(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ケーブル付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/655 20060101AFI20230309BHJP
H01R 13/58 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H01R13/655
H01R13/58
(21)【出願番号】P 2019147192
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】一尾 敏文
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170934(JP,A)
【文献】特開2018-147564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/655
H01R 13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端部にコネクタが接続されたケーブル付きコネクタであって、
電線と、シース部と、前記電線と前記シース部との間に介在された編組部材と、を有し、前記編組部材は導電性の線材が編まれてなり、前記編組部材には前記シース部の端末から露出した前記編組部材が前記シース部に向かって折り返されてなる折り返し部が設けられたケーブルと、
前記ケーブルの径方向について、前記折り返し部の内側であって、且つ前記シース部の外面に外嵌された金属製のスリーブと、
前記折り返し部の外面に圧着された状態で前記スリーブとの間で前記折り返し部を挟持するバレルを有する金属製のシールド部材と、
前記シールド部材に覆われたハウジングと、を備え、
前記バレルには、前記ケーブルの軸線方向について前記スリーブの後端部よりも後方の位置に、前記ケーブルの径方向の内方に突出するバレル側突部が形成されており、
前記スリーブの後端部には、前記ケーブルの径方向の外方に突出するスリーブ側突部が形成されており、
前記バレル側突部のうち前記ケーブルの径方向内方に突出した突出端縁には、前記バレルが前記折り返し部の外面に圧着された状態で、前記バレル側突部の
内縁部を逃がす逃がし部が、前記ケーブルの径方向外方に凹状に形成されているケーブル付きコネクタ。
【請求項2】
前記スリーブの後端縁の内面には、後方に向かうに従って拡径するテーパ面が形成されている請求項1に記載のケーブル付きコネクタ。
【請求項3】
前記バレルには、前記ケーブルの周方向に間隔を空けて複数の前記バレル側突部が設けられている請求項1又は請求項2に記載のケーブル付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特開20180147564号公報にはシールド電線の端部に端子が接続されたものが記載されている。このものは、電線と外被との間に編組線が介在されており、編組線には外被の端末から露出した編組線が外被に向かって折り返されてなる折り返し部が設けられているシールド電線と、シールド電線の径方向について、折り返し部の内側であって、且つ外被の外面に圧着された金属製のスリーブと、折り返し部の外面に圧着された状態でスリーブとの間で折り返し部を挟持するバレルを有する端子と、を備え、バレルには、シールド電線の軸線方向についてスリーブの後端部よりも後方の位置に、シールド電線の径方向の内方に突出する突部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールド電線が引っ張られた場合、バレルに形成された突部が、スリーブの後端部に後方から支持することによりシールド電線と端子との固着力が向上される。
【0005】
しかし、近時、シールド電線と端子との固着力をさらに向上させることが求められている。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ケーブルとコネクタとの固着力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ケーブルの端部にコネクタが接続されたケーブル付きコネクタであって、電線と、シース部と、前記電線と前記シース部との間に介在された編組部材と、を有し、前記編組部材は導電性の線材が編まれてなり、前記編組部材には前記シース部の端末から露出した前記編組部材が前記シース部に向かって折り返されてなる折り返し部が設けられたケーブルと、前記ケーブルの径方向について、前記折り返し部の内側であって、且つ前記シース部の外面に外嵌された金属製のスリーブと、前記折り返し部の外面に圧着された状態で前記スリーブとの間で前記折り返し部を挟持するバレルを有する金属製のシールド部材と、前記シールド部材に覆われたハウジングと、を備え、前記バレルには、前記ケーブルの軸線方向について前記スリーブの後端部よりも後方の位置に、前記ケーブルの径方向の内方に突出するバレル側突部が形成されており、前記スリーブの後端部には、前記ケーブルの径方向の外方に突出するスリーブ側突部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ケーブルとコネクタとの固着力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかるケーブル付きコネクタを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、ケーブル付きコネクタを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第2シールド部材を示す背面図である。
【
図7】
図7は、第2シールド部材を示す側面図である。
【
図8】
図8は、バレル側突部とスリーブ側突部とが離れている状態を示す、
図6におけるA-A線断面図である。
【
図9】
図9は、バレル側突部とスリーブ側突部とが接触している状態を示す、
図6におけるA-A線断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2にかかるケーブル付きコネクタを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、ケーブル付きコネクタを示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0011】
(1)本開示は、ケーブルの端部にコネクタが接続されたケーブル付きコネクタであって、電線と、シース部と、前記電線と前記シース部との間に介在された編組部材と、を有し、前記編組部材は導電性の線材が編まれてなり、前記編組部材には前記シース部の端末から露出した前記編組部材が前記シース部に向かって折り返されてなる折り返し部が設けられたケーブルと、前記ケーブルの径方向について、前記折り返し部の内側であって、且つ前記シース部の外面に外嵌された金属製のスリーブと、前記折り返し部の外面に圧着された状態で前記スリーブとの間で前記折り返し部を挟持するバレルを有する金属製のシールド部材と、前記シールド部材に覆われたハウジングと、を備え、前記バレルには、前記ケーブルの軸線方向について前記スリーブの後端部よりも後方の位置に、前記ケーブルの径方向の内方に突出するバレル側突部が形成されており、前記スリーブの後端部には、前記ケーブルの径方向の外方に突出するスリーブ側突部が形成されている。
【0012】
上記の構成によれば、バレル側突部とスリーブの後端部とが接触する面積が、ケーブルの径方向の外方に突出するスリーブ側突部が形成されていない場合に比べて、増大する。これにより、ケーブルとコネクタとの固着力を向上させることができる。
【0013】
(2)前記スリーブの後端縁の内面には、後方に向かうに従って拡径するテーパ面が形成されていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、ケーブルをスリーブの後方からスリーブ内に挿入する際に、テーパ面とケーブルとが摺接することにより、ケーブルがスリーブ内に案内される。この結果、ケーブルをスリーブに挿入する作業の効率を向上させることができるので、ケーブル付きコネクタの製造効率を向上させることができる。
【0015】
(3)前記バレル側突部のうち前記ケーブルの径方向内方に突出した突出端縁には、前記バレルが前記折り返し部の外面に圧着された状態で、前記バレル側突部のうち前記ケーブルの径方向の内縁部を逃がす逃がし部が、前記ケーブルの径方向外方に凹状に形成されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、バレルがケーブルに圧着された後の状態において、バレル側突部の突出端縁において金属板材が寄り集まったとしても、バレル側突部にしわが形成されることが抑制される。
【0017】
(4)前記バレルには、前記ケーブルの周方向に間隔を空けて複数の前記バレル側突部が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、バレル側突部が1つである場合に比べて、バレル側突部とスリーブの後端縁とが接触する面積を大きくすることができるので、ケーブルとコネクタとの固着力を向上させることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
本開示にかかる実施形態1を
図1から
図9を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、本実施形態は、ケーブル10の端部にコネクタ11が接続されたケーブル付きコネクタ12である。以下の説明においては、矢線Zで示される方向を上方とし、矢線Yで示される方向を前方とし、矢線Xで示される方向を左方として説明される。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
[ケーブル10]
図2に示されるように、ケーブル10は、電線13(本実施形態では2つ)と、電線13の外周を包囲する編組部材14と、編組部材14の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなるシース部15と、を備える。
【0022】
詳細に図示はしないが、電線13は、芯線と、この芯線の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆を備える。芯線を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては、銅、又は銅合金が用いられている。電線13の先端には、図示しない端子が接続される。
【0023】
編組部材14は、導電性の複数の線材が筒状に編まれてなる。導電性の線材としては特に限定されないが、本実施形態では金属製の線材とされる。金属製の線材を構成する金属は、銅、銅合金等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては、銅又は銅合金が用いられている。導電性の線材としては、例えば、合成樹脂製の線材の表面に金属箔が貼付されたものでもよい。
【0024】
図1に示されるように、ケーブル10の前端部(ケーブル10の軸線方向の前端部)のシース部15は、皮むきされている。これにより、
シース部15の端末からは、電線13と、編組部材14と、が露出している。シース部15の端末から露出した編組部材14は、シース部15の端末側に折り返された折り返し部18を有する。換言すると、折り返し部18は、シース部15の前端部から軸線方向の前方に露出した編組部材14が、軸線方向の後方に折り返された形状となっている。なお、本実施形態では、ケーブル10の軸線方向を、前後方向に平行な方向として説明する。
【0025】
折り返し部18は、ケーブル10のシース部15に対して、ケーブル10の径方向の外側から重なるように形成されている。
【0026】
[スリーブ19]
図1に示されるように、スリーブ19は金属製であって、円筒状に形成されている。スリーブ19を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては銅又は銅合金が用いられている。
【0027】
図3に示されるように、スリーブ19の後端部には、スリーブ19の径方向の外方に突出するスリーブ側突部20が形成されている。本実施形態にかかるスリーブ側突部20は、スリーブ19の周方向について連続して形成されている。スリーブ19の内面には、スリーブ側突部20に対応する位置に、後方に向かうに従って拡径するテーパ面21が形成されている。
【0028】
[コネクタ11]
図1に示されるように、コネクタ11は、金属製のシールド部材40と、シールド部材40に覆われるハウジング41と、を備える。
【0029】
[ハウジング41]
ハウジング41は、絶縁性の合成樹脂材が射出成型されてなる。ハウジング41は概ね直方体形状をなしている。ハウジング41の内部には図示しない端子が収容されている。
【0030】
[シールド部材40]
図1に示されるように、シールド部材40は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。シールド部材40を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択することができる。本実施形態においては、銅又は銅合金が用いられている。
【0031】
図1に示されるように、シールド部材40は、下側に配される第1シールド部材22と、この第1シールド部材22の上側に取り付けられる第2シールド部材23と、を備える。なお、上下方向は説明の便宜のために用いるのであって、シールド部材40の構成を限定しない。
【0032】
図1に示されるように、第1シールド部材22は、金属板材が所定の形状にプレス加工されてなる。第1シールド部材22は、筒状をなす筒部27と、筒部27の後端部から下斜め後方に延びる傾斜部28と、傾斜部28の後端部から後方に延びる舌片29と、を有する。
【0033】
筒部27は前後方向に延びるとともに、上下方向に扁平な角筒状をなしている。筒部27の内部には、後方からハウジング41が挿入されて、収容されるようになっている。ハウジング41は、筒部27の内部において、ロック構造等の公知の手法により、後方へ抜け止め状態で保持される。
【0034】
傾斜部28は、筒部27の下壁と、筒部27の左右両側壁の下端部寄りの部分と、に連なるとともに、下斜め後方に延びている。舌片29は、傾斜部28の後端部において、左右方向の中央付近から後方に延びている。舌片29は前後方向に細長く延びる板状をなしている。
【0035】
[第2シールド部材23]
図1に示されるように、第2シールド部材23は、上壁25と、上壁25の左右両側縁から下方に延びる側壁26と、を有する。側壁26の下端縁には、第1シールド部材22の筒部27に下壁に巻き付くように圧着する固定片34が延びている。
図2に示されるように、固定片34が筒部27の下壁に巻き付くように圧着することにより、第1シールド部材22と第2シールド部材23とが一体に組み付けられるようになっている。
【0036】
上壁25、および側壁26の後方には、バレル30が形成されている。バレル30は、ケーブル10に圧着される前の状態においては、下方に開口して形成されている。バレル30が、ケーブル10の折り返し部18に対して外側から巻き付くように圧着されることにより、第1シールド部材22および第2シールド部材23と、ケーブル10と、が接続されるようになっている。
【0037】
図5に示されるように、バレル30のうち右側の下端縁には、下方に延びる2つの右開き止め片35が、前後方向に間隔を空けて形成されている。バレル30のうち左側の下端縁には、下方に延びる1つの左開き止め片36が形成されている。右方から見て、前後方向について2つの右開き止め片35の間に左開き止め片36が位置するように形成されている。
【0038】
図5に示されるように、右開き止め片35の先端には、右係止部37が形成されている。右係止部37は、右開き止め片35の先端部を内側へ折り返すように屈曲して形成されている。また、左開き止め片36の先端には、左係止部38が形成されている。左係止部38は、左開き止め片36の先端部を内側へ折り返すように屈曲して形成されている。
【0039】
図6に示されるように、バレル30がケーブル10の外周に圧着した状態において、右開き止め片35の右係止部37は、舌片29の左側縁に左方から接触するようになっている。これにより、右開き止め片35が、スプリングバックによって右方に開くことが抑制されるようになっている。
【0040】
図6に示されるように、バレル30がケーブル10の外周に圧着した状態において、左開き止め片36の左係止部38は、舌片29の右側縁に右方から接触するようになっている。これにより、左開き止め片36が、スプリングバックによって左方に開くことが抑制されるようになっている。
【0041】
(バレル側突部32)
図5に示されるように、バレル30の後端縁には、ケーブル10の周方向について間隔を空けて、複数(本実施形態では4つ)のバレル側突部32が、ケーブル10の径方向の内方に突出している。バレル側突部32は後方から見て角の丸められた略長方形状をなしている。バレル側突部32は、バレル30の後端縁から、径方向の内方に略直角に曲げ加工されてなる。
【0042】
図7に示されるように、バレル側突部32の後端縁は、バレル30の後端縁と略面一に形成されている。換言すると、バレル側突部32は、バレル30の後端縁より後方には突出していない。これによりバレル30をプレス加工する際に、バレル側突部32がプレス加工のための治具等に干渉することを抑制することができる。
【0043】
図8に示されるように、バレル30が折り返し部18の外周に圧着された状態において、バレル側突部32は、ケーブル10の軸線方向についてスリーブ19の後端部よりも後方の位置に配されている。
【0044】
バレル側突部32の、ケーブル10の径方向の内方への突出寸法は、バレル30が折り返し部18の外周に圧着された状態において、スリーブ19の後端縁に対して、ケーブル10の軸線方向の後方から係止可能に設定されている。これにより、ケーブル10に対して、軸線方向について後方に引っ張られる力が加えられた場合に、バレル側突部32が、軸線方向の後方からスリーブ19の後端縁に当接するようになっている(
図9参照)。
【0045】
図8に示されるように、ケーブル10が、軸線方向の後方へ引っ張られていない状態においては、スリーブ19の後端縁と、バレル側突部32の前面とは、当接していてもよいし、また、離間していてもよい。
【0046】
バレル30の後端部における複数のバレル側突部32は、後方から見て、左右対称に配されている。これにより、ケーブル10が軸線方向の後方へ引っ張られたときに、左右対称に配されたバレル側突部32によってスリーブ19を受けることができるので、力が特定のバレル側突部32に偏ってしまうことが抑制されるようになっている。
【0047】
(ケーブル付きコネクタ12の製造工程)
続いて、ケーブル付きコネクタ12の製造工程の一例について説明する。なお、ケーブル付きコネクタ12の工程は下記の工程に限定されない。
【0048】
ケーブル10のシース部15を、所定の長さ寸法だけ皮むきする。これにより、電線13と、編組部材14とを、シース部15から露出させる。
【0049】
金属製のパイプを所定の長さ寸法に切断し、一方の端部を絞り加工により拡径させ、スリーブ側突部20と、テーパ面21とを形成する。
【0050】
シース部15の前端部寄りの位置に、スリーブ19を外嵌する。シース部15の前端部から露出した編組部材14を、シース部15の前端部に向かって折り返す。換言すれば、シース部15の前端部から露出した編組部材14を、ケーブル10の軸線方向の後方に折り返す。これにより、ケーブル10の径方向についてスリーブ19の外側に折り返し部18を形成する。
【0051】
一方、第1シールド部材22の筒部27に、第2シールド部材23の固定片34を圧着させることにより、第1シールド部材22と第2シールド部材23とを一体に組み付ける。続いて、バレル30を、折り返し部18の外周に巻き付けるようにして圧着する。これにより、バレル30と、折り返し部18とが電気的かつ物理的に接続される。以上により、ケーブル付きコネクタ12が完成する。
【0052】
[実施形態の作用、効果]
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態は、ケーブル10の端部にコネクタ11が接続されたケーブル付きコネクタ12であって、電線13と、シース部15と、電線13とシース部15との間に介在された編組部材14と、を有し、編組部材14は導電性の線材が編まれてなり、編組部材14にはシース部15の端末から露出した編組部材14がシース部15に向かって折り返されてなる折り返し部18が設けられたケーブル10と、ケーブル10の径方向について、折り返し部18の内側であって、且つシース部15の外面に外嵌された金属製のスリーブ19と、折り返し部18の外面に圧着された状態でスリーブ19との間で折り返し部18を挟持するバレル30を有する金属製のシールド部材40と、シールド部材40に覆われたハウジング41と、を備え、バレル30には、ケーブル10の軸線方向についてスリーブ19の後端部よりも後方の位置に、ケーブル10の径方向の内方に突出するバレル側突部32が形成されており、スリーブ19の後端部には、ケーブル10の径方向の外方に突出するスリーブ側突部20が形成されている。
【0053】
本実施形態によれば、バレル側突部32とスリーブ19の後端部とが接触する面積が、ケーブル10の径方向の外方に突出するスリーブ側突部20が形成されていない場合に比べて、増大する。これにより、ケーブル10とコネクタ11との固着力を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、スリーブ19の後端縁の内面には、後方に向かうに従って拡径するテーパ面21が形成されている。これにより、ケーブル10をスリーブ19の後方からスリーブ19内に挿入する際に、テーパ面21とケーブル10とが摺接することにより、ケーブル10がスリーブ19内に案内される。この結果、ケーブル10をスリーブ19に挿入する作業の効率を向上させることができるので、ケーブル付きコネクタ12の製造効率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、バレル30には、ケーブル10の周方向に間隔を空けて複数のバレル側突部32が設けられている。
【0056】
これにより、バレル側突部32が1つである場合に比べて、バレル側突部32とスリーブ19の後端縁とが接触する面積を大きくすることができるので、ケーブル10とコネクタ11との固着力を向上させることができる。
【0057】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2について
図10から
図13を参照しつつ説明される。
図10に示されるように、本実施形態にかかるケーブル付きコネクタ50においては、バレル側突部51の構成が実施形態1とは異なる。
図11に示されるように、バレル30の後端縁には、ケーブル10の周方向について間隔を空けて、複数(本実施形態では2つ)のバレル側突部51が、ケーブル10の径方向の内方に突出している。バレル側突部51は、後方から見て、バレル30の右側と、左側とにそれぞれ形成されている。
【0058】
図11に示されるように、バレル30がケーブル10に圧着する前の状態においては、バレル側突部51の突出端縁には、上下方向の略中央付近に、後方から見て谷形状に陥没する逃がし部52が形成されている。換言すると、逃がし部52は、バレル側突部51の突出端縁に、ケーブル10の径方向外方に凹状に形成されている。
【0059】
図12に示されるように、バレル30がケーブル10に圧着した後の状態においては、バレル側突部51の突出端縁に形成された逃がし部52は、ケーブル10の周方向について、バレル30がケーブル10に圧着する前の状態よりも小さくなっている。
【0060】
図13に示されるように、バレル30が折り返し部18の外周に圧着された状態において、バレル側突部51は、ケーブル10の軸線方向についてスリーブ19の後端部よりも後方の位置に配されている。
【0061】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
図12に示されるように、バレル30がケーブル10に圧着した後の状態においては、バレル側突部51の突出端縁は、ケーブル10の周方向について圧縮されるようになっている。このため、バレル側突部51の突出端縁には、バレル側突部51の内縁部を構成する金属板材が寄り集まって、しわが形成されてしまうことが懸念される。
【0063】
そこで本実施形態においては、バレル側突部51の突出端縁に谷形状に陥没する逃がし部52が形成されている。これにより、バレル30がケーブル10に圧着された後の状態において、バレル側突部51の突出端縁において金属板材が寄り集まったとしても、バレル側突部51にしわが形成されることが抑制される。
【0064】
また、バレル側突部51が間隔を空けて設けられる場合に比べて、バレル側突部51とスリーブ19の後端縁とが接触する面積を大きくすることができるので、ケーブル10とコネクタ53との固着力を向上させることができる。
【0065】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0066】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0067】
(1)バレル側突部は、バレル30に、1つ、3つ、または5つ以上設けられる構成としてもよい。
【0068】
(2)複数のスリーブ側突部20は、スリーブの周方向に間隔を空けて形成される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10: ケーブル
11,53: コネクタ
12,50: ケーブル付きコネクタ
13: 電線
14: 編組部材
15: シース部
18: 折り返し部
19: スリーブ
20: スリーブ側突部
21: テーパ面
22: 第1シールド部材
23: 第2シールド部材
25: 上壁
26: 側壁
27: 筒部
28: 傾斜部
29: 舌片
30: バレル
32,51: バレル側突部
34: 固定片
35: 右開き止め片
36: 左開き止め片
37: 右係止部
38: 左係止部
40: シールド部材
41: ハウジング
52: 逃がし部