(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】画像診断支援装置、画像診断支援方法および画像診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20230309BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01T1/161 A
A61B5/00 D
G01T1/161 ZDM
(21)【出願番号】P 2018209161
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-09-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ジェイマックシステムが、平成30年4月20日、平成30年5月14日、平成30年5月21日、平成30年6月14日、平成30年6月20日、平成30年7月13日および平成30年9月2日、シーメンスヘルスケア株式会社に、箱石 卓が発明した画像診断支援装置、画像診断支援方法および画像診断支援プログラムの仕様を備えた装置を販売し、平成30年6月29日に、同装置の操作ガイド(「NonPSF計測モード(シーメンス社製PET/CT装置向け限定機能)操作ガイド」初版,第1~4頁,発行者名:株式会社ジェイマックシステム)を納品した。
(73)【特許権者】
【識別番号】399085912
【氏名又は名称】株式会社ジェイマックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】箱石 卓
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0350947(US,A1)
【文献】日本核医学会・PET核医学委員会,”18F-FDGを用いた全身PET撮像のための標準的プロトコール公開版 第3版”,2018年05月28日,「3.14.画像再構成」,インターネット<URL:https://jsnm.org/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/FDG_WBscan_Std_Protocol_20180528.pdf>,[令和4年8月30日検索]
【文献】中村 明弘 他,”PET画像におけるPSF補正が定量値に与える影響 -ファントム実験と臨床画像からの検討-”,日本放射線技術学会誌,Vol.70, No.6,2014年06月,pp.542-548
【文献】Ronald Boellaard,"Need for Standardization of 18F-FDG PET/CT for Treatment Response Assessments",THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE,Vol.52, No.12,2011年12月,pp.93S-100S
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像をモニタ画面に表示する第1表示手段、
前記2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像に基づいて前記対象部位の状態
を表すSUV値を計測する計測手段、および
前記計測手段による計測結果
のSUV値を前記モニタ画面に表示する第2表示手段を備え
、
前記2種類の撮影画像は、同一の撮影画像に対し、異なる処理を施すことにより生成されたものであり、
前記一方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含む第1処理を施すことにより生成され、
前記他方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含まない第2処理を施すことにより生成されたものである、画像診断支援装置。
【請求項2】
前記第
1処理は画像再構成処理を含み、
前記
PSF補正処理は前記画像再構成処理の前に実行される、請求項
1記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記第1表示手段によって表示された撮影画像上のいずれかの位置を指定する位置指定操作を受け付ける受付け手段をさらに備え、
前記計測手段は前記位置指定操作により指定された位置における前記対象部位の状態を
表すSUV値を計測する、請求項1
または2に記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
前記2種類の撮影画像は、互いに紐付けられた2つの画像ファイルに
1種類ずつ収められる、請求項1ないし
3のいずれかに記載の画像診断装置。
【請求項5】
画像診断支援装置によって実行される画像診断支援方法であって、
画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像をモニタ画面に表示する第1表示ステップ、
前記2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像に基づいて前記対象部位の状態
を表すSUV値を計測する計測ステップ、および
前記計測ステップによる計測結果
のSUV値を前記モニタ画面に表示する第2表示ステップを備え
、
前記2種類の撮影画像は、同一の撮影画像に対し、異なる処理を施すことにより生成されたものであり、
前記一方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含む第1処理を施すことにより生成され、
前記他方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含まない第2処理を施すことにより生成されたものである、画像診断支援方法。
【請求項6】
画像診断支援装置のプロセッサに、
画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像をモニタ画面に表示する第1表示ステップ、
前記2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像に基づいて前記対象部位の状態
を表すSUV値を計測する計測ステップ、および
前記計測ステップによる計測結果
のSUV値を前記モニタ画面に表示する第2表示ステッ
プを実行させるための、画像診断支援プログラム
であって、
前記2種類の撮影画像は、同一の撮影画像に対し、異なる処理を施すことにより生成されたものであり、
前記一方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含む第1処理を施すことにより生成され、
前記他方の種類の撮影画像はPSF補正処理を含まない第2処理を施すことにより生成されたものである、画像診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像診断支援装置、画像診断支援方法および画像診断支援プログラムに関し、特に、読影医による画像診断を支援する、画像診断支援装置、画像診断支援方法および画像診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PET(positron emission tomography)検査による腫瘍の検出能や、PET画像の画質を向上させる方法としては、PSF(point spread function)技術を組み込んでPET画像を再構成する方法が広く知られている。ただし、PSF技術を組み込むと1画素の定量値が変化するため、SUV(standardized uptake value)を用いた治療効果判定などの定量的効果判定では、PSF技術を採用しないことが望ましい(非特許文献1)。
【0003】
また、PSF補正に伴って発生するGibbsアーチファクトは、集積部の大きさや濃度によって変則的に変化するため、PSF画像再構成法は、空間分解能や画質の改善による病変部の検出には有効であるが、定量性を確保することは困難であり、SUVを使用しての診断には不適切と考えられる。したがって、臨床診断でSUV評価が必要な際には、PSF補正を加えない再構成画像を使用すべきである(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“18F-FDGを用いた全身PET撮像の標準的プロトコール 公開版 第2版”、[online]、2016年7月16日、日本核医学会・PET核医学委員会、[平成30年10月27日検索]、インターネット<URL:http://jsnm.sakura.ne.jp/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/FDG_WBscan_Std_Protocol_20160716.pdf>
【文献】中村明弘、外9名、「PET画像におけるPSF補正が定量値に与える影響-ファントム実験と臨床画像からの検討-」、臨床技術、日本放射線技術学会、2014年、70巻、第6号、p.542-548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、PSF補正を加えていない画像(NonPSF補正画像)を使用して病変部のSUV評価を行うには、読影医は、画質が劣るNonPSF補正画像上で病変部を探す必要がある。この結果、画像診断を行う際に、読影医の負担が増大するおそれがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、対象部位を診断する読影医の負担を軽減することができる、画像診断支援装置、画像診断支援方法および画像診断支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る画像診断支援装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像(PSF補正画像)をモニタ画面に表示する第1表示手段(S15)、2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像(NonPSF補正画像)に基づいて対象部位の状態を計測する計測手段(S26, S27)、および計測手段による計測結果(SUV値)をモニタ画面に表示する第2表示手段(S28)を備える。
【0008】
好ましくは、一方の種類の撮影画像は対象部位の状態を表す情報に第1処理を施すことにより生成され、他方の種類の撮影画像は対象部位の状態を表す情報に第2処理を施すことにより生成され、第1処理は対象部位の定性的な評価に適した特定処理と第2処理とを含む。
【0009】
好ましくは、第2処理は画像再構成処理を含み、特定処理は画像再構成処理の前に実行される。
【0010】
好ましくは、第1表示手段によって表示された撮影画像上のいずれかの位置を指定する位置指定操作を受け付ける受付け手段(S29)がさらに備えられ、計測手段は位置指定操作により指定された位置における対象部位の状態を解析する。
【0011】
好ましくは、2種類の撮影画像は、互いに紐付けられた2つの画像ファイルにそれぞれ収められる。
【0012】
この発明に係る画像診断支援方法は、画像診断支援装置(10)によって実行される画像診断支援方法であって、画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像(PSF補正画像)をモニタ画面に表示する第1表示ステップ(S15)、2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像(NonPSF補正画像)に基づいて対象部位の状態を計測する計測ステップ(S26, S27)、および計測ステップによる計測結果(SUV値)をモニタ画面に表示する第2表示ステップ(S28)を備える。
【0013】
この発明に係る画像診断支援プログラムは、画像診断支援装置(10)のプロセッサ(12pr)に、画像診断の対象部位を表す2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像(PSF補正画像)をモニタ画面に表示する第1表示ステップ(S15)、2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像(NonPSF補正画像)に基づいて対象部位の状態を計測する計測ステップ(S26, S27)、および計測ステップによる計測結果(SUV値)をモニタ画面に表示する第2表示ステップ(S28)を実行させるための、画像診断支援プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
2種類の撮影画像を用意することにより、読影医は、撮影画像の表示と対象部位の状態の計測とで、撮影画像を使い分けることができる。これによって、対象部位を診断する読影医の負担の軽減が図られる。
【0015】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この実施例に適用される医療診断支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】(A)はPSF補正画像を収めたDICOMファイルの構造の一例を示す図解図であり、(B)はNonPSF補正画像を収めたDICOMファイルの構造の一例を示す図解図である。
【
図3】(A)は表示&計測設定のメニュー画面の一例を示す図解図であり、(B)はSUV計算方法設定のメニュー画面の一例を示す図解図である。
【
図4】表示対象がPSF補正画像で測定対象がNonPSF補正画像である場合の診断画面の一例を示す図解図である。
【
図5】(A)は表示対象および測定対象がPSF補正画像である場合の診断画面の一例を示す図解図であり、(B)は表示対象および測定対象がNonPSF補正画像である場合の診断画面の一例を示す図解図である。
【
図7】CPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【
図8】CPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本実施形態の医療診断支援システムは、院内LAN40を介して互いに接続された画像診断支援装置10、PET装置20およびPACS30によって構成される。
【0018】
画像診断支援装置10において、バスBS1には、通信I/F12cm、CPU12pr、キーボード/マウス12km、DRAM12mm、HDD12hdおよびモニタ12mtが接続される。読影医は、モニタ12mtと向き合い、キーボード/マウス12kmを操作して画像診断を行う。
【0019】
PET装置20は、患者の全身を対象としてPET検査を実行するための装置である。PET検査では、消滅放射線と呼ばれる特殊なガンマ線を同時計測することにより、検査部位の状態を表すデータが収集される。収集されたデータは、ノーマライズ、減弱補正、散乱補正などの補正処理を施された後、OS-EM(ordered subset-expectation maximization)法による画像再構成処理を施される。この結果、検査部位を表す撮影画像が収められたDICOMファイルが生成される。生成されたDICOMファイルは、院内LAN40を介してPACS30に保存される。
【0020】
本実施形態では、PET装置20は、共通の検査部位を表す2種類の撮影画像を生成する。一方の種類の撮影画像は、上述したノーマライズ、減弱補正、散乱補正に加えてPSF補正を施し、その後にOS-EM法により再構成した断層画像であり、“PSF補正画像”と呼ばれる。他方の種類の撮影画像は、上述したノーマライズ、減弱補正、散乱補正を施し、その後にOS-EM法により再構成した断層画像であり、“NonPSF補正画像”と呼ばれる。
【0021】
即ち、PSF補正画像は、NonPSF補正画像を生成するための一連の処理の途中(具体的には、画像再構成の前段階)でPSF補正を追加的に実行することにより、生成される。この結果、PSF補正画像は、NonPSF補正画像と比べて、検査部位の定性的な評価に適したものとなる。また、NonPSF補正画像は、PSF補正画像と比べて、検査部位の定量的な評価に適したものとなる。
【0022】
DICOMファイルは、
図2(A)または
図2(B)に示すデータ構造を有する。
図2(A)によれば、タグ情報とPSF補正画像とがDICOMファイルに収められ、
図2(B)によれば、タグ情報とNonPSF補正画像とがDICOMファイルに収められる。
【0023】
ここで、タグ情報は、DICOMファイル間で共通する。具体的には、タグ情報は、検査属性を各々が示す複数の項目(収集時刻、患者の身長、患者の体重、患者の性別、放射性医薬品、放射性医薬品開始時刻、放射性核種総投与量、放射性核種半減期、検査インスタンスUID(検査識別情報)など)によって構成される。なお、共通の検査部位を表すPSF補正画像およびNonPSF補正画像は、検査インスタンスUIDによって互いに紐づけされる。
【0024】
読影医が画像診断支援装置10を操作して患者を診断する際、CPU12prはまず、通信I/F12cmを通してPACS30にアクセスし、共通の検査インスタンスUIDが収められている2つのDICOMファイルを取得する。取得した2つのDICOMファイルにそれぞれ収められているPSF補正画像およびNonPSF補正画像は、DRAM12mmに展開される。
【0025】
本実施形態では、PSF補正画像およびNonPSF補正画像のうち、表示設定に従う補正画像がモニタ12mtに表示され、計測設定に従う補正画像に基づいてSUV値が計測される。ここで、表示設定および計測設定は、
図3(A)に示すメニュー画面を操作することにより特定される。また、SUV値は、検査部位の状態を表す計測値である。
【0026】
具体的には、当該メニュー画面の上段のモードが選択されると、PSF補正画像が表示対象となり、NonPSF補正画像が計測対象となる。また、当該メニュー画面の中段のモードが選択されると、PSF補正画像が表示対象および計測対象となる。さらに、当該メニュー画面の下段のモードが選択されると、NonPSF補正画像が表示対象および計測対象となる。
【0027】
本実施形態ではまた、計測対象として設定された補正画像のうちROI(Region Of Interest)に属する画素の値と、患者の体重、標準体重、除脂肪体重、体表面積のうちのいずれかの数値とに基づいて、SUV値が計測される。ここで、患者の体重、標準体重、除脂肪体重、体表面積のいずれを参照するかは、
図3(B)に示すメニュー画面の操作に従う。また、SUV値としては、MaxSUV、PeakSUVおよびMeanSUVの3つの値が計測される。さらに、ROIの位置は、キーボード/マウス12kmによるカーソル(図示せず)の移動に伴って変化する。
【0028】
この結果、
図3(A)に示すメニュー画面の上段のモードが選択されたときは
図4に示す診断画面がモニタ12mtに表示され、
図3(A)に示すメニュー画面の中段のモードが選択されたときは
図5(A)に示す診断画面がモニタ12mtに表示され、
図3(A)に示すメニュー画面の下段のモードが選択されたときは
図5(B)に示す診断画面がモニタ12mtに表示される。
【0029】
図4によれば、PSF補正画像が診断画面の中央に表示され、NonPSF補正画像に基づいて計測されたSUV値が診断画面の右下に表示され、SUV値の近傍に「表示:PSF 計測:NonPSF」の文字列が表示される。
図5(A)によれば、PSF補正画像が診断画面の中央に表示され、PSF補正画像に基づいて計測されたSUV値が診断画面の右下に表示され、SUV値の近傍に「表示:PSF 計測:PSF」の文字列が表示される。
図5(B)によれば、NonPSF補正画像が診断画面の中央に表示され、NonPSF補正画像に基づいて計測されたSUV値が診断画面の右下に表示され、SUV値の近傍に「表示:NonPSF 計測:NonPSF」の文字列が表示される。
【0030】
図4、
図5(A)および
図5(B)のいずれにおいても、病変部はROIの内側に存在するところ、当該病変部は、NonPSF補正画像よりもPSF補正画像に鮮明に現れている。また、PSF補正画像に基づくMaxSUV、PeakSUVおよびMeanSUVはそれぞれ、“6.0”、“4.5”および“3.3”を示すのに対して、NonPSF補正画像に基づくMaxSUV、PeakSUVおよびMeanSUVはそれぞれ、“5.0”、“4.0”および“3.0”を示し、NonPSF補正画像に基づく値の方が、PSF補正画像に基づく値よりも正確である。
【0031】
CPU12prは、
図6に示す設定変更処理と、
図7に示す画像表示処理と、
図8に示すSUV表示処理とを並列的に実行する。なお、これらのフロー図に対応する制御プログラムは、HDD12hdに記憶される。
【0032】
図6を参照して、ステップS01では、
図3(A)に示すメニュー画面上で設定変更操作が行われたか否かを、キーボード/マウス12kmの操作入力に基づいて判定する。当該設定変更操作が行われたと判定されたときは、ステップS02において表示設定および計測設定の少なくとも一方を変更する。表示設定は、PSF補正画像を表示対象とする設定と、NonPSF補正画像を表示対象とする設定との間で切り替えられる。また、計測設定は、PSF補正画像に基づいてSUV値を計測する設定と、NonPSF補正画像に基づいてSUV値を計測する設定との間で切り替えられる。
【0033】
ステップS03では、
図3(B)に示すメニュー画面上で設定変更操作が行われたか否かを、キーボード/マウス12kmの操作入力に基づいて判定する。当該設定変更操作が行われたと判定されたときは、ステップS04においてSUV計算方法設定を変更する。具体的には、患者の体重、標準体重、除脂肪体重、体表面積のいずれの数値に基づいてSUV値を計算するかを変更する。ステップS04の処理が完了すると、ステップS01に戻る。
【0034】
図7を参照して、ステップS11では、PACS30から取得した2つのDICOMファイルに収められているPSF補正画像およびNonPSF補正画像をDRAM12mmに展開する。ステップS12では、表示設定を従前の設定に合わせる。ステップS13では現時点の表示設定を検出し、ステップS14では表示対象がPSF補正画像であるか否かを当該表示設定に基づいて判定する。
【0035】
表示対象がPSF補正画像であると判定されたときはステップS15に進み、DRAM12mmに展開されているPSF補正画像の表示をモニタ12mtに要求する。これに対して、表示対象がPSF補正画像であると判定されなかったときはステップS16に進み、DRAM12mmに展開されているNonPSF補正画像の表示をモニタ12mtに要求する。
【0036】
この結果、ステップS15の処理が実行されたときは、PSF補正画像が診断画面の中央に表示され、ステップS16の処理が実行されたときは、NonPSF補正画像が診断画面の中央に表示される。
【0037】
ステップS17では、表示設定が変更されたか否かを、ステップS02の処理状況に基づいて判定する。表示設定が変更されたと判定されなかったときはステップS17に戻り、表示設定が変更されたと判定されたときはステップS13に戻る。この結果、診断画面の表示は、表示設定が変更される毎に、PSF補正画像とNonPSF補正画像との間で切り替えられる。
【0038】
図8を参照して、ステップS21では、計測設定およびSUV計算方法設定を従前の設定に合わせる。ステップS22では、診断画面に表示されている補正画像上にカーソルが位置するか否かを、キーボード/マウス12kmの操作入力に基づいて判定する。ステップS22においてカーソルが補正画像上に位置すると判定されたときは、ステップS23に進み、現時点の計測設定を検出する。ステップS24では、計測対象がPSF補正画像であるか否かを当該計測設定に基づいて判定する。
【0039】
計測対象はPSF補正画像であると判定されたときは、ステップS25に進み、PSF補正画像上でROIを定義する。計測対象はPSF補正画像であると判定されなかったときは、ステップS26に進み、NonPSF補正画像上でROIを定義する。ステップS25およびS26のいずれにおいても、カーソルの位置を中心とする円形の領域がROIとして定義される。
【0040】
ステップS25またはS26の処理が完了すると、ステップS27に進む。ステップS27では、当該ROIに属する画素の値と、患者の体重、標準体重、除脂肪体重、体表面積のうち現時点のSUV計算方法設定に対応する数値とに基づいて、SUV値(具体的には、MaxSUV、PeakSUVおよびMeanSUV)を計測する。ステップS28では、ステップS27で計測されたSUV値の表示をモニタ12mtに要求する。この結果、MaxSUV、PeakSUVおよびMeanSUVが診断画面の右下に表示される。
【0041】
ステップS29では、カーソルが移動したか否かをキーボード/マウス12kmの操作入力に基づいて判定する。カーソルが移動したと判定されなかったときはステップS29に戻り、カーソルが移動したと判定されたときはステップS22に戻る。この結果、カーソルが補正画像上で移動する場合には、当該移動に伴ってSUV値が更新される。
【0042】
ステップS22において、カーソルは補正画像上に位置すると判定されなかったときは、ステップS30に進む。ステップS30では、表示設定および計測設定の少なくとも一方が変更されたか否かを、ステップS02の処理状況に基づいて判定する。表示設定および計測設定の少なくとも一方が変更されたと判定されなかったときは、ステップS22に戻り、表示設定および計測設定の少なくとも一方が変更されたと判定されたときは、ステップS31に進む。ステップS31では、変更後の表示設定および計測設定に対応する文字列の表示をモニタ12mtに要求する。
【0043】
この結果、変更後の表示設定および計測設定が、PSF補正画像を表示対象とし、NonPSF補正画像を計測対象とするものであれば、「表示:PSF 計測:NonPSF」の文字列が診断画面の右下に表示される。また、変更後の表示設定および計測設定がPSF補正画像を表示対象および計測対象とするものであれば、「表示:PSF 計測:PSF」の文字列が診断画面の右下に表示される。さらに、変更後の表示設定および計測設定がNonPSF補正画像を表示対象および計測対象とするものであれば、「表示:NonPSF 計測:NonPSF」の文字列が診断画面の右下に表示される。ステップS31の処理が完了すると、ステップS22に戻る。
【0044】
以上の説明から分かるように、PET装置20は、共通の検査部位を表す2種類の撮影画像を生成する。画像診断支援装置10のCPU12prは、当該2種類の撮影画像のうちの一方の種類の撮影画像を、診断画面に表示する(S15)。CPU12prはまた、当該2種類の撮影画像のうちの他方の種類の撮影画像に基づいて検査部位の状態を表すSUV値を計測し(S26, S27)、当該SUV値を診断画面に表示する(S28)。
【0045】
2種類の撮影画像を用意することにより、読影医は、撮影画像の表示と対象部位の状態の計測とで、撮影画像を使い分けることができる。これによって、対象部位を診断する読影医の負担の軽減が図られる。
【0046】
また、一方の種類の撮影画像は、PSF補正画像であり、検査部位の状態を表すデータに、ノーマライズ、減弱補正、散乱補正、PSF補正の一連の処理を施し、その後にOS-EM法による画像再構成処理を施すことにより生成される。これに対して、他方の種類の撮影画像は、NonPSF補正画像であり、検査部位の状態を表すデータに、ノーマライズ、減弱補正、散乱補正の一連の処理を施し、その後にOS-EM法による画像再構成処理を施すことにより生成される。即ち、PSF補正画像を生成するための一連の処理は、NonPSF補正画像を生成するための一連の処理にPSF補正を加えた処理に相当する。
【0047】
この結果、PSF補正画像は、NonPSF補正画像と比べて、検査部位の定性的な評価に適したものとなる。また、NonPSF補正画像は、PSF補正画像と比べて、検査部位の定量的な評価に適したものとなる。
【0048】
診断画面には、PSF補正画像が表示されるとともに、NonPSF補正画像に基づいて計測されたSUV値が表示されるため、読影医は、PSF補正画像により病変部の状態を定性的に評価することができ、NonPSF補正画像に基づくSUV値により病変部の状態を定量的に評価することができる。即ち、読影医は、PSF補正画像を参照することにより病変部を容易に探し出すことができ、SUV値を参照することにより病変部を的確に診断することができる。
【0049】
<変形例>
以上説明した実施形態の変形例を以下に列挙する。
【0050】
(1)本実施形態においては、共通の検査部位を表す2種類の撮影画像はいずれもPET画像である。しかし、一方の種類の撮影画像をPET画像、CT画像およびMRI画像のうちの1つとし、他方の種類の撮影画像をPET画像、CT画像およびMRI画像のうちの他の1つとするなど、異なる方式で撮影された2種類の撮影画像を対象とするようにしてもよい。この場合でも、撮影画像の表示と対象部位の状態の計測とで撮影画像を使い分けることができ、対象部位を診断する読影医の負担の軽減が図られる。
【0051】
(2)本実施形態においては、PET装置によって生成された2種類の撮影画像を対象としているが、MRI、CT、超音波診断装置などの他のモダリティによって生成された2種類の撮影画像を対象とするようにしてもよい。
【0052】
(3)本実施形態においては、2種類の撮影画像は、同時刻に撮影された共通の検査部位を表す。しかし、共通の検査部位を表す限り、当該2種類の撮影画像は、互いに異なる時刻ないし日付に撮影されたものであってもよい。
【0053】
(4)本実施形態においては、読影医によるキーボード/マウス12kmの操作に従う位置にROIを定義するようにしている。しかし、CPU12prの処理によって、病変部と思われる位置を特定し、当該病変部の周辺にROIを定義するようにしてもよい。この場合、CPU12prは、撮影画像を構成する画素値をスキャンすることにより病変部を特定するようにしてもよい。
【0054】
(5)本実施形態においては、1つのDICOMファイルには、1枚の撮影画像しか収められないが、検査部位の複数の断層をそれぞれ表す複数の撮影画像を1つのDICOMファイルに収めるようにしてもよい。また、この場合は、カーソルの位置を中心とする球形の領域をVOI(Volume Of Interest)として定義し、当該VOIを対象としてSUV値を計測するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 …画像診断支援装置
12pr …CPU
12hd …HDD
12mm …メモリ
12mt …モニタ