(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】再生装置及び再生移動体
(51)【国際特許分類】
E01C 19/10 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
E01C19/10 A
(21)【出願番号】P 2021566759
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051581
(87)【国際公開番号】W WO2021131062
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518302139
【氏名又は名称】株式会社九建総合開発
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新永 隆一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-035830(JP,U)
【文献】実開昭61-010308(JP,U)
【文献】特開平03-235803(JP,A)
【文献】特開平09-025608(JP,A)
【文献】特許第4892711(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトの廃材が供給されるドラムと、
該ドラムを回転可能に支持するベース部と、
前記ドラムを回転させる駆動手段と、
前記ドラムの内部を加熱する加熱手段と、
前記ドラムの周方向に離間して前記ドラムの内周壁に設けられ、前記ドラムの回転によって前記廃材を掻き上げる複数の羽根部材と、
前記ドラムの前記周方向に離間して前記ドラムの前記内周壁に設けられ、前記ドラムの回転によって掻き上げられ、落下した前記廃材が衝突する複数の突起と、を備え、
前記ドラムの径方向における前記内周壁からの前記複数の突起の突出高さが、前記複数の羽根部材の突出高さと同じかそれよりも高い、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記複数の突起は、前記周方向で隣接する前記羽根部材の間に位置し、かつ、前記ドラムの回転軸方向に離間して複数列に設けられる、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の再生装置であって、
前記複数の突起は、第一の突起群と、第二の突起群とを含み、
前記第一の突起群は、前記ドラムの回転軸方向における第一の位置に位置し、かつ、前記周方向に離間した複数の突起からなり、
前記第二の突起群は、前記ドラムの前記回転軸方向における前記第一の位置とは異なる第二の位置に位置し、かつ、前記周方向に離間した複数の突起からなり、
前記第二の突起群の前記複数の突起は、前記第一の突起群の前記複数の突起に対して、前記ドラムの前記周方向にオフセットさせて配置される、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3いずれか一項に記載の再生装置であって、
前記複数の羽根部材と前記複数の突起とは、
前記複数の突起のうちの一の突起に対して、前記複数の羽根部材のうちの一の羽根部材が前記ドラムの回転方向に130度~170度の位相差で位置する、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の再生装置であって、
前記突起は中空円柱体又は中空円錐台体である、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の再生装置であって、
前記羽根部材は、前記ドラムの回転方向で前側の第一側面と、後側の第二側面と、を有し、
前記第一側面は、前記内周壁の法線方向に沿って設けられ、前記第二側面は、前記法線方向に対して前記ドラムの前記回転方向で前記前側に傾斜させて設けられる、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項7】
請求項5に記載の再生装置であって、
前記突起は、
円筒又は円錐台筒の筒部と、
前記筒部の上側開口部を塞ぐ円板部材と、を備え、
前記ドラムの回転軸方向に隣接する少なくとも二つの前記突起と、各突起の前記筒部の下側開口部を塞ぐ一つの長板部材とを備えた突起ユニットが、前記ドラムの前記内周壁に前記長板部材の長手方向が前記回転軸方向と平行に設けられる、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項8】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ドラム内に供給された前記廃材の重量を計測する重量計測手段を備える、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項9】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ベース部は、固定側ベース部と、前記ドラムを回転可能に支持する回動側ベース部とを備え、
前記回動側ベース部は、前記ドラムの排出口側において、前記固定側ベース部に回動可能に連結されており、
前記固定側ベース部に、前記回動側ベース部を前記固定側ベース部に対して回動させるアクチュエータが設けられている、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項10】
少なくとも一対の車輪を有する台車ユニットと、
該台車ユニットに搭載された請求項1から請求項9いずれか一項に記載の再生装置と、を備える、
ことを特徴とする再生移動体。
【請求項11】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ドラムは、
粉砕された前記廃材を排出する排出部と、
前記複数の羽根部材及び前記複数の突起に対して前記ドラムの回転軸方向にずれた位置において、前記ドラムの前記周方向に離間して前記内周壁に設けられ、粉砕された前記廃材の前記排出部への移動を案内する複数の案内部材と、を備える、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項12】
請求項11に記載の再生装置であって、
前記ドラムは、円筒形状の本体を備え、
前記排出部は、前記本体の一方端部に設けられ、
前記複数の羽根部材、前記複数の突起及び前記複数の案内部材は、前記本体に設けられている、
ことを特徴とする再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルトの廃材の再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装道路の打ち換え工事の際に、剥ぎ取ったアスファルト(アスファルト混合物:石油アスファルト、骨材および砂の混合物)の廃材を、その工事現場で再生する装置、技術が提案されている(特許文献1~3)。廃材を工事現場で再生し、再利用することで、工場等で再生する場合に比べ、廃材の輸送費および輸送時間の削減と、工期短縮を図ることができる。
【0003】
再生装置は、一般に、廃材(アスファルト塊)が投入される回転ドラムを備える。回転ドラムの内部の廃材を加熱するとともに、回転ドラムを回転させることにより、廃材が掻き上げられ、自然落下し、破砕される。これにより、アスファルト塊が粒状に破砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4671152号公報
【文献】特許第4892711号公報
【文献】特開2001-90018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした再生装置には、工事現場で迅速に、品質よく廃材を再生可能であることが要求される。廃材の再生を迅速に行うためには、廃材を効率よく粒状に破砕可能であることが重要である。また、再生したアスファルトを再利用した舗装道路が、一定期間にわたって道路品質を維持できるよう、廃材を歩留まりよく、かつ、廃材の劣化度合いに応じて再生可能であることが重要である。
【0006】
本発明の目的は、アスファルトの廃材を工事現場で再生し、再利用する際に、迅速に、品質よく廃材を再生可能な装置及び再生移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
アスファルトの廃材が供給されるドラムと、
該ドラムを回転可能に支持するベース部と、
前記ドラムを回転させる駆動手段と、
前記ドラムの内部を加熱する加熱手段と、
前記ドラムの周方向に離間して前記ドラムの内周壁に設けられ、前記ドラムの回転によって前記廃材を掻き上げる複数の羽根部材と、
前記ドラムの前記周方向に離間して前記ドラムの前記内周壁に設けられ、前記ドラムの回転によって掻き上げられ、落下した前記廃材が衝突する複数の突起と、を備え、
前記ドラムの径方向における前記内周壁からの前記複数の突起の突出高さが、前記複数の羽根部材の突出高さと同じかそれよりも高い、
ことを特徴とする再生装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アスファルトの廃材を工事現場で再生し、再利用する際に、迅速に、品質よく廃材を再生可能な装置及び再生移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る再生移動体の側面図。
【
図2】
図1の後面図であり、本発明の一実施形態に係る再生装置のみを表わす側面図。
【
図4】
図1の再生移動体の姿勢変化の態様を示す図。
【
図11】羽根部材と突起との位相差による廃材の挙動の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<再生移動体の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る再生移動体1の側面図である。なお、各図においてX方向は再生移動体1の前後方向を示し、矢印方向を前進方向或いは前側とし、逆方向を後退方向或いは後ろ側とする。Z方向は上下方向である。Y方向は車幅方向(左右方向)である。
【0012】
再生移動体1は、台車ユニット2と、台車ユニット2に搭載された再生装置3とを備えており、台車ユニット2を牽引することで再生移動体1は移動可能である。台車ユニット2は、車体フレーム2aに回転自在に支持され、左右方向に離間した一対の車輪2bを二組備えた四輪車である。台車ユニット2は三輪車又は二輪車であってもよい。
【0013】
本実施形態の再生移動体1は、台車ユニット2の前側に牽引車と係合する係合部2cを備えたトレーラであり、任意の工事現場に移動可能である。台車ユニット2の代わりに自走式車両を用いて再生移動体1を構成するようにしてもよい。
【0014】
<再生装置の構成>
図1~
図3を参照して再生装置3について説明する。
図2は再生装置3の側面図であり、
図3は
図2のIII方向矢視図である。
図2及び
図3は外装カバー3aが取り外された状態を示している。
【0015】
再生装置3はベース部4、ドラム5、加熱ユニット6、駆動ユニット7、ホッパ9、制御部12及び操作パネル11を備える。ベース部4は、固定側のベース本体(固定側のベース部)41と、回動側のフレーム(回動側のベース部)42とを含む。フレーム42上にドラム5、加熱ユニット6および駆動ユニット7が搭載される。これらのベース本体41とフレーム42は、ドラム5の排出口51a(後述)の側においてヒンジ部44を介して連結されている。このベース本体41にアクチュエータ45の基部が固定され、アクチュエータ45の先端部(伸縮部)がフレーム42に固定されている。アクチュエータ45が駆動することにより、フレーム42がヒンジ部44を回動中心として所定の仰角EA(0°~約40°)で回動される。言い換えると、アクチュエータ45が駆動することにより、ホッパ9が上側、ドラム5の排出口51a(後述)が下側となるように再生装置3がリフトアップされる。本実施形態のアクチュエータ45は油圧シリンダである。アクチュエータ45は、エアシリンダや電動シリンダ等、他の種類のアクチュエータであってもよい。
【0016】
操作パネル11は、再生装置3を作業者が適宜操作するためのものである。操作パネル11は、再生装置3の制御部12と有線接続される。操作パネル11と制御部12との間の通信は、ケーブルや通信線などの有線接続による通信の他に、無線接続による通信(例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標))や光通信(例えば赤外線通信)であってもよい。また、本実施形態においては、操作パネル11と制御部12とが別体である場合を例に挙げて説明を行ったが、操作パネル11を制御部12に組み込んで一体に構成しても良いことは言うまでもない。
【0017】
操作パネル11は、アクチュエータ45を駆動させる油圧ポンプ13の入・切を選択する手動スイッチと、ドラム5の傾動(up、down)を選択する手動ボタンを備える。作業者が、手動ボタンの『up』を押すことにより、アクチュエータ45が駆動(伸長)され、フレーム42がヒンジ部44を中心に回動されることにより、ドラム5の排出口51aが下向きの斜めの姿勢に変化する。また、作業者が、手動ボタンの『down』を押すことにより、アクチュエータ45が元の位置に戻され、ドラム5を水平の姿勢に戻すことができる。
【0018】
ドラム5を斜めの姿勢に変化させるのは、ドラム5の内部の再生粒101を排出させる場合の他、廃材100の加熱、攪拌中にも行うことができる。加熱、攪拌中にドラム5を斜めの姿勢にすることで、廃材100のドラム5の内部での流動(特に回転軸5a方向の流動)を生じさせ、廃材100の加熱、攪拌を促進することが可能となる。
【0019】
ベース本体41は、上側のフレーム41aと、下側のフレーム41bとを備える。フレーム41aとフレーム41bとの間には計測ユニット10が設けられている。言い換えると、フレーム41b上に固定された計測ユニット10上に、フレーム41aが搭載される。計測ユニット10は例えばロードセルである。計測ユニット10は、フレーム41bの長手方向前後(
図1中ではX方向左右)にそれぞれ設けられており、フレーム41aに搭載されている構成(フレーム41bおよび計測ユニット10を除いた再生装置3の全ての構成物)の重量を計測する。計測ユニット10によって、ドラム5内に供給された、アスファルト混合物の廃材100の重量を計測することができる。
【0020】
計測された廃材100の重量は、操作パネル11の重量表示部に表示される。重量表示部の表示値は、廃材100が装填されていない場合には、0が表示され、廃材100が装填されると、装填量に応じた廃材100の重量値が表示される。これにより、作業者は、廃材100の装填量を的確に把握することができる。
【0021】
ドラム5は金属製の中空体であり、その内部にはホッパ9を介して廃材100が供給される。ドラム5は円筒形状の本体50と円錐台筒形状の排出部51とを含む。本体50の周囲は、ベース部42上に設けられた門型のフレーム43によって囲まれている。
図2はフレーム43の一部を破断して図示されている(後ろ側の支持部8周辺)。外装カバー3aはフレーム43に支持される。本体50はその前端部に開口5b(
図5)を有しており、ホッパ9に投入された廃材100は開口5bを通ってドラム5の内部に導入される。
【0022】
排出部51はドラム5の後部を形成しており、廃材100の再生アスファルト粒を排出する排出口51a(
図5)を有する。排出口51aは蓋部材52で閉鎖されている。
【0023】
排出部51に固定されたロッド52bの外周には雄ネジが設けられており、ハンドル52aの中央部には雌ネジ孔が設けられている。また、蓋部材52の中央部には、ロッド52bの外径より少し大きい孔が設けられており、ロッド52bに挿入される。ハンドル52aは、蓋部材52の外側からロッド52bに螺合して設けられており、ハンドル52aに対する操作によって、蓋部材52をロッド52bの軸方向に移動させて隙間t(
図4)の調整を行う。この隙間tの調整により、再生粒101の排出量を調整することができる。
【0024】
ドラム5は複数の支持部8を介してベース部4(フレーム42)に対して回転自在に支持されている。
図2の姿勢において、ドラム5の回転軸5a(仮想的な回転中心)はX方向と平行である。支持部8は、回転軸5aと平行に設けられるローラ回転軸81の周りに回転自在なローラ82を含み、本体50の外周面にローラ82が当接することでドラム5を回転自在に支持する。支持部8は、
図2に示すようにドラム5の長手方向前後に1つずつ、かつ、
図3に示すようにドラム5の幅方向左右に1つずつ、計四つ設けられている。各支持部8のローラ82がドラム5を下側から支える。
【0025】
駆動ユニット7はドラム5を回転させる駆動源である。駆動ユニット7は、モータ71と、変速機72と、ピニオンギア73とを備える。モータ71の出力は変速機72で減速され、ピニオンギア73を回転させる。本体50の外周面には環状の駆動伝達部50bが設けられている。駆動伝達部50bはピニオンギア73と噛み合う多数の歯(ラック)であり、環状に形成されている。モータ71が回転することにより、ピニオンギア73と歯とが噛合し、ドラム5が回転軸5aを中心として各ローラ82上を転動する。
【0026】
ドラム5の回転速度は、操作パネル11によって調整可能である。操作パネル11には、ドラムの回転速度を、停止、低速、中速、高速と4段階に切り替えるスイッチが設けられている。作業者は、このスイッチを操作することにより、廃材100の塊の大きさや、加熱、攪拌工程の進行度合いに応じて、回転速度を適宜切り替えることができる。また、再生粒101をドラム5の内部にしばらく放置する場合には、ドラム5の回転を完全に停止してしまうと再生粒101がドラム5の内部で固まってしまう恐れがあるため、その場合には、低速モードでドラム5の回転を続けるようにし、ドラム5の内部での再生粒101の固化を防止する。
【0027】
加熱ユニット6は、ドラム5の内に装填された廃材100、再生粒101を加熱するものである。本実施形態の場合、加熱ユニット6は、開口5b(
図5)を介してドラム5の内部に火炎を放射(投射)するバーナである。この火炎によりドラム5の内部の廃材100が直接加熱されるため、廃材100を迅速に効率よく軟化(表面層の溶融)させることができる。
【0028】
ドラム5の内部の温度制御は、操作パネル11に設けられた温度入力手段よって、作業者が適宜設定できる。加熱ユニット6は、作業者により設定された温度とドラム5の内部に設けられた温度計測手段の計測結果に基づいて、加熱制御を行う。
【0029】
バーナは、液体燃料に圧力をかけて霧状に噴出し、空気と混合させた状態で着火して火炎を放射するものであり、火炎の放射口が一つで構成される単式バーナである場合には、バーナの作動をオンオフさせることで、加熱制御を行うことが可能である。また、火炎の放射口が、強火用、弱火用といった二つで構成される二連式バーナを用いる場合には、各々のバーナの作動タイミングを調整することで、加熱制御を行うことが可能である。バーナは、三連式以上であっても良い。
【0030】
以上の構成からなる再生装置3は、廃材100の再生に際し、
図1に示すように、ホッパ9に廃材100や再生添加剤が投入される。この投入はショベルカーやホッパ吊り下げクレーンなどでなされる。廃材100の投入量は計測ユニット10でリアルタイムに計測され、投入量が所望の量になったところで投入を終了する。
【0031】
駆動ユニット7を駆動してドラム5を回転させながら、加熱ユニット6がドラム5の内部の廃材100を加熱する。ドラム5内に装填された廃材100は、ドラム5の回転に伴う落下エネルギによって塊体が破砕される。これらの破砕体が加熱されることにより表層部が溶融されるとともに、ドラム5の内部を転動することにより粒状化する。また、ドラム5内の後述する構造により、塊体の破砕体が促進される。ドラム5内の温度を所定の温度に維持しつつ、所定時間、加熱ユニット6により廃材100を加熱し続けることにより、廃材100を歩留まりよく、かつ、品質よく、アスファルトを再生でき、再生粒101を得ることができる。得られた再生粒101はドラム5から排出し、道路のアスファルト舗装に再利用される。排出の際は、
図4に示すようにアクチュエータ45の駆動(伸長)によりフレーム42がヒンジ部44を中心に回動され、リフトアップされる。これによりドラム5は後端部(蓋部材52)が下を向いた斜めの姿勢に変化する。この姿勢変更の際、加熱ユニット6による加熱及び駆動ユニット7の駆動は継続して行っていてもよい。ハンドル52aに対する操作によって蓋部材52を開方向に操作すると、蓋部材52と排出部51との間に隙間t(
図4)を確保でき、隙間tから、ドラム5の内部の再生粒101が自重により自然落下する。
【0032】
<ドラムの内部構造>
図5はドラム5の内部構造を示す破断図である。
図6は
図5のA-A線断面図であり、排出部51を前側から見た図である。
図7は
図5のB-B線断面図であり、本体50の後部以外の部分を後ろ側から見た図である。
【0033】
排出部51の内周壁には複数の案内部材51bが設けられている。案内部材51bは板状の部材であり、排出口51aの中心から内周壁に沿って延びる径方向の放射線に対して傾けて設けられている。案内部材51bは、その後端側がドラム5の回転方向Dに向くように傾斜され、かつ、後端側が回転方向Dとは反対側に向けてアーチ状に湾曲している。案内部材51bは本体50の内部で粒状化された再生粒101を排出口51aへ案内し、その排出を効率的に行うことができる。本体50の後部においても、内周壁50aに周方向に複数の案内部材54が設けられており、本体50から排出部51への再生粒101の移動を案内する。
【0034】
本体50の内周壁50aには、また、複数の羽根部材53と、複数の突起55とが設けられている。各羽根部材53はドラム5の周方向に離間して配置されている。羽根部材53無しのドラムの場合、
図1の姿勢において、ドラムを回転させても、廃材100の自重によりドラムの底部に廃材100が滞溜したままとなる。一方、羽根部材53を有するドラム5の場合、ドラム5の回転によって複数の羽根部材53が廃材100を掻き上げることにより、廃材100はドラム5の底部に滞留することなく強制的に持ち上げられ、その後、自然落下し、ドラム5内で攪拌される。
【0035】
各羽根部材53は本体50の内周壁50aに回転軸5aの方向に沿って、かつ、ドラム5の径方向内側へ突出させて設けられている。本実施形態の場合、各羽根部材53は回転軸5aの方向と平行に連続的に延設されているが、各羽根部材53は回転軸5aの方向に対して傾けて設けてもよい。傾ける場合、羽根部材53は、その後端側がドラム5の回転方向Dに向くように傾斜され、かつ、後端側が回転方向Dとは反対側に向けてアーチ状に湾曲させてもよい。
【0036】
本実施形態の羽根部材53は、ドラム5の径方向の断面形状が直角三角形であり、ドラム5の回転方向Dで前側の側面53aと後側の側面53bとを含む。側面53aは廃材100の掻き上げ面である。側面53bは側面53aを支える支持面である。本実施形態の場合、側面53aは、内周壁50aの法線方向に沿った垂直壁面であり、この垂直壁面を延長してなる平面に回転軸5aが含まれる。側面53bは内周壁50aの法線方向に沿った垂直壁面に対して、ドラム5の回転方向D側に傾斜している。
【0037】
図8は羽根部材53の組み立て図である。羽根部材53は、本実施形態の場合、中空の部材である。羽根部材53は中実の部材や薄板状の部材であってもよいが、中空の部材とすることで、軽量化を図ることができる。羽根部材53は、側面53aを形成する金属板と、側面53bを形成する金属板と、両端部を形成する二つの部材53cとを溶接等によって接合することで形成される。部材53cで、側面53aを形成する金属板と側面53bを形成する金属板とを接合することで羽根部材53の剛性を向上できると共に、中空部への廃材100の侵入を防止できる。羽根部材53は内周面50aに溶接等によって接合されて固定される。部材53cの内周面50aとの接合面は、内周面50aの曲率と同一の曲率の形状で形成されている。これにより、接合面が隙間無く形成可能であり、中空部への廃材100の侵入を防止できる。
【0038】
また、部材53cは、一つのみで形成することもでき、一方の端部のみ部材53cで接合し、部材53cを接合しない他方の端部については、開口5bが形成される円形板部5d(
図5,7)に直接溶接等によって接合して固定しても良い。これにより部品点数の削減を行うことができる。
【0039】
各突起55は、ドラム5の周方向及び回転軸5a方向に離間して内周壁50aに離散的或いは点状に設けられている。複数の羽根部材53で掻き上げられた廃材100が自重により本体50内で落下する際、廃材100が各突起55に衝突することで、塊体の廃材100の破砕が促進され、破砕体の廃材100が形成される。廃材100の再生を効率的に行うためには、廃材100の軟化と破砕が重要である。本実施形態の場合、廃材100の軟化は加熱ユニット6による直接的な加熱により行われ、破砕はドラム5の内部構造により促進される。
【0040】
各突起55は、ドラム5の径方向内側へ突出したピン状の部材である。本実施形態の場合、突起55の内周壁50aからの径方向の高さH1は、羽根部材53の内周壁50aからの径方向の高さH2よりも高い(長い)。ここで、高さH1が低いほど、落下する廃材100が有する位置エネルギを最大限に活用できるが、落下する廃材100は拡散し、散らばるため、突起55に当たりにくくなってしまい、破砕効率が悪化する。このため、高さH1をある程度高くし、落下する廃材100が拡散する前に突起55と衝突させるようにした方が、廃材100の破砕効率が良好となる。
【0041】
ただし、高さH1があまり高すぎると、加熱ユニット6による火炎の影響を受けるため、突起55の耐熱性等を考慮する必要が生じる。本体50の内径は例えば1200~2200mmであり、長さは例えば2000~2800mmであり、高さH1は例えば280~400mmであり、高さH2は例えば170~400mmである。本体50の内径、長さは所望とする廃材100の再生量に応じて適宜設定される。
【0042】
本実施形態の場合、複数の突起55は、回転軸5a方向における配置位置によって、四つの突起群PG1~PG4に分類される。突起群PG1の突起55は回転軸5aの方向で最も前側に位置する突起群である。突起群PG2の突起55は回転軸5aの方向で前側から二列目の突起群である。突起群PG3の突起55は回転軸5aの方向で前側から三列目の突起群である。突起群PG4の突起55は回転軸5aの方向で最も後ろ側に位置する四列目の突起群である。
【0043】
本実施形態の場合、各突起群PG1~PG4には、三つの突起55が含まれ、これら三つの突起55は周方向に等ピッチ(120°間隔)で配置されている。また、二つの突起群PG1と突起群PG3の各突起55は、ドラム5の周方向における位置が同じで、かつ、ドラム5の長手方向に離間して配置される。そして、残りの二つの突起群PG2と突起群PG4の各突起55は、周方向における位置が突起群PG1および突起群PG3の各突起55の中間で、かつ、ドラム5の長手方向に離間して配置されている。
【0044】
二つの突起群PG1と突起群PG3の各突起55と、二つの突起群PG2と突起群PG4の各突起55とは、周方向でオフセットして配置されており、本実施形態の場合、60度の位相差をもって配置されている。複数の突起55をドラム5の内周壁50aに分散して配置しているため、ドラム5内に装填される廃材100をより均等に突起55に衝突させることができる。
【0045】
突起群毎の突起55間の周方向の位相差は上記の例に限られない。例えば、同じ突起群の各突起55の周方向のピッチをPとする。開口5bの側からn列目(nは自然数)の突起群の各突起に対して、(n+1)列目の突起群の各突起の周方向の位相差はP/2であってもよい。
【0046】
図9は突起55の組み立て図である。突起55は、本実施形態の場合、中空の部材であって、特に中空円柱体である。突起55は中実の部材であってもよいが、中空の部材とすることで、軽量化を図ることができる。突起55は、金属製の円筒の筒部55aと、筒部55aの上側開口部(ドラム5の径方向中心側の端部)を塞ぐ金属製の円板部材55bとを溶接等によって接合することで形成される。本実施形態の場合、ドラム5の回転軸5a方向に隣接する二つの突起55を長板部材56を用いて一つの突起ユニット57として形成し、形成された突起ユニット57の長板部材56を内周壁50aに溶接やボルト等の締結部材により固定する。
【0047】
これにより、個々の突起55を内周壁50aに個別に固定するよりも、製造作業を効率化できる。また、再生装置3の使用中、何らかの衝撃で、ある突起55が損傷した場合においても、その突起55を構成する突起ユニット57のみを容易に取り外すことができる。その後、古い突起ユニット57を新しい突起ユニット57と交換するだけでよく、メンテナンスに要する時間のロスが少なく、結果、再生装置3の稼働効率が良好となる。
【0048】
長板部材56は、各筒部55aの下側開口部(ドラム5の径方向で外側)を塞ぐ部材であり、各筒部55aは長板部材56に溶接等によって固定される。群PG1に属する突起55と群PG3に属する突起55が一つの突起ユニット57を形成する。また、群PG2に属する突起55と群PG4に属する突起55が一つの突起ユニット57を形成する。突起ユニット57は、
図5に示すように長板部材56の長手方向が回転軸5a方向と平行に内周壁50aに設けられる。なお、ドラム5の内部構造に対応して、一つの突起ユニット57が備える突起55の数は3以上であってもよい。
【0049】
突起55は、中空円柱体以外の形状であってもよく、例えば、中空円錐台体であってもよい。
図10はその一例を示す組み立て図である。図示の突起55’は金属製の円錐台筒の筒部55a’と、筒部55a’の上側開口部(ドラム5の径方向で内側端)を塞ぐ金属製の円板部材55b’とを溶接等によって接合することで形成される。そして、二つの筒部55a’を長板部材56に固定して突起ユニット57’とする。
【0050】
図7を参照して、突起55と羽根部材53との周方向の位置関係について説明する。本実施形態の場合、複数の突起55のうちの一の突起55に対して、複数の羽根部材53のうちの一の羽根部材がドラム5の回転方向Dに130度~170度の位相差θで位置するように、各突起55及び各羽根部材53の周方向の配置が設計されている。
【0051】
位相差θを130度~170度の範囲内にする利点を
図11を参照して説明する。羽根部材53の回転方向Dでの位置を、時計盤で6時の位置を0度の位置と仮定する。状態ST1は廃材100を掻き上げている羽根部材53が130度~170度の位置に到達する直前の状態を示している。このとき、廃材100は羽根部材53上に載った状態にあるが、ドラム5の回転が進むと状態ST2に示すように廃材100は自重で羽根部材53から滑り落ちる。
【0052】
状態ST2に示すように、本実施形態の再生装置3は、廃材100が落下する位置に、丁度、突起55が位置するよう、ドラム5の回転速度および位相差θが調整されている。状態ST2において、落下した廃材100が突起55と強く衝突することで、廃材100の破砕が促進される。ドラム5の回転速度を2.8~12.4rpm(2.8~12.4min
-1
)、位相差θを130度~170度とすると、廃材100と突起55との位置関係が状態ST2の関係になり易くなる。
【0053】
廃材100と突起55とが衝突し易い位相差θは、ドラム5の回転速度によって若干の影響を受ける。例えば、ドラム5の回転速度が比較的低速(2.8~4.8rpm)の場合、155度~170度の範囲が挙げられる。また、標準的な速度(6.6~8.6rpm)の場合、145度~155度の範囲が挙げられる。比較的高速(10.4~12.4rpm)の場合、130度~145度の範囲が挙げられる。ドラム5の回転速度を可変として運転する場合、最も運転時間の長い回転速度域に合わせて位相差θを設計してもよい。
【0054】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。