、下記式で表される基が挙げられる。
【0196】
【化16】
【0197】
上記t-ブチル基やアセチル基等の保護基によりフェノール性水酸基が保護された基としては、好ましくは、下記式で表される基が挙げられる。
【0198】
【化17】
(式中nは、置換基の数を表し、1~5の整数である。)
【0199】
上記式で表される基は、例えば、溶媒中、塩酸、硫酸等の酸触媒下に温度50~150℃で1~30時間反応を行うことで、保護基が脱離して、酸基が生成される。
【0200】
なかでも、より低温で酸基を生成することができる点で、上記ジヒドロピランにより酸基がブロック化された基が好ましい。
【0201】
(b2-1)一般式(14)で表される構造単位
上記樹脂(b2)としては、好ましくは、下記一般式(14)で表される構造単位(b2-1)を有する樹脂が挙げられる。
【0202】
【化18】
【0203】
(式中、R22は、水素原子又はメチル基を表す。Yは、直接結合、又は、2価の有機基を表す。Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。)
上記一般式(14)において、R22は、水素原子又はメチル基を表す。なかでも、耐熱性が良好である点で、R22は、メチル基であることが好ましい。
Yは、直接結合、又は、2価の有機基を表す。
【0204】
上記2価の有機基としては、置換基を有してもよい、2価の炭化水素基が挙げられる。
【0205】
上記2価の炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。
上記2価の炭化水素基は、当該炭化水素基を構成する原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。
上記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Yは、直接結合であることが好ましい。
【0206】
上記一般式(14)において、Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。
上記熱又は酸により酸基が生成される基としては、上述した熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基と同じものを挙げることができる。
【0207】
上記樹脂(b2)は、上記構造単位(b2-1)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0208】
上記構造単位(b2-1)の含有割合は、耐溶剤性が良好である点で、上記樹脂(b2)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0209】
(b2-2)主鎖に環構造を有する構造単位
上記樹脂(b2)は、主鎖に環構造を有する重合体であることが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、上記樹脂(b2)の耐熱性を向上させることができる。上記環構造としては、上述した構造単位(b1-2)に記載の環構造と同様のものが挙げられる。上記樹脂(b2)は、主鎖に環構造を有する構造単位(b2-2)を更に有することが好ましい。
上記構造単位(b2-2)を導入しうる単量体としては、上述した構造単位(b1-2)を導入しうる単量体と同じ単量体を挙げることができる。
上記樹脂(b2)は、上記構造単位(b2-2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0210】
上記構造単位(b2-2)の含有割合は、耐熱性と耐溶剤性が良好である点で、上記樹脂(b2)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0211】
(b2-3)他の構造単位
上記樹脂(b2)は、上述した構造単位(b2-1)及び(b2-2)以外に、他の構造単位(b2-3)を更に有していてもよい。
上記他の構造単位(b2-3)としては、上述した他の構造単位(b1-3)と同様の構造単位が挙げられる。
なかでも、上記構造単位(b2-3)は、水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、及び、エポキシ基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0212】
上記樹脂(b2)は、上記構造単位(b2-3)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0213】
上記構造単位(b2-3)の含有割合は、現像性が良好になる点で、上記樹脂(b2)の全構造単位100質量%に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
上記樹脂(b2)が上記構造単位(b2-3)を2種以上含む場合、各構造単位の含有割合は、本発明の硬化性組成物の用途、目的に応じて適宜設計することができる。
【0214】
上記樹脂(b2)は、更に、エポキシ基を有することが好ましい。上記樹脂(b2)がエポキシ基を更に有することにより、硬化性組成物の硬化性を向上させることができ、耐溶剤性により一層優れた硬化物を与えることができる。
エポキシ基を有する上記樹脂(b2)は、上述したエポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。
【0215】
上記樹脂(b2)の酸価は、20~230mgKOH/gであることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、現像性が良好になり、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を与えることができる。30~200mgKOH/gであることがより好ましく、40~180mgKOH/gであることが更に好ましい。
上記酸価は、KOH溶液を用いた中和滴定法により測定して得られる値である。
【0216】
上記樹脂(b2)の重量平均分子量は、特に制限されず、本発明の硬化性組成物の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、1000~100000であることが好ましく、2000~50000であることがより好ましく、4000~30000であることが更に好ましい。
【0217】
上記樹脂(b2)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に制限されないが、1.0~4.0であることが好ましく、1.1~3.5であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。
上記重合体の重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定して得られる値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0218】
上記樹脂(b2)は、側鎖に重合性二重結合を有していてもよい。側鎖に重合性二重結合を有することにより、上記樹脂(b2)の硬化性を向上させることができる。
上記重合性二重結合としては、上述した樹脂(b1)におけるものと同様のものが好ましく挙げられる。上記樹脂(b2)が側鎖に重合性二重結合を有する場合、その二重結合当量も、上述した樹脂(b1)と同様の範囲の二重結合当量が好ましく挙げられる。
【0219】
上記樹脂(b2)の製造方法としては、少なくとも上記構造単位(b2-1)と、必要に応じて上記構造単位(b2-2)及び(b2-3)を有する重合体を得ることができる方法であれば、特に制限されず、上述した各構造単位(b2-1)~(b2-3)を導入しうる単量体を含む単量体成分を公知の方法で重合する方法が挙げられる。また、酸基含有単量体を含む単量体成分を重合した後に、酸基に保護基を付加してもよい。
各単量体の量は、重合体における各構造単位の含有量が所望の範囲となるよう適宜調整することができる。
重合方法としては、特に制限されず、上記樹脂(b1)の製造方法と同様の方法が挙げられる。
【0220】
上記樹脂(b2)の含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、30~45質量%であることが更に好ましい。
上記樹脂(b1)と樹脂(b2)を併用する場合、上記樹脂(b1)と樹脂(b2)との合計含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%中、1~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることが更に好ましい。
【0221】
上記樹脂(b2)は、上述した酸基を有していてもよい。上記樹脂(b)は、上記熱もしくは酸により酸基を生成する基と、上述した酸基とを有してもよい。
【0222】
上記重合性化合物は、上記ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸化合物、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂、マレイミド化合物、アルコール、及び、チオールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0223】
<硬化触媒(C)>
本発明において使用する硬化触媒としては、特に限定されないが、好ましくは、カチオン硬化触媒、及び、ラジカル硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、ビニルエーテル基の架橋反応が速やかに進行する点で、カチオン硬化触媒が好ましい。
カチオン硬化触媒、ラジカル硬化触媒のどちらの場合も、実施形態に応じて、熱潜在性又は光潜在性のものを用いることもできる。また、ルイス酸やブレンステッド酸そのものをカチオン硬化触媒として用いることもできる。これらの触媒は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0224】
(熱潜在性カチオン硬化触媒)
上記熱潜在性カチオン硬化触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。これらは、光照射によっては実用的な量のカチオン活性種を発生し得ない化合物であり、カチオン活性種を発生する温度は、40℃~200℃が好ましく、60℃~180℃がより好ましく、80℃~150℃が更に好ましい。上記熱潜在性カチオン硬化触媒として、非イオン性の硬化触媒と、イオン性の硬化触媒が挙げられる。
【0225】
上記熱潜在性カチオン硬化触媒のうち、非イオン性硬化触媒としては、有機ホウ素化合物等のルイス酸部と、アミン、ピリジン等の窒素含有化合物、ホスフィン等のリン含有化合物、スルフィド等の硫黄含有化合物等のルイス塩基部との組み合わせからなる化合物が挙げられる。
【0226】
上記熱潜在性カチオン硬化触媒のうち、イオン性硬化触媒としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウム、(4-ヒドロキシフェニル)メチル-o-トリルスルホニウム、(4-アセトキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリシアノメタニド等のアニオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。
【0227】
(光潜在性カチオン硬化触媒)
上記光潜在性カチオン硬化触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、非イオン性の硬化触媒とイオン性の硬化触媒が挙げられる。上記非イオン性の硬化触媒としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。上記イオン性の硬化触媒としては、例えば、ジフェニルヨードニウム、4-メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4-(ジフェニルスルフォニオ)-フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)-フェニル〕スルフィド、4-クロロフェニルジフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、η5-2,4-(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6-η-(メチルエチル)ベンゼン〕-Fe(1+)等のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のアニオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。また、必要に応じてチオキサントン等の光増感剤を添加しても良い。
【0228】
また上記光潜在性カチオン硬化触媒として、光酸発生剤も使用することができ、そのような化合物としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0229】
なかでも、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及び、ジアゾメタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、オニウム塩化合物であることがより好ましく、トリアリールスルホニウム塩であることが更に好ましい。
【0230】
上記オニウム塩化合物としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0231】
上記ジアリールヨードニウム塩としては、具体的には、Bluesil PI2074(Elkem社製)、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート等のジフェニルヨードニウム塩;4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム塩;ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム-p-トルエンスルホナート等のビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0232】
上記トリアリールスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリフェニルスルホニウム塩;4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩;4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0233】
上記トリアリールホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルホスホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルホスホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリフェニルホスホニウム塩;4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウム塩;トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムトリフルオロアセテート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0234】
上記スルホンイミド化合物としては、例えば、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(カンファニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(カンファニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0235】
上記ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0236】
(熱潜在性ラジカル硬化触媒)
上記熱潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等が挙げられる。
【0237】
(光潜在性ラジカル硬化触媒)
上記光潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「IRGACURE184」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-1フェニルプロパノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;ベンゾイルぎ酸メチル;
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(「IRGACURE907」、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(「IRGACURE369」、BASF社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(「IRGACURE379」、BASF社製)等のアミノケトン系化合物;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(「IRGACURE651」、BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(「DAROCUR MBF」、BASF社製)等のベンジルケタール系化合物;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(「IRGACURE184」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「DAROCUR1173」、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(「IRGACURE2959」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(「IRGACURE127」、BASF社製)、[1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン+ベンゾフェノン](「IRGACURE500」、BASF社製)等のハイドロケトン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](「OXE01」、BASF社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(「OXE02」、BASF社製)、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-,(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン(「OXE03」、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(「OXE04」、BASF社製))等のオキシムエステル系化合物;ベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン系化合物;チオキサントン系化合物;ハロメチル化トリアジン系化合物;ハロメチル化オキサジアゾール系化合物;ビイミダゾール系化合物;チタノセン系化合物;安息香酸エステル系化合物;アクリジン系化合物;等が挙げられる。
【0238】
本発明の硬化性組成物が上記硬化触媒(C)を含む場合、上記硬化触媒(C)の含有量は、上記重合体(A)の100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.5~3質量部であることが更に好ましい。
【0239】
また、上記硬化触媒(C)として、特に上記光潜在性ラジカル硬化触媒を使用する場合、上記硬化触媒(C)の含有量は、本発明の硬化性組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0240】
また、上記硬化触媒(C)として、特に上記光酸発生剤の光潜在性カチオン硬化触媒を使用する場合、上記硬化触媒(C)の含有量は、本発明の硬化性組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0241】
本発明の硬化性組成物(1)は、上述した成分以外に、更に他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、上述した以外の他の重合性化合物、エポキシ化合物、溶媒、連鎖移動剤、分散剤、酸化防止剤、レベリング剤、無機微粒子、カップリング剤、硬化剤、硬化助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、帯電防止剤、老化防止剤、濡れ性改良剤、密着付与剤、色材(顔料、染料)、耐熱向上剤、現像助剤、フィラー、熱硬化性樹脂、つや消し剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変助剤、キノンジアジド化合物、多価フェノール化合物、カチオン重合性化合物、熱酸発生剤等の1種又は2種以上の任意の成分が挙げられる。これらは、硬化性組成物の目的、用途に応じて、公知のものから適宜選択するとよい。また、その使用量も適宜設定することができる。
【0242】
(他の重合性化合物)
本発明の硬化性組成物(1)は、上記他の重合性化合物を含むことが好ましい。上記他の重合性化合物を更に含むことにより、硬化性に加え、耐溶剤性、機械的強度、耐熱性等の各種物性にも優れた硬化物を与えることができる。
上記他の重合性化合物は、フリーラジカル、電磁波(例えば赤外線、紫外線、X線等)、電子線等の活性エネルギー線の照射等により重合し得る、重合性不飽和結合(重合性不飽和基とも称す)を有する低分子化合物であり、例えば、重合性不飽和基を分子中に1つ有する単官能の化合物と、2個以上有する多官能の化合物が挙げられる。
上記他の重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2015-42697号公報の段落[0077]~[0085]に記載される、上述した重合性化合物(B)以外の、単官能の重合性化合物や多官能の重合性化合物が挙げられる。
【0243】
上記多官能の重合性化合物としては、なかでも、反応性、経済性、入手性等の観点から、好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート化合物等の、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、より好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことにより、硬化性組成物が感光性及び硬化性により優れたものとなり、より一層高硬度で高透明性の硬化物を得ることができる。上記多官能の重合性化合物としては、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが更に好ましい。
【0244】
上記他の重合性化合物の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に制限されず適宜設定すればよいが、硬化性組成物を適切な粘度にできる点から、硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~50質量%である。
【0245】
(エポキシ化合物)
本発明の硬化性組成物(1)は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物を含むと、カチオン重合が進行し、架橋反応がより進行しやすくなり、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基と重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、例えば、上述したエポキシ基含有単量体が挙げられる。
上記エポキシ化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは2~40質量%であり、更に好ましくは5~30質量%である。
【0246】
硬化性組成物(2)
本発明の第二の硬化性組成物(以下、「硬化性組成物(2)」とも称する。)は、重合体(A)と、重合性化合物(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む硬化性組成物であって、上記重合体(A)は、下記一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分のグループトランスファー重合物であることを特徴とする。
【0247】
【化19】
【0248】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
このようなグループトランスファー重合物を含む硬化性組成物もまた、硬化反応性に優れる。
【0249】
また、上述したように、上記グループトランスファー重合物は、グループトランスファー重合により得られるものであるため、不溶分量が少なく、所望の形状を有する硬化物や、良好な強度を有する硬化物を得ることができる。更に、残存モノマーの量が少ないため、得られる硬化物の物性発現の再現性が高くなる。
【0250】
上記グループトランスファー重合体は、上述した一般式(1)で表される構造単位(a1)において、nが1以上の整数であること以外は、上記構造単位(a1)と同じである構造単位を有することが好ましい。
【0251】
上記硬化性組成物(2)において使用される重合体(A)は、上述した構造単位を有する以外は、上記硬化性組成物(1)において使用される重合体(A)と同様の構造単位を更に有していてもよい。また、上記硬化性組成物(2)において使用される重合体(A)の各種分子量、不溶分量、残存モノマー量等の物性や、硬化性組成物における含有量は、上記硬化性組成物(1)において使用される重合体(A)と同じであることが好ましい。
【0252】
上記硬化性組成物(2)において使用される重合体(A)の製造方法としては、単量体成分として、上述した一般式(2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類において、nが1以上の整数であるものを使用すること以外は、上記硬化性組成物(1)において使用される重合体(A)の製造方法に記載のグループトランスファー重合を行う方法と同じ方法が挙げられる。
上記一般式(2)においてnが1以上の整数である、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル等が好ましく挙げられる。
【0253】
上記硬化性組成物(2)において使用される重合性化合物(B)、及び、硬化触媒(C)としては、上記硬化性組成物(1)において使用される重合性化合物(B)、及び、硬化触媒(C)とそれぞれ同じものが挙げられる。それらの含有量も同様である。
【0254】
また、上記硬化性組成物(2)は、更に他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、上記硬化性組成物(1)で使用される他の成分と同じものが挙げられる。
【0255】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物(1)及び(2)の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した各成分を、ビーズミル、ボールミル、ニーダー、ブレンダー等の公知の各種混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。また、重合体を製造した後に製造に用いた溶剤を脱溶剤したものに別の溶剤を加え、各成分と混合してもよい。また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。例えば、色材を含む場合、溶媒や分散剤等を用いて色材組成物を予め調製し、次いで、上述した各成分と混合してもよい。
【0256】
<使用方法>
本発明の硬化性組成物(1)及び(2)の使用方法としては、例えば、基材上に、上記硬化性組成物を塗布し、塗布物を乾燥、加熱、又は活性エネルギー線を照射、あるいはこれらの組み合わせにより、塗布物を硬化させて硬化膜を形成する方法等が挙げられる。
【0257】
上記基材としては、特に限定されず、例えば、木材、ガラス、各種プラスチック、あるいはこれらの組合せからなる公知の基材が挙げられる。
【0258】
塗布方法は、特に限定されず、グラビアコート、ロールコート、バーコート、アプリケーター、インクジェット等の公知の方法で行うことができる。
【0259】
乾燥又は加熱方法は、硬化性組成物の組成、目的、用途に応じて、公知の方法から適宜選択すればよいが、例えば、50~300℃で行うことが好ましく、60~200℃で行うことがより好ましい。乾燥加熱時間は、1分~72時間であることが好ましく、20分~24時間であることがより好ましい。
【0260】
活性エネルギー線照射は、赤外線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を用いて公知の方法で行うことができる。照射量は、硬化性組成物の組成、用途に応じて適宜設定することができる。
【0261】
また、本発明の硬化性組成物(1)及び(2)は、成形材料として使用してもよい。成形方法としては、特に限定されず、硬化性組成物の組成、目的又は用途に応じて、射出成形、押出成形、3Dプリンタ等の公知の方法から適宜選択することができる。
【0262】
上記硬化性組成物の硬化物が硬化膜である場合、その厚さは、その目的、用途に応じて適宜設計すればよいが、通常、1μm~5mmであることが好ましい。
【0263】
<用途>
本発明の硬化性組成物(1)及び(2)は、活性エネルギー線や熱による硬化反応性に優れる。本発明の硬化性組成物(1)及び(2)は、粘着剤、接着剤、印刷用インク組成物、3Dプリンタ用組成物、レジスト用組成物、シール材、離型性、指紋付着防止、撥水、親水、ハードコート、防汚、帯電防止、絶縁性等の機能を付与した各種コーティング剤、自動車用、建築・構造物用、工業用、パッケージング用等の各種機能性塗料、表面保護シート、基板、レンズ、電子部品、光学フィルム、光学部品等の各種成形材料等の用途に好適に使用することができる。
【0264】
本発明の硬化性組成物(1)及び(2)は、レジスト用組成物として好適に使用することができ、カラーフィルター用組成物としてより好適に使用することができる。レジスト用組成物として好適な本発明の硬化性組成物(1)及び(2)の製造方法や使用方法としては、特開2015-42697号公報の段落[0120]~[0140]に記載の方法が挙げられる。
【実施例
【0265】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を、それぞれ意味するものとする。
重合体の各種物性について、下記の方法で測定した。
【0266】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分子量分布(Mw/Mn)>
得られた重合体を、テトラヒドロフランで溶解・希釈し、孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置、及び条件で測定した。
装置:HLC-8020GPC(東ソー株式会社製)
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
分離カラム:TSKgel SuperHM-M、TSKgel SuperH-RC(東ソー株式会社製)
なお、重合体B-1、B-2については、分離カラムとして、TSKgel SuperHZM-M、TSKgel SuperH-RC(東ソー株式会社製)を使用した。
【0267】
H-NMR測定>
得られた重合体について、下記の条件でH-NMR測定を行った。
装置:アジレント・テクノロジー社製核磁気共鳴装置(600MHz)
測定溶媒:重クロロホルム
サンプル調製:得られた重合体の数mg~数十mgを測定溶媒に溶解した。
【0268】
<不溶分率>
得られた重合体約2~3gに、固形分が約33質量%となるよう酢酸エチルを添加し、室温で充分に攪拌した後、得られた溶液を孔径が4μmのフィルターに通した。フィルター上の残渣を更に約7~10gの酢酸エチルを用いて洗浄した後、残渣を室温で5分間乾燥させ、乾燥後の残渣の質量(b)を測定した。重合体の質量を(a)とし、下記式より、不溶分率を算出した。
不溶分率(質量%)=(b)/(a)×100
【0269】
<X/Y比>
上記の重合体のGPC法による分子量測定で得られた微分分子量分布曲線において、図1に示すように、最大値の点をTとし、上記微分分子量分布曲線上Tの5%高さの点を低分子量側からL及びLとした場合の、T-L-Lで囲まれた三角形の面積(X)と、上記微分分子量分布曲線とL-Lを結ぶ線で囲まれた部分の面積(Y)とを求め、比(X/Y)を算出した。
【0270】
<固形分>
重合体溶液をアルミカップに約1gはかり取り、アセトン約3gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。そして、熱風乾燥機(商品名:PHH-101、エスペック社製)を用い、真空下170℃で1.5時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定した。その質量減少量から、重合体溶液の固形分(質量%)を計算した。
【0271】
<酸価>
重合体溶液を3g精秤し、アセトン90gと水10gの混合溶媒に溶解させ、0.1NのKOH水溶液を滴定液として用いて滴定した。滴定は、自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)を用いて行い、溶液の酸価と溶液の固形分から固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を求めた。
【0272】
重合体の製造
(製造例1)
<メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル重合体の製造>
50mLのシュレンクフラスコに、脱水テトラヒドロフラン(230質量部)、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(0.9質量部)、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(0.02質量部)を入れ、窒素気流下、室温で攪拌しながら、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEM」と称する。)(100質量部)を10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で5時間攪拌した後、反応溶液をシリカゲルカラムに通すことで触媒を除去した。得られた溶液を濃縮し、VEEM重合体を得た。得られた重合体をH-NMRで確認したところ、6.5ppm付近にビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。
モノマーであるVEEMは観測されず、重合体に含まれる不溶分は0%であった。
得られた重合体の重量平均分子量は42000、数平均分子量は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。また、重合体のX/Yの値は1.16であった。
これに100質量部の酢酸エチルを加え、50質量%の重合体溶液を調製した。
【0273】
(製造例2)
<メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル-メタクリル酸メチル共重合体の製造>
500mLのフラスコに、脱水テトラヒドロフラン(200質量部)、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(1.7質量部)、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(0.02質量部)を入れた。窒素気流下、20℃で撹拌しながら、モノマー混合液(VEEM(20質量部)、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と称する。)(90質量部))をゆっくり滴下した。5時間攪拌した後、酢酸エチルで希釈し、シリカゲルショートカラムに通すことで触媒を除去した。得られた溶液の重合体濃度を濃縮・調整し、重合体濃度50%のVEEM-MMA共重合体溶液を得た。得られた共重合体を1H-NMRで確認したところ、ビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。モノマーであるVEEM、MMAは観測されず、共重合体に含まれる不溶分は0%であった。上記共重合体の構造単位の割合は、VEEM/MMA=11/89(モル%)であった。また、上記共重合体の重量平均分子量は15000、数平均分子量は12800、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.17であった。上記共重合体のX/Yの値は1.37であった。
【0274】
(製造例3)
<メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル-メタクリル酸メチル共重合体の製造>
フラスコにVEEM(100質量部)、MMA(50質量部)、脱水テトラヒドロフラン(350質量部)、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(2質量部)を入れ、窒素気流下、室温で攪拌しながらホスファゼン塩基P4-t-Bu(0.8Mトルエン溶液、2.5質量部)を加えた。室温で終夜(約20時間)攪拌した後、少量のメタノールを加え、反応溶液を濃縮し、VEEM-MMA共重合体を含む重合体組成物を得た。
得られた重合体組成物をH-NMRで確認したところ、6.5ppm付近にビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。このことから、VEEMのメタクリロイル基のみが重合した重合体が得られたことが確認された。一方、モノマーであるVEEMのピークは確認されなかった。共重合体に含まれる不溶分は0%であった。上記共重合体の構造単位の割合は、VEEM/MMA=50/50(モル%)であった。
また、得られた共重合体の重量平均分子量は27600、数平均分子量は10600であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.61であった。上記共重合体のX/Yの値は1.11であった。
【0275】
(製造例4)
<アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル重合体の製造>
フラスコにアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEA」と称する。)(100質量部)、脱水トルエン(180質量部)、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(1質量部)を入れ、窒素気流下、30℃で攪拌しながらホスファゼン塩基P4-t-Bu(0.8Mトルエン溶液、2質量部)を加えた。30℃で終夜(約24時間)攪拌した後、少量のメタノールを加え、反応溶液を濃縮し、VEEA重合体を含む重合体組成物を得た。
得られた重合体組成物をH-NMRで確認したところ、6.5ppm付近にビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。このことから、VEEAのアクリロイル基のみが重合した重合体が得られたことが確認された。一方、モノマーであるVEEAのピーク(6.5ppm、6.2ppm、及び5.8ppm付近のピーク)は確認されなかった。重合体に含まれる不溶分は0%であった。また、得られたVEEA重合体の重量平均分子量は19400、数平均分子量は7600であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.57であった。上記VEEA重合体のX/Yの値は1.04であった。
【0276】
(製造例5)
<メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体の製造>
20℃恒温槽に浸したフラスコ中、脱水テトラヒドロフラン(400質量部)、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(6質量部)、安息香酸テトラブチルアンモニウム(0.1質量部)の混合物に、VEEM(100質量部)とメタクリル酸シクロヘキシル(以下、「CHMA」と称する。)(100質量部)の混合物を窒素気流下にて10分間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を同条件にて5時間撹拌した。得られた溶液を酢酸エチルで希釈し、シリカゲルショートカラムに通してから減圧濃縮することでVEEM-CHMA共重合体を含む重合体組成物を得た。
得られた重合体組成物をH-NMRにて確認したところ、重合に用いられたVEEM及びCHMAは完全に消費されていた。得られた共重合体に含まれる不溶分は0%であった。
また、上記共重合体の重量平均分子量は6900、数平均分子量は6272であり、分子量分布(Mw/Mn)は、1.1であった。上記VEEM-CHMA共重合体のX/Yの値は1.20であった。
【0277】
(製造例6)
<メタクリル酸グリシジル重合体の製造>
温度計、不活性ガス導入管、還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」と称する。)(30質量部)、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と称する。)(70質量部)を加え反応溶液とした。バブリングによって反応溶液中に窒素ガスを通じ、3時間脱気を行った後、不活性ガス導入管から窒素ガスを流通させながら反応溶液を70℃まで昇温し、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル:AIBN)(0.34質量部)のMEK溶液(5質量部)を反応溶液にゆっくり加えた。その後同温で20時間撹拌し、室温まで放冷後MEK(100質量部)を加えて重合体溶液を得た。この重合体溶液を、ヘキサンを用いて再沈殿することによりGMA重合体を得た。得られた重合体の重量平均分子量は125800、数平均分子量は23200、分子量分布(Mw/Mn)は5.42であった。
【0278】
(製造例7)
<重合体B-1の製造>
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート81.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテル37.7部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、メタクリル酸-t-ブチル70.0部、メタクリル酸20.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート34.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル14.7部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.1部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、GMAを16.5部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、重合体溶液B-1(固形分39.8%)を得た。得られた重合体の重量平均分子量は15000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、酸価は60mgKOH/gであった。
【0279】
(製造例8)
<重合体B-2の製造>
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート201.0部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、CHMA43.6部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル30.0部、GMA16.4部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30.0部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン2.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート31.3部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸11.5部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.3部を仕込み、60℃3時間反応させ、重合体溶液B-2(固形分28.8%)を得た。得られた重合体の重量平均分子量は10000、分子量分布(Mw/Mn)は2.8、酸価は68mgKOH/gであった。
【0280】
(実施例1~28、比較例1~9)
<硬化性組成物の製造>
上記で得られた重合体溶液と、重合性化合物、及び、硬化触媒をそれぞれ表1~3に示すような配合で混合し、硬化性組成物を得た。なお、表中の配合量は、固形分換算量である。
【0281】
<硬化性評価(アセトンラビング試験)>
得られた硬化性組成物を、片面易接着処理を施したPETフィルム(7cm×21cm)に、バーコータを利用して25μmの厚さになるように塗工し、室温で10~20分間程度放置した後、塗工物を、へレウス社製紫外線照射装置FUSION UVを使用して、表1に記載の照射エネルギー条件で紫外線硬化させるか、又は、表2~3に記載の硬化条件で熱硬化させて、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜に、アセトンを染み込ませたキムワイプ(日本製紙クレシア株式会社製)で20回ラビングし、下記の評価基準にて、硬化度合を確認した。結果を表1~3に示す。
(評価基準)
○:硬化塗膜は溶解せず。
△:硬化塗膜にラビング痕が残るか、又は膨潤した。
×:硬化塗膜が白化又は溶解した。
【0282】
なお、表1~3中に記載の化合物は、下記のとおりである。
BMI-2300:フェニルメタンマレイミド、大和化成工業株式会社製
PI2074:BluesilTM PI2074、Elkem社製
Irg184:IRUGACURE184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、BASF社製)
ポリアクリル酸(Mw5000):アルドリッチ製
FRONZA B5200XP:SIRRUS社製
サンエイドSI150L:三新化学工業株式会社製
サンエイドSI110L:三新化学工業株式会社製
サンエイドSI100L:三新化学工業株式会社製
有機ホウ素化合物:FX-TP-BC-PC-AD-57103、株式会社日本触媒製
【0283】
【表1】
【0284】
【表2】
【0285】
【表3】
【0286】
表1~3より、実施例の硬化性組成物は、紫外線硬化においても、熱硬化においても、硬化反応性に優れ、少ないエネルギーで良好な硬化物を与えることがわかった。
また、実施例の硬化性組成物は、比較例である、カチオン硬化性化合物の中でも一般的なエポキシ基を側鎖に有する重合体(GMA)を含む硬化性組成物と比較しても硬化反応性に優れることがわかった。
【0287】
<光硬化反応性評価>
製造例1で得られたVEEM重合体、及び、製造例2で得られたVEEM-MMA共重合体について、下記の方法により、光硬化反応性を評価した。また、対照として、セロキサイド2021P(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、株式会社ダイセル製)と、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を使用して、同様に光硬化反応性を評価した。
装置:NETZSCH DSC 204F1 Phoenix
方法:容器にサンプルを1~2mgはかりとり、装置にセットしたのち、窒素雰囲気下、サンプル温度を25℃に保ちながら10mW/cmの光(光源:キセノンランプ、フィルターなし)を5分間照射し、その間の反応発熱量の変化を測定した。
光カチオン硬化サンプルとして、VEEM-MMA共重合体40質量%のプロピレンカーボネート溶液、又は、エポキシ化合物(セロキサイド2021P)に、光カチオン硬化触媒としてBluesilTM PI2074(Elkem社製)を固形分に対し1質量%を混合したものを用いた。
また、光ラジカル硬化サンプルとして、VEEM重合体50質量%のプロピレンカーボネート溶液、又は、TMPTAに、光ラジカル開始剤としてIrg184を固形分に対し2質量%を混合したものを用いた。測定結果を図2及び図3に示す。
【0288】
図2は、光カチオン硬化サンプルのDSC曲線を示す。図2によれば、光照射が始まる3.5分から急激に発熱が始まり、硬化反応が進行していることがわかった。比較対照であるエポキシ化合物は、発熱量がピークに達した後もしばらく硬化反応による発熱が続いていた。一方、VEEM-MMA共重合体では発熱ピークが急峻であり、硬化反応が短時間で終了していた。これらより、ビニルエーテル基を含有するポリマーは硬化反応性に優れることがわかった。
【0289】
図3は、光ラジカル硬化サンプルのDSC曲線を示す。図3より、VEEM重合体は、多官能アクリレート化合物と同等レベルの光ラジカル硬化性を有することがわかった。
【0290】
上記では硬化性組成物の硬化性を評価したが、実用上は硬化性組成物により形成される塗膜の物性も重要である。従って、更に、実施例の硬化性組成物を用いて、硬化塗膜の密着性、鉛筆硬度について下記の方法で評価を行った。
なお、評価用の硬化塗膜には、上述した<アセトンラビング試験>で用いた硬化塗膜と同様の方法にて形成した硬化塗膜を用いた。
【0291】
<密着性評価(クロスカット試験)>
上記評価用の硬化塗膜を用い、旧JIS-K5400に準じて、硬化塗膜のPETフィルムに対する密着性を評価した。すなわち、硬化塗膜の上から、1mm間隔で11本の切込みを入れた後、90℃向きを変えて同様に11本の切込みを入れ、10マス四方の碁盤目を作成した。切り込みは塗膜を貫通し、PETフィルムを貫通しない程度とした。碁盤目を完全に覆うようにセロハンテープを貼付け、よく擦って密着させた。その後、テープの端をもって45度の角度で一気に剥がした。テープを剥がした後に、PETフィルム上に残ったマス目の数を数えた。残ったマス目の数が多いほど密着性が高いと判断する。結果を表4に示す。
【0292】
<鉛筆硬度試験>
上記評価用の硬化塗膜を用い、JIS K5600-5-4に従って、塗膜のひっかき硬度を評価した。測定装置として、電動式鉛筆硬度試験機No.553-M(株式会社安田精機製作所製)を使用し、鉛筆は三菱鉛筆株式会社製のものを用いた。キズ痕(塑性変形)を生じない、最も硬い鉛筆の硬度を表4に示した。
【0293】
【表4】
【0294】
表4より、実施例の硬化性組成物を用いて形成された硬化塗膜は、PETフィルムに対する密着性に優れ、鉛筆硬度も良好で、優れた性能を示すことが確認された。
【0295】
(実施例29~30、比較例10)
表5に示す配合となるように、各成分を混合して、硬化性組成物を得た。なお、表中の配合量は、固形分換算量である。また、表中の顔料分散体1は、下記の方法で調製した。
(調製例1)
顔料分散体1の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを12.9部、分散剤としてディスパロンDA-7301を0.4部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58を2.25部、及び、C.I.ピグメントイエロー138を1.5部混合し、ペイントシェーカーにて3時間分散することで顔料分散体1(固形分22質量%)を得た。
【0296】
表5中に記載の化合物は、下記のとおりである。
イルガキュアOXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製)
【0297】
得られた硬化性組成物の耐溶剤性について、下記の方法で評価した。結果を表5に示す。
<耐溶剤性>
硬化性組成物を5cm角のガラス基板上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥後、高圧水銀灯を用いて60mJで露光を行い、110℃で40分間熱処理(後硬化)を行い、膜厚5μmの硬化膜を得た。そして、その硬化膜を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)20gに40℃で10分間浸漬した後取り出し、硬化膜を取り出した後の浸漬液(NMP)について、分光光度計UV3100(島津製作所社製)で吸光度を測定した。吸光度の値が大きいほど、浸漬液中に色材が多く溶出したことを示し、硬化性組成物の耐溶剤性が低いと評価した。
【0298】
【表5】
【0299】
表5より、実施例の硬化性組成物は、硬化反応性に優れ、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることが確認された。
【符号の説明】
【0300】
1 微分分子量分布曲線
図1
図2
図3