(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】撹拌用回転体及び撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/96 20220101AFI20230309BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20230309BHJP
【FI】
B01F27/96
B01F27/80
(21)【出願番号】P 2019080502
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2018135377
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592035154
【氏名又は名称】株式会社田定工作所
(72)【発明者】
【氏名】田 益久
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04018598(US,A)
【文献】特開平09-327388(JP,A)
【文献】米国特許第03986704(US,A)
【文献】特開平05-154368(JP,A)
【文献】特許第4418019(JP,B2)
【文献】特開昭50-037061(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152895(WO,A1)
【文献】特開2014-147883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0088244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
B01F 23/40-23/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って所定距離離間した状態で、該中心軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該中心軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、容器中に収容された撹拌対象となる流体中に浸漬され、前記中心軸線回りに回転駆動される本体と、
前記第1の端面に形成され、前記中心軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、
前記第2の端面に形成され、前記中心軸線から前記第1の距離より長く設定された第2の距離だけ離間した第2の開口と、
前記第1及び第2の開口を互いに連通する第1の流路と、
前記第1の端面に形成され、前記中心軸線から第1の距離より長く設定された第3の距離だけ離間した第3の開口と、
前記第2の端面に形成され、前記中心軸線から前記第3の距離より短く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口と、
前記第3及び第4の開口を互いに連通する第2の流路と、
を具備し、
前記本体の外周面には、前記第1乃至4の開口の何れにも連通する開口が形成されておらず、
前記第1の距離と前記第4の距離とは実質的に同一の値に設定され、
前記第2の距離と前記第3の距離とは実質的に同一の値に設定され、
前記第1及び第3の開口は、前記第1の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、
前記第2及び第4の開口は、前記第2の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、
前記本体の前記中心軸線周りの回転により、前記第1の流路内の流体に遠心力が作用して、該第1の流路内にある流体は前記第2の開口から吐出され、この吐出に伴い、前記第1の流路内が負圧となり、この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第1の開口から前記第1の流路内に吸い込まれると共に、
前記本体の回転により、前記第2の流路内の流体に遠心力が作用し、この遠心力に基づき、前記第3の開口から流体が吐出し、この吐出に伴い前記第2の流路内が負圧となり、この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第4の開口から前記第2の流路内に吸い込まれ、
前記容器内の流体は、前記第1の流路内では、前記第1の端面側から前記第2の端面側に向けて送出される状態で、また、前記第2の流路内では、前記第2の端面側から前記第1の端面側に向けて送出される状態で撹拌され、
前記容器内の流体が全体的に撹拌されるとことを特徴とする撹拌用回転体。
【請求項2】
撹拌対象となる流体が収容される容器であって、これの中心軸線に沿って延出する容器と、
この容器内を、所定の駆動軸線に沿って延出する駆動軸と、
この駆動軸を前記駆動軸線周りに回転駆動する駆動手段と、
前記容器内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体とを具備し、
前記撹拌用回転体は、
前記駆動軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該駆動軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、容器中に収容された撹拌対象となる流体中に浸漬され、該駆動軸線回りに回転駆動される本体と、
前記第1の端面に形成され、前記駆動軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、
前記第2の端面に形成され、前記駆動軸線から前記第1の距離より長く設定された第2の距離だけ離間した第2の開口と、
前記第1及び第2の開口を互いに連通する第1の流路と、
前記第1の端面に形成され、前記駆動軸線から第1の距離より長く設定された第3の距離だけ離間した第3の開口と、
前記第2の端面に形成され、前記駆動軸線から前記第3の距離より短く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口と、
前記第3及び第4の開口を互いに連通する第2の流路と、
を具備し、
前記本体の外周面には、前記第1乃至4の開口の何れにも連通する開口が形成されておらず、
前記第1の距離と前記第4の距離とは実質的に同一の値に設定され、
前記第2の距離と前記第3の距離とは実質的に同一の値に設定され、
前記第1及び第3の開口は、前記第1の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、
前記第2及び第4の開口は、前記第2の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、
前記本体の前記駆動軸線周りの回転により、前記第1の流路内の流体に遠心力が作用して、該第1の流路内にある流体は前記第2の開口から吐出され、この吐出に伴い、該第1の流路内が負圧となり、この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第1の開口から前記第1の流路内に吸い込まれると共に、
前記本体の前記駆動軸線周りの回転により、前記第2の流路内の流体に遠心力が作用し、この遠心力に基づき、前記第3の開口から流体が吐出し、この吐出に伴い前記第2の流路内が負圧となり、この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第4の開口から前記第2の流路内に吸い込まれ、
前記容器内の流体は、前記第1の流路内では、前記第1の端面側から前記第2の端面側に向けて送出される状態で、また、前記第2の流路内では、前記第2の端面側から前記第1の端面側に向けて送出される状態で撹拌され、
前記容器内の流体が全体的に撹拌されるとことを特徴とする撹拌装置。
【請求項3】
前記駆動軸線は、前記中心軸線に一致した状態で配設されていることを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体を撹拌する撹拌用回転体及び撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2種類以上の液体を混合する場合や、粉体等を水や有機溶剤等の液体に分散させる場合等に、所定の角度の翼を複数有する回転翼を設けた撹拌装置が用いられていた。
【0003】
しかし、回転翼を用いた撹拌装置では、流体中に気泡が混入しやすい、という問題があった。特に、粘度が高い流体を用いた場合には、混入した気泡が流体中から消泡するのに時間がかかる、という問題がある。また、回転翼を用いた撹拌装置では、回転翼に対して放射方向の噴流が拡散することから、粘度が高い流体を用いた場合には撹拌効率が悪い、という問題がある。
【0004】
このような問題を解決する技術として、翼を有さずに、上端が閉塞する六角筒状に形成され、側面に複数の孔を有する撹拌羽根を用いた撹拌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この撹拌装置は、下端の開口から流体を吸い込み、側面の複数の孔から吐出することで水流を発生させ、流体を撹拌する。このため、特許文献1に記載された撹拌装置は、流体中に気泡が生じるのを防止することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の撹拌装置では、以下の問題があった。即ち、特許文献1に記載された撹拌羽根を用いた撹拌装置では、高粘度の液体であっても撹拌可能であるが、下端の開口から吸い込んで側面の孔から吐出する構成であることから、流体は、撹拌羽根から下方においてより循環する。このため、上述した撹拌羽根を用いた撹拌装置では、撹拌のばらつきが生じる虞があった。
【0006】
この問題点を解決する技術として、回転軸方向に垂直な断面が円形状に構成される本体と、前記本体の表面に設けられる吸入口と、前記本体の表面に設けられる吐出口と、前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路とを備え、前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から半径方向外側の位置に配置されることを特徴とする攪拌用回転体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-154368号公報
【文献】特許第4418019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の撹拌用回転体によれば、確かに、安定した状態での撹拌が可能とはなる。しかしながら、吐出口は基部の外周面に形成される技術した開示されていない状況で、回転体の回転により発生した遠心力で、流路部内の流体は吐出口から半径方向に沿って外方に向けて吐出する一方で、この吐出に基づき流路部内は負圧となり、この負圧により、撹拌用回転体が漬け込まれた容器内の流体は、吸込口から流路部内に吸込まれる構造となっている。
【0009】
この結果、容器内においては、流路部内から吐出口を介して半径方向外方に吐出された流体が、吸込口から流路部内に吸込まれることによる循環流が発生することになる。即ち、この循環流は、吸込口が設けられた側において、強制流として機能する一方で、吸込口が設けられた側とは反対側においても、循環流は発生するが、これは強制流ではなく、強制流により副次的に発生した従動流として機能するものであり、循環水流としての力は、弱くならざるを得ない問題点が指摘されていた。
【0010】
また、吐出口が外周面に形成されているため、この撹拌体の外周面を、これが浸漬される容器の内周面に近接した状態で配置することが出来ないことになる。この結果、撹拌体における中心軸線から外周面までの距離、即ち、半径を可及的に大きく設定することができず、従って、撹拌体の撹拌力を強化するために撹拌体の半径寸法を大きくすることが困難である問題点が指摘されていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、この発明の主たる目的は、流体が収容された容器中に、撹拌用回転体を浸漬した状態で、該撹拌用回転体を回転させることにより、該容器内の流体を強く撹拌させることができる撹拌用回転体及び撹拌装置を提供することである。
【0012】
また、この発明の別の目的は、撹拌用回転体の外周面が容器の内周面に近接する状態で配設したとしても、容器内の流体を確実に撹拌させることのできる撹拌用回転体及び撹拌装置を提供することである。
【0013】
上述した目的を達成するため、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項1の記載によれば、中心軸線に沿って所定距離離間した状態で、該中心軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該中心軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、容器中に収容された撹拌対象となる流体中に浸漬され、前記中心軸線回りに回転駆動される本体と、前記第1の端面に形成され、前記中心軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、前記第2の端面に形成され、前記中心軸線から前記第1の距離とは異なる第2の距離だけ離間した第2の開口と、前記第1及び第2の開口を互いに連通する流路とを具備し、前記本体の外周面には、前記第1又は第2の開口に連通する開口が形成されていないことを特徴としている
【0014】
このように、請求項1に記載の撹拌用回転体を構成することにより、流体が収容された容器中に、撹拌用回転体を浸漬した状態で、該撹拌用回転体を回転させることにより、該容器内の流体を強く撹拌させることができることになる。
【0015】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項2の記載によれば、前記第1及び第2の端面は、各々、前記中心軸線に直交するように配設されていることを特徴としている。
【0016】
このように、請求項2に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記本体20の加工に際しての材料費、加工費を最小限に抑制することができることになる。
【0017】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項3の記載によれば、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも短く設定され、前記流路は、前記第1及び第2の開口を互いに連通する第1の流路を備えて構成され、前記本体の前記中心軸線周りの回転により、前記第1の流路内の流体に遠心力が作用して、該第1の流路内にある流体は前記第1の開口から吐出され、この吐出に伴い、前記第1の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第2の開口から前記第1の流路内に吸い込まれ、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第2の端面側から、第1の端面側に送られる状況で撹拌されることを特徴としている。
【0018】
このように、請求項3に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第2の端面側から、第1の端面側に送られ、前記本体の第1の端面側の流体は、前記本体と容器との間の空間隙を通って、前記本体の第2の端面側に戻される状況で、前記容器内の流体は確実に撹拌されることになる。
【0019】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項4の記載によれば、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも長く設定され、前記流路は前記第1及び第2の開口を互いに連通する第2の流路を備えて構成され、前記本体の前記中心軸線周りの回転により、前記第2の流路内の流体に遠心力が作用して、該第2の流路内にある液体は前記第2の開口から吐出され、この吐出に伴い前記第1の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器18中の流体が、前記第1の開口から前記第2の流路内に吸い込まれ、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第1の端面側から、第2の端面側に送られる状況で撹拌されることを特徴としている。
【0020】
このように、請求項4に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第1の端面側から、第2の端面側に送られ、前記本体の第2の端面側の流体は、前記本体と容器との間の空間を通って、前記本体の第1の端面側に戻される状況で、前記容器内の流体は確実に撹拌されることになる。
【0021】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項5の記載によれば、前記流路は、その断面形状を円形状に設定され、及び、直線状に延出することを特徴としている。
【0022】
このように、請求項5に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記流体は、最小の流路抵抗を受ける状態で、前記第1の流路内を流れることが出来ることになる。
【0023】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項6の記載によれば、前記第1の端面には、前記中心軸線から前記第1の距離より短く設定された第3の距離だけ離間した第3の開口が形成され、前記第2の端面には、前記中心軸線から前記第2の距離より長く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口が形成され、前記流路は、前記第3及び第4の開口を互いに連通する第3の流路を更に備えて構成され、前記外周面には、前記第3又は第4の開口に連通する開口が形成されておらず、前記本体の回転により、前記第3の流路内の流体に遠心力が作用し、この遠心力に基づき、前記第4の開口から流体が吐出し、この吐出に伴い前記第3の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第3の開口から前記第3の流路内に吸い込まれ、流体は第1の流路内では、前記第2の端面側から前記第1の端面側に向けて送出され、前記第3の流路内では、前記第1の端面側から第2の端面側に向けて送出される状態で、前記容器内の流体が全体的に撹拌されることを特徴としている。
【0024】
このように、請求項6に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記第1の流路内では、前記第2の端面側から第1の端面側に向けて送出され、前記第2の流路内では、前記第1の端面側から第2の端面側に向けて送出される状態で、撹拌され、容器内の流体は全体として確実に撹拌されることになる。
【0025】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項7の記載によれば、前記第3の流路は、その断面形状を円形状に設定されると共に、直線状に延出することを特徴としている。
【0026】
このように、請求項7に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記流体は、最小の流路抵抗を受ける状態で、前記第2の流路内を流れることが出来ることになる。
【0027】
また、この発明に係わる撹拌用回転体は、請求項8の記載によれば、前記第1の距離と前記第4の距離とは実質的に同一に設定され、前記第2の距離と前記第3の距離とは実質的に同一の値に設定され、前記第1及び第3の開口は、前記第1の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、前記第2及び第4の開口は、前記第2の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設されていることを特徴としている。
【0028】
このように、請求項8に記載の撹拌用回転体を構成することにより、前記第1乃至第4の開口の配設個数を効果的に増やすことが出来ると共に、生成される撹拌水流を複雑化して、より効率的な撹拌状態を達成することが出来ることになる。
【0029】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項9の記載によれば、撹拌対象となる流体が収容される円筒状の容器であって、これの中心軸線と同軸の内周面を有し、該中心軸線に沿って延出する容器と、この容器内を、所定の軸線に沿って延出する駆動軸と、この駆動軸を前記所定の軸線周りに回転駆動する駆動手段と、前記容器内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体とを具備し、前記撹拌用回転体は、前記所定の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該所定の軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、容器中に収容された撹拌対象となる流体中に浸漬され、前記所定の軸線回りに回転駆動される本体と、前記第1の端面に形成され、前記所定の軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、前記第2の端面に形成され、前記所定の軸線から前記第1の距離とは異なる第2の距離だけ離間した第2の開口と、前記第1及び第2の開口を互いに連通する流路とを備え、前記本体の外周面には、前記第1又は第2の開口に連通する開口が形成されていないことを特徴としている。
【0030】
このように、請求項9に記載の撹拌装置を構成することにより、容器内の流体を確実に撹拌することが出来るとともに、容器内に撹拌用回転体の本体を、これの外周面が容器18の内周面に近接する状態で配設したとしても、容器内の流体を確実に撹拌させることができることになる。
【0031】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項10の記載によれば、撹拌対象となる流体が収容される円筒状の容器であって、これの中心軸線と同軸の内周面を有し、該中心軸線に沿って延出する容器と、この容器内を、所定の軸線に沿って延出する駆動軸と、この駆動軸を前記所定の軸線周りに回転駆動する駆動手段と、前記容器内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられ、前記所定の軸線に沿って互いに離間した状態で複数個並設された撹拌用回転体とを具備し、前記撹拌用回転体の各々は、前記所定の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該所定の軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、容器中に収容された撹拌対象となる流体中に浸漬され、前記中心軸線回りに回転駆動される本体と、前記第1の端面に形成され、前記所定の軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、前記第2の端面に形成され、前記所定の軸線から前記第1の距離とは異なる第2の距離だけ離間した第2の開口と、前記第1及び第2の開口を互いに連通する流路とを備え、前記本体の外周面には、前記第1又は第2の開口に連通する開口が形成されていないことを特徴としている。
【0032】
このように、請求項10に記載の撹拌装置を構成することにより、複数の撹拌用回転体の本体が前記容器中に収容された前記流体中に浸漬された状態で、前記容器内の流体をより確実に且つ強力に撹拌することが出来ることになると共に、容器内に複数の撹拌用回転体を、これらの外周面が容器の内周面に近接する状態で配設したとしても、容器内の流体をより確実に且つ強力に撹拌させることが出来ることになる。
【0033】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項11の記載によれば、前記駆動軸は、前記中心軸線に一致した状態で配設されていることを特徴としている。
【0034】
このように、請求項11に記載の撹拌装置を構成することにより、前記撹拌用回転体を、最も収容効率が良い状態で、容器内に収容することが出来ることになる。
【0035】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項12の記載によれば、前記本体の外周面は、前記容器の内周面に近接するように配設されていることを特徴としている。
【0036】
このように、請求項12に記載の撹拌装置を構成することにより、前記容器に撹拌用回転体を入れ込む状況においても、この撹拌用回転体の本体の外径寸法を極大まで大きく設定することができ、第1及び第2の開口の離間距離を効果的に長く設定して、第1の流路内に発生する遠心力を強く設定することが出来ることになる。
【0037】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項13の記載によれば、前記本体の外周面は、前記容器の内周面から遠く離間するように配設されていることを特徴としている。
【0038】
このように、請求項13に記載の撹拌装置を構成することにより、このように、容器のサイズに何ら限定されること無く、撹拌用回転体を容器の流体中に漬け込んで、容器内の流体を確実に撹拌することが可能となる。また、容器内における撹拌用回転体の配設位置を、自由に設定することができ、具体的には、流体中の深さ方向位置及び半径方向位置を任意に設定しても、流体を確実に撹拌することができ、設計上の自由度が向上する。
【0039】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項14の記載によれば、前記第1及び第2の端面は、各々、前記中心軸線に直交するように配設されていることを特徴としている。
【0040】
このように、請求項14に記載の撹拌装置を構成することにより、前記本体の加工に際しての材料費、加工費を最小限に抑制する出来ることになる。
【0041】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項15の記載によれば、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも短く設定され、前記流路は、前記第1及び第2の開口を互いに連通する第1の流路から構成され、前記本体の前記中心軸線周りの回転により、前記第1の流路内の流体に遠心力が作用して、該第1の流路内にある流体は前記第1の開口から吐出され、この吐出に伴い前記第1の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第2の開口から前記第1の流路内に吸い込まれ、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第2の端面側から、第1の端面側に送られる状況で撹拌されることを特徴としている。
【0042】
このように、請求項15に記載の撹拌装置を構成することにより、前記容器内の流体は、前記撹拌用回転体の回転により、前記本体の第2の端面側から、第1の端面側に送られる状況で確実に撹拌されることになる。
【0043】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項16の記載によれば、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも長く設定され、前記流路は、前記第1及び第2の開口を互いに連通する第2の流路から構成され、前記本体の前記中心軸線周りの回転により、前記第2の流路内の流体に遠心力が作用して、該第2の流路内にある液体は前記第2の開口から吐出され、この吐出に伴い前記第2の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第1の開口から前記第2の流路内に吸い込まれ、前記容器内の流体は、前記本体の回転により、前記本体の第1の端面側から、第2の端面側に送られる状況で撹拌されることを特徴としている。
【0044】
このように、請求項16に記載の撹拌装置を構成することにより、前記容器18内の流体LQは、前記撹拌用回転体12の回転により、前記本体20の第1の端面20A側から、第2の端面20B側に送られる状況で確実に撹拌されることになる。
【0045】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項17の記載によれば、前記流路は、その断面形状を円形状に設定され、及び、直線状に延出することを特徴としている。
【0046】
このように、請求項17に記載の撹拌装置を構成することにより、前記流体LQは、最小の流路抵抗を受ける状態で、前記第1の流路内を流れることが出来ることになる。
【0047】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項18の記載によれば、前記第1の端面には、前記中心軸線から前記第1の距離より短く設定された第3の距離だけ離間した第3の開口が形成され、前記第2の端面には、前記中心軸線から前記第2の距離より長く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口が形成され、前記流路は、前記第3及び第4の開口を互いに連通する第3の流路を更に備えて構成され、前記外周面には、前記第3及び第4の開口に連通する開口が形成されておらず、前記本体の回転に伴い前記第3の流路内の流体に遠心力が作用し、この遠心力に基づき、前記第4の開口から流体が吐出し、この吐出に伴い前記第3の流路内が負圧となり;この負圧に基づき、前記容器中の流体が、前記第3の開口から前記第3の流路内に吸い込まれ、前記容器18内の流体は、前記本体の回転により、前記第1の流路内では、前記第2の端面側から前記第1の端面側に向けて送出され、前記第3の流路内では、前記第1の端面側から第2の端面側に向けて吐出される状態で、前記容器内の流体が全体的に撹拌されることを特徴としている。
【0048】
このように、請求項18に記載の撹拌装置を構成することにより、前記容器内の流体は、前記撹拌用回転体の回転により、前記第1の流路内では、前記第2の端面側から第1の端面側に向けて送出され、前記第3の流路内では、前記第1の端面側から第2の端面側に向けて送出される状態で撹拌され、容器内の流体は確実に撹拌される効果を奏することができる。
【0049】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項19の記載によれば、前記第3の流路は、その断面形状を円形状に設定され、及び、該第2の流路は直線状に延出することを特徴としている。
【0050】
このように、請求項19に記載の撹拌装置を構成することにより、前記流体LQは、最小の流路抵抗を受ける状態で、前記第3の流路内を流れることが出来ることになる。
【0051】
また、この発明に係わる撹拌装置は、請求項20の記載によれば、前記第1の距離と前記第4の距離とは同一に設定され、前記第2の距離と前記第3の距離とは同一の値に設定され、前記第1及び第3の開口は、前記第1の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設され、前記第2及び第4の開口は、前記第2の端面上において、互いに入れ子状態で等角度的に複数配設されていることを特徴としている。
【0052】
このように、請求項20に記載の撹拌装置を構成することにより、前記第1乃至第4の開口の配設個数を効果的に増やすことが出来ると共に、生成される撹拌水流を複雑化して、より効率的な撹拌状態を達成することが出来ることになる。
【発明の効果】
【0053】
この発明によれば、流体が収容された容器中に、撹拌用回転体を浸漬した状態で、該撹拌用回転体を回転させることにより、該容器内の流体を強く撹拌させることができる撹拌用回転体及び撹拌装置が提供されることになる。
【0054】
また、この発明によれば、撹拌用回転体の外周面が容器の内周面に近接する状態で配設したとしても、容器内の流体を確実に撹拌させることのできる撹拌用回転体及び撹拌装置が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】 この発明の第1の実施形態に係る撹拌装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示す撹拌装置に用いられる撹拌用回転体の構造を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は底面図、(C)は撹拌用回転体に形成される流路の断面形状を示す断面図である。
【
図3】 この発明の第2の実施形態に係わる撹拌装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図3に示す撹拌装置に用いられる撹拌用回転体の構造を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は底面図である。同撹拌用回転体の構成を示す平面図。
【
図5】 この発明の第3の実施形態に係わる撹拌装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図6】
図5に示す撹拌装置に用いられる撹拌用回転体の構造を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は底面図である。
【
図7】 この発明の第4の実施形態に係わる撹拌装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図8】 この発明の第5の実施形態にかかわる撹拌装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図9】 この発明に関わる撹拌用回転体の一変形例の構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の第1の実施形態に係る撹拌装置10を、
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。
【0057】
図1は第1の実施形態(第1の実施例)に係る撹拌装置10の構成を模式的に示す正面図であり、
図2は撹拌装置10に用いられる撹拌用回転体12の構成を取り出して示す図であり、詳細には、
図2(A)は撹拌用回転体12の縦断面形状を、そして、
図2(B)は撹拌用回転体12の底面形状を示している。
【0058】
図1に示すように、第1の実施例の撹拌装置10は、回転駆動モータを備えた駆動装置14と、この駆動装置14により中心軸線CA(この実施例では垂直軸線に沿って延出している。)周りに回転駆動される回転軸16と、この回転軸16の図中下端にこれを一体回転するように同軸に取り付けられた撹拌用回転体12と、を備えている。
【0059】
撹拌装置10は、この実施例においては、細長い容器18内に貯留された流体としての液体LQ中に、撹拌用回転体12を浸漬した状態で配置しており、駆動装置14により撹拌用回転体12を回転させることで、液体LQを撹拌するように構成されている。この撹拌装置10は、容器18の上面に固定されるか、又は、使用者によって把持可能に構成されている。尚、この容器18は、上端面が開放され、中心軸線に沿って細長く延出する状態で形成されており、第1の半径r1の内周面18Aを備えている。尚、この第1の実施例においては、液体LQとして、2液以上の塗料液の混合体が採用されるが、液体LQとしてこのような構成に限定されること無く、1液の塗料に光輝材等の粉体が混合されたものでもよく、要は、混合して均質化を目指す流体であれば、何でも良い。
【0060】
撹拌用回転体12は、
図2に示すように、円板状の本体20を備え、この本体20は、中心軸線CAに直交する面に沿うと共に、互いに所定間隔だけ離間して設けられた上下一対の端面20A、20B(図中下側の端面を第1の端面として符号20Aで示し、図中上側の端面を第2の端面として符号20Bで示す。)と、第1及び第2の端面20A,20Bの外周縁を互いに連結し、中心軸線CAから第2の半径r2の外周面20Cとを備えて構成されている。この本体20は、ステインレス鋼等のSUS材やアルミニウム等の金属材料から形成されているものであるが、これに限定されること無く、PP、PTFE若しくはMCナイロン等の合成樹脂材料により形成されることが出来ることは、言うまでも無い。
【0061】
ここで、この実施例においては、撹拌用回転体12の本体20の外周面20Cの第2の半径r2は、上述した容器18の内周面20Aの第1の半径r1よりも、僅かに小さな値に設定されている。換言すれば、この実施例において、撹拌用回転体12の本体20の外周面20Cは、容器18の内周面18Aに近接する状態で、容器18内に入れられているものである。
【0062】
即ち、本体20の外周面20Cと容器18の内周面18Aとの間には、間隙g(=r1-r2)が存在しているが、この間隙gは、この実施例においては、本体20の回転に伴い、これの外周面20Cに触れる液体LQに発生する境界層の厚さよりも僅かに大きな値となるように設定されている。尚、この境界層の厚さは、撹拌用回転体12の回転速度及び液体LQの粘度等により定まるものであり、換言すれば、撹拌用回転体12の本体20のサイズは、これの回転速度及び撹拌対象としての液体LQの粘度等により予め計算される間隙gを考慮して、設計されるものである。
【0063】
特に、この間隙gの設定においては、これが本体20の外周面20C上に規定される境界層の厚さよりも小さく設定されると、この間隙gを液体LQが通る(通過する)ことが阻害され、一種の液体シールが規定されてしまうことになる。この結果、容器18内に貯留された流体LQが、この撹拌用回転体12により上下に分断されて、詳細は後述するが、撹拌用回転体12回転に伴い、撹拌用回転体12の上側に位置する液体LQが撹拌用回転体12の下側に吐出される状態で、間隙gを通っての上側に戻る流れが阻止されることになるので、容器18内の液体LQの撹拌と言う観点においては、好ましくないことは言うまでも無い。
【0064】
一方、この間隙gの設定において、上記流体シールの発生阻止の観点から、この間隙gの値を大きく設定してしまうと、必然的に、撹拌用回転体12の本体20の第2の半径r2が相対的に小さな値とせざるを得ない状況となる。この第2の半径r2が小さくなると、これも後述する点であるが、本体20に形成される第1の流路22の半径方向に沿う長さが制限されて、この結果、撹拌用回転体12の回転に伴い第1の流路22に作用する遠心力が、第2の半径r2を最大限に設定する場合と比較して相対的に弱くなってしまい、従って、撹拌力が弱まることとなり、好ましくないことは言うまでも無い。このように、間隙gの値の設定には、この実施例においては、上述した境界層の厚さより僅かに大きな値とすることが好適するものである。
【0065】
ここで、
図2に示すように、上述した撹拌用回転体12の本体20の、第1の端面としての下側端面20Aには、複数の第1の開口22、この実施例では、8個の下側開口22が形成され、第2の端面としての上側端面20Bにも、下側開口22と同数の8個の上側開口24が第2の開口として形成されている。
【0066】
また、本体20の中心部には、中心軸線CAに沿って上下方向に貫通した状態で、上述した回転軸16が緊密に嵌入される挿通穴26が形成されている。尚、回転軸16が挿通穴26に嵌入された状態で、図示しない結合機構を介して、回転軸16と本体20とは一体的に結合され、回転軸16の回転に応じて撹拌用回転体12は一体回転するように設定されている。尚、結合機構はこの発明の要旨とは無関係であるので、これ以上の説明を省略する。
【0067】
下側開口22の各々は、中心軸線CAから第1の距離d1に中心位置があって、下側端面20Aの外周部において等角度的に配置されている。換言すれば、8つの下側開口22の中心位置は、半径d1の円周線上に等角度的に位置しているものである。また、上側開口24の各々は、中心軸線CAから上記した第1の距離d1とは異なるとともに、この実施例では第1の距離d1よりも短い第2の距離d2に中心位置があって、上側端面20Bの内周部において等角度的に配置されている。換言すれば、8つの上側開口24の中心位置は、半径d2の円周線上に等角度的に位置しているものである。
【0068】
上下一対の開口22,24は、
図2(A)に示すように、軸方向に沿う高さ位置は異なるものの、
図2(B)に示すように、平面視においては、本体20の同一直径上に位置するように配置されている。このように各対の開口22,24は、
図2(A)に再び示すように、第1の流路28により互いに連結されている。このような構成において、撹拌用回転体12が中心軸線CA周りに回転駆動されると、第1の流路28内に充填されている液体LQに遠心力が作用する。ここで、中心軸線CAより遠い位置にある下側開口22に作用する遠心力は、中心軸線CAより近い位置にある上側開口24に作用する遠心力よりも強いものとなる。
【0069】
この結果、第1の流路28内の液体LQは、この遠心力を受けて、下側開口22から外方に吐出されて、容器18内に戻されることになる。この観点から、下側開口22は吐出口として機能するものである。一方、容器18内において本体20よりも上側に位置する液体LQは、流路28内から液体LQが下側開口(吐出口)22から吐出されることにより、流路28内が負圧となり、この負圧に基づき、流路28内に引き込まれることになる。この観点から、上側開口24は吸込口として機能するものである。
【0070】
そして、第1の流路28は、
図2(A)に示すように、下側開口(吐出口)22とこれに対応する上側開口(流入口)24とを直線状に連続する空間により構成されているものであり、その断面形状は、
図2(C)に示すように、円形状となるように設定されている。このように第1の流路28の形状を設定することにより、流路28内を通る液体LQへの流路抵抗は効果的に低いものとなる。尚、第1の流路28が連通する下側開口(吐出口)22及び上側開口(吸込口)24は、
図2(B)において楕円形状として示されているが、これは、上述したように第1の流路28の断面形状が円形に設定されている結果として楕円形状を呈しているまでで、必須要件は、第1の流路28の断面形状が円形であることであり、開口部における楕円形状は、その結果でしかない。
【0071】
また、上述したように第1の流路28は、直線状に延出するように構成されているので、本体20にエンドミル等の機械的加工によって簡単に形成され、本体20の中心軸線CA方向に対して傾斜すると共に、平面視において、この中心軸線CAからの放射状に延出するものである。
【0072】
以上のように、この第1の実施例の撹拌装置10及び撹拌用回転体12は構成されているので、駆動装置14が起動して回転軸16を中心軸線CA回りに回転駆動することにより、この回転軸16と一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体12も、容器18内で液体LQ中に浸漬された状態で、中心軸線CA回りに回転駆動されることになる。この結果、第1の流路28内に充填されている液体LQに、下側開口22(吐出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第1の流路28内の液体LQは、この遠心力を受けて、下側開口22から外方に吐出されて容器18内に戻されることになる。一方、容器18内において本体20よりも上側に位置する液体LQは、第1の流路28内から液体LQが下側開口(吐出口)22から吐出されることにより、第1の流路28内が負圧となり、この負圧に基づき、第1の流路28内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12の上側開口(流入口)22から流路28内に流入し、第1の流路28内を通って、下側開口(吐出口)22から容器18内に戻されて、対流を発生させることになる。
【0073】
尚、下側開口(吐出口)22から容器18内に戻された液体LQにより撹拌用回転体12の下側の容器18内では、液体LQの容量が増すことになるが、この増量した分の液体LQは、内部の圧力を増大させることとなり、この圧力増大に基づき、撹拌用回転体12の外周面20Cと容器18の内周面18Aとの間の隙間gを通って、撹拌用回転体12の上側の容器18内に戻されて、対流を発生させることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、撹拌用回転体12により上下に分割された状態となるが、撹拌用回転体12の回転に伴い、第1の流路28を通って撹拌用回転体12の上側から下側に移動され、隙間gを通って、撹拌用回転体12の下側から上側に移動され、このようにして、液体LQの対流が発生して容器18内の液体LQは全体的に撹拌されることになる。
【0074】
このように、液体LQは撹拌用回転体12の回転に伴い容器18内で撹拌され、この液体LQが2液(又は2相)以上の場合において、撹拌によりよく混ざり合い、一液化(単相化)されることになるし、この液体LQが一液に粉体が混入している場合であって、この粉体が難溶性の場合でも、粉体の混入濃度の均質化が図られることになるし、この粉体が可溶性の場合には、粉体の液体LQへの溶け込みの促進化と、粉体が溶け終わったあとの液体LQの濃度の均質化とが合わせて達成されることになる。
【0075】
また、上記撹拌動作時には、第1の流路28の流入口を構成する上側開口24(流入口)が、撹拌用回転体12の本体20の上側端面20Bに対して直交する状態で配設されている構成と比較すれば、この実施例では第1の流路28が斜めに開口し、この結果、開口部に鋭利なエッジを備える構成となっている。この結果、この第1の流路28に流入する液体LQは、上側開口24(流入口)の鋭利なエッジにより剪断を受けることになり、液体LQの撹拌効率が向上することになる効果を合わせて達成すること出来るものである。
【0076】
更に、上記撹拌動作時において、容器18内の撹拌用回転体12よりも下方にある液体LQは、上述したように、隙間gを通って、撹拌用回転体12より上方に移動させられることになるが、この隙間gを通る過程において、隙間gは静止している容器18の内周面18Aと、中心軸線CA回りに回転している撹拌用回転体12の本体20の外周面20Cとの間の空間で規定されているので、相対運動している両面18A及び20Cとの間の狭い空間で、上記エッジに基づく剪断力とは異なる剪断力を受けることになり、この観点で、液体LQに粉体が混入している状態でも、この粉体が剪断力により効果的に破壊されたり、削られたりして、粉体の液体LQ中への溶け込みが促進されると共に、濃度の均質化が促進され、結果として、撹拌効率が向上することになる効果が、更に強力に達成されることになる。
【0077】
この結果の応用として、例えば、撹拌用回転体12の本体20の外周面20Cを、粗面化することにより、上述したような液体LQに粉体が混入している状態においては、この粉体が粗面化された外周面20Cと内周面18Aとの間で、更に強力な剪断力を受け、さらに効果的に破壊されたり、削られたりして、粉体の液体LQ中への溶け込みが促進される効果が達成されることになる。
【0078】
また、この実施例においては、容器18は細長い形状、例えばパイプ材から構成されており、遠心力の確保のためには、吐出口として機能する下側開口22を中心軸線CAから遠い位置に設定しなければならないものである。このためには、撹拌用回転体12の本体20の外周面20Cの半径r2を長く設定することが好ましい。他方、これにより、上述した隙間gの値を効果的に狭く設定することが要求されることになる。仮に、この吐出口としての開口の配設位置を、最も中心軸線CAから離れた位置に設定しようとすると、これは、本体20の外周面20Cに形成するしかなく、この場合、隙間gが狭く設定されている状況において、この外周面20Cに形成された開口から液体が吐出することが、吐出口に近接する容器18の内周面18Aにより阻害され、逆に、流路28内を液体LQが流通できない状態となり、従って、実質的に撹拌が出来ない状況が発生することになる。
【0079】
このような状況において、この実施例では、吐出口として機能する開口22は、下方が大きく開放された本体20の下側端面20Aに形成されているので、液体LQがこの吐出口22から吐出される状態において、容器18の内周面18Aが阻害要因となることは無く、極めてスムースに吐出口22から吐出されることとなり、撹拌効率が良好に維持されることになる。
【0080】
この発明は、上述した実施例の構成及び数値等に何ら限定されること無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形可能であることは言うまでも無い。
【0081】
例えば、上述した実施例においては、第2の開口としての上側開口24の各々は、中心軸線CAから第1の距離d1とは異なるとともに、この実施例では第1の距離d1よりも短い第2の距離d2に設定されているように説明したが、この発明は、このような構成に限定されること無く、
図3及び
図4に第2の実施例として示すように、第1の距離d1を第2の距離d2よりも長く構成することが出来るものである。以下に、
図3及び
図4を参照して、第2の実施例の撹拌装置10b及び撹拌用回転体12bを説明するが、以下の説明において、上述した第1の実施例と同一の部分に関しては、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
先ず、この第2の実施例において上述した第1の実施例と異なる点は、第1の距離d1と第2の距離d2との関係である。即ち、この第2の実施例においては、第1の下側開口22bの各々は、中心軸線CAから上述した第1の距離d1よりも「短い」第3の距離d3だけ離れた内周位置に設定され、第2の上側開口24bの各々は、中心軸線CAから上記した第2の距離d2とは異なると共に、第2の距離d2よりも「長い」第4の距離d4だけ離れた外周位置に設定されている点である。
【0083】
この結果、この第2の実施例においては、上下一対の開口22b,24bは、
図4(A)に示すように、軸方向に沿う高さ位置は異なるものの、
図4(B)に示すように、平面視においては、本体20の同一直径上に位置するように配置されている。また、各対の開口22b,24bは、
図4(A)に再び示すように、両者が第2の流路28bにより互いに連結されている。このような構成において、撹拌用回転体12bが中心軸線CA周りに回転駆動されると、第2の流路28b内に充填されている液体LQに遠心力が作用する。ここで、中心軸線CAより遠い位置にある上側開口24bに作用する遠心力は、第1の実施例とは逆に、中心軸線CAに近い位置にある下側開口22bに作用する遠心力よりも強いものとなる。
【0084】
この結果、第2の流路28b内の液体LQは、この遠心力を受けて、上側開口24bから外方に吐出されて、容器18内に戻されることになる。この観点から、この第2の実施例においては、第2の上側開口24bは吐出口として機能するものである。一方、容器18内において本体20よりも下側に位置する液体LQは、第2の流路28b内から液体LQが第2の上側開口(吐出口)24bから吐出されることにより、第2の流路28b内が負圧となり、この負圧に基づき、第2の流路28b内に引き込まれることになる。この観点から、第1の下側開口22bは吸込口として機能するものである。
【0085】
そして、第2の流路28bは、
図4(A)に示すように、第1の下側開口(吸込口)22bとこれに対応する第2の上側開口(吐出口)24bとを直線状に連続する空間により構成されているものであり、その断面形状は、第1の実施例において
図2(C)に示すように、円形状となるように設定されている。このように第2の流路28bの形状を設定することにより、第2の流路28b内を通る液体LQへの流路抵抗は効果的に低いものとなる。尚、第2の流路28bが開口する第2の上側開口(吐出口)24b及び第1の下側開口(吸込口)22bは、
図4(B)において楕円形状として示されているが、これは、上述したように第2の流路28bの断面形状が円形に設定されている結果として楕円形状を呈しているまでであることは、第1の実施例と同様である。
【0086】
以上のようにこの第2の実施例の撹拌装置10b及び撹拌用回転体12bは構成されているので、撹拌用回転体12bが、容器18内で液体LQ中に浸漬された状態で、中心軸線CA回りに回転駆動されることにより、第2の流路28b内に充填されている液体LQに、上側開口22b(流出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第2の流路28b内の液体LQは、この遠心力を受けて、上側開口22bから外方に吐出されて容器18内に戻され、一方、容器18内において本体20よりも下側に位置する液体LQは、第2の流路28b内から液体LQが上側開口(吐出口)24bから吐出されることになり、この結果、第2の流路28b内が負圧となり、この負圧に基づき、第2の流路28b内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12bの下側開口(吸込口)24bから流路28b内に吸込まれ、この第2の流路28b内を通って、上側開口(吐出口)24bから容器18内に戻されて、容器18内に対流を発生させることになる。
【0087】
このようにして、この第2の実施例においても、容器18内の液体LQは、これに浸漬された撹拌用回転体12bの回転に伴い、確実に撹拌されるという同様の効果を奏することが出来るものである。
【0088】
尚、上述した第1の実施例においては、容器18の内周面18Aと本体20の外周面20Cとの間の間隙gの設定において、上記流体シールの発生阻止の観点から、この間隙gの値を境界層の厚みより大きく設定されるように説明したが、逆に、間隙gを境界層の厚みの値より小さい値として、液体シールを発生させることも可能となる。
【0089】
このように、間隙gの値を、境界層の値よりも小さい値に設定することにより、この間隙gを通っての流体LQの流通が阻止されることとなり、この結果、本体20の下側の第1の端面20A側から、上側の第2の端面20B側に、第2の流路28bを介してもたらされた流体LQは、本体20よりも下方に戻ることが出来ない事態となる。このようにして、この撹拌装置10bは、容器18内の流体LQの撹拌をすると同時に、流体LQを図中上方に向けて送り出す、「軸流ポンプ」としての機能を果たすことができることになる新たな効果が奏せられることになる。
【0090】
尚、勿論、上述した第1の実施例において、間隙gを境界層の厚さより小さい値に設定することにより、この間隙gを通っての流体LQの流通が阻止されてしまい、この結果、本体20の上側の第2の端面20B側から、下側の第1の端面20A側に、第2の流路28bを介してもたらされた流体LQは、本体20よりも上方に戻ることが出来ない事態となる。ここで、容器18の下部に送り出し用のパイプ(図示せず)を接続しておくことにより、この撹拌装置10は、容器18内の流体LQを撹拌しつつ、図中下方に向けて送り出し、パイプを介して容器18外に取り出す、「軸流ポンプ」としての機能を果たすことができることになることは、言うまでもない。
【0091】
また、この発明は、上述した第1及び第2の実施例の構成に限定されること無く、
図5及び
図6に第3の実施例として示すように構成することが出来るものである。以下に、
図5及び
図6を参照して、第3の実施例の撹拌装置10c及び撹拌用回転体12cを説明するが、以下の説明において、上述した第1及び第2の実施例と同一の部分に関しては、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0092】
この第3の実施例の撹拌用回転体12cは、
図5に示す通り、第1の実施例における第1の下側開口(吐出口)22と第1の上側開口(吸込口)24と共に、第2の実施例における第2の下側開口(吸込口)22bと第2の上側開口(吐出口)24bとに対応した第3の下側開口(吸込口)22cと第3の上側開口(吐出口)24cを合わせて備えている。具体的には、
図6(B)に示すように、全部で8対の内、4対の下側開口22と上側開口24とは、周方向に沿って等角度的に、即ち、90度置きに配設され、残り4対の下側開口22cと上側開口24cとは、同様に周方向に沿って等角度的に、即ち、90度置きに配設されつつ、4対の下側開口22と上側開口24との丁度真ん中に位置するように配設されている。そして、各対の下側開口22cと上側開口24cとは、第3の流路28cにより、互いに連結されている。
【0093】
このように第3の実施例を構成することにより、再び
図5に示すように、撹拌用回転体12cが、容器18内で液体LQ中に浸漬された状態で、中心軸線CA回りに回転駆動されることにより、第1の実施例と同様に、第1の流路28内に充填されている液体LQに、下側開口22(吐出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第1の流路28内の液体LQは、この遠心力を受けて、下側開口22から外方に吐出されて容器18内に戻されることになる。一方、容器18内において本体20よりも上側に位置する液体LQは、第1の流路28内から液体LQが下側開口(吐出口)22から吐出されることにより、第1の流路28内が負圧となり、この負圧に基づき、第1の流路28内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12cの上側開口(吸込口)24から第1の流路28内に流入し、この第1の流路28内を通って、下側開口(吐出口)22から容器18内に戻されて、撹拌水流を発生させることになる。
【0094】
更に、この第3の実施例に拠れば、上述した第2の実施例と同様に、第3の流路28c内に充填されている液体LQに、上側開口(吐出口)24cから吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第3の流路28c内の液体LQは、この遠心力を受けて、上側開口24cから外方に吐出されて容器18内に戻され、一方、容器18内において本体20よりも下側に位置する液体LQは、第3の流路28c内から液体LQが上側開口(吐出口)24cから吐出されることにより、第3の流路28c内が負圧となり、この負圧に基づき、第3の流路28c内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12の下側開口(吸込口)24cから第3の流路28c内に流入し、この第3の流路28c内を通って、上側開口(吐出口)24cから容器18内に戻されて、容器18内に対流を発生させることになる。
【0095】
このようにして、この第3の実施例においては、容器18内の液体LQは、これに浸漬された撹拌用回転体12cの回転に伴い、この撹拌用回転体12cの2種類の流路28、28cを通って、これの上側から下側に、また、下側から上側に流れさせることにより、容器18内の液体LQは確実且つ強力に撹拌されるという効果を奏することが出来るものである。
【0096】
また、この第3の実施例においては、撹拌体12cの上下両側で、液体LQは、遠心力が作用した力のある吐出流で撹拌されることになるので、この撹拌体12cの容器18内での高さ位置、換言すれば、液体LQ中での深さ位置が変わっても、撹拌体12cの上下両側で撹拌力に差が生じることが無く、撹拌体12cの高さ位置(深さ位置)を自由に設定することができる特有の効果を奏する事ができるものであり、これにより、設計上の自由度が向上することとなる。
【0097】
尚、この第3の実施例においては、第1の距離d1は第4の距離d4と同一に、また、第2の距離d2は第3の距離d3と、同一に設定され、また、第1の距離d1は第3の距離d3よりも大きな値に、また、第4の距離d4は第2の距離d2よりもおきな値に、夫々設定されている。しかしながら、この発明は、このような設定に限定されること無く、第1の距離d1と第4の距離d4とは、第1の距離d1は第3の距離d3よりも大きな値に、また、第4の距離d4は第2の距離d2よりもおきな値に、夫々設定されていれば、同一である必要は無く、異なる値となっていても良いものである。
【0098】
更に、この発明は、上述した第1乃至第3の実施例の構成に限定されること無く、
図7に第4の実施例として示すように構成することが出来るものである。以下に、
図7を参照して、第4の実施例の撹拌装置10d及び撹拌用回転体12d,12eを説明するが、以下の説明において、上述した第1乃至第3の実施例と同一の部分に関しては、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0099】
即ち、上述した第1乃至第3の実施例においては、撹拌装置10は単一の撹拌用回転体12、12b、12cを備えるように、換言すれば、回転軸16には、1個の撹拌用回転体12,12b、12cが取り付けられている構造として説明したが、
図7に示すように、この第4の実施例においては、回転軸16には、複数の、例えば2個の撹拌用回転体12d、12eを取り付けるように構成してもよいものである。また、この第4の実施例では、両撹拌用回転体12d,12eの各々の本体20の外周面20Cと、容器18の内周面18Aとの隙間gは、境界層の厚さより狭く設定され、所謂「液体シール」が形成される状態にあるものとする。即ち、角撹拌用回転体12d,12eと容器18との間において、液体LQの流通は阻止されているものとする。ここで、この第4の実施例における2個の撹拌用回転体12d,12eは、各々、上述した第2の実施例における撹拌用回転体12bと同一構成となっている。
【0100】
このように、この第4の実施例の撹拌装置10dは構成されているので、2個の撹拌用回転体12d、12eが、容器18内で液体LQ中に共に浸漬された状態で、中心軸線CA回りに回転駆動されることにより、下方の撹拌用回転体12dにおいては、第2の流路28b内に充填されている液体LQに、上側開口24b(吐出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第2の流路28b内の液体LQは、この遠心力を受けて、上側開口24bから両撹拌用回転体12d,12eの間に位置する空間に向けて吐出されることになる。
【0101】
また、第2の流路28b内にある液体LQが上側開口(吐出口)24bから吐出されることにより、第2の流路28b内が負圧となり、この負圧に基づき、容器18内において下方の撹拌用回転体12dよりも下側に位置する液体LQは、第2の流路28b内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12dの下側開口(吸込口)22bから第2の流路28b内に流入し、この第2の流路28b内を通って、上側開口(吐出口)24bから容器18内の両撹拌用回転体12d,12eの間の空間に戻されて、容器18内に対流を発生させると共に、下方の撹拌用回転体12dの下方の液体LQを、これの上側に移送させることができることになる。
【0102】
更に、上方の撹拌用回転体12eにおいては、第2の流路28b内に充填されている液体LQに、上側開口24b(吐出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第2の流路28b内の液体LQは、この遠心力を受けて、上側開口24bから上側の撹拌用回転体12eの上方に位置する空間に向けて吐出されることになる。
【0103】
また、上方の撹拌用回転体12eの第2の流路28b内にある液体LQが上側開口(吐出口)24bから吐出されることにより、第2の流路28b内が負圧となり、この負圧に基づき、容器18内において両撹拌用回転体12d,12eの間に位置する液体LQは、第2の流路28b内に引き込まれることになる。このようにして、容器18内の液体LQは、図中矢印で示すように、回転する撹拌用回転体12dの下側開口(吸込口)22bから第2の流路28b内に流入し、この第2の流路28b内を通って、上側開口(吐出口)24bから容器18内の上側撹拌用回転体12eの上方の空間に移送されると共に、容器18内に対流を発生させることになる。
【0104】
このようにして、この第4の実施例においても、容器18内の液体LQは、これに浸漬された撹拌用回転体12d,12eの回転に伴い、確実に撹拌されると共に、順次図中上方に向けて移送させるという所謂「軸流ポンプ」的な作用を達成する効果を奏することが出来ることになる。従って、例えば、下方の撹拌用回転体12dよりも下側の容器18内に、図示しない液体供給源から液体が供給され続けられる状態にあっては、両撹拌用回転体12d,12eの回転に伴い、液体は容器18内を順次、下側の撹拌用回転体12dの下方から、上側の撹拌用回転体12eの上方まで運ばれる状況となり、容器18の上面が開放されていれば、この開放上面から溶液LQは溢れ出ることになるし、又は、この容器18の上面が更に別のリザーバー(図示せず)に連結されていれば、このリザーバーまで搬出されることになる。
【0105】
また、上述した第4の実施例においては、複数の撹拌用回転体として2個の撹拌用回転体12d,12eを備えるように説明したが、この発明は、このような数値に何ら限定されること無く、多数の撹拌用回転体を備えるようにしてもよいことは言うまでもない。即ち、容器18が細長く、例えば2mを越える全長を有する細長い容器である場合には、容器の内径寸法や液体LQの粘度にも拠るが、例えば10個の撹拌用回転体を回転軸16に取り付ける構成とすることも可能であることは言うまでもない。
【0106】
また、上述した実施例においては、容器18に充填する撹拌対象として液体LQを用いるように説明したが、この発明は、このような撹拌対象に限定されること無く、例えば、粘性流体や粘弾性流体等の流体を撹拌対象とすることが出来ることは、言うまでもない。特に、上述した実施例においては、流路28、28b、28cの吐出口は、撹拌用回転体12の本体20の下側端面20Aか上側端面20Bの何れかに開口されており、外周面20Cには開口されてないものである。従って、液体LQが吐出口から吐出される状態において、本体20の外周面20Cに近接する容器18の内周面18Aが、液体LQの吐出に対して何ら阻害要因とならないものであり、この結果、間隙gが小さい状況であっても、粘度の高い液体LQを撹拌することが容易に達成されえるものである。
【0107】
また、上述した実施例においては、撹拌用回転体12の本体12の外周面20Cを、これが収納される容器18の内周面18Aに近接するように説明したが、この発明は、このような構成に限定されること無く、
図8に第5の実施例として示すように、拌用回転体12の本体12の外周面20Cを、これが収納される容器18の内周面18Aから遠く離れた(即ち、間隙gを大きく設定する)状態となるように構成すること出来るものである。
【0108】
このように、間隙gを大きく設定した場合においても、下側開口(吐出口)22から容器18内に戻された液体LQにより撹拌用回転体12の下側の容器18内では、液体LQの対流、即ち、撹拌水流が発生することになるが、この撹拌水流に基づき、撹拌用回転体12の本体20と容器18との間の空間でも、また、撹拌用回転体12の上方の空間でも、副次的な撹拌水流が生成されることになる。このように、容器18内の液体LQは、撹拌用回転体12により上下に分割された状態となるが、撹拌用回転体12の回転に伴い、撹拌用回転体12の全周囲において液体LQの対流が発生して容器18内の液体LQは全体的に撹拌されることになる。
【0109】
更に、撹拌用回転体12の周囲に、大きなスペースが確保されることになるので、容器18のサイズに何ら限定されること無く、撹拌用回転体12を容器18の流体LQ中に漬け込んで、容器18内の流体LQを確実に撹拌することが可能となる。また、容器18内における撹拌用回転体12の配設位置を、自由に設定することができ、具体的には、流体LQ中の深さ方向位置及び半径方向位置を任意に設定しても、流体を確実に撹拌することができ、設計上の自由度が向上する効果を奏する事ができる。
【0110】
また、上述した実施例においては、平面視で、対を成す下側開口22(22b)と上側開口24(24b)とは、中心を通る直径上に位置するように配設されるよう説明したが、この発明はこのような構成に限定されること無く、
図9に一変形例として示すように、対を成す下側開口22(22b)と上側開口24(24b)とは、中心を外れた軸線上にオフセットされた状態で配設されるようにしてもよいことは、言うまでもない。このようにオフセット配置することにより、対を成す下側開口22(22b)と上側開口24(24b)との中心位置間の距離を可及的に長く設定することができることとなり、これにより、撹拌用回転体12の回転に伴う流路28(28b)内の液体LQに対する遠心力を高められる効果を得ることが出来ることになる。
【0111】
また、上述した一変形例では、対を成す下側開口22(22b)と上側開口24(24b)とは、平面視において、両方の中心位置を結ぶ線分が、本体20の直径に対して所定確度傾斜した傾斜配置となるものである。このように、対を成す下側開口22(22b)と上側開口24(24b)とを傾斜配置することにより、流入口の端縁が鋭利なエッジ状に形成されることとなり、流入口から流路中に流入する液体に対して、傾斜配置していない状況と比較して、液体に対する剪断力を更に強く作用させる効果を得ることが出来ることになる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上詳述したように、この発明は、流体が収容された容器中に、撹拌用回転体を浸漬した状態で、該撹拌用回転体を回転させることにより、該容器内の流体を撹拌させることができると共に、容器の形状に関係なく、容器内の流体を確実に撹拌させることのできる撹拌用回転体及び撹拌装置を提供することであり、塗料の撹拌、めっき液の撹拌、液状食品の撹拌、化学薬品の撹拌等で、その撹拌の結果としての均一性が達成され、その産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【符号の説明】
【0113】
10;10b;10c;10d;10e…撹拌装置
12;12b;12c;12d;12e…撹拌用回転体
14…駆動装置
16…回転軸
18…容器
18A…内周面
20…本体
20A…上側の第1の端面
20B…下側の第2の端面
20C…外周面
22…下側開口(吐出口)
22b…下側開口(吸込口)
22c…下側開口(吸込口)
24…上側開口(吸込口)
24b…上側開口(吐出口)
24c…上側開口(吐出口)
26…挿通穴
28;28b;28c…流路
CA… 中心軸線
d1…下側開口22の中心軸線CAからの第1の距離
d2…上側開口24の中心軸線CAからの第2の距離
d3…下側開口22bの中心軸線CAからの第3の距離
d4…上側開口24bの中心軸線CAからの第4の距離
g… 容器18の内周面18Aと本体20の外周面20Cとの隙間
LQ…液体
r1…容器18の内周面18Aの半径
r2…本体20の外周面20Cの半径