(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】嚥下医療装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230309BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2021527373
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012352
(87)【国際公開番号】W WO2020261674
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019116091
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501146513
【氏名又は名称】株式会社ジェイ クラフト
(73)【特許権者】
【識別番号】514097923
【氏名又は名称】ユーセンスメディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300079612
【氏名又は名称】株式会社アイ・メデックス
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】上野 博司
(72)【発明者】
【氏名】越久 仁敬
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-58172(JP,A)
【文献】国際公開第2018/119424(WO,A1)
【文献】特表2017-519552(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038390(WO,A1)
【文献】特表2017-510379(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に嚥下を誘導するための嚥下誘導動作を実行する嚥下医療装置であって、
嚥下を促進させる刺激を付与するための電極と、前記電極を対象部位に密着させる導電性の粘着部材と、を備え、前記対象部位である咽頭部に装着される交換可能な電極ユニットと、
前記嚥下誘導動作を制御する制御ユニットと、
前記電極ユニットに配置され、前記電極ユニットの経時的な使用状況に関する使用情報、および前記電極ユニットが真正品であることを確認するための確認情報を記憶する記憶部と、
前記電極ユニットに配置され、前記使用情報に基づく情報および前記確認情報を前記制御ユニットに送信する制御部と、
を備え、
前記制御ユニットは、前記制御部から受信した前記使用情報に基づく情報および前記確認情報により、前記電極ユニットの特性を担保するための設定条件を前記使用情報が充足しないこと、または前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限するための制御を実行する、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の嚥下医療装置において、
前記制御部は、前記使用情報が前記設定条件を充足するか否かを判定するとともに、その判定結果を、前記使用情報に基づく情報として、前記制御ユニットに送信する、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の嚥下医療装置において、
前記制御ユニットは、前記使用情報が前記設定条件を充足しないことに基づいて、前記嚥下誘導動作を中止する、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の嚥下医療装置において、
前記制御ユニットは、前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記嚥下誘導動作を中止する、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の嚥下医療装置において、
情報を表示するための表示部を備え、
前記制御ユニットは、前記使用情報が前記設定条件を充足しないことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制止するための報知情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項6】
請求項5に記載の嚥下医療装置において、
前記制御ユニットは、前記使用情報と前記設定条件との関係を示す情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の嚥下医療装置において、
前記制御ユニットは、前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できたか否かを示す情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の嚥下医療装置において、
前記制御ユニットは、
前記電極ユニットの使用を制限するための制御として、前記嚥下誘導動作を中止する制御を実行し、
前記設定条件を前記使用情報が充足しないこと、および前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことの何れに基づいて前記嚥下誘導動作を中止したかを使用者に報知する制御を実行する、
ことを特徴とする嚥下医療装置。
【請求項9】
嚥下を促進させる刺激を付与するための電極と、前記電極を対象部位に密着させる導電性の粘着部材と、を備え、前記対象部位である咽頭部に装着される交換可能な電極ユニットを用いて、患者に嚥下を誘導するための嚥下誘導動作を実行する制御ユニットの制御部に所定の機能を実行させるプログラムであって、
前記電極ユニットは、
当該電極ユニットの経時的な使用状況に関する使用情報、および前記電極ユニットが真正品であることを確認するための確認情報を記憶する記憶部と、
前記使用情報に基づく情報および前記確認情報を、当該電極ユニットを用いて前記嚥下の誘導動作を実行する制御ユニットに送信する制御部と、を備え、
前記プログラムは、
前記電極ユニットの経時的な使用状況に関する使用情報に基づく情報および前記確認情報を、前記電極ユニットから取得する機能と、
前記電極ユニットから受信した前記使用情報に基づく情報により、前記電極ユニットの特性を担保するための設定条件を前記使用情報が充足しないことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限する機能と、
前記電極ユニットから受信した前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限する機能と、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下に関する医療動作を実行する嚥下医療装置、および、嚥下に関する医療動作を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる「誤嚥」によって引き起こされる誤嚥性肺炎が、特に、高齢者において問題となっている。「誤嚥」とは、適切に嚥下を発生させることができず、飲み込まれたものが食道ではなく気管に入る病態のことである。誤嚥性肺炎を抑制するためには、適正なタイミングで嚥下を行わせることが効果的である。
【0003】
以下の特許文献1には、咽頭部に電気刺激を与えることにより、適正なタイミングで嚥下を誘導する装置が記載されている。この装置では、患者の咽頭部付近に貼着された電極から患者の上咽頭神経に電気刺激が付与されて、嚥下が誘導される。電気刺激は、患者の呼息期間において付与される。また、以下の特許文献2には、患者の呼吸、嚥下音および喉頭部の変位の各検出結果に基づいて嚥下を監視し、誤嚥のリスクを判定する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/038390号
【文献】国際公開第2018/003127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された構成では、患者の皮膚との密着性を高めるために、電極の上面にゲルシート等の導電性の粘着部材が重ねられる。これにより、粘着部材が患者の皮膚に密着し、電極から咽頭部に効果的に電気刺激が付与される。その結果、患者に対して適切に嚥下を誘導できる。
【0006】
しかし、この構成では、患者に対する治療等において装置が使用されるごとに、粘着部材が皮膚に密着する状態で咽頭部に装着される。このため、装置の使用回数に応じて粘着部材に患者の皮脂等が付着し、その結果、粘着部材は、徐々に、接着力が低下することとなってしまう。また、粘着部材が粘着性導電含水ゲルの場合は、患者の発汗による汗等が、粘着性導電含水ゲルに浸透し粘着力が低下する。さらに、繰返し使用することにより、著しく粘着力が低下し、皮膚との密着性が悪くなることから、導電性が悪くなる惧れがある。また、粘着部材が粘着性導電疎水ゲルの場合も同じく、著しく粘着力が低下し皮膚への密着性が悪くなることから導電性が悪くなる惧れがある。このように、粘着部材の本来の特性が担保されない場合、患者の咽頭部に適切に電気刺激を付与できず、結果、嚥下の誘導を適切に行えない惧れがある。
【0007】
同様に、上記特許文献2の構成では、患者の呼吸や喉頭部の変位を検出するためのセンサが、使用に伴い劣化することが想定され得る。この場合も、これらセンサに劣化が生じると、患者の呼吸や喉頭部の変位を適切に検出できず、結果、嚥下の監視を適切に行えない惧れがある。
【0008】
かかる問題に鑑み、本発明は、嚥下に関する医療動作の適正さを担保することが可能な嚥下医療装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、患者に嚥下を誘導するための嚥下誘導動作を実行する嚥下医療装置に関する。本態様に係る嚥下医療装置は、嚥下を促進させる刺激を付与するための電極と、前記電極を対象部位に密着させる導電性の粘着部材と、を備え、前記対象部位である咽頭部に装着される交換可能な電極ユニットと、前記嚥下誘導動作を制御する制御ユニットと、前記電極ユニットに配置され、前記電極ユニットの経時的な使用状況に関する使用情報、および前記電極ユニットが真正品であることを確認するための確認情報を記憶する記憶部と、前記電極ユニットに配置され、前記使用情報に基づく情報を前記制御ユニットに送信する制御部と、を備える。前記制御ユニットは、前記制御部から受信した前記使用情報に基づく情報および前記確認情報により、前記電極ユニットの特性を担保するための設定条件を前記使用情報が充足しないこと、または前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限するための制御を実行する。
【0010】
本態様に係る嚥下医療装置によれば、電極ユニットの使用状況に関する使用情報が電極ユニットの特性を担保するための設定条件を充足しない場合、すなわち、粘着部材に経時的な劣化が生じたと想定される場合に、電極ユニットの使用を制限するための制御が行われる。よって、嚥下誘導動作の適正さを担保することができる。また、電極ユニットが異なる制御ユニットに組み合わされた場合も、使用状況に関する使用情報を、電極ユニットにおいて適正に管理できる。よって、制御ユニットにおいて、電極ユニットの使用を制限するための制御を適正に実行することができる。
さらに、電極ユニットが真正品でない場合にも、電極ユニットの使用を制限するための制御が行われる。これにより、電極ユニットの粗悪な模倣品が使用されることが排除される。よって、嚥下誘導動作の適正さをさらに確実に担保することができる。
なお、上記において、「前記電極を前記対象部位に密着させる導電性の粘着部材」とは、電極に粘着部材を重ねて配置する形態の他、粘着部材自身が電極を構成する形態、すなわち、粘着部材が電極の機能をも兼ね備える形態も含むものである。
【0012】
この場合、前記電極ユニットは、前記使用情報が前記設定条件を充足するか否かを判定するとともに、その判定結果を前記制御ユニットに送信するよう構成され得る。これにより、制御ユニットにおける処理負担を軽減できる。なお、使用情報が前記設定条件を充足するか否かの判定は、制御ユニットにおいて行われてもよい。この場合、電極ユニットは、記憶部から使用情報を読み出して制御ユニットに送信する。
【0022】
本態様に係る嚥下医療装置において、前記制御ユニットは、前記使用情報が前記設定条件を充足しないことに基づいて、前記嚥下誘導動作を中止するよう構成され得る。この構成によれば、電極ユニットに経時的な劣化が生じたと想定される場合に、嚥下誘導動作自体が中止される。よって、劣化が生じた電極ユニットにより嚥下誘導動作が行われることを防ぐことができ、嚥下誘導動作の適正さを確実に担保することができる。
本態様に係る嚥下医療装置において、前記制御ユニットは、前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記嚥下誘導動作を中止するよう構成され得る。この構成によれば、電極ユニットの粗悪な模倣品が使用された場合に嚥下誘導動作自体が中止される。よって、粗悪な模倣品を用いられることを確実に排除でき、嚥下誘導動作の適正さをさらに確実に担保できる。
【0023】
本態様に係る嚥下医療装置は、情報を表示するための表示部を備え得る。この場合、前記制御ユニットは、前記使用情報が前記設定条件を充足しないことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制止するための報知情報を前記表示部に表示させる。この構成によれば、医師等の使用者は、報知情報を参照することにより、劣化した電極ユニットの使用を回避できる。よって、嚥下誘導動作の適正さを担保することができる。
【0024】
この場合、前記制御ユニットは、前記使用情報と前記設定条件との関係を示す情報を前記表示部に表示させるよう構成され得る。この構成によれば、医師等の使用者は、表示部に表示された当該情報を参照することにより、電極ユニットの経時的な劣化の状態を把握でき、適宜、電極ユニットを交換する等の対応を採り得る。よって、嚥下誘導動作をより適正に進めることができる。
また、前記制御ユニットは、前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できたか否かを示す情報を前記表示部に表示させるよう構成され得る。この構成によれば、医師等の使用者は、表示部に表示された当該情報を参照することにより、患者に装着された電極ユニットが真正品であるか否かを把握でき、嚥下誘導動作をより適正に進めることができる。
また、前記制御ユニットは、前記電極ユニットの使用を制限するための制御として、前記嚥下誘導動作を中止する制御を実行し、前記設定条件を前記使用情報が充足しないこと、および前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことの何れに基づいて前記嚥下誘導動作を中止したかを使用者に報知する制御を実行するよう構成され得る。
【0027】
本発明の第2の態様は、嚥下を促進させる刺激を付与するための電極と、前記電極を対象部位に密着させる導電性の粘着部材と、を備え、前記対象部位である咽頭部に装着される交換可能な電極ユニットを用いて、患者に嚥下を誘導するための嚥下誘導動作を実行する制御ユニットの制御部に所定の機能を実行させるプログラムに関する。前記電極ユニットは、当該電極ユニットの経時的な使用状況に関する使用情報、および前記電極ユニットが真正品であることを確認するための確認情報を記憶する記憶部と、前記使用情報に基づく情報および前記確認情報を、当該電極ユニットを用いて前記嚥下の誘導動作を実行する制御ユニットに送信する制御部と、を備える。前記プログラムは、前記電極ユニットの使用状況に関する使用情報に基づく情報および前記確認情報を、前記電極ユニットから取得する機能と、前記電極ユニットから受信した前記使用情報に基づく情報により、前記電極ユニットの特性を担保するための設定条件を前記使用情報が充足しないことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限する機能と、前記電極ユニットから受信した前記確認情報により前記電極ユニットが真正品であることを確認できなかったことに基づいて、前記電極ユニットの使用を制限する機能と、を含む。
【0028】
本態様によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、嚥下に関する医療動作の適正さを担保することが可能な嚥下医療装置およびプログラムを提供することができる。
【0030】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る、嚥下誘導装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る、嚥下誘導装置の使用状況を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る、電気刺激装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態1に係る、使用情報の構成を示す図である。
図4(b)は、実施形態1に係る、確認情報の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、制御ユニットの回路構成を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る、嚥下誘導動作を開始させる際に電極ユニットの制御部により実行される制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る、嚥下誘導動作を開始させる際に制御ユニットの制御部により実行される制御を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)、(b)は、実施形態1に係る、嚥下誘導動作の開始時に表示される開始画面の構成を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、実施形態1に係る、嚥下誘導動作の開始時に表示される開始画面の構成を示す図である。
図9(b)は、実施形態1に係る、嚥下誘導動作の開始時に表示される開始画面の他の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る、使用情報の更新処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)は、実施形態2に係る、呼吸検出装置の構成を示す図、
図11(b)は、実施形態2に係る、呼吸検出装置を患者に装着するための胴衣の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る、呼吸検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る、電気刺激装置と呼吸検出装置が患者に装着された状態を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係る、嚥下監視装置の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る、嚥下監視装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る、呼吸検出装置と嚥下監視装置が患者に装着された状態を示す図である。
【
図17】
図17は、変更例に係る電極ユニットの構成を示す図である。
【
図18】
図18は、他の変更例に係る、嚥下誘導動作を開始させる際に制御ユニットの制御部により実行される制御を示すフローチャートである。
【0032】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0034】
<実施形態1>
実施形態1は、たとえば誤嚥を治療するために患者に嚥下を誘導するための嚥下誘導装置1に本発明を適用したものである。
【0035】
実施形態1では、嚥下誘導装置1および電気刺激装置2が、特許請求の範囲に記載の「嚥下医療装置」に対応し、電極ユニット20が、特許請求の範囲に記載の「装着ユニット」に対応する。ただし、以下に示す実施形態1は、あくまで本発明を実施化した場合の一つの構成例であって、特許請求の範囲に係る発明を何ら限定するものではない。
【0036】
図1は、実施形態1に係る嚥下誘導装置1の構成を示す図、
図2は、嚥下誘導装置1の使用状況を示す図である。
【0037】
図1に示すように、嚥下誘導装置1は、電気刺激装置2と制御ユニット3とを備える。電気刺激装置2は、患者の咽頭部に電気刺激を付与する。制御ユニット3は、電気刺激装置2に対し、嚥下を誘導するための制御を行う。電気刺激装置2と制御ユニット3とは、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信によって、互いに通信可能である。制御ユニット3は、たとえば、タブレットにより構成される。制御ユニット3が、携帯電話機等の他の情報端末装置であってもよい。また、電気刺激装置2と制御ユニット3とが有線により通信可能であってもよい。制御ユニット3は、互いに異なる複数の電気刺激装置2に対して個別に通信可能であってもよい。
【0038】
電気刺激装置2は、ホルダユニット10と、電極ユニット20とを備える。ホルダユニット10は、患者の首に沿う形状を有する。すなわち、ホルダユニット10は、装着時に患者の上胸付近に垂れる2つの端部10bが接続部10aにより接続された形状を有する。ホルダユニット10の装着時に、接続部10aが患者の首の後ろに沿って旋回する。ホルダユニット10の外側面は、たとえば、ABS素材によって構成される。首に巻きつく接続部10aは、たとえば、EVA素材等の柔らかい素材で構成されることが好ましい。2つの端部10bの表面等に、各端部10bが患者の首の左右何れに回されるかを表示するための記号(左/右、L/R)等が付記されてもよい。
【0039】
ホルダユニット10には、一方の端部10bの表面に、電源ボタン11と緊急停止ボタン12が配置されている。電源ボタン11は、電気刺激装置2を動作させるためのボタンである。緊急停止ボタン12は、電気刺激装置2の動作を緊急停止させるためのボタンである。電源ボタン11および緊急停止ボタン12の奥には、回路基板が内包されている。この回路基板に、制御ユニット3と無線通信を行うための通信部や、制御ユニット3からの制御信号に基づいて電極ユニット20を駆動するための制御部等が実装されている。
【0040】
2つの端部10bの内側面に、それぞれ、弾力性のある押さえ部材13が装着されている。押さえ部材13は、ホルダユニット10が患者に装着された際に、電極ユニット20の電極部分を患者の首に押さえ付けるためのものである。押さえ部材13は、たとえば、伸縮性のある布により袋状に構成され、この袋の内部にマイクロビーズ等の緩衝部材13aが内包されている。
【0041】
2つの端部10bの内側面には、さらに、帯状のベルト14が装着されている。ベルト14は、ホルダユニット10を患者の首に固定するためのものである。一方のベルト14の内側面には、面ファスナーの一方側を構成する留め部14aが設けられている。他方のベルト14の外側面は、全面が面ファスナーの他方の留め部となっている。一方のベルト14の留め部14aを他方のベルト14の外側面に重ねることにより、2つのベルト14が接合される、2つのベルト14の重なりを引きはがすことにより、2つのベルト14の接合が解除される。
【0042】
2つの端部10bの下端から、それぞれ、ケーブル15bが引き出されている。ケーブル15bは、ホルダユニット10に内装された上述の回路基板に接続されている。ケーブル15bの先端に、電極ユニット20を接続するためのコネクタ15aが装着されている。
図1の一点鎖線の矢印に示すように、コネクタ15aに、電極ユニット20の端子22が差し込まれる。
【0043】
コネクタ15aには、差し込まれた端子22を固定するための構造が設けられている。たとえば、コネクタ15aの外側面に、固定と解除を切り替えるためのレバー15cが設けられる。レバー15cをコネクタ15aの外側面から起こすことにより、コネクタ15aに対する端子22の着脱が可能となる。この状態で端子22をコネクタ15aに挿入し、その後、レバー15cをコネクタ15aの外側面に倒すことにより、端子22がコネクタ15aに固定される。
【0044】
電極ユニット20は、可撓性を有する薄板状の構造を有する。平面視において、電極ユニット20は、一方向に細長い形状である。電極ユニット20の一方の端部の内側面には、2つの粘着部材21が配置され、これら粘着部材21の内側に電極24が配置されている。粘着部材21は、導電性を有する。粘着部材21は、たとえば、ゲル材料からなるパッドにより構成される。ゲル材料として、粘着性導電含水ゲルまたは粘着性導電疎水ゲルを用いられ得る。
【0045】
電極ユニット20の他方の端部から端子22が突出している。電極ユニット20の他方の端部には、回路基板が内装され、この回路基板に端子22が接続されている。この回路基板には、たとえば、EEPROMからなる記憶部23が搭載されている。後述のように、記憶部23には、電極ユニット20の経時的な使用状況に関する使用情報および電極ユニット20が真正品であることを確認するための確認情報等が記憶される。
【0046】
電気刺激装置2が使用状態にない場合、電極ユニット20は、コネクタ15aから取り外されて、収納シート(雛形紙)により、湿気や太陽光に晒されないように収納される。電気刺激装置2が使用される際に、電極ユニット20がコネクタ15aに装着されて、ホルダユニット10に一体化される。
【0047】
その後、ホルダユニット10の接続部10aが患者の首に掛けられ、2つの電極ユニット20の端部が、それぞれ、患者の喉頭部の左側および右側の部分に当てられる。このとき、電極ユニット20の端部に配置された粘着部材21が、皮膚の表面に粘着する。この状態で、2つの押さえ部材13がそれぞれ電極ユニット20の端部の上面に当てられ、さらに2つのベルト14が重ねられて接合される。このとき、押さえ部材13が撓み、その反力によって、電極ユニット20の端部が、患者の首に押し付けられる。こうして、
図2に示すように、粘着部材21が患者の首に押し付けられた状態で、電極ユニット20が患者に装着される。
【0048】
その後、制御ユニット3によって電極ユニット20が駆動されると、粘着部材21の内側に配置された電極24に電流が流れ、嚥下反射が促進される。2つの電極24が、プラス極とマイナス極に設定され、残り2つの電極24が、プラスとマイナスの極に設定される。一対のプラス極とマイナス極と、他の一対のプラス極とマイナス極が、甲状軟骨を中心としてX字状に配置されるよう、4つの電極24が配置される。2対の電極24は、何れも中周波数となるよう駆動され、且つ、2対の電極24間の周波数の差が低周波数となるよう駆動される。これにより、深部にこれら周波数の差に応じた低周波の干渉波が発生し、この干渉波によって上喉頭神経が刺激される。これにより、上喉頭神経を経由して咽頭・喉頭から脳幹へ伝達される求心性信号が増強され、嚥下反射が促進される。このように2対の電極による干渉波を用いると、皮膚の痛みや不快感を抑えながら、効果的に、嚥下を促進させることができる。
【0049】
図3は、電気刺激装置2の回路構成を示すブロック図である。
【0050】
なお、便宜上、
図3には、ホルダユニット10に装着される2つの電極ユニット20のうち一方が図示されているが、他方の電極ユニット20も同様の構成である。ドライバ113、コネクタ15aおよび他方の電極ユニット20の組み合わせが、
図3の構成にさらに追加される。
【0051】
ホルダユニット10および電極ユニット20は、それぞれ、回路基板110、120を備える。上述のように、回路基板110は、ホルダユニット10に内装されている。また、回路基板120は、電極ユニット20の端子22側の端部に内装されている。これら回路基板110、120は、コネクタ15aに端子22が接続されることにより、互いに接続される。
【0052】
ホルダユニット10の回路基板110には、制御部111と、記憶部112と、ドライバ113と、無線通信部114と、電源115とが実装されている。この他、
図1に示した電源ボタン11および緊急停止ボタン12も、回路基板110に設置されている。
【0053】
制御部111は、たとえばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部112に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。記憶部112は、ROM、RAM等により構成され、各部を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部112は、制御部111が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0054】
ドライバ113は、制御部111からの制御に従って、電極24を駆動する。無線通信部114は、制御部111からの制御に従って、制御ユニット3と無線通信を行う。電源115は、電池を備え、回路基板110、120の各回路部に電源電圧を供給する。電源電圧は、
図1のケーブル15bを介して電極ユニット20側の回路基板120に供給される。
【0055】
電極ユニット20の回路基板120には、制御部121と記憶部23が実装されている。制御部121は、たとえばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部23に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。制御部121は、現在の日時を計時する時計機能を有している。記憶部23は、ROM、RAM等により構成され、各部を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部23は、制御部121が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0056】
記憶部23は、データを書き込み消去可能な不揮発性メモリ(EEPROM)を含んでいる。記憶部23は、この不揮発性メモリに、電極ユニット20の使用状況に関する使用情報を記憶する。また、記憶部23は、この不揮発性メモリにおける使用情報の書き込みエリア以外の所定のエリアに、電極ユニット20が真正品であること、すなわち、適正な製造元により製造されたことを確認するための確認情報を記憶する。
【0057】
図4(a)は、使用情報の構成を示す図、
図4(b)は、確認情報の構成を示す図である。
【0058】
図4(a)に示すように、使用情報は、電極ユニット20が使用された回数と、各使用時の開始日時、終了日時および使用時間と、電極ユニット20が最初に使われた時点からの累積使用時間とから構成されている。使用時間は、開始日時と終了日時の差分として算出される。累積使用時間は、各使用回数までの使用時間を加算することにより算出される。
【0059】
なお、使用情報が、開始日時と終了日時のみから構成されてもよい。この場合、記憶部23に記憶されている開始日時と終了日時の組の数が、使用回数となる。また、使用時間と累積使用時間は、記憶部23に記憶されている開始日時と終了日時に基づいて、上記演算により随時算出され得る。
【0060】
あるいは、使用情報が、使用時間のみから構成されてもよい。この場合、記憶部23に記憶されている使用時間の数が、使用回数となる。また、使用時間を加算することにより累積使用時間が随時算出され得る。
【0061】
図4(b)に示すように、確認情報は、所定桁数のシリアル番号と暗号キーとからなる。シリアル番号は、暗号キーによって暗号化されており、暗号キーでシリアル番号が格納されているメモリ領域のデータを復号することにより、所定桁数のシリアル番号が取得される。
【0062】
【0063】
制御ユニット3は、制御部201と、記憶部202と、表示入力部203と、第1無線通信部204と、第2無線通信部205とを備える。
【0064】
制御部201は、たとえばCPU等の演算処理回路により構成され、記憶部202に記憶されたプログラム202aに従って、各部を制御する。記憶部202は、ROM、RAM等により構成され、嚥下誘導動作を制御するためのプログラム202aを記憶する。また、記憶部202は、制御部201が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0065】
表示入力部203は、所定の情報を表示させるとともに、使用者からの操作入力を受け付ける。表示入力部203は、たとえば、タッチパネルにより構成される。制御ユニット3がタブレットである場合、制御ユニット3の前面の略全範囲が、表示入力部203の配置領域となる。
【0066】
第1無線通信部204は、制御部201からの制御に従って、電気刺激装置2の無線通信部114と無線通信を行う。第2無線通信部205は、制御部201からの制御に従って、外部通信網210に接続されたサーバ220と通信を行う。外部通信網210は、たとえば、公衆回線である。サーバ220は、嚥下誘導動作に関する各種情報を管理する。
【0067】
嚥下誘導動作を制御するためのプログラム202aは、第2無線通信部205を介して、サーバ220から制御ユニット3にダウンロードされ、記憶部202にインストールされる。この他、プログラム202aが、USBメモリや光ディスクを介して制御ユニット3に取り込まれ、記憶部202にインストールされてもよい。
【0068】
図6は、嚥下誘導動作の開始させる際に電極ユニット20の制御部121により実行される制御を示すフローチャートである。
図7は、嚥下誘導動作の開始させる際に制御ユニット3の制御部201により実行される制御を示すフローチャートである。
【0069】
医師等の使用者は、
図2に示すように電極ユニット20を患者に装着した後、制御ユニット3にインストールされたプログラム202aに基づくアプリケーションを起動し、さらに、ホルダユニット10の電源ボタン11を操作して電気刺激装置2に電源を投入する。
【0070】
図6に示すように、電極ユニット20の制御部121は、電源が投入されると(S101)、制御ユニット3から情報送信要求が送信されるのを待つ(S102)。また、
図7に示すように、制御ユニット3の制御部201は、プログラム202aに基づくアプリケーションが起動されると(S201)、第1無線通信部204を介して、電気刺激装置2との通信を確立する(S202)。そして、通信が確立されると、制御部201は、
確認情報と使用情報の送信要求を電気刺激装置2に送信し(S203)、電気刺激装置2から
確認情報と使用情報が送信されるのを待つ(S204)。送信された送信要求は、電気刺激装置2の回路基板110に配置された制御部111を介して、電極ユニット20の制御部121に転送される。
【0071】
図6を参照して、電極ユニット20の制御部121は、制御ユニット3から情報送信要求を受信すると(S102:YES)、記憶部23上の
確認情報の記憶エリアからデータを読み出し、読み出したデータを、回路基板110に配置された制御部111を介して、制御ユニット3に送信する(S103)。さらに、制御部121は、記憶部23上の使用情報の記憶エリアからデータを読み出し、読み出したデータに基づき、電極ユニット20の使用状況の適否を判定する(S104)。
【0072】
具体的には、制御部121は、使用情報から電極ユニット20の使用回数を取得し、使用回数が、電極ユニット20の特性を担保するための設定条件を充足するか否か、すなわち、電極ユニット20の特性を担保可能な上限回数Nth未満であるか否かを判定する(S105)。ここで、上限回数Nthは、電極ユニット20に配された粘着部材21の経時的な劣化に基づいて設定される。
【0073】
すなわち、患者に対する治療等において電気刺激装置2が使用されるごとに、粘着部材21が患者の皮膚に密着する。このため、電極ユニット20の使用回数に応じて粘着部材21に患者の皮脂等が付着し、これにより、粘着部材21は、徐々に、接着力が低下していく。また、粘着部材21が吸水性の場合は、患者の汗等が粘着部材21に浸透し、粘着部材21の本来の特性が担保されない惧れがある。あるいは、粘着部材21が非吸水性の場合は、粘着部材21の水分が揮発して粘着部材21の接着力が低下する惧れがある。このように、粘着部材21の本来の特性が担保されない場合、患者の咽頭部に適切に電気刺激を付与できず、結果、嚥下の誘導を適切に行えない惧れがある。
【0074】
このような観点から、上限回数Nthは、嚥下の誘導を適正に行える程度に粘着部材21に粘着性が残っていると想定される使用回数に設定される。たとえば、上限回数Nthは、14回~20回程度に設定される。上限回数Nthは、プログラム202aに予め設定されている。ユーザが上限回数Nthをデフォルト値から調整可能であってもよい。
【0075】
電極ユニット20の使用回数が上限回数Nth未満である場合(S105:YES)、制御部121は、電極ユニット20の特性を担保できることを示す情報と、記憶部23から読み出した使用情報とを含む使用状況情報を、制御ユニット3に送信する(S106)。他方、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nth以上である場合(S105:NO)、制御部121は、電極ユニット20の特性を担保できないことを示す情報と、記憶部23から読み出した使用情報とを含む使用状況情報を、制御ユニット3に送信する(S107)。これらの情報も、回路基板110に配置された制御部111を介して、制御ユニット3に送信される。
【0076】
なお、ステップS101~S107の処理は、ホルダユニット10に接続されている2つの電極ユニット20ごとに行われる。したがって、制御ユニット3には、これら2つの電極ユニット20について、確認情報と使用状況情報がそれぞれ送信される。
【0077】
図7を参照して、制御ユニット3の制御部201は、電極ユニット20から確認情報と使用状況情報を受信すると(S204:YES)、まず、受信した確認情報に基づき、電極ユニット20の真偽を判定する(S205)。具体的には、制御部201は、確認情報に含まれる暗号キーに基づいてシリアル番号を復号する。そして、制御部201は、復号したシリアル番号の桁数が予め決められた桁数であるか否かに基づいて、電極ユニット20の真偽を判定する。
【0078】
さらに、制御部201は、復号したシリアル番号がサーバ220に2重登録されていないかをサーバ220に問い合わせ、その応答に基づいて、電極ユニット20の真偽を判定する。
【0079】
たとえば、制御部201は、復号したシリアル番号を、当該制御ユニット3が使用される医療施設のコード番号とともに、サーバ220に送信する。サーバ220は、受信したシリアル番号を医療施設のコード番号に対応づけて、データベースに登録する。ここで、模倣品である電極ユニット20の記憶部23に、真正品である電極ユニット20の確認情報がそのままコピーされた場合、サーバ220には、たとえば、同一のシリアル番号が、異なる医療施設のコード番号に対応づけられて、複数登録される。サーバ220は、制御部201から受信したシリアル番号が、異なる医療施設のコード番号に対応付けて登録されている場合、2重登録が存在すること(電極ユニット20が模倣品であること)を示す応答を制御部201に送信する。他方、サーバ220は、制御部201から受信したシリアル番号が、異なる医療施設のコード番号に対応付けて登録されていない場合、2重登録が存在しないこと(電極ユニット20が真正品であること)を示す応答を制御部201に送信する。
【0080】
こうして、電極ユニット20の真偽を判定した後、制御部201は、真偽の判定結果と、ステップS204で受信した使用状況情報とに基づく開始画面を、表示入力部203に表示させる(S206)。制御部201は、開始画面に対する使用者からの操作に応じて、嚥下誘導動作を開始し、あるいは、嚥下誘導動作を中止する(S207)。これにより、嚥下誘導開始時の処理が終了する。
【0081】
図8(a)、(b)および
図9(a)は、ステップS206において表示される開始画面300の構成を示す図である。
【0082】
図8(a)は、電極ユニット20の真偽判定結果が真であり、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達していない場合の開始画面300であり、
図8(b)は、電極ユニット20の真偽判定結果が真であり、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達している場合の開始画面300である。また、
図9(a)は、電極ユニット20の真偽判定結果が偽であり、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達していない場合の開始画面300である。ここでは、上限回数Nthが14回に設定されている。
【0083】
なお、
図8(a)、(b)および
図9(a)には、ホルダユニット10に装着された2つの電極ユニット20の一方(ここでは、左側の電極ユニット20)に関する開始画面300が示されている。これらの開始画面300において開始ボタン340が操作されると、他方の電極ユニット20(ここでは、右側の電極ユニット20)に対する開始画面300が表示される。この表示方法に代えて、2つの電極ユニット20に関する情報を同時に表示するように開始画面300が構成されてもよい。
【0084】
図8(a)を参照して、開始画面300は、領域310、320、330と、開始ボタン340と、中止ボタン350とを備えている。
【0085】
領域310には、電極ユニット20の使用状況が表示される。領域310は、現時点までの電極ユニット20の使用回数と上限回数Nthとの関係を示すグラフ311と、上限回数Nthに到達するまでの使用回数(使用可能残回数312)と、現時点までの電極ユニット20の累積使用時間313と、電極ユニット20の使用開始日314および最終使用日315とを含んでいる。使用回数、累積使用時間313、使用開始日314および最終使用日315は、それぞれ、
図4(a)に示した使用情報の回数、累積使用時間、開始日時、終了日時から取得される。
【0086】
グラフ311には、現在の使用回数(ここでは13回)が文字情報と棒グラフで示され、上限回数Nth(ここでは14回)が文字情報と破線で示される。使用者は、グラフ311を参照することにより、電極ユニット20の現在の使用回数と上限回数Nthとの関係を直感的に把握できる。また、使用者は、使用可能残回数312を参照することにより、電極ユニット20を適正に使用可能な残回数を正確に把握でき、累積使用時間313を参照することにより、電極ユニット20が使われ始めてからの使用時間の合計時間を把握できる。さらに、ユーザは、使用開始日314および最終使用日315を参照することにより、電極ユニット20の経時的劣化の可能性や品質担保の保証期間との関係等を把握できる。
【0087】
領域320には、
図7のステップS205においてなされた電極ユニット20の真偽判定結果が表示される。使用者は、領域320を参照することにより、患者に装着された電極ユニット20が真正品であるか否かを把握できる。領域330には、電極ユニット20の特性担保の可否を示唆するコメントが表示される。たとえば、領域330には、
図7のステップS205における判定結果や、現時点までの電極ユニット20の使用回数と上限回数Nthとの関係等を示すコメントが表示される。使用者は、領域330を参照することにより、電極ユニット20の特性が担保できるか否かを把握できる。
【0088】
開始ボタン340は、嚥下誘導装置1の動作を開始させるためのボタンであり、中止ボタン350は、嚥下誘導装置1の動作を終了させるためのボタンである。ホルダユニット10に装着された2つの電極ユニット20の各開始画面300において開始ボタン340が操作されると、嚥下誘導装置1の動作が開始し、予め決められた規則に従って患者の咽頭部に電気刺激が付与される。これにより、患者に嚥下が誘導される。
【0089】
使用者は、領域310、320、330に表示された情報を把握した上で、開始ボタン340と中止ボタン350の何れかを操作する。
【0090】
たとえば、
図8(a)の開始画面300が表示された場合、使用者は、電極ユニット20の真偽および使用状況の何れにも問題ないことを把握する。この場合、使用者は、開始ボタン340を操作すればよい。
【0091】
また、
図8(b)の開始画面300が表示された場合、使用者は、電極ユニット20の真偽には問題ないものの、使用回数に問題があることを把握する。この場合、使用者は、中止ボタン350を操作して、当該電極ユニット20を交換すればよい。なお、使用回数が上限回数Nthに一致しているものの、累積使用時間313が短い場合等、使用者が、電極ユニット20の品質が担保され得ると判断した場合、使用者は、開始ボタン340を操作してもよい。
【0092】
図9(a)の開始画面300が表示された場合、使用者は、電極ユニット20が真正品でないことを把握する。この場合、開始ボタン340が無効化される。これにより、使用者は、中止ボタン350を操作した上で、真偽判定が偽となった電極ユニット20を交換する。中止ボタン350が操作されることに応じて、他方の電極ユニット20の開始画面300が表示されてもよい。これにより、使用者は、他方の電極ユニット20の真偽判定結果および使用回数を把握でき、適宜、他方の電極ユニット20の交換を進めることができる。このことは、
図8(b)の開始画面300が表示された場合も同様である。
【0093】
なお、
図8(b)の開始画面300では、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達していても開始ボタン340が操作可能であったが、
図9(b)に示すように、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達すると開始ボタン340が操作不能に無効化されてもよい。この場合、電極ユニット20の使用回数が上限回数Nthに到達しても、累積使用時間313が所定の上限時間より短い場合は、開始ボタン340が有効化されてもよい。
【0094】
あるいは、使用回数が上限回数Nthを超え、且つ、その差分が所定回数以上になった場合に、開始ボタン340が操作不能に無効化されてもよい。この場合も、累積使用時間313が所定の上限時間より短い場合は、開始ボタン340が有効化されてもよい。
【0095】
また、使用開始日314から経過時間が所定の上限時間(たとえば、電極ユニット20の品質保証期間)を超える場合や、最終使用日315から経過時間が所定の上限時間(たとえば、電極ユニット20の品質保証期間)を超える場合に、その旨を注意喚起するためのメッセージが、領域330に含まれてもよい。さらに、これらの場合に、開始ボタン340が無効化されてもよい。
【0096】
図10は、
図4(a)に示した使用情報の更新処理を示すフローチャートである。
図8(a)、(b)に示した各電極ユニット20の開始画面300において、使用者が開始ボタン340を操作すると、制御ユニット3の制御部201は、ホルダユニット10の制御部111に開始通知を送信する。これに伴い、制御部111は、電極ユニット20の制御部121に、開始通知を送信する。電極ユニット20の制御部121は、開始通知を受信すると(S111:YES)、現在の使用情報における使用回数を1カウントアップした使用回数の行を使用情報のテーブルに追加し(S112)、この行の開始日時の欄に現在の日時を記憶させる(S113)。その後、制御部121は、ホルダユニット10の制御部111から終了通知が送信されるのを待つ(S114)。
【0097】
嚥下誘導装置1の動作が開始すると、制御ユニット3の表示入力部203に表示される画面が、動作画面に切り替わる。この動作画面には、動作時間等の動作状況を示す領域と、動作を終了させるための終了ボタンが含まれている。使用者が動作画面中の終了ボタンを操作すると、制御ユニット3の制御部201からホルダユニット10の制御部111に終了通知が送信される。これに伴い、制御部111は、電極ユニット20の制御部121に、終了通知を送信する。なお、嚥下誘導動作の開始時から所定時間(デフォルト時間、または、使用者が任意に設定した時間)が経過したことにより、嚥下誘導動作が自動で終了してもよい。この場合、嚥下誘導動作の終了に応じて、終了通知が制御ユニット3からホルダユニット10の制御部111に送信され、これに伴い、制御部111から電極ユニット20の制御部121に終了通知が送信される。
【0098】
制御部121は、終了通知を受信すると(S114:YES)、上記行の終了日時の欄に現在の日時を記憶させる(S115)。さらに、制御部121は、この行の開始日時と終了日時との時間差を当該行の使用時間の欄に記憶させ(S116)、この時間差を直前の累積使用時間に加算した時間をこの行の累積使用時間の欄に記憶させる(S117)。これにより、電極ユニット20における使用情報の更新処理が終了する。
【0099】
なお、
図10の処理は、ホルダユニット10に装着された2つの電極ユニット20のそれぞれにおいて行われる。これにより、2つの電極ユニット20の記憶部23に保持された使用情報が、それぞれ更新される。
【0100】
また、
図6および
図7の処理により制御ユニット3に蓄積されたデータが、
図5の第2無線通信部205を介して制御ユニット3からサーバ
220に送信され、サーバ220において管理されてもよい。
【0101】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏され得る。
【0102】
電極ユニット20の使用状況に関する使用情報(使用回数)が電極ユニット20の特性を担保するための設定条件(上限回数Nth)を充足しない場合に、電極ユニット20の使用を制限するための制御(開始画面300の表示)が行われる。これにより、電極ユニット20の粘着部材21に経時的な劣化が生じたと想定される場合に、電極ユニット20の使用が制限される。よって、嚥下誘導動作(医療動作)の適正さを担保することができる。
【0103】
使用情報を記憶する記憶部23が、電極ユニット20に配置されている。このため、電極ユニット20が異なる制御ユニット3に組み合わされた場合も、使用情報を電極ユニット20において適正に管理できる。よって、制御ユニット3において、電極ユニット20の使用を制限するための制御を適正に実行することができる。
【0104】
使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足するか否かが電極ユニット20側において判定され、その判定結果が制御ユニット3に送信される。これにより、制御ユニット3における処理負担を軽減できる。なお、使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足するか否かを判定が、制御ユニット3側において行われてもよい。この場合、電極ユニット20は、記憶部23から使用情報を読み出して制御ユニット3に送信するのみでよい。
【0105】
電極ユニット20の記憶部23には、さらに、電極ユニット20が真正品であることを確認するための確認情報がさらに記憶されている。そして、制御ユニット3は、確認情報により電極ユニット20が真正品であることを確認できなかったことに基づいて、電極ユニット20の使用を制限するための制御(開始画面300における開始ボタン340の無効化)を実行する。これにより、電極ユニット20の粗悪な模倣品が使用されることが排除され得る。よって、嚥下誘導動作の適正さをより確実に担保することができる。
【0106】
図9(b)に示した開始画面300では、使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足しないことに基づいて、開始ボタン340を無効化させ、嚥下誘導動作が中止される。すなわち、電極ユニット20に経時的な劣化が生じたと想定される場合に、嚥下誘導動作自体が中止される。よって、劣化が生じた電極ユニット20により嚥下誘導動作が行われることを防ぐことができ、嚥下誘導動作の適正さを確実に担保することができる。
【0107】
図8(b)に示したように、制御ユニット3は、使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足しないことに基づいて、電極ユニット20の使用を制止するための報知情報(領域330のメッセージ)を表示入力部203に表示させる。これにより、医師等の使用者は、報知情報(領域330のメッセージ)を参照することにより、劣化した電極ユニット20の使用を回避できる。よって、嚥下誘導動作の適正さを担保することができる。
【0108】
図8(a)~
図9(b)に示したように、制御ユニット3は、使用情報(使用回数)と設定条件(上限回数Nth)との関係を示す情報(グラフ311、使用可能残回数312、領域330のメッセージ)を表示入力部203に表示させる。これにより、医師等の使用者は、表示入力部203に表示されたこれらの情報を参照することにより、電極ユニット20の経時的な劣化の状態を把握でき、適宜、電極ユニット20を交換する等の対応を採り得る。よって、嚥下誘導動作をより適正に進めることができる。
【0109】
<実施形態2>
図11(a)は、実施形態2に係る呼吸検出装置4の構成を示す図、
図11(b)は、呼吸検出装置4を患者に装着するための胴衣5の構成を示す図である。
【0110】
実施形態2では、患者の呼吸を検出するための呼吸検出装置4が、嚥下誘導装置1にさらに含まれている。嚥下誘導装置1は、呼吸検出装置4により検出された患者の呼吸に基づいて、電極ユニット20による電気刺激のタイミングを制御する。具体的には、患者の呼息期間に電気刺激の全期間が含まれるように、電極ユニット20が制御される。これにより、誤嚥が生じない適正なタイミングで患者に嚥下が誘導され、患者における誤嚥の症状が改善される。
【0111】
実施形態2では、電極ユニット20の他、呼吸検出ユニット40が、特許請求の範囲に記載の「装着ユニット」に対応する。ただし、以下に示す実施形態2は、あくまで本発明を実施化した場合の一つの構成例であって、特許請求の範囲に係る発明を何ら限定するものではない。
【0112】
図11(a)に示すように、呼吸検出装置4は、本体ユニット30と、呼吸検出ユニット40とを備える。
【0113】
本体ユニット30は、胴衣5のポケット52に収納される形状を有する。本体ユニット30の形状は、角が丸められた直方体の形状である。本体ユニット30に、電池等の電源と、呼吸検出ユニット40を駆動するための回路基板が収納されている。本体ユニット30の表面に電源ボタン31が配置されている。また、本体ユニット30からケーブル32bが引き出され、このケーブル32bの先端にコネクタ32aが設置されている。ケーブル32bは、本体ユニット30に収納された回路基板に繋がっている。
図11(a)の一点鎖線の矢印のように、コネクタ32aに呼吸検出ユニット40の端子43が差し込まれる。
【0114】
コネクタ32aには、差し込まれた端子43を固定するための構造が設けられている。たとえば、コネクタ32aの外側面に、固定と解除を切り替えるためのレバー32cが設けられる。レバー32cをコネクタ32aの外側面から起こすことにより、コネクタ32aに対する端子43の着脱が可能となる。この状態で端子43をコネクタ32aに挿入し、その後、レバー32cをコネクタ32aの外側面に倒すことにより、端子43がコネクタ32aに固定される。
【0115】
呼吸検出ユニット40は、呼吸に伴う患者の胴体の拡大および縮小を検出するための帯状の伸縮センサ41を備える。伸縮センサ41は、たとえば、伸縮に応じて静電容量が変化する構成である。伸縮センサ41は、たとえば、ゴム素材で構成される。
【0116】
伸縮センサ41の一方の端部に把持部42が装着され、この把持部42から端子43が突出している。把持部42には、回路基板が内装され、この回路基板に端子43が接続されている。この回路基板は、伸縮センサ41にも接続されている。また、この回路基板には、たとえば、EEPROMからなる記憶部44が搭載されている。後述のように、記憶部44には、伸縮センサ41の経時的な使用状況に関する使用情報および伸縮センサ41が真正品であることを確認するための確認情報等が記憶される。
【0117】
さらに、伸縮センサ41の両端にそれぞれ幅広の台座部45が設けられている。これら台座部45の裏面に、面ファスナーからなる留め部45aが設けられている。留め部45aは、胴衣5の装着領域53に呼吸検出ユニット40を装着するためのものである。留め部45aは、面ファスナーの一方側を構成し、装着領域53に面ファスナーの他方側が設けられる。この他、伸縮性の布に伸縮センサ41が接着され、この布が、胴衣5の装着領域53に面ファスナー等により装着されてもよい。
【0118】
図11(b)に示すように、胴衣5は、患者の上半身に着衣可能なジャケット状の形状を有する。胴衣5は、伸縮可能な素材で構成される。胴衣5の一方の側部は、開閉可能となっており、この側部にベルト51が設置されている。ベルト51の端部裏面に、面ファスナーからなる留め部51aが設けられている。留め部51aが重なる胴衣5の表面にも面ファスナーが設けられている。ベルト51の端部を胴衣5の表面に重ねることにより、留め部51aが胴衣5に仮止めされる。これにより、胴衣5の側部が閉じられる。
【0119】
胴衣5の胸部付近にポケット52が設けられている。ポケット52の底部には、コネクタ32aおよびケーブル32bを通すための孔が設けられている。さらに、胴衣5の腹部付近に装着領域53が設けられている。上記のように、装着領域53には面ファスナーが設けられている。
【0120】
図12は、呼吸検出装置4の回路構成を示すブロック図である。
【0121】
本体ユニット30および呼吸検出ユニット40は、それぞれ、回路基板410、420を備える。上述のように、回路基板410は、本体ユニット30に内装されている。また、回路基板420は、呼吸検出ユニット40の把持部42に内装されている。これら回路基板410、420は、コネクタ32aに端子43が接続されることにより、互いに接続される。
【0122】
本体ユニット30の回路基板410には、制御部411と、記憶部412と、検出部413と、無線通信部414と、電源415とが実装されている。この他、
図11に示した電源ボタン31も、回路基板410に設置されている。
【0123】
制御部411は、たとえばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部412に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。記憶部412は、ROM、RAM等により構成され、各部を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部412は、制御部411が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0124】
検出部413は、伸縮センサ41の両端に電圧を付与するとともに、伸縮センサ41の伸縮に応じた電圧の変化を検出し、検出結果を制御部411に出力する。無線通信部414は、制御部411からの制御に従って、
図5に示した制御ユニット3と無線通信を行う。電源415は、電池を備え、回路基板410、420の各回路部に電源電圧を供給する。電源電圧は、
図11のケーブル32bを介して呼吸検出ユニット40側の回路基板420に供給される。
【0125】
呼吸検出ユニット40の回路基板420には、制御部421と記憶部44が実装されている。制御部421は、たとえばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部44に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。制御部421は、現在の日時を計時する時計機能を有している。記憶部44は、ROM、RAM等により構成され、各部を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部44は、制御部421が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0126】
記憶部44は、データを書き込み消去可能な不揮発性メモリ(EEPROM)を含んでいる。記憶部44は、この不揮発性メモリに、呼吸検出ユニット40の使用状況に関する使用情報を記憶する。また、記憶部44は、この不揮発性メモリにおける使用情報の書き込みエリア以外の所定のエリアに、呼吸検出ユニット40が真正品であること、すなわち、適正な製造元により製造されたことを確認するための確認情報を記憶する。使用情報および確認情報の構成は、それぞれ、
図4(a)、(b)と同様である。
【0127】
図13は、電気刺激装置2と呼吸検出装置4が患者に装着された状態を示す図である。
【0128】
胴衣5が患者に装着され、胴衣5の側部がベルト51で閉じられる。このとき、患者の胸付近がやや締め付けられるように、ベルト51が胴衣5に重ねられる。次に、本体ユニット30がポケット52に収納され、コネクタ32aに呼吸検出ユニット40の端子43が接続される。その後、患者が息を吐き切った状態で、呼吸検出ユニット40が胴衣5の装着領域53に装着される。これにより、呼吸検出装置4が患者に装着される。その後、上記実施形態1と同様の方法により、電気刺激装置2が患者に装着される。こうして、患者に対する電気刺激装置2および呼吸検出装置4の装着が完了する。
図13の状態において、患者が呼吸をすると、患者の胴体の拡大および縮小に応じて、伸縮センサ41が伸縮する。これにより、呼吸の検出が可能となる。
【0129】
医師等の使用者は、ホルダユニット10の電源ボタン11を操作し、本体ユニット30の電源ボタン31を操作する。さらに、使用者は、上記実施形態1と同様、制御ユニット3にインストールされた嚥下誘導のためのアプリケーションプログラム(
図5のプログラム202a)を立ち上げる。これにより、制御ユニット3と、電気刺激装置2および呼吸検出装置4との間で無線通信路が確立される。
【0130】
その後、電極ユニット20の制御部121と制御ユニット3の制御部201とにおいて、それぞれ、
図6および
図7の処理が行われる。これにより、制御ユニット3の表示入力部203に、
図8(a)~
図9(a)に示した開始画面300が表示される。使用者は、表示された開始画面300を参照して、電極ユニット20の特性が担保されるか否かを判断し、判断結果に応じて、開始ボタン340または中止ボタン350を操作する。
【0131】
さらに、実施形態2では、呼吸検出ユニット40の制御部421と制御ユニット3の制御部201とにおいて、それぞれ、
図6および
図7と同様の処理が行われる。ここでは、
図6のステップS105における上限回数Nthが、伸縮センサ41の特性を担保可能と想定され得る回数に設定される。伸縮センサ41は、伸縮が繰り返されることにより劣化する。この劣化を想定して、上限回数Nthが設定される。たとえば、1回の嚥下
誘導動作が30分程度行われる場合、上限回数Nthは、100回程度に設定される。
【0132】
呼吸検出ユニット40について、
図6および
図7と同様の処理が行われることにより、制御ユニット3の表示入力部203に、
図8(a)~
図9(a)に示した開始画面300と同様の開始画面が表示される。この開始画面は、たとえば、電極ユニット20に関して表示された開始画面300において、開始ボタン340が操作されることに応じて表示される。この開始画面には、呼吸検出ユニット40の関する使用状況、真偽判定結果および特性担保の可否を示唆するコメントをそれぞれ表示するための領域(領域310、320、330と同様の領域)が含まれ、さらに、開始ボタン340と中止ボタン350にそれぞれ対応するボタンが含まれている。
【0133】
使用者は、表示された開始画面を参照して、呼吸検出ユニット40の特性が担保されるか否かを判断し、判断結果に応じて、開始ボタンまたは中止ボタンを操作する。電極ユニット20に関して表示された開始画面300において開始ボタン340が操作され、さらに、呼吸検出ユニット40に関して表示された開始画面において開始ボタンが操作されることにより、嚥下誘導動作が開始される。
【0134】
この場合、制御ユニット3の制御部201は、呼吸検出ユニット40から受信する伸縮センサ41の伸縮に応じた信号に基づいて、患者の呼吸を検出し、呼吸の検出結果に基づいて、電気刺激装置2を制御する。具体的には、制御部201は、患者の呼息期間に電気刺激の期間が全て含まれるように、電気刺激装置2を駆動する。これにより、適切なタイミングで、嚥下を促進させることができる。
【0135】
こうして、嚥下誘導動作が開始されると、電極ユニット20の制御部121において
図10に示した処理が行われ、さらに、呼吸検出ユニット40の制御部421において
図10と同様の処理が行われる。これにより、電極ユニット20の記憶部23に記憶されている使用情報が更新され、また、呼吸検出ユニット40の記憶部44に記憶されている使用情報が更新される。
【0136】
<実施形態2の効果>
実施形態2においても、上記実施形態1と同様の効果が奏され得る。
【0137】
さらに、実施形態2では、呼吸検出ユニット40の使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足しない場合、すなわち、伸縮センサ41に経時的な劣化が生じたと想定される場合に、呼吸検出ユニット40の使用を制限するための制御(開始画面300と同様の開始画面の表示)が行われる。これにより、嚥下誘導動作の適正さを担保することができる。
【0138】
<実施形態3>
実施形態3は、患者の嚥下動作を監視する嚥下監視装置6および当該嚥下監視装置6を用いて患者の誤嚥のリスクを診断するための嚥下診断装置7に本発明を適用したものである。
【0139】
実施形態3では、嚥下監視装置6または嚥下診断装置7が、特許請求の範囲に記載の「嚥下医療装置」に対応し、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60が、特許請求の範囲に記載の「装着ユニット」に対応する。ただし、以下に示す実施形態3は、あくまで本発明を実施化した場合の一つの構成例であって、特許請求の範囲に係る発明を何ら限定するものではない。
【0140】
図14は、実施形態3に係る嚥下監視装置6の構成を示す図である。
【0141】
図14に示すように、嚥下監視装置6は、
図1と略同様の構成のホルダユニット10を備えている。ただし、実施形態3では、
図1の押さえ部材13がホルダユニット10から省略され、代わりに、押さえ部材16がホルダユニット10に含まれている。また、2つの端部10bのうち一方のみからケーブル17bが引き出され、このケーブル17bの先端にコネクタ17aが装着されている。コネクタ17aの構成は、
図1のコネクタ15aと同様である。レバー17cを操作することにより、変位検出ユニット60の端子63をコネクタ
17aに着脱できる。
【0142】
押さえ部材16は、ホルダユニット10が患者に装着された際に、変位検出ユニット60の変位センサ61を患者の喉頭部に押さえ付けるためのものである。押さえ部材16は、たとえば、伸縮性のある布により袋状に構成され、この袋の内部にマイクロビーズ等の緩衝部材16aが内包されている。また、押さえ部材16の左右の突部の表面に、面ファスナーの一方側を構成する留め部が設けられている。留め部は、ベルト14の裏面に設けられた他方の面ファスナーからなる留め部14aと接合される。
【0143】
変位検出ユニット60は、帯状の変位センサ61と、把持部62と、端子63と、記憶部64とを備える。変位センサ61は、たとえば、フィルム状の圧電センサ(PVDF高分子圧電体)である。変位センサ61は、変位に応じた電圧を出力する。
【0144】
変位センサ61の一方の端部に把持部62が装着され、この把持部62から端子63が突出している。把持部62には、回路基板が内装され、この回路基板に端子63が接続されている。この回路基板は、変位センサ61にも接続されている。また、この回路基板には、たとえば、EEPROMからなる記憶部64が搭載されている。後述のように、記憶部64には、変位センサ61の経時的な使用状況に関する使用情報および変位センサ61が真正品であることを確認するための確認情報等が記憶される。
【0145】
図15は、嚥下監視装置6の回路構成を示すブロック図である。
【0146】
ホルダユニット10および変位検出ユニット60は、それぞれ、回路基板130、600を備える。上記実施形態1と同様、回路基板130は、ホルダユニット10の電源ボタン11および緊急停止ボタン12の内側に内装されている。また、回路基板600は、変位検出ユニット60の把持部62に内装されている。これら回路基板130、600は、コネクタ17aに端子63が接続されることにより、互いに接続される。
【0147】
ホルダユニット10の回路基板130には、制御部131と、記憶部132と、検出部133と、無線通信部134と、電源135とが実装されている。この他、
図15に示した電源ボタン11および緊急停止ボタン12も、回路基板130に設置されている。緊急停止ボタン12以外の各部の構成は、上記実施形態2において示した
図12の回路基板410に設置された各部の構成と同様である。検出部133は、変位センサ61に電圧を付与するとともに、変位センサ61の変位に応じた電圧の変化を検出し、検出結果を制御部131に出力する。
【0148】
変位検出ユニット60の回路基板600には、制御部601と記憶部64が実装されている。制御部601は、たとえばマイクロコンピュータにより構成され、記憶部64に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。制御部601は、現在の日時を計時する時計機能を有している。記憶部64は、ROM、RAM等により構成され、各部を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部64は、制御部601が各部を制御する際のワーク領域として使用される。
【0149】
記憶部64は、データを書き込み消去可能な不揮発性メモリ(EEPROM)を含んでいる。記憶部64は、この不揮発性メモリに、変位検出ユニット60の使用状況に関する使用情報を記憶する。また、記憶部64は、この不揮発性メモリにおける使用情報の書き込みエリア以外の所定のエリアに、変位検出ユニット60が真正品であること、すなわち、適正な製造元により製造されたことを確認するための確認情報を記憶する。使用情報および確認情報の構成は、それぞれ、
図4(a)、(b)と同様である。
【0150】
図16は、呼吸検出装置4と嚥下監視装置6が患者に装着された状態を示す図である。
【0151】
呼吸検出装置4は、上記実施形態2と同様の構成である。呼吸検出装置4は、上記実施形態2と同様の方法で、患者に装着される。その後、嚥下監視装置6が患者に装着される。まず、変位検出ユニット60がホルダユニット10に接続される。次に、ホルダユニット10が患者の首に回される。そした、変位センサ61が患者の喉頭部に重ねられ、さらに、変位センサ61の表面に押さえ部材16が重ねられる。この状態で、2つのベルト14が重ねられ、押さえ部材16がベルト14で押さえられる。これにより、変位センサ61が、患者の喉頭部に装着される。
【0152】
実施形態3では、制御ユニット3の記憶部202に、患者の嚥下を監視して誤嚥のリスクを診断するためのプログラム202aがインストールされている。
【0153】
医師等の使用者は、ホルダユニット10の電源ボタン11を操作し、本体ユニット30の電源ボタン31を操作する。さらに、使用者は、制御ユニット3にインストールされた嚥下診断のためのアプリケーションプログラム(プログラム202a)を立ち上げる。これにより、制御ユニット3と、呼吸検出装置4および嚥下監視装置6との間で無線通信路が確立される。
【0154】
その後、上記実施形態2と同様、呼吸検出ユニット40の制御部421と制御ユニット3の制御部201とにおいて、それぞれ、
図6および
図7と同様の処理が行われる。これにより、制御ユニット3の表示入力部203に、
図8(a)~
図9(a)に示した開始画面300と同様の開始画面が表示される。使用者は、表示された開始画面を参照して、呼吸検出ユニット40の特性が担保されるか否かを判断し、判断結果に応じて、開始ボタンまたは中止ボタンを操作する。
【0155】
さらに、実施形態3では、変位検出ユニット60の制御部601と制御ユニット3の制御部201とにおいて、それぞれ、
図6および
図7と同様の処理が行われる。ここでは、
図6のステップS105における上限回数Nthが、変位センサ61の特性を担保可能と想定され得る回数に設定される。変位センサ61は、変位が繰り返されることにより劣化する。この劣化を想定して、上限回数Nthが設定される。たとえば、1回の嚥下
誘導動作が30分程度行われる場合、上限回数Nthは、100回程度に設定される。
【0156】
変位検出ユニット60について、
図6および
図7と同様の処理が行われることにより、制御ユニット3の表示入力部203に、
図8(a)~
図9(a)に示した開始画面300と同様の開始画面が表示される。この開始画面は、たとえば、呼吸検出ユニット40に関して表示された開始画面において、開始ボタンが操作されることに応じて表示される。この開始画面には、変位検出ユニット60の関する使用状況、真偽判定結果および特性担保の可否を示唆するコメントをそれぞれ表示するための領域(領域310、320、330と同様の領域)が含まれ、さらに、開始ボタン340と中止ボタン350にそれぞれ対応するボタンが含まれている。
【0157】
使用者は、表示された開始画面を参照して、呼吸検出ユニット40の特性が担保されるか否かを判断し、判断結果に応じて、開始ボタンまたは中止ボタンを操作する。呼吸検出ユニット40に関して表示された開始画面において開始ボタンが操作され、さらに、変位検出ユニット60に関して表示された開始画面において開始ボタンが操作されることにより、嚥下診断動作が開始される。
【0158】
この場合、制御ユニット3の制御部201は、呼吸検出ユニット40から受信する伸縮センサ41の伸縮に応じた信号に基づいて、患者の呼吸を検出し、また、変位検出ユニット60から受信する変位センサ61の変位に応じた信号に基づいて、患者の嚥下を検出する。そして、制御部201は、検出した嚥下のタイミングが呼吸に対して適正であるか否かにより、患者の誤嚥のリスクを判定する。具体的には、制御部201は、嚥下の前後が呼息期間である場合に、嚥下が適正であると判定し、嚥下の前後の何れか一方が吸息期間である場合に、嚥下が不適正であると判定する。そして、制御部201は、嚥下ごとに嚥下の適否の判定結果を、誤嚥のリスクの有無を示す情報として、表示入力部203に表示させる。
【0159】
こうして、嚥下監視動作および嚥下診断動作が開始されると、上記実施形態2と同様に呼吸検出ユニット40の制御部421において
図10と同様の処理が行われ、さらに、変位検出ユニット60の制御部601において
図10と同様の処理が行われる。これにより、呼吸検出ユニット40の記憶部44に記憶されている使用情報が更新され、また、変位検出ユニット60の記憶部64に記憶されている使用情報が更新される。
【0160】
なお、制御ユニット3が患者の自宅で用いられて嚥下監視動作および嚥下診断動作が行われる場合、これらの動作の結果が、日付と共に制御ユニット3の記憶部202に記憶される。患者は、後日、医療機関で診療を受ける際に、制御ユニット3を医師等の診療関係者に持参し、自宅で行われた嚥下監視動作および嚥下診断動作の結果を医師に提示する。これにより、医師は、患者に対する診療を適切に行い得る。医師は、適宜、制御ユニット3内の嚥下診断結果に関する情報を、医療機関の端末等に移動させる。
【0161】
あるいは、制御ユニット3に蓄積された嚥下診断結果に関する情報が、
図5の第2無線通信部205を介してサーバ220に送信され、サーバ220で管理されてもよい。この場合、制御ユニット3は、患者のID情報および診断日時とともに診断結果に関する情報をサーバ220に送信する。サーバ220は、患者のID情報に対応付けて、診断日時と診断結果をデータベースに記憶する。
【0162】
<実施形態3の効果>
実施形態3においても、上記実施形態2と同様、呼吸検出ユニット40の特性が担保され得ない場合に、呼吸検出ユニット40の使用が制限される。よって、嚥下監視動作および嚥下診断動作の適正さを担保できる。
【0163】
さらに、実施形態3では、変位検出ユニット60の使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足しない場合、すなわち、変位センサ61に経時的な劣化が生じたと想定される場合に、変位検出ユニット60の使用を制限するための制御(開始画面300と同様の開始画面の表示)が行われる。これにより、嚥下監視動作および嚥下診断動作の適正さを担保することができる。
【0164】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態ついて説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0165】
たとえば、上記実施形態1~3では、使用情報のうち使用回数が上限回数を超えるか否かに基づいて、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の特性が担保され得るか否かが判定されたが、これとともに、あるいは、これに代えて、使用情報に含まれる他の情報に基づいて、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の特性が担保され得るか否かが判定されてもよい。たとえば、使用情報に含まれる累積使用時間が予め設定された上限時間を超えるか否かによって、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の特性が担保され得るか否かが判定されてもよく、あるいは、使用開始時からの経過時間や最終使用時からの経過時間が予め設定された上限時間を超えるか否かによって、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の特性が担保され得るか否かが判定されてもよい。また、製造年月日や出荷日が管理されている場合は、これらの日からの経過時間が予め設定された上限時間を超えるか否かによって、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の特性が担保され得るか否かが判定されてもよい。
【0166】
また、上記実施形態1~3では、
確認情報および使用情報に基づいて、
図8(a)~
図9(b)の開始画面300が表示されたが、開始画面300の構成は、これに限られるものではない。たとえば、グラフ311が折れ線グラフや円グラフ等の他の形式のグラフであってもよく、また、上限回数Nthに対する使用回数の超過数が領域310に含まれてもよい。また、使用回数が上限回数Nthに到達した場合に、注意喚起のために、グラフ311や領域330の背景色や枠線等が強調表示されてもよく、あるいは、使用可能残回数312が赤色等の文字で強調表示されてもよい。同様に、真偽判定結果が偽である場合に、注意喚起のために、領域320の背景色や枠線等が強調表示されてもよい。また、
図8(a)~
図9(b)に示した開始画面300から領域310が省略されてもよく、あるいは、この開始画面300から領域330が省略されてもよい。また、真偽判定結果が偽の場合に、開始ボタン340が無効化されなくてもよく、その旨が領域330に表示されるのみであってもよい。
【0167】
また、上記実施形態1~3では、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60が患者に装着された後に、
図6および
図7の処理が実行される流れであったが、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60が患者に装着される前に、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60と制御ユニット3とを動作させて、
図6および
図7の処理が実行されてもよい。
【0168】
また、上記実施形態1~3では、各装置の動作開始時に
図6および
図7の処理が実行され、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の適否が判定されたが、さらに、装置の動作中に電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の適否が同様に判定されてもよい。
【0169】
また、上記実施形態1~3では、
図7のステップS205における真偽判定において、制御ユニット3がサーバ220にシリアル番号の2重登録の有無を問い合わせたが、この問い合わせが省略され、暗号キーを用いたシリアル番号の復号の可否および復号されたシリアル番号の桁数の適否のみによって、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の真偽が判定されてもよい。
【0170】
また、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の構成は、上記実施形態1~3に示したものに限定されるものではなく、患者の咽頭部に適切に電気刺激を付与でき、また、患者の呼吸および喉頭部の変位を適切に検出できる限りにおいて、他の構成であってもよい。たとえば、
図17に示すように、電極ユニット20の長さが短縮されてもよい。この変更例では、電極ユニット20のコストを削減できる。また、呼吸検出ユニット40が、鼻カニューレによって患者の呼吸圧を検出する構成であってもよい。
【0171】
また、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60は直接手で触れられるため、これらユニットの回路基板に、制御部121、421、601および記憶部23、44、64を静電気から保護するための静電気保護回路が設けられてもよい。この場合、たとえば、制御部121、421、601および記憶部23、44、64の信号ラインとグランドラインまたはシールドラインとの間に、静電気を吸収するためのバリスタ等の静電気吸収素子が介挿される。少なくとも制御部121、421、601に静電気保護回路が設けられてもよい。
【0172】
また、上記実施形態1では、使用情報(使用回数)が設定条件(上限回数Nth)を充足するか否かの判定が電極ユニット20において行われたが、上記のように、この判定が、制御ユニット3側において行われてもよい。
【0173】
この場合、
図6のフローチャートからステップS104~S107が省略され、ステップS103において、
確認情報とともに使用情報が、電極ユニット20から制御ユニット3に送信される。また、
図18に示すように、
図7のフローチャートに対してステップS210が追加され、電極ユニット20から受信した使用情報に基づいて、電極ユニット20の使用状況の適否が、制御ユニット3側で行われる。電極ユニット20の使用状況の適否の判定方法は、
図6のステップS104、S105と同様である。
【0174】
また、上記実施形態1では、
図8および
図9の開始画面300が制御ユニット3に表示されたが、患者の携帯電話機によって嚥下の誘導が制御される場合は、開始画面300が患者の携帯電話機に表示されてよい。
【0175】
また、上記実施形態1では、電極ユニット20の制御部121に付与された時計機能により、
図4(a)の開始日時および終了日時が取得されたが、動作の開始時および終了時に、制御ユニット3側から電極ユニット20にタイムスタンプの情報を送信し、この情報に基づいて、
図4(a)の開始日時および終了日時が取得されてもよい。
【0176】
また、上記実施形態1では、
図6の処理を電極ユニット20の制御部121が行ったが、この処理を、ホルダユニット10の制御部111が行ってもよい。この場合、制御部111は、ステップS101において電源ボタン11がオンされると、電極ユニット20の制御部121と通信を行い、記憶部23から
確認情報と使用情報を取得する。その後、制御部121は、ステップS102において制御ユニット3から情報送信要求が送信されるのを待つ。そして、制御部121は、情報送信要求を受信すると、電極ユニット20から取得した
確認情報および使用情報に基づいて、ステップS103~S107の処理を行う。この場合も、制御部121は、使用情報に基づく使用状況の適否判定を行うことなく、
確認情報および使用情報の送信だけを行い、使用状況適否の判定は、制御ユニット3側で行ってもよい。
【0177】
また、上記実施形態3では、変位センサ61によって喉頭部の変位を検出することによって嚥下が検出されたが、マイクで嚥下音を検出することによって嚥下が検出されてもよい。この場合、たとえば、ホルダユニット10の内部や表面にマイクが設置され、マイクがホルダユニット10内部の回路基板130に接続されればよい。なお、このようにマイクが用いられる場合、変位検出ユニット60は省略されてもよい。また、マイクが用いられる場合、呼吸検出ユニット40からの検出信号により患者の無呼吸が検出された期間において、マイクによって嚥下検出のための閾値以上の音が検出された場合に、嚥下が生じたことが検出されてもよい。変位検出ユニット60とマイクの両方が設けられる場合、たとえば、両者において嚥下が検出された場合に、患者に嚥下が生じたと判定されればよい。
【0178】
さらに、上記実施形態3の構成に、電極ユニット20が組み合わされて、嚥下誘導動作が可能であってもよい。また、嚥下誘導装置1および嚥下診断装置7以外の嚥下医療装置に発明が適用されてもよい。
【0179】
なお、上記実施形態1~3では、使用情報が電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60において管理されたが、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60が組み合わされる制御ユニット3が一意に決まっている場合は、使用情報が制御ユニット3で管理されてもよい。この場合、制御ユニット3は、たとえば、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60からシリアル番号を受信し、受信したシリアル番号に対応づけて各ユニットの使用情報を管理すればよい。同様に、電極ユニット20および変位検出ユニット60が組み合わされるホルダユニット10が一意に決まっている場合は、使用情報がホルダユニット10で管理されてもよい。
【0180】
また、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60の使用情報がサーバ220で一元管理されてもよい。サーバ220は、たとえば、装置の使用開始時および使用終了時に、制御ユニット3を介して、電極ユニット20、呼吸検出ユニット40および変位検出ユニット60からシリアル番号を受信し、受信したシリアル番号に対応づけて各ユニットの使用情報を管理すればよい。
【0181】
また、使用情報および
確認情報は、
図4(a)、(b)に示した項目に限られるものではなく、これらの項目の一部が削除され、あるいは、これらの項目に他の項目が追加されてもよい。たとえば、確認情報から暗号キーが省略されてもよく、暗
号キーに代えて、製造者コード等が追加されてもよい。
【0182】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0183】
1 … 嚥下誘導装置(嚥下医療装置)
2 … 電気刺激装置(嚥下医療装置)
3 … 制御ユニット
4 … 呼吸検出装置(嚥下医療装置)
6 … 嚥下監視装置(嚥下医療装置)
20 … 電極ユニット
21 … 粘着部材
23 … 記憶部
24 … 電極
40 … 呼吸検出ユニット
41 … 伸縮センサ
44 … 記憶部
60 … 変位検出ユニット
61 … 変位センサ
300 … 開始画面(報知情報)
311 … グラフ
312 … 使用残回数
320、330 … 領域