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特許7240720固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230309BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/67
A61K8/81
A61K8/88
A61K8/891
A61Q1/00
A61Q1/08
A61Q1/10
A61Q1/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019063876
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020164428
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】595137022
【氏名又は名称】東色ピグメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】津幡 和昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻未
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 宗隆
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101293(JP,A)
【文献】特開2004-277366(JP,A)
【文献】特開2017-186316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/02
A61K 8/19
A61K 8/25
A61K 8/29
A61K 8/31
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/67
A61K 8/81
A61K 8/88
A61K 8/891
A61Q 1/00
A61Q 1/08
A61Q 1/10
A61Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉体相成分、(B)油相成分(HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含まない)、(C)疎水化多糖類を含有し、水を含有しない固形粉体化粧料であって、
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を0.1~0.15質量部で含有し、
(C)成分の疎水化多糖類が、炭素数8~18のアルキル基が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル基の平均置換度が0.1~1.0であるヒドロキシプロピルグアーガム、から選ばれるものである、固体粉体化粧料。
【請求項2】
(A)粉体相成分、(B)HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含む油相成分、(C)疎水化多糖類を含有し、水を含有しない固形粉体化粧料であって、
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を0.005~0.15質量部で含有し、
(C)成分の疎水化多糖類が、炭素数8~18のアルキル基が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル基の平均置換度が0.1~1.0であるヒドロキシプロピルグアーガム、から選ばれるものである、固体粉体化粧料。
【請求項3】
(C)成分の疎水化多糖類が、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル基の平均置換度が0.5~1.0であるヒドロキシプロピルグアーガム、から選ばれるものである、請求項1又は2記載の固体粉体化粧料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の固体粉体化粧料の製造方法であって、
(A)成分の粉体相成分と(B)成分の油相成分を混合して混合物を得る第1工程、
前記混合物100質量部に対して(C)成分の疎水化多糖類と、(D)成分の分散媒となる水10~90質量部を添加して混合してスラリーを得る第2工程、
前記スラリーを成形型に充填後、40℃以上でスラリーが固化するまで乾燥する第3工程を有している、固体粉体化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程が、前記スラリーを成形型に充填後、プレス成形して、50℃で20時間以上乾燥する工程である、請求項4記載の固体粉体化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程が、バックインジェクションモールディング法により成形後、50℃で20時間以上乾燥する工程である、請求項記載の固体粉体化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉体化粧料には、優れたフィット感、滑らかなタッチ、粉っぽさがないことが消費者に求められる。そこで、これらの観点から、化粧料基剤を溶媒によりスラリー化して、前記スラリーを受皿に充填した後で溶媒を除去して固化する、湿式充填・成型プロセスに適用できる固形粉体化粧料が開発されている。
【0003】
特許文献1には、セルロース系水溶性高分子およびHLB8以下の界面活性剤を含み、湿式成型法により製造される固形粉末化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6026237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定の疎水化多糖類を特定量配合することで、湿式充填・成型プロセスを採用することができる固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)粉体相成分、(B)油相成分(HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含まない)、(C)疎水化多糖類および(D)水を含有する固形粉体化粧料であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を0.1~0.15質量部で含有し、(D)成分が製造時に分散媒として添加された水の残存分である、固体粉体化粧料を提供する。
【0007】
また本発明は、(A)粉体相成分、(B)HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含む油相成分、(C)疎水化多糖類および(D)水を含有する固形粉体化粧料であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を0.005~0.15質量部で含有し、(D)成分が製造時に分散媒として添加された水の残存分である、固体粉体化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、湿式充填・成型プロセスを採用することができる固形粉体化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A)成分の粉体相は、公知の粉体成分を使用することができる。
粉体として、例えば、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、アルミナ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、無水ケイ酸、硫酸バリウム、化粧品用タール色素、有機色素、βカロチン、カルサミン、カルミン、クロロフィル、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、各種雲母(天然物および合成品)、酸化クロム、カーボンブラック、白色顔料、パール顔料などの顔料、
アルミニウム粉末、球状ナイロン、球状ポリスチレン、雲母チタン、金雲母鉄、二酸化チタン、酸化チタン、酸化鉄などの無機粉体;
ナイロンパウダー、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル、ウールパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、ポリウレタンパウダー、でんぷん粉などの有機粉末などを挙げることができる。
【0010】
(B)成分の油相は、公知の化粧料成分のうち、前記粉体相に含まれる以外のものであり、以下のものが挙げられる。
例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、水添ポリイソブテン(軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン)、トコフェノール、リンゴ酸ジイソステアリル、ワセリン、エチルヘキサン酸セチル、1,2-ヘキサンジオール、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリルなどの油剤が挙げられる。
【0011】
(B)成分の油相は、HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含むことができる、またはHLB8を超えるノニオン界面活性剤を含まなくてもよい。
【0012】
(B)成分の油相は、HLB8を超えるノニオン界面活性剤を含む場合、その含有量は好ましくは2質量%以下、より好ましくは1~2質量%で含有することができる。
【0013】
HLB8を超えるノニオン界面活性剤は、具体的には、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(6)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(40)ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビタン、ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、及びポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル;
ジイソステアリン酸デカグリセリル、ラウリン酸デカグリセリル、トリラウリン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、イソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ミリスチン酸デカグリセリル、ジミリスチン酸デカグリセリル、カプリン酸デカグリセリルなどから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
従来の湿式充填・成型プロセスで得られる固形粉体化粧料において、特にバックインジェクション充填方法を採用する場合、固形粉体化粧料中に界面活性剤を5質量%程度配合して、各化粧料成分を可溶、乳化することができ、均一なスラリー状組成物を得ることができるものであった。
本発明の固形粉体化粧料は、湿式充填・プロセス、中でもバックインジェクション充填方法に適用できるスラリーの調製において、(C)成分として特定の疎水化多糖類を特定量使用することにより各化粧料成分を可溶、乳化することができ、均一に分散したスラリーを得ることができる。
【0015】
(A)成分の粉体相と(B)成分の油相の合計量中の割合は、(A)粉体相は好ましくは70~85質量%、より好ましくは73~80質量%で、(B)油相は合計で100質量%となる残部割合である。
【0016】
(C)成分の疎水化多糖類は、炭素数8~18のアルキル基が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル基の平均置換度が0.1~1.0であるヒドロキシプロピルグアーガム、から選ばれる。
【0017】
炭素数8~18のアルキル基が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロースは、炭素数8~18のアルキル基、好ましくは炭素数14~18のアルキル基が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることができ、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースは、市販品として、サンジェロース60シリーズ及び90シリーズ(大同化成工業社製)を使用することができる。
【0018】
ヒドロキシプロピルグアーガムは、ヒドロキシプロピル基の平均置換度が0.1~1.0、好ましくは0.5~1.0のヒドロキシプロピルグアーガムを用いることができる。
【0019】
(C)成分の疎水化多糖類は、その含有量範囲が(B)油相を構成する成分によって異なる。
(B)油相がHLB8を超える界面活性剤を含まない場合、(C)成分の含有量は0.1~0.15質量部であって、好ましくは0.1~0.14質量部、より好ましくは0.1~0.13質量部を含む。
前記含有量範囲は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する数値範囲を示す。
(B)油相がHLB8を超える界面活性剤を含む場合、(C)成分の含有量は0.005~0.15質量部であって、好ましくは0.005~0.05質量部、より好ましくは0.009~0.014質量部を含む。
【0020】
本発明の固形粉体化粧料は、その他公知の化粧料成分を含んでいてもよい。
例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子、蔗糖などの保湿剤、エモリエント成分、防腐剤、乳化剤、安定化剤、可塑剤;
薬効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、トコフェロール、アミノ酸、美白剤、殺菌剤;
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、
紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、褐色防止剤、緩衝剤、沈殿防止成分、有機変性粘土鉱物、使用性改質剤、などが挙げられる。
【0021】
(D)成分の水は、衛生上の観点から精製水が好ましい。
(D)成分は、製造時に分散媒として添加された水の残存分であって、本発明の固形粉体化粧料の製造過程で調製されたスラリーを成形、乾燥後に残存する水であるため、固形粉体化粧料中において(D)成分は含まれないことが好ましい。
【0022】
<固形粉体化粧料の製造方法>
本発明の固形粉体化粧料は、
(A)成分の粉体相と(B)成分の油相を混合して混合物を得る第1工程、
前記混合物100質量部に対して、(C)成分の疎水化多糖類と分散媒である(D)成分の水10~90質量部とを添加して混合し、スラリーを調製する第2工程、
前記スラリーを成形型に充填後、乾燥する第3工程、を有する固形粉体化粧料の製造方法により得られる。
【0023】
第1工程
本工程では、(A)成分の粉体相と(B)成分の油相とを混合して混合物を得る。
【0024】
(A)成分の粉体相は、公知の化粧料成分の中の粉体成分をミキサーで攪拌混合して調製する。
前記(A)成分の粉体相が入ったミキサーに、(B)成分の油相を構成する公知の化粧料成分(前記粉体相に含まれる粉体を除く)を添加して、均一になるまで攪拌混合することで、本工程の混合物が得られる。
【0025】
第2工程
本工程では、前工程で得られた混合物100質量部に対して、(C)成分の疎水化多糖類と、分散媒である(D)成分の水10~90質量部とを添加して混合し、スラリーを調製する。
前工程で得られた混合物は、20メッシュの濾布で濾したものを用いるのが好ましい。
分散媒である(D)成分の水は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対しては10~90質量部、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~70質量部で配合される。
【0026】
(C)成分の疎水化多糖類は、分散媒である(D)成分の水10~90質量部に溶解して、(C)成分の疎水化多糖類を含む水溶液として前記混合物に添加してもよい。前記水溶液は、固形粉体化粧料に(C)成分の疎水化多糖類が特定量で含有されるように濃度を調整したものを使用する。
前記疎水化多糖類を(D)成分の水に溶解する際に、適宜pH調整して溶解させることもできる。
【0027】
前工程で得られた混合物に、(C)成分の疎水化多糖類および(D)成分の水、または前記疎水化多糖類を含む水溶液を添加して、再びミキサーで混合して、スラリーを調製する。
【0028】
第3工程
本工程では、前工程で得られたスラリーを成形型に充填後、乾燥して、固形粉体化粧料を得る。
【0029】
前記スラリーを充填する成形型は、金型や樹脂皿など、通常使用される固形粉体化粧料の型を使用する。
【0030】
前記スラリーを充填する方法は、型の開口部から前記スラリーを注入する方法のほか、型である金皿の開口部に上型(金型)を覆った後、金皿の底部又は側面部に設けた充填孔よりスラリーを充填して、充填されたスラリーを上型によりプレス成型するBIM法(バックインジェクションモールディング法)を使用することができる。
【0031】
成形型に充填されたスラリーは、型ごと乾燥機などに入れられ、加熱乾燥によって水や化粧料成分中の溶剤を除去されるため、本発明の固形粉体化粧料はほとんど水を含まない。BIM法を使用する場合、スラリーが充填されてプレス成型された金皿ごと、乾燥機などに入れられる。
加熱温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、スラリーが完全に固化するまで加熱乾燥する。
【0032】
本発明の固形粉体化粧料の製造方法で調製されたスラリーは、BIM法による充填方法を適用して、型である金皿の開口部を覆う上型として、化粧料表面模様や立体形状が反転した形に彫刻された上型を用いることで、模様を付した固形粉体化粧料を得ることができる。
【0033】
本発明の化粧料は、前記固形粉体化粧料、特にアイシャドウ、ファンデーション、チーク、粉白粉などにすることができる。
【実施例
【0034】
使用成分
(C1)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基27~30%含有)、製品名「サンジェロース60L」、大同化成工業株式会社製
(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基21.5~24%含有)、製品名「サンジェロース90L」、大同化成工業株式会社製
(C3)ヒドロキシプロピルグアーガム(置換度0.6)、製品名「JAGUAR HP-105」、三晶株式会社製
・ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB10.0)、製品名「DECAGLYN 2-ISV」、日光ケミカルズ株式会社製
【0035】
比較成分
・アセチルヒアルロン酸ナトリウム、製品名「アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム」、日光ケミカルズ株式会社製
・ヒドロキシプロピルグアーガム、(置換度1.2)製品名「JAGUAR HP-120」、三晶株式会社製
・ヒドロキシアルキルヒドロキシプロピルグアーガム(置換度1.2)、製品名「JAGUAR HP-120」、三晶株式会社製
【0036】
<スラリー吐出性>
調製したスラリーをBIM法により金皿内に所定量を充填した。スラリーを1回分吐出した後、BIM法で使用される充填機の充填口(ノズル)およびシリンダーの汚れ具合を目視観察して、下記基準により評価した。
○:スラリーの分離およびノズル詰まりが生じることなく充填することができる。
×:シリンダー内でスラリーが団子状に固まり、ノズルが詰まる。
【0037】
<プレス成型性>
BIM法により金皿内にプレス成型した直後及び乾燥後のプレス成型品(固形粉体化粧料)の外観を、目視観察して、下記基準により評価した。
○:プレス成型品にヒビや割れが見られなかった。
×:プレス成型品にヒビや割れが確認できた。
【0038】
<プレス成型品(固形粉体化粧料)の耐落下衝撃性>
金皿に入った各固形粉体化粧料を、コンパクトに装着した状態で50cmの高さから床(コンクリートの床)に落下させ、下記基準で評価した。
○:10回落としてもプレス成型品(固形粉体化粧料)の表面は正常だった。
×:1~4回落としたところで、プレス成型品(固形粉体化粧料)の表面にヒビ又は割れが見られた。
【0039】
実施例1
(1)表1の(A)粉体相の各成分をミキサーで混合した後、前記ミキサー内の粉体相に表1の(B)油相の各成分を添加して、攪拌混合し、化粧料成分からなる混合物(表1)を調製した。なお、ここでの(B)油相は、HLB8を超えるノニオン界面活性剤2質量%を含まない。
(2)前工程の混合物を20メッシュの濾布をとおした後、前記混合物100質量部に対して、表2に示す(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび水10~90質量部を添加し、ミキサーで均一に混合してスラリーを調製した。水は、前記範囲内で適量を添加して調製する。
(3)前記スラリーをBIM法(バックインジェクションモールディング法)により金皿内にプレス成型した。ここでBIM法とは、プレス型にセットされた皿(成形型)の底部にある充填孔よりスラリーを充填した後に、プレス成型する方法をいう。その後、金皿ごと50℃の乾燥機で20時間乾燥させ、各固形粉体化粧料が得られた(表2)。
得られた固形粉体化粧料を用いて、スラリー吐出性、プレス成型性、プレス成型品の耐落下衝撃性について評価した(表2)。
【0040】
比較例1
表1、3の(A)粉体相と(B)油相を用いて、実施例1と同様にスラリーを調製した。前記スラリーから実施例1と同様に固形粉体化粧料を製造して、スラリー吐出性、プレス成型性、プレス成型品の耐落下衝撃性を評価した(表2、3)。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2に示す(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有した実施例1の固形粉体化粧料は、スラリー吐出性及びプレス成型性に優れ、また成形型に入った状態で落下させても固形粉体化粧料の表面にヒビや割れは見られなかった。
一方、表2に示す比較例1-1は、充填開始からまもなくスラリーが水と固形分に分離し、その固形分がシリンダー内で固まって団子状になり、その結果ノズル詰まりが生じて、充填したスラリー全量を金型内へ充填することができなかった。
また、表2に示す(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの多い比較例1-2、1-3は、スラリーをノズルへ押し出す柔軟性に劣るため、スラリーをノズルから吐出することができなかった。
【0045】
表3に示す比較例1-4、5も、表3に示す各成分を用いて実施例1と同様にスラリーを調製したものの、充填開始からまもなくスラリーが水と固形分に分離し、その固形分がシリンダー内で固まって団子状になり、その結果ノズル詰まりが生じて、充填したスラリー全量を金型内へ充填することができなかった。
【0046】
実施例2
表4に示す(A)粉体相およびHLB8を超えるノニオン界面活性剤を含む(B)油相の合計100質量部に対して、(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.02質量%水溶液を添加して、実施例1と同様に固形粉体化粧料を調製した。得られた固形粉体化粧料のスラリー吐出性、プレス成型性、プレス成型品の耐落下衝撃性を評価した。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示す(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有した実施例2の固形粉体化粧料は、スラリー吐出性及びプレス成型性に優れ、また成形型に入った状態で落下させても固形粉体化粧料の表面にヒビや割れは見られなかった。
一方、表4に示す(C2)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの少ない比較例2の固形粉体化粧料は、充填開始からまもなくスラリーが水と固形分に分離し、その固形分がシリンダー内で固まって団子状になり、その結果ノズル詰まりが生じて、充填したスラリー全量を金型内へ充填することができなかった。
【0049】
実施例3
表5に示す各成分を用いて、実施例2と同様に固形粉体化粧料を調製し、評価した。なお、ここでの(B)油相は、HLB8を超えるノニオン界面活性剤2質量%を含む。
【0050】
【表5】

【0051】
表5に示す(C2)成分を含有する実施例3-1、および(C1)成分を含有する実施例3-2の固形粉体化粧料は、スラリー吐出性及びプレス成型性に優れ、また成形型に入った状態で落下させても固形粉体化粧料の表面にヒビや割れは見られなかった。実施例1と同程度の評価を得ることができた。
また(C3)成分を含有する実施例3-3の固形粉体化粧料も、スラリー吐出性、プレス成型性および耐落下衝撃性に優れることが確認できた。
一方、(C2)成分の含有量の多い比較例3-1は、スラリーから水が早くに分離して、固形物がシリンダー内で固まり、その結果ノズル詰まりが生じて、充填機に充填したスラリー全量を金型内へ充填することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の固形粉体化粧料は、湿式充填・成型プロセスを採用して、アイシャドウ、ファンデーション、チーク、粉白粉などの固形粉体化粧料の調製に、好適に利用することができる。