(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ケーブルラックおよびケーブル敷設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20230309BHJP
H02G 9/08 20060101ALI20230309BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H02G3/04 056
H02G9/08
H02G1/06
(21)【出願番号】P 2019143865
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501111142
【氏名又は名称】株式会社タチバナ
(73)【特許権者】
【識別番号】508337204
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング新潟
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上谷 肇
(72)【発明者】
【氏名】宮里 猛
(72)【発明者】
【氏名】井上 正一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 公一郎
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-210625(JP,A)
【文献】特開昭55-32456(JP,A)
【文献】特開2006-50796(JP,A)
【文献】実開昭60-190113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 9/08
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブルラックであって、
長手方向に延出するとともに幅方向に離間して設けられた2つの親桁部と、2つの前記親桁部の間に延在する子桁部と、を備え、
第一端部および第二端部を有し、他のケーブルラックと連設して設置する際に、前記第一端部と前記他のケーブルラックの前記第二端部とを接続可能であり、
前記第一端部および前記第二端部において、2つの前記親桁部の端部は前記子桁部の端部よりも長手方向外側に突出した突出端部として構成され、
前記第一端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向外側の側面から幅方向外側に突出する突起部を有し、
前記第二端部において、
2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向の離間距離が前記第二端部以外の部分よりも広い離間距離に拡張された拡張親桁部を有し、かつ、
前記子桁部は、その幅方向寸法が拡張され前記拡張親桁部の間に延在する拡張子桁部を有し、
前記第一端部と、前記他のケーブルラックの前記第二端部とを接続するときに、
前記第一端部側の前記突出端部を、前記他のケーブルラックの前記拡張子桁部の上に配置可能であり、
前記他のケーブルラックの前記拡張親桁部の先端部分を、前記突起部の上に配置可能であるケーブルラック。
【請求項2】
繊維強化樹脂製である請求項1に記載のケーブルラック。
【請求項3】
前記拡張親桁部の長手方向端部から下方に突出した係合部を有するとともに、
前記突起部の、前記ケーブルラックの長手方向に沿って内側の端部に、前記突起部を上から高さ方向に縮退した被係合部を有し、
前記接続のときに、前記係合部が前記被係合部に係合可能である請求項
1または2に記載のケーブルラック。
【請求項4】
トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブル敷設方法であって、
長手方向に延出するとともに幅方向に離間して設けられた2つの親桁部と、2つの前記親桁部の間に延在する子桁部と、を備え、前記子桁部の上であって2つの前記親桁部の間に位置する部分に前記ケーブルを収容可能なケーブルラックを、長手方向に複数個連接して前記壁面に固定するケーブルラック設置工程と、前記壁面に固定された前記ケーブルラックの上に前記ケーブルを配線する配線工程と、を含み、
前記ケーブルラックは、第一端部および第二端部とを有し、2つの前記ケーブルラックを連接して設置する際に、第一のケーブルラックの前記第一端部と、第二のケーブルラックの前記第二端部とを、接続可能であり、
前記第一端部および前記第二端部において、2つの前記親桁部の端部は前記子桁部の端部よりも長手方向外側に突出した突出端部として構成され、
前記第一端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向外側の側面から幅方向外側に突出する突起部を有し、
前記第二端部において、
2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向の離間距離が前記第二端部以外の部分よりも広い離間距離に拡張された拡張親桁部を有し、かつ、
前記子桁部は、その幅方向寸法が拡張され前記拡張親桁部の間に延在する拡張子桁部を有し、
前記ケーブルラック設置工程において、
前記第一端部側の前記突出端部を、前記第二のケーブルラックの前記拡張子桁部の上に配置するとともに、
前記第二のケーブルラックの前記拡張親桁部の先端部分を、前記突起部の上に配置し、
前記第一のケーブルラックと前記第二のケーブルラックとの相互の固定のために、固定具を用いないことを特徴とするケーブル敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブルラック、および、トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブル敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などのトンネル内部に設置される照明などの電気設備について、電力の供給および情報の通信を行うため、配線を施す必要がある。かかる配線は、トンネルの壁面に設置されたケーブルラックの上にケーブルを敷設する方法により行われることが一般的である。このとき、トンネルの延長方向に沿って、トンネルの全長にわたってケーブルラックを延在させるため、複数のケーブルラックを長手方向に順次連設するので、隣接するケーブルラック同士を接続する方法が必要である。
【0003】
ケーブルラックを接続する方法としては、隣接するケーブルラックを接続する接続部材を用いる方法が汎用されている。たとえば、実用新案登録第3127959号公報(特許文献1)には、気温の変化によるケーブルラックの伸縮を簡単な構造で吸収可能なケーブルラックの連結体が開示されている。また、特開2008-99530号公報(特許文献2)には、簡単な構成で接続部分においてケーブルラックの膨張を吸収でき、しかも施工が簡単なケーブルラックの接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3127959号公報
【文献】特開2008-99530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に開示された技術においては、接続部材を用いる必要性自体を取り除くことはできなかった。かかる接続部材は金属製である場合が多いが、金属製部品は腐食のおそれがあるため、金属製部品を用いてケーブルラックを接続した場合、当該金属製部品を定期的に点検、交換する必要があり、施工および管理に要する工数が大きかった。
【0006】
そこで、接続部材を用いずに接続できるケーブルラックの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケーブルラックは、トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブルラックであって、長手方向に延出するとともに幅方向に離間して設けられた2つの親桁部と、2つの前記親桁部の間に延在する子桁部と、を備え、第一端部および第二端部を有し、他のケーブルラックと連設して設置する際に、前記第一端部と前記他のケーブルラックの前記第二端部とを接続可能であり、前記第一端部および前記第二端部において、2つの前記親桁部の端部は前記子桁部の端部よりも長手方向外側に突出した突出端部として構成され、前記第一端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向外側の側面から幅方向外側に突出する突起部を有し、前記第二端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向の離間距離が前記第二端部以外の部分よりも広い離間距離に拡張された拡張親桁部を有し、かつ、前記子桁部は、その幅方向寸法が拡張され前記拡張親桁部の間に延在する拡張子桁部を有し、前記第一端部と、前記他のケーブルラックの前記第二端部とを接続するときに、前記第一端部側の前記突出端部を、前記他のケーブルラックの前記拡張子桁部の上に配置可能であり、前記他のケーブルラックの前記拡張親桁部の先端部分を、前記突起部の上に配置可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るケーブル敷設方法は、トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブル敷設方法であって、長手方向に延出するとともに幅方向に離間して設けられた2つの親桁部と、2つの前記親桁部の間に延在する子桁部と、を備え、前記子桁部の上であって2つの前記親桁部の間に位置する部分に前記ケーブルを収容可能なケーブルラックを、長手方向に複数個連接して前記壁面に固定するケーブルラック設置工程と、前記壁面に固定された前記ケーブルラックの上に前記ケーブルを配線する配線工程と、を含み、前記ケーブルラックは、第一端部および第二端部とを有し、2つの前記ケーブルラックを連接して設置する際に、第一のケーブルラックの前記第一端部と、第二のケーブルラックの前記第二端部とを、接続可能であり、前記第一端部および前記第二端部において、2つの前記親桁部の端部は前記子桁部の端部よりも長手方向外側に突出した突出端部として構成され、前記第一端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向外側の側面から幅方向外側に突出する突起部を有し、前記第二端部において、2つの前記親桁部は、2つの前記親桁部の幅方向の離間距離が前記第二端部以外の部分よりも広い離間距離に拡張された拡張親桁部を有し、かつ、前記子桁部は、その幅方向寸法が拡張され前記拡張親桁部の間に延在する拡張子桁部を有し、前記ケーブルラック設置工程において、前記第一端部側の前記突出端部を、前記第二のケーブルラックの前記拡張子桁部の上に配置するとともに、前記第二のケーブルラックの前記拡張親桁部の先端部分を、前記突起部の上に配置し、前記第一のケーブルラックと前記第二のケーブルラックとの相互の固定のために、固定具を用いないことを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、接続部材を用いずにケーブルラックを接続できる。そのため、接続部材の定期的な点検および交換を必要とせず、施工および管理に要する工数低減できる。
また、この構成によれば、2つの親桁部の間に形成されるケーブル敷設空間の幅方向寸法を縮小することなく、第一端部および第二端部に、接続のために必要な構造物を設けることができる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係るケーブルラックは、一態様として、繊維強化樹脂製であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ケーブルラックに必要な強度を付与し、かつ、ケーブルラックを軽量化できる。また、腐食のおそれがある環境でも好適に使用できる。
【0015】
本発明に係るケーブルラックは、一態様として、前記拡張親桁部の長手方向端部から下方に突出した係合部を有するとともに、前記突起部の、前記ケーブルラックの長手方向に沿って内側の端部に、前記突起部を上から高さ方向に縮退した被係合部を有し、前記接続のときに、前記係合部が前記被係合部に係合可能であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、接続部分において2つのケーブルラックが係合しているため、振動などによりケーブルラックが長手方向に移動しようとした場合であっても、かかる移動を防ぎやすい。そのため、振動などによって接続構造が解除されることを防ぎやすい。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るケーブルラックの斜視図
【
図2】本発明の実施形態に係るケーブルラックの第一端部の上面図
【
図3】本発明の実施形態に係るケーブルラックの第一端部の正面図
【
図4】本発明の実施形態に係るケーブルラックの第二端部の上面図
【
図5】本発明の実施形態に係るケーブルラックの第二端部の正面図
【
図6】本発明の実施形態に係るケーブルラックの接続構造の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るケーブルラックおよびケーブル敷設方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るケーブルラックを、トンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブルラック1に適用した例について説明する。
【0020】
〔ケーブルラック1の基本構成〕
図1に示すように、本実施形態に係るケーブルラック1は、2つの親桁部2(2a、2b)と、子桁部3とを備える。親桁部2はケーブルラック1の長手方向に延出するとともに、ケーブルラック1の幅方向に離間距離D1で離間して設けられている。2つの親桁部2aおよび2bは、複数の子桁31によって互いに接続され、一体のケーブルラック1を形成している。ケーブルラック1は、子桁部3の上であって、2つの親桁部2aおよび2bの間に位置する部分にケーブル(不図示)を収容可能である。また、後述するように長手方向に複数個のケーブルラックを連設して設置可能であり、当該複数個のケーブルラック1の親桁部2および子桁部3により形成される長尺状のケーブル収容空間に、ケーブルを敷設できる。なお、ケーブルラック1は繊維強化樹脂製である。
【0021】
なお、本明細書において、「長手方向」はケーブルラック1の長手方向を表す。また、「幅方向」は前記長手方向に直交する方向、すなわち2つの親桁部2a、2bが互いに離間する方向を表す。そして、「高さ方向」は、ケーブルラック1を子桁部3が設置面に接するように置いたときに親桁部2が子桁部3から延出する方向を表す。同様に、「上」または「下」の用語も、ケーブルラック1を子桁部3が設置面に接するように置いたときの設置面を基準とした上下方向を表す。
【0022】
また、以降の説明において、2つの親桁部2a、2bの一部分について、2つの親桁部2a、2bのいずれに属する一部分であるかを区別して説明する必要がある場合は、当該一部分を表す符号に、当該一部分が属する親桁部2を表す添字(aまたはb)を付して表す。
【0023】
ケーブルラック1の両端部は、それぞれ異なる形状を有する。以降の説明において、
図1の紙面左側に表された端部を第一端部10といい、同紙面右側に表された端部を第二端部20という。
【0024】
〔第一端部10の構造〕
まず、第一端部10の構造について説明する。
図1~
図3に示すように、第一端部10において、親桁部2の端部は子桁部3の端部よりも長手方向に突出した突出端部11として形成されている。
図3に示すように、突出端部11の上端面は、親桁部2の上端面と連続して設けられているが、突出端部11の高さ方向寸法H2は、親桁部2の高さ方向寸法H1よりも小さい。具体的には、突出端部11の下方に形成された空間の高さ方向寸法H3(H1-H2に等しい。)は、第二端部20における子桁部3の高さ方向寸法(厚さ)H5より大きい寸法に構成されている。
【0025】
図2および
図3に示すように、第一端部10において、親桁部2の幅方向外側の側面から、さらに幅方向外側に突出する
突起部12が設けられている。
突起部12は、その長手方向内側の上隅部に第一切欠部13(被係合部の例)を有する。
【0026】
〔第二端部20の構造〕
次に、第二端部20の構造について説明する。
図1、
図4、および
図5に示すように、第二端部20において、2つの親桁部2の離間距離が幅方向に拡張された拡張親桁部21(突出端部の例)が形成されている。すなわち、2つの拡張親桁部21aおよび21bの離間距離D2は、第二端部20以外の部分における2つの親桁部2aおよび2bの離間距離D1よりも大きい。より具体的には、片側の拡張親桁部21の拡張幅D4((D2-D1)/2に等しい。)は、突出端部11の幅方向寸法D3より大きい寸法に構成されている。なお、拡張親桁部21は、突出端部11と同様に、親桁部2の端部は子桁部3の端部よりも長手方向に突出している。
【0027】
図5に示すように、拡張親桁部21の先端部分22において、拡張親桁部21の上端面は親桁部2の上端面と連続して設けられているが、先端部分22の高さ方向寸法H6は親桁部2の高さ方向寸法H1よりも小さい。具体的には、先端部分22の下方に形成された空間の高さ方向寸法H7(H1-H6に等しい。)は、
突起部12の高さ方向寸法H4より大きい寸法に構成されている。また、先端部分22の先端に、下方に突出する係合部23が形成されている。
【0028】
加えて、
図1および
図4に示すように、2つの拡張親桁部21aおよび2bの間において、子桁部3の幅方向寸法も拡張され、拡張子桁部24(24a、24b)が形成されている。
【0029】
〔第一端部10と第二端部20との接続構造〕
続いて、複数のケーブルラック1を連設して設置する場合における、2つのケーブルラック1の接続構造について説明する。なお、以降の説明において、2つのケーブルラック1を区別するため、第一のケーブルラック1Aおよび第二のケーブルラック1B(他のケーブルラックの例)と称する。
【0030】
図6に示すように、2つのケーブルラック1が接続された状態において、第一のケーブルラック1Aの突出端部11は、第二のケーブルラック1Bの拡張子桁部24の上に配置される。同時に、第二のケーブルラック1Bの拡張親桁部21の先端部分22は、第一のケーブルラック1Aの
突起部12の上に配置される。すなわち、第一のケーブルラック1Aの第一端部10が第二のケーブルラック1Bの第二端部20の上に配置されると同時に、第二のケーブルラック1Bの第二端部20が第一のケーブルラック1Aの第一端部10の上に配置される。
【0031】
なお、上記の接続構造には、ボルトなどの固定具が用いられておらず、接続部分を上方向に持ち上げる力が加わったときに接続構造が解消されうる。しかし、接続されたケーブルラック1の上にケーブルを敷設すると、当該ケーブルの重量によりケーブルラック1が下方向に荷重を受けるので、ケーブルが敷設された状態において接続構造が解消されることは起こりにくい。
【0032】
また、第二のケーブルラック1Bの係合部23が、第一のケーブルラック1Aの第一切欠部13に係合する。この構造によれば、2つのケーブルラック1を長手方向に引き離す方向に応力が加わったとしても、係合部23と第一切欠部13とが係合しているため、接続構造が解消されることは起こりにくい。
【0033】
上記の接続構造により、ボルトなどの固定具を用いることなく2つのケーブルラック1を接続することができる。特に、固定具は金属製である場合が多いが、かかる金属製部品を使用する必要性を排除しうる点に、本実施形態に係るケーブルラック1の1つの利点がある。金属製部品は腐食のおそれがあるため、金属製部品を用いてケーブルラックを接続した場合、当該金属製部品を定期的に点検、交換する必要がある。しかし、本実施形態に係るケーブルラック1では、ケーブルラック1の接続部分に関して、点検および部品交換の必要性を低減できる。
【0034】
〔ケーブル敷設方法〕
さらに、ケーブルラック1を用いたケーブル敷設方法について説明する。本実施形態に係るケーブル敷設方法は、ケーブルラックをトンネルの壁面に設置するケーブルラック設置工程と、当該ケーブルラックの上にケーブルを配線する配線工程とを有する。
【0035】
まず、ケーブルラック設置工程においては、ブラケット(不図示)を用いて、トンネルの壁面に第一のケーブルラック1Aを固定する。次に、第二のケーブルラック1Bを用意し、先に壁面に固定した第一のケーブルラック1Aの第一端部10と、第二のケーブルラック1Bの第二端部20とが、
図6に示した接続構造を構成するように、第二のケーブルラック1Bの第二端部20を第一のケーブルラック1Aの第一端部10に挿入する。その後、ケーブルラック固定具を用いてトンネルの壁面に第二のケーブルラック1Bを固定する。以上の手順を繰り返すことで、長手方向に複数個のケーブルラック1を連設して設置する。このとき、接続構造において、ボルトなどの固定具を使用しない。
【0036】
次に、配線工程においては、上記のケーブルラック設置工程において設置した、複数個のケーブルラック1の上に、ケーブルを配線する。具体的には、子桁部3にケーブルを載置する。このとき、親桁部2により、ケーブルの落下が防止される。
【0037】
以上の敷設方法によれば、ボルトなどの固定具を用いることなくケーブルを敷設できるため、ケーブル敷設作業を簡便にできる。
【0038】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るケーブルラックおよびケーブル敷設方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0039】
上記の実施形態では、ケーブルラック1が繊維強化樹脂製である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るケーブルラックは、ケーブルを敷設するために必要な強度を確保できる材料である限り、任意の材料により構成できる。たとえば、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。ただし、樹脂製である場合は、腐食しない点において、金属製である場合に比べて好ましい。また特に、繊維強化樹脂製であると、必要な強度を確保するために要する肉厚を小さくしやすいため、ケーブルラックの小型化および軽量化を実現しやすいため、より好ましい。
【0040】
上記の実施形態では、2つのケーブルラック1が接続された状態において、第一切欠部13と係合部23とが係合する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るケーブルラックは、接続状態において、第一のケーブルラックの第一端部と第二のケーブルラックの第二端部とが、必ずしも係合構造を形成可能である必要はない。ただし、かかる係合構造を形成可能に構成すると、ケーブルラックの長手方向の移動による接続構造の不慮の解除を防ぎやすい点で好ましい。
【0041】
上記の実施形態では、2つのケーブルラック1が接続された状態において、第一のケーブルラック1Aの突出端部11が第二のケーブルラック1Bの拡張子桁部24の上に配置され、同時に、第二のケーブルラック1Bの拡張親桁部21の先端部分22が第一のケーブルラック1Aの突起部12の上に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るケーブルラックは、接続状態において、第一のケーブルラックの第一端部側の突出端部を、第二のケーブルラックの第二端部の上方に配置可能であり、かつ、第二のケーブルラックの第二端部側の突出端部を、第一のケーブルラックの第一端部の上方に配置可能である限り、第一端部および第二端部に任意の構造を採用しうる。
【0042】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、たとえばトンネルの壁面に沿ってケーブルを敷設するためのケーブルラックに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 :ケーブルラック
2 :親桁部
3 :子桁部
31 :子桁
10 :第一端部
11 :突出端部
12 :突起部
13 :第一切欠部
20 :第二端部
21 :拡張親桁部
22 :拡張親桁部21の先端部分
23 :係合部
24 :拡張子桁部
D1 :親桁部2の離間距離
D2 :拡張親桁部21の離間距離
D3 :突出端部11の幅方向寸法
D4 :拡張親桁部21の拡張幅
H1 :親桁部2の高さ方向寸法
H2 :突出端部11の高さ方向寸法
H3 :突出端部11の下方に形成された空間の高さ方向寸法
H4 :突起部12の高さ方向寸法
H5 :第二端部20における子桁部3の高さ方向寸法(厚さ)
H6 :先端部分22の高さ方向寸法
H7 :先端部分22の下方に形成された空間の高さ方向寸法