(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】車両用計器
(51)【国際特許分類】
G01D 3/028 20060101AFI20230309BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230309BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01D3/028 Z
B60K35/00 Z
G01D7/00 K
(21)【出願番号】P 2019073287
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 昭宏
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-257588(JP,A)
【文献】特開2017-028613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00-4/18
G01D 7/00-7/12
B60K 35/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照ポートと、第1アナログポートと、第2アナログポートと、前記参照ポートに入力された参照電圧を基準に前記アナログポートに入力された電圧をデジタル値に変換して出力するA/D変換回路と、を有する制御回路と、
車載バッテリから供給される電源を降圧して前記参照ポートに第1電圧を出力する第1安定化電源と、
前記第1安定化電源から供給される電源を降圧して前記第1アナログポートに第2電圧を出力する第2安定化電源と、
前記第1電圧が正しく前記参照ポートに入力された場合に前記A/D変換回路が前記第2電圧を変換した前記デジタル値を正当値として記憶する記憶回路と、を備え、
前記制御回路は、前記正当値と前記第1アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値とを比較して、前記第1安定化電源が出力した前記第1電圧が降下したことを検出する基準電圧低下検出機能を有
し、
前記記憶回路は、前記正当値からの差分に対応する補正値を記憶し、
前記制御回路は、前記正当値と前記第1アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値との差分を算出し、前記第2アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値の表す計測値を、前記差分に対応する前記補正値により補正する検出電圧補正機能を有する、
車両用計器。
【請求項2】
前記計測値を表示するディスプレイと、
前記制御回路に制御されて前記ディスプレイを駆動する駆動回路と、を備え、
前記第2安定化電源は、前記駆動回路に電源を供給する
請求項1の車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種センサの出力信号をAD変換して入力する車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用計器として特許文献1に開示されたものがある。この車両用計器は、燃料センサから出力されるアナログ信号をAD変換して制御回路に入力し、AD変換によって得られた電圧値により制御回路が燃料量を算出する。そして、AD変換する際の基準電圧には、制御回路に出力電圧が常に一定な電源を供給する安定化電源の電圧を採用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、安定化電源に電源を供給する車載バッテリの電圧が低下し、安定化電源の出力電圧が一定に保ちきれず降下すると、正確な計測値を算出できなくなるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題に基づき、車載バッテリの電圧の降下した場合に誤った計測値の算出を防ぐ車両用計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用計器は、
参照ポートと、第1アナログポートと、第2アナログポートと、前記参照ポートに入力された参照電圧を基準に前記アナログポートに入力された電圧をデジタル値に変換して出力するA/D変換回路と、を有する制御回路と、
車載バッテリから供給される電源を降圧して前記参照ポートに第1電圧を出力する第1安定化電源と、
前記第1安定化電源から供給される電源を降圧して前記第1アナログポートに第2電圧を出力する第2安定化電源と、
前記第1電圧が正しく前記参照ポートに入力された場合に前記A/D変換回路が前記第2電圧を変換した前記デジタル値を正当値として記憶する記憶回路と、を備え、
前記制御回路は、前記正当値と前記第1アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値とを比較して、前記第1安定化電源が出力した前記第1電圧が降下したことを検出する基準電圧低下検出機能を有し、
前記記憶回路は、前記正当値からの差分に対応する補正値を記憶し、
前記制御回路は、前記正当値と前記第1アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値との差分を算出し、前記第2アナログポートに入力された電圧を前記A/D変換回路で変換したデジタル値の表す計測値を、前記差分に対応する前記補正値により補正する検出電圧補正機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車載バッテリの電圧の降下した場合においても誤った計測値の算出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】車載バッテリの電圧降下に伴う安定化電源の出力電圧の推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して本開示の一実施形態である車両用計器Mを説明する。
【0010】
図1を参照する。車両用計器Mは、第1安定化電源CV1と、第2安定化電源CV2と、ディスプレイDSPと、第1駆動回路DR1と、第2駆動回路DR2と、制御回路CTと、を備える。
【0011】
車両用計器Mは、車載バッテリBから電源が供給された状態で、イグニッションスイッチIGがオンされると、燃料センサSNあるいは車載ネットワークLANから計測値を入力し、ディスプレイDSPに表示させる。計測値は、例えば、車両の走行速度、エンジン回転数、残燃料量、タイヤ空気圧、経路案内情報などである。車載ネットワークLANは、例えば、CAN(コントローラエリアネットワーク)で、エンジンの電子制御を行う車載コントローラECUなどが相互に通信する通信路である。
【0012】
第1安定化電源CV1は、例えば、スイッチング電源回路などの直流安定化電源である。第1安定化電源CV1は、車載バッテリBから出力されるバッテリ電圧Vbを制御回路CTの駆動電圧である第1電圧Vc1に降圧して制御回路CTと第2安定化電源CV2に供給する。バッテリ電圧Vbは、通常12V~9Vである。第1電圧Vc1は、5Vである。
【0013】
第2安定化電源CV2は、第1安定化電源CV1と同様の直流安定化電源である。第2安定化電源CV2は、第1安定化電源CV1から出力される第1電圧Vc1を第2駆動回路DR2の駆動電圧である第2電圧Vc2に降圧して第2駆動回路DR2に供給する。第2電圧Vc2は、3.3Vである。
【0014】
ディスプレイDSPは、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイDSPは、液晶パネルLPと、バックライトBLと、温度センサSN2を備える。
【0015】
第1駆動回路DR1は、ディスプレイDSPのバックライトBLを点灯させる駆動回路である。
【0016】
第2駆動回路DR2は、ディスプレイDSPの液晶パネルLPを駆動する駆動回路である。
【0017】
制御回路CTは、マイクロコンピュータなどの制御集積回路である。制御回路CTは、第1安定化電源CV1から電源が供給された状態でイグニッションスイッチIGがオンになると起動する。制御回路CTは、5Vの電源下で正常駆動することを想定した制御集積回路であるが、想定した電源電圧よりも少々低い4.5Vの電源下でも動作することができる。
【0018】
制御回路CTは、電源供給ポートVCCと、参照ポート(基準電圧入力ポート)Refと、第1アナログポートAd1と、第2アナログポートAd2と、第3アナログポートAd3と、イグニッションスイッチIGのオン/オフを入力するポートと、車載ネットワークLANと通信するポートと、第1駆動回路DR1に制御信号を出力するポートと、第2駆動回路DR2に制御信号を出力するポートと、記憶回路Mmと通信するポートと、を備える。
【0019】
電源供給ポートVCCには、第1安定化電源CV1から電源が供給される。参照ポートRefには、第1安定化電源CV1から出力される第1電圧Vc1のアナログ信号が入力される。第1アナログポートAd1には、第2安定化電源CV2から出力される第2電圧Vc2のアナログ信号が入力される。第2アナログポートAd2には、燃料センサSNが出力したアナログ信号が入力される。第3アナログポートAd3には、車載バッテリBから出力されるバッテリ電圧Vbのアナログ信号が所定の減圧回路を介して入力される。
【0020】
制御回路CTは、参照ポートRef及びアナログポートAd1~Ad3に入力されたアナログ信号をデジタル値に変換するA/D変換回路を備える。制御回路CTは、参照ポートRefに入力されたアナログ信号をA/D変換回路によって変換したデジタル値を基準にして、アナログポートAd1~Ad3に入力されたアナログ信号の電圧を計測する。
【0021】
制御回路CTは、第2アナログポートAd2に入力されたアナログ信号に基づいて計測した電圧により残燃料量を算出する。制御回路CTは、残燃料量をディスプレイDSPに表示させる。詳述すると、制御回路CTは、第1駆動回路DR1を制御してバックライトBLを点灯させた状態で、第1駆動回路を制御して液晶パネルLPに残燃料量を表す画像を表示させる。
【0022】
制御回路CTは、第3アナログポートAd3に入力されたアナログ信号に基づいて計測した電圧が所定の電圧(例えば、6V)を下回ったときに、車載バッテリBの電圧低下を表す警告を、ディスプレイDSPに表示させる。
【0023】
記憶回路Mmは、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。記憶回路Mmは、第1電圧Vc1が正しく参照ポートRefに入力された場合に、制御回路CTのA/D変換回路が第2電圧Vc2を変換したときのデジタル値を正当値として記憶している。
【0024】
また、記憶回路Mmは、第1安定化電源CV1の出力電圧が第1電圧Vc1未満に降下した際に、その降下量に応じて制御回路CTのA/D変換回路が変換したデジタル値を補正する補正値を記憶している。
【0025】
制御回路CTは、A/D変換回路の基準電圧が低下したことを検出する基準電圧低下検出機能と、基準電圧の低下量に合わせてA/D変換回路が変換したデジタル値を補正する検出電圧補正機能と、を備える。
【0026】
(基準電圧低下検出機能)
制御回路CTは、第1アナログポートAd1に入力された電圧に基づいて計測した電圧と、記憶回路Mmに記憶された正当値と、を比較して差分ΔVを算出する。制御回路CTは、差分ΔVに基づいて、第2安定化電源CV2が出力した第2電圧Vc2に基づいて計測した電圧が正当値から乖離している場合に、参照ポートRefに入力された電圧が想定した電圧(5V)でないと判断する。言い換えると、第1安定化電源CV1の出力電圧が降下したと判断する。参照ポートRefに入力された電圧が想定した電圧(5V)でない状態においては、第2アナログポートAd2や第3アナログポートAd3に入力された電圧に基づく計測値の算出が正しくできない。制御回路CTは、計測値の算出が正しくないと判断すると、ディスプレイDSPへの計測値の表示を停止し、代わりに、ディスプレイDSPに計測値が正しく算出できない状態であることを表す警告を表示させる。また、制御回路CTは、第1安定化電源CV1の出力が異常であることを表す警告をディスプレイDSPに表示させてもよい。
【0027】
(検出電圧補正機能)
制御回路CTは、基準電圧低下検出機能により算出した差分ΔVに対応する補正値を記憶回路Mmから読み込み、第2アナログポートAd2や第3アナログポートAd3に入力された電圧に基づく計測値を補正する。この検出電圧補正機能により、参照ポートRefに入力された電圧が想定した電圧(5V)でない状態においても正しく計測値の算出ができる。
【0028】
制御回路CTの基準電圧低下検出機能と検出電圧補正機能は、
図2に示すように、車載バッテリBの出力電圧がVth1未満に降下し第1安定化電源CV1の出力電圧の降下が始まる時刻T1から、車載バッテリBの出力電圧がVth2未満に降下し第2安定化電源CV2の出力電圧の降下が始まる時刻T2の区間において、誤った計測値の算出を防ぐことができる。
【0029】
なお、車両用計器Mは、以下の変更をしてもよい。
【0030】
ディスプレイDSPに表示する計測値の例として、残燃料量を検出する燃料センサSNを例示したが、これに限らず種々のセンサに適用してもよい。具体的には、車両のエンジン回転数を検出する回転センサや、車両のギアポジションを検出するポジションセンサ、ディスプレイDSPの温度を検出する温度センサなど、種々のセンサに適用してもよい。
【0031】
また、制御回路CTに電源を供給する第1安定化電源CV1と、第2駆動回路DR2に電源を供給する第2安定化電源CV2の組み合わせを例示したが、他の安定化電源の組み合わせに適用してもよい。安定化電源の組み合わせは、第1安定化電源CV1と第2安定化電源CV2の出力電圧の差が大きいほど、第1安定化電源CV1の出力電圧が降下した後の補正可能な帯域が広く有効である。
【符号の説明】
【0032】
M …車両用計器
CV1 …第1安定化電源
CV2 …第2安定化電源
CT …制御回路
VCC …電源入力ポート
Ref …参照ポート(基準電圧入力ポート)
Ad1 …第1アナログポート
Ad2 …第2アナログポート
Ad3 …第3アナログポート
DR1 …第1駆動回路(バックライト駆動回路)
DR2 …第2駆動回路(液晶駆動回路)
Mm …記憶回路
B …車載バッテリ
SN …燃料センサ