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特許7240688多重エンジンアレイシステム及びスピーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】多重エンジンアレイシステム及びスピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/06 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
H04R9/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021531166
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 CN2019099452
(87)【国際公開番号】W WO2020029959
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】201810888625.4
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521058955
【氏名又は名称】▲張▼ 永春
(73)【特許権者】
【識別番号】521058966
【氏名又は名称】シェンジェン・シンチ・サイエンス・アンド・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 永春
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-226700(JP,A)
【文献】中国実用新案第202121767(CN,U)
【文献】特開2000-270398(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107360512(CN,A)
【文献】特開2005-094308(JP,A)
【文献】特開2005-039404(JP,A)
【文献】特開2013-051499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00- 9/10
H04R 9/18
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイに少なくとも二つのエンジンアセンブリを備える、多重エンジンアレイシステムであって
記エンジンアセンブリはそれぞれ相互に独立し、いずれもボイスコイル骨格が配置されたボイスコイルと、前記ボイスコイルへ磁場を提供する磁気回路システムを含み、
前記ボイスコイルは、前記ボイスコイル骨格の外周に巻かれ、前記ボイスコイルは、印刷された可撓性回路基板又は片面絶縁の金属箔テープを巻き付けることによって形成され
前記磁気回路システムは、磁気ボウル、磁石、磁気導電プレートを含み、
前記磁気回路システムの磁気ボウル、磁石、磁気導電プレートの断面の周囲は、角を丸くした形状に形成され、
前記磁石と前記磁気導電プレートは、前記磁気ボウルに位置し、
前記磁気ボウル及び前記磁石と前記磁気導電プレートの間に磁気ギャップが形成され、
前記ボイスコイルは、前記磁気ギャップに吊り下げられ
前記ボイスコイルと前記磁気回路システムの磁気ボウル、磁石、磁気導電プレートの断面の形状は、いずれも長方形であり、
複数の前記ボイスコイルは、それぞれ対応するボイスコイルリード線により、ダイヤフラム底部に設置された回路基板に接続され、
前記ボイスコイルのインピーダンスが、前記ボイスコイルの回路接続方式を変更し、オームの法則に従ってそれらを組み合わせることによって、目標インピーダンスに合致するように、前記回路基板は、前記ボイスコイルリード線によって、異なる前記回路接続方式で、複数の前記ボイスコイルを互いに接続させている、ことを特徴とする多重エンジンアレイシステム。
【請求項2】
前記磁石の1端は、前記磁気ボウルの底部に貼り付けられ、
前記磁石の他端は、前記磁気導電プレートに貼り付けられ、
前記磁気ギャップは、環状磁気ギャップである、ことを特徴とする請求項1に記載の多重エンジンアレイシステム。
【請求項3】
前記磁気ボウルの底部には、複数の第1の換気穴が設けられ
前記磁気ギャップと前記第1の換気穴の間に、前記磁気ボウルの内部エアダクトを形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の多重エンジンアレイシステム。
【請求項4】
前記磁気回路システムは、内部磁気型構造であり、
前記磁石は、より強い磁気を提供するネオジム鉄ホウ素強磁である、ことを特徴とする請求項1に記載の多重エンジンアレイシステム。
【請求項5】
複数の前記ボイスコイルの前記回路接続方式は、直列回路又は並列回路又は直列及び並列を組み合わせた集積回路のいずれか一つである、ことを特徴とする請求項1に記載の多重エンジンアレイシステム。
【請求項6】
前記ボイスコイル骨格は、耐高温材料であり、
前記耐高温材料は、耐高温射出成形材料又は軽量セラミック材料を含み、
前記ボイスコイル骨格は、一体構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の多重エンジンアレイシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の多重エンジンアレイシステムを備える、ことを特徴とするスピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動スピーカーの技術分野に関し、特に多重エンジンアレイシステム及びスピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的なスピーカーエンジンは、ほとんど単一のエンジン駆動であり、エンジンの形状は、ほとんど円形であり、このような伝統的なのエンジンは、一般的に外部磁気タイプを採用しており、上下の磁気導電プレート(T鉄とワッシャー)、磁石(主流フェライト)、ボイスコイル(金属フィラメント巻線)、骨格(手作りのデュポングラスファイバークロス、アルミニウム合金ロール、またはボール紙チューブ)で構成されている。より大きな口径のスピーカーの場合、伝統的なシングルエンジン構造のスピーカーは、ダイヤフラムやボイスコイルなどの各部材の寸法、特にエンジンにおける磁石の寸法、重量、コスト、金型等を変更する必要があり、いずれも大口径スピーカーの量産化を難しくしている。
【0003】
さらに、不十分なエンジン熱放散は、スピーカーに一連の問題を引き起こす可能性があり、例えば、熱による磁石の減磁現象、ボイスコイルの脱ガム、短絡または破壊、ボイスコイル骨格の変形またはボイスコイル骨格のダイヤフラムとセンタリングサポートピースに接触する変形、パワー損失があり、効率ηなどに影響を与える。
【0004】
単一エンジンのスピーカーにはボイスコイルが1つしかなく、その抵抗Rは、ボイスコイル工場の製造および加工を除いて不変である。抵抗Rが比較的大きい場合、それを押し込むためにより高出力のアンプが必要になり、消費電力が大きくなる。スピーカーで熱を発生する主な熱源は、ボイスコイルであり、サスペンションシステムが動くときに圧縮空気も熱を発生するが、この熱はボイスコイルの振動によって発生する熱と比較して無視できる。ボイスコイルは、インピーダンスと誘導性リアクタンスを備えた一種の抵抗素子であり、電流が接続された後、磁気回路によって引き起こされる機械的運動に加えて、抵抗要素によってエネルギーの一部を熱に変換される。エネルギー保存原理によれば、ボイスコイルのこの熱エネルギーは、実際には運動エネルギーの変換と損失の一部である。温度に関しては、一般に、ボイスコイル自体の瞬間温度は摂氏300度を超えないが、連続的な高出力の場合、ピーク温度は摂氏300度を超えることさえある。さらに、磁気回路の温度は、一般にボイスコイル自体よりも低く、摂氏100度を超えることはないが、極端な場合や熱放散が不合理な場合は、摂氏200度に近づくか超えることもある。磁気回路の摂氏200度以上の状態が30分以上続くと、保磁力の低い磁石が消磁する現像が現れ、さらに永久に磁力が失われる。したがって、十分な熱放散は、磁石の減磁、ボイスコイル短絡または破壊を解決するために必要な手段であるだけではなく、エンジンが電-力-音の変換プロセスに可能な限り少ない熱エネルギーを変換するが多くの運動エネルギーを変換することを可能にし、それによって熱エネルギーの変換による損失を減らす。
【0005】
伝統的なスピーカーエンジンのボイスコイルは、磁気回路内を運動する時、エンジンのシリンダーおよびピストンに類似しており、線形運動に属する。しかし、磁気回路内のボイスコイルのこの種の運動は完全に線形ではなく、非線形でもある。主に2つの側面で現れ、第1に、磁気ギャップの高さがボイスコイルの高さに完全に収納できないため、ボイスコイルが磁気ギャップを超える現象、即ち磁気におけるボイスコイルの最大線形変位XMaxが発生する。これが発生すると、その線形運動は、シリンダー内のピストンほど正確ではなくなり、この範囲に近づいたり超えたりすると、非線形運動を引き起こし、さらに非線形歪みと高調波歪みが発生する。第2は、ボイスコイル、ボイスコイル骨格、ボイスコイル骨格の上部に接続されているセンタリングサポートピースとダイヤフラムが、いずれも半吊り状態であると同時に、センタリングサポートピースとダイヤフラムが弾力性があり、運動過程中にボイスコイルの非線形ズレが発生する。
【0006】
さらに、伝統的なシングルエンジンスピーカーは、例えば、磁気ギャップを横切るボイスコイルの非線形振動によって引き起こされる高調波歪みおよび相互変調歪み、ならびにボイスコイルの逆起電力によって引き起こされる出力パワーおよび効率ηの損失、ボイスコイルの起電力、エンジンの磁力と電流BLIの不均一な分布によって引き起こされる非線形歪み、サスペンションシステム(ダイヤフラム、センタリングサポートピース、折り畳まれたリングの吊り下げ部分を含み)の非線形によって引き起こされる高調波歪み、グループ遅延、および位相歪みなどの様々な歪みの問題を引き起こす。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上記の欠陥および欠点のうちの少なくとも1つを解決することであり、その目的は、以下の技術的解決案を通じて達成される。
【0008】
本発明は、少なくとも二つのエンジンアセンブリを備え、少なくとも二つの前記エンジンアセンブリアレイは、スピーカーの鉢枠の底部に取り付けられ、各前記エンジンアセンブリは、いずれもボイスコイル骨格が配置されたボイスコイル及び前記ボイスコイルへ磁場を提供する磁気回路システムを含み、前記ボイスコイルは、前記ボイスコイル骨格の外周に巻かれ、前記ボイスコイルは、印刷された可撓性回路基板や片面絶縁の金属箔テープを含み、前記磁気回路システムは、磁気ボウル、磁石、磁気導電プレートを含み、磁気回路システムの前記断面の周囲は、円弧遷移を用い、前記磁気ボウルは、前記鉢枠の底部に取り付けられ、前記磁石と前記磁気導電プレートは、前記磁気ボウルに位置し、前記磁気ボウル及び前記磁石と前記磁気導電プレートの間に磁気ギャップが形成され、前記ボイスコイルサは、前記磁気ギャップにスペンションされ、前記ボイスコイルと前記磁気回路システムの断面の形状は、いずれも長方形である多重エンジンアレイシステムを提供する。
【0009】
更には、前記磁石の1端は、前記磁気ボウルの底部に貼り付けられ、前記磁石の他端は、前記磁気導電プレートに貼り付けられ、前記磁気ギャップは、環状磁気ギャップである。
【0010】
更には、前記磁気ボウルの底部には、複数の第1の換気穴が設けられ、前記第1の換気穴の位置は、前記鉢枠の底部に設置された第2の換気穴に対応し、前記磁気ギャップと前記第1の換気穴の間に、前記磁気ボウルの内部エアダクトを形成する。
【0011】
更には、前記磁気回路システムの前記断面の周囲は、円弧遷移を用いる。
【0012】
更には、前記磁気回路システムは、内部磁気型構造であり、前記磁石は、ネオジム鉄ホウ素強磁である。
【0013】
更には、複数の前記エンジンアセンブリにおける異なる前記ボイスコイルは、回路により互いに接続され、複数の前記ボイスコイルの回路接続方式は、直列回路、並列回路、及び直列と並列を組み合わせた集積回路を含む。
【0014】
更には、複数の前記ボイスコイルは、それぞれボイスコイルリード線により、ダイヤフラム底部に設置された回路基板と接続され、前記回路基板は、前記ボイスコイルリード線により、異なる前記回路接続方式で、複数の前記ボイスコイルを互いに接続させる。
【0015】
更には、前記ボイスコイルは、前記ボイスコイル骨格の外周に巻かれ、前記ボイスコイルは、印刷された可撓性回路基板や片面絶縁の金属箔テープを含む。
【0016】
更には、前記ボイスコイル骨格は、耐高温材料であり、前記耐高温材料は、耐高温射出成形材料や軽量セラミック材料を含み、前記ボイスコイル骨格は、一体構造である。
【0017】
本発明は、上記の多重エンジンアレイシステムを含むスピーカーさらに提供する。
【0018】
本発明の利点は、以下のようになる。
(1)本発明の多重エンジンアレイシステムは、寸法大きなスピーカーに適用し、高出力アンプに依存する必要がなく、消費電力を効果的に低減し、スピーカー効率を向上する。
【0019】
(2)本発明の多重エンジンアレイシステムは、インピーダンスREおよび誘導性リアクタンスLVCを制御して、QES、QMS、QTSを合理的に制御し、効率ηを増加させるだけでなく、共振周波数fを減少させることができる。
【0020】
(3)本発明の多重エンジンアレイシステムは、ボイスコイルおよびボイスコイル骨格の構造を変更することによって熱放散効果を改善し、同時に、磁気回路の排水及び換気により放熱させ、さらにスピーカー鉢枠の放熱設計により十分な放熱を実現する。
【0021】
(4)本発明の多重エンジンアレイシステムは、スピーカーの運動をより線形運動にし、さらに非線形歪みを低減させ、運動をよりバランスの取れた安定したものにし、反応速度をより速くし、制御能力がより強く、複数のエンジンアセンブリの相乗効果及び相互制限により、様々な歪みを減少でき、スピーカーの音響性能を向上させる。
【0022】
(5)本発明は、可聴周波数信号をハイレート解析して、音の動的な詳細を深く復元させ、複数のエンジンアセンブリの空間アレイ分布により音の完全な拡散を実現する。
【0023】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、他の様々な利点およびメリトが当業者に明らかになる。図面は、好ましい実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定するとは見なされない。また、図面全体で、同じ図面符号を使用して同じ部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンアレイシステムの立体構造の分解概念図である。
図2】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンアレイシステムの作動概念図である。
図3】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンアレイシステムの取付構造の概念図である。
図4】は、本発明に実施例により提供された20個のエンジンからなる多重エンジンアレイシステム概念図である。
図5】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンアレイシステムのボイスコイルがダイヤフラム底部での取付概念図である。
図6】は、本発明に実施例により提供されたボイスコイル回路の直列回路概念図である。
図7】は、本発明に実施例により提供されたボイスコイル回路の並列回路概念図である。
図8】は、本発明に実施例により提供されたボイスコイル回路の直列と並列の集積回路概念図である。
図9】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンシステムの放熱概念図である。
図10】は、本発明に実施例により提供された多重エンジンアレイシステムに接続する鉢枠の放熱概念図である。
図11】は、本発明に実施例により提供された音波のフーリエ変換概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の例示的な実施形態を添付の図面を参照してより詳細に説明する。図面は本開示の例示的な実施形態を示しているが、本開示は様々な形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態によって限定されるべきではないことを理解されたい。それどころか、これらの実施形態は、本開示のより完全な理解を可能にし、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0026】
まず、本願の理解を容易にするために、以下の用語を説明する。
【0027】
スピーカーのT/Sパラメータ:ThieleとSmallによって完全及び確立されたT/Sパラメータは、スピーカー電-力-音変換過程における比較的完全な理論データを含み、特に低周波直接放射式スピーカー分野では、工業デザイン界で一般的に受け入れられ、採用されている。
【0028】
1、T/SパラメータにおけるQES、QMS、QTS
(1)QESは、スピーカーユニット共振周波数での電Q値であり、即ち、ボイスコイル直流抵抗Rと共振周波数fsでの動生インピーダンスの割合値である。QESは、ボイスコイル自体の電気品質であり、主に直流抵抗R、インダクタンスLVC、逆起電力RESによって形成された電減衰を表現する。
【0029】
(2)QMSは、スピーカーユニット共振周波数での機械Q値であり、即ち、ユニット支持システムの機械損失インピーダンスRMSの等価抵抗と共振周波数fsでの動生インピーダンスの割合値である。QMSは、ボイスコイル自体の質量及びサスペンションシステム(ボイスコイル、ダイヤフラム、センタリングサポートピース、折りたたみリングの吊り上げ部分を含み)の機械抵抗RMSである。
【0030】
(3)QTSは、スピーカーユニット共振周波数での合計Q値であり、即ち、QESとQMSの並列値であり、QTS=(QES×QMS)÷(QES+QMS)である。
【0031】
上記の式から分かるように、QESが低いほど、電減衰が小さくなり、出力パワーNと効率ηも高くなり、QESとQMSを低減させることにより、QTSを効果的に低減できるが、QMSは可能な限り低くはなく、QMSが低すぎると、減衰が不足し、スピーカーのサスペンションシステムがアクティブになりすぎて遅延が発生し、即ち、信号停止後に、サスペンションシステムがゆっくりと衰減し、慣性力に従って振動し続ける。QMSが高すぎると、過度の減衰(過度の剛性または過度の質量)が発生し、スピーカーの全ての振動部分の振動が制限され、効率ηと共振周波数fsに影響を与える。
【0032】
2、XMaxは、ボイスコイルが磁気ギャップでの最大変位であり、ボイスコイル高さから磁気ギャップ高さを引いてから2で割ったものに等しく、可動部分の一方向の運動範囲を表し、この範囲に近づくか超えると、非線形運動を引き起こし、さらに高調波歪みが発生する。
【0033】
図1から図4は、本発明の実施方式により提供された多重エンジンアレイシステムの構造概念図を示す。図1から図4に示されたように、本発明により提供された多重エンジンアレイシステムは、少なくとも二つのエンジンアセンブリ100を含み、複数のエンジンアセンブリ100は、スピーカーの鉢枠200の底部に取り付けられ、複数のエンジンアセンブリ100は、アレイ分布であり、各エンジンアセンブリ100は、いずれもボイスコイル骨格12が配置されたボイスコイル11及び前記ボイスコイル11へ磁場を提供する磁気回路システムを含み、磁気回路システムは、磁気ボウル21、磁石22、磁気導電プレート23を含み、磁気ボウル21は、鉢枠200の底部に取り付けられ、磁石22と磁気導電プレート23は、前記磁気ボウル21に位置し、磁気導電プレート23は、磁石22の1端の端面に固定され、磁石22と磁気ボウル21の間に磁気ギャップ24を形成し、ボイスコイル11は、磁気ギャップ24に懸架され、ボイスコイル11と磁気回路システムの断面形状は、いずれも長方形であり、異なる鉢状構造のスピーカーと一致することができ、断面の周囲は、円弧遷移を用いる。上記の長方形は、長方形であってもよく、正方形であってもよい。また、エンジンアセンブリ100のボイスコイル11と磁気回路システムの形状は、円形やその他の形状であってもよく、本発明は、具体てきに限定されない。鉢枠200の形状に一致する長方形の丸角構造のエンジンアセンブリ100を用いることにより、迅速な取付を実現するだけでなく、取付空間を節約することもできる。
【0034】
具体的には、図2に示されたように、磁気回路システムは、内部磁気型構造であり、外部磁気型構造と比較して、内部磁気型構造の体積が小さく、占有スペースが小さく、磁気漏れが減少される。磁石22の1端が磁気ボウル21の底部に貼り付けられ、磁石22の他端が磁気導電プレート23に貼り付けられ、磁気ボウル21と磁石22及び磁気導電プレート23の間に環状磁気ギャップ24を形成し、ボイスコイル11は、磁気ギャップ24に懸架され、電流を投入する時、ボイスコイル11が磁気ギャップ24に磁石22及び磁気導電プレート23の軸方向に沿って往復振動(図では、両方向の矢印方向は、ボイスコイル11の振動方向であり)を行い、ボイスコイル11が磁気ギャップ24での最大線形変位は、XMaxである。
【0035】
磁石22は、ネオジム鉄ホウ素強磁を用い、強い磁場を提供でき、ボイスコイル11の運動へ大きな動力を提供する。また、磁石22は、その他の永久磁石材料を用いても良い。磁気回路システムでの磁気ギャップ24の軸方向の高さ範囲は、4~8mmであり、磁気ギャップ24の半径方向幅は、2~3mmである。
【0036】
図3に示されたように、複数のエンジンアセンブリ100は、鉢枠200の底部にアレイ状に分布され、エンジンアセンブリ100の数と寸法サイズは、本発明では具体的に限定されず、スピーカーの口径に応じて設置することができる。例えば、図4には、20個のエンジンアセンブリからなる多重エンジンアレイシステムの概念図を示す。複数のエンジンアセンブリ100によりアレイで構成される多重エンジンアレイシステムを用い、適用範囲が広く、大面積のダイヤフラムと大口径のスピーカーに適用することができる。独立したエンジンアセンブリ100の寸法は、小さく製造でき、小さいな口径のスピーカーに個別に適用できる。異なる口径寸法と動力のスピーカーについては、スピーカーの寸法に応じて、エンジンアセンブリ100の数を増減すればよく、エンジンアセンブリ100の寸法及び規格を変更する必要がない。
【0037】
複数のエンジンアセンブリ100からなる多重エンジンアレイシステムを用いることにより、スピーカーの消費電力を低減でき、効率を向上させる。4エンジンアセンブリ100を例にして具体てきに説明する。異なるエンジンアセンブリ100のボイスコイル11の間は、回路により互いに接続され、個別な直列回路、並列回路、又は直列と並列を組み合わせた集積回路を用いって、理想的なインピーダンスR目標を得る。
【0038】
具体的な実施では、図5に示されたように、異なるボイスコイル11は、ダイヤフラム底部31に設置された専用回路基板311により互いに接続され、各ボイスコイル11には、いずれもリード線が設けられ、ボイスコイル11は、リード線により回路基板311に接続され、電流をリード線によりボイスコイル11に入力し、リード線が回路基板311での配線位置を調整することにより、異なるボイスコイル11を異なる回路により接続できる。
【0039】
ダイヤフラム300の底部は、安定に支持されておらず、同時に、ダイヤフラム300がパルプ等の材料を用いれば、その紙質の底部は容易に変形する。別の実施方式では、ダイヤフラム300の底部に一つの剛性シャーシを設置でき、ボイスコイル11とダイヤフラム300を剛性シャーシにより接続することにより、ダイヤフラム300の変形を減少させ、取付効率を向上する。この剛性シャーシは、ダイヤフラム底部31の形状に一致し、ダイヤフラム底部31に貼り付けられ、シャーシ上には、ボイスコイル11と接続された取付部が設けられ、シャーシには、異なるボイスコイル11を互いに接続する回路基板311がさらに設けられ、各ボイスコイル11リード線により回路基板311に接続され、リード線が回路基板311での配線位置を調整することにより、異なるボイスコイル11を回路により互いに接続できる。
【0040】
図6から図8には、4エンジンアレイシステムのボイスコイル接続概念図を示しており、図6から図8に示されたように、仮に、各ボイスコイル11のインピーダンスRは、いずれも4Ωであり、異なるボイスコイル回路は、三つの接続モードがある。(1)直列モード:図6に示されたように、四つのボイスコイル11が直列回路により直列に接続され、最終的に、インピーダンスR=RE1+RE2+RE3+RE4=16Ωになる。(2)並列モード:図7に示されたように、四つのボイスコイル11が並列回路により並列に接続され、最終的に、インピーダンスR=1/(1/RE1+1/RE2+1/RE3+1/RE4)=1Ωになる。(3)総合モード:図8に示されたように、四つのボイスコイルを2組に分け、組内が直列で、組と組の間が並列で、又は組内が並列で、組と組の間が直列で、第1のボイスコイル101と第4のボイスコイル104が上下に直列で、第2のボイスコイル102と第3のボイスコイル103が上下に直列であり、それぞれ上下に直列に接続された後の2組のボイスコイル11が、再び左右に並列に接続され、最終的には、インピーダンスR=4Ωになる。上記から分かるように、異なる回路接続方式によりシステム内の異なるボイスコイル11を自由に組み合わせることにより、異なるインピーダンスRを得ることができる。また、エンジンアセンブリ100数の増加に従って、配列組合せ原理により、総合モードでより多い異なるインピーダンスRを得ることができる。
【0041】
別の実施方式では、仮に、各ボイスコイルのRは、いずれも2Ωであり、直列モードで得られたインピーダンスRは、8Ωであり、並列モードで得られたインピーダンスRは、0.5Ωであり、総合モードで得られたインピーダンスRは、2Ωである。仮に、各ボイスコイルのRは、いずれも6Ωであり、直列モードで得られたインピーダンスRは、24Ωであり、並列モードで得られたインピーダンスRは、1.5Ωであり、総合モードで得られたインピーダンスRは、6Ωである。仮に、各ボイスコイルのRは、いずれも8Ωであり、直列モードで得られたインピーダンスRは、32Ωであり、並列モードで得られたインピーダンスRは、2Ωであり、総合モードで得られたインピーダンスRは、8Ωである。
【0042】
上記のボイスコイル11の回路接続方式から分かるように、スピーカー寸法が大きくても、複数のボイスコイル11の回路接続方式を変更してオーミック規則により組み合わせることにより、そのR値を変更でき、それをインピーダンスR目標に合致させ、例えば、単一のボイスコイル11のインピーダンスRは16Ωでこのようにインピーダンスが大きい場合、四つのボイスコイル11は、並列モードでR=4Ωの小さいインピーダンスを得ることができる。即ち、複数のエンジンアセンブリ100が連携して構成された多重エンジンアレイシステムは、様々な自由に接続するボイスコイル回路により、インピーダンスREと誘導性リアクタンスLVCを制御し、さらにQESを低減させ、それが合理化された。
【0043】
また、式QTS=(QES×QMS)÷(QES+QMS)により分かるように、QES、QMSの何れか1つのパラメータの変動は、いずれもQTSに影響を与え、QTSが不変する場合、QESのパラメータ値を効果的に低減させると、QMSのパラメータ値を向上させることができる。QMS値が向上すると、サスペンションシステムの質量がより大きく、即ち、サスペンションシステムにおけるダイヤフラム300の質量がより大きくなることが許可される。単位質量を単位面積に変換すれば、ダイヤフラム300の面積がより大きくなる。ダイヤフラム300の質量と面積が増加すると、ランダムに擾乱する空気粒子が多くなり、より低い共振周波数fsを得ることができる。従って、エンジンアセンブリ100の数の増加に従って、インピーダンスREと誘導性リアクタンスLVCを合理的に制御することにより、さらにQES、QMS、QTSに影響を与え、共振周波数fsを多く低減させることができ、音響性能が向上する。
【0044】
多重エンジンアレイシステムのスピーカーのインピーダンスRは、制御可能であり、本発明は、高出力のアンプに依存する必要がなく、消費電力を低減するだけでなく、同時に過剰なパワーによって引き起こされるパワー歪みも低減させ、スピーカーの効率ηが向上する。
【0045】
具体的には、スピーカーの効率ηは、音から電気へ変換のパーセンテージであり、多重エンジンアレイシステムが高出力アンプへの依存を低減したので、入力パワーNを低減した。また、複数のエンジンアセンブリ100が同時に作動し、その出力パワーNΟは、複数の独立したエンジンアセンブリ100の独立した作動を重ね合わせたものであるので、出力パワーの合計が増加した。効率式:η=NΟ÷N×100%に応じて、分子としての出力パワーNΟが増加し、分母としての入力パワーNが減少し、スピーカーの合計効率ηが大幅に増加する。
【0046】
好適な実施では、ボイスコイル11は、印刷された可撓性回路基板(FPC)又は片面絶縁の金属箔テープにより巻かれてなる。具体的には、印刷された可撓性回路基板(FPC)又は金属箔テープは、いずれもストリップ状のモノリシック体である。印刷された可撓性回路基板(FPC)を用いる時、可撓性回路基板は、導電層と絶縁層を含み、巻かれる時、絶縁層の1側が、ボイスコイル骨格12に密着する。具体的な実施では、可撓性回路基板には、複数の縦方向の導電層(本実施方式には、五つが設けられ)が設けられ、複数の導電層が絶縁層に付着し、ボイスコイル骨格12の外周に密に配列されて巻かれて、長方形環状のボイスコイル11を形成する。金属箔テープを用いる時、金属箔テープ絶縁の1面が、ボイスコイル骨格12に密着する。ボイスコイル11は、厚さの薄いストリップ状のシート本体で巻かれて形成されるので、放熱面積が大きく、ボイスコイル11の放熱効果を大幅に向上させ、ボイスコイル11の破壊を減少する。厚さの薄いストリップ状のシート本体は、ボイスコイル骨格12に複数回巻き付けることができ、ボイスコイル長さを増加させる。式F=BLIから分かるように、ボイスコイル長さが増加し、ボイスコイル11のアンペア力(駆動力)が増加し、音声変換効率を向上でき、その中、Bはボイスコイル内部での平均磁束密度であり、Lはボイスコイル長さであり、Iは電流である。
【0047】
ボイスコイル骨格12は、耐高温材料により一体的に加工および成形され、例えば、耐高温射出成形材料や窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)等の軽量セラミック材料を用いることができ、上記のこれらの材料は、質量が軽く剛性がよく、放熱効果がよく、ボイスコイル11の正確な位置決めを実現でき、取付誤差率を低減させる。ボイスコイル11の数が多いほど、その正確な位置決めの要求が複雑になり、精度要求も厳しくなる。複数のボイスコイル11がダイヤフラム底部31での配列方式及び位置レイアウトが確定されると、エンジンアセンブリ100が鉢枠200底部でのマッピング(投影)位置が確定され、スピーカーの正確な取付が実現される。ボイスコイル11の正確な位置決めにより、磁力の不均一な分布を減少でき、磁気回路を衝突することによるボイスコイル11の損傷を減少でき、ボイスコイル11の非線形運動を減少できる。また、図2に示されたように、ボイスコイル骨格12の側壁には、複数のアレイ分布の放熱穴121が設けられ、ボイスコイル11の放熱効果をさらに増加させる。
【0048】
ボイスコイル11が磁場中部に位置する時、磁場強さが最も高い、有効な磁気エネルギーが磁気ギャップ24に集中して分布され、磁気ギャップ24の範囲を超えると、磁場強さが迅速に低下する。ボイスコイル11が磁気ギャップ24での最大線形変位XMaxは、ボイスコイル11の線形運動の閾値であり、ボイスコイル11の変位がこの限界を超える時、磁場を切断するボイスコイル11の長さが減少し、ボイスコイル11での電流が不変する場合、ボイスコイル11が受けるアンペア力が減少し、即ち、ボイスコイル11の駆動力が下降し、スピーカーの出力音圧が非線形状態に入り、明らかな非線形歪みを引き起こしやすい。磁気回路システムを長方形の筒状構造に設置するすることにより、ボイスコイル11が磁気ギャップでの最大線形変位XMaxを増加させ、歪みを減少させる。
【0049】
多重エンジンアレイシステムにおける複数の独立した磁気回路システムとボイスコイル11は、同時に運動するとともに、それと接続する同じダイヤフラム300を押し込んで振動させ、オーディオ信号がボイスコイル11を通る時、偏波が発生しにくく、非線形ズレを効果的に低減でき、スピーカーの運動がより線形運動になる傾向があり、非線形歪みをさらに低減させる。また、複数のボイスコイル11は、同時にダイヤフラム300を押し込んで運動させ、安定性の原理により、運動がよりバランスが取れて安定し、反応速度がより速く、制御能力がより強い。
【0050】
オーディオ電流がボイスコイル11を通る時に、ボイスコイル11が磁場に力を受けて、ボイスコイル11がダイヤフラム300を連行して往復運動させ、空気を振動させる。ダイヤフラム300は、ボイスコイル11の垂直押し込みによって前後に変位し、ボイスコイル11からダイヤフラム300縁(折りたたみリングの吊り上げ部分を含み)までの距離がより大きく、ボイスコイル11によって直接及び垂直に押し込む力がより小さく、引き起こされた非線形、機械的な歪みがより強くなり、さらに歪み量とグループ遅延を増加させる。ダイヤフラム300の剛性弾性率が悪く、その歪みの程度とグループ遅延もより大きくなる。この多重エンジンアレイシステムで使用される複数のボイスコイル11は、複数のボイスコイル11のアレイ配列により、ボイスコイル11からダイヤフラム300縁までの距離が大幅に短縮され、それによる歪みとグループ遅延をさらに低減させる。
【0051】
複数のエンジンアセンブリ100が連携して作動することにより、それの複数のボイスコイル11が連携して運動して同じダイヤフラム300を押し込んで運動させ、同時に複数のエンジンアセンブリ100が互いに制限し、スピーカーの歪みは、複数のエンジンアセンブリ100歪みの平均値であり、即ち、DE=(DE+DE+…+DEn)÷nであり、その中、DEは、多重エンジンアレイシステムの歪みであり、DEは、第1のエンジンアセンブリ101の歪みであり、DEは、第2のエンジンアセンブリ102の歪みであり、nは、エンジンアセンブリの数である。
【0052】
複数のエンジンアセンブリ100が連携して作動することにより互いに制限し、歪みの周波数が大幅に低減する。上記の歪みは、ボイスコイルが磁気ギャップ24の非線形を超えて引き起こされた高調波歪み、相互変調歪み、ボイスコイルの逆起電力によって引き起こされた出力パワーと効率η損失、エンジンアセンブリの磁力、電流BLIの不均一な分布によって引き起こされた非線形歪み、サスペンションシステム(ダイヤフラム300、センタリングサポートピース、折りたたみリングの吊り上げ部分を含み)の非線形によって引き起こされた高調波歪み、グループ遅延、位相歪み等を含む。
【0053】
不十分な熱の集合拡散によって引き起こされたパワー損失及び効率損失を減少させるために、磁気ボウル21の底部には、換気穴が設けられ、図9に示されたように、図では矢印方向は風向であり、磁気ボウル21の底部には、四つの第1の換気穴211が設けられ、ボイスコイル11に連行されたダイヤフラム300、センタリングサポートピースからの空気流は、磁気回路システムに入ってから、各磁気ボウル21底部の四つの第1の換気穴211に磁気ボウル21の内部エアダクトを形成し、磁気ギャップ24により空気流循環をして、排水と換気の効果を達成する。具体的な実施では、換気穴を設けることは、磁気回路内の約20%の熱を低減でき、良好な放熱効果を奏することができる。
【0054】
また、図10に示されたように、鉢枠200底部には第2の換気穴201が設けられ、第2の換気穴201は、各磁気ボウル21の第1の換気穴211の位置と同心にアライメントされ、全体のシステムのスムーズな空気流循環が保証され、スピーカーの鉢枠200は、エンジンの上半部分に開放式構造(図では、湾曲矢印で示し)を用い、エンジン内に形成された高圧区の熱を、直接周囲の低圧区に放射させる。鉢枠200は、エンジンの下半部分に構造的に冷却フィン202式の拡散構造をさらに設置することにより、導熱を補強し、それと密に接続する磁気ボウル21の熱が熱伝導の方式で開放することが確保される。また、鉢枠200の底部には、中心エアダクト203がさらに設けられ、ダイヤフラム300が振動する時の直接的な応力を効果的に低減させ、抵抗を減少させる。多重エンジンアレイシステムは、ボイスコイル11自体の放熱構造、磁気回路システム、鉢枠200により、十分な放熱を実現する。
【0055】
多重エンジンアレイシステムは、ダイヤフラム300と協働して、可聴周波数信号をハイレート解析することができ、音声の動的な詳細を深く復元させるとともに、複数のエンジンアセンブリの空間アレイ分布により、音声が完全に拡散することができる。多重エンジンアレイシステムにおける各エンジンアセンブリ100は、いずれも独立であり、それらの間のすべてのボイスコイル回路は、いずれも並列、直列、又は総合モードにより接続する。同時に同じ可聴周波数信号を受信した後に、すべてのボイスコイル11は、いずれも同時に線形ビストン運動を行い、さらにそれと密に接続するダイヤフラム300を押し込んで一連の複雑な振動を発生する。
【0056】
具体的には、複数の独立したエンジンアセンブリ100は、連携して作動し、本発明の多重エンジンアレイシステムは、複数の独立したエンジンアセンブリ100により構成された分布式アレイモードであり、異なるボイスコイル11は、異なる回路接続方式を用い、フーリエ変換の原理に応じて、音波の成分を様々な解析または合成して、時間領域や周波数領域の図像を得ることができる。フーリエ変換は、1つの複合波(即ち、多くの異なる周波数の波を重ね合わせ)を解析して単純波(単一の周波数の波)に分解し、単純波を逆に複合波として合成する。信号が複雑になるほど、重ね合わせる単純波が多くなり、信号が単純になるほど、重ね合わせる単純波が少なくなり、各種の単純波は、いずれも信号の成分、例えば、正弦波、方形波、鋸形波等とすることができる。フーリエ変換は、正弦波を信号の成分とし、一定の条件を満たすある関数を、正弦又は余弦関数(三角関数)、又はそれらの積分の線形組合せとして表示することができる。図11に示されたように、フーリエ変換により、音波の複数の単純波が時間領域での合成図像S及び音波が周波数領域での複数の分解図像S、S 等を得ることができる。
【0057】
同じチャネルの可聴周波数信号は、フーリエ変換原理に従って、周波数領域と時間領域の波動モードで、複数回の分離及び重ね合わせて、最終的に、電-力-音の変換過程を完成し、複数の伝統的なシングルエンジンスピーカーの連携作動の合計に相当することを得る。即ち、このようなマルチエンジンが共同して完成した完全な波動状態は、次の式で表すことができる。ΣE=E+E+...+En又はΣE=E×n、その中、ΣEは、スピーカーのすべてのエンジンの合計であり、Eは、単一のエンジンアセンブリであり、nは、エンジンアセンブリの数である。多重エンジンアレイシステムを用い、音波を超解析することができ、複雑な可聴周波数信号を複数回の分解又は合成して解析でき、豊かでカラフルな音を解析でき、「可聴周波数信号に対するハイレート解析、音声の動的な詳細に対する深い復元、及び音波空間分布の完全な拡散の実現」の能力を達成できる。
【0058】
別の実施方式では、シャノン式(Shannon)により、スピーカーの解析を分析できる。理解を容易にするために、まずシャノン情報論の関連用語と音響の関連用語を同等に比較する。
【0059】
チャネル(Channel):信号のオーディオチャネル、即ち、スピーカーの回路に投入されたオーディオ信号(Audio Channel)に類似することができる。一般的に、一つのスピーカーは、1つのオーディオ信号が投入され且つ1つのチャネルしかない。本出願の複数のエンジンアセンブリ100は、同じチャネルをエンジンアセンブリ100数と同じの複数のチャネルにバイパスされる。
【0060】
帯域幅(Bandwidth):帯域の幅、即ち、信号に含まれた周波数成分の最高周波数と最低周波数の差に類似することができ、帯域幅は、容量に比例し、単位は、Hzで公式ではHである。
【0061】
速率(Velocity):マス変位が経る波長λと、この波長λを通過する時間tとの割合値に類似することができ、v=λ/tである。速率は、速度と等しくないが、速度に比例する。音波の周波数は、音声を発生する音源によって決まり、音声が伝わる媒体の変化によって変化しないため、異なる周波数の音波は、同じ媒体で伝達する速率が異なり、周波数が低いほど、その波長が長く、速率が大きい。逆に、周波数が高いほど、その波長が小さく、速率が小さい。速率は、音響で帯域幅の低周波端の影響をより受ける。
【0062】
エラー率(Error Rate):歪み率(Distortion Rate)と同等にすることができる。
【0063】
シャノン式C=Hlog(1+S/N)から分かるように、情報容量Cは、チャネル、帯域幅H、速率vに比例関係するが、エラー率は、情報容量C、チャネル、帯域幅Hに反比例するが、速率vに比例する。S/Nは、信号対雑音比であり、Sは、信号パワー(ワット)であり、Nは、騒音パワー(ワット)である。情報容量Cは、チャネルの最大伝送能力である。即ち、チャネルの情報源の速率Rは、チャネル容量C以下であれば、理論的には、情報源の出力は、任意に小さいエラー率でチャネルにより伝送される。
【0064】
本実施方式は、既に、速率vを波長λと時間tとの割合値と同等にし、チャネル容量Cを帯域の幅Hと同等にし、エラー率を歪み率DRと同等にする。歪みを低減させるために、帯域の幅Hを増加するか、速率vを低減する。帯域の幅Hと速率vが同時に増加するか、一つだけを増加すると、チャネルを通過する情報量も、必然的に増加する。帯域の幅Hが同時に低減するか、一つだけを低減すると、チャネルを通過する情報量も、必然的に減少する。チャネルの数は2以上である時、全体の情報量とチャネルもアレイで重ね合わせる。
【0065】
シャノン式により、全体的な情報容量をΣC=Hlog(1+S/N)×cnとして表示でき、その中、ΣCは、すべてのチャネルを通過する情報の合計であり、Hは帯域の幅であり、小文字のcnはアレイ重ね合わせたチャネル数である。信号対雑音比S/Nを無視すると、式をΣC=H×cnに簡易化でき、即ち、すべてのチャネルを通過する情報の合計は、帯域幅にチャネル数をかけたものに等しくなる。この式は、前記のフーリエ分析の合計式:「ΣE=E+E+...+E又はΣE=E×n」と完全に同等であり、即ち、すべてのエンジンの合計は、各エンジンの重ね合わせ又は乗算に等しくなる。
【0066】
シャノン式を用いたスピーカーの解析は、多重エンジンアレイシステムを用いることにより、スピーカーの情報合計量C及び帯域の幅Hを制御可能にし、スピーカーの可聴周波数の解析能力とスピーカーに対する制御能力を向上できることを表明する。
【0067】
別の実施方式では、等価回路モデリングの方式でスピーカーの解析を分析し、電-力-音の集積パラメータを回路モデルの方式で整合して等価回路モデルを形成する。この方式は、機械(力)、音響(音)のパラメータを電気(電)パラメータに変換させ、回路でリアクタンスの方式により表示及び算出される。リアクタンスは、抵抗R(インピーダンス)、静電容量CAP(容量性リアクタンス)、インダクタンスLVC(誘導性リアクタンス)を含み、図6から図8に示されたように、多重エンジンアレイシステムは、複数のエンジンアセンブリ100を有し、異なるエンジンアセンブリ100のボイスコイル11の回路は、効果的に組み合わせて、複数組の等価回路を形成し、複数組の等価回路は、可聴周波数を様々な解析を行い、元の可聴周波数信号に対するハイレート解析能力を向上させ、スピーカーの性能を向上させる。
【0068】
本発明により提供された多重エンジンアレイシステムは、各エンジンアセンブリがいずれも独立であり、各エンジンアセンブリが連携してそれと密に接続する同じ長方形鉢状のダイヤフラムをともに押し込んで振動させ、ダイヤフラムは、これらのエンジンにおける信号による電気エネルギーを機械エネルギーに変換するとともに、前記のフーリエ変換、シャノン理論、及び等価回路モデリング等の方式の解析により、豊かでカラフルな音を解析でき、可聴周波数信号に対するハイレート解析、音声の動的な詳細に対する深い復元、及び音波空間分布の完全な拡散の実現を達成する。
【0069】
本発明は、上記の多重エンジンアレイシステムを含むスピーカーをさらに提供する。
【0070】
本発明は、大口径のスピーカーに適用し、高出力アンプに依存する必要がなく、消費電力を効果的に低減でき、スピーカー効率を向上する。多重エンジンアレイシステムは、インピーダンスREと誘導性リアクタンスLVCを制御してQES、QMS、QTSをさらに合理的に制御でき、効率ηを増加するだけでなく、共振周波数fを低減させる。ボイスコイル及びボイスコイル骨格の構造を変更することにより放熱効果を向上させ、同時に磁気回路の排水及び換気により放熱させ、さらにスピーカー鉢枠の放熱設計により十分な放熱を実現する。多重エンジンアレイシステムは、スピーカーの運動がより線形運動になり、さらに非線形歪みを低減させるとともに、運動はよりバランスが取れて安定し、反応速度は、より迅速であり、制御能力がより強い。複数のエンジンアセンブリの相乗効果及び相互制限により、各種類の歪みを減少でき、スピーカーの音響性能を向上させる。
【0071】
なお、本発明の説明において、「第1の」および「第2の」という用語は、1つのエンティティまたは操作を別のエンティティまたは操作から区別するためにのみ使用され、これらのエンティティまたは操作間のそのような実際の関係または順序を必ずしも要求または暗示するものではない。
【0072】
上記は本発明の具体的な実施形態に過ぎないが、本発明の保護範囲はそれに限定されない。創造的な作業を通じて考えられないいかなる変更または置換も、本発明の保護範囲に含まれるものとする。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって限定される保護範囲に従うべきである。
【符号の説明】
【0073】
100 エンジンアセンブリ、200 鉢枠、300 ダイヤフラム、11 ボイスコイル、12 ボイスコイル骨格、121 放熱穴、101 第1のボイスコイル、102 第2のボイスコイル、103 第3のボイスコイル、104 第4のボイスコイル、21 磁気ボウル、22 磁石、23 磁気導電プレート、24 磁気ギャップ、211 第1の換気穴、31 ダイヤフラム底部、311 回路基板、201 第2の換気穴、202 冷却フィン、203 中心エアダクト。
図1
図2
図3
図4
図5
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図11