(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/02 20060101AFI20230309BHJP
F03B 13/20 20060101ALI20230309BHJP
F16H 35/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
F16H19/02 D
F03B13/20
F16H19/02 F
F16H19/02 H
F16H35/00 G
(21)【出願番号】P 2022122692
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2022-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596007577
【氏名又は名称】株式会社アントレックス
(73)【特許権者】
【識別番号】593111738
【氏名又は名称】艫居 隆三
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 覚
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-087891(JP,A)
【文献】特開2021-175360(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110953315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/02
F16H 35/00
F03B 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
直線方向に沿って前記第1部材に対して相対移動可能な第2部材と、
複数の回転部材を有し且つ前記第1部材に回転可能に支持された回転部材群と、
一部が前記第2部材に固定され、前記第2部材が前記第1部材に対して相対移動したときに前記回転部材群に対して接触しながら相対移動するように前記回転部材群に掛けまわされた環状部材と、
を備える動力伝達装置であり、
前記第2部材が、前記直線方向の一方である第1方向及び他方である第2方向に沿って往復移動可能であり、
前記回転部材群が、前記第2部材が前記第1方向及び前記第2方向の一方に移動したときに正方向に回転し前記第2部材が前記第1方向及び前記第2方向の他方に移動したときに逆方向に回転する駆動部材を備え、
さらに前記動力伝達装置は、
前記駆動部材に対して相対回転可能な従動部材と、
前記駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方に回転したときのみ、前記駆動部材の回転力を前記従動部材に伝達して、前記従動部材を一方向に回転させるワンウェイ伝達機構と、
を備え、
前記環状部材が、第1環状部材及び第2環状部材を有し、
前記回転部材群が、前記第1環状部材が掛けまわされた第1回転部材群、及び、前記第2環状部材が掛けまわされた第2回転部材群を有し、
前記駆動部材が、前記第1回転部材群に含まれる第1駆動部材、及び、前記第2回転部材群に含まれる第2駆動部材を有し、
前記従動部材が、前記第1駆動部材に対して相対回転可能な第1従動部材、及び、前記第2駆動部材に対して相対回転可能な第2従動部材を有し、
前記ワンウェイ伝達機構が、前記第1駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方である第1回転方向に回転したときのみ、前記第1駆動部材の回転力を前記第1従動部材に伝達する第1ワンウェイ伝達機構、及び、前記第2駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方である第2回転方向に回転したときのみ、前記第2駆動部材の回転力を前記第2従動部材に伝達する第2ワンウェイ伝達機構を有し、
前記第1駆動部材は、前記第2部材が前記第1方向に移動したときに前記第1回転方向に回転し、前記第2部材が前記第2方向に移動したときに前記第1回転方向と反対側に回転し、
前記第2駆動部材は、前記第2部材が前記第2方向に移動したときに前記第2回転方向に回転し、前記第2部材が前記第1方向に移動したときに前記第2回転方向と反対側に回転し、
前記第1従動部材が前記第1回転方向に回転したとき及び前記第2従動部材が前記第2回転方向に回転したときに、前記第1従動部材及び前記第2従動部材と連係する出力部材が所定方向に回転し、
前記第1環状部材、前記第2環状部材、前記第1回転部材群及び前記第2回転部材群が同一平面上に位置する動力伝達装置。
【請求項2】
前記第2部材が、本体部と、前記本体部に固定された固定部材と、を備え、
前記固定部材に前記環状部材の前記一部が固定された、請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材が、前記直線方向を中心とする周方向に相対回転不能である請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状部材及び回転部材群を備える動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1部材と、直線方向に沿って第1部材に対して相対移動可能な第2部材と、第1部材に回転可能に支持された第1スプロケット群と、第1スプロケット群に掛けまわされた環状のチェーンと、チェーンが掛けまわされ且つ第2部材に回転可能に支持された第2スプロケットと、を備える動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この動力伝達装置の第1部材と第2部材の相対位置が所定位置になると、チェーンがたるみ易い。仮にチェーンがたるむと、第1スプロケット群及び第2スプロケットとチェーンとの間で力が伝わり難くなる。そのため、この動力伝達装置は、チェーンのたるみを除去するための張力調整機構を備える。そのため、この動力伝達装置は構造が複雑である。
【0005】
本発明は、張力調整機構を備えないにも拘わらず、第1部材と第2部材が相対移動したときに、環状部材と回転部材群との間で力が伝わり易い動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の動力伝達装置は、第1部材と、直線方向に沿って前記第1部材に対して相対移動可能な第2部材と、複数の回転部材を有し且つ前記第1部材に回転可能に支持された回転部材群と、一部が前記第2部材に固定され、前記第2部材が前記第1部材に対して相対移動したときに前記回転部材群に対して接触しながら相対移動するように前記回転部材群に掛けまわされた環状部材と、を備える動力伝達装置であり、前記第2部材が、前記直線方向の一方である第1方向及び他方である第2方向に沿って往復移動可能であり、前記回転部材群が、前記第2部材が前記第1方向及び前記第2方向の一方に移動したときに正方向に回転し前記第2部材が前記第1方向及び前記第2方向の他方に移動したときに逆方向に回転する駆動部材を備え、さらに前記動力伝達装置は、前記駆動部材に対して相対回転可能な従動部材と、前記駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方に回転したときのみ、前記駆動部材の回転力を前記従動部材に伝達して、前記従動部材を一方向に回転させるワンウェイ伝達機構と、を備え、前記環状部材が、第1環状部材及び第2環状部材を有し、前記回転部材群が、前記第1環状部材が掛けまわされた第1回転部材群、及び、前記第2環状部材が掛けまわされた第2回転部材群を有し、前記駆動部材が、前記第1回転部材群に含まれる第1駆動部材、及び、前記第2回転部材群に含まれる第2駆動部材を有し、前記従動部材が、前記第1駆動部材に対して相対回転可能な第1従動部材、及び、前記第2駆動部材に対して相対回転可能な第2従動部材を有し、前記ワンウェイ伝達機構が、前記第1駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方である第1回転方向に回転したときのみ、前記第1駆動部材の回転力を前記第1従動部材に伝達する第1ワンウェイ伝達機構、及び、前記第2駆動部材が前記正方向と前記逆方向の一方である第2回転方向に回転したときのみ、前記第2駆動部材の回転力を前記第2従動部材に伝達する第2ワンウェイ伝達機構を有し、前記第1駆動部材は、前記第2部材が前記第1方向に移動したときに前記第1回転方向に回転し、前記第2部材が前記第2方向に移動したときに前記第1回転方向と反対側に回転し、前記第2駆動部材は、前記第2部材が前記第2方向に移動したときに前記第2回転方向に回転し、前記第2部材が前記第1方向に移動したときに前記第2回転方向と反対側に回転し、前記第1従動部材が前記第1回転方向に回転したとき及び前記第2従動部材が前記第2回転方向に回転したときに、前記第1従動部材及び前記第2従動部材と連係する出力部材が所定方向に回転し、前記第1環状部材、前記第2環状部材、前記第1回転部材群及び前記第2回転部材群が同一平面上に位置する。
【0007】
例えば、第2部材に回転可能に支持された回転部材に環状部材が掛けまわされ、且つ、環状部材がたるんだ状態にある場合を想定する。この場合に、第1部材と第2部材が直線方向に沿って相対移動すると、第2部材に支持された回転部材から環状部材へ力が伝わり難く、さらに環状部材が第1部材に回転可能に支持された回転部材群に対して接触しながら相対移動し難い。そのため、環状部材から回転部材群へ力が伝わり難い。
【0008】
これに対して請求項1に記載の動力伝達装置では、第1部材と第2部材が直線方向に沿って相対移動すると、環状部材がたるんだ状態にあるか否かに拘わらず、第2部材に固定された環状部材が第1部材と一緒に移動する。従って、第2部材に回転可能に支持された回転部材に環状部材が掛けまわされている場合と比べて、請求項1に記載の動力伝達装置の環状部材は回転部材群に対して接触しながら相対移動し易い。そのため、請求項1に記載の動力伝達装置の環状部材は回転部材群へ力を伝え易い。即ち、張力調整機構を備えないにも拘わらず、請求項1に記載の動力伝達装置の環状部材と回転部材群との間で力が伝わり易い。
【0010】
請求項2に記載の動力伝達装置は、請求項1において、前記第2部材が、本体部と、前記本体部に固定された固定部材と、を備え、前記固定部材に前記環状部材の前記一部が固定された。
【0013】
請求項3に記載の動力伝達装置は、請求項1又は請求項2において、前記第1部材と前記第2部材が、前記直線方向を中心とする周方向に相対回転不能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の動力伝達装置は、張力調整機構を備えないにも拘わらず、第1部材と第2部材が相対移動したときに、環状部材と回転部材群との間で力が伝わり易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る動力伝達装置を備える波力発電装置の正面図である。
【
図3】動力伝達装置の前方から見た分解斜視図である。
【
図6】第2部材の本体部の右側部、第1環状ベルトの一部、及び固定部材の斜視図である。
【
図7】第2部材の本体部の右側部、第1環状ベルトの一部、及び固定部材の分解斜視図である。
【
図8】第1部材及び第2部材が初期位置に位置するときの第1プーリ、第2プーリ、第1環状ベルト、第2環状ベルト及び固定部材の模式的な正面図である。
【
図9】波によって第2部材が第1部材に対して初期位置から上方へ相対移動したときの
図8と同様の正面図である。
【
図10】波によって第2部材が第1部材に対して初期位置から下方へ相対移動したときの
図8と同様の正面図である。
【
図11】比較例の第2部材の本体部の右側部、第1プーリ、第2プーリ及び第1環状ベルトの模式的な正面図である。
【
図12】比較例の第2部材が第1部材に対して
図11の位置から下方へ相対移動したときの
図11と同様の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る動力伝達装置15を備える波力発電装置10について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、図中に適宜示された矢印FRを前方とし、矢印UPを上方とし、矢印LHを左方とする。
【0017】
図1及び
図2に示されるように波力発電装置10は、動力伝達装置15、カバー部材84、フロート86、連結部材88及び錘90を備える。
【0018】
図3~
図7に示されたように動力伝達装置15は、第1部材17、第1回転軸35A、35B、ワンウェイギヤ(ワンウェイ伝達機構)(第1ワンウェイ伝達機構)36A、ワンウェイギヤ(ワンウェイ伝達機構)(第2ワンウェイ伝達機構)36B、第1プーリ(駆動部材)(第1駆動部材)(回転部材)(回転部材群)(第1回転部材群)37A、第1プーリ(駆動部材)(第2駆動部材)(回転部材)(回転部材群)(第2回転部材群)37B、第2回転軸39A、39B、軸受け40A、40B、第2プーリ(回転部材)(回転部材群)(第1回転部材群)41A、第2プーリ(回転部材)(回転部材群)(第2回転部材群)41B、第1環状ベルト(環状部材)(第1環状部材)45A、第2環状ベルト(環状部材)(第2環状部材)45B、前板48、発電機52、第3プーリ(従動部材)(第1従動部材)57A、第3プーリ(従動部材)(第2従動部材)57B、第4プーリ(出力部材)62、第3環状ベルト67、及び第2部材70を備える。
【0019】
第1部材17は、基部(第1筒状部)19、支柱部25、及びギヤ支持部材30を備える。
【0020】
基部19は、円盤部20と、円盤部20の下面に接続されたフロート支持部21と、を有する。
図1に示されたように、円盤部20はフロート支持部21より大径である。さらに基部19には、円盤部20及びフロート支持部21の中心部を基部19の軸線に沿って貫通する案内孔22が形成されている。
図5に示されたように案内孔22の断面形状は略長方形である。即ち、案内孔22の断面形状は非円形である。
【0021】
円盤部20の上面には、上下方向に延びる一対の支柱部25の下端部が固定されている。支柱部25の上端部は、当該上端部より下方に位置する部位より左右寸法が大きい支持部26によって構成されている。左側の支持部26は右側に突出するストッパ27を有し、右側の支持部26は左側に突出するストッパ27を有する。さらに左右の支持部26の上面には支持溝28が形成されている。
【0022】
図3及び
図4に示されたように、ギヤ支持部材30は、被支持部31、下方延長部32、及びスペーサ33を有する。被支持部31の正面形状は略三角形であり、下方延長部32の正面形状は略長方形である。下方延長部32は被支持部31の下端から下方に延びている。下方延長部32の左右寸法は、被支持部31の下端部の左右寸法より小さい。被支持部31の下端部の左右両端部が、左右の支持溝28にそれぞれ挿入されている。さらに固定手段(図示省略)によって、被支持部31の下端部の左右両端部が、左右の支持部26に固定されている。下方延長部32は左右の支柱部25の間に位置している。さらに
図3に示されたように、下方延長部32の前面には直方体形状のスペーサ33の後端が固定されている。さらに被支持部31には、被支持部31を前後方向に貫通する断面形状が円形の貫通孔34が形成されている。
【0023】
図3に示されたように、被支持部31を左右一対の第1回転軸35A、35Bが前後方向に貫通しており、下方延長部32の下端部を左右一対の第2回転軸39A、39Bが前後方向に貫通している。第1回転軸35A、35Bは被支持部31に対して、自身の軸線回りに回転可能である。第2回転軸39A、39Bは下方延長部32に固定されている。さらに右側の第2回転軸39Aは右側の第1回転軸35Aの直下に位置し、左側の第2回転軸39Bは左側の第1回転軸35Bの直下に位置する。
【0024】
図3に示されたように、第1回転軸35A、35Bの前部にはワンウェイギヤ36A、36Bを介して第1プーリ37A、37Bがそれぞれ回転可能に支持されている。第1プーリ37A、37Bの外周面全周には溝38A、38Bが形成されており、溝38A、38Bの底面には多数の歯部(図示省略)が周方向に並べて設けられている。
図3及び
図8~
図10に示されたように波力発電装置10を前側から見たときに、右側のワンウェイギヤ36Aは、第1プーリ37Aが第1回転軸35Aに対して時計方向(正方向)(第1回転方向)Dcwに相対回転するのを規制し、第1プーリ37Aが第1回転軸35Aに対して反時計方向(逆方向)Dccに相対回転するのを許容する。即ち、第1プーリ37Aが時計方向Dcwに回転するとき、第1回転軸35Aは第1プーリ37Aと一緒に時計方向Dcwに回転する。また、左側のワンウェイギヤ36Bは、第1プーリ37Bが第1回転軸35Bに対して時計方向(正方向)(第2回転方向)Dcwに相対回転するのを規制し、第1プーリ37Bが第1回転軸35Bに対して反時計方向(逆方向)Dccに相対回転するのを許容する。即ち、第1プーリ37Bが時計方向Dcwに回転するとき、第1回転軸35Bは第1プーリ37Bと一緒に時計方向Dcwに回転する。
【0025】
図3に示されたように、第2回転軸39A、39Bの前部には軸受け40A、40Bを介して第2プーリ41A、41Bがそれぞれ回転可能に支持されている。そのため、波力発電装置10を前側から見たときに、第2プーリ41Aは第2回転軸39Aに対して時計方向及び反時計方向に回転可能であり、第2プーリ41Bは第2回転軸39Bに対して時計方向及び反時計方向に回転可能である。第2プーリ41A、41Bの外周面全周には溝42A、42Bが形成されており、溝42A、42Bの底面には多数の歯部43A、43Bが周方向に並べて設けられている。
【0026】
第1プーリ37A及び第2プーリ41Aにはゴム製の第1環状ベルト45Aが掛け回されており、第1プーリ37B及び第2プーリ41Bにはゴム製の第2環状ベルト45Bが掛け回されている。第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの内周面全体には、多数の溝46が等間隔で形成されている。第1環状ベルト45Aの上端部の溝46に第1プーリ37Aの上記歯部が噛み合っており、第1環状ベルト45Aの下端部の溝46に第2プーリ41Aの歯部43Aが噛み合っている。同様に、第2環状ベルト45Bの上端部の溝46に第1プーリ37Bの上記歯部が噛み合っており、第2環状ベルト45Bの下端部の溝46に第2プーリ41Bの歯部43Bが噛み合っている。第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bは常に緊張状態にある。即ち、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bは常に自由状態から延びた状態にある。さらに
図8~
図10に示されたように、第1環状ベルト45Aの右側部45A-1及び左側部45A-2は実質的に上下方向と平行な直線形状である。同様に、第2環状ベルト45Bの左側部45B-1及び右側部45B-2は実質的に上下方向と平行な直線形状である。さらに第1プーリ37A、37B、第2プーリ41A、41B、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bは、前後方向に対して直交する一つの仮想平面であり且つギヤ支持部材30の前方に位置する第1平面(図示省略)上に位置する。
【0027】
図3に示された前板48の正面形状は略長方形である。前板48の左右寸法は、左右の支持部26(ストッパ27)の間隔より小さく、前板48の上下寸法は第1回転軸35Aと第2回転軸39Aとの間の上下方向距離と略同一である。前板48の四隅には軸受孔49が形成されている。上側の左右の軸受孔49に第1回転軸35A、35Bの前部がそれぞれ挿入され、下側の左右の軸受孔49に第2回転軸39A、39Bの前部がそれぞれ挿入されている。さらにスペーサ33の前面に前板48の後面の中央部が固定されている。スペーサ33の前面は、第1プーリ37A、37Bの前面及び第2プーリ41A、41Bの前面より前方に位置する。そのため前板48の後面は第1プーリ37A、37Bの前面及び第2プーリ41A、41Bの前面から前方に離れる。
【0028】
図1~
図4に示されたように、被支持部31の貫通孔34には発電機52が設けられている。発電機52は、略円筒形状のケース53と、ケース53の後端面から後方に突出する入力軸54と、入力軸54と連係し且つケース53の内部に設けられた発電部(図示省略)と、を備える。ケース53が貫通孔34に挿入され、且つ、ケース53が被支持部31に固定されている。ケース53の前部は被支持部31の前面から前方に突出しており、入力軸54は被支持部31の後面から後方に突出している。さらに波力発電装置10を前側から見た場合に入力軸54が時計方向Dcwに回転したときに、上記発電部が発電する。一方、入力軸54が反時計方向Dccに回転したときに、上記発電部は発電しない。
【0029】
図3及び
図4に示されたように、第1回転軸35A、35Bの後部には第3プーリ57A、57Bがそれぞれ設けられている。第3プーリ57A、57Bの中心部には中心孔58A、58Bが設けられている。第3プーリ57A、57Bの外周面全周には溝59A、59Bが形成されており、溝59A、59Bの底面には多数の歯部60A、60Bが周方向に並べて設けられている。第3プーリ57Aの中心孔58Aに第1回転軸35Aの後部が挿入され且つ第3プーリ57Aが第1回転軸35Aに固定されている。同様に、第3プーリ57Bの中心孔58Bに第1回転軸35Bの後部が挿入され且つ第3プーリ57Bが第1回転軸35Bに固定されている。
【0030】
図4に示されたように、入力軸54の後部には第4プーリ62が支持されている。第4プーリ62の中心部には中心孔63(
図3参照)が設けられている。第4プーリ62の外周面全周には溝64が形成されており、溝64の底面には多数の歯部65が周方向に並べて設けられている。第4プーリ62の中心孔63に入力軸54の後部が挿入され且つ第4プーリ62が入力軸54に固定されている。
【0031】
第3プーリ57A、57B及び第4プーリ62にはゴム製の第3環状ベルト67が掛け回されている。第3環状ベルト67の内周面全体には、多数の溝68が等間隔で形成されている。第3環状ベルト67の溝68に、第3プーリ57Aの歯部60A、第3プーリ57Bの歯部60B、及び第4プーリ62の歯部65がそれぞれ噛み合っている。第3環状ベルト67は常に緊張状態にある。さらに第3プーリ57A、57B、第4プーリ62及び第3環状ベルト67は、前後方向に対して直交する一つの仮想平面であり且つギヤ支持部材30の後方に位置する第2平面(図示省略)上に位置する。
【0032】
図3に示されたように、第2部材70は、本体部(第2筒状部)71及び固定部材73A、73Bを備える。
【0033】
本体部71は、底部が閉塞され且つ上面のみが開放された筒状体である。本体部71の上下方向に直交する断面で切断した断面形状は、案内孔22と略同一である。より詳細には、本体部71の断面形状は案内孔22の断面形状より僅かに小さい。即ち、本体部71の断面形状は非円形形状である。
【0034】
図2に示されたように、本体部71の上部は、第1部材17の基部19の下方から案内孔22を上方に貫通している。即ち、
図3に示されたように、下方延長部32の一部、第2プーリ41A、41B、並びに、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの一部が、常に本体部71の内部空間に位置する。案内孔22及び本体部71の断面形状は共に非円形形状である。そのため、案内孔22と本体部71は両者の軸線方向(上下方向)(直線方向)を中心とする周方向に相対回転不能である。一方、案内孔22と本体部71は両者の軸線方向に沿って相対移動可能である。
【0035】
さらに
図3、
図4、
図6及び
図7に示されたように、固定部材73A、73B及びボルト80によって、第1環状ベルト45Aの右側部45A-1及び第2環状ベルト45Bの左側部45B-1が本体部71に固定されている。
【0036】
図7に示されたように本体部71の右側部72Aの上部には前後一対の貫通孔72A1が形成されている。固定部材73Aは、第1支持板74A、第2支持板76A、及びナット78を有する。第1支持板74A及び第2支持板76Aは共に略直方体状の板材である。第1支持板74Aには前後一対の貫通孔75が形成され、第2支持板76Aには前後一対の取付孔77が形成されている。貫通孔75の断面形状は円形であり、取付孔77の断面形状は六角形である。各取付孔77には断面形状が六角形のナット78が埋め込まれている。即ち、第2支持板76Aにナット78が固定されている。各貫通孔72A1と各貫通孔75が互いに同軸をなすように、第1支持板74Aの右側面が右側部72Aの内面(左側面)に接触しており、右側部72Aの外側(右側)から貫通孔72A1に挿入されたボルト80が第1支持板74Aの貫通孔75を左側に貫通する。さらに第1支持板74Aと、第1支持板74Aの左側に位置する第2支持板76Aとによって第1環状ベルト45Aの右側部45A-1の一部が挟まれる。さらに第1支持板74Aと第2支持板76Aによって右側部45A-1が強固に挟まれた状態で、各ボルト80がナット78に螺合され、且つ、各ボルト80の頭部81が右側部72Aの外面(右側面)に圧接する。即ち、固定部材73Aによって右側部45A-1の一部が右側部72Aに固定されている。
【0037】
図2~
図4に示されたように、第1支持板74B、第2支持板76B、ナット78(
図2~
図4において図示省略)及び一対のボルト80を有する固定部材73Bが、本体部71の左側部72Bの上端部に固定されている。即ち、固定部材73Bによって左側部45B-1の一部が左側部72Bに固定されている。
【0038】
図1に仮想線で示されたように、基部19の円盤部20の上面には、動力伝達装置15の円盤部20より上方に位置する部位の周囲全体を覆うカバー部材84が着脱可能に設けられている。カバー部材84は、下面のみが開口した筒状部材である。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、基部19のフロート支持部21には環状形状のフロート86が着脱可能に設けられている。フロート86は中空体であり、フロート86の内部空間は空気によって満たされている。
【0040】
図1に示されたように、基部19の円盤部20には、複数本(例えば4本)の連結部材88の上端部がそれぞれ固定され、各連結部材88の下端部に一つの錘90が固定されている。連結部材88は紐やワイヤーのような可撓性を有する材料により構成されている。各連結部材88が直線状態(緊張状態)にあるときの円盤部20と錘90との間の上下方向は距離DL(
図1参照)である。波力発電装置10が海92で使用される場合、距離DLは例えば2m~20mに設定される。また錘90の質量は、例えば10kg~500kgである。
【0041】
ここで、第1部材17、第1回転軸35A、35B、ワンウェイギヤ36A、36B、第1プーリ37A、37B、第2回転軸39A、39B、軸受け40A、40B、第2プーリ41A、41B、前板48、発電機52、第3プーリ57A、57B、第4プーリ62、第3環状ベルト67、カバー部材84、フロート86、連結部材88及び錘90を備える一体物を第1浮遊体82と称する。第1浮遊体82全体の比重は、海水の比重より小さい第1比重である。各連結部材88が緊張状態(直線状態)にあるときの第1浮遊体82全体の重心は錘90の一部に位置する。また、第1環状ベルト45A、第2環状ベルト45B及び第2部材70を備える一体物を第2浮遊体83と称する。第2浮遊体83の比重は、海水の比重より小さく且つ第1比重より小さい第2比重である。
【0042】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0043】
例えば波力発電装置10は、
図1に示されたように海92の岸(図示省略)から遠く離れた所定領域93に設置される。上述のように第1浮遊体82の比重は海水の比重より小さい第1比重である。そのため波力発電装置10を所定領域93に設置すると、第1浮遊体82は所定領域93に対して浮かぶ。より詳細には、フロート86が発生する浮力によって、第1部材17、第1回転軸35A、35B、ワンウェイギヤ36A、36B、第1プーリ37A、37B、第2回転軸39A、39B、軸受け40A、40B、第2プーリ41A、41B、前板48、発電機52、第3プーリ57A、57B、第4プーリ62、第3環状ベルト67及びカバー部材84が所定領域93に対して浮かぶ。一方、錘90は底92Bより上方の海中に位置し、各連結部材88が緊張状態(直線状態)になる。第1浮遊体82の重心を含み且つ重量が大きい錘90が水面94より下方の流体(海水)の影響を受ける。錘90の周囲の流体(海水)の動きは、波95(水面94)の動きより小さくなり易い。そして海92の底92Bから上方に離れ且つ動きが小さい流体の影響を受ける錘90が、緊張状態にある連結部材88を介して第1部材17に力を及ぼすため、第1部材17は実質的に平均水面94Aと一緒に上下動する。この錘90の働きにより、平均水面94Aと錘90の下面との間の上下方向の距離Dpが、波95の高さに拘わらず略一定に維持される。本明細書において「平均水面」とは、その領域に含まれる全ての波95の高さの平均値を通る仮想面のことである。
【0044】
また第2浮遊体83の比重は海水の比重より小さい第2比重である。そのため第2浮遊体83も所定領域93に対して浮かぶ。第2浮遊体83は水面94と一緒に上下動する。
【0045】
ここで所定領域93に所定の大きさの波95が発生している場合を想定する。このとき第1部材17は平均水面94Aと一緒に上下動する一方で、第2部材70は水面94と一緒に移動する。そのため、波95の影響により、第1部材17と第2部材70が上下方向に相対移動する。
【0046】
なお、第1部材17が平均水面94Aと一緒に上下動するとは、第1部材17が平均水面94Aと完全に一緒に上下動すること、及び、第1部材17が平均水面94Aと実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。同様に、第2部材70が水面94と一緒に上下動するとは、第2部材70が水面94と完全に一緒に上下動すること、及び、第2部材70が水面94と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。
【0047】
図8に示されたように、右側部45A-1の上下方向の中心部に固定部材73Aが位置し且つ左側部45B-1の上下方向の中心部に固定部材73Bが位置するときの第1部材17と第2部材70の相対位置を初期位置と定義する。ここで、第1部材17と第2部材70が初期位置にある場合に、波95の影響により、第2部材70が第1部材17に対して上方(第1方向)に相対移動した場合を想定する。これにより固定部材73Aが第1プーリ37Aに接近し且つ固定部材73Bが第1プーリ37Bに接近する。第1部材17の第2部材70に対する相対位置が
図9に示された位置になったときに、本体部71の上端部が左右の支柱部25のストッパ27の下面に接触する。そのため、第2部材70は第1部材17に対して、これ以上は上方に相対移動できなくなる。
【0048】
さらに、このように第2部材70が第1部材17に対して上方に相対移動するとき、第1環状ベルト45Aが
図8、
図9の矢印DA1方向に移動し且つ第2環状ベルト45Bが矢印DB1方向に移動する。そのため第1プーリ37Aが時計方向Dcwに回転し且つ第1プーリ37Bが反時計方向Dccに回転する。そのためワンウェイギヤ36Aの働きにより、第1回転軸35Aが第1プーリ37Aと一緒に時計方向Dcwに回転する。その一方で、ワンウェイギヤ36Bの働きにより、第1プーリ37Bの反時計方向Dccへの回転力は第1回転軸35Bに伝達されない。そのため第1回転軸35Aに固定された第3プーリ57Aが時計方向Dcw(
図4参照)に回転する。そのため第3プーリ57Aに掛けまわされている第3環状ベルト67が矢印D-1方向に移動する。そのため、第3環状ベルト67と連係している第4プーリ62及び第3プーリ57Bが時計方向(一方向)(所定方向)Dcwに回転する。そのため、第2部材70が第1部材17に対して上方に相対移動するとき、入力軸54が第4プーリ62と一緒に時計方向Dcwに回転するので発電機52が発電する。
【0049】
次に、第1部材17と第2部材70が初期位置にある場合に、波95の影響により、第2部材70が第1部材17に対して下方(第2方向)に相対移動した場合を想定する。これにより固定部材73Aが第2プーリ41Aに接近し且つ固定部材73Bが第2プーリ41Bに接近する。第1部材17の第2部材70に対する相対位置が
図10に示された位置になったときに、固定部材73A(第1支持板74A及び第2支持板76A)が第2プーリ41Aの上端に接触し且つ固定部材73B(第1支持板74B及び第2支持板76B)が第2プーリ41Bの上端に接触する。そのため、第2部材70は第1部材17に対して、これ以上は下方に相対移動できなくなる。
【0050】
さらに第2部材70が第1部材17に対して下方に相対移動するとき、第1環状ベルト45Aが
図8、
図10の矢印DA2方向に移動し且つ第2環状ベルト45Bが矢印DB2方向に移動する。そのため第1プーリ37Aが反時計方向Dccに回転し且つ第1プーリ37Bが時計方向Dcwに回転する。そのためワンウェイギヤ36Bの働きにより、第1回転軸35Bが第1プーリ37Bと一緒に時計方向Dcwに回転する。その一方で、ワンウェイギヤ36Aの働きにより、第1プーリ37Aの反時計方向Dccへの回転力は第1回転軸35Aに伝達されない。そのため第1回転軸35Bに固定された第3プーリ57Bが時計方向Dcw(
図4参照)に回転する。そのため第3プーリ57Bに掛けまわされている第3環状ベルト67が矢印D-1方向に移動する。そのため、第3環状ベルト67と連係している第4プーリ62及び第3プーリ57Aが時計方向(一方向)(所定方向)Dcwに回転する。そのため、第2部材70が第1部材17に対して下方に相対移動するとき、入力軸54が第4プーリ62と一緒に時計方向Dcwに回転するので発電機52が発電する。
【0051】
このように本実施形態では、波95の力を受けた動力伝達装置15の第1部材17と第2部材70が上下方向に相対移動することにより発電機52が発電する。
【0052】
ここで、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが第2部材70(本体部71)に固定されていない比較例(図示省略)を想定する。この比較例では、第2部材70(本体部71)に一対のプーリ(図示省略)が回転可能に支持され、各プーリの歯部に第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの溝46がそれぞれ噛み合っている。ここで比較例の第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bがたるんだ状態にある場合を想定する。この場合は第1部材17と第2部材70が相対移動したときに、当該プーリと第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bとの間で力が伝わり難い。そのため、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45BがDA1方向及びDA2方向に回転し難くなる。その結果、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bから第1プーリ37A、37Bに力が伝わり難くなり、さらに第4プーリ62が回転し難くなる。そのため、この比較例では、第1部材17と第2部材70が相対移動したときに発電機52が発電し難い。
【0053】
これに対して本実施形態の波力発電装置10では、第1部材17と第2部材70が上下方向に相対移動すると、第2部材70(本体部71)に固定された第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが第2部材70と一緒に移動する。従って、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが緊張状態にあるか否かに拘わらず、第1部材17と第2部材70が相対移動したときに、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45BがDA1方向及びDA2方向に確実に回転する。従って、波力発電装置10が特許文献1と同様の張力調整機構を備えないにも拘わらず、第1部材17と第2部材70が相対移動したときに、本実施形態の発電機52は比較例の発電機52よりも発電動作を実行し易い。
【0054】
また、
図11、12は、上記比較例とは別の比較例を示す。この比較例の波力発電装置は固定部材73Aを具備しない。そのため、第1環状ベルト45Aの右側部45A-1の一部である被固定部45Afが右側部72Aに直接固定されている。なお、図示は省略されているが、この波力発電装置は固定部材73Bを具備せず、第2環状ベルト45Bの左側部45B-1の一部である被固定部が左側部72Bに直接固定されている。
【0055】
そのため、第1部材17及び第2部材70が初期位置にあるときは、
図11に示されたように、右側部45A-1の被固定部45Afより上側に位置する部位45A-1Uと、右側部45A-1の被固定部45Afより下側に位置する部位45A-1Dと、がなす角度はθ1となる。さらに、このときの部位45A-1U及び部位45A-1Dの長さは共にL1である。即ち、このときの右側部45A-1の長さは2L1である。
【0056】
また、
図12に示されたように第2部材70が第1部材17に対して初期位置から下方へ移動したとき、部位45A-1Uと部位45A-1Dとがなす角度はθ2となる。さらに、このときの部位45A-1Uの長さはL3であり、部位45A-1Dの長さはL4である。即ち、このときの右側部45A-1の長さはL3+L4であり、且つ、2L1≠L3+L4である。
【0057】
このように
図11、12の比較例では、第1部材17と第2部材70の上下方向の相対位置が変化する毎に右側部45A-1及び左側部45B-1の長さが変化する。即ち、第1部材17と第2部材70の上下方向の相対位置が変化する毎に第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの全長及び張力が変化する。換言すると、第1部材17と第2部材70の上下方向の相対位置が所定位置になったときに、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bがたるみ易い。従って、この比較例の動力伝達装置は、特許文献と同様の張力調整機構を備える必要がある。
【0058】
これに対して本実施形態では、本体部71に固定された固定部材73Aに右側部45A-1が固定され且つ本体部71に固定された固定部材73Bに左側部45B-1が固定されている。そのため
図8~
図10に示されたように、第1部材17と第2部材70の相対位置に拘わらず、右側部45A-1及び左側部45B-1は実質的に上下方向と平行な直線形状を維持する。そのため右側部45A-1及び左側部45B-1の長さLは実質的に変化しない。即ち、第1部材17と第2部材70の上下方向の相対位置が変化しても、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの全長及び張力は実質的に変化しない。そのため本実施形態の動力伝達装置15(波力発電装置10)は、特許文献と同様の張力調整機構を備える必要がない。
【0059】
なお、
図11に示された角度θ1が180°に近づく程、第1部材17と第2部材70の上下方向の相対位置が変化したときの第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの全長(張力)の変化量が小さくなる。そのため、右側部45A-1及び左側部45B-1を本体部71に直接固定する場合よりも角度θ1が180°に近づくのであれば、固定部材73A、73Bに固定された第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの角度θ1は180°より小さい角度(例えば170°)であってもよい。
【0060】
さらに第1プーリ37A、37B、第2プーリ41A、41B、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが、前後方向に対して直交する一つの仮想平面である第1平面上に位置する。そのため、例えば、第1プーリ37A、第2プーリ41A及び第1環状ベルト45Aが位置する平面と、第1プーリ37B、第2プーリ41B及び第2環状ベルト45Bが位置する平面と、が前後方向にずれている場合と比べて、波力発電装置10(動力伝達装置15)の前後寸法はコンパクトである。
【0061】
さらに案内孔22及び本体部71の断面形状が非円形形状である。そのため、第1部材17(案内孔22)と第2部材70(本体部71)は、上下方向を中心とする周方向への相対回転が実質的に規制された状態で上下方向に相対移動する。このように第1部材17と第2部材70の相対回転が規制されているので、第1部材17と第2部材70が上下方向に相対移動する際に、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが大きく捻じれるおそれがない。従って、第1部材17と第2部材70が相対回転する場合と比べて、第1部材17と第2部材70が相対移動したときに、波力発電装置10の発電機52は発電動作を実行し易い。
【0062】
さらに波95の影響により、第2部材70が第1部材17に対して上方に相対移動する場合も下方に相対移動する場合も、第4プーリ62が時計方向Dcwに回転し発電機52が発電する。さらに第1部材17が平均水面94Aと一緒に上下動する一方で第2部材70が水面94と一緒に上下動する。そのため、波95が大きい場合も小さい場合も、波95の力によって第1部材17と第2部材70を確実に上下方向に相対移動させられる。即ち、動力伝達装置15は、振幅の一定でない第1部材17及び第2部材70の往復運動を第4プーリ62の一方向(時計方向Dcw)の回転運動に変える。従って、発電機52は波95の力を利用して効率よく発電可能である。
【0063】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0064】
例えば、動力伝達装置15が波力発電装置10とは異なる装置の一部であってもよい。
【0065】
本体部71及び第1支持板74A、74Bが一体成形されてもよい。
【0066】
第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの一部が第2部材70に直接固定されてもよい。
【0067】
動力伝達装置15が、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bの代わりに環状チェーンを備え、且つ、第1プーリ37A、37B及び第2プーリ41A、41Bの代わりに、環状チェーンと噛み合う複数のスプロケットを備えてもよい。
【0068】
動力伝達装置15が、ワンウェイギヤ36A、36Bの代わりに、ワンウェイクラッチ又はワンウェイベアリングを備えてもよい。
【0069】
支柱部25、ギヤ支持部材30、第1回転軸35A、35B、ワンウェイギヤ36A、36B、第1プーリ37A、37B、第2回転軸39A、39B、軸受け40A、40B、第2プーリ41A、41B、前板48、発電機52、第3プーリ57A、57B、第4プーリ62及び第3環状ベルト67に相当する部材が第2部材70に設けられ、第1環状ベルト45A及び第2環状ベルト45Bが第1部材17に固定されてもよい。この場合、第1部材17が固定部材73A、73Bに相当する部材を備えてもよいし、備えなくてもよい。
【0070】
動力伝達装置15は、上記のものとは別の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
15 動力伝達装置
17 第1部材
19 基部(第1筒状部)
36A ワンウェイギヤ(ワンウェイ伝達機構)(第1ワンウェイ伝達機構)
36B ワンウェイギヤ(ワンウェイ伝達機構)(第2ワンウェイ伝達機構)
37A 第1プーリ(駆動部材)(第1駆動部材)(回転部材)(回転部材群)(第1回転部材群)
37B 第1プーリ(駆動部材)(第2駆動部材)(回転部材)(回転部材群)(第2回転部材群)
41A 第2プーリ(回転部材)(回転部材群)(第1回転部材群)
41B 第2プーリ(回転部材)(回転部材群)(第2回転部材群)
45A 第1環状ベルト(環状部材)(第1環状部材)
45B 第2環状ベルト(環状部材)(第2環状部材)
57A 第3プーリ(従動部材)(第1従動部材)
57B 第3プーリ(従動部材)(第2従動部材)
62 第4プーリ(出力部材)
70 第2部材
71 本体部(第2筒状部)
73A 73B 固定部材
【要約】
【課題】張力調整機構を備えないにも拘わらず、第1部材と第2部材が相対移動したときに、環状部材と回転部材群との間で力が伝わり易い動力伝達装置を提供する。
【解決手段】第1部材17と、直線方向に沿って第1部材に対して相対移動可能な第2部材70と、複数の回転部材37A、37B、41A、41Bを有し且つ第1部材に回転可能に支持された回転部材群と、一部が第2部材に固定され、第2部材が第1部材に対して相対移動したときに回転部材群に対して接触しながら相対移動するように回転部材群に掛けまわされた環状部材45A、45Bと、を備える。
【選択図】
図3