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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】仕切り構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20230309BHJP
   E01F 7/02 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
E04H17/16 104
E01F7/02
E04H17/16 105Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018224759
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020084710
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】高田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐策
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕二
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299247(JP,A)
【文献】特開2015-190303(JP,A)
【文献】特開2016-176249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00 - 17/26
E01F 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎地盤上に載置して用いられる仕切り構造であって、
中心軸を鉛直方向に配しながら前記基礎地盤上に載置される複数の中空管と、
前記中空管内に充填される充填物と、
下端側が前記充填物内に埋設され、上端側が前記中空管の上部開口から導出されている支柱と、
前記支柱の前記下端側に設けられ、平板状又は塊状をなす基礎と、
前記支柱に直接又は間接的に取設されている第1の仕切り材と、
前記中空管の中空部内でかつ前記支柱の前記下端の鉛直下方側に配されるコンクリート層と、
前記コンクリート層を貫通する少なくとも1の排水孔を備えていることを特徴とする仕切り構造。
【請求項2】
前記中空管は、防食被膜を備えている金属からなることを特徴とする請求項1に記載の仕切り構造。
【請求項3】
前記中空管は、複数の分割片からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仕切り構造。
【請求項4】
前記中空管は、コルゲートパイプであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の仕切り構造。
【請求項5】
隣り合う前記中空管の間に介設されている第2の仕切り材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の仕切り構造。
【請求項6】
基礎地盤上に載置して用いられる仕切り構造であって、
中心軸を鉛直方向に配しながら前記基礎地盤上に載置される複数の中空管と、
前記中空管内に充填される充填物と、
下端側が前記充填物内に埋設され、上端側が前記中空管の上部開口から導出されている支柱と、
前記支柱の前記下端側に設けられ、平板状又は塊状をなす基礎と、
前記支柱に直接又は間接的に取設されている第1の仕切り材と、
前記中空管の外側面又は内側面に取設されている仕切り材保持部と、
前記仕切り材保持部に直接又は間接的に取設されるとともに、隣り合う前記中空管の間に介設されている第2の仕切り材を備えていることを特徴とする仕切り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来公知の仕切り構造をそのまま用いて施工することができ、しかもこの従来公知の仕切り構造よりも仕切り構造全体の鉛直方向高さが高い新規な仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柵やフェンス等の仕切り構造を地上に設置する場合は、これらの柵やフェンス等の仕切り構造が風圧等に十分に耐えうるよう、仕切り材を保持する支柱の下端にコンクリート製の基礎を設け、この基礎を地中に埋設することが一般的に行われている。
また、上述のような従来公知の仕切り構造の鉛直方向高さを高くする必要がある場合は、通常、既存の仕切り構造における支柱に新たな支柱を継ぎ足して、この継ぎ足された支柱に新たな仕切り材を架設する、あるいは、既存の仕切り構造を撤去して新たにより高い仕切り構造を作り直すという選択肢が考えられる。
そして、上記選択肢のうち、特に前者の場合は、既存の仕切り構造を再利用できるというメリットがある反面、支柱を継ぎ足すなどの改造が必要であった。また、既存の支柱の長さを変更する場合は、支柱の継目部分に十分な強度付与するために、補強材を付加するなど作業が必要になり、場合によっては新たな仕切り構造を施工する場合よりも施工コストが高くなることがあった。
また、後者の場合は、既存の仕切り構造を再利用する場合と比較して、施工コストの点で有利になる可能性があるものの、既存の仕切り構造を有効に活用することができないというデメリットを有していた。
本願発明と同一の解決すべき課題を有する先行技術文献は、現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先行技術文献としては以下に示すようなものが知られている。
【0003】
特許文献1には「雪崩・落石の防護柵または防音壁の構築方法、擁壁上部または基礎ブロックを構成するプレキャストコンクリートブロック、並びに雪崩・落石の防護柵または防音壁の構築方法に使用する支柱の仮止め部材」という名称で、雪崩や落石用の防護柵の構築方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明は、擁壁上部または基礎ブロック上面に支柱を立設固定して雪崩・落石の防護柵または防音壁を構築する方法において、支柱を立設固定するのに先立って、擁壁上部または基礎ブロック上面に跨る仮止め部材を用いて支柱を両側面から挟圧して仮止めすることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、擁壁上部を構成する支柱の長さを変更することで、擁壁全体の高さを所望に変更できると考えられる。
【0004】
特許文献2には「可搬柱状基礎体及びその設置方法」という名称で、例えばテント、ガレージ、物置、物干し台、旗、幟等の支柱の立設のための基台や、門柱等の柱状体に適する可搬の柱状基礎体に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される「柱状基礎体」は、板状部材と該板状部材の略中央部から立設された金属製の棒状部材とから成る基柱部材と、該板状部材上に載置されるとともに該棒状部材の少なくとも下部を囲む筒状体と、を含むことを特徴とするものである。
上述のような特許文献2に開示される発明によれば、手間のかからない方法で立設することの出来る柱状基礎体を提供することができる。
【0005】
特許文献3には「太陽光発電装置及びその基礎枠」という名称で、太陽光発電装置及びその基礎の外周部を構成する基礎枠に関し、特に遊休地等の地面上に構築されるのに適した太陽光発電装置及びその基礎枠に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される「太陽光発電装置の基礎枠」は、太陽光発電装置における太陽電池パネルの架台を載せる基礎コンクリートの外周を囲み、かつ前記外周に定着される環状の捨て枠からなることを特徴とするものである。
上述のような特許文献3に開示される発明によれば、捨て枠であるため、基礎コンクリートの打設、硬化後の解体及び撤去を考慮する必要が無く、基礎構造を簡素化することができる。また、特許文献3に開示される発明によれば、基礎構造の解体及び撤去の作業を省略でき、施工期間を短縮でき、ひいては施工コストを低減できる。さらに、特許文献3に開示される発明によれば、解体及び撤去作業による基礎コンクリートの破損のおそれも無い。加えて、特許文献3に開示される発明によれば、基礎枠によって基礎コンクリートを補強したり保護したりすることができる。すなわち、特許文献3に開示される発明によれば、基礎枠が基礎コンクリートの外周を拘束することによって、基礎に加わる引っ張り力を基礎枠に分担させることで基礎の強度の高め、基礎コンクリートのひび割れ等の疲労損傷を防止することができる。また、特許文献3に開示される発明によれば、基礎枠が基礎コンクリートの外周を覆うことによって、基礎コンクリートの外周部が雨水等に直接的に晒されないようにすることができ、基礎コンクリートの経年劣化を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-255632号公報
【文献】特開2002-47662号公報
【文献】特開2015-190303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に開示される発明によれば、基礎ブロック上に固設される支柱をスライドさせることで擁壁全体の鉛直方向高さを変更できる可能性がある。
しかしながら、このような擁壁全体の高さを変更する効果は、特許文献1に開示される発明を用いる場合にのみ発揮される。
このため、特許文献1に開示されている発明でなく、しかも支柱と、仕切り材とを少なくとも備えてなる従来公知でかつ使用中の既存の仕切り構造をそのまま再利用して、その高さを所望に変更するには、本願明細書の冒頭部分において述べた方法を選択せざるを得なかった。
【0008】
特許文献2,3に開示されるそれぞれの発明によれば、基礎地盤上に載置するだけで支柱を起立状態に維持しておくことができるという効果を有する。
その一方で、特許文献2,3に開示されている技術内容を参酌する場合でも、支柱と、仕切り材とを少なくとも備えてなる従来公知でかつ使用中の既存の仕切り構造をそのまま再利用して、その高さを所望に変更することはできなかった。したがって、特許文献2,3に開示されるそれぞれの発明を採用する場合も、本願明細書の冒頭部分において述べた方法のいずれかを選択せざるを得なかった。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、支柱と、この支柱の下端側に一体に設けられる基礎と、隣り合う支柱同士の間に介設される仕切り材とを少なくとも備えてなる従来公知の仕切り構造をそのまま用いて、その高さを所望だけ高くした新規な仕切り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明である仕切り構造は、基礎地盤上に載置して用いられる仕切り構造であって、中心軸を鉛直方向に配しながら基礎地盤上に載置される複数の中空管と、この中空管内に充填される充填物と、下端側が充填物内に埋設され、上端側が中空管の上部開口から導出されている支柱と、この支柱の下端側に設けられ、平板状又は塊状をなす基礎と、支柱に直接又は間接的に取設されている第1の仕切り材と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、中空管は、その中空部内が充填物で満たされることで、風圧等により転倒し難い重量物になる。また、このような充填物で満たされた中空管は、基礎を埋設するための基礎地盤の代わりとなる。また、充填物で満たされた中空管は、基礎地盤上に載置されるため、支柱の下端に設けられる基礎の底上げ材として作用する。このため、従来公知の仕切り構造における支柱の基礎を、中空管内の充填物中に埋設する場合は、従来公知の仕切り構造における支柱の基礎を基礎地盤中に埋設する場合に比べて、支柱の上端位置をより高い位置に配することができる。
また、第1の仕切り材は、隣り合う支柱間に架設されて、基礎地盤上の空間を所望に間仕切るという作用を有する。
よって、第1の発明によれば、従来公知の仕切り構造を基礎地盤上にそのまま設置する場合に比べて、鉛直方向高さがより高い新規な仕切り構造を提供するという作用を有する。
【0011】
第2の発明である仕切り構造は、上述の第1の発明において、中空管は、防食被膜を備えている金属からなることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用に加えて、中空管が防食被膜を備えている金属により構成されていることで、中空管に耐久性を付与しつつ、中空管を軽量化するという作用を有する。
【0012】
第3の発明である仕切り構造は、上述の第1又は第2の発明において、中空管は、複数の分割片からなることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用に加えて、搬送手段の荷台に載せることができない程度の大きいサイズの中空管を用いる場合に、その中空管を複数の分割片に分解可能にするという作用を有する。これにより、大きいサイズの中空管の移送を容易にするという作用を有する。
【0013】
第4の発明である仕切り構造は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明において、中空管は、コルゲートパイプであることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、中空管としてコルゲートパイプを用いることで、コルゲートパイプでない中空管(表面に凹凸を有しない中空管)を用いる場合に比べて、中空管を変形させるような外力が作用した際に、中空管を変形し難くするという作用を有する。また、コルゲートパイプは様々なサイズ(直径)を有するものが市販されているため、所望サイズの中空管を準備するのに要するコストを廉価にするという作用も有する。
【0014】
第5の発明である仕切り構造は、上述の第1乃至第4のいずれかの発明において、中空管は、その中空部内でかつ支柱の下端の鉛直下方側にコンクリート層を備え、このコンクリート層は、その厚み方向を貫通する少なくとも1の排水孔を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、中空管がその中空部内で、かつ支柱の下端の鉛直下方側にコンクリート層を備えていることで、第5の発明の設置時(使用時)に、時間の経過にともない中空管内に埋設される支柱が基礎地盤側に沈み込むのを妨げるという作用を有する。より具体的には、中空管内に埋設される支柱の上端位置が、時間の経過とともに鉛直下方側に下降するのを妨げるという作用を有する。つまり、第5の発明の鉛直方向高さが、時間の経過とともに意図せず低くなるのを防ぐという作用を有する。
さらに、第5の発明において、コンクリート層を貫通して形成される排水孔は、中空管内に溜まった雨水を、基礎地盤側に排出させるという作用を有する。これにより、第5の発明を構成する中空管及び支柱が特に金属製である場合に、充填物と接触する部分の金属が、過湿により腐食するのを抑制するという作用を有する。
【0015】
第6の発明である仕切り構造は、上述の第1乃至第5のいずれかの発明において、隣り合う中空管の間に介設されている第2の仕切り材を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第1乃至第5のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、第2の仕切り材は、隣り合う中空管の間に介設されて、充填物が満たされた中空管と協働して、基礎地盤上の空間を所望に間仕切るという作用を有する。
【0016】
第7の発明である仕切り構造は、上述の第6の発明において、中空管の外側面又は内側面に取設されている仕切り材保持部を備え、この仕切り材保持部に、第2の仕切り材が直接又は間接的に取設されていることを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、上述の第6の発明による作用と同じ作用に加えて、仕切り材保持部は、中空管の外側面又は内側面に取設されて、第2の仕切り材を直接又は間接的に保持するという作用を有する。
このように第7の発明では、中空管と第2の仕切り材との間に仕切り材保持部を介設することで、中空管に対する第2の仕切り材の取設作業を効率的かつ容易にするという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
上述のような第1の発明によれば、従来公知の仕切り構造(例えば、支柱と、この支柱の下端側に一体に設けられる基礎と、隣り合う支柱同士の間に介設される仕切り材を少なくとも備えている仕切り構造)における支柱の長さを一切変更することなく、この従来公知の仕切り構造をそのまま基礎地盤に設置する場合に比べて、鉛直方向高さがより高い新規な仕切り構造を提供することができる。
また、第1の発明の場合は、従来公知の仕切り構造が、その構成として少なくとも支柱、基礎及び仕切り材を備えていれば、どのような形態であっても、その従来公知の仕切り構造よりも鉛直方向高さがより高い新規な仕切り構造として用いることができる。より具体的には、例えば第1の発明を構成する従来公知の仕切り構造における支柱は、H鋼でもよいし、円筒や角柱でもよい。また、例えば第1の発明を構成する従来公知の仕切り構造における仕切り材は、パネル体でもよいし、メッシュ材や、その外形が平面状をなす柵でもよい。さらに、例えば第1の発明を構成する従来公知の仕切り構造における基礎は、コンクリート製の塊でもよいし、金属製の平板体でもよい。
したがって、第1の発明によれば、様々な形態の従来公知の仕切り構造に対する汎用性が高い改造技術を提供することができる。
なお、第1の発明では、従来公知の仕切り構造に代えて、使用中の既存の仕切り構造を用いることもできる。そして、第1の発明を施工する際の資材の一部として、既存の仕切り構造を再利用する場合は、第1の発明の施工に要するコストを低減することができる。しかもこの場合は、既存の仕切り構造を廃棄して新設する場合に比べて、発生する産業廃物の量を減らすことができるので、第1の発明を実施する際の環境負荷を低減することができる。
さらに、第1の発明によれば、基礎地盤を掘り起こす作業を行うことなく、基礎地盤上に堅牢な仕切り構造を設置することができる。したがって、第1の発明によれば、基礎地盤が硬くて容易に掘り起こせない場合や、基礎地盤中に有害物質が埋まっているなどの理由で掘り起こしに適さない基礎地盤に対して、水平方向への外力に対して十分な強度と安定性を有する新規な仕切り構造を提供することができる。
【0018】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果に加えて、中空管に耐久性を付与しつつ、中空管を軽量化できるという効果を有する。
この結果、遠隔地に第2の発明である仕切り構造を設置する場合に、その資材の搬送を容易かつ安価にできるというメリットがある。
したがって、第2の発明によれば、例えば、プレキャストコンクリート製の中空管を用いる場合に比べて、その製造及び施工に要するコストを安価にできる。
【0019】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果に加えて、中空管として、搬送手段の荷台にそのまま載せることができないサイズの中空管を用いる場合に、中空管を複数の分割片に分解することができるという効果を有する。この場合、第3の発明に用いる中空管の搬送を容易にできる。
この場合、第3の発明を施工する際の資材の輸送に要するコストを廉価にできるというメリットを有する。
したがって、第3の発明によれば、分割できない中空管を使用する場合に比べて、第3の発明の施工費用を安価にできる。
【0020】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果と同じ効果に加えて、中空管としてコルゲートパイプを用いることで、中空管に外力が作用した場合に、その変形を好適に防止することができる。つまり、中空管としてコルゲートパイプを用いる場合は、フラットな平板材を管状に成形してなる中空管(コルゲートパイプでない中空管)を用いる場合に比べて、より優れた形状保持性を発揮させることができる。
また、コルゲートパイプは、様々なサイズのものが市販されている。このため、第4の発明の目的に応じて、所望のサイズの中空管を安価に入手できる。
よって、第4の発明によれば、コルゲートパイプでない中空管を用いる場合に比べて、強度が優れた仕切り構造を、安価に提供できるという効果を有する。
【0021】
第5の発明によれば、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。また、第5の発明によれば、中空管がその中空部内でかつ支柱の下端よりも鉛直下方側にコンクリート層を備えていることで、第5の発明の施工後に、時間の経過にともなって支柱が基礎地盤側に沈み込むのを抑制することができる。
この場合、第5の発明の施工後に、第5の発明の鉛直方向高さが、意図せず低くなるのを防止することができる。よって、第5の発明によれば、施工後の長期間にわたり仕切り構造の鉛直方向高さの変化が起こり難い、高品質な仕切り構造を提供することができる。
さらに、第5の発明によれば、中空管内に敷設されるコンクリート層が排水孔を備えていることで、中空管内の充填材が透水材である場合に、中空管内に浸入した雨水を外部にスムーズに排出することができる。この場合、降雨後に中空管内の過湿状態を速やかに改善することができる。この結果、中空管内に埋設される支柱の下端が腐食して劣化する、あるいは中空管が金属製である場合に中空管自体が腐食して劣化するのを抑制することができる。
したがって、第5の発明によれば、仕切り構造の耐久性を向上させることができる。
【0022】
第6の発明によれば、上述の第1乃至第5のそれぞれの発明による効果と同じ効果に加えて、隣り合う中空管の間に第2の仕切り材を介設することで、中空管自体を仕切り材の一部として使用することができる。
この結果、第6の発明によれば、中空管の下部開口から、支柱の上端までの鉛直方向の全域に仕切り材(中空管自体、第1の仕切り材及び第2の仕切り材)を配することができる。
また、特に第6の発明では、中空管同士を近付けながら配置することで、第6の発明を擁壁としても使用することができる。
よって、第6の発明によれば、第1乃至第5のそれぞれの発明と比較して、より汎用性の高い仕切り構造を提供することができる。
【0023】
第7の発明によれば、上述の第6の発明による効果と同じ効果に加えて、中空管と第2の仕切り材との間に仕切り材保持部が介設されていることで、中空管への第2の仕切り材の取設作業を容易にできる。さらに、第7の発明によれば、仕切り材保持部を備えていない場合に比べて、中空管に対する第2の仕切り材の取付け強度を向上させることができる。
よって、第7の発明によれば、第6の発明よりも中空管と仕切り材との接続強度が高く、かつ施工性がよい仕切り構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。
図2】実施例1に係る仕切り構造において支柱に対する第1の仕切り材の取付け状態を示す部分平面図である。
図3】本発明の実施例1の変形例1に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。
図4】本発明の実施例1の変形例2に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。
図5】本発明の実施例1の変形例3に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。
図6】本発明の実施例1の変形例4に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。
図7】本発明の実施例1の変形例5に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。
図8】本発明の実施例2に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。
図9】本発明の実施例2に係る仕切り構造における仕切り材保持部および第2の仕切り材の取設状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施例3に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る仕切り構造について実施例1乃至実施例3を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
はじめに、本発明の実施例1に係る仕切り構造1Aについて図1乃至図6を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例1に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。
実施例1に係る仕切り構造1Aは、基礎地盤P上に載置して用いられる仕切り構造であって、図1に示すように、中心軸を鉛直方向に配しながら基礎地盤P上に載置される複数の中空管2と、この中空管2内に充填される充填物3と、下端側が充填物3内に埋設され、かつ上端8a側が中空管2の上部開口から導出されている支柱8と、この支柱8の下端8b側に設けられ、平板状又は塊状をなす基礎10aと、支柱8に直接又は間接的に取設されている第1の仕切り材5aとを備えるものである。
【0027】
すなわち、実施例1に係る仕切り構造1Aは、基礎地盤P上に載置される中空管2内の充填物3を、基礎地盤Pの代わりとして用い、この中空管2内の充填物3中に、従来公知の仕切り構造15の基礎10aを埋設して立設し、さらに中空管2内に立設された支柱8,8の間に第1の仕切り材5aを架設したものである。
より端的には、実施例1に係る仕切り構造1Aは、中空管2内に充填される充填物3に、従来公知の仕切り構造15を立設した簡易設置タイプの仕切り構造である。
なお、実施例1に係る仕切り構造1Aにおいて従来公知の仕切り構造15に相当する構成要素は、支柱8と、この支柱8の下端8b側に設けられる基礎10aと、支柱8に直接又は間接的に取設されている第1の仕切り材5aである。また、このような従来公知の仕切り構造15の具体例としては、例えば従来公知のフェンスや、柵等の地上に設置して用いられる間仕切りが挙げられる。
【0028】
ここで、実施例1に係る仕切り構造1Aの各構成要素について図1,2を参照しながら詳細に説明する。
実施例1に係る仕切り構造1Aにおける中空管2は、屋外に設置する構造物として十分な強度を備え、かつ長期間野ざらしにした場合でも腐食等による劣化が生じ難い材質であればどのようなものでも使用することができる。
具体的には、中空管2としては、例えば、プレキャストコンクリート製の中空管や、表面に防食加工が施された金属製の筒体等を用いることができる。なお、中空管2の材質は、実施例1に係る仕切り構造1Aの使用目的や使用期間を考慮して適宜選定すればよい。
例えば、実施例1に係る仕切り構造1Aを恒久的な設備として基礎地盤P上に設置する場合は、中空管2として、平板材を波状に成形してなる成形板(例えば、表面に防食加工が施された金属板等)を、筒状に湾曲又は折曲してなるコルゲートパイプを用いることが望ましい。
一般に、コルゲートパイプは様々な形状及びサイズのものが市販されている。このため、中空管2としてコルゲートパイプを用いる場合は、実施例1に係る仕切り構造1Aの使用目的に応じて所望の直径及び/又は中心軸方向長さ(高さ)を有する中空管2を安価に入手することができるというメリットがある。
【0029】
実施例1に係る仕切り構造1Aに係る充填物3としては、土砂や砕石等の透水性(排水性)を有する粒状体(後段における図3中の粒状体3aを参照)を用いることができる。
この場合、中空管2の上部開口2aから侵入した雨水を、下部開口2dから基礎地盤P側に排出することができる。このように、充填物3として粒状体を用いる場合は、中空管2内に雨水が滞留し難くなる。
また、実施例1に係る仕切り構造1Aとして、特に金属製の中空管2を用いる場合で、かつ充填物3として透水材(例えば、粒状体等)を用いる場合は、中空管2を長期間野ざらしにした場合でも、中空管2の下部開口2d側に腐食を生じ難くすることができる。したがって、充填物3として透水材を用いることで中空管2の耐久性を向上させることができる。
なお、基礎地盤Pが透水性に乏しい場合は、中空管2の下部開口2d側の周側面に水抜き用のスリット又は切欠き(図示せず)を備えていてもよい。この場合は、中空管2の側面側から排水することが可能になる。この場合、基礎地盤Pが透水性に乏しい場合であっても、中空管2の下部開口2d側の腐食に伴う強度の低下を好適に防止することができる。
【0030】
また、特に図示しないが、中空管2内に充填される充填物3としてコンクリート又は鉄筋コンクリートを採用することもできる。この場合は、支柱8の下端8b側に設けられる基礎10a等を、コンクリート又は鉄筋コンクリートを用いて中空管2内に固定することになる。また、中空管2内に充填される充填物3としてコンクリート又は鉄筋コンクリートを採用する場合は、中空管2は捨て型枠として用いられることになる。
このように、中空管2を捨て型枠として用いる場合や、実施例1に係る仕切り構造1Aを例えば数年間程度の短期間だけ使用する場合は、中空管2の材質として、耐候性を有する合成樹脂を採用することも可能である。
このように、中空管2として合成樹脂製の筒体を用いる場合は、金属製のコルゲートパイプを採用する場合に比べて、中空管2の入手にかかるコストを廉価にできるというメリットがある。
【0031】
加えて、中空管2の端面形状は、円形である必要は特になく、実施例1に係る仕切り構造1Aの用途に応じて所望の形状のものを適宜選定してよい。
なお、中空管2の端面形状において、その中心位置から周縁までの距離が略一定でない場合(例えば、中空管2の端面形状が楕円形をなす場合等)は、中空管2の端面形状の中心位置から周縁までの距離が短い方を、基礎地盤P上における第1の仕切り材5aの配設方向と略平行に配しておくとよい。この場合、中空管2の端面形状における中心位置から周縁までの距離の長い方を、基礎地盤P上における第1の仕切り材5aの配設方向と略平行に配する場合に比べて、実施例1に係る仕切り構造1Aを設置した際の安定性を向上させることができる。
なお、本実施形態では特に、中空管2として表面に防食加工が施された金属製のコルゲートパイプを用いる場合を例に挙げて説明する。
【0032】
さらに、図1,2を参照しながら従来公知の仕切り構造15の具体的な態様について詳細に説明する。
図2は本発明の実施例1に係る仕切り構造において支柱に対する第1の仕切り材の取付け状態を示す部分平面図である。より具体的には、図2は先の図1に示す仕切り構造1AのA-A線矢視断面における支柱の周辺の部分拡大図である。
図2に示すように、従来公知の仕切り構造15の支柱8としては、例えば表面に防食加工を施したH鋼を用いることができる。ただし、従来公知の仕切り構造15における支柱8は、図示されるようなH鋼である必要はなく従来公知のフェンスや柵等に用いられている支柱を支障なく使用することができる。
【0033】
加えて、実施例1に係る仕切り構造1Aを構成する第1の仕切り材5aとしては、例えば、図1,2に示すように、防食加工が施された金属製の折曲げ板や、パネル材(図示せず)、メッシュ材(図示せず)、棒状の水平材の集合体(図示せず)、鉛直方向に配された棒体を複数本水平方向に並設してなる柵状物体(図示せず)等を、仕切り構造1Aの使用目的に応じて適宜選んで採用すればよい。
また、実施例1に係る仕切り構造1Aでは、図1,2に示すように、支柱8に直接、固定具6を用いて複数の第1の仕切り材5aを、互いに平行に配しながら架設してもよい。あるいは、特に図示しないが、複数の第1の仕切り材5aを互いに平行に配しながら一体化してパネル状物体を形成しておいてから、このパネル状物体を、固定具6を用いてあるいは直接支柱8に取設してもよい。この場合は、複数の第1の仕切り材5aをパネル状に保持する型枠等が柱8に取設されることになる。また、この場合は、支柱8に対して第1の仕切り材5aが間接的に取設されることになる。
また、上述のように、支柱8に対して第1の仕切り材5aを間接的に取設する場合は、個々の第1の仕切り材5aの取付け作業を現場で行う必要がなくなる。このため、実施例1に係る仕切り構造1Aの施工を容易にできるというメリットを有する。
したがって、実施例1に係る仕切り構造1Aを構成する第1の仕切り材5aは、支柱8,8間に直接又は間接的に取設できるものであれば、どのような材質及び/又は形態のものでもよく、仕切り構造1Aの使用目的(透光性、通気性、強度等)に応じて所望のものを適宜選定することができる。
【0034】
なお、実施例1に係る仕切り構造1Aにおける基礎10aは、例えば図1に示すように、支柱8の下端に一体に固設される塊状のコンクリート又は鉄筋コンクリートでもよいが、それ以外の材質及び形態により構成することもできる。より具体的には、基礎10aに代えて、支柱8の下端8bに金属製の平板材を一体に固設して基礎として用いてもよい。
したがって、実施例1に係る仕切り構造1Aに用いられる従来公知の仕切り構造15の基礎は、中空管2内に埋設された際に、充填物3からの支柱8の下端の引き抜き抵抗を増加させるよう構成されるものであれば、どのような材質又は形態であってもよい。
また、図1では、支柱8の上端8aが開放されている状態を示しているが、必要に応じて支柱8の上端8aにカバー(図示せず)を備えてもよい。
なお、実施例1に係る仕切り構造1Aにおける基礎の変形例、さらには、この基礎と充填物3との連関については、後段において図4乃至図7を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
ここで、実施例1に係る仕切り構造1Aの施工手順について説明する(図示せず)。
基礎地盤P上に実施例1に係る仕切り構造1Aを施工するには、まず、必要に応じて基礎地盤Pを地均しして略平坦な状態にする(ステップS0:整地工程)。
なお、基礎地盤Pの排水性が乏しい場合は、このステップS0において、基礎地盤Pの最上層に砕石を敷詰めた層を形成しておくとよい。このように基礎地盤Pがその最上層に砕石層を備えている場合は、その上に中空管2を設置した際に、中空管2内から基礎地盤Pへの排水性を良好にできる。
【0036】
そして、先のステップS0において略平坦状になった基礎地盤P上の所望位置に、中空管2の中心軸を鉛直方向に配しながら中空管2を配置する(ステップS1:中空管配置工程)。
次いで、基礎地盤P上に載置されているそれぞれの中空管2の上部開口2aから充填物3を投入して、中空管2の中空部内を充填物3で満たす。また、この中空管2の中空部内を充填物3で満たす作業と併せて、従来公知の仕切り構造15の支柱8の下端(例えば、基礎10a)を、充填物3中に埋設する(ステップS2:充填物と支柱の収容工程)。
【0037】
なお、中空管2内に収容された充填物3は、中空管2の上部開口2aが開放されたままの状態で野ざらしにされる。そして、充填物3を満たした中空管2をそのまま放置すると、充填物3が繰り返し雨水に曝されて、充填物3が締め固まり、次第に充填物3の容積が減少する。さらに、中空管2内に充填物3とともに基礎10aが収容されている場合は、支柱8の基礎地盤P側への沈降が起きることがある。このような事態を回避するために、基礎10aの底面側に配される充填物3を中空管2内に収容する際に、コンパクター等を用いて中空管2内に投入された充填物3を圧縮するとよい。そして、中空管2内への基礎10aと充填物3の収容作業を完了することで、基礎地盤P上への支柱8の設置作業が完了する。
【0038】
さらに、上述のように基礎地盤P上の所望位置に、中空管2を介して支柱8を立設した後に、隣り合う支柱8同士の間に第1の仕切り材5aを架設すればよい(ステップS3:仕切り材取設工程)。
なお、支柱8への第1の仕切り材5aの取設方法としては、例えば図2に示すような固定具6を用いる方法や、先に述べたような取設方法を適宜選択すればよい。
【0039】
上述のような実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、支柱8の下端側に設けられる基礎10aを基礎地盤P中に直接埋設する場合に比べて、基礎地盤P上への基礎10aの移動距離分だけ従来公知の仕切り構造15の鉛直方向高さを高くした新規な仕切り構造1Aを提供することができる。
つまり、実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、従来公知の仕切り構造15に中空管2及び充填物3を付加するだけで、従来公知の仕切り構造15の支柱8の長さを一切変更することなしに、それよりも鉛直方向高さが高い仕切り構造を基礎地盤P上に設置することができる。
また、上述のような実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、支柱8を立設するにあたり、基礎地盤Pを掘り起こす作業を行うことなく、基礎地盤P上に堅牢な仕切り構造1Aを設置することができる。
つまり、実施例1に係る仕切り構造1Aでは充填物3で満たされた中空管2が、基礎地盤Pの代わりとして機能する。この場合、中空管2内に収容された充填物3は、基礎地盤P上に形成される盛り土や土壇と同等の作用効果を有しつつ、基礎地盤P上に盛り土や土壇を形成する場合よりも手間や施工費用を安価にできる。
したがって、上述のような実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、基礎地盤Pが固くて容易に掘り起こすことができない、あるいは地中に有害物質等が埋まっている等の理由により、基礎10aを基礎地盤P中に埋設することが容易でない状況下でも、基礎地盤P上の所望の位置に仕切り構造を設置することができる。
【0040】
加えて、実施例1に係る仕切り構造1Aは、基礎地盤P上に単に載置されているだけなので、その撤去も容易である。つまり、実施例1に係る仕切り構造1Aの場合は、例えば支柱8の下端側に設けられる基礎(例えば、基礎10a等)が、基礎地盤P中に埋設された従来公知の仕切り構造15を撤去する場合のように、基礎を基礎地盤Pから掘り起す作業を行う必要がない。
よって、実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、その施工と撤去が容易な新規な仕切り構造を提供することができる。
【0041】
さらに、実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、従来公知の仕切り構造15として、既設の仕切り構造を改造することなくそのまま使用することができる。
つまり、既設の仕切り構造(従来公知の仕切り構造15)を、例えば基礎10aを備えた支柱8と、第2の仕切り材5bとに分解してから、さらに支柱8の下端側に設けられる基礎10aを基礎地盤から掘り起して引き抜いた後に、これら既設の仕切り構造の一連の資材を、実施例1に係る仕切り構造1Aの施工用の資材として用いることができる。
よって、実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、従来公知の仕切り構造15として既設の仕切り構造を再利用する場合でも、支柱8を継ぎ足すなどの改造を行う必要がない。しかも、実施例1に係る仕切り構造1Aによれば、既設の仕切り構造を再利用して、それよりも鉛直方向高さが高い仕切り構造を基礎地盤P上に設置することができる。
【0042】
実施例1に係る仕切り構造1Aでは、中空管2内における柱8の下端の固定構造として様々な形態が考えられる。
ここでは、実施例1に係る仕切り構造1Aの各変形例について図3乃至図7を参照しながら説明する。なお、後段に示す各変形例に係る支柱8の固定構造の図は、いずれも先の図1中におけるB-B線矢視断面と同じ部分を断面図として示したものである。
【0043】
図3は実施例1の第1の変形例に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1の第1の変形例に係る仕切り構造1Aは、図3に示すように、充填物3及び塊状の基礎10aが収容されている中空管2内の基礎地盤P上に、第1のコンクリート層12aを備えており、さらにこの第1のコンクリート層12aは、その厚み方向を貫通して設けられる少なくとも1の第1の排水孔13aを備えてなるものである。
また、このような第1の変形例に係る仕切り構造1Aでは、中空管2内に充填される充填物3として透水性(排水性)を有する粒状体3aを用いることが好ましい。
【0044】
このような図3に示す支柱8の固定構造によれば、中空管2内の基礎地盤P上に第1のコンクリート層12aを備えていることで、中空管2内の収容物(充填物3及び基礎10a)が、時間の経過とともに基礎地盤P側に沈み込むのを防止することができる。
なお、中空管2内において第1のコンクリート層12a上に充填物3を積層する際に、中空管2内に投入された充填物3を、例えばコンパクター等を用いてしっかりと締め固めておくことが望ましい。この場合、充填物3の締固めを行わない場合と比較して、中空管2内に収容される基礎10aの時間の経過に伴う沈み込み量を小さくすることができる。
また、上述の第1のコンクリート層12aが第1の排水孔13aを備えていることで、中空管2の上部開口2aから浸入した雨水を、第1の排水孔13aを介して基礎地盤Pに排出することができる。この結果、降雨後に中空管2内の湿度の低下を促進することができる。したがって、第1の変形例に係る仕切り構造1Aによれば、上記効果と併せて、中空管2の下部開口2dや支柱8の下端8b側の腐食の進行による強度の低下を抑制することができる。よって、第1の変形例に係る仕切り構造1Aによれば、仕切り構造全体の耐久性を向上させることができる。
さらに、第1の変形例に係る仕切り構造1Aにおいて支柱8が基礎10aを備えていることで、基礎10aを備えない場合に比べて、支柱8の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0045】
図4は実施例1の第2の変形例に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1の第2の変形例に係る仕切り構造1Aは、図4に示すように、先の図3に示す支柱8の固定構造において、支柱8の下端8bに塊状の基礎10aに代えて、平板状の基礎10bを備えてなるものである。
さらに、第2の変形例に係る仕切り構造1Aの支柱8の下端8bはさらに、必要に応じて、基礎10bと支柱8の接続部分に補強板11を備えていてもよい。
なお、支柱8の下端8bが、図4に示すような平板状の基礎10bを備えていることで、この基礎10bを備えない場合に比べて、支柱8の引き抜き抵抗を高くすることができる。
また、上述のような第2の変形例に係る仕切り構造1Aによる作用効果は、先の図3に示す第1の変形例に係る仕切り構造1Aによる作用効果と同じである。
【0046】
図5は実施例1の第3の変形例に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1の第3の変形例に係る仕切り構造1Aは、図5に示すように、先の図3に示す支柱8の固定構造において、基礎10aが中空管2内に形成される第2のコンクリート層12b上に載置され、さらにこの第2のコンクリート層12bがその厚み方向を貫通する第2の排水孔13bを備えてなるものである。なお、第3の変形例に係る仕切り構造1Aにおいて、第2のコンクリート層12bを備えることによる作用効果は、上述の第1のコンクリート層12aを備えることによる作用効果と同じである。さらに、第2のコンクリート層12bが第2の排水孔13bを備えることで、第2のコンクリート層12bの上面側に浸透してきた雨水を、第1のコンクリート層12a側に排出するという作用を有する。
したがって、図5に示すような第3の変形例に係る仕切り構造1Aによれば、先の第1,第2の変形例に係る仕切り構造1A,1Aと比較して、時間の経過に伴う基礎10aや支柱8の沈み込みがより生じ難い高品質な仕切り構造を提供することができる。
また、図5では、第2のコンクリート層12b上に基礎10aを載置する場合を例に挙げて説明しているが、第2のコンクリート層12bの形成時に、第2のコンクリート層12bの厚み部分に基礎10aを埋め込んでもよい。この場合は、第2のコンクリート層12b上に単に基礎10aを載置する場合に比べて、支柱8の引き抜き抵抗を大きくすることができ、これにより一層安定性に優れた仕切り構造1Aを提供することができる。
【0047】
図6は実施例1の第4の変形例に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。なお、図1乃至図5記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1の第4の変形例に係る仕切り構造1Aは、図6に示すように、先の図4に示す支柱8の固定構造において、基礎10bが中空管2内に形成される第2のコンクリート層12b上に載置され、さらに、この第2のコンクリート層12bがその厚み方向を貫通する第2の排水孔13bを備えてなるものである。
なお、第1の変形例に係る仕切り構造1Aにおいて、第2のコンクリート層12bを備えることによる作用効果は、上述の第1のコンクリート層12aを備えることによる作用効果と同じである。さらに、第2の排水孔13bを備えることによる作用効果は、上述の第1の排水孔13aを備えることによる作用効果と同じである。
したがって、図6に示すような第4の変形例に係る仕切り構造1Aによれば、先の第1,第2の変形例に係る仕切り構造1A,1Aと比較して、時間の経過に伴う基礎10bや支柱8の沈み込みがより生じ難い高品質な仕切り構造を提供することができる。
さらに、図6に示すように、第4の変形例に係る仕切り構造1Aでは、基礎10bを第2のコンクリート層12bにボルト14を用いて一体に固定してもよい。この場合、第4の変形例に係る仕切り構造1Aにおいて、支柱8の引き抜き抵抗を一層大きくすることができる。
よって、第4の変形例に係る仕切り構造1Cによれば、先の第2の変形例に係る仕切り構造1Aよりも一層品質及び安定性が高い仕切り構造を提供することができる。
加えて、図6では、第2のコンクリート層12b上に基礎10bを載置する場合を例に挙げて説明しているが、第2のコンクリート層12bの形成時に、第2のコンクリート層12bの厚み部分に基礎10bを埋め込んでもよい。この場合、第2のコンクリート層12b上に基礎10bを単に載置する場合に比べて、支柱8の引き抜き抵抗を大きくすることができ、これにより一層安定性に優れた仕切り構造1Aを提供することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、中空管2内に、第1のコンクリート層12aのみ、又は、第1のコンクリート層12a及び第2のコンクリート層12bを備える場合を例に挙げて説明しているが、中空管2内において、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pの間に配される充填物3を全て、コンクリート又は鉄筋コンクリートにより構成してもよい(図示せず)。なお、この時、基礎10a又は基礎10b上に粒状体3aを充填する場合は、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pの間に配されるコンクリート又は鉄筋コンクリートに、その厚み方向を貫通する排水孔を設けておく必要がある。
また、中空管2内において、基礎10a又は基礎10bの直下に、コンクリート又は鉄筋コンクリートが配される場合は、基礎10a又は基礎10bの厚み方向の少なくとも一部が、コンクリート又は鉄筋コンクリート中に埋設されていてもよい。
このように、中空管2内において、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pまでの空間を、排水孔を備えたコンクリート又は鉄筋コンクリートで埋める場合は、コンクリート又は鉄筋コンクリートの使用量が増える反面、時間の経過に伴う支柱8の基礎地盤P側への沈み込みが起こらないという優れた効果が発揮される。
また、中空管2内において、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pまでを、排水孔を備えたコンクリート又は鉄筋コンクリートで埋めることに代えて、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pまでの間にコンクリート又は鉄筋コンクリート製のブロックを、中空管2の中心軸方向への通水性を確保しながら敷設してもよい(図示せず)。
この場合は、基礎10a又は基礎10bの直下から基礎地盤Pまでを、排水孔を備えたコンクリート又は鉄筋コンクリートで埋める場合と同様の効果を発揮させることができる。
【0049】
図7は実施例1の第5の変形例に係る仕切り構造の支柱近傍の鉛直方向断面図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1の第5の変形例に係る仕切り構造1Aは、図7に示すように、支柱8の下端8bが、中空管2内にコンクリート3b又は鉄筋コンクリートにより固定されてなるものである。なお、特に図示しないが、支柱8の下端8bは、先の図3,4に示すような基礎10aや基礎10b及び、必要に応じて補強板11を備えていてもよい。
なお、図7に示すような第5の変形例に係る仕切り構造1Aでは、中空管2はコンクリート3bを成形するための捨て型枠として用いられる。
上述のような第5の変形例に係る仕切り構造1Aによれば、先の第1乃至第4の変形例に係る仕切り構造1C~1Cと比較して、支柱8の引き抜き抵抗を大幅に高くすることができるので、とりわけ高品質な仕切り構造を提供することができる。
なお、第5の変形例に係る仕切り構造1Aでは、施工後、原則的に中空管2内から支柱8を引き抜くことができないので、仕切り構造1Aを撤去する場合は、支柱8と一体化した中空管2をそのまま撤去するか、支柱8を切断して中空管2から分離して撤去する必要がある。このため、第5の変形例に係る仕切り構造1Aは、仕切り構造を恒久的に使用する場合に特に適した形態であるといえる。
【実施例2】
【0050】
続いて、図8,9を参照しながら実施例2に係る仕切り構造について詳細に説明する。
図8本発明の実施例2に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。また、図9は同じく実施例2に係る仕切り構造における仕切り材保持部および第2の仕切り材の取設状態を示す斜視図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係る仕切り構造1Bは、図8に示すように、先の図1に示す仕切り構造1Aにおける中空管2同士の間に、第2の仕切り材5bを介設したものである。
より具体的には、実施例2に係る仕切り構造1Bは、先の図1に示す仕切り構造1Aと、この仕切り構造1Aを構成する中空管2の外側面に取設されている仕切り材保持部4aと、隣り合う仕切り材保持部4a,4aの間に架設されている第2の仕切り材5bを備えるものである。
【0051】
また、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、図8,9に示すように、第2の仕切り材5bは、先の実施例1に係る仕切り構造1Aにおける第1の仕切り材5aと同じものを使用することができる。ただし、中空管2同士の間に介設される第2の仕切り材5bは、支柱8同士の間に架設される第1の仕切り材5aと必ずしも同じである必要はなく、中空管2,2間に直接又は間接的に取設できるものであれば、仕切り構造1Bの使用目的(透光性、通気性、強度等)に応じて所望のものを適宜選定してよい。
さらに、図8,9では、仕切り材保持部4a,4a間に第2の仕切り材5bを、直接固定具6(例えば、ボルト6a及びナット6b)を用いて固設する場合を例に挙げているが、先の実施例1に係る仕切り構造1Aにおける支柱8,8に対する第1の仕切り材5aの取付け構造と同様に、予めパネル状に成形された第2の仕切り材5b群を、直接又は間接的に取設してよい。なお、その際の第2の仕切り材5bの固設方法としては、固定具6を用いてもよいし、溶接等により直接固設してもよい。
【0052】
また、中空管2の周側面上に仕切り材保持部4bを保持するための仕切り材保持部4aとしては、例えば図8,9に示すような、表面に防食加工が施された金属製のL字型アングル材を用いることができる。
そして、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、L字型アングル材からなる仕切り材保持部4aの両端面をそれぞれ鉛直方向に配しながら、中空管2の外側面上に固設している。より具体的には、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、金属製の中空管2の外側面上に、金属製のL字型アングル材からなる仕切り材保持部4aを溶接により固設している(図8,9中の溶接部7を参照。)。
なお、中空管2に対する仕切り材保持部4aの取設方法は上述の方法に特定する必要はなく、仕切り材保持部4aを備えた中空管2を長期間野ざらしにした場合でも、中空管2から容易に仕切り材保持部4aが外れないような固定方法であればどのような方法でもよい。
具体的には、中空管2への仕切り材保持部4aの固設方法としては、例えばボルト及びナットからなる固定具を用いた固定方法を採用することができる。
また、中空管2の材質が金属以外である場合は、その材質に応じた固定方法を適宜採用すればよい。例えば、中空管2がプレキャストコンクリートである場合は、中空管2の成型時に、中空管2の肉厚部に、仕切り材保持部4a(L字アングル材以外の形態でもよい)を埋め込んで中空管2と一体化してもよい。
【0053】
また、図8,9に示すように、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、中空管2の高さ方向の全域に後段に示す第2の仕切り材5bを架設する必要性から、仕切り材保持部4aを中空管2の外側面上に固設している。その一方で、後段の図10に示すように、中空管2の上部開口2a上に仕切り材保持部4aを突出させ、さらにこの突出部分にのみ仕切り材保持部4bを架設するような場合は、仕切り材保持部4aを中空管2の内側面上に固設してもよい。
【0054】
また、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、図8,9に示すように、仕切り材保持部4aに直接、固定具6を用いて複数の第2の仕切り材5bを、互いに平行に配しながら架設してもよい。あるいは、特に図示しないが、複数の第2の仕切り材5bを互いに平行に配しながら一体化してパネル状物体を形成しておき、このパネル状物体を、固定具6を用いてあるいは溶接等により仕切り材保持部4aに取設してもよい。この場合は、仕切り材保持部4aに対して第2の仕切り材5bが間接的に取設されることになる。
また、特に後者の場合のように、仕切り材保持部4aに対して第2の仕切り材5bを間接的に取設する場合は、個々の第2の仕切り材5bの取付け作業を現場で行う必要がない。この場合は、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工を容易にできるというメリットを有する。
【0055】
さらに、図8,9に示す実施例2に係る仕切り構造1Bでは、仕切り材保持部4aとしてL字型アングル材を用いる場合を例に挙げて説明しているが、L字型アングル材に代えてコ字型アングル材を用いることもできる(図示せず)。
この場合は、中空管2の外側面に固設されるコ字型アングル材の凹状溝部に、第2の仕切り材5bの両端を落とし込むことで第2の仕切り材5bの取付け作業を完了することができる。この場合は、第2の仕切り材5bを個別に、仕切り材保持部4aに対して固定具6等を用いて固定する必要がないので、第2の仕切り材5bの取付け作業を簡素化できるというメリットがある。
なお、本実施の形態に係る仕切り材保持部4aは、上述のようなL字型アングル材やコ字型アングル材に特定される必要はなく、中空管2の外側面上に取設可能であり、かつ第1の仕切り材5aを直接又は間接的に架設することができるよう構成されていれば、どのような形態であってもよい。
【0056】
ここで、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工手順について説明する(図示せず)。なお、以下に示す施工手順において各ステップに付与される数字は、各工程を区別するために付与されているため、必ずしも施工順序と一致していない。
実施例2に係る仕切り構造1Bの施工手順は、ステップS0からステップS2までは、先の実施例1に係る仕切り構造1Aの施工手順と同じである。
また、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工手順では、上述のステップS2を完了した後に、中空管2の周側面上の所望の位置に、仕切り材保持部4aを固設する(ステップS4:仕切り材保持部取設工程)。なお、中空管2に対する仕切り材保持部4aの固定方法としては、図8,9に示すような溶接(溶接部7)や、例えばボルト6a及びナット6b等からなる固定具6による固定など、目的に応じて適宜選択すればよい。
また、このステップS4は、上述のようにステップS2の完了後に行ってもよいし、先のステップS1の実施に先立って、中空管2の外側面上に予め仕切り材保持部4aを固設しておいてもよい。なお、中空管2の内側面側に仕切り材保持部4aを固設する場合は、ステップS2を実施する前に、ステップS4を実施する必要がある。
なお、ステップS2,S4をこの順序で実施する場合は、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工場所の様子を見ながら中空管2の外側面上の最適な位置に仕切り材保持部4aを取設することができる。
他方、ステップS4を実施した後にステップS2を実施する場合は、予め工場等の基礎地盤P上以外の場所で、中空管2に仕切り材保持部4aを固設することができる。この場合は、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工現場において、溶接等の作業を行う必要がないので、基礎地盤Pにおける施工作業を簡素化することができる。
そして、ステップS2又はステップS4の後に、支柱8同士の間に第1の仕切り材5aを架設するとともに、中空管2の外側面又は内側面に取設された仕切り材保持部4a同士の間に第2の仕切り材5bを架設することで(ステップS3´:仕切り材架設工程)、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工が完了する。
【0057】
上述のような実施例2に係る仕切り構造1Bによれば、支柱8,8間に架設される第1の仕切り材5aに加えて、中空管2,2間に第2の仕切り材5bが介設された新規な仕切り構造を提供することができる。よって、実施例2に係る仕切り構造1Bによれば、先の実施例1に係る仕切り構造1Aと比較して、より間仕切りとしての機能が優れた仕切り構造を提供することができる。
また、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、中空管2として特に金属製のものを用いることで、中空管2に対する仕切り材保持部4aの取設を容易にできる。これにより、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工性を向上させることができる。
【0058】
さらに、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、中空管2の端面形状を特に略円形に特定することで、中空管2の周側面のどの位置においても同じ条件で第2の仕切り材5bを取設することができるというメリットを有している。このため、中空管2の端面形状を略円形に特定することで、実施例2に係る仕切り構造1Bの施工性を良好にできるという効果を発揮させることができる。
なお、図8では、実施例2に係る仕切り構造1Bにおいて、第1の仕切り材5aと、第2の仕切り材5bとの間に隙間が形成されている。なお、実施例2に係る仕切り構造1Bでは、充填物3内への支柱8の埋設量を適宜調節することで、この隙間の広狭を自在に調節することができる。
【実施例3】
【0059】
最後に、図10を参照しながら実施例3に係る仕切り構造について詳細に説明する。
図10は本発明の実施例3に係る仕切り構造を水平方向から見た図である。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係る仕切り構造1Cは、先の図8に示す実施例2に係る仕切り構造1Bにおいて、第1の仕切り材5aと第2の仕切り材5bとの間に隙間が生じないように改良されたものである。
【0060】
実施例3に係る仕切り構造1Cは、先の実施例2に係る仕切り構造1Bにおいて、中空管2の外側面に取設される仕切り材保持部4aの上端側を、中空管2の上部開口2aを越えて鉛直上方側に突出させ、さらに、上部開口2aから突出する部分の仕切り材保持部4aにも直接又は間接的に第2の仕切り材5bを架設したものである。
上述のような実施例3に係る仕切り構造1Cによれば、中空管2の上部開口2aの鉛直上方側にも第2の仕切り材5bを配置することができる。
したがって、実施例3に係る仕切り構造1Cによれば、支柱8,8間に架設される第1の仕切り材5aと、中空管2同士間に介設される第2の仕切り材5bとの間に仕切り部材(第2の仕切り材5b又は隙間部材9)を備えた新規な仕切り構造を提供することができる。
【0061】
なお、実施例3に係る仕切り構造1Cでは、特に図示しないが、中空管2の上部開口2a上に突出する仕切り材保持部4aと、この仕切り材保持部4aの隣に立設されている支柱8の間に、第2の仕切り材5b又は平板状の隙間部材9を直接取設してもよい。しかしながら、この場合は、仕切り材保持部4a又は支柱8と、第2の仕切り材5b又は平板状の隙間部材との接続強度が不十分になる懸念がある。
このため、実施例3に係る仕切り構造1Cでは、図10に示すように、中空管2の上部開口2a上に突出する仕切り材保持部4aに、同形態のL字型アングル材からなる仕切り材保持部4bを直接(溶接等により)又は間接的に(固定具6等を用いて)固設してから、この仕切り材保持部4bと支柱8の間に隙間部材9(又は仕切り材保持部4b)を介設してもよい。この場合は、実施例3に係る仕切り構造1Cの構成要素として、新たに仕切り材保持部4bを追加する必要があるものの、中空管2の上部開口2a上に突出する仕切り材保持部4aと、この仕切り材保持部4aの隣に立設される支柱8との間への隙間部材9(又は仕切り材保持部4b)の取設を容易にでき、しかもその接続強度を向上させるという効果が発揮される。
なお、実施例3に係る仕切り構造1Cにおける仕切り材保持部4bは、L字型アングル材である必要はなく、仕切り材保持部4aと同様に、第2の仕切り材5bの取付け容易性や、取付け後の強度等を考慮して所望の形態のもの(例えば、コ字型アングル材等)を用いればよい。
【0062】
ここで、実施例3に係る仕切り構造1Cの施工手順(図示せず)について説明する。
実施例3に係る仕切り構造1Cの施工手順は、先の実施例2に係る仕切り構造1Bの施工手順とほぼ同じである。
なお、実施例3に係る仕切り構造1Cの施工手順では、先の実施例2に係る仕切り構造1Bの施工手順におけるステップS3´において、中空管2の上部開口2a上に突出する仕切り材保持部4a(及び必要に応じて仕切り材保持部4b)と、支柱8の間にも仕切り材保持部4b(又は隙間部材9)を架設すればよい(ステップS3´´:仕切り材架設工程)。
【0063】
また、特に実施例3に係る仕切り構造1Cにおいて、隣り合う中空管2同士の間隔を狭めることで、仕切り構造1Cを擁壁としても使用することができる。
さらに、実施例3に係る仕切り構造1Cを環状に配する場合は、簡易なサイロとして使用することができる。
そして、上述のような実施例3に係る仕切り構造1Cも、基礎地盤P上に単に載置されているだけなので、その撤去が容易である。つまり、実施例3に係る仕切り構造1Cの場合も、基礎が基礎地盤P中に埋設されている従来公知の仕切り構造を撤去する場合のように、基礎を地中から掘り起す作業を行う必要がない。
よって、実施例3に係る仕切り構造1Cによれば、その施工と撤去が容易な新規な仕切り構造を提供することができる。
【0064】
なお、上述のような実施例1乃至実施例3に係る仕切り構造1A~1Cに用いられる中空管2は、例えば図8に示すように、水平方向及び/又は鉛直方向に分割可能な分割線2bを備えて、複数の個片状の分割片2cに分解可能に構成されていてもよい。この場合、中空管2として特に直径及び/又は中心軸方向長さがが大きいものを使用する場合に、個々の分割片2cに分解した状態で中空管2を搬送することができ、その輸送コストを廉価にできる。
さらに、上述のような実施例1乃至実施例3に係る仕切り構造1A~1Cでは、仕切り構造全体の鉛直方向高さを高くしようとする場合に、中空管2の鉛直方向高さ(中空管2の中心軸方向長さ)を大きく設定する必要があった。
その一方で、実施例1乃至実施例3に係る仕切り構造1A~1Cでは、その形態上の理由から、中空管2の中心軸方向の長さが、中空管2の直径(最大径)を超えて大きくなるにつれて、仕切り構造1A~1Cが転倒し易くなる傾向がある。
このため、実施例1乃至実施例3に係る仕切り構造1A~1Cでは、中空管2の中心軸方向の長さを、中空管2の直径(最大径)と同等以下に設定しておくことで、仕切り構造1Aの転倒を好適に防止することができる。
【0065】
さらに、実施例1乃至実施例3に係る仕切り構造1A~1Cでは、第1の仕切り材5a及び/又は第2の仕切り材5bを統一している場合を例に挙げて説明しているが、異なる材質や特性(通気性、透光性、強度等)を有する第1の仕切り材5a又は第2の仕切り材5bを適宜組み合わせて、基礎地盤P上に間仕切りを形成してもよい。
このように目的に応じて複数種類の仕切り材を組み合わせて用いることで、仕切り構造自体の鉛直方向高さの可変性を有し、かつ間仕切りが多様な機能を備えた新規な仕切り構造1A~1Cを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように本発明は、従来公知の仕切り構造をそのまま用いて施工することができ、しかもこの従来公知の仕切り構造よりも仕切り構造全体の鉛直方向高さが高い新規な仕切り構造であり、土木、建築、屋外設備、および防災関連技術等に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1A,1A~1A,1B,1C…仕切り構造 2…中空管 2a…上部開口 2b…分割線 2c…分割片 2d…下部開口 3…充填物 3a…粒状体 3b…コンクリート 4a,4b…仕切り材保持部 5a…第1の仕切り材 5b…第2の仕切り材 6…固定具 6a…ボルト 6b…ナット 7…溶接部 8…支柱 8a…上端 8b…下端 9…隙間部材 10a…基礎 10b…基礎 11…補強板 12a…第1のコンクリート層 12b…第2のコンクリート層 13a…第1の排水孔 13b…第2の排水孔 14…ボルト 15…従来公知の仕切り構造 P…基礎地盤
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10