(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】移動体検出装置、及び移動体検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20230309BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01D5/245 110A
G01D5/14 H
(21)【出願番号】P 2019022731
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 将幹
(72)【発明者】
【氏名】桜沢 将史
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136275(JP,A)
【文献】特開2016-218011(JP,A)
【文献】特開2007-101230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/00-7/34
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子と、
前記磁気検出素子に磁界を加える磁石と、
前記磁気検出素子に接続されるリード端子と、
前記磁気検出素子、前記磁石および前記リード端子を収容する収容部を有する第1のハウジングと、
前記収容部を覆って前記第1のハウジングと嵌合連結され前記被検出体と対向して配置される第2のハウジングと、を備えた移動体検出装置において、
前記収容部の前記磁気検出素子が前記磁石と接する面の方向の面に第1の溝部を備え
、
前記第1の溝部は、前記磁気検出素子の方向に突出する凸部を備え、前記凸部に接着剤が塗布される、
ことを特徴とする移動体検出装置。
【請求項2】
前記収容部の前記磁気検出素子の短手方向の面と接する面に第2の溝部を備えること
を特徴とする請求項
1に記載の移動体検出装置。
【請求項3】
被検出体の移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子と、
前記磁気検出素子に磁界を加える磁石と、
前記磁気検出素子に接続されるリード端子と、
前記磁気検出素子、前記磁石および前記リード端子を収容する収容部を有する第1のハウジングと、
前記収容部を覆って前記第1のハウジングと嵌合連結され前記被検出体と対向して配置される第2のハウジングと、
を備える移動体検出装置の製造方法であって、
前記収容部の前記磁気検出素子が前記磁石と接する面の方向の面に第1の溝部を設ける工程
と、
前記第1の溝部が前記磁気検出素子の方向に突出する凸部を備えるように形成され、前記凸部に接着剤が塗布される工程と、
を備えることを特徴とする移動体検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出素子を用いる移動体検出装置、及び移動体検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直線運動や回転運動する移動体の移動を検出するための移動体検出装置が用いられている。例えば、特許文献1に開示されている移動体検出装置は、連通孔に接着剤を塗布することで磁石、磁気検出素子、基板を接着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された移動体検出装置では、接着剤の塗布量が過剰な場合は接着剤が溢れることが想定され、接着剤の塗布量を厳密に管理する必要があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、接着剤の収容力に余力を持たせることで生産効率が高い移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動体検出装置100は、
被検出体Dの移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子10と、
磁気検出素子10に磁界を加える磁石20と、
磁気検出素子10に接続されるリード端子30と、
磁気検出素子10、磁石20およびリード端子30を収容する収容部43を有する第1のハウジング40と、
収容部43を覆って第1のハウジング40と嵌合連結され被検出体Dと対向して配置される第2のハウジング50と、を備え、
収容部43の磁気検出素子10が磁石20と接する面10cの方向の面43dに第1の溝部43eを備えること
を特徴とする。
【0007】
第1の溝部43eに、磁気検出素子10の方向に突出する凸部43fを備えることを特徴とする。
【0008】
収容部43の磁気検出素子10の短手方向の面10dと接する面43gに第2の溝部43hを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の移動体検出装置100の製造方法は、
被検出体Dの移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子10と、
磁気検出素子10に磁界を加える磁石20と、
磁気検出素子10に接続されるリード端子30と、
磁気検出素子10、磁石20およびリード端子30を収容する収容部43を有する第1のハウジング40と、
収容部43を覆って第1のハウジング40と嵌合連結され被検出体Dと対向して配置される第2のハウジング50と、を備える移動体検出装置100の製造方法であって、
収容部43の磁気検出素子10が磁石20と接する面10cの方向の面43dに第1の溝部43eを設ける工程を備えること
を特徴とする移動体検出装置100の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産効率が高い移動体検出装置及び移動体検出装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動体検出装置を示す図。
【
図4】
図1の移動体検出装置から第2のハウジングを外した図。
【
図6】
図4の第1のハウジングを上方(+Z方向)から見た図。
【
図10】
図8の収容部に塗布された接着剤を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための一実施形態に係る移動体検出装置を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、
図1に示した移動体検出装置100の状態を基準として、前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とする。また、X方向、Y方向及びZ方向を示す矢印が向く方向を+(プラス)方向、その反対方向を-(マイナス)方向として説明する。
本発明の移動体検出装置100は、
図2,
図3に示すように被検出体Dの移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子10と、磁気検出素子10に磁界を加える磁石20と、磁気検出素子10に接続されるリード端子30と、磁気検出素子10、磁石20およびリード端子30が一方側に取り付けられる第1のハウジング40と、第1のハウジング40の一方側を覆って嵌合連結され被検出体と対向して配置される第2のハウジング50と、を有し、第1のハウジング40には、固定対象70に固定設置するための固定部42が設けられるとともに、リード端子30の一部が埋設一体化されて構成されている。
【0013】
移動体検出装置100は、例えば、二輪車の前輪の車軸近傍に設けられる回転検出装置として構成され、検出される前輪の回転数から車速を計測する。すなわち、移動体検出装置100では、前輪の車軸が被検出体Dとされ、車軸近傍の車体が固定対象70とされ、固定対象70に第1のハウジング40の固定部42が固定され、第1のハウジング40に嵌合連結された第2のハウジング50が車軸と対向して配置される。
【0014】
磁気検出素子10は、被検出体である移動体Dの移動(回転)に伴う磁界の変化を感知するホールICなどで構成されている。磁気検出素子10は、先端の鉛直面(Y-Z面)の検出部(検出面)10aに対して端子10bが検出部10aの上端から直角に後方(-X方向)に突き出して設けられている。磁気検出素子10は、第1のハウジング40の収容部43に収容される。収容部43は、第1のハウジング40と一体に成形され前方(+X方向)に突き出すように形成されている。収容部43は、
図4に示すように前方側中央部付近が開口するとともに、上方(+Z方向)が開口した第1凹部43aが形成され、第1凹部43a内に上方(+Z方向)から磁気検出素子10の検出部10aが収容されて検出部10aの先端面(+X方向の端面)が前方側中央部付近の開口に位置して被検出体と対向するように配置される。
【0015】
磁石20は、磁気検出素子10に磁界を加えるためのものである。磁石20は、例えば直方体状に形成されたフェライト磁石で構成される。磁石20は、
図3に示すように、磁気検出素子10が収容される第1凹部43aに隣接する後方(-X方向)に設けられ下方(-Z方向)が開口した第2凹部43bに下方から収容されている。
【0016】
リード端子30は、
図5に示すように、リード31,32からなる。また、リード31,32は、
図3,
図5に示すように後述するコネクタ部44から露出する後方側の端部31a,32aと、収容部43とコネクタ部44の中間付近から露出し、磁気検出素子10の端子10bと電気的に接続される端子接続部31b,32bと、端部31a,32aと反対側の端部(検出部10a方向)に突出部31c,32cと、を備えている。突出部31c,32cは、リード31,32の片側に設けられる。リード31,32は、端部31a,32aを図示しない金型や治具によって突出部31c,32cが2本のリード31,32に対し外側の向きになるように平行に支持され、第1のハウジング40に一体成形される収容部43の上面と平行に配置されて第1のハウジング40および収容部43にインサート成形により埋設一体化される(
図6参照)。このとき、図示しない金型や治具によって、突出部31c,32c間のリード端子30の先端(+X)方向および左右(Y)方向の位置を規制しておくことで、リード31,32の接触を防止するとともに収容部43に凹部Rが形成される。凹部Rは図示しない金型の跡である。凹部Rと突出部31c,32cの位置関係を
図7に示す。凹部Rは、突出部31c,32cと相対する位置に形成される。凹部RのY方向の長さは、突出部31c,32c間のY方向の長さより短い。凹部RのY方向の長さが突出部31c,32c間の長さより短いことによって、図示しない金型の位置にバラツキが生じても、リード31,32が接触しない。また、樹脂成形圧がかかり、リード31,32の位置がずれた場合には、突出部31c,32cの+X方向内側の面が図示しない金型に接触することでリード31,32は接触しない。凹部Rは、検出部10aに対して平行に形成されている。リード31,32の端子接続部31b,32bがそれぞれ磁気検出素子10の端子10b,10bと抵抗溶接によって電気的に接続され、後方側の端部31a,32aが第1のハウジング40の後方のコネクタ部44内に突き出すコネクタピンとして検出信号を外部に導出できるようにしてある。
【0017】
第1のハウジング40は、
図4に示すように、大小2つの円弧部を連結した外形が略小判状の本体部41と、本体部41の小さな円弧部の中心部に同心上に形成された固定部42と、本体部41の大きな円弧部の中心部から前方(+X方向)に突き出して一体に形成された収容部43と、本体部41の大きな円弧部から後方(-X方向)に突き出して一体に形成されたコネクタ部44と、を備えて構成されており、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:Poly Butylene Terephthalate)樹脂など合成樹脂製とされている。なお、2つの円弧部の大きさは同じであっても良い。
【0018】
固定部42は、金属製で円筒状のカラー42aを備えるとともに、第1のハウジング40の本体部41の下方(-Z方向)に突き出す部分に一体化されている。固定部42は、本体部41の小さな円弧部に金属製の円筒状のカラー42aをインサート成形することで一体化されている。カラー42aには、
図3に示すように、後方(-X方向)から固定用ボルトを入れて固定対象70に締め付けることで、第1のハウジング40を固定できる。
本体部41は、大きな円弧部の内側縁部と小さな円弧部のカラー42aの大きな円弧部側の半円部とで囲まれる部分が側壁部41aとされ、側壁部41aで囲まれた内側部分が凹部とされて平板状の底板部41bで後方(-X方向)側が塞がれている。
【0019】
底板部41bは、第2のハウジング50とのX方向の接触面である。底板部41bは、第2のハウジング50のフランジ部52と当接される。
【0020】
収容部43は、合成樹脂からなり、
図3に示すように円柱部43cを備えている。円柱部43cの外周部には、Oリング溝が形成されてOリング45が装着され、後述する嵌合連結される第2のハウジング50との間をシール状態とする。
収容部43の長手(X)方向の中ほど(中央付近)から端子接続部31b,32bが露出している。端子接続部31b、32bの間に凹部Rが形成されている。
収容部43は、既に説明したように、第1凹部43aと第2凹部43bとが設けられ、第1凹部43a(
図3参照)には、磁気検出素子10が、第2凹部43bには、磁石20がそれぞれ装着される。
円柱部43cには金型からの離脱を容易にするための勾配が設けられているが、より先細りな(テーパー)構造としても良く、この場合Oリング45の装着がより容易となり、生産効率を向上させることが可能である。
【0021】
図8は磁気検出素子10取付前の、収容部43の要部拡大図である。
図6、
図8に示すように、収容部43の磁気検出素子10の検出面10aの裏面(磁石と接する面)10cの方向の面43dに第1の溝部43eが設けられている。第1の溝部43eは貫通孔であり、一方(-Z方向)側は磁石20により塞がれる。第1の溝部43eに、磁気検出素子10方向(+X方向)に突出する凸部43fが設けられていても良い。収容部43の磁気検出素子10の側面(短手方向の面)10dと接する面43gに第2の溝部43hが設けられていても良い。
【0022】
コネクタ部44は、
図3に示すように中空の四角筒状とされて後方(-X方向)が開口し、本体部41の底板部41bから後方に突き出して一体に形成されており、外部の装着側のコネクタ(図示せず)を所定の向きに連結でき、係止凹凸部によってコネクタ同士の係止連結状態を保持できるようにしてある。
【0023】
第2のハウジング50は、
図1,
図9に示すように第1のハウジング40の一方側(前方側(+X方向))の収容部43(
図3参照)を覆って嵌合連結され被検出体D(
図2参照)と対向して配置される有底の円筒部51と、円筒部51の開口端に一体に形成されたフランジ部52とを備えて形成されている。第2のハウジング50は、第1のハウジング40と同一の合成樹脂製とされ、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂など合成樹脂製とされている。
第2のハウジング50は、第1のハウジング40に一体に形成された収容部43に収容された磁気検出素子10および磁石20などを覆うカバーとして円筒部51が機能しており、円筒部51の外周には、補強用のリブ51aが円周方向等間隔に複数本一体に形成してある。リブ51aにより、剛性を高めて固定対象70からの振動の影響を緩和する。また、リブ51aは、Oリング53取り付け時の誘い込みおよび移動体検出装置100を固定対象70に取り付ける際の誘い込みとしての機能を有している。円筒部51のリブ51aの後方には、Oリング溝51bが形成され、Oリング53が装着され、固定対象70との間をシールするとともに、Oリング53によって固定対象70からの振動の第1のハウジング40への伝達を抑えている。
フランジ部52は、第1のハウジング40の側壁部41aの内側形状に沿った外形状に形成されており、周囲を囲む側壁部52aと、側壁部52aの前方側の開口部を塞ぐとともに、円筒部51が一体に設けられた蓋板部52bとで構成される。側壁部52aの底面52cは、第1のハウジング40とのX方向の接触面である。
これにより、第2のハウジング50を第1のハウジング40の内側に被せるように装着して連結することで、第1のハウジング40の側壁部41aの内側に、第2のハウジング50のフランジ部52の側壁部52aが接するように嵌合され、側壁部41aの開口部が蓋板部52bで塞がれた状態となり、フランジ部52が第1のハウジング40の固定部42と同一の厚みとなる。
すなわち、第1のハウジング40の本体部41の側壁部41aの高さと第2のハウジング50のフランジ部52の側壁部52aの高さが、嵌合連結状態とした場合に、蓋板部52bが第1のハウジング40の固定部42と同一の厚みとなるように設定してある。
また、第2のハウジング50のフランジ部52は、第1のハウジング40を固定部42によって固定対象70(
図3参照)に固定設置すると、第1のハウジング40と固定対象70とに挟み込まれることになり、移動体検出装置100を確実に固定対象70に保持することができる。
【0024】
第1のハウジング40と第2のハウジング50との間には、
図4,
図9に示すように嵌合連結状態を保持する連結保持機構60が設けられている。
固定対象70に固定される固定側となる第1のハウジング40には、側壁部41aに4箇所の係合凹部61が略矩形の孔として形成されている。
第1のハウジング40に嵌合連結される連結側となる第2のハウジング50の側壁部52aに、係合凹部61に内側から外側に向かって係合するフックを備えた係合凸部62が一体に形成されている。
これにより、第2のハウジング50の側壁部52aを第1のハウジング40の側壁部41aの内側に装着して連結することで、第2のハウジング50の係合凸部62のフックが第1のハウジング40の係合凹部61の孔に係合し、第1のハウジング40と第2のハウジング50の嵌合連結状態が連結保持機構60で保持される。
なお、係合凹部61と係合凸部62は、逆に第1のハウジング40に係合凸部62を設け、第2のハウジング50に係合凹部61を設けるようにしても良い。
さらに、この移動体検出装置100では、第1のハウジング40を固定部42を介して固定対象70に固定設置すると、第1のハウジング40に嵌合連結した第2のハウジング50のフランジ部52が、第1のハウジング40と固定対象70とに挟み込まれることになり、例え、連結保持機構60による嵌合連結状態に問題が生じても移動体検出装置100を確実に固定対象70に保持することができる。
【0025】
このような移動体検出装置100は、
図3に示すように、円柱部43cにOリング45を装着し、収容部43に磁気検出素子10および磁石20を収納した第1のハウジング40に第2のハウジング50を被せるようにして嵌合連結し、連結保持機構60の係合凹部61と係合凸部62とを係合して連結状態を保持する。また、第2のハウジング50のOリング溝51bにOリング53を装着しておく。
次いで、移動体検出装置100を、固定対象70に形成した被検出体Dと対向する取付孔71に第2のハウジング50を装着するようにし、第1のハウジング40の固定部42のカラー42aに入れた取付ボルトを固定対象70に締め付けることで固定する。コネクタ部44には、外部から装着用のコネクタが接続され、検出信号を外部に出力できるようにする。
これにより、移動体検出装置100は、取付ボルトで固定対象70に固定され、被検出体Dと磁気検出素子10が対向した状態となり、被検出体の移動量(回転数など)が磁気検出素子10で検出(計測)される。
移動体検出装置100を、例えば、回転検出装置とする場合には、二輪車の前輪の車軸が被検出体Dとされ、車軸近傍の車体が固定対象70とされ、固定対象70に第1のハウジング40の固定部42を固定することで、第1のハウジング40に嵌合連結された第2のハウジング50の先端が取付孔71内で車軸と対向して配置される。これにより、被検出体Dである二輪車の車軸が回転することにより生じる磁気変化から車軸の回転数が計測され、車速が演算されて外部に出力されたり、あるいは、車軸の回転数が検出されて出力される。
【0026】
移動体検出装置100では、第1のハウジング40に収容部43を一体に形成してリード端子30をインサート成形により埋設一体化しておき、収容部43の第1凹部43aに磁気検出素子10を収容し、第2凹部43bに磁石20を収容し、第1のハウジング40を、固定部42を介して固定対象70に固定しているので、被検出体Dの振動系と移動体検出装置100の振動系が同一となる。
これにより、従来の装置では、第2のハウジング50を機器側である固定対象70に固定し、第2のハウジング50に第1のハウジング40を連結していたので、被検出体の振動が第2のハウジング50を介して磁気検出素子10や磁石20が収容固定された第1のハウジング40に伝達され、2つの振動系から振動が伝達され、これらの振動の影響により検出精度の低下を招いていたが、本発明の移動体検出装置100によれば、振動系が1つとなり振動の影響を抑えて高精度に検出することができる。
移動体検出装置100では、第1のハウジング40の内側に第2のハウジング50を配置して嵌合連結するようにしたので、第2のハウジング50をコンパクトにすることができ、小型軽量化により振動系の質量を小さくして振動の影響を抑えることができる。
また、第2のハウジング50は、Oリング溝51bの外周に装着したOリング53を介して固定対象70の取付孔71に装着してあるので、固定対象70からの振動をOリング53で緩和することができ、振動低減効果を期待することができる。
【0027】
本発明の移動体検出装置100は、被検出体Dの移動に応じた電気信号を出力する磁気検出素子10と、磁気検出素子10に磁界を加える磁石20と、磁気検出素子10に接続されるリード端子30と、磁気検出素子10、磁石20およびリード端子30が一方側に取り付けられる第1のハウジング40と、第1のハウジング40の一方側を覆って嵌合連結され被検出体と対向して配置される第2のハウジング50と、を有し、収容部43の磁気検出素子10の裏面10cの方向の面43dに第1の溝部43eが設けられている。収容部43に接着剤Gを塗布した状態を
図10に示す。矢印は接着剤Gの流出方向を示している。
図10に示すように、収容部43と磁気検出素子10と磁石20を接着する際に、磁気検出素子10を磁石20方向に寄せることによって押し出された接着剤Gが第1の溝部43eに流入する構造であるため、接着剤Gの塗布量管理が容易となる。適正量よりやや多く接着剤Gを塗布しても接着剤Gを拭き取るなどの追加作業は不要である。したがって、移動体検出装置100を効率よく生産することができる。
【0028】
また、第1の溝部43eに、磁気検出素子10方向(+X方向)に突出する凸部43fが設けられていても良い。凸部43fは接着剤Gを塗布する目印であり、凸部43fに接着剤Gを塗布することで接着剤Gの塗布量を凸部43f相当分削減することができる。
【0029】
また、収容部43の磁気検出素子10の側面10dと接する面43gに第2の溝部43hが設けられていても良い。第2の溝部43hを設ける事で、第1の溝部43eのみの構造と比較し、接着剤Gの流入量を増やすことができ、接着剤Gの塗布量管理がさらに容易となる。
【0030】
また、収容部43の、磁気検出素子10が配置される箇所の下側(-Z方向)に、溝43iが設けられていても良い。
第1の溝部43e、溝43i、第2の溝部43hが全て設けられている場合、接着剤Gは、裏面10cと磁石20の間以外に第1の溝部43e、溝43i、第2の溝部43hの順に流入することが判明している。
【0031】
移動体検出装置100の製造方法の一例について簡潔に説明する。
【0032】
1)図示しない金型や治具を用いて、リード31,32を、端子接続部31b,32bと突出部31c,32cを備えるように形成する。
2)リード31,32と、カラー42aを第1のハウジング40にインサート成形する。このとき、図示しない金型や治具を用いてリード31,32を平行に支持し、突出部31c,32cを図示しない金型や治具で規制することによって収容部43のリード端子30側の面に凹部Rが形成される。金型や治具で端部31a,32aを固定し、突出部31c,32cを規制することで樹脂の成形圧等によるリード端子30の位置ずれを抑えることができ、リード31,32は互いに平行な状態を保ったまま形成される。
収容部43には図示しない金型や治具によって、第1の溝部43eが設けられる。同様に凸部43f、第2の溝部43h、溝43iが設けられても良い。
3)第2凹部43bに磁石20を接着等の方法によって固定し、凸部43fまたは任意の箇所に接着剤Gを塗布する。第1凹部43aに磁気検出素子10をスライドさせ、第1のハウジング40に磁気検出素子10、磁石20を接着により固定する。このとき、接着剤Gは、裏面10cと磁石20の間以外に第1の溝部43e、溝43i、または第2の溝部43hに流入する。
4)磁気検出素子10の端子10bと、端子接続部31b,32bを抵抗溶接する。
5)収容部43にOリング45を装着する。
6)第2のハウジング50と第1のハウジング40とを嵌合させた後にOリング53を装着する、または第2のハウジング50にOリング53を装着した後に第2のハウジング50と第1のハウジング40とを嵌合させる。
【0033】
本発明は、上述の実施形態に何ら限定するものではない。
例えば、上述の実施形態では、移動体検出装置100を回転検出装置として回転運動する被検出体を検出する場合を例に説明したが、これに限らず、直線運動する被検出体を検出する場合であっても良い。
【0034】
磁気検出素子10は、ホールICで構成した場合を例に説明したが、これに限らず他の形式のものなど任意のものであっても良い。
【0035】
リード31,32が異なる形状の場合を例に説明したが、同一形状の物を左右対象となるように配置しても良い。
【0036】
第1のハウジング40や第2のハウジング50等の素材については、特に限定するものではなく、通常使用される合成樹脂などを用いることができる。
【0037】
移動体検出装置100でのX,Y,Z方向は、説明のために設定したものであり、移動体検出装置100の取付方向等は、これらの方向に限定するものでない。
【0038】
第1の溝部が凸部により左右に区切られている場合を例示したが、凸部を設けず左右一体の構造であっても良い。また、第1の溝部は片側のみ設ける構造であっても良い。
【0039】
第2の溝部のX方向の長さが磁気検出素子の側面より短い場合を例示したが、第2の溝部は第1の溝部の手前までの任意の長さで設ける事ができる。
【0040】
第2の溝部が磁気検出素子の側面の片側に設けられる場合を例示したが、両側面に設ける構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、磁気検出素子を用いて二輪車の車軸の回転を検出する移動体(回転)検出装置、及び移動体(回転)検出装置の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 移動体検出装置
10 磁気検出素子
10a 検出部(検出面)
10b 端子
10c 裏面(面)
10d 側面(短手方向の面)
20 磁石
30 リード端子
31 リード
31a 端部
31b 端子接続部
32 リード
32a 端部
32b 端子接続部
40 第1のハウジング
41 本体部
41a 側壁部
41b 底板部(接触面)
42 固定部
42a カラー
43 収容部
43a 第1凹部
43b 第2凹部
43c 円柱部
43d 面
43e 第1の溝部
43f 凸部
43g 面
43h 第2の溝部
43i 溝
44 コネクタ部
45 Oリング
50 第2のハウジング
51 円筒部
51a リブ
51b Oリング溝
52 フランジ部
52a 側壁部
52b 蓋板部
52c 底面(接触面)
53 Oリング
60 連結保持機構
61 係合凹部
62 係合凸部
70 固定対象
71 取付孔
D 移動体(被検出体)
G 接着剤
R 凹部