(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】眼鏡枠
(51)【国際特許分類】
G02C 5/22 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
G02C5/22
(21)【出願番号】P 2018074415
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591104206
【氏名又は名称】川本光学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】川本 修一
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0124244(US,A1)
【文献】登録実用新案第3212856(JP,U)
【文献】特開2003-255275(JP,A)
【文献】国際公開第2017/108982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 ― 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ保持部(2)と、テンプル(3)と、これらを回動可能とする蝶番(5)を有
し、
前記蝶番(5)は、前記レンズ保持部(2)の末端部(21)と、前記テンプル(3)の末端部(31)と、両末端部を連結する連結部(4)を有し、
前記テンプル(3)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3)の末端部(31)と前記連結部(4)が位置決めされる手段を有する眼鏡枠(1)であって、
前記テンプル(3)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3)の末端部(31)と前記連結部(4)が位置決めされる手段が、
前記テンプルの末端部(31)の上下部材(32,33)それぞれに設けられた小突起(35,36)と、前記連結部(4)に設けられた、前記上下部材(32,33)の上下方向に伸びる2つの窪み(43,44)の組み合わせ
であることを特徴とする眼鏡枠。
【請求項2】
レンズ保持部(2)と、テンプル(3A)と、これらを回動可能とする蝶番(5)を有し、
前記蝶番(5)は、前記レンズ保持部(2)の末端部(21)と、前記テンプル(3A)の末端部(31A)と、両末端部を連結する連結部(4A)を有し、
前記テンプル(3A)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3A)の末端部(31A)と前記連結部(4A)が位置決めされる手段を有する眼鏡枠(1)であって、
前
記テンプル(3A)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3A)の末端部(31A)と前記連結部(4A)が位置決めされる手段が、
前記テンプルの末端部(31A)の上下部材(32A,33A)それぞれに設けられた窪み(35A,36A)と、前記連結部(4A)
に設けられた、前記上下部材(32A,33A)の上下方向に伸びる2つの小突起(43A,44A)の組み合わせ
であ
る眼鏡枠。
【請求項3】
レンズ保持部(2)と、テンプル(3C)と、これらを回動可能とする蝶番(5)を有し、
前記蝶番(5)は、前記レンズ保持部(2)の末端部(21)と、前記テンプル(3C)の末端部(31C)と、両末端部を連結する連結部(4C)を有し、
前記テンプル(3C)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3C)の末端部(31C)と前記連結部(4C)が位置決めされる手段を有する眼鏡枠(1)であって、
前
記テンプル(3C)の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル(3C)の末端部(31C)と前記連結部(4C)が位置決めされる手段が、
前記テンプルの末端部(31
C)の上下部材(32C,33C)それぞれの間に互いに向き合って設けられた小突起(35C,36C)と、前記連結部(4C)
に設けられた、前記上下部材(32C,33C)の上下方向に伸びる2本の
貫通孔(43C,44C)の組み合わせ
であ
る眼鏡枠。
【請求項4】
前記テンプル(3,3A,3C)の末端部(31,31A,31C)がポリアミド樹脂、前記連結部(4,4A,4C)がウレタン樹脂により構成される請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡枠に関し、特に安定した開閉動作を行うことができるとともにコンパクト化及び軽量化を図ることができる蝶番を備えた眼鏡枠に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡枠の蝶番は、レンズ保持部及びテンプルにそれぞれ設けられたコマを回動軸となるネジにより連結して、テンプルを開閉可能とする。この蝶番は、ネジの締め具合によりテンプルの回動動作を調整することができ、ネジを強く締めるとコマの間の摩擦力が高まってテンプルの回動が重くなり、ネジを緩めるとテンプルの回動が軽くなる。
【0003】
しかし、テンプルを開閉する際にコマ同士が圧接して動くため、テンプルの回動が重くなるとスムーズな開閉動作を実現することが難しく、逆にテンプルの回動が軽くなるとテンプルが不用意に動きやすくなる。その結果、テンプルを開いて装着したときやテンプルを閉じて眼鏡を保管するとき等にテンプルを安定した状態に設定することが難しくなる。また、テンプルを回動させる開閉動作を繰り返していくと、テンプルの回動に対する摩擦抵抗が次第に小さくなり、ネジの締め具合の再調整が必要になる。
【0004】
このような蝶番の問題に対して、例えば、特開昭59―188619号公報(特許文献1)では、次のような眼鏡枠が記載されている。すなわち、2つの枠部分の一方にバネを設けるとともに他方の枠部分にカム部材を設け、回転部材を弾性付勢手段によりカム部材に押し付けるように設定する。これにより、一方の枠部分が開閉動作の際に所定の開閉位置に安定して設定することができる。
【0005】
特許文献1では、バネを蝶番に組み込んでいるため、蝶番のサイズが大きくなり、眼鏡枠の軽量化やコンパクト化が難しくなっていた。そして、眼鏡枠のデザインを検討する上で、蝶番のサイズを考慮しなければならなくなり、デザインの自由度に制約を受けていた。
【0006】
この問題に対して本出願人は、特開2018―21988(特許文献2)において次のような眼鏡枠を提案した。すなわち、レンズ保持部に設けられた第1コマと、テンプルに設けられた第2コマと、前記第1コマ及び前記第2コマを回動自在に連結する第1ネジと、前記第2コマに設けられ、前記第1コマと接触可能な第2ネジを有する眼鏡枠である。前記第1コマ先端部はカムであって、前記眼鏡枠の完全開放時に前記第2ネジが落ち着く第1窪みと、前記眼鏡枠の完全閉鎖時に前記第2ネジが落ち着く第2窪みと、前記第1、第2窪みをつなぐ略直線部と、この略直線部に途中で方向転換させる角部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭59―188619号公報
【文献】特開2018―21988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の製品は好評であったが、金属の第2ネジが樹脂の第1コマを頻繁に接触・押圧するので、長期間の使用により擦り減り、徐々に開閉動作にキレがなくなっていくという欠点があった。
【0009】
そこで、本発明は、コンパクト化及び軽量化を図ることができると共に長期間にわたって安定した開閉動作を行うことができる、蝶番を有する眼鏡枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の眼鏡枠は、レンズ保持部2と、テンプル3と、これらを回動可能とする蝶番5を有する眼鏡枠1であって、前記蝶番5は、前記レンズ保持部2の末端部21と、前記テンプル3の末端部31と、両末端部を連結する連結部4を有し、前記テンプル3の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル3の末端部31と前記連結部4が位置決めされる手段を有することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記テンプル3及び前記連結部4は粘弾性があり、機械的強度や耐摩耗性の高いウレタン、ポリアミド、フッ素、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂で構成される。特に好ましいのは、テンプルの末端部31をポリアミド(ナイロン)樹脂、連結部4をウレタン樹脂で構成することである。
【0012】
前記前記テンプル3の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的に前記テンプル3の末端部31と前記連結部4が位置決めされる手段としては、次のようなものがある。
【0013】
(a)前記テンプルの末端部31の上下部材32,33それぞれに設けられた小突起35,36と、前記連結部4に設けられた、前記上下部材32,33の上下方向に伸びる2つの窪み43,44の組み合わせ。
【0014】
(b)前記テンプルの末端部31Aの上下部材32A,33Aそれぞれに設けられた窪み35A,36Aと、前記連結部4Aに設けられた、前記上下部材32A,33Aの上下方向に伸びる2つの小突起43A,44Aの組み合わせ。
【0015】
(c)前記テンプルの末端部31の上下部材32B,33Bそれぞれに設けられた小突起35B,36Bと、前記連結部4Bに設けられた、前記上下部材32B,33Bの上下方向に伸びる2つの溝43B,44Bの組み合わせ。
【0016】
(d)前記テンプルの末端部31の上下部材32C,33Cそれぞれの間に互いに向き合って設けられた小突起35C,36Cと、前記連結部4Cに設けられた、前記上下部材32C,33Cの上下方向に伸びる2本の貫通孔43C,44Cの組み合わせ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、テンプル3の完全開放時と折り畳み時の2点において選択的にテンプル3の末端部31と連結部4が位置決めされる手段が設けられている。テンプル3の末端部31と連結部4は共に柔らかく粘りのある樹脂同士であるので、金属対樹脂という接触に比べて、長期間使用しても相互に摩耗が少ない。そのため、長期間にわたって安定した開閉動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る眼鏡枠における蝶番部分を内側から見た拡大斜視図である。
【
図2】
図1の蝶番部分を外側から見た拡大斜視図である。
【
図3】
図1の蝶番部分の横断面図であり、(a)はテンプルを開いた状態、(b)は折り畳んだ状態である。
【
図4】実施例1における連結部の、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)平面図、(e)底面図。(f)前記bにおける矢視断面図である。
【
図5】実施例1におけるレンズ保持部末端の、(a)平面図、(b)側面図、(c)前記bにおける矢視断面図である。
【
図6】実施例1におけるテンプル末端部の、(a)平面図、(b)側面図、(c)前記bにおける矢視断面図である。
【
図7】実施例2における連結部の、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)平面図、(e)底面図。(f)前記bにおける矢視断面図である。
【
図8】実施例2におけるテンプル末端部の、(a)平面図、(b)側面図、(c)前記bにおける矢視断面図である。
【
図9】実施例3における連結部の、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)平面図、(e)底面図。(f)前記bにおける矢視断面図である。
【
図10】実施例3におけるテンプル末端部の、(a)平面図、(b)側面図、(c)前記bにおける矢視断面図である。
【
図11】実施例4における介在部材の、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)平面図、(e)底面図。(f)前記bにおける矢視断面図である。
【
図12】実施例4におけるテンプル末端部の、(a)平面図、(b)側面図、(c)前記bにおける矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
【0021】
図1~3に示すように、本発明実施例の眼鏡枠1は、テンプル3を回動可能とする蝶番5を有する。蝶番5は、主として、レンズ保持部2の末端部21と、テンプル3の末端部31と、両末端部を連結する連結部4からなる。
【0022】
レンズ保持部2の末端部21とテンプルの末端部31を連結する連結部4は、
図4に示すような合成樹脂製ブロックである。輪郭形状として、
図4(b)にもっともよく示されているように、眼鏡の表面側に現れる直線部40と、レンズ保持部の末端部21とかみ合う陥没部41と、テンプルの末端部31とスライド接触する曲線部42を有する。この曲線部42には2個所に窪み(第1窪み43と第2窪み44)が設けられている。この窪みの両端は外側に向かってやや盛り上がって隆起部431,441を形成している。レンズ保持部の末端部21と連結するための第1ネジ穴45と、テンプルの末端部31と連結するための第2ネジ穴46を有する。
【0023】
レンズ保持部の末端部21は、側面から見ると、
図5(b)に示すように、上側部材22と下側部材23を有する。これらの上下部材22,23の間には、
図3に示すように、連結部4がはめ込まれる。レンズ保持部の末端部21には、この上下部材22,23を貫通する第3ネジ穴24を有する。この第3ネジ穴24は連結部4の第1ネジ穴45と同位置であり、これらのネジ穴24,45を使用してレンズ保持部の末端部21と連結部4とがネジ47(
図3)で連結される。
【0024】
連結部4が位置する空間において、レンズ保持側の末端部21の上下部材22,23の間には連結部の陥没部41に嵌合する突起部25が設けられている。これによっても、レンズ保持側の末端部21と連結部4はしっかりと結合されている。
【0025】
テンプルの末端部31は、側面から見ると、
図6(b)に示すように、上側部材32と下側部材33を有する。これらの上下部材32,33の間には、
図3に示すように、連結部4がはめ込まれる。テンプルの末端部31は、上下部材32,33を貫通する第4ネジ穴34を有する。この第4ネジ穴34は連結部4の第2ネジ穴46と同位置であり、これらのネジ穴34,46を使用してテンプルの末端部31と連結部4がネジ48(
図3)で連結される。
【0026】
連結部4が位置する空間において、テンプルの末端部31の上下部材32,33それぞれの先端に半球状の小突起35,36が設けられている。この小突起35,36は、連結部4の前記2つの窪み43,44と選択的に嵌合可能である。
【0027】
すなわち、
図3に示すように、テンプル3を開いたときには第2窪み44と嵌合して位置決めされ、テンプル3を閉じたときには第1窪み43と嵌合して位置決めされる。2つの窪み43,44それぞれの両端には隆起部431,441があるので、小突起35,36はここでやや押し込まれ、その後、反動で窪み43,44に落ち込んで安定する。その時にカチッという音がする。その2個所以外のときには安定せず、自由にスライドする。したがって、この眼鏡のテンプル3は開いた状態と閉じた状態のときのみカチッという音がして安定するのである。
【0028】
この構成において、テンプルの末端部31の小突起35,36と連結部4の2つの窪み43,44が頻繁に接触し、たがいに押圧し合うことになる。そのため、それぞれの素材となる樹脂の選定やその組み合わせが重要である。前記テンプル3及び前記連結部4は、粘弾性があり、機械的強度や耐摩耗性の高いウレタン、ポリアミド、フッ素、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂で構成される。現在のところ、テンプルの末端部31はポリアミド(ナイロン)、連結部4はウレタン樹脂で構成することが好ましいことが分かっている。
【実施例2】
【0029】
図7と図8は本発明の実施例2である。実施例1との相違点は、実施例1の2つの窪み43,44を2つの半球状の小突起43A,44Aに置き換え、実施例1の小突起35,36を窪み35A,36Aに置き換えたことである。つまり、小突起と窪みの配置を逆転させたものであり、同じ効果があることは明らかである。
【0030】
その他の構成は実施例1と同様なので、実施例1の符号の後に「A」を加えて詳細な説明を省略する。
【実施例3】
【0031】
図9と図10は本発明の実施例3である。実施例1との相違点は、実施例1の2つの窪み43,44を2本の溝43B,44Bに置き換えたことである。この2本の溝43B,44Bは、図9(b)に示すように、連結部4Bの第2ねじ穴46Bを原点とみればほぼ直角に位置する。この構成では、テンプルの小突起がこの2本の溝43B,44Bに選択的に嵌合する。
【0032】
その他の構成は実施例1と同様なので、実施例1の符号の後に「B」を加えて詳細な説明を省略する。
【実施例4】
【0033】
図11と
図12は本発明の実施例4である。実施例1との相違点は、実施例1の2つの窪み43,44を2つの貫通孔43C,44Cに置き換え、実施例1の小突起35,36を半球状の小突起35C,36Cに置き換えたことである。ただし、貫通孔43C,44Cは、
図11(b)に示すように、連結部4
Cの第2ねじ46
Cを原点とみれば互いにほぼ直角に配置され、半球状の小突起35C,36Cは、
図12に示すように、テンプル上下部材32C,33Cのそれぞれに内向きに向かい合って位置する。
【0034】
この構成では、テンプルの小突起35C,36Cがこの2本の貫通孔43C,44Cに選択的に嵌合する。
【0035】
その他の構成は実施例1と同様なので、実施例1の符号の後に「C」を加えて詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0036】
1 眼鏡枠
2 レンズ保持部
21 末端部
22 上側部材
22,23 上下部材
24 第3ネジ穴
25 突起部
3 テンプル
31 末端部
32,33 上下部材
32C,33C 上下部材
34 第4ネジ穴
35,36 小突起
35C,36C 小突起
4 連結部
40 直線部
41 陥没部
42 曲線部
43 第1窪み
44 第2窪み
43A,44A 小突起
43B,44B 溝
43C,44C 貫通孔
431,441 隆起部
45 第1ネジ穴
46 第2ネジ穴
5 蝶番