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特許7240582肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61B18/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020000336
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2020108785
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-01-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001332
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522329744
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン‐ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギ‐ワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,シ‐チャン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】村上 聡
【審判官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05868735(US,A)
【文献】特開2018-051146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B18/00, A61B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテルであって、
流体が注入される注入管、および流体が抜け出る排出管が内部に設置されており、注入管および排出管以外の部分は真空状態を維持する真空領域と、
前記真空領域とは区分されて前端に設置され、前記注入管の端と前記排出管の端とが互いに連通しており、前記注入管の端に形成されたチップから抜け出た流体膨張により周囲を冷却するための冷凍領域を含むボディ部であって、前記注入管の端の内径は前記注入管の内径より小さい前記ボディ部
前記ボディ部の端に形成され、内部にガイドワイヤーを挿入するガイドワイヤールーメンが形成され、端に行くほど細くなり、心室中隔を貫くように形成されたテーパードチップと、を備え、
前記テーパードチップは5~20mmの長さを有し、尖部は1.2~1.4Frの外径を有し、尖部の反対側は3~6Frの外径を有することを特徴とする、肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテル。
【請求項2】
前記ガイドワイヤールーメンに挿入された前記ガイドワイヤーを更に備え、
前記ガイドワイヤールーメンは、前記ガイドワイヤーと互いに密着して離隔空間がないことを特徴とする、請求項1に記載の肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテル。
【請求項3】
前記ガイドワイヤールーメンは、前記テーパードチップの端にあるチップホールから、前記テーパードチップの他側端に設けられたサイドホール(side hole)まで連通していることを特徴とする、請求項1に記載の肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテル。
【請求項4】
前記テーパードチップは、スパイラルコイルワイヤー(spiral coil wire)またはブレイデッドワイヤー(braided wire)が内部に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテル。
【請求項5】
前記テーパードチップは、表面に親水性高分子コーティング層(hydrophilic polymer coating)が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法に関し、さらに詳細には、動物やヒトの心臓の左心室の心室中隔が厚くなる疾患である肥厚性心筋症の手術のために、肥大した心筋内に冷凍アブレーションカテーテルを挿入し、これを介して冷媒を加えることにより、肥大した心筋に寒冷損傷を与えるための、肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥厚性心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:肥大型心筋症)とは、左心室肥厚を誘発すべき大動脈弁狭窄症や高血圧などの他の症状なしに左心室壁が厚くなる心臓疾患である。全人口500人当たり1人から発見され、様々な形態の左心室肥厚所見が観察される。最も一般的で代表的な特徴は、非対称な心室中隔肥大(asymmetrical septal hypertrophy)と変動性の左心室流出路の閉塞である。
【0003】
図1は肥厚性心筋症の症状を示すとともに、現在一般的に施行している手術方法を示す。
【0004】
図1を参照すると、肥厚性心筋症手術の一般な方法は、ナイフを大動脈弁を介して左心室に挿入した後、肥大した左心室の心室中隔を図示の如く抉り取る方法である。すなわち、ナイフを用いて、専門医の感覚で、肥大した心室中隔を抉り取る方法を使用する。
【0005】
一方、冷凍アブレーション(cryoablation)は、組織を致命的なほどに冷却または凍結させ、その組織を機能的に切除する技術である。冷凍アブレーションは、冷凍アブレーションの際に保存する必要のある組織、例えば血管などの付随的組織損傷を最小限に抑えるという利点があり、がんや心臓病の治療を含む幅広い治療に適用できる。
【0006】
図2は一般な冷凍アブレーションシステムの基本構造を示す。流体貯蔵槽(liquid coolant storage)は、窒素、アルゴンまたはヘリウムなどの低温流体が貯蔵される。流体貯蔵槽から液体ポンプ(liquid pump)を介して冷却器へポンピングされる。冷却器の低温流体は、冷凍アブレーションカテーテルの注入管に注入される。冷凍アブレーションカテーテルの端には冷凍領域が形成される。注入管に注入された低温流体は、冷凍領域(freeze zone)で急速膨張しながら周囲の温度を急激に下げる。これはジュール・トムソン効果(Joule-Thomson effect)に基づく熱力学メカニズムによる。冷凍アブレーションカテーテルの冷凍領域の周囲には、人体組織にアイスボール(ice ball)を形成する。アイスボールは、組織の損傷を意味し、超音波などの画像から確認することができる。冷凍領域で膨張した流体は、排出管を介して再び冷凍アブレーションカテーテルから抜け出て再び流体貯蔵槽に貯蔵される。
【0007】
冷凍アブレーションカテーテルは、肝臓などの治療において非常に有用な手術ツールとして使用されている。ところが、冷凍アブレーションカテーテルは、肥厚性心筋症の治療には広く使用されていない。冷凍アブレーションカテーテルのカテーテル先端を心臓の左心室内のキャビティ(cavity)で肥大化した心室中隔内に挿入する場合、心室中隔に十分な量の治療的損傷を与えない。これは、心室中隔組織との接触面が十分でなく、左心室内の暖かい血液によって冷却効果(Cooling effect)が相殺されるなどの理由により望ましくないため、広く適用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0061394号公報(2016年5月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、肥厚性心筋症手術のために、ガイドワイヤールーメンを有するテーパードチップが端に形成された柔らかいカテーテル(catheter)タイプの冷凍アブレーションカテーテル(Cryoablation catheter)を提供し、これを用いて心室中隔内(intra-myocardial or intraseptal)の肥厚性心筋症治療効果を得る方法を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、上述した目的に限定されず、上述していない別の目的は、以降の記載から本発明の技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の肥厚性心筋症手術のための冷凍アブレーションカテーテルは、流体が注入される注入管、および流体が抜け出る排出管が内部に設置されており、注入管および排出管以外の部分は真空状態を維持する真空領域と、前記真空領域とは区分されて前端に設置され、前記注入管の端と前記排出管の端とが互いに連通しており、前記注入管の端に形成されたチップから抜け出た流体が膨張しながら周囲を冷却する冷凍領域とを含むボディ部と、および前記ボディ部の端に形成され、内部にガイドワイヤーを挿入するガイドワイヤールーメンが形成され、端に行くほど細くなるテーパードチップを備える。
【0012】
好適な実施形態によれば、前記ガイドワイヤールーメンは、前記ガイドワイヤーと互いに密着して離隔空間がない。
【0013】
好適な実施形態によれば、前記ガイドワイヤールーメンは、前記テーパードチップの端であるチップホールから、前記テーパードチップの他側に設けられたサイドホール(side hole)まで連通している。
【0014】
好適な実施形態によれば、前記テーパードチップは、スパイラルコイルワイヤー(spiral coil wire)またはブレイデッドワイヤー(braided wire)が内部に形成される。
【0015】
好適な実施形態によれば、前記テーパードチップは、表面に親水性高分子コーティング層(hydrophilic polymer coating)が形成される。
【0016】
好適な実施形態によれば、前記テーパードチップは5~20mmの長さを有し、尖部は1.2~1.4Frの厚さを有し、尖部の反対側は3~6Frの厚さを有する。
【0017】
本発明の好適な実施形態による、冷凍アブレーションカテーテルを用いる方法は、i)ガイドワイヤー(guidewire)を、冠状静脈洞(coronary sinus)と中隔静脈(septal vein)を介して、肥大した心室中隔(hypertrophied septum)に位置させるステップと、ii)前記ガイドワイヤーに沿ってガイドワイヤールーメンが形成された冷凍アブレーションカテーテルを前記肥大した心室中隔に伝達するステップと、iii)前記冷凍アブレーションカテーテル内に流体を注入して冷凍アブレーション領域で、前記肥大した心室中隔に冷凍アブレーションを行うステップとを含む。
【0018】
好適な実施形態によれば、前記冷凍アブレーションを行うステップで、画像装備を用いて、冷凍アブレーション領域の周囲に形成されるアイスボールをモニターしながら冷凍アブレーション術を施行する。
【0019】
好適な実施形態によれば、前記冷凍アブレーションカテーテルの端には、内部にガイドワイヤーを挿入するガイドワイヤールーメンが形成され、端に行くほど細くなるテーパードチップが形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次の効果がある。
【0021】
1.本発明は、心室中隔内に冷凍アブレーションカテーテルの冷凍領域(freeze zone)を挿入させて冷凍アブレーションを行うことにより、冷凍領域が心室内の暖かい血流と直接的に触れないので、冷凍アブレーション効果を十分に得ることができるという利点がある。
【0022】
2.本発明の冷凍アブレーションカテーテルは、端にテーパードチップが形成され、前記テーパードチップの内部に形成されたガイドワイヤールーメンを用いて、ガイドワイヤーに沿って心室中隔内に挿入されることにより、心室中隔内への挿入時に組織の損傷または抵抗が小さいという利点がある。
【0023】
3.本発明の冷凍アブレーションカテーテルによって形成されたアイスボール(iceball)を肉眼で確認することができるという利点がある。冷凍アブレーション術の際に、組織に形成されるアイスボールを超音波などの画像から肉眼で確認しながら、冷凍アブレーション術を施行することができるので、より安全な手術が可能であるという利点がある。
【0024】
4.冷凍アブレーション(cryoablation)は、患者に深刻な痛みを誘発しない。冷凍アブレーションは、RF電極切除術(RF ablation)に比べて相対的に痛みがない切除術であるので、患者は、一般的に手術中にさらに安定的な状態を維持する。
【0025】
5.大きい血管に加わる激しい損傷がない。冷凍アブレーションの際に血管開通は正常に維持され、組織の構造的機能は冷凍アブレーション後も安定的に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】肥厚性心筋症の症状を示すとともに、現在一般的に施行している手術方法を示す。
図2】一般的な冷凍アブレーションシステムの基本構造を示す。
図3】本発明の肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法を示す概略図である。
図4】本発明の肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。ところが、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現される。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0028】
本発明の重要な要旨は、端に行くほど小さくなるテーパードチップを端に形成し、テーパードチップの内部にはガイドワイヤールーメンが形成された冷凍アブレーションカテーテルを提供し、これを用いて心室中隔内(intra-myocardial or intraseptal)肥厚性心筋症を冷凍アブレーションで手術する方法である。
【0029】
図3は本発明の肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルおよびこれを用いる方法を示す概略図である。
【0030】
図3を参照すると、本発明は、冠状静脈洞(coronary sinus)と中隔静脈(septal vein)を介して、ガイドワイヤー(guidewire)を肥大した心室中隔に位置させた後、予め位置したガイドワイヤーに沿って冷凍アブレーションカテーテルの冷凍領域を治療目標部位(すなわち、肥大した心室中隔)に到達させる。その後、外部からは流体を注入管(inlet)を介して注入し、注入管の端が形成されるチップを介して流体が急速膨張しながら冷凍アブレーションカテーテルの冷凍領域の周囲にアイスボールを形成させることにより、冷凍アブレーション術を行う。
【0031】
まず、ガイドワイヤーを治療目標部位(肥大した心室中隔)内に位置させる方法を説明する。
【0032】
非常に細いガイドワイヤー(約0.014”内外)を用いて、冠状静脈洞(coronary sinus)と中隔静脈(septal vein)を通過して目標地点(肥大した心室中隔(hypertrophied septum))に位置させる。このとき、ガイドワイヤーの位置は、心超音波などでリアルタイムにて確認することが可能であり、これにより最適な位置を見つける情報を得ることができる。
【0033】
本発明では、中隔静脈を介して、肥厚性心筋症の治療目的である肥大した心室中隔に接近するために、右心房(right atrium)に入口(opening)を持っている冠状静脈洞を用いる。冠状静脈洞への接近は、頸静脈(neck vein)或いは大腿静脈(femoral vein)を用い、上大静脈(superior vena cava)または下大静脈(inferior vena cava)を介してガイドカテーテル(guiding catheter)を用いて接近する。
【0034】
ガイドカテーテルは、バルーンが端に形成されたガイドカテーテルおよび/またはデュアルルーメンマイクロカテーテルを用いる。ガイドカテーテルは、ガイドワイヤーを所望の位置に案内するためのカテーテルである。
【0035】
冠状静脈洞に接近すると、冠状静脈洞の遠位部(distal part)までガイドカテーテルを位置させ、ガイドカテーテルを介して圧力がかけられた静脈造影(pressurized venogram)を行う。圧力がかけられた静脈造影のためには、端にバルーンが形成されたガイドカテーテル(balloon tipped guiding catheter)が理想的である。
【0036】
圧力がかけられた静脈造影を介して冠状静脈を造影すると、ターゲット部位に最も近い冠状静脈内に約0.014”のPTCAガイドワイヤー(PTCA guidewire)を挿入する。PTCAガイドワイヤーは、心臓超音波(echocardiogram)などのリアルタイム画像装備を活用して、ワイヤーがターゲット部位を探していく様子を知らせるイメージ(imaging guidance)がより精密な手術を可能にする。PTCAガイドワイヤーの方向性をより精密に誘導するために、デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcatheter)を用いてターゲット部位にワイヤーを精密に誘導することができる。
【0037】
つまり、ガイドワイヤーを中隔静脈を介して心室中隔に位置させるためには、(1)端にバルーンが形成されたガイドカテーテルを用いた、圧力がかけられた静脈造影(pressurized venogram with balloon guiding cathether)および/または(2)デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcathehter)などが使用できる。
【0038】
中隔静脈をよりよく見えるようにするために、圧力がかけられた静脈造影を用いる。このため、端にバルーンが形成されたガイドカテーテル(balloon tipped guiding catheter)が補助手段として使用できる。
【0039】
また、心室中隔内でガイドワイヤーを所望の方向に位置させるために、デュアルルーメンマイクロカテーテルなどが補助手段として使用できる。デュアルルーメンマイクロカテーテルは、ガイドワイヤーを挿入するために、2つのルーメンが形成されたカテーテルである。デュアルルーメンマイクロカテーテルの第一のルーメンを介して心室中隔静脈に第一のガイドワイヤーを位置させた後、デュアルルーメンマイクロカテーテルの第二のルーメンを介して第二のガイドワイヤーを挿入させる。第二のガイドワイヤーは、第一のガイドワイヤーとは異なる方向に移動させることができる。このように、デュアルルーメンマイクロカテーテルは、心室中隔内に所望のガイドワイヤーが目標地点を探していくときに非常に有用な手術補助カテーテルである。
【0040】
心室中隔の表面ではなく、心室中隔の組織内に位置する中隔静脈内では、出血などの問題なしに、ガイドワイヤーの自由な移動が可能である。中隔静脈が心室中隔内に存在するので、中隔静脈を用いて、肥厚した心筋中隔内(intra-septum)にガイドワイヤーを位置させる。中隔静脈を用いる場合、ガイドワイヤーは、必要に応じて中隔静脈を突き抜けて所望のところに移動することも可能である。このとき、先立って説明したデュアルルーメンカテーテルを用いてもよい。
【0041】
冠状動脈(septal artery)を用いても、同様の接近が理論的に可能であるが、解剖学的位置が多様であって、ターゲットに到達するのが難しい場合が多い。この場合、ガイドワイヤーが中隔動脈(septal artery)を突き抜けると、心筋内出血などの深刻な問題が発生するおそれがある。また、冠状動脈に手術を施すと、冠状動脈内血栓(thrombus)や剥離(dissection)が生じる場合がよく発生する。これは致命的であることがある。よって、本発明のように中隔静脈を用いてガイドワイヤーを挿入する。
【0042】
本発明での中隔静脈を通じた接近方法は、従来の接近方法である冠状動脈、大動脈弁(aortic valve)或いは僧帽弁(mitral valve)を経て左心室内膜(LV endocardium)に接近する方法、或いは直接穿刺(direct needle puncture)などによって接近する方法などで引き起こされる手術合併症を遮断することができる。
【0043】
一方、従来では、中隔動脈にアルコールを注入する治療が行われてきた。これもアルコール(alcohol)の分布を統制するのは難しいため、所望しない部位にアルコールが伝達され、不要な心筋梗塞などの問題を引き起こすおそれがあり、伝導系(condution system)障害もよく誘発する。
【0044】
次に、肥大した心室中隔に位置させたガイドワイヤーに沿って冷凍アブレーションカテーテルを目標部位(肥大した心室中隔内)まで位置させる。つまり、目標する位置にガイドワイヤーを1つまたは2つ以上位置させた後、ガイドワイヤーに沿って冷凍アブレーションカテーテルを位置させる。
【0045】
図4は本発明に係る肥厚性心筋症手術用冷凍アブレーションカテーテルの概略図である。
冷凍アブレーションカテーテルは、2つの部分に大別されるが、ボディ部(body part)とテーパードチップ(tapered tip)に分けられる。
【0046】
テーパードチップ(tapered tip)は、ボディ部の端、すなわちカテーテルの端に形成される部分である。内部にガイドワイヤールーメンが形成される。約3~6Fr内外の太さ(好ましくは、約4Fr)であって、これは心室中隔への挿入時に心室中隔の損傷を少なくするサイズである。
【0047】
好ましくは、テーパードチップの長さは、約5~20mm(好ましくは、約1cm)であり、尖部は約1.2~1.4Frの太さを持つ。尖部の反対側は、中隔挿入部の外形と同じ厚さ(好ましくは3~6Fr)を有する。テーパードチップは、尖部の反対側の厚さ(すなわち、ボディ部の外形の厚さ)よりも長さが5~20倍さらに長い、非常に細長いチップの形状である。
【0048】
テーパードチップは、冠状静脈洞及び中隔静脈を通過して心室中隔(setpum)に位置したガイドワイヤーに沿って行くことができるよう、内部にガイドワイヤールーメン(guidewire lumen)を有する。テーパードチップの尖部(end)にはチップホール(tiphole)が形成される。チップホール(tip hole)はガイドワイヤールーメンに連結されている。
【0049】
テーパードチップの内部に形成されるガイドワイヤールーメンは、ガイドワイヤーと相互に密着して離隔空間があってはならない。テーパードチップのガイドワイヤールーメンとガイドワイヤーとの間に離隔空間があってはならない理由は、テーパードチップが心室中隔の内部に入るときに心室中隔の組織に損傷を与えることなく抵抗を最小限に抑えなければならないからである。これは、本発明において、テーパードチップがニードルと同様の機能をしながら、心室中隔の組織を突き抜けて入らなければならないためである。もし、ガイドワイヤールーメンとガイドワイヤーとの間に離隔空間が形成された場合には、テーパードチップが心室中隔に挿入されるときにテーパードチップが心室中隔の組織によって抵抗を受け、これにより、心室中隔の組織を損傷させるおそれがあるという問題が発生する。
【0050】
ところが、冷凍アブレーションカテーテルは、ガイドワイヤーに沿って心室中隔内に挿入されなければならないので、テーパードチップのガイドワイヤールーメンとガイドワイヤーとが密着するものの、ガイドワイヤーに沿って冷凍アブレーションカテーテルが前後に動くことができなければならない。
【0051】
本発明では、カテーテルの近位部(proximal part)は、カテーテルの一側端であってカテーテルが人体の外部に抜け出る端部を意味し、カテーテルの遠位部(distal part)は、カテーテルの他側端であって人体内に挿入される端部を意味する。
【0052】
テーパードチップ(tapered tip)は、ボディ部より硬い(hard)強度を有する。これは、テーパードチップが心室中隔組織に挿入される部分であるためである。
【0053】
好ましくは、テーパードチップは、スパイラルコイルワイヤー(spiral coil wire)またはブレイデッドワイヤー(braided wire)が内部に形成される。これは、テーパードチップが心室中隔への挿入時に曲げられる現象(キンキング(kinking)現象)を防止し、押し込み性(pushability)と追従性(trackability)を向上させるためである。押し込み性(pushability)は、曲げられる現象を軽減しながら、近位部から遠位部まで力を伝達する能力であり、追従性(trackability)は、複雑な血管に沿ってカテーテルを注入する能力である。
【0054】
好ましくは、テーパードチップは、表面に親水性高分子コーティング層が形成できる。これは、テーパードチップが心室中隔組織内にさらに容易に移動できるようにするためである。親水性高分子コーティング層は、軟質のカテーテルよりはさらに硬いので、テーパードチップが心室中隔組織内への挿入時に一層容易に挿入できる。
【0055】
ボディ部(body part)は、カテーテルのボディをなす部分であり、冷凍領域と真空領域に区分される。ボディ部は、流体が注入される注入管(inlet)、および流体が排出される排出管(outlet)が挿入されている。
【0056】
冷凍領域は、注入管の流体が急速に膨張しながら周囲にアイスボールを形成する領域である。真空領域は、注入管と排出管が通る領域であって、注入管および排出管以外の部分は、真空状態を維持する。真空領域が真空状態を維持する理由は、注入管と排出管を通る流体の温度が低温状態であるので、組織に損傷を与えないようにするためである。
【0057】
注入管の端と排出管の端は、冷凍領域で開放されている。冷凍領域において、注入管の端に形成されたチップ(先端部)を介して流体が膨張しながら冷凍アブレーションが施行される。注入管の端の内径は注入管より小さいため、チップを介して排出される流体は、瞬間的に膨張し、これにより周囲を凍結させる。冷凍領域で膨張した流体は、開放された排出管(outlet)を介して再び外部へ排出される。
【0058】
ボディ部の冷凍領域と真空領域は、一般な従来の冷凍アブレーションカテーテルと同じ構造を有し、作動原理も、従来の冷凍アブレーションカテーテルと同一であるので、これについての具体的な説明は省略する。
【0059】
本発明において、ボディ部は、心室中隔内に中隔挿入部を押し込むときにカテーテルが曲げられる現象(kinking現象)が発生しないように、効率よく押し込むために十分な剛性(stiffness)を持たなければならない。
【0060】
一方、テーパードチップ(tapered tip)に形成されるガイドワイヤールーメンは、先端(tip)の入口側であるチップホール(tip hole)からテーパードチップの他側端の側面に形成されるサイドホール(sidehole)まで形成された構造である。このような構造を「モノレールタイプ(monorail type、or rapid exchange type)」ともいう。「モノレールタイプ」は、ガイドワイヤールーメンがチップホールからカテーテル全体にわたって形成される構造である「オーバー・ザ・ワイヤータイプ(over the wire type)」とは区別される。本発明において、カテーテルの遠位部と近位部との間に冷凍領域および真空領域が形成されるので、「オーバー・ザ・ワイヤータイプ」のカテーテルは適用することが難しく、図示の如くモノレールタイプのカテーテルが適用可能である。
【0061】
冷凍アブレーションカテーテルを用いた冷凍アブレーション術は、ガイドワイヤーに沿って冷凍アブレーションカテーテルの位置を少しずつ前後に移動させるか、或いは他のガイドワイヤーに沿って、複数の部位に治療効果が現れるまで数回にわたって冷凍アブレーション術を施行する。
【0062】
冷凍アブレーション術は、心筋(心室中隔)で施行しながら超音波装置などの画像装備を用いて冷凍アブレーションによる組織の損傷程度をアイスボール(ice ball)現象などから肉眼でモニターしながら適切な治療が可能である。
【0063】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく様々な具体的形態で実施できることを理解することができるだろう。したがって、上述した実施形態は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4