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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】γヒドロキシ酪酸受容体結合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20230309BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230309BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K31/201
A23L33/10
A61K31/20
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/32
A61P43/00 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019010125
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020117464
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】山家 雅之
(72)【発明者】
【氏名】谷 央子
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-261571(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221845(WO,A1)
【文献】特表2017-514874(JP,A)
【文献】日本栄養・食糧学会誌,2010年,第63巻, 第6号,p.271-278
【文献】J. Neurochem.,2004年,Vol.89,p.1462-1470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/201
A23L 33/10
A61K 31/20
A61P 25/18
A61P 25/24
A61P 25/32
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む、γヒドロキシ酪酸受容体結合剤。
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、mは4~8の整数を示す。ただし、mが6のときRはメチロール基を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、nは5~7の整数を示す。ただし、Rが水酸基のときRはメチロール基を示し、Rが水素原子でありかつRがメチロール基のとき、nは6又は7を示す。]
【請求項2】
請求項1に記載のγヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含む、抗うつ剤、統合失調症改善剤、又はアルコール依存症改善剤。
【請求項3】
請求項1に記載のγヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含み、γヒドロキシ酪酸受容体結合用である、医薬組成物又は食品組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のγヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含み、抗うつ用、統合失調症改善用、又はアルコール依存症改善用である、医薬品組成物又は食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γヒドロキシ酪酸受容体結合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
γヒドロキシ酪酸(GHB)は、哺乳類の脳内に存在しており、神経伝達物質として機能していると考えられている。GHBは、中枢神経系に発現しているGHB受容体に結合し、アルコール依存症の治療に用いられることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Castelli, Mini-Reviews inMedical Chemistry, 2008, Vol. 8, No. 12, p1188-1202
【文献】Hu et al., Neuropharmacology,2000, Vol. 39, p427-439
【文献】Carai et al., European Journal ofPharmacology, 2001, Vol. 428, p315-321
【文献】Frankowska, et al.,Pharmacological Reports, 2007, Vol. 59, p645-655
【文献】Pilc, et al, Drugs of today,2005, Vol. 41, No. 11, p755-766
【文献】Kantrowitz, et al., CNS Drugs,2009, Vol. 23, No. 8, p681-691
【文献】Leggio et al., CNS &Neurological Disorders - Drug Targets, 2010, Vol . 9, p33-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たなγヒドロキシ酪酸受容体結合剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の構造を有する飽和脂肪酸及び一価の不飽和脂肪酸が、GHB受容体結合性を有することを見出した。
【0006】
本発明のγヒドロキシ酪酸受容体結合剤は、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む。
【0007】
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、mは4~8の整数を示す。ただし、mが6のときRはメチロール基を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、nは5~7の整数を示す。ただし、Rが水酸基のときRはメチロール基を示し、Rが水素原子でありかつRがメチロール基のとき、nは6又は7を示す。]
【0008】
本発明はまた、上記γヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含む、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤及びアルコール依存症改善剤を提供する。
【0009】
本発明はまた、上記γヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含み、γヒドロキシ酪酸受容体結合用である、医薬組成物又は食品組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、上記γヒドロキシ酪酸受容体結合剤を含み、抗うつ用、抗不安用、睡眠の質改善用、統合失調症改善用、認知機能改善用又はアルコール依存症改善用である、医薬品組成物又は食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新たなγヒドロキシ酪酸受容体結合剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明のγヒドロキシ酪酸(以下、「GHB」ともいう。)受容体結合剤は、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む。
【0014】
【化3】

[式(1)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、mは4~8の整数を示す。ただし、mが6のときRはメチロール基を示す。]
【化4】

[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を示し、Rはメチロール基又はカルボキシ基を示し、nは5~7の整数を示す。ただし、Rが水酸基のときRはメチロール基を示し、Rが水素原子でありかつRがメチロール基のとき、nは6又は7を示す。]
【0015】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、後述の実施例に示されているように、GHB受容体に結合する性質を有している。具体的には、本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、GHB受容体アンタゴニストであるNCS382との共存下において、GHB受容体の結合部位を競合する。そのため、本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、GHB受容体アンタゴニストとしての性質を有すると考えられる。
【0016】
GHB受容体は、GHBが結合することにより、GABAの細胞外への放出を抑制する作用を有することが知られている。GHB前駆体がGHB受容体に結合した場合も、GHBが結合した場合と同じ作用を有する。例えば非特許文献2には、GHB受容体アンタゴニストであるNCS382によって、GHB受容体によるGABA放出能が正常に回復することが記載されている。また、GHB受容体アンタゴニストであるNCS382により、睡眠鎮静効果が増強することが知られており(非特許文献3)、睡眠鎮静効果はGABAB受容体の働きであることが知られている。したがって、GHB受容体の働きを阻害することによって、GABAB受容体の働きを活性化すると考えられている。そのため、GHB受容体へのGHBの結合を阻害することにより、GABA放出を活性化することができるといえる。したがって、本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、GHB受容体のGABA放出能活性化剤ということもできる。
【0017】
GABAは、GABAB受容体に結合する性質を有する。GABAB受容体は種々の作用を有する。例えば非特許文献4に記載されているように、GABAB受容体アゴニストであるバクロフェンは、抗うつ薬の特徴である効果を生じることが知られている。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、抗うつ作用を有し、抗うつ剤として用いることができる。抗うつとは、例えば、うつ病症状の改善、うつ病症状の軽減、うつ病症状の発生の抑制、うつ病の予防を含む。
【0018】
例えば非特許文献5に記載されているように、GABAB受容体アゴニストであるバクロフェンは、抗不安作用があることが知られている。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、抗不安作用を有し、抗不安剤として用いることができる。抗不安とは、例えば、不安感の改善、不安感の軽減、不安感の発生の抑制、不安感発生の予防を含む。
【0019】
例えば非特許文献6に記載されているように、GABAB受容体アゴニストは、レム睡眠に及ぼす影響は最小限でありながら、徐波睡眠を増加させること、徐波睡眠産生及び概日リズム機能に関連する遺伝子の発現の増加をもたらすことが知られている。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、睡眠の質を改善する作用を有し、睡眠の質改善剤として用いることができる。睡眠の質改善とは、具体的には例えば、睡眠障害の改善、睡眠鎮静を含む。
【0020】
例えば非特許文献6に記載されているように、GABAB受容体アゴニストであるバクロフェンの投与は、統合失調症の治療に有益とされている。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、統合失調症改善作用を有し、統合失調症改善剤として用いることができる。統合失調症改善とは、例えば、統合失調症の症状の軽減、統合失調症の症状発生の抑制、統合失調症の予防を含む。
【0021】
また、例えば非特許文献6に記載されているように、統合失調症の改善に伴い、記憶が改善することが知られている。また、GABAB受容体アゴニストが、認知障害の改善作用があると考えられている。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、認知機能改善作用を有し、認知機能改善剤として用いることができる。認知機能改善とは、例えば、認知障害の改善、認知障害の予防、記憶力の向上を含む。
【0022】
非特許文献7には、GABAB受容体のアゴニストであるバクロフェンの投与により、アルコール依存症の重篤度が改善したことが記載されている。このことから、GHB受容体によるGABA放出を活性化することで、アルコール依存症を改善できると考えられる。したがって、GABA放出能活性化作用を有する本実施形態に係るGHB受容体結合剤は、アルコール依存症改善剤として使用することができる。アルコール依存症改善とは、例えば、アルコール依存症の症状の軽減、アルコール依存症の症状の発生抑制、アルコール依存症の予防を含む。
【0023】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、8-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、2-ドデカン二酸、3,10-ジヒドロキシデカン酸等が挙げられる。
【0024】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2-デセン二酸、9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、トラウマチン酸、11,12-ジヒドロキシ-2-ドデセン酸等が挙げられる。
【0025】
一般式(1)又は(2)で表される化合物の誘導体としては、例えば、塩化物、エステル、アミド、酸無水物、配糖体、塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩(トリエタノールアミンなど)、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、アルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等)等が挙げられる。
【0026】
一般式(1)又は(2)で表される化合物及びその誘導体は、合成品であってよく、天然物由来であってもよい。上記化合物及びその誘導体は、公知の方法で合成することができる。
【0027】
従来からアルコール依存症改善剤として知られているGHBは、GHB受容体だけでなく、GABAB受容体にも強力に結合する性質を有する。GHBは、GABAB受容体と結合し、激的に活性化することで、依存性をもたらすと考えられている。一方、本実施形態に係るGHB受容体結合剤における有効成分は、それ自体が直接GABAB受容体とより結合しにくい点で、GHBより好ましい性質を有する。
【0028】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤中の、一般式(1)又は(2)で表される化合物及びその誘導体の含有量は、合計で、GHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤の固形分全量に対して、例えば、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上であってよく、100質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、0.001質量%以下であってよい。
【0029】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、有効成分換算で、例えば、体重60kgの成人に一日当たり0.001~1000mgの用量で用いることができ、0.002~500mgの用量で用いることが好ましく、0.005~200mgの用量で用いることがより好ましく、0.008~50mgの用量で用いることが更に好ましく、0.01~20mgの用量で用いることが更により好ましく、0.1~5mgの用量で用いることが特に好ましい。用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0030】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤を適用する対象は、例えば、ヒト等の哺乳類であってよい。適用対象は、例えば、うつ患者、不安症患者、睡眠障害患者、統合失調症患者、認知症患者、アルコール依存症患者、又はこれらの症状のリスクがあるものであってよい。対象は健常者であってもよい。
【0031】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、経口投与(摂取)又は経口投与以外の方法で経腸投与されてもよく、骨髄等に直接投与されてもよい。本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、一日当たりの有効成分量が上述した範囲内にあれば、一日一回投与されてもよいし、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【0032】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、有効成分である一般式(1)又は(2)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のみを含有するものであってもよく、本発明による効果を妨げない限り、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。
【0033】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、有効成分と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0034】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤は、医薬組成物又は食品組成物そのものとして使用することができ、医薬組成物及び食品組成物中の成分として使用することもできる。食品組成物としては、食品の3次機能、すなわち体調調節機能が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された製品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0035】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤若しくはアルコール依存症改善剤からなる医薬組成物若しくは食品組成物、又は本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤若しくはアルコール依存症改善剤を含む医薬組成物若しくは食品組成物は、GHB受容体結合用、抗うつ用、抗不安用、睡眠の質改善用、統合失調症改善用、認知機能改善用又はアルコール依存症改善用であってよい。これらの製品には、例えば、GABA放出を高める旨、うつを改善する旨、不安を改善する旨、睡眠の質を改善する旨、統合失調症を改善する旨、認知機能を改善する旨、アルコール依存症を改善する旨、等の表示がされていてもよい。
【0036】
本実施形態に係るGHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤を食品組成物そのものとして、又は食品組成物に添加して使用する場合、食品組成物の形態は特に限定されない。食品組成物の製造工程中の中間製品又は最終製品に上記GHB受容体結合剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠の質改善剤、統合失調症改善剤、認知機能改善剤又はアルコール依存症改善剤を混合して、上記の目的に用いられる食品組成物を得ることができる。食品組成物としては例えば、コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及びハチミツ酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料などが挙げられる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[GHB受容体結合アッセイ]
175±25gのWistarラットの大脳皮質から、50mM KHPOバッファー(pH6.0)を用いてGHB受容体を調製した。1%ジメチルスルホキシドを含む50mM KHPOバッファー(pH6.0)内で、GHB受容体を含む1mgのアリコートを、[H]NCS382(20nM)及び試験物質とともに、120分間4℃でインキュベートした。コントロールとして、試験物質を含まない条件で同様に試験を行った。なお、1mMのNCS382を添加し、非特異的結合を推定した。インキュベート後、メンブレンを用いてGHB受容体をろ過した。ろ過して得られたGHB受容体を、KHPOバッファーで洗浄した後、放射線量を測定した。放射線量測定値から、NCS382に対する50%阻害濃度(IC50)及び阻害率を算出した。GHB受容体のBmaxは39.0pmol/mgタンパク質であった。
【0039】
被験物質としては、8-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、2-ドデカン二酸、3,10-ジヒドロキシデカン酸、2-デセン二酸、9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、トラウマチン酸、11,12-ジヒドロキシ-2-ドデセン酸、及びセバシン酸を用いた。結果を表1に示す。
【0040】
[GABAB(1a)受容体結合アッセイ]
2.5mM CaCl及び0.1%BSAを含む50mMトリスHClバッファー(pH7.4)を用いて、CHO-K1細胞で発現させたヒト組み替えGABAB(1a)受容体を調製した。1%ジメチルスルホキシドを含み、かつ2.5mM CaCl及び0.1%BSAを含む50mMトリスHClバッファー内で、GABAB(1a)受容体を含む1μgのアリコートを、4.0nMの[H]CGP-54626及び被験物質とともに25℃で3時間インキュベートした。コントロールとして、試験物質を含まない条件で同様に試験を行った。CGP-54626は、GABAB受容体アンタゴニストである。なお、3.0mMのGABAを添加し、非特異的結合を推定した。
【0041】
インキュベート後、メンブレンを用いてGABAB(1a)受容体をろ過した。ろ過して得られたGABAB(1a)受容体を、トリスHClバッファーで洗浄した後、放射線量を測定した。放射線量測定値から、CGP-54626に対する50%阻害濃度(IC50)を算出した。GABAB(1a)受容体のBmaxは48.0pmol/mgタンパク質であった。被験物質としては、上記GHB受容体結合アッセイと同じものを用いた。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すとおり、8-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、2-ドデカン二酸、3,10-ジヒドロキシデカン酸、2-デセン二酸、9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、トラウマチン酸、及び11,12-ジヒドロキシ-2-ドデセン酸は、GHB受容体アンタゴニストであるNCS382に対するIC50が高く、GHB受容体に結合する性質を有することが示された。一方、セバシン酸は、GHB受容体に対する結合性を示さず、IC50を求めることができなかった。10-ヒドロキシデカン酸及び2-デセン二酸は、GABAB受容体アンタゴニストであるCGP-54626に対する阻害作用を示さず、GABAB受容体に対する結合性を示さないことが示された。