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特許7240512PD-1阻害剤を投与することにより子宮頸がんを処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】PD-1阻害剤を投与することにより子宮頸がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230308BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZMD
A61K39/395 T
A61K31/282
A61P35/00
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021545411
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021034000
(87)【国際公開番号】W WO2021242728
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】63/029,757
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/069,942
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/160,074
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/174,474
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/181,434
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/185,881
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジー・フュリー
(72)【発明者】
【氏名】イザレル・ロウィ
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ・ディブヤ・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ナズミ・アリス・ヤマ-デン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン・フュリー
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】冨永 みどり
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】Clinical Cancer Research 26 (2020.03), 1025-1033
【文献】frontiers in Pharmacology 10 (2019), Article 65
【文献】Gynecologic Oncology 157 (2020.01), 161-166
【文献】Annals of Oncology 29(suppl_10) (2018), X27-28
【文献】Journal of Clinical Oncology 38(15_suppl)(2020.05.20), 10018
【文献】Gynecol.Oncol.,2020,Vol.159,No.2,p.322-328
【文献】Expert Opin Drug Discov.,2018,Vol.13,No.5,p.445-457
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAPlus/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮頸がん患者の腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するかまたは全生存を改善する方法で使用するための、プログラム死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、該方法は:
(a)再発性もしくは転移性子宮頸がんであって、白金ベースの化学療法時に、もしくはこの後で、疾患進行を伴う患者を選択する工程と;
(b)患者へと、3週間ごとに350mgの用量で抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を投与する工程であって、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は単剤療法として投与される工程と
を含み、
該抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(HCVR)の3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、該HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;該HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;該HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;該LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;該LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;および該LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み;ならびに
該抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の投与は、化学療法で処置された患者と比較した、全生存の延長をもたらす、
前記医薬組成物。
【請求項2】
子宮頸がんは、扁平上皮癌、腺癌、および腺扁平上皮癌からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
子宮頸がんは、進行性、および/または遷延性である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
白金ベースの化学療法は、疾患の進行および/もしくは毒性に起因して中断された、請
求項1から3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
患者は、先行抗VEGF療法を施されている、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
先行抗VEGF療法は、ベバシズマブを含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
子宮頸がんは、PD-L1の発現の上昇を呈する、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
子宮頸がんは、PD-L1タンパク質の発現の上昇を呈する、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
子宮頸がんは、PD-L1 mRNAの発現の上昇を呈する、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
患者は、ヒトパピローマウイルス(HPV)について検査されて陽性である、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
患者は、ヒトパピローマウイルス(HPV)について検査されて陰性である、請求項1からのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の投与は、さらに、腫瘍の退縮を促進し、腫瘍細胞負荷を軽減し、腫瘍量を低減し、かつ/または患者における腫瘍の再発を防止する、請求項1から11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の投与は、さらに、化学療法で処置された患者と比較した、無進行生存の延長、全奏効率の増大、完全奏効の増大、部分奏効の増大、および安定の増大から選択される、少なくとも1つの改善をもたらす、請求項1から12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/2の、HCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、該重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、該軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、該重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有し、該軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うHCVRを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うLCVRを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うHCVRと、配列番号2に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うLCVRとを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、セミプリマブである、請求項1から19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、静脈内投与または皮下投与される、請求項1から23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がん患者の全生存を改善する方法であって、それを必要とする、子宮頸がんを伴う患者を選択する工程と、患者へと、治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程とを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮頸がんは、世界中で、高頻度で診断されるがんの第4位、および女性におけるがんによる死因の第4位であり、1年当たりの症例は、約570,000例であり、2018年における関連死は、約311,000例である(非特許文献1)。子宮頸がんのうちの約95%は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の慢性感染から生じる(非特許文献2)。子宮頸がんのうちの約80%は、扁平上皮癌(子宮頸部の底部の内膜をなす細胞から生じる)として分類され、残りの大部分は、腺癌(子宮頸部の上部における腺細胞から生じる)である。HPVの高危険性株に対するワクチン接種は、子宮頸がんの、全世界的な発生率を、今後の15年間において、減少させることが予測されているが、この疾患の負担は、依然として甚大である(非特許文献3)。
【0003】
子宮頸がんは、早期に検出され、効果的に管理された場合、しばしば治癒可能であるが、進行期には、処置選択肢が限定される。米国では、子宮頸がんを伴う患者のうちの約3分の1が、再発性疾患または転移性疾患を被り、化学療法を、第一選択の処置として施される。しかし、これらの患者のうちの、少なくとも3分の2は、最終的に、疾患進行、毒性、または死のために、第一選択の化学療法を中断することになる。
【0004】
局所進行疾患を伴う患者のために、治癒を意図する治療は、シスプラチンを併用する、根治的放射線療法である。再発性疾患または転移性疾患を伴う患者は、適応される場合、ベバシズマブと組み合わせた化学療法で管理される(非特許文献4)。これらの患者の、シスプラチン、パクリタキセル、およびベバシズマブの組合せによる第一選択処置は、シスプラチンとパクリタキセルとの組合せ単独に対する、全生存の延長(OS:13.3カ月間と対比した17.0カ月間)および奏効率の上昇(36%と対比した48%)と関連する(非特許文献5)。しかし、再発性疾患または転移性疾患のための、白金-タキサンベースの第一選択の化学療法時に進行した後に、標準治療は存在しない。この帰結として、腫瘍が、これらのレジメン時に進行した患者のための処置選択肢は、限定的であり、生存中央値は、第二選択以降の状況下では、約7カ月間に過ぎない(非特許文献4;非特許文献6;非特許文献7)。ペムブロリズマブは、目的の奏効率および応答の持続性に基づき、化学療法時に、またはこの後で、疾患進行を伴う、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者(その腫瘍が、プログラム死リガンド1を発現する)の処置について、米国食品医薬品局からの加速化承認を受けた(非特許文献6)。しかし、転移性子宮頸がんのための、第一選択の化学療法の後で、全生存を改善することを示した薬剤は存在しない。ベバシズマブを伴うか、またはこれを伴わない、標準的な第一選択の白金-タキサンベースの化学療法時における進行の後において、再発性子宮頸癌または転移性子宮頸癌を伴う患者のための処置選択肢を開発することが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Brayら、CA Cancer J Clin、68(2018)、394~424
【文献】Burkら、Nature、543(2017)、378~384
【文献】Brayら、Lancet Oncol、2012、13:790~801
【文献】Marthら、Ann Oncol、28(2017)、iv72~iv83
【文献】Tewariら、N Engl J Med、370(2014)、734~743
【文献】Lorussoら、Ann Oncol、21(2010)、61~66
【文献】Millerら、Gynecol Oncol、110(2008)、65~70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
免疫チェックポイントである、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現は、腫瘍細胞およびウイルス感染細胞のいずれにおいても観察される免疫回避戦略である。PD-L1の発現は、腫瘍細胞および周囲の間質についての免疫組織化学解析を使用して、子宮頸部扁平上皮癌の大部分において検出されている(Heerenら、Cancer Immunol Res、3(2015)、48~58)。しかし、子宮頸がんのための、安全かつ効果的な治療が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がん患者の全生存を改善する方法であって、子宮頸がんを伴う患者を選択する工程と;患者へと、治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程とを含む方法に関する。一部の実施形態では、子宮頸がんは、扁平上皮癌、腺癌、および腺扁平上皮癌からなる群から選択される。一部の実施形態では、子宮頸がんは、子宮頸部の扁平上皮癌である。一部の実施形態では、子宮頸がんは、進行性、再発性、遷延性、および/または転移性である。一部の実施形態では、子宮頸がんは、再発性または転移性である。一部の実施形態では、患者は、化学療法時に、またはこの後で、疾患進行を有する。一部の実施形態では、患者は、化学療法時に、またはこの後で、疾患進行を伴う、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを有する。ある特定の実施形態では、患者は、扁平上皮癌の組織像を伴う子宮頸がんを有する。ある特定の実施形態では、患者は、治癒を意図する選択肢(例えば、化学療法を伴うか、またはこれを伴わない、手術または放射線療法)が存在しない子宮頸がんを有する。一部のこのような実施形態では、患者は、治癒的手術または治癒的放射線療法の候補者ではない。一部の実施形態では、患者は、化学療法(例えば、パクリタキセル)または抗VEGF療法(例えば、ベバシズマブ)のような先行処置を施されている。一部のこのような実施形態では、患者は、先行治療に対して、耐性または不応性である。一部の実施形態では、患者は、疾患の進行および/または毒性に起因して中断された、先行抗がん治療を施されている。一部の実施形態では、先行抗がん治療(例えば、化学療法またはベバシズマブ)は、子宮頸がんを伴う患者に適切ではない。
【0008】
一部の実施形態では、患者は、先行抗がん治療を施されている。一部の実施形態では、患者は、抗がん治療による先行処置に対して耐性であるか、または子宮頸がんは、抗がん治療による先行処置の後で進行した。一部の実施形態では、先行抗がん治療は、化学療法、手術、放射線療法、および/または抗VEGF療法のうちの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、先行抗がん治療は、ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、およびビノレルビンから選択される、白金ベースの化学療法を含む。一部の実施形態では、子宮頸がんは、PD-L1の発現の上昇を呈する。一部の実施形態では、子宮頸がんは、PD-L1タンパク質の発現の上昇を呈する。一部の実施形態では、子宮頸がんは、PD-L1 mRNAの発現の上昇を呈する。一部の実施形態では、患者は、ヒトパピローマウイルス(HPV)について検査されて陽性である。一部の実施形態では、患者は、ヒトパピローマウイルス(HPV)について検査されて陰性である。
【0009】
ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、単剤療法として投与される。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、腫瘍の退縮を促進し、腫瘍細胞負荷を軽減し、腫瘍量を低減し、かつ/または患者における腫瘍の再発を防止する。一部の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、化学療法で処置された患者と比較した、全生存の延長、無進行生存の延長、全奏効率の増大、完全奏効の増大、部分奏効の増大、および安定の増大から選択される、少なくとも1つの改善をもたらす。一部の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、化学療法で処置された患者と比較した、全生存の延長をもたらす。一部の実施形態では、上記で列挙された改善のうちのいずれかは、腫瘍内のPD-L1の発現にかかわらず生じる。
【0010】
ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、第2の治療剤または治療と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片、および抗PD-L2抗体またはその抗原結合性断片から選択される。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片であり、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を有し;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を有し;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を有し;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を有し;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を有し;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/2の、HCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有し、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号1に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うHCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号2に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うLCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号1に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うHCVRと、配列番号2に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を伴うLCVRとを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブまたはその生物学的同等物である。
【0012】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0608、BI 754091、PF-06801591、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、JNJ-63723283、およびMCLA-134からなる群から選択される抗PD-1抗体である。他の実施形態では、PD-1阻害剤は、REGN3504、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035、およびCK-301からなる群から選択される抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、5mg~1500mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、200mg、250mg、350mg、400mg、500mg、600mg、700mg、750mg、800mg、1000mg、1050mg、または1200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg~20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg、3mg、または10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、1回またはそれ以上の回数の投与として投与され、各回の投与は、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、または6週間ごとに投与される。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、静脈内投与、皮下投与、または腹腔内投与される。
【0013】
別の態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がん患者の全生存を改善する方法であって、(a)子宮頸がんを伴う患者を選択する工程と;(b)患者へと、治療有効量のPD-1阻害剤を投与する工程とを含む方法における使用のためのプログラム死1(PD-1)阻害剤に関する。一部の実施形態では、子宮頸がんは、化学療法時に、またはこの後で疾患進行を伴う、または化学療法が適切ではない再発性子宮頸がんもしくは転移性子宮頸がんである。
【0014】
別の態様では、開示される技術は、プログラム死1(PD-1)阻害剤を、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がんを伴う患者の全生存を改善するための、治療有効量のPD-1阻害剤の使用のための指示書と組み合わせて含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に記載される、がんゲノムアトラス(TCGA)による子宮頸がん内の、PD-L1 mRNAの、組織像ごとの発現についての箱髭図である。
図2】実施例2に記載される研究についての概略図である。
図3】実施例4に記載される患者の全集団内のMMRM(mixed model repeated measures)推定値による、Global Health Status/Quality of Lifeスケールにおける、ベースラインからの平均値変化を示すグラフである。
図4】実施例4に記載される研究における、扁平上皮癌(SCC)およびSCC以外の組織像を伴う患者の全集団(全解析セット)内の全生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
図5】実施例4に記載される研究における、SCCの組織像を伴う患者のSCC患者(全解析セット)内の全生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
図6】実施例4に記載される研究における、腺癌/腺扁平上皮癌の組織像を伴う患者の腺癌患者(全解析セット)内の全生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
図7】実施例4に記載される研究における、扁平上皮癌(SCC)およびSCC以外の組織像を伴う患者の全集団(全解析セット)内の無進行生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
図8】実施例4に記載される研究における、SCCの組織像を伴う患者のSCC患者(全解析セット)内の無進行生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
図9】実施例4に記載される研究における、腺癌/腺扁平上皮癌の組織像を伴う患者の腺癌患者(全解析セット)内の無進行生存についてのカプラン-マイヤー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、そのような方法および条件は、変動しうるので、記載される、特定の方法および実験条件に限定されないことが理解されるものとする。また、本開示の範囲は、付属の特許請求の範囲だけにより限定されるので、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態だけについて記載することを目的とするものであり、限定的であることを意図されるものではないことも理解されるものとする。そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本開示の実施または試験では、本明細書で記載される方法および材料と同様または同等である、任意の方法および材料を使用することができるが、ここでは、好ましい方法および材料について記載される。そうでないことが言明されない限りにおいて、本明細書で言及される全ての刊行物を、参照によってそれらの全体において本明細書に組み入れる。
【0017】
子宮頸がんの増殖を処置または阻害する方法
本開示は、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がん患者の全生存を改善するための方法であって、子宮頸がんを伴う患者を選択する工程と、それを必要とする患者へと、PD-1、PD-L1、および/もしくはPD-L2、または本明細書で記載される、他の任意の「PD-1阻害剤」に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与する工程とを含む方法を含む。本開示で、特定の抗PD-1抗体への言及がなされるのは、代表的なPD-1阻害剤を例示するためであり、本開示の範囲を限定するためではない。
【0018】
一部の実施形態では、開示される方法は、驚くべきことに、子宮頸がん患者の全生存を、化学療法で処置された子宮頸がん患者と比較して改善する、効果的な免疫療法を提供する。一部の実施形態では、子宮頸がん患者へと、治療有効量の抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を投与する工程は、化学療法または別の抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブ)で処置された子宮頸がん患者と比較した、全生存の改善をもたらす。一部の実施形態では、子宮頸がん患者へと、治療有効量の抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を投与する工程は、化学療法で処置された子宮頸がん患者と比較した、安全性プロファイルの改善をもたらし、有害事象の発生率の低下をもたらす。一部の実施形態では、子宮頸がん患者へと、治療有効量の抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を投与する工程は、患者の生活の質の、ベースラインからの全平均値変化の、化学療法で処置された子宮頸がん患者と比較した改善をもたらす。
【0019】
本開示の方法は、腫瘍内のPD-L1の発現にかかわらず、扁平上皮癌、腺癌、および腺扁平上皮癌を伴う患者を含む、子宮頸がん患者集団にわたり、予測外に効果的な処置をもたらす。したがって、開示される方法は、子宮頸がんの扁平上皮形態だけでなく、また、特に、処置が困難な腺癌に対しても効果的である、著明な利点をもたらす。本開示の方法はまた、既に、化学療法(例えば、ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、またはビノレルビンのような白金ベースの化学療法)で処置され、かつ/もしくはこれらの化学療法中に、その子宮頸がんが進行したか、または化学療法が適切ではない、子宮頸がん患者のための処置として、予測外に効果的な第二選択治療ももたらす。
【0020】
一部の実施形態では、本開示の方法は、子宮頸がん患者が、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)のようなPD-1阻害剤による処置の前に、PD-L1試験を受けることを要求しない。この態様では、開示される方法は、治療有効量のPD-1阻害剤を、PD-L1の閾値発現を呈さないか、またはこれを呈する必要がない、子宮頸がん患者へと投与する工程を含む。他の実施形態では、子宮頸がん患者は、がん組織内および/または腫瘍浸潤免疫細胞内で、約1%、約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%またはそれ以上のPD-L1の発現を示す。
【0021】
本明細書で使用される、「~を処置すること」、「~を処置する」などの用語は、少なくとも1つの症状もしくは徴候の重症度を緩和もしくは低減すること、一時的に、もしくは恒常的に、症状の因果関連を消失させること、腫瘍の増殖を遅延させるか、もしくは阻害すること、腫瘍細胞の負荷または腫瘍量を低減すること、腫瘍の退縮を促進すること、腫瘍の縮小、壊死、および/もしくは消失を引き起こすこと、腫瘍の再発を防止すること、転移を防止もしくは阻害すること、転移性腫瘍の増殖を阻害すること、放射線もしくは手術に対する必要を消失させること、ならびに/または対象の生存期間を延長することを意味する。多くの実施形態では、「腫瘍」、「病変」、「腫瘍病変」、「がん」、および「悪性腫瘍」という用語は、互換的に使用され、1つまたはそれ以上のがん性増殖を指す。
【0022】
一部の実施形態では、子宮頸がんは、再発性子宮頸がん、遷延性子宮頸がん、および/または転移性子宮頸がんである。一部の実施形態では、子宮頸がんは、進行性子宮頸がんである。一部の実施形態では、子宮頸がんは、子宮頸部の扁平上皮癌(SCC)である。一部の実施形態では、子宮頸がんは、腺癌である。一部の実施形態では、子宮頸がんは、腺扁平上皮癌である。一部の実施形態では、患者は、治癒を意図する選択肢(例えば、化学療法を伴うか、またはこれを伴わない、手術または放射線療法)が存在しない子宮頸がんを有する。一部の実施形態では、子宮頸がんを伴う患者は、腫瘍組織内のPD-L1の発現レベルの上昇を示し、この場合、腫瘍組織は、腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞を含む。
【0023】
本明細書で使用される、「再発性」という用語は、患者における子宮頸がんの、高頻度の診断もしくは診断の反復、または原発腫瘍、および/もしくは既往腫瘍の再発を表しうる、新たな腫瘍のような、個々の腫瘍の高頻度の発生もしくは発生の反復を指す。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、患者における子宮頸がん腫瘍の再発を阻害する。
【0024】
本明細書で使用される、「それを必要とする対象」という表現は、子宮頸がんの1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を呈する、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物、および/または子宮頸がんを伴うと診断され、このための処置を必要とする、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物を意味する。多くの実施形態では、「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用される。「対象」および「患者」という表現は、原発腫瘍、確立された腫瘍、再発性腫瘍、または転移性腫瘍(進行性悪性腫瘍)を伴う対象を含む。具体的な実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、再発性子宮頸がんおよび/もしくは転移性子宮頸がんを有し、かつ/または再発性子宮頸がんおよび/もしくは転移性子宮頸がんのための処置を必要とするヒト対象を含む。「対象」および「患者」という表現はまた、遷延性子宮頸がん疾患(化学放射線療法の後で、完全消失が見られない疾患)を伴う対象も含む。ある特定の実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、先行治療(例えば、手術、またはカルボプラチンもしくはドセタキセルのような化学療法)に対して耐性もしくは不応性であるか、または先行治療によるコントロールが不十分である、子宮頸がんを伴う患者を含む。ある特定の実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、治癒的手術もしくは治癒的放射線療法の候補者ではないか、または、例えば、毒性副作用に起因して、従来の抗がん治療が推奨されない、子宮頸がんを伴う対象を含む。ある特定の実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、既往の化学療法または他の任意の抗がん治療を施されているか、このような処置時に進行したか、またはこのような処置に不適である(または適切でない)、子宮頸がんを伴う患者(例えば、既往のパクリタキセルおよび/もしくは既往のベバシズマブを施されているか、またはこのような処置に不適であると見なされた患者)を含む。ある特定の実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、白金、パクリタキセル、および/またはベバシズマブで処置され、疾患が進行した、子宮頸がんを伴う患者を含む。一実施形態では、「対象」および「患者」という表現は、白金不応性子宮頸がんを伴う患者を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、本開示の方法を使用して、1つまたはそれ以上のがん関連バイオマーカー(例えば、プログラム死リガンド1(PD-L1)、HPVがん遺伝子であるE6またはE7)のレベルの上昇を示す、子宮頸がんを伴う患者を処置することができる。一実施形態では、本開示の方法は、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を、腫瘍組織内のPD-L1レベルが上昇した患者へとへと投与する工程を含む。別の実施形態では、方法は、がん組織内のPD-L1の発現をベースとして選択される、子宮頸がんを伴う患者において使用される。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、子宮頸がんを伴う患者を処置するのに使用され、この場合、患者は、がん組織内および/または腫瘍浸潤免疫細胞内の、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%のPD-L1の発現をベースとして選択される。当技術分野では、がん組織および/または免疫細胞内のPD-L1の発現を決定する方法が公知である。ある特定の実施形態では、腫瘍組織内のPD-L1の発現は、当技術分野で公知の任意のアッセイ、例えば、ELISAアッセイまたは免疫組織化学(IHC)アッセイ記載される、当技術分野で公知の任意のアッセイ、例えば、ELISAアッセイまたは免疫組織化学(IHC)アッセイにより決定される。ある特定の実施形態では、PD-L1の発現は、RNA発現を定量することにより、例えば、in situハイブリダイゼーションにより、またはRT-PCRにより決定される。ある特定の実施形態では、PD-L1の発現は、標識付けされた抗PD-L1抗体を伴うイメージングにより、例えば、免疫ポジトロン断層法またはiPETにより決定される。例えば、Oncologist、12:1379(2007);Journal of Nuclear Medicine、52(8):1171(2011);US20180161464を参照されたい。
【0026】
一部の実施形態では、本開示の方法を使用して、HPVについて検査して陽性である、子宮頸がんを伴う患者を処置することができる。他の実施形態では、本開示の方法を使用して、HPVについて検査して陰性である、子宮頸がんを伴う患者を処置することができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、開示される方法は、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を、抗腫瘍治療と組み合わせて投与する工程を含む。抗腫瘍療法は、化学療法、放射線、手術のような、従来の抗腫瘍療法、または本明細書の別の箇所で記載される抗腫瘍療法を含むがこれらに限定されない。
【0028】
ある特定の実施形態に従う、本開示の方法は、対象へと治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を、第2の治療剤または治療と組み合わせて投与する工程を含む。第2の治療剤または治療は、抗腫瘍効能を増大させるために、1つもしくはそれ以上の治療の毒性作用を軽減するために、かつ/または1つもしくはそれ以上の治療の投与量を低減するために投与することができる。多様な実施形態では、第2の治療剤または治療は、放射線、手術、がんワクチン、イミキモド、抗ウイルス剤(例えば、シドフォビル)、光力学療法、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、TIM3(T-cell immunoglobulin and mucin containing-3)阻害剤、BTLA(B- and T-lymphocyte attenuator)阻害剤、TIGIT(T-cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、CD28活性化因子、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、アフリベルセプトのような「VEGFトラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合性断片(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブ)、またはVEGF受容体の低分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、アンジオポエチン2(Ang2)阻害剤、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異性抗原[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異性抗原(PSA)、ムチン1、MART-1、およびCA19-9]に対する抗体、ワクチン(例えば、カルメット-ゲラン桿菌)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍溶解性ウイルス、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ペメトレキセド、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、およびビンクリスチン)、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、およびIL-15のようなサイトカイン、抗体薬物コンジュゲート、コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)のような抗炎症性薬、低温療法、抗HPV療法、レーザー療法、HPVを伴う細胞に対する電気メス切除法、および抗酸化剤のような栄養補助食品のうちの1つまたはそれ以上を含みうる。
【0029】
ある特定の実施形態では、子宮頸がんを伴う対象へと、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を投与する工程は、腫瘍増殖の阻害の増大(例えば、処置された対象における腫瘍退縮の増大)をもたらす。ある特定の実施形態では、子宮頸がんを伴う対象へと、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片のような)を投与する工程は、腫瘍の退縮、腫瘍の縮小および/または消失の増大をもたらす。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、腫瘍の増殖および発症の遅延をもたらす、例えば、処置対象において、腫瘍の増殖を、非処置対象、または白金ベースの化学療法、もしくは本明細書で開示されるSOCのような、他のSOCで処置された対象と比較して、約3日間、3日間を超えて、約7日間、7日間を超えて、15日間を超えて、1カ月間を超えて、3カ月間を超えて、6カ月間を超えて、1年間を超えて、2年間を超えて、または3年間を超えて遅延させることができる。一実施形態では、腫瘍増殖の阻害の増大は、腫瘍内のPD-L1の発現にかかわらず生じる。
【0030】
ある特定の実施形態では、子宮頸がんを伴う対象へと、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を投与する工程は、対象の腫瘍再発を防止し、かつ/または対象の生存期間を増大させる、例えば、生存期間を、非処置対象、または白金ベースの化学療法、もしくは本明細書で開示されるSOCのような、他の「標準治療」(SOC)で処置された対象と比較して、15日間を超えて、1カ月間を超えて、3カ月間を超えて、6カ月間を超えて、12カ月間を超えて、18カ月間を超えて、24カ月間を超えて、36カ月間を超えて、または48カ月間を超えて延長する。一実施形態では、腫瘍再発の防止、および生存期間の延長は、腫瘍内のPD-L1の発現にかかわらず生じる。
【0031】
ある特定の実施形態では、子宮頸がんを伴う対象へと、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を投与する工程は、対象の全生存(OS)または無進行生存(PFS)の、SOC療法を投与された対象と比較した延長をもたらす。標準治療の非限定例は、白金ベースの化学療法(例えば、白金-タキサンベースの化学療法)、抗葉酸剤(例えば、ペメトレキセド)、トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、トポテカンまたはイリノテカン)、ヌクレオシド類似体(例えば、ゲムシタビン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン)、手術、放射線、およびこれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、PFSは、いずれか1つまたはそれ以上のSOC療法を投与された対象と比較して、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間延長される。ある特定の実施形態では、OSは、いずれか1つまたはそれ以上のSOC療法(例えば、白金ベースの化学療法)を投与された対象と比較して、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間延長される。
【0032】
PD-1阻害剤
本明細書で開示される方法は、治療有効量のPD-1阻害剤を投与する工程を含む。本明細書で使用される、「PD-1阻害剤」とは、PD-1の活性または発現を阻害するか、遮断するか、妨げるか、またはこれに干渉することが可能な、任意の分子を指す。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗体、低分子化合物、核酸、ポリペプチド、またはこれらの機能的断片もしくは変異体でありうる。適切なPD-1阻害剤抗体の非限定例は、抗PD-1抗体およびその抗原結合性断片、抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片、ならびに抗PD-L2抗体およびその抗原結合性断片を含む。適切なPD-1阻害剤の、他の非限定例は、抗PD-1 RNAi分子、抗PD-L1 RNAi、および抗PD-L2 RNAiのようなRNAi分子、抗PD-1アンチセンスRNA、抗PD-L1アンチセンスRNA、および抗PD-L2アンチセンスRNAのようなアンチセンス分子、ならびにPD-1ドミナントネガティブタンパク質、PD-L1ドミナントネガティブタンパク質、およびPD-L2ドミナントネガティブタンパク質のようなドミナントネガティブタンパク質を含む。前出のPD-1阻害剤の一部の例については、PD-1阻害剤を同定するそれらの一部を、参照によって本明細書に組み入れる、例えば、US9308236、US10011656、およびUS20170290808において記載されている。
【0033】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である、4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)の他、その多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性断片を指すことを意図する。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)と、重鎖定常領域(ドメインである、CH1、CH2、およびCH3から構成される)とから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)と、軽鎖定常領域(CL)とから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存的な領域を散在させた、相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性領域へと、さらに細分することができる。各VHおよび各VLは、アミノ末端から、カルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3つのCDRと、4つのFRとから構成される。ある特定の実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一である場合もあり、天然で、または人工的に修飾されている場合もある。アミノ酸のコンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRについての比較対照解析に基づき、規定することができる。本明細書で使用される、「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合性断片も含む。
【0034】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性断片」、抗体の「抗原結合性部分」などの用語は、抗原に特異的に結合して、複合体を形成する、任意の、天然に存在するか、酵素により得られるか、合成によるか、または遺伝子操作される、ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解性酵素、または抗体の可変ドメインと、場合により、定常ドメインとをコードするDNAの操作(manipulation)および発現を伴う、組換え遺伝子操作(engineering)法のような、任意の適切な標準的技法を使用して、完全抗体分子から導出することができる。このようなDNAは、公知であり、かつ/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から、たやすく入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、シーケンシングし、化学的に操作するか、または分子生物学法を使用することにより操作して、例えば、1つもしくはそれ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを、適切な立体配置へと配置するか、またはコドンを導入するか、システイン残基を創出するか、アミノ酸を修飾するか、付加するか、もしくは欠失させるなどすることができる。
【0035】
抗原結合性断片の非限定例は、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる、最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような、単離相補性決定領域(CDR))、またはFR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異性抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー、ナノボディー(例えば、一価ナノボディー、二価ナノボディーなど)、低分子モジュラー型免疫医薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような、他の操作分子もまた、本明細書で使用される、「抗原結合性断片」という表現の内に包含される。
【0036】
抗体の抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であることが可能であり、一般に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接するか、またはこれとインフレームの位置にある、少なくとも1つのCDRを含む。VHドメインを、VLドメインと会合させた、抗原結合性断片内では、VHドメインと、VLドメインとを、互いと比べて、任意の適切な配置に置くことができる。例えば、可変領域は、二量体であることが可能であり、VH-VH二量体を含有する場合もあり、VH-VL二量体を含有する場合もあり、VL-VL二量体を含有する場合もある。代替的に、抗体の抗原結合性断片は、単量体のVHドメインを含有する場合もあり、単量体VLドメインを含有する場合もある。
【0037】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインへと、共有結合的に連結された、少なくとも1つの可変ドメインを含有しうる。本開示の抗体の抗原結合性断片内で見出すことができる、可変ドメインおよび定常ドメインの、非限定で例示的な構成は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。上記で列挙された例示的構成のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの、任意の立体配置では、可変ドメインと、定常ドメインとは、互いと、直接連結することもでき、完全ヒンジ領域もしくは完全リンカー領域、または部分的ヒンジ領域もしくは部分的リンカー領域により連結することもできる。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子内で隣接する、可変ドメインおよび/または定常ドメインの間に、可撓性の連結または半可撓性の連結を結果としてもたらす、少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上の)アミノ酸からなりうる。さらに、本開示の抗体の抗原結合性断片は、互いと、かつ/または1つもしくはそれ以上の、単量体VHドメインもしくは単量体VLドメインと、非共有結合的に(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)会合させた、上記で列挙された可変ドメイン/定常ドメイン構成のうちのいずれかの、ホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含みうる。
【0038】
本明細書で開示される方法で使用される抗体は、ヒト抗体でありうる。本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。それにもかかわらず、本開示のヒト抗体は、例えば、CDR内、特に、CDR3内に、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおいて、ランダム突然変異誘発もしくは部位特異性突然変異誘発により導入された突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異)を含む。しかし、本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、マウスのような、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へとグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0039】
本明細書で開示される方法で使用される抗体は、組換えヒト抗体でありうる。本明細書で使用される、「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞へとトランスフェクトされた組換え発現ベクター(下記でさらに記載される)を使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(下記でさらに記載される)から単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)(例えば、Taylorら(1992)、Nucl.Acids Res.、20:6287~6295を参照されたい)から単離される抗体、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の任意の手段により調製されるか、発現されるか、創出されるか、もしくは単離される抗体のような組換え手段により、調製されるか、発現されるか、創出されるか、または単離される、全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体を、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)にかけるので、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来し、これらと類縁であるが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に、天然では存在することができない配列である。
【0040】
抗PD-1抗体およびその抗原結合性断片
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片である。「~に特異的に結合する」などという用語は、抗体またはその抗原結合性断片が、抗原と共に、生理学的条件下で、比較的安定な複合体を形成することを意味する。当技術分野では、抗体が、抗原に特異的に結合するのかどうかを決定するための方法が周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本開示の文脈で使用される、PD-1「に特異的に結合する」抗体は、PD-1またはその一部に、表面プラズモン共鳴アッセイで測定される通り、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKで結合する抗体を含む。しかし、ヒトPD-1に特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種に由来するPD-1分子のような、他の抗原との交差反応性を有する場合がある。
【0041】
ある特定の例示的な実施形態に従い、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片を、参照によってその全体において本明細書に組み入れる、US9987500において明示されている抗PD-1抗体のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む。ある特定の例示的な実施形態では、本開示の文脈で使用される、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。ある特定の実施形態に従い、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、この場合、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1を含むHCVRと、配列番号2を含むLCVRとを含む。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、抗PD-1抗体の使用を含み、この場合、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、例示的な抗体は、セミプリマブとして公知の(また、REGN2810;LIBTAYO(登録商標)としても公知である)、完全ヒト抗PD-1抗体である。
【0042】
ある特定の例示的な実施形態に従い、本開示の方法は、セミプリマブまたはその生物学的同等物の使用を含む。本明細書で使用される、「生物学的同等物」という用語は、単回投与であれ、複数回投与であれ、同じモル用量、同様の実験条件下で投与される場合に、その吸収の速度および/または範囲が、参照抗体(例えば、セミプリマブ)の吸収の速度および/または範囲と、著明な差違を示さない、医薬同等物または医薬代替物である、抗PD-1抗体もしくはPD-1結合性タンパク質またはこれらの断片を指す。本開示の文脈では、「生物学的同等物」という用語は、PD-1に結合し、安全性、純度、および/または効力に関して、セミプリマブと、臨床的に有意味な差違を有さない、抗原結合性タンパク質を含む。
【0043】
本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性断片は、配列番号1に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を有するHCVRを含む。
【0044】
本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性断片は、配列番号2に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を有するLCVRを含む。
【0045】
本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性断片は、5つ以下のアミノ酸置換を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性断片は、2つ以下のアミノ酸置換を有する、配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0046】
配列同一性は、当技術分野で公知の方法(例えば、GAP、BESTFIT、およびBLAST)により測定することができる。
【0047】
本開示はまた、子宮頸がんを処置する方法における、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片の使用も含み、この場合、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書で開示される、HCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体を含む。例えば、本開示は、本明細書で開示される、HCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば、10以下、8つ以下、6つ以下、4つ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片の使用を含む。
【0048】
本開示の方法の文脈で使用することができる、他の抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0608、ピジリズマブ、BI 754091、スパルタリズマブ(また、PDR001としても公知である)、カムレリズマブ(また、SHR-1210としても公知である)、JNJ-63723283、MCLA-134と称し、当技術分野でも公知の抗体、または米国特許第6808710号、同第7488802号、同第8008449号、同第8168757号、同第8354509号、同第8609089号、同第8686119号、同第8779105号、同第8900587号、および同第9987500号、ならびに特許公報第WO2006/121168号、同第WO2009/114335号で明示されている抗PD-L1抗体のうちのいずれかを含む。抗PD-1抗体を同定する、前述の公報の一部または全部を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0049】
本開示の方法の文脈で使用される、抗PD-1抗体は、pH依存性の結合特徴を有しうる。例えば、本開示の方法における使用のための抗PD-1抗体は、酸性pHにおける、中性pHにおける場合と比較した、PD-1への結合の低減を呈しうる。代替的に、本発明の抗PD-1抗体は、酸性pHにおける、中性pHと比較した、その抗原への結合の増強を呈しうる。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0以下のpH値を含む。本明細書で使用される、「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0050】
ある特定の場合に、「酸性pHにおける、中性pHにおける場合と比較した、PD-1への結合の低減」は、酸性pHにおける、抗体の、PD-1への結合のK値の、中性pHにおける、抗体の、PD-1への結合のK値に対する比との関係で表される(または逆も成り立つ)。例えば、抗体またはその抗原結合性断片が、約3.0またはそれ以上の酸性/中性K比を呈する場合、抗体またはその抗原結合性断片は、本開示の目的で、「酸性pHにおける、中性pHと比較した、PD-1への結合の低減」を呈すると考えることができる。ある特定の例示的な実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片についての、酸性/中性のK比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0以上でありうる。
【0051】
pH依存性の結合特徴を伴う抗体は、例えば、抗体の集団を、酸性pHにおける、特定の抗原への結合の、中性pHにおける場合と比較した低減(または増強)についてスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、抗原結合性ドメインの、アミノ酸レベルにおける修飾は、pH依存性特徴を伴う抗体をもたらしうる。例えば、抗原結合性ドメインの(例えば、CDR内の)、1つまたはそれ以上のアミノ酸を、ヒスチジン残基で置換することにより、酸性pHにおいて、抗原結合性が、中性pHと比べて低減される抗体を得ることができる。本明細書で使用される、「酸性pH」という表現は、6.0以下のpHを意味する。
【0052】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、PD-L1に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片である。例えば、本開示の文脈で使用される、PD-L1「に特異的に結合する」抗体は、PD-L1またはその一部に、約1×10-8M以下のK(例えば、より小さなKは、より緊密な結合を表す)で結合する抗体を含む。「高アフィニティー」の抗PD-L1抗体とは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)、または液体アフィニティーELISAにより測定される、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mのような少なくとも10-8MのKとして表される、PD-L1に対する結合アフィニティーを有するmAbを指す。しかし、ヒトPD-L1に特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種に由来するPD-L1分子のような、他の抗原との交差反応性を有する場合がある。
【0053】
ある特定の例示的な実施形態に従い、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片を、参照によってその全体において本明細書に組み入れる、US9938345において明示されている抗PD-L1抗体のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む。ある特定の例示的な実施形態では、本開示の文脈で使用することができる、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。配列番号11のHCVRと、配列番号12のLCVRとを含む、例示的な抗PD-L1抗体は、REGN3504である。
【0054】
本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を有するHCVRを含む。本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号12に対する、90%、95%、97%、または98%の配列同一性を有するLCVRを含む。
【0055】
本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、5つ以下のアミノ酸置換を有する、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本開示のある特定の実施形態に従い、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、2つ以下のアミノ酸置換を有する、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0056】
配列同一性は、当技術分野で公知の方法(例えば、GAP、BESTFIT、およびBLAST)により測定することができる。
【0057】
本開示はまた、子宮頸がんを処置する方法における、抗PD-L1抗体の使用も含み、この場合、抗PD-L1抗体は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書で開示される、HCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体を含む。例えば、本開示は、本明細書で開示される、HCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば、10以下、8つ以下、6つ以下、4つ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、抗PD-L1抗体の使用を含む。
【0058】
本開示の方法の文脈で使用することができる、他の抗PD-L1抗体は、例えば、MDX-1105、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))、アベルマブ(BAVENCIO(商標))、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035(Zhangら、Cell Discovery、3、170004(2017年3月))、CK-301(Gorelik ら、American Association for Cancer Research Annual Meeting(AACR)、2016年4月4日、抄録、4606)と称し、当技術分野でも公知の抗体、または特許公報である、US7943743、US8217149、US9402899、US9624298、US9938345、WO2007/005874、WO2010/077634、WO2013/181452、WO2013/181634、WO2016/149201、WO2017/034916もしくはEP3177649で明示されている、他の抗PD-L1抗体のうちのいずれかを含む。PD-L1抗体を同定する、前述の公報の一部または全部を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0059】
医薬組成物および投与
本開示は、本明細書で開示されるPD-1阻害剤を含む、治療用医薬組成物を提示する。このような医薬組成物は、適切な移入、送達、許容量耐性などをもたらす、適切な、薬学的に許容される担体、賦形剤、緩衝剤、および他の薬剤と共に製剤化することができる。全ての創薬化学者に公知の処方集:「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Company、Easton、PAでは、多数の適切な製剤を見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、蝋、油、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)(LIPOFECTIN(商標)のような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、エマルジョンであるCarbowax(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびCarbowaxを含有する半固体混合物を含む。また、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA、J Pharm Sci Technol、52:238~311(1998)も参照されたい。
【0060】
PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の用量は、投与される対象の年齢および体格、標的の疾患、状態、投与経路などに応じて変動しうる。本開示のPD-1阻害剤が、子宮頸がんの増殖を処置もしくは阻害するか、または子宮頸がん患者の全生存を改善するために使用される場合、PD-1阻害剤を、体重1kg当たり約0.1~約100mgの単回投与で投与することが有利でありうる。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続期間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPD-1阻害剤は、少なくとも約0.1mg~約1500mg、約1~約1000mg、約3~約800mg、約5~約500mg、または約10~約400mgの初回投与として投与することができる。ある特定の実施形態では、初回投与に続き、PD-1阻害剤の、2回目または後続する複数回の投与を、ほぼ初回投与の量以下の量で行うことができ、この場合、後続の投与は、少なくとも1日間~3日間;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;または少なくとも14週間隔てられる。
【0061】
多様な送達システム、例えば、リポソーム内、マイクロ粒子内、マイクロカプセル内の封入、突然変異体ウイルスを発現させることが可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら(1987)、J.Biol.Chem.、262:4429~4432を参照されたい)が公知であり、本開示の医薬組成物を投与するのに使用することができる。導入の方法は、皮内経路、経皮経路、筋内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路を含むがこれらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜の内膜(例えば、経口粘膜、直腸内粘膜、腸粘膜など)を介する吸収により投与することができ、他の生物学的に活性の薬剤と併せて投与することができる。医薬組成物はまた、小胞、特に、リポソームによっても送達することができる(例えば、Langer(1990)、Science、249:1527~1533を参照されたい)。
【0062】
本明細書では、本開示のPD-1阻害剤を送達するための、ナノ粒子の使用もまた想定される。抗体コンジュゲートナノ粒子は、治療適用および診断的適用のいずれにも使用することができる。抗体コンジュゲートナノ粒子ならびに調製法および使用法については、Arrueboら、2009、「Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications」、J.Nanomat.、2009巻、論文ID:439389、24頁により、詳細に記載されている。ナノ粒子は、細胞をターゲティングするように開発し、医薬組成物中に含有される抗体へとコンジュゲートさせることができる。薬物送達のためのナノ粒子についてもまた、例えば、US8257740またはUS8246995において記載されている。
【0063】
ある特定の状況では、医薬組成物は、制御放出システムにより送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近傍に設置することができるので、全身用量のうちの一部しか要求しない。
【0064】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、および筋内注射、点滴注入などのための剤形を含みうる。これらの注射用調製物は、一般に公知の方法により調製することができる。
【0065】
本開示の医薬組成物は、標準的な注射針およびシリンジにより、皮下送達することもでき、静脈内送達することもできる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の医薬組成物の送達において、たやすく適用される。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能な場合もあり、ディスポーザブルの場合もある。再使用可能ペン型送達デバイスは、一般に、交換可能な医薬組成物を含有するカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジは、たやすく廃棄し、医薬組成物を含有する、新たなカートリッジで交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを、再使用することができる。ディスポーザブルのペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジが存在しない。そうではなく、ディスポーザブルのペン型送達デバイスは、デバイス内のレザバーに保持された医薬組成物をあらかじめ充填される。レザバーの医薬組成物が空になったら、全デバイスが廃棄される。
【0066】
上記で記載された経口使用または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するように、適切な単位用量の剤形へと調製されると有利である。単位用量にある、このような剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などを含む。含有される抗体の量は、単位用量にある剤形に応じて、一般に、約5~約1500mgである。
【0067】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物または製剤を提示する。本開示の文脈で使用することができる抗PD-1抗体を含む医薬組成物の非限定例は、US2019/0040137において開示されている。
【0068】
本開示はまた、本明細書で記載される治療的使用のためのPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)を含むキットも提示する。キットは、典型的に、キットの内容物の意図される使用を表示するラベルと、使用のための指示書とを含む。本明細書で使用される、「ラベル」という用語は、任意の書面、またはキット上で、キット内に、もしくはキットと共に供給されるか、もしくは他の形でキットに付随する記録素材を含む。したがって、本開示は、子宮頸がんに罹患した患者を処置するためのキットであって、(a)治療有効投与量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)と;(b)本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおいて、PD-1阻害剤を使用するための指示書とを含むキットを提示する。
【0069】
投与レジメン
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、例えば、具体的な治療用投与レジメンの一部としての、それを必要とする対象の腫瘍への、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の複数回投与を含む。例えば、治療用投与レジメンは、PD-1阻害剤の、対象への、およそ毎日1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、12週間ごとに1回、毎月1回、2カ月間ごとに1回、3カ月間ごとに1回、4カ月間ごとに1回、毎日2回、2日ごとに2回、3日ごとに2回、4日ごとに2回、5日ごとに2回、6日ごとに2回、毎週2回、2週間ごとに2回、3週間ごとに2回、4週間ごとに2回、5週間ごとに2回、6週間ごとに2回、8週間ごとに2回、12週間ごとに2回、毎月2回、2カ月間ごとに2回、3カ月間ごとに2回、4カ月間ごとに2回、毎日3回、2日ごとに3回、3日ごとに3回、4日ごとに3回、5日ごとに3回、6日ごとに3回、毎週3回、2週間ごとに3回、3週間ごとに3回、4週間ごとに3回、5週間ごとに3回、6週間ごとに3回、8週間ごとに3回、12週間ごとに3回、毎月3回、2カ月間ごとに3回、3カ月間ごとに3回、4カ月間ごとに3回の頻度、もしくはそれ未満の頻度、または治療応答が達成される限りで必要に応じた頻度における、1回またはそれ以上の回数の投与を含みうる。一実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、3週間ごとに1回投与される。一実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、6週間ごとに1回投与される。一実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与が、3週間ごとに1回投与されるのに続き、1回またはそれ以上の回数の投与が、6週間ごとに1回投与される。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物のような、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の、1回またはそれ以上の回数の投与は、3週間ごとに1回、350mgの用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、4週間ごとに1回、600mgの用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、6週間ごとに1回、600mgの用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、6週間ごとに1回、700mgの用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書で明示されるPD-1阻害剤の、1回またはそれ以上の回数の投与は、6週間ごとに1回、1050mgの用量で投与される。
【0071】
ある特定の実施形態では、1回またはそれ以上の回数の投与は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。この態様に従う方法は、それを必要とする対象へと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の回数の、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の投与を含む、少なくとも1つの処置サイクルを投与する工程を含む。一実施形態では、処置サイクルは、12回にわたるPD-1阻害剤の投与を含む。一実施形態では、処置サイクルは、24回にわたるPD-1阻害剤の投与を含む。
【0072】
投与量
本明細書で開示される方法に従い、対象へと投与されるPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の量は、一般に、治療有効量である。本明細書で使用される、「治療有効量」という用語は、(a)子宮頸がんの症状または徴候(例えば、腫瘍病変)の重症度の軽減または持続期間の短縮;(b)腫瘍の増殖の阻害、または腫瘍壊死、腫瘍縮小、および/もしくは腫瘍消失の増大;(c)腫瘍の増殖および発症の遅延;(d)腫瘍転移の阻害;(e)腫瘍増殖の再発の防止;(f)がんを伴う対象の生存の延長;ならびに/または(g)従来の抗がん治療の使用またはこれに対する必要(例えば、手術に対する必要の消失、または化学療法剤もしくは細胞傷害剤の使用の低減もしくは消失)の、非処置対象、または白金ベースの化学療法、もしくは本明細書で開示されるSOCのような、他のSOCで処置された対象と比較した低減のうちの1つまたはそれ以上を結果としてもたらす、PD-1阻害剤の量を意味する。
【0073】
ある特定の実施形態では、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物のような、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)は、約0.05mg~約1500mg、約1mg~約800mg、約5mg~約600mg、約10mg~約550mg、約50mg~約400mg、約75mg~約350mg、または約100mg~約300mgの抗体でありうる。例えば、多様な実施形態では、PD-1阻害剤の量は、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg、約800mg、約810mg、約820mg、約830mg、約840mg、約850mg、約860mg、約870mg、約880mg、約890mg、約900mg、約910mg、約920mg、約930mg、約940mg、約950mg、約960mg、約970mg、約980mg、約990mg、約1000mg、約1010mg、約1020mg、約1030mg、約1040mg、約1050mg、約1060mg、約1070mg、約1080mg、約1090mg、約1200mg、約1210mg、約1220mg、約1230mg、約1240mg、約1250mg、約1260mg、約1270mg、約1280mg、約1290mg、約1300mg、約1310mg、約1320mg、約1330mg、約1340mg、約1350mg、約1360mg、約1370mg、約1380mg、約1390mg、約1400mg、約1410mg、約1420mg、約1430mg、約1440mg、約1450mg、約1460mg、約1470mg、約1480mg、約1490mg、または約1500mgである。
【0074】
個々の投与内に含有されるPD-1阻害剤の量は、対象の体重1キログラム当たりの抗体ミリグラム(すなわち、mg/kg)との関係で表すことができる。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、対象へと、対象の体重1kg当たり約0.0001~約100mgの用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、患者の体重1kg当たり約0.1mg~約20mgの用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の、患者の体重1kg当たり約1mg~3mg、1mg~5mg、1mg~10mg、1mg、3mg、5mg、または10mgの用量における投与を含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、患者へと投与される、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)の個々の投与量は、治療有効量未満、すなわち、治療量未満の用量でありうる。例えば、治療有効量のPD-1阻害剤が、3mg/kgを含む場合、治療量未満の用量は、3mg/kg未満、例えば、2mg/kg、1.5mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、または0.3mg/kgの量を含む。本明細書で規定される通り、「治療量未満の用量」とは、それ自体では、治療効果をもたらさない、PD-1阻害剤の量を指す。しかし、ある特定の実施形態では、治療量未満のPD-1阻害剤の複数回投与は、まとめて、対象における治療効果を達成するように投与される。
【0076】
ある特定の実施形態では、各回の投与は、対象の体重1kg当たり0.1~10mg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kg)を含む。ある特定の他の実施形態では、各回の投与は、5~1500mgのPD-1阻害剤(抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片のような)、例えば、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、45mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1550mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、または1500mgのPD-1阻害剤を含む。
【0077】
ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)は、2~100グレイ(Gy)の、1回またはそれ以上の回数の投与により施される放射線療法と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、放射線療法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、23、25、27、30、35、40、または45Gyを含む。ある特定の他の実施形態では、放射線療法は、50~100、60~90、または70~80Gyを含む。ある特定の実施形態では、放射線療法は、分割(寡分割放射線療法)により投与される。寡分割放射線療法(hfRT)とは、放射線線量が、2つまたはそれ以上の分割線量に含まれる放射線療法を指す。多様な実施形態では、各分割線量は、2~20Gyを含む。例えば、50Gyの放射線線量は、各々が5Gyずつを含む、10の分割量へと分けることができる。ある特定の実施形態では、2つ、またはそれ以上の分割線量は、連日(consecutive daysまたはsequential days)投与される。ある特定の他の実施形態では、2つ、またはそれ以上の分割線量は、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、7日ごとに1回、3日ごとに2回、毎週2回、毎週3回、またはこれらの組合せを含む期間にわたり投与される。
【実施例
【0078】
以下の実施例は、当業者に、本開示の方法および組成物を、どのようにして作り、使用するのかについての、完全な開示および記載を与えるために明示されるものであり、本発明者らが、それらの発明であると考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で記載される、任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。実際、本明細書を読めば、当業者には、実施形態の改変および変形形態が明らかな場合があり、その精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、これらを行うことができる。使用される数(例えば、量、温度など)に関して、精度を確認するように努めているが、一部の実験の誤差および偏差については、説明するものとする。そうでないことが指し示されない限りにおいて、部分比は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、室温は、約25℃であり、圧力は、大気圧であるか、または大気圧近傍の圧力である。
【実施例1】
【0079】
子宮頸がんを伴う患者における、抗PD-1抗体についての臨床試験
本研究は、進行充実性腫瘍を伴う患者における、抗PD-1抗体(セミプリマブ)についての、フェーズI、オープンラベル、多施設研究であった。セミプリマブは、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を強力に遮断する、PD-1受容体に対する、高アフィニティーの、ヒンジ安定化IgG4ヒトモノクローナル抗体である。セミプリマブは、本明細書で記載される、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号1/2を含む、HCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含む。また、US9987500も参照されたい。研究は、年齢を、≧18歳とし、組織学的に、または細胞学的に確認された、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴い、白金およびタキサンの二重化学療法に対して耐性であるか、または忍容性でない患者を組み入れた。
【0080】
1つの患者群[寡分割放射線療法(hfRT)が計画されなかった、単剤療法コホート]に、2週間ごと(Q2W)、48週間にわたり、3mg/kgのセミプリマブを、静脈内(IV)において施した。第2の患者群(緩和放射線療法が計画された、組合せ療法コホート)に、2週間ごと(Q2W)、最長で48週間にわたる、IVにおける、3mg/kgのセミプリマブ+hfRT(セミプリマブの1日目の1週間後から始めて、14日間のサイクルの8日目~12日目において、単一の病変に対して、9Gy×3回で、1週間にわたる)を施した。組合せ療法コホートは、一部の徴候または症状を引き起こしつつあった病変に対して、緩和hfRTが計画された患者を登録した。照射病変は、応答評価のための標的病変として追跡しなかった。セミプリマブは、25または50mg/mLの濃度で供給した。セミプリマブの注入は、±10分間の時間枠で、30分間にわたり行った。
【0081】
さらなる適格性基準は、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステータススコアが0または1であることと、十分な臓器機能とを含んだ。患者は、少なくとも1つの、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)version 1.1に従う、測定可能病変を有することを要求された(Eisenhauerら、Eur J Cancer、45(2009)228~47)。組合せ療法コホート内では、照射病変に加えて、測定可能病変(複数可)が存在した。
【0082】
鍵となる除外基準は、全身の免疫抑制を要求する、進行中であるか、または最近の(5年間以内の)自己免疫疾患、PD-1/PD-L1経路を遮断する薬剤による先行処置、固形臓器移植、併発がん(無痛性または非致死性ではない場合)、または血液がんの履歴を含んだ。
【0083】
研究目的:本研究の1つの目的は、単剤療法としての、またはhfRTと組み合わせた、セミプリマブの安全性および忍容性を、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者において特徴付けることであった。別の目的は、単剤療法としての、またはhfRTと組み合わせた、セミプリマブの抗腫瘍活性を、これらの患者において決定することであった。
【0084】
評価:腫瘍組織学は、研究登録の前の任意の時点において得られた、腫瘍サンプルについての局所病理報告に従い評価した。TEAE(treatment-emergent adverse event)の重症度は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(version 4.03)に従い評定した。広範にわたる安全性査定を、研究を通して、スクリーニング時および各後続の処置サイクルの1日目に実施した。規定の安全性査定を、各セミプリマブ投与来院時に実施した。腫瘍応答評価は、各8週間の処置サイクルの終了時に、RECIST 1.1に従い、治験責任医師により実施された。組合せ療法コホート内では、hfRTのために選択した病変は、RECIST 1.1による評価に組み入れなかった。
【0085】
臨床データについての統計学的解析:安全性についての概括および解析を、安全性解析セットに対して実施した。データは、投与コホートごとに、記述統計量を、両側95%信頼区間(CI)と共に使用してまとめた。連続変数は、平均値、中央値、標準偏差、最小値、および最大値によりまとめた。カテゴリー変数は、頻度および百分率によりまとめた。無進行生存(PFS)およびOSについて、カプラン-マイヤー解析を実施した。
【0086】
独立の子宮頸がんサンプル中の、PD-L1のタンパク質およびmRNAの発現についての解析:合計155例の市販腫瘍ブロックを、腫瘍細胞内および免疫細胞内の両方における、腫瘍浸潤免疫細胞の存在、およびPD-L1タンパク質の発現について査定したが;43例のブロックは、腺癌腫瘍であり、112例のブロックは、扁平上皮癌腫瘍であった。これらの組織ブロックは、12の異なる販売元から得た。上位5社の販売元からのブロックの数は、以下の通り:58、37、36、17、および8例である。1つの販売元による供給は、ブロックのうちの35%を超えなかった。入手可能な、査定可能腫瘍素材は、フェーズI研究の子宮頸がん拡大コホートに登録された患者における、PD-L1バイオマーカー相関解析を支援するには不十分であった。子宮頸がん拡大コホート内の20例の患者の中で、6例の患者は、処置前サンプルが提出されたが、1例の患者について、処置前サンプルの腫瘍細胞は、不十分であった。表1は、PD-L1 IHC解析の結果、および残りの13例の患者についての、最良の全奏効状態を一覧する。
【0087】
【表1】
【0088】
PD-L1免疫組織化学染色は、製造元による使用のための指示書に従い、Ventana PD-L1(SP263)ウサギモノクローナル一次抗体(Roche Diagnostics;AZ)により行った。PD-L1評定は、バックグラウンドを上回る、任意の膜染色を伴う腫瘍細胞の百分率(TC%)、またはバックグラウンドを上回る、任意の強度の染色を伴う、腫瘍会合免疫細胞の百分率(IC%)として報告した。混合炎症状況下にあるが、壊死の一部ではない、任意の腫瘍会合免疫細胞を、腫瘍会合免疫細胞により占有された腫瘍面積のパーセント(免疫細胞の存在:ICP)の計算に組み入れた。解析および解釈を容易とするために、分布を、不連続単位へと構造化することにより、PD-L1発現群および免疫細胞存在群に対するカットオフ値を決定した。
【0089】
PD-L1 mRNAの発現を、がんゲノムアトラス(TCGA)内の、扁平上皮癌である子宮頸がん腫瘍、および扁平上皮癌以外の子宮頸がん腫瘍についてプロットした。OmicSoft ArrayStudioソフトウェア、version 10.0.1.50を使用して、子宮頸部腫瘍についてのTPM(tanscripts per million)をプロットした。PD-L1 mRNAの発現結果は、全体において、TCGA Research Network(https://www.cancer.gov/tcga)により作成されたデータに基づく。
【0090】
結果
患者:10例の患者を、各拡大コホートに登録した。年齢中央値は、単剤療法コホートおよび組合せ療法コホートにおいて、それぞれ、55.0歳(範囲:31.0~76.0)および51.5歳(範囲:29.0~65.0)であった。ベースラインの特徴は、2つのコホートにわたり同様であり、表2にまとめられる。10例の患者は、扁平上皮癌の組織像を有し、8例の患者は、腺癌を有し、1例の患者は、腺扁平上皮癌の組織像を有し、1例の患者は、粘液性癌の組織像を有した。データカットオフ時に、セミプリマブ単剤療法を施される患者の中で、1例の患者は、計画された処置(48週間)を完了し、9例の患者は、主に、疾患の進行または再発に起因して、処置を中断した(n=8)。セミプリマブ+hfRTを施される患者では、10例全ての患者は、主に、疾患の進行または再発に起因して、処置を中断した(n=8)。
【0091】
【表2】
【0092】
セミプリマブ単剤療法を施される患者について、セミプリマブの投与回数中央値は、4(範囲:2.0~23.0)であり、曝露の持続期間中央値は、8.1週間(範囲:4.0~48.4)であり、追跡の持続期間中央値は、5.6カ月間(範囲:0.8~16.2)であった。セミプリマブ+hfRTを施される患者について、セミプリマブの投与回数中央値は、8(範囲:1.0~17.0)であり、曝露の持続期間中央値は、16.0週間(範囲:2.0~34.1)であり、追跡の持続期間中央値は、3.76カ月間(範囲:0.7~8.1)であった。
【0093】
効能:持続期間を、単剤療法コホートレスポンダーについて、11.2カ月間、および組合せ療法コホートレスポンダーについて、6.4カ月間とした場合に、各コホート内、1例ずつの患者(10%)が、部分奏効を経た。いずれのレスポンダーも、扁平上皮癌の組織像を有した。照射病変は、応答評価に組み入れなかった。8例の患者:単剤療法コホート内の3例の患者(30%)、および組合せ療法コホート内の5例の患者(50%)が、最良の応答である、安定(SD)を達成した(表3)。最良の応答をSDとする、これらの8例の患者のうち、4例は、扁平上皮癌の組織像を有した。≧105日間にわたり進行を伴わない患者の比率として規定される、持続的病勢コントロールは、セミプリマブ単剤療法を施される患者における20.0%(95% CI:2.5~55.6)、およびセミプリマブ+hfRTを施される患者における30.0%(95% CI:6.7~65.2)であった。腫瘍応答状態に関する、他の臨床活性結果を、表3にまとめる。部分奏効(PR)は、標的病変および新たな病変の測定値が、ベースラインの≦30%である場合に決定する。進行(PD)は、標的病変および新たな病変の測定値が、最低測定値の≧20%である場合に決定する。
【0094】
【表3】
【0095】
PFS中央値についてのカプラン-マイヤー推定は、セミプリマブ単剤療法を施される患者において、1.9(95% CI:1.0~9.0)カ月間であり、セミプリマブ+hfRTを施される患者において、3.6(95% CI:0.6~5.7)カ月間であった。OS中央値についてのカプラン-マイヤー推定は、セミプリマブ単剤療法を施される患者において、10.3(95% CI:2.1~評価不能[NE])カ月間であり、セミプリマブ+hfRTを施される患者において、8.0(95% CI:1.7~NE)カ月間であった。
【0096】
安全性:処置属性にかかわらず、単剤療法コホートおよび組合せ療法コホートの、それぞれ、9および10例の患者において、任意のグレードのTEAEが報告された。最も一般的なTEAEは、両方のコホートを組み合わせて、登録された患者のうちの、35%(20例中の7例)における下痢、25%(20例中の5例)における疲労、および25%(20例中の5例)における低カリウム血症であった。セミプリマブ単剤療法を施される患者のうち、4例(4%)の患者は、グレード≧3のTEAEを被った。セミプリマブ+hfRTを施される患者のうち、4例(4%)の患者は、グレード≧3のTEAEを被った。いずれのコホート内の患者も、TEAEに起因して、処置を中断されることはなかった。
【0097】
肺炎に起因する、1例の死亡が、セミプリマブ+hfRTを施される患者において報告され、処置関連死であると考えられた。しかし、患者の転帰に対して、潜在的影響を及ぼす、他の併存疾患は、びまん性悪性肺病変の可能性、拡張期充満圧に潜在的に影響を及ぼす心膜腫瘍、ならびにタバコの使用および慢性閉塞性肺疾患のような既往歴要素を伴う、全般的健康状態の低下を含んだ。この患者において、緩和的放射線療法(RT)が選択された病変は、心膜上に存在した。肺炎による死亡時において、患者の全腫瘍応答は、部分奏効であった。別の患者もまた、グレード3の肺炎を被ったが、これは、ステロイドおよび経験的に選択される抗生剤を含む処置により消失した。ベースラインの疲労を伴う、1例の患者は、グレード3の免疫関連筋痛、ならびにグレード2および3の疲労と関連する、グレード2の免疫関連甲状腺機能低下症を被った。筋痛は、ステロイド処置により消失した。処置関連TEAE(≧グレード3)は、表4にまとめられる通り、単剤療法コホート内の10%(10例中1例)患者、および組合せ療法コホート内の30%(10例中3例)患者において生じた。
【0098】
【表4】
【0099】
子宮頸がんにおける、タンパク質およびPD-L1 mRNAの発現:扁平上皮癌の組織像を伴う患者において、応答が生じたことの観察は、PD-L1の発現と、子宮頸がんにおける組織像との潜在的関連についての探索を促した。研究患者から入手可能なサンプルが不十分であるため、他の供給源に由来する、子宮頸がん検体のアーカイブを精査した。表5に示される通り、免疫組織化学により解析された155例の腫瘍サンプルの中で、腫瘍PD-L1の発現は、腺癌サンプルのうちの69.8%(43例中の30例)、および扁平上皮癌サンプルのうちの40%(112例中の45例)において、検出不能(<1%)であった。免疫細胞内のPD-L1の発現は、扁平上皮癌における4.5%(112例中の5例)と対照的に、腺癌のうちの30.2%(43例中の13例)において検出不能(<1%)であった。エンリッチメント解析の組合せは、免疫細胞の存在、ならびに腫瘍細胞内および免疫細胞内のPD-L1の発現のいずれも、腺癌腫瘍内より、扁平上皮癌腫瘍内で一般的であることを裏付けた。
【0100】
【表5】
【0101】
子宮頸がん内の、PD-L1の発現と、腫瘍組織像との潜在的関連はまた、TCGAサンプル中のmRNAレベルでも探索した。PD-L1 mRNAの発現は、扁平上皮の子宮頸がんサンプル中で、非扁平上皮子宮頸がんサンプル中と対比して大きかった。扁平上皮子宮頸部腫瘍(n=253)についての、PD-L1 mRNAの、中央値および平均値のTPMは、それぞれ、4.5および5.0であった。非扁平上皮子宮頸部腫瘍(n=53)についての中央値および平均値は、それぞれ、1.3および1.2であった(図1)。選択された遺伝子(PD-1、PD-L1、CD8A)の発現についての、さらなるTCGA解析は、子宮頸がんが、黒色腫、非小細胞肺がん、腎明細胞癌、および頭頸部扁平上皮癌のような、抗PD-1療法が、全生存(OS)を改善する、他の充実性腫瘍型と共にクラスターをなすことを示した。
【0102】
考察
これらの拡大コホートの臨床活性結果は、セミプリマブによる処置が、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がん患者の間で、応答および臨床利益を誘導することを裏付ける。これは、3例中2例の子宮頸がん患者が、恒常的な応答を有した、セミプリマブFIH(first-in-human)研究の用量漸増コホートにおいて観察された、臨床活性シグナルを裏書きする(Papadopoulosら、Clin Cancer Res(2019年12月)、Epub)。全合計は、フェーズI研究(23例中4例:組合せにおける応答患者;3例中2例:用量漸増における応答患者+20例中2例:拡大コホートにおける応答患者)に登録された子宮頸がん患者中、17%の目的奏効率に等しかった。全てのレスポンダーは、扁平上皮癌の組織像を有した。本研究で観察された安全性結果は、セミプリマブについての他の研究、およびPD-1/PD-L1軸の他の阻害剤において観察された安全性結果と符合する。セミプリマブ処置の開始後における、hfRTの付加による、目的奏効率(ORR)の明らかな改善は、見られなかった。実際、用量漸増におけるセミプリマブ+hfRTに対する目的の応答を示した、子宮頸部扁平上皮癌患者のうちの1例は、その後、計画された処置の完了の後に、疾患の再発を示し、セミプリマブ単剤療法による再処置に対して、完全奏効を経た。
【0103】
本発明者らによる、フェーズI試験と独立の、子宮頸がん検体についての解析では、PD-L1タンパク質の高発現および免疫細胞の存在の両方の組合せは、扁平上皮癌において、腺癌と比べてエンリッチされた。これらの結果は、異なる抗PD-L1抗体を使用し、扁平上皮癌の子宮頸がんサンプル内で、腺癌の子宮頸がんサンプル内より高度の発現を見出した、既往の報告を確認し、拡張する(Heerenら、Cancer Immunol Res、3(2015)、48~58)。本実施例の研究は、TCGA子宮頸がんサンプル内の、PD-L1 mRNAの発現が、扁平上皮癌サンプル内で、非扁平上皮癌サンプル内より大きいことを報告することにより、これらの観察を裏書きする。扁平上皮腫瘍中の、PD-L1の発現の、タンパク質レベルおよびmRNAレベルの両方における上昇は、免疫回避機構が、扁平上皮癌である子宮頸がんと、扁平上皮癌以外の子宮頸がんとの間で異なり、免疫療法に対する臨床応答に影響を及ぼしうることを指し示す。PD-L1 mRNAの、非扁平上皮癌サンプルと対比した、扁平上皮癌サンプル中の発現レベルについては、かつて記載されなかった。
【0104】
扁平上皮子宮頸がんにおける、PD-1/PD-L1軸の重要性はまた、他のPD-1阻害剤を伴う研究によっても裏書きされる。マルチコホート研究である、KEYNOTE-158では、子宮頸がんコホート内のORRは、ペムブロリズマブにより、12.2%(98例中12例)であり、および応答が観察された12中11例は、扁平上皮癌の組織像を伴う患者においてのORRであった(Papadopoulosら、Clin Cancer Res(2019年12月)、Epub)。扁平上皮癌の組織像を伴う患者だけについての、フェーズI/II研究である、CheckMate 358では、目的の奏効率は、ニボルマブを伴う子宮頸がんにおいて、26.3%(19例中5例)であった(Naumannら、J Clin Oncol、37(2019)、2825~2834)。患者集団の60%が、扁平上皮癌の組織像を有する、別の研究もまた、ニボルマブに対する、4%の奏効率を報告した(Santinら、Gynecol Oncol、157(2020)、161~166)。これらの観察は、子宮頸がんにおけるPD-1遮断の効能を、扁平上皮癌の組織像により区分しうるという仮説と、方向的には符合するが、小規模な交差研究における比較から、結論を引き出すことは可能ではない。本研究、および本研究で再検討された他の研究のデータは、扁平上皮癌以外の子宮頸がんを伴う一部の患者がまた、免疫療法からも利益を得る可能性を除外しない。
【0105】
大半の再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者は、PD-1遮断による目的の応答を経ないが、恒常的な応答(または恒常的な安定)に対する潜在的可能性は、有意味な生存利益をもたらしうるであろう。本研究は、OSについての頑健な推定値を提示するには、小規模に過ぎる。
【0106】
TCGA内の、選択された遺伝子(PD-1、PD-L1、CD8A)についての遺伝子発現データの解析は、子宮頸がんが、黒色腫、非小細胞肺がん、腎明細胞癌、および頭頸部扁平上皮癌のような、抗PD-1療法が、全生存(OS)を改善する、他の充実性腫瘍型(Trivediら、Clin Adv Hematol Oncol、13(2015)、858~868;Ferrisら、N Engl J Med、375(2016)、1856~1867;Leeら、Cancer J、22(2016)、92~95;Chamotoら、Int J Clin Oncol(2020);Gellrichら、J Clin Med、9(2020)、223;Chaeら、J Immunother Cancer、6(2018)、39)と共にクラスターをなすことを裏付ける。加えて、21の腫瘍型における、36の変数についてのTCGA解析は、CD8+ T細胞の存在度、PD-1遺伝子の発現、および腫瘍突然変異量が、抗PD-1/PD-L1療法に対する、目的の応答についての、最も予測能の高い3変数であることを見出した(Leeら、JAMA Oncol、5(2019)、1614~1618)。これらの変数のうちの2つ(CD8+ T細胞の存在度、PD-1遺伝子の発現)は、子宮頸がんを、他の免疫療法応答性腫瘍と共にクラスター化する、本報告におけるTCGA解析と符合する。第3の変数である、腫瘍突然変異量もまた、PD-1遮断の、一部の子宮頸がん患者に対する効能に寄与しうる。ペムブロリズマブ(KEYNOTE-158)についてのフェーズII研究における、拡大コホートについての探索的解析では、子宮頸部扁平上皮癌は、高度の組織内腫瘍突然変異量(1メガ塩基当たり>10の突然変異として規定される)が、効能の増大と関連する腫瘍型の中にあった(Marabelleら、Annals of Oncology、30(2019)、v477~v478)。したがって、本報告で提示されるTCGA解析は、子宮頸がんの、セミプリマブ療法が、有益であるはずの腫瘍型としての同定をさらに裏書きする。
【0107】
第二選択以降の転移性子宮頸がん患者において、セミプリマブを、治験責任医師選定化学療法(NCT03257267)と対比して比較する、無作為化フェーズIII試験が進行中である。OSについての一次解析は、まず、扁平上皮癌の組織像を伴う患者について、次いで、全ての患者(扁平上皮癌、腺癌、または腺扁平上皮癌の組織像)についての、階層的な解析である。PD-L1の発現、効能、および組織像の間の関連を探索する。
【0108】
結論
白金およびタキサンの二重化学療法に対して耐性であるか、または忍容性でない、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者において、セミプリマブは、他のPD-1阻害剤について観察される臨床利益および安全性プロファイルと同様の、臨床利益および安全性プロファイルを裏付けた。他の抗PD-1剤によるデータと併せた、セミプリマブ試験による結果は、効能が、子宮頸がんにおける組織像と関連することを示唆する。さらに、組織像と、PD-1阻害の効能との潜在的関連は、PD-L1のタンパク質およびmRNAの発現が、扁平上皮癌の組織像において、扁平上皮癌以外の組織像より高度である他の供給源に由来する子宮頸がん検体についての解析により、間接的に裏書きされる。セミプリマブを、治験責任医師選定化学療法と対比する、フェーズIII無作為化試験は、進行中であり、全生存についての階層的一次解析は、まず、扁平上皮癌の組織像を伴う患者においてなされる。
【実施例2】
【0109】
再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんにおける、化学療法と対比したセミプリマブについての臨床試験
本研究は、白金含有化学療法の後で、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんが進行した患者における、治験責任医師選定(IC)化学療法と対比した、セミプリマブについての、オープンラベル、無作為化、フェーズ3試験である。
【0110】
研究目的
研究の主要目的は、セミプリマブまたは治験責任医師選定(IC)化学療法で処置された、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者であって、扁平上皮癌(SCC)の組織像を有する患者、および任意の適格な組織像を有する患者について、OSを比較することである。SCC患者、および全ての適格な組織像(SCC、腺癌、または腺扁平上皮癌)の間で実施された研究の副次的目的は、(1)セミプリマブによる無進行生存(PFS)を、IC化学療法と対比して比較すること;(2)RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)1.1に従う、セミプリマブによる目的の奏効率(ORR)(部分奏効[PR]+CR)を、IC化学療法と対比して比較すること;(3)セミプリマブによる応答持続期間(DOR)を、IC化学療法と対比して比較すること;(4)有害事象(AE)について記載することにより、セミプリマブによる安全性プロファイルを、IC化学療法と対比して比較すること;および(5)EORTC QLQ-C30(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-Core 30)を使用して、セミプリマブで処置された患者についての生活の質(QOL)を、IC化学療法と対比して比較することを含む。
【0111】
研究集団
研究は、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを処置するのに施された白金含有化学療法の後で、再発性子宮頸がん、遷延性子宮頸がん、および/または転移性子宮頸がんが進行した、≧18歳の女性を登録している。限局性疾患のための放射線療法と併用して、白金ベースの先行治療を施されたのに過ぎない患者は、適格ではない。
【0112】
患者集団についての根拠:本研究における患者は、白金含有化学療法の後で進行した、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを有する。先行研究は、白金+パクリタキセル+ベバシズマブのレジメンによる、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんのための第一選択治療の効能を確立した(Tewariら、N Engl J Med、370(2014)、734~743)。第二選択状況下の標準治療レジメンは存在しない。この状況下で検討することができる薬剤は、本研究におけるIC選択肢:ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、およびビノレルビンである。多様な化学療法選択肢の利用可能性にもかかわらず、子宮頸がんのために、これらの薬剤で処置される患者の生存期間中央値は、約7カ月間である。
【0113】
「白金不応性」疾患の概念については、子宮頸がんについての文献において記載されており、先行白金療法以来の時間と関連する(Nishinoら、Clin Cancer Res.、2016年8月;McLachlanら、Clinical Oncology、2016年;Taniokaら、Cancer Chemother Pharmacol(2011)、68:337~342)。しかし、子宮頸がん患者を、白金ベースの化学療法で再処置することは、再発性疾患または転移性疾患の状況下で、既にそれを施されている場合、典型的な臨床慣行ではない。本研究の対照アームにおける化学療法レジメンは、再発性疾患または転移性疾患の状況下で、先行白金法を施された子宮頸がん患者のための、本処置選択肢を表す。先行白金療法(再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんのための)と、後続の進行との時間間隔にかかわらず、このような患者は、医療の必要を満たされておらず、臨床研究の検討に適切である。他の状況(例えば、治癒を意図する治療の一部としての放射線療法と共時的な状況、疾患の証拠を伴わない患者におけるアジュバント処置としての放射線[または化学放射線療法]の後の状況)において施される白金療法は、本研究における、先行白金療法に関する適格性要件を満たさない。
【0114】
「遷延性疾患」という用語は、場合によって、化学放射線療法の後で、完全消失の記録が存在しない疾患を指すように使用される。このような患者のために、第一選択治療は、再発性疾患または転移性疾患を伴う患者のための第一選択治療(すなわち、白金+パクリタキセル±ベバシズマブ)と同じである。本研究における規定として述べると、本明細書でこの用語が使用される場合は常に、遷延性疾患を伴う患者は、「再発性疾患または転移性疾患」の類別に含まれるものとして検討される。
【0115】
研究集団は、先行パクリタキセルおよび先行ベバシズマブを施されたが、このような処置を拒絶したか、またはこのような処置に不適であった(または、ベバシズマブの場合、利用可能ではなかった)ものとする。先行パクリタキセルおよび/または先行ベバシズマブを施された患者について、先行パクリタキセルおよび/または先行ベバシズマブの後の任意の時点における疾患進行は、パクリタキセルおよび/またはベバシズマブの中断の、許容可能な理由である。
【0116】
研究デザインは、OSを評価項目として、セミプリマブを、IC化学療法と対比する無作為化比較である。広く許容された標準治療が存在せず、プラセボアームまたは最良の支持療法アームへの無作為化が、非倫理的または実行不可能と考えられる患者集団について、評価項目であるOSに基づき、規制機関による承認をもたらした研究では、保健機関は、ICを、対照薬として許容した(Donoghueら、Clin Canc Res、2012;18:1496~1505;Ferrisら、New Engl J Med、2016年10月、Epub)。盲検処理は、本研究では、スケジュールの差違、およびセミプリマブ選択肢と、IC選択肢とのAEプロファイルの差違(すなわち、セミプリマブによる免疫関連有害事象[irAE]、および化学療法による白血球カウントの抑制)に起因して、実践的ではない。
【0117】
全生存は、臨床利益を直接測定するものであり、バイアス評価項目ではなく、サロゲート評価項目でもない。このように、OSは、主要評価項目として選択されており、このオープンラベル研究は、再発性疾患状況または転移性疾患状況において施された、白金含有レジメンによる先行処置の後で進行した、子宮頸がんを伴う患者において、セミプリマブを、IC化学療法と対比して比較する。
【0118】
組入れ基準:患者は、研究への組入れに適格であるためには、以下の基準を満たさなければならない:(1)治癒を意図する選択肢(化学療法を伴うか、またはこれを伴わない、手術または放射線療法)が存在しない、扁平上皮癌の組織像を伴う、再発性子宮頸がん、遷延性子宮頸がん、および/または転移性子宮頸がん(注:腺癌および腺扁平上皮癌の組織像を伴う患者もまた、元のプロトコールに従い登録された);(2)白金療法(転移性子宮頸がん、遷延性子宮頸がん、または再発性子宮頸がんを処置するのに使用しなければならなかった)による処置の後における、腫瘍の進行または再発;(3)患者は、RECIST 1.1により規定される、測定可能な疾患を有さなければならない。測定可能な疾患は、少なくとも1つの寸法(記録される、最長の寸法)により、正確に測定しうる、少なくとも1つの病変として規定される。各病変は、コンピュータ断層法(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、または臨床検査によるキャリパー測定により測定される場合に、≧10mmであるか、または胸部x線により測定される場合に、≧20mmでなければならい。リンパ節は、CTまたはMRIにより測定される場合に、短軸が>15mmでなければならない;(4)ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステータスが、≦1であること;(5)≧18歳であること;(6)肝機能:総ビリルビン≦正常上限(ULN)の1.5倍(肝転移の場合:≦ULNの3倍);トランスアミナーゼ≦ULNの3倍(または≦ULNの5.0倍:肝転移の場合);アルカリホスファターゼ≦ULNの2.5倍(または≦ULNの5.0倍:肝転移または骨転移の場合);(7)腎機能:血清クレアチニン≦ULNの1.5倍または推定されたクレアチニンクリアランス>45mL/分;(8)骨髄機能:1dL当たりのヘモグロビン≧9.0g;1L当たりの絶対好中球カウント(ANC)≧1.5×10個;1L当たりの血小板カウント≧75×10個;(9)予測平均余命>12週間;(10)診療所への来院および研究関連手順の遵守を行う意思があり、これが可能であること;(11)説明同意文書を提出すること;(12)研究関連問診票を理解し、記入できること;(13)患者は、先行ベバシズマブ療法に関する以下の基準のうちの少なくとも1つを満たさなければならない:(a)疾患の進行に起因して中断されたが、先行ベバシズマブ含有療法を施されたこと;(b)毒性に起因して中断されたが、先行ベバシズマブ含有療法を施されたこと;(c)以下の理由のうちの1つについて、先行ベバシズマブ療法に不適であると見なされたこと:(i)瘻孔形成の危険性が許容不可能であること、(ii)高血圧症のコントロール不良、(iii)Moore基準(Tewariら、Clin Cancer Res、2015、21(24))に従う、「低危険性」疾患であること;(d)先行ベバシズマブ療法の拒否;(e)運輸上の理由のために、ベバシズマブ療法へのアクセスを有さなかった(例えば、ベバシズマブが、子宮頸がんを伴う患者に市販されていない地域に在住するか、またはベバシズマブに対する保険適用を有さなかった)こと;(14)患者は、先行パクリタキセル療法に関する以下の基準のうちの少なくとも1つを満たさなければならない:(a)疾患の進行に起因して中断されたが、先行パクリタキセル含有療法を施されたこと;(b)毒性に起因して中断されたが、先行パクリタキセル含有療法を施されたこと(c)以下の理由のうちの1つについて、先行パクリタキセル療法に不適であると見なされたこと:(i)神経障害(ii)パクリタキセルまたはその成分に対するアレルギー;(d)先行パクリタキセル療法の拒否。
【0119】
除外基準:以下の基準のうちのいずれかを満たす患者は、研究から除外しなければならない:(1)重度のirAEに対する高危険性を示唆しうる、全身免疫抑制剤処置を伴う処置を要求した、進行中または最近の(5年間以内の)、著明な自己免疫疾患の証拠。以下は、除外基準ではない:白斑、消失した小児喘息、1型糖尿病、ホルモン置換法だけを要求した、甲状腺機能低下症の遺存、または全身処置を要求しない乾癬;(2)PD-1/PD-L1経路を遮断する薬剤による先行処置;(3)(a)登録日の4週間(28日間)より短い期間以内であるか、または(b)登録の90日前以内における、任意のグレードのirAEと関連するか、または(c)免疫調節剤の中断を結果としてもたらす毒性と関連した、他の全身免疫調節剤による先行処置。免疫調節の例は、治療用ワクチン、サイトカイン処置(顆粒球コロニー刺激因子またはエリスロポエチン以外の処置)、または細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、4-1BB(CD137)、PI3-K-デルタ、LAG3、またはOX-40をターゲティングする薬剤;(4)活動性であると考えられる(スクリーニングにおける脳のイメージングは、臨床において、脳転移が疑われない限り、要求されない)脳転移(複数可)の、既知の履歴を含む。病変が安定であり(スクリーニング期間中に得られるイメージングにおいて、少なくとも6週間にわたり、進行の証拠を伴わない)、新たな脳転移または脳転移の拡大の証拠が見られず、患者は、研究薬(セミプリマブまたはIC化学療法)の初回の投与から4週間以内に、脳転移の管理のために、任意の免疫抑制用量の、全身コルチコステロイドを要求しないことを条件として、脳転移が既に処置された患者は、参加しうる;(5)研究薬(セミプリマブまたはIC化学療法)の初回の投与から4週間以内における、免疫抑制用量の、コルチコステロイド(毎日>10mgのプレドニゾンまたは同等物);(6)治療を要求する、活動性の細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、またはマイコバクテリア感染であって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の既知の感染、またはB型肝炎ウイルス(HBV)もしくはC型肝炎ウイルス(HCV)による活動性の感染を含む感染;(7)最近5年間以内における、肺炎の既往歴;(8)研究薬(セミプリマブまたはIC化学療法)の初回投与、または研究期間中に行うように計画された研究薬の投与から30日間以内における、任意の抗がん処置(化学療法、ターゲティング全身療法、光力学療法)、治験治療、または標準治療(ビスホスホネートまたはデノスマブを施される患者は、除外されない);(9)抗体処置に帰せられる、アレルギー反応または急性過敏反応の記録の履歴;(10)処置が十分な、皮膚(cutaneous)扁平上皮癌または皮膚(skin)基底細胞癌または非浸潤性乳管癌のような、転移または死の危険性が無視できる腫瘍を除き、研究薬(セミプリマブまたはIC化学療法)の初回計画投与日から3年以内における、子宮頸がん以外の悪性腫瘍の併発、および/または子宮頸がん以外の悪性腫瘍の既往歴。血液学的悪性腫瘍(例えば、慢性リンパ性白血病)を伴う患者は、除外される;(11)治験責任医師の考えでは、患者を、参加に不適格とする、任意の急性または慢性の精神科問題;(12)固形臓器移植の既往歴を伴う患者(先行角膜移植(複数可)を伴う患者は、診療モニターとの討議および診療モニターからの承認の後で、登録を許容することができる);(13)治験責任医師の考えでは、安全性についての高危険性および/または研究結果についての解釈に影響を及ぼす潜在的可能性のために、患者の臨床試験への参加を不適とする、任意の医学的併存疾患、身体診察所見、もしくは代謝機能不全、または臨床検査値異常;(14)妊婦または授乳中の女性;(15)初回の研究薬処置の前、研究中、および最終回投与後、少なくとも6カ月間にわたり、有効性の高い避妊法を実施する意思がない、出産の潜在的可能性がある女性。有効性の高い避妊措置は、スクリーニングの2周期またはそれ以上の月経周期前における排卵の阻害と関連する、ホルモンによる避妊(経口、膣内、経皮)の組合せ(エストロゲンおよびプロゲストゲンを含有する)、またはプロゲストゲンだけによるホルモン避妊(経口、注射、植込み)の安定使用;子宮内デバイス;子宮内ホルモン放出システム;両側卵管結紮;配偶者の精管切除;および/または性的禁欲を含む;(16)司法機関または行政機関により発出された命令により、施設に収容されている患者は、本研究から除外される;(17)イデラリシブによる先行処置;(18)研究薬(セミプリマブまたはIC化学療法)の初回投与から30日間以内における、生ワクチンによる先行処置。患者は、研究中、および研究薬の最終回投与の5半減期後まで、生ワクチンによる処置を受けてはならない;(19)研究薬の初回投与から30日以内に、任意の臨床試験において、先行処置がなされた患者。介入を伴わない観察的試験は、許容可能である。
【0120】
研究変数
本研究の主要評価項目は、無作為化~死亡日の時間として規定されるOSである。死亡していない患者は、わかっている最終接触日に打ち切る。
【0121】
副次的評価項目は、無進行生存(PFS)および全奏効率(ORR)を含む。PFSは、無作為化~RECIST 1.1を使用する、最初の腫瘍進行記録日、または任意の原因による死の時間として規定される。ORRは、最良の全応答として、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)が確認された患者数を、有効性解析セット内の患者数で除した数として規定される。最良の全応答は、無作為化日~客観的に記録された最初の進行日または後続の抗がん治療日のいずれか早い方の日の間の、最良の全応答として規定される。
【0122】
以下の定義は、標的病変に適用される:完全奏効(CR)は、全ての標的病変の消失として規定され;任意の病理学的リンパ節(標的であれ、非標的であれ)は、短軸が、<10mm(<1cm)へと低減されなければならない。部分奏効(PR)は、ベースラインの合計の直径を、参照としたときの、標的病変の直径の合計の、少なくとも30%の減少として規定される。進行(PD)は、研究時の最小の合計を参照としたときの、標的病変の直径の合計(これは、研究時に最小である場合、ベースラインの合計を含む)の、少なくとも20%の増大として規定される。20%の相対増大に加えて、合計はまた、少なくとも5mm(0.5cm)絶対増大も裏付けなければならない。安定(SD)は、研究時の最小の合計直径を参照としたときに、PRにふさわしい、十分な縮小でもなく、PDにふさわしい、十分な増大でもないと規定される。
【0123】
研究の、他の副次的評価項目は、応答持続期間(DOR)および生活の質(QOL)を含む。DORは、最初の応答(CRまたはPR)日~最初の腫瘍進行記録(RECIST 1.1に従う)日または任意の原因による死の間の時間と規定される。QOLは、EORTC QLQ-C30により測定される。さらなる副次的評価項目は、セミプリマブの安全性および忍容性を含む。セミプリマブまたはIC化学療法の安全性および忍容性について査定するために、AE、重篤な有害事象(SAE)、死、および検査値異常の発生率について評価した。
【0124】
研究デザイン
本研究では、約534例の患者(これらのうち、436例は、扁平上皮癌(SCC)の組織像を有する)を、被験セミプリマブ処置アーム、または化学療法対照処置アームであるICアームへと無作為化する。436例のSCC患者を、1:1(218が、処置アームに従う)に無作為化する。被験群では、セミプリマブを、3週間ごと(Q3W)、350mgのフラット用量として投与する。対照群では、IC化学療法選択肢は、4つのクラス:(1)抗葉酸剤であるペメトレキセド、(2)トポイソメラーゼ1阻害剤(トポテカンまたはイリノテカン)、(3)ヌクレオシド類似体(ゲムシタビン)、および(4)ビンカアルカロイド(ビノレルビン)にある。対照アームでは、IC選択肢として列挙される、5つの薬物のうちのいずれかの化学療法処置だけが許容される。本研究では、これらのクラス内の他の薬剤は許容されない。図2は、本研究デザインの概略を提示する。
【0125】
研究は、3つの期間:スクリーニング期間、処置期間、および追跡期間を含む。スクリーニング期間は、説明同意書式(ICF)の署名により始まる。スクリーニング期間は、患者が、研究に完全に適格であると確認され、無作為化される場合、または患者が、不適格であり、スクリーニング失格であることの確認と共に終わる。処置期間は、処置アームのうちの1つへの無作為化から、5日間以内に始まる。サイクルの長さは、6週間であり、腫瘍イメージングは、サイクル1~4、6、8、10、12、14、および16の42日目(±7日間)に行われるように計画される。計画処置は、最長で96週間にわたる。患者が研究治療を中断すると、処置フェーズは終わる。本研究では、クロスオーバーは行わない。処置期間が完了した後、患者は、追跡期間に入る。追跡期間の後、患者は、生存について追跡される。研究終了手順は、扁平上皮癌患者において、331例目のOS事象が報告された後に実行される。
【0126】
処置は、研究において、表6に示されたスケジュールに従い、患者へと施される。
【0127】
【表6】
【0128】
「治験薬」(研究薬)という用語は、被験処置であるセミプリマブと、IC化学療法処置とを含む。本研究では、治験薬は、セミプリマブ(被験群);抗葉酸剤:ペメトレキセド(対照群内のIC選択肢);トポイソメラーゼ阻害剤:トポテカンまたはイリノテカン(対照群内のIC選択肢);ヌクレオシド類似体:ゲムシタビン(対照群内のIC選択肢);およびビンカアルカロイド:ビノレルビン(対照群内のIC選択肢)である。対照アームでは、上記で、IC選択肢として列挙された、5つの薬物のうちのいずれかの化学療法処置だけが許容される。本研究では、これらのクラス内の他の薬剤は許容されない。
【0129】
被験群処置(セミプリマブ):オープンラベルのセミプリマブは、滅菌、単回使用バイアル内の液体として供給される。各バイアルは、50mg/mLの濃度で、セミプリマブを含有する。セミプリマブを、外来状況において、30分間にわたるIV注入として投与する。各患者の用量を、3週間ごと(Q3W)、350mgのフラット用量として投与する。準備された注入バッグは、室温で、6時間以下、または2℃~8℃で、24時間以下にわたり保持するものとする。
【0130】
コントロール群処置(治験責任医師選定):対照アームへと割り当てられた患者は、以下の、治験責任医師選定の化学療法選択肢:抗葉酸剤:最長で96週間の処置にわたり、21日ごと、IVにおける、500mg/mのペメトレキセド。ペメトレキセドによる標準治療に従い、ビタミンB12および葉酸による支持剤を施す;トポイソメラーゼ1阻害剤:最長で96週間の処置にわたり、21日ごと、5日間にわたり毎日、IVにおける、1mg/mのトポテカン;または最長で96週間の処置にわたり、毎週4回、IVにおける、100mg/mのイリノテカンに続く、10~14日間の休薬;ヌクレオシド類似体:最長で96週間の処置にわたり、1および8日目、ならびに21日ごと、IVにおいて、1000mg/mのゲムシタビン;ビンカアルカロイド:最長で96週間の処置にわたり、1および8日目、ならびに21日ごと、IVにおいて、30mg/mのビノレルビンのうちの1つを施される。IC選択肢について、用量は、体重ベースである。サイクル1/1日目のために、治験責任医師は、スクリーニング時の身長および体重を使用して、用量を計算するが、サイクル1/1日目の体重はまた、治験責任医師の裁量に従い使用することも許容される。体重は、各サイクルの開始時に測定する。体重の変化が≧10%である場合は、IC化学療法の用量を計算し直すべきである。
【0131】
手順および評価
腫瘍イメージング(コンピュータ断層法[CT]または磁気共鳴イメージング[MRI])を実施して、腫瘍量を測定し、応答基準を使用して、研究処置の効能プロファイルを特徴付けた。任意の理由で、研究から離脱しているが、生存情報の収集に対する同意は取り下げていない患者を含む、全ての患者についての生存データを収集するために、あらゆる努力を払う。
【0132】
身体診察、検査室検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、出産の潜在的可能性がある女性についての妊娠検査、ならびにAEおよび併用薬についての記録を実施して、患者の安全性を確認し、研究処置の安全性プロファイルを特徴付けた。
【0133】
他の評価は、薬物動態(PK)のための血液サンプル;抗セミプリマブ抗体について評価するための血液サンプル;バイオマーカー(血清、血漿、腫瘍組織);末梢血単核細胞;および生活の質の評価を含む。
【0134】
スクリーニング来院時に実施される手順:研究適格性を決定するか、またはベースライン集団を特徴付けることだけを目的として、以下の手順を実施する:血清β-HCG(結果は、初回投与前≦72時間のものでなければならない);HBV、HCV、およびHIVのスクリーニング:B型肝炎表面抗原、C型肝炎陽性RNA(C型肝炎抗体試験陽性は、活動性の感染を除外するように、C型肝炎RNA試験を要求する)、HIV-1血清抗体、またはHIV-2血清抗体;子宮頸がん(扁平上皮癌の組織像だけ)の病理学的確認の記録;および病理学的素材(提出された病理報告からの、ホルマリン固定、パラフィン包埋された[FFPE]ブロック、または20例のスライドサンプル)。
【0135】
有効性手順:全ての患者について、疾患は、RECIST 1.1基準に従い、X線により測定される。腫瘍の評価のためのCTまたはMRIを、スクリーニング時、処置中、および追跡中に実施する。処置期間中、腫瘍応答評価は、サイクル1~4、6、8、10、12、14、および16の終了時に実施する。追跡中、腫瘍応答評価は、追跡来院1および2において実施する。イメージングが、CTによるのか、MRIによるのかの選定は、治験責任医師の決定である。CTスキャンまたはMRIの選定がなされたら、後続の評価も、可能な場合はいつでも、同じモダリティーを使用して行うべきである。ベースライン評価時に、全身(胸部/腹部/骨盤)イメージングを実施するが、各応答評価時にも、強く推奨される。頸部への転移を伴う患者では、頸部のCTまたはMRIを実施すべきである。少なくとも、X線により測定可能な全ての標的病変(RECIST 1.1)は、各応答評価時にイメージングすべきである。各応答評価時に、同じX線イメージングモダリティーを使用すべきである。脳転移の履歴を伴う患者、または臨床において、脳転移が疑われる患者には、スクリーニング期間中に、脳のイメージング(ガドリニウムによる脳MRI(または造影剤による脳CT:MRIが実行できない場合))を実施する。「活動性ではない」脳転移を伴うが、研究に登録されている患者は、各応答評価時に、または臨床において脳転移の悪化が疑われる場合は、より早期の処置時に、脳イメージングを受けるべきである。
【0136】
生活の質についての問診票:患者報告転帰は、バリデーションされた、患者自己記入式のEORTC QLQ-C30問診票を使用して測定する。患者は、研究来院(研究/処置中期間および追跡期間)時の、任意の研究手順が実施される前に、これらの問診票に記入するように求められる。
【0137】
併用薬および手順
説明同意時~最終研究処置の90日後までに投与される、抗がん治療以外の、任意の処置は、併用処置と考えられる。これは、投与が、研究の前に始まり、研究中に持続する、薬物および他の治療の他、研究薬関連AEを処置するために、追跡期間中に始まった、任意の治療を含む。
【0138】
禁止薬および手順:本研究に参加する間、患者は、無作為化時に割り当てられた処置:セミプリマブまたはIC化学療法以外の抗がん処置を施されないものとする。患者は、研究中、および研究薬の最終回投与後5半減期まで、生ワクチンを施されないものとする。患者の福利に必要であると考えられ、割り当てられた処置(セミプリマブまたはIC化学療法)についての査定に干渉しないと予測される、他の任意の薬は、治験責任医師の裁量で施すことができる。コルチコステロイドの補充以外の目的で、任意の免疫抑制用量の、全身コルチコステロイド(毎日>10mgのプレドニゾンまたは同等物)を使用する患者は、研究に適格ではない。セミプリマブアームの患者について、患者が、致死性救急症例、および/またはirAEを処置する場合を除き、研究を通して、いかなる時点においても、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(Solu-Medrol(登録商標))、またはデキサメタゾン(Decadron(登録商標))のような全身コルチコステロイドを施されることは推奨されない。
【0139】
許容薬および手順:全身コルチコステロイドの生理的補充投与は、>10mg/日のプレドニゾン同等物であってもなお許容される。予防(例えば、対比色素アレルギー)または非自己免疫状態の処置(例えば、接触アレルゲンにより引き起こされる遅延型過敏反応)のための、短いコルチコステロイドコースは許容される。
【0140】
放射線療法は、被験群内または対照群内の研究レジメンの一部ではない。放射線療法が計画される患者は、適格ではない。研究の経過中に、患者が、治験責任医師により、緩和的放射線療法が適切であると見なされる、症候的病変を発症する場合、これはPDと見なされ、一般に、患者は、研究から除外されるであろう。緩和的放射線療法は、患者が、少なくとも24週間にわたり、研究に参加している、ある特定の状況下で許容することができる。本研究では、緩和的放射線は、非標的病変に対してだけ許容される。
【0141】
結果
セミプリマブの投与は、SCCの組織像を伴う、子宮頸がんを伴う患者における、腫瘍退縮の増強をもたらすことが予測される。このような患者は、部分奏効および完全奏効の増大の他、全生存および全奏効率の著明な増大を呈することが予測される。また、このような利益は、SCCの組織像を伴う子宮頸がん患者において、腺癌の組織像を伴う子宮頸がん患者において観察される利益と比較して、より大きな程度で達成されることも予測される。
【実施例3】
【0142】
第二選択(2L)以降の子宮頸がんにおける、化学療法と対比したセミプリマブについての、フェーズ3研究の結果
本実施例は、実施例2に記載した臨床試験から得られる結果を提示する。本実施例において記載される研究は、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステータスが、0または1である、白金ベースの化学療法に対して耐性である、合計608例の転移性子宮頸がん患者(扁平上皮癌(SCC)を伴う477例;腺癌(AC)を伴う131例)を含む。本研究の主要評価項目は、全生存(OS)であった。副次的評価項目は、無進行生存(PFS)、全奏効率(ORR)/応答持続期間(DOR)、安全性、および生活の質を含んだ。
【0143】
患者を、(i)3週間ごと(Q3W)、IVにおける、350mgのセミプリマブ、または(ii)ペメトレキセド、ゲムシタビン、トポテカン(またはイリノテカン)、もし
くはビノレルビンから選択される、治験責任医師選定(IC)化学療法で処置した。これは、検出力90%の研究であった。OS中央値は、セミプリマブで処置された患者について、12カ月間であり、化学療法で処置された患者について、8.5カ月間であった。統計学的デザインに従うハザード比(HR)は、0.70であった。最終回の解析における統計学的有意性のための、最小のHRは、0.80であった。2回目である中間解析(事象の85%)における統計学的有意性のための、最小のHRは、0.77であった。
【0144】
人口学的特徴は、表7にまとめる通り、全集団について集計したが、これは、SCCおよびSCC以外の組織像を伴う患者についての、人口学的特徴およびベースラインの特徴(全解析セット)を提示する。本研究の全患者集団の年齢中央値51.0は、現実世界の子宮頸がん患者の年齢を表す。患者は、PD-L1の発現状態にかかわらず、登録を許容された。
【0145】
【表7】
【0146】
全ての患者について、処置曝露の持続期間は、約20週間であった。結果は、特に、SCCの組織像およびSCC以外の組織像を伴う子宮頸がん患者を含む、子宮頸がん患者の全生存(表8)に関して、セミプリマブによりもたらされる、化学療法と比較した、実質的な利点(表8~10)を示す。
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
【表10】
【0150】
TEAE(treatment-emergent adverse event)は、公知の安全性プロファイルセミプリマブと符合し、表11および12(SCCの組織像およびSCC以外の組織像を伴う患者についての安全性解析セット)にまとめられる通り、化学療法の安全性プロファイルより優れていた。新たな安全性シグナルは、観察されなかった。
【0151】
【表11】
【0152】
【表12】
【0153】
前出の結果は、セミプリマブが、第二選択再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者における死の危険性を、化学療法と比較して、実質的に低減したことを示す。これは、進行性子宮頸がんにおいて行われた、最大の無作為化フェーズ3臨床試験である。セミプリマブは、フェーズ3試験において、白金ベースの化学療法時の進行後に、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う女性における全生存の利益を裏付ける、最初の薬である。
【0154】
化学療法と比較して、セミプリマブは、死の危険性を、31%低下させた(HR=0.69;CI:0.56~0.84、p=0.003)。生存中央値は、化学療法を施される患者(n=304)について、8.5カ月間と比較して、セミプリマブを施される患者(n=304)について、12カ月間であった。セミプリマブについての新たな安全性シグナルは、観察されなかった。
【0155】
再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんは、処置が困難なことで悪名が高く、第一選択の化学療法の後に、標準治療を有さない。この試験は、セミプリマブが、患者のPD-L1状態にかかわらず、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者が、化学療法が奏効しなかった後で、長生きする一助となることを示した。
【実施例4】
【0156】
再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんにおける、化学療法と対比したセミプリマブについての、フェーズ3研究の結果
本実施例は、実施例3に示された結果の全体にわたり更新された結果を提示するが、これらは、実施例2で記載された臨床試験から得られた。本実施例において記載される研究は、第一選択の白金ベースの化学療法の後で進行した、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う、合計608例の女性を含む。患者を、PD-L1の発現状態にかかわらず登録し、96週間後まで、3週間ごとに、350mgのセミプリマブを、静脈内に施すか、または治験責任医師選定(IC)化学療法を施した。IC化学療法の選択肢は、ペメトレキセド、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、またはトポテカンであった。患者を、組織像(扁平上皮癌(SCC)/腺癌、または腺扁平上皮癌(AC))により層別化した。患者の人口学的特徴を、表13に示す。
【0157】
【表13-1】
【表13-2】
【0158】
研究の主要目的は、全生存(OS)を、扁平上皮癌(SCC)の組織像を有する患者集団について、次いで、任意の適格の組織像(SCCまたは腺癌/腺扁平上皮癌[AC])を有する全集団について、セミプリマブと、IC化学療法との間で比較することであった。SCC患者および全集団(SCCおよびAC)の間で実施された研究の副次的目的は、SCCにおける無進行生存(PFS)、生活の質(QoL)、SCCにおける目的の奏効率(ORR)、全集団におけるPFSおよびORR、ならびに安全性プロファイルを、セミプリマブと、IC化学療法との間で比較することであった。中間解析は、SCC患者の間で、事象のうちの約85%が生じた場合にスケジューリングされた。
【0159】
結果:608例の患者:年齢中央値:51歳[範囲:22~87];組織像:477例のSCC、131例のAC;ECOGパフォーマンススコア:0[46.5%]、1[53.5%]を無作為化した。セミプリマブ曝露中央値は、15週間(範囲:1.4~100.7)であった。中間解析において、セミプリマブについての、IC化学療法(n=304)と対比した、全集団(n=304)におけるOS中央値は、それぞれ、8.5カ月間と対比した12.0カ月間であり;死についてのハザード比(HR)は、0.69であり;95%信頼区間(CI)は、0.56~0.84であり;p<0.001であった。
【0160】
SCC集団では、OSは、セミプリマブアームにおいて、化学療法アームより有意に長かった。具体的に、セミプリマブ(n=239)についての、IC化学療法(n=238)と対比したOS中央値は、8.8カ月間と対比した11.1カ月間であり;死についてのHRは、0.73であり;95% CIは、0.58~0.91であり;p=0.003であった。SCC集団内のPFSは、セミプリマブアーム内で、化学療法アーム内より有意に優れていた:ハザード比=0.71(95% CI:0.58,0.86);片側p=0.00026であった。推定PFS中央値は、化学療法アーム内の2.9カ月間と対比した、セミプリマブアーム内の2.8カ月間であった。SCC内の、Global Heath Status/生活の質(GHS/QoL)の、ベースラインからの全平均値変化:ベースラインからの平均値変化の推定差(セミプリマブ-化学療法)は、8.49(95% CI:3.77,13.21);片側p=0.00025であり;統計学的に有意であり、化学療法より、セミプリマブが優位であった。全集団内の、GHS/QoLの、ベースラインからの平均値変化を、図3に例示する。全集団内で、セミプリマブを、化学療法より優位とする、名目的な有意差が見られた。セミプリマブを施される患者は、GHS/QoLを、ベースラインから改善するか、または維持した。化学療法を施される患者は、一般に、これらのスコアの増悪を示した。
【0161】
SCC内の、身体機能の、ベースラインからの全平均値変化:ベースラインからの平均値変化の推定差(セミプリマブ-化学療法)は、8.35(95% CI:4.08,12.62);片側p=0.00008であり;統計学的に有意であり、化学療法より、セミプリマブが優位であった。SCC内のORR:ORRは、セミプリマブアーム内で、化学療法アーム内より有意に大きかった:6.7%(95% CI:3.9~10.7)と対比した、17.6%(95% CI:13.0~23.0)、片側p=0.00014であった。
【0162】
AC集団内では、IC化学療法(n=66)と対比した、セミプリマブ(n=65)についてのOS中央値は、7.0カ月間と対比した13.3カ月間であり;HR:0.56;95% CI:0.36~0.85;p<0.005(名目的p値)であった。全集団内およびSCC集団内のPFSおよびORR、ならびにSCC内の、生活の質の、ベースラインからの平均値変化は、セミプリマブが優位であった。AC内のPFS:HR=0.91(95% CI:0.62,1.34)であった。PFS中央値は、化学療法アーム内の2.8カ月間と対比した、セミプリマブアーム内の2.7カ月間であった。AC内のORR:ORRは、化学療法アーム内の4.5%(95% CI:0.9~12.7)と対比した、セミプリマブアーム内の12.3%(95% CI:5.5~22.8)であった。
【0163】
セミプリマブについての、IC化学療法と対比した、任意のグレードの、最も一般的なTEAE(treatment-emergent AE)は、貧血(45%と対比した25%)、悪心(33%と対比した18%)、および嘔吐(23%と対比した16%)であった。AEに起因する中断は、セミプリマブ患者のうちの8%、およびIC化学療法患者のうちの5%において生じた。安全性の概要を、表14~15に提示する。
【0164】
【表14】
【0165】
【表15】
【0166】
OSに関する全集団では、有効性解析は、いずれの処置アーム内にも、304例ずつの患者を含んだ。追跡期間中央値(無作為化日~データカットオフ日)は、化学療法アーム内の18.3カ月間と対比した、セミプリマブアーム内の17.9カ月間であった。OSは、セミプリマブアームにおいて、化学療法アームより有意に長かった:ハザード比=0.69(95% CI:0.56,0.84);片側p=0.00011であった。推定OS中央値は、化学療法アーム内の8.5カ月間と対比した、セミプリマブアーム内の12.0カ月間であった。全集団内のPFSは、セミプリマブアーム内で、化学療法アーム内より有意に優れていた:ハザード比=0.75(95% CI:0.63,0.89);片側p=0.00048であった。推定PFS中央値は、化学療法アーム内の2.9カ月間と対比した、セミプリマブアーム内の2.8カ月間であった。全集団内のORR:ORRは、セミプリマブアーム内で、化学療法アーム内より有意に大きかった:6.3%と対比した、16.4%、片側p=0.00004であった。
【0167】
統計学的方法:主要評価項目であるOSは、カプラン-マイヤー生存曲線を使用してまとめ、SCC集団内およびAC集団内では、地理的地域(北米対アジア対その他の地域)の無作為化層別化因子により層別化され、全集団内では、組織像(SCC対AC)および地理的地域の無作為化層別化因子により層別化されるログランク検定を使用して、2つの処置群間で比較した。両側95%信頼区間を伴うハザード比は、層別化ログランク検定で使用された層別化因子と同じ層別化因子を伴う、層別化Cox比例ハザードモデルに由来した。PFSは、SCC集団、腺癌集団、および全集団に関するOSの一次解析について記載された統計学法と同じ統計学法を使用して解析した。ORRは、SCC集団、AC集団、および全集団に関するOS解析で使用された層別化因子と同じ層別化因子により層別化された、コクラン-マンテル-ヘンツェル検定を使用して解析した。ORRおよび対応する95%の正確なCIは、クロッペル-ピアソン法により、各処置群について計算した。
【0168】
QoL:GHS/QoL尺度および身体機能尺度の、各患者報告転帰評価時における、ベースラインからの長期的変化は、MMRM(mixed model repeated measures)を使用して解析した。これらの尺度における高スコアは、良好な健康状態/機能を指し示す。各来院に、等しい重みを与える、全補正平均推定値と、サイクル2における補正平均推定値との、対応のある比較を、IC化学療法と対比したセミプリマブについて行った。モデルは、各患者報告転帰評価時における、ベースラインからの平均値変化について、最小二乗(LS)平均値による推定値、標準誤差、95% CI、およびp値(該当する場合)を生成した。
【0169】
OS結果を、表16~19および図4~6に示す。
【0170】
【表16】
【0171】
【表17】
【0172】
【表18】
【0173】
【表19】
【0174】
PFS結果を、表20~22および図7~9に示す。
【0175】
【表20】
【0176】
【表21】
【0177】
【表22】
【0178】
ORR結果を、表23~25に示す。
【0179】
【表23】
【0180】
【表24】
【0181】
【表25】
【0182】
生活の質/身体機能結果を、表26~29に示す。
【0183】
【表26】
【0184】
【表27】
【0185】
【表28】
【0186】
【表29】
【0187】
各処置サイクル(最大で16サイクル)のベースラインおよび1日目において、患者を、EORTC QLQ-C30にかけた。MMRM(mixed model repeated measures)モデルは、全ての尺度にわたり、ベースラインからの、最小二乗(LS)平均値による変化を推定した。レスポンダー解析は、QLQ-C30上で、臨床的に有意味な(10ポイントの閾値を使用する)改善もしくは増悪、または安定を伴う比率を決定した。結果を、統計学的階層に従い、SCCおよび全集団について報告し;事後解析を、ACコホートについて提示する。
【0188】
ベースラインスコアは、中程度~高度の機能および低~中程度の症状負荷を示し、処置群間の差違は最小限であった。セミプリマブを優位とする、LS平均値変化の有意差が、QLQ-C30 GHS/QoL尺度、QLQ-C30身体機能尺度、および他の機能/症状尺度について観察された(表30)。役割機能、疼痛、および食欲不振についての推定処置効果は、臨床的に有意味な閾値を超えた。セミプリマブを施される患者は、GHS/QoL尺度、機能尺度、および大半の症状尺度にわたり、臨床的に有意味な改善/維持を経る患者が多かった。再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者では、セミプリマブは、GHS/QoL尺度、身体機能尺度、および大半の症状尺度の維持/改善において、化学療法と対比して、著明な利益をもたらした。
【0189】
【表30】
【0190】
全集団内では、セミプリマブで処置された患者(n=304)は、OS、PFS、およびORRの、化学療法(n=304)と比較して有意な改善であって、(i)死の危険性の31%の低減([HR:0.69;95% CI:0.56~0.84;片側:p=0.0011);(ii)疾患進行の危険性の25%の低減(HR=0.75;95% CI:0.63~0.89;片側:p=0.00048);および(iii)化学療法についての6%(19例の患者)と比較した、16%のORR(50例の患者;95% CI:13~21%;片側:p=0.00004)であって、応答持続期間中央値は、カプラン-マイヤー推定値に従い、セミプリマブについての16カ月間(95% CI:12カ月間~未査定)、および化学療法についての7カ月間(95% CI:5~8カ月間)であったORRを含む改善を経た。
【0191】
本研究では、患者のうちの78%は、SCCとして分類される、進行性子宮頸がんを有した。この亜集団でもまた、セミプリマブ(n=239)について、化学療法と(n=238)比較した、有意な改善であって、(i)死の危険性の27%の低減(HR:0.73;95% CI:0.58~0.91;片側:p=0.00306);(ii)疾患進行の危険性の29%の低減(HR=0.71;95% CI:0.58~0.86;片側:p=0.00026);および(iii)化学療法についての7%(16例の患者;95% CI:6~23%)と比較した、18%のORR(42例の患者;95% CI:13~23%)を含む改善が見られた。
【0192】
腺癌についての評価は、所定の評価項目ではなかったが、事後解析は、セミプリマブ処置患者(n=65)について、化学療法(n=66)と比較した、以下の転帰であって、(i)死の危険性の44%の低減(HR:0.56;95% CI:0.36~0.85;名目的片側p<0.005);(ii)疾患進行の危険性の9%の低減(HR=0.91;95% CI:0.62~1.34);および(iii)化学療法についての5%(3例の患者;95% CI:1~13%)と比較した、12%のORR(8例の患者;95% CI:6~23%)を含む転帰を裏付けた。
【0193】
加えて、EORTC QLQ-C30に従い、セミプリマブ処置患者が、それらのベースラインのGHS/QOLを改善または維持することが、一般に可能であったのに対し、化学療法で処置された患者は、サイクル8までに、臨床的に有意味となる増悪を被った(全推定結果[標準誤差]:セミプリマブについて、1.01[1.54]の改善、化学療法について、-6.81[2.12]の悪化;差違:7.81;片側名目的P=0.00040)。
【0194】
セミプリマブについての新たな安全性シグナルは、観察されなかった。安全性は、少なくとも1回の研究処置を施された患者:セミプリマブ群内の300例の患者(曝露の持続期間中央値:15週間;範囲:1~101週間)、および化学療法群内の290例の患者(曝露の持続期間中央値:10週間;範囲:1~82週間)において評価した。AEは、セミプリマブ患者のうちの88%、および化学療法患者のうちの91%において観察され、15%またはそれ以上のセミプリマブ患者において生じるAEは、貧血(25%:セミプリマブ、45%:化学療法)、悪心(18%:セミプリマブ、33%:化学療法)、疲労(17%:セミプリマブ、16%:化学療法)、嘔吐(16%:セミプリマブ、23%:化学療法)、食欲減退(15%:セミプリマブ、16%:化学療法)、および便秘(15%:セミプリマブ、20%:化学療法)であった。グレード3またはそれ以上のAEは、セミプリマブ患者のうちの45%、および化学療法患者のうちの53%において生じた。15%またはそれ以上の患者におけるAEの中で、セミプリマブ群において、より高頻度で生じた、グレード3またはそれ以上のAEは、無力症(2%:セミプリマブ、1%:化学療法)および発熱(1%未満:セミプリマブ、0%:化学療法)を含んだ。免疫関連AEは、セミプリマブ患者のうちの16%、および化学療法患者のうちの1%未満において観察され、それぞれ、6%および1%未満が、グレード3またはそれ以上であった。AEに起因する中断は、セミプリマブ患者のうちの9%、および化学療法患者のうちの5%において生じた。
【0195】
結論:セミプリマブ単剤療法は、全集団、ならびに白金含有化学療法の後で、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんが進行した、≧2L状況にある患者のうちの、SCC亜集団およびAC亜集団の両方において、OS、PFS、およびORRの、治験責任医師選定化学療法に対する、統計学的に有意な改善をもたらした。扁平上皮癌の組織像を伴う患者では、Global Heath Status/生活の質および身体機能の、ベースラインからの全平均値変化の統計学的有意差は、セミプリマブが、治験責任医師選定化学療法に対して優位であった。加えて、全集団(名目的P<0.001)およびSCC患者(P<0.001)における、GHS/QoLの、ベースラインからの全平均値変化も、セミプリマブが優位であった。セミプリマブについての毒性プロファイルは、化学療法についての毒性プロファイルと比較して優位であり(任意のグレードおよび≧グレード3のTEAEが少ない)、セミプリマブについて公知の安全性プロファイルと符合した。
【0196】
まとめると、PD-L1の発現状態にかかわらず、患者を登録した、本研究は、セミプリマブが、第二選択進行性子宮頸がんを伴う女性であって、予後不良、および限定的な処置選択肢に直面する女性のために、高度に有効な処置であることを示す。セミプリマブは、化学療法時における進行の後で、進行性子宮頸がんを伴う女性におけるOSの、有意な改善を裏付け、全集団内で、死の危険性を、化学療法と比較して、31%軽減した。さらに、セミプリマブは、PD-L1状態または組織像(SCC、AC)にかかわらず、白金ベースの1L治療の後で、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんを伴う患者について、単剤化学療法より有意に長いOSを結果としてもたらし;新たな安全性シグナルは、観察されなかった。セミプリマブは、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんにおいて、OS利益を裏付ける、最初の免疫療法であり、この予後不良集団のための、新たな標準治療の処置選択肢をもたらす。
【実施例5】
【0197】
再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんについてのフェーズ3試験の結果;セミプリマブについての、治験責任医師選定化学療法と対比した、サブグループ有効性解析
本実施例は、第一選択の白金ベースの処置の後で進行した、再発性子宮頸がんまたは転移性子宮頸がんにおいて、抗PD-1セミプリマブを、治験責任医師選定(IC)単剤化学療法と対比する、オープンラベル、無作為化(1:1)、多施設、フェーズ3臨床試験である、実施例2に記載した臨床試験から得られる結果を提示する。治験責任医師により選択された単剤化学療法は、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ビノレルビン、トポテカン、またはイリノテカンを含んだ。成人女性(年齢≧18歳)を、PD-L1の発現にかかわらず登録し、最長で96週間にわたり、3週間ごと、350mgのセミプリマブを、静脈内に施すか、またはIC化学療法を施し、組織像(扁平上皮癌[SCC]/腺癌、または腺扁平上皮癌[AC])、地理的地域(北米/アジア/その他の地域)、先行ベバシズマブ、およびECOGパフォーマンスステータス(0/1)により層別化した。主要評価項目は、OSであった。さらなる評価項目は、無進行生存(PFS)、目的の奏効率(ORR)、応答持続期間、生活の質、および安全性を含んだ。
【0198】
合計608例の患者を無作為化した:地理的地域および組織像にわたり、304例を、セミプリマブへと無作為化し、304例を、IC化学療法(ゲムシタビン、n=121;ペメトレキセド、n=111;ビノレルビン、n=32;トポテカン、n=21;イリノテカン、n=19)へと無作為化した。研究追跡の持続期間中央値(範囲)は、全集団について、4.8カ月間(0.0~25.9)であった。2回目である中間解析において、効能のために、試験を早期に中止した。OS、PFS、およびORR(表31)は、セミプリマブによる、各IC化学療法処置と対比した改善であって、セミプリマブにより観察される、プールされたIC化学療法と対比した改善と同様の改善を裏付けた。全体として、セミプリマブによる、OS、PFS、およびORRの改善は、IC化学療法薬にかかわらず、全集団についての結果と符合する傾向を示した。
【0199】
【表31】
【0200】
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【0201】
本開示は、本明細書で記載される、具体的な実施形態により、範囲を限定されない。実際、当業者には、前出の記載および任意の付属の図面から、本明細書で記載される実施形態に加えて、本発明の多様な改変が明らかとなろう。このような改変は、付属の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
【配列表】
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